JP2001234267A - 薄膜形成用合金、金属焼結体およびその用途 - Google Patents

薄膜形成用合金、金属焼結体およびその用途

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JP2001234267A JP2000383330A JP2000383330A JP2001234267A JP 2001234267 A JP2001234267 A JP 2001234267A JP 2000383330 A JP2000383330 A JP 2000383330A JP 2000383330 A JP2000383330 A JP 2000383330A JP 2001234267 A JP2001234267 A JP 2001234267A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 Cr/Cr化合物と同等以上の光学特性お
よび耐久性(パターニング性、エッチング特性、耐熱性
および耐湿性)を有する遮光膜を有する基板、または遮
光層と吸収層とからなる低反射膜を有する基板を提供す
ること。 【解決手段】 実質的にNiおよびVからなり、Vを原
子比で26〜52%含有している薄膜形成用合金または
金属焼結体からなるスパッタリングターゲットを用い、
NiとVの酸化物、窒化物若しくは酸窒化物のいずれか
一つの薄膜を形成してなる遮光膜付き基板、または、N
iとVとの酸化物、窒化物または酸窒化物の薄膜のいず
れか一層以上を積層した吸収層と、NiとVとの合金、
またはNiとVとの酸化物、窒化物若しくは酸窒化物の
薄膜のいずれか一層を積層した遮光層とを、この順に積
層して、低反射膜付き基板とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薄膜形成用のニッ
ケル・バナジウム合金、ニッケル・バナジウム金属焼結
体、それらを用いたスパッタリングターゲット、および
ニッケル・バナジウム合金薄膜並びにその用途に関す
る。
【0002】
【従来の技術】液晶表示装置やプラズマディスプレイに
代表されるフラットパネルディスプレイでは、カラー表
示を目的としたカラーフィルターが採用されている。カ
ラーフィルターには、赤(R)、緑(G)、青(B)の
マイクロカラーフィルターが各画素に対応してマトリク
ス状に形成されており、これらマイクロカラーフィルタ
ー相互間に、コントラストや色純度を良くし、視野性を
向上させることを目的として、ブラックマトリクス(以
下「BM」ともいう)と呼ばれる黒色の部材が形成され
ている。BMの形成には、通常、クロムまたはクロム化
合物が使用されており、金属クロム単層膜からなる遮光
膜や、金属クロムと酸化クロムとの積層膜、または、金
属クロム、酸化クロムおよび窒化クロムの積層膜などの
低反射膜からなっている。これらBMは、透明なガラス
基板上にクロム単層膜を形成した遮光膜付き基板や、ガ
ラス基板上に酸化クロムや窒化クロムなどの吸収層を形
成した後、この上に金属クロム単層膜からなる遮光層を
積層した低反射膜付き基板をウエットエッチングなどに
よりパターンニングして得られる。
【0003】ところで、クロムまたはクロム化合物から
なるBMは、非常に良い光学特性、遮光特性、エッチン
グ特性、密着性、および高温多湿環境下における耐久性
を示す一方、ウエットエッチングなどによるパターンニ
ングの際に選択されるエッチング液の組み合わせによっ
ては、エッチングの際に生じるクロム廃液中に6価クロ
ムが含まれることがある。6価クロムは環境を汚染する
という問題があるため、カラーフィルター製造工程にお
いてクロムを含まないBMの開発が求められており、例
えばニッケル系の材料を用いたBMが多数知られてい
る。また、近年フラットパネルディスプレイに対する要
求、すなわち高精細化、高品位化に対する要求は年々高
まってきており、そのためニッケル系のBMに対して
も、従来では特に問題でなかった特性が問題となりつつ
ある。具体的には、BMパターンニング幅が狭くなるこ
とにより、従来では問題とならなかった薄膜の密着性、
エッチングの際にパターンサイドに発生するオーバーエ
ッチング特性、高温多湿環境下における膜質の安定性な
どが十分ではなくなるため、歩留まりの向上や、BM特
性の安定性という観点からこれらの改善が求められてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、クロム以外
の材料を用いて、クロムまたはクロム化合物と同等以上
の光学特性および耐久性を兼ね備えた遮光膜を有する遮
光膜付き基板、または遮光層と吸収層からなる低反射膜
を有する低反射膜付き基板を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問
題に鑑み、鋭意検討を行った結果、金属元素としてニッ
ケルとバナジウムとを用いて遮光膜および低反射膜を構
成することにより、上記問題点を解決できることを見出
し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
実質的にニッケルおよびバナジウムからなり、バナジ
ウムを原子比で26〜52%含有していることを特徴と
する薄膜形成用合金または金属焼結体、上記の薄膜
形成用合金または金属焼結体からなるスパッタリングタ
ーゲット、ニッケルとバナジウムとの合金、またはニ
ッケルとバナジウムとの酸化物、窒化物若しくは酸窒化
物のいずれか一つの薄膜からなる遮光膜であって、薄膜
中のニッケルに対するバナジウムの原子比(バナジウム
/ニッケル)が26/74〜52/48であることを特
徴とする遮光膜、ニッケルとバナジウムとの酸化物、
窒化物または酸窒化物から選ばれる材質より得られる薄
膜を一層以上積層した積層膜からなる吸収層と、ニッケ
ルとバナジウムとの合金、またはニッケルとバナジウム
との酸化物、窒化物若しくは酸窒化物から選ばれる材質
より得られる薄膜を一層以上積層した積層膜からなる遮
光層とを、この順に積層してなる低反射膜であって上記
吸収層および遮光層を構成する薄膜中のニッケルに対す
るバナジウムの原子比(バナジウム/ニッケル)が26
/74〜52/48であることを特徴とする低反射膜、
上記の遮光膜を有する基板、上記の低反射膜を
有する基板、上記またはの基板を用いてなる機器
に関するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の薄膜形成用合金は、実質的にニッケルおよびバ
ナジウムからなり、バナジウムを原子比で26〜52%
含有するものである。このような合金は、電子ビーム溶
解法、真空溶解法、不活性雰囲気溶解法などさまざまな
方法で製造できる。例えば、真空溶解法を例に挙げる
と、ニッケル塊とバナジウム塊とを真空溶解炉の坩堝へ
投入し、誘導コイルにパワーを投入し溶解する。このと
き、溶解してから10分以上保持することが均一組成の
溶湯を得ることができるため望ましい。次いで、溶湯を
銅製またはカーボン製モールドなどに注いだ後、冷却す
ることでインゴットを得る。溶解時の温度は、ニッケル
の融点以上、すなわち1,500℃以上が望ましい。冷
却速度はインゴット中の組織均一性を得るためにできる
だけ急冷したほうが望ましい。また、結晶配向性や、組
織中の粒径を制御するために必要に応じて圧延処理を施
すこともできる。このようにして本発明の請求項1の発
明である実質的にニッケルとバナジウムとからなる薄膜
形成用合金を得ることができる。なお、本発明でいう
「実質的にニッケルおよびバナジウムからなる」とは、
ニッケルおよびバナジウムのほかに不可避不純物を含ん
でいることを意味する。
【0007】また、本発明の金属焼結体は、実質的にニ
ッケルおよびバナジウムからなり、バナジウムを原子比
で26〜52%含有するものである。このような焼結体
は、例えば、真空焼成法、雰囲気焼成法、ホットプレス
法、HIP法などの方法によって製造することができ
る。例えば、HIP法により本発明の金属焼結体を製造
する場合、原料粉末はニッケル粉末とバナジウム粉末と
を所定の割合に混合しても良いし、ニッケルとバナジウ
ムとを溶解後粉砕またはアトマイズ法などによる処理に
より得られた合金粉末でもよい。混合粉末を使用する場
合、原料粉の粒度は焼結体組織中におけるニッケルとバ
ナジウムの分散性を考慮すると、30メッシュ以下が好
ましい。より好ましくは60メッシュ以下である。これ
は、得られる焼結体からなるスパッタリングターゲット
を用いてニッケルとバナジウムからなる薄膜を製造した
場合、得られた薄膜中のバナジウムが均一に分散し、ま
た異常放電などが発生しないといった安定な放電が期待
できるためである。粉末の混合はボールミルなどの乾式
混合で行えばよい。前述のようにして得られたニッケル
とバナジウムとの混合粉末をプレス法またはCIP法に
より成形することによって、成形体を製造する。プレス
法により成形体を作成する場合は、所定の金型に混合粉
末を充填した後、粉末プレス機を用いて100kg/c
2以上の圧力でプレスを行う。CIP法によって成形
する場合には、ゴム性の型に粉末を充填し、ゴム栓など
で密封する。その後、CIP装置を用いて2ton/c
2以上の圧力で緻密化する。このようにして得られた
成形体を金属製の容器に入れ、真空脱気した後、封止
し、焼成する。焼成条件については、十分な密度を得る
ため、焼結温度900〜1,100℃、圧力1,000
〜2,000kg/cm2、焼結時間2時間以上であるこ
とが望ましい。
【0008】次に、ホットプレス法により本発明の金属
焼結体を製造する方法を説明する。上記と同様の方法で
製造された原料粉末を、カーボンモールドに投入し、焼
結温度1,000〜1,250℃、荷重200〜300
kg/cm2、焼結時間2時間以上で焼成する。雰囲気は
焼結体の酸素含有量の増加を押さえるため、真空または
不活性雰囲気であることが好ましい。このようにして、
本願発明の実質的にニッケルとバナジウムとからなる金
属焼結体を得ることができる。得られた合金または焼結
体を所望の形状に加工することにより、電子ビーム蒸着
法などで用いられる蒸着材とすることもできる。上記の
ような方法で得られた実質的にニッケルとバナジウムと
からなる合金または金属焼結体を所望の形状に加工し、
必要に応じて無酸素銅またはクロム含有銅などからなる
バッキングプレートにインジウム半田などを用いて接合
することにより、本願発明のスパッタリングターゲット
が得られる。このとき、インジウム半田による接合を容
易にするために、加工された合金または金属焼結体のバ
ッキングプレートに接する面を、クロム、ニッケル、銅
などにより被覆してもよい。
【0009】ここで、ターゲット中のバナジウムの含有
量は原子比で26%〜52%であることが好ましく、よ
り好ましくは34〜52%である。このことにより遮光
膜の反射率安定性、およびエッチング特性は安定する。
加えてバナジウムの含有量を39〜52%とすることに
よりそれらの特性はさらに安定する。一方、生産性の観
点からは、バナジウムの含有量は原子比で26%〜40
%であることが好ましい。この範囲のバナジウム含有量
とすることにより、この組成のスパッタリングターゲッ
トにより製造された遮光膜または低反射膜のパターンニ
ングが、より短時間で実施できるためである。バナジウ
ムの含有量が26%より少ないと、本発明の効果が薄
れ、パターンニング特性、密着性、高温多湿環境下での
耐久性が劣化する。さらに、ターゲット中のバナジウム
の含有量が26%より少ないと、酸素ガスや、窒素ガス
をアルゴンガスとともに使用する反応性スパッタリング
時において、酸素ガスや窒素ガスの導入量に変動があっ
た場合、スパッタレートが変化しやすくなる。そのた
め、得られる遮光膜および低反射膜の光学特性、例えば
反射率などが安定しないなど品質安定性に影響が生じ
る。また、52%を超えると、形成される薄膜の耐薬品
性が強くなりパターンニングに要する時間がかかるため
生産性が劣化する。
【0010】本発明の遮光膜は、ニッケルとバナジウム
との合金、またはニッケルとバナジウムとの酸化物、窒
化物若しくは酸窒化物のいずれか一つの薄膜からなる遮
光膜であって、これらの薄膜中のニッケルに対するバナ
ジウムの原子比(バナジウム/ニッケル)が26/74
〜52/48である遮光膜である。これらの遮光膜は、
例えば、前述のスパッタリングターゲットを用いて製造
することができる。例えば、このような薄膜をDCスパ
ッタリング法により製造する場合には、スパッタガスと
して、アルゴンガス、アルゴンガスと酸素ガスとの混合
ガス、アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス、アルゴン
ガス、酸素ガスおよび窒素ガスとの混合ガスのいずれか
を用いることにより、ニッケルとバナジウムとの合金薄
膜、またはニッケルとバナジウムとの酸化物薄膜、窒化
物薄膜若しくは酸窒化物薄膜のいずれか一つの薄膜を形
成することができる。
【0011】これらの薄膜中のニッケルに対するバナジ
ウムの原子比(バナジウム/ニッケル)は28/72〜
50/50であることが好ましい。これは、この組成範
囲にある薄膜が、パターンニング特性、密着性、高温多
湿環境下での耐久性において優れているからである。一
方、反射率特性の観点からは34/66〜52/48で
あることが好ましく、さらに39/61〜52/48と
することにより望ましい。すなわち、ニッケルに対する
バナジウムの原子比が26/74より少ないと、本発明
の効果が薄れ、パターンニング特性、密着性、高温多湿
環境下での耐久性が劣化し、一方、52/48を超える
と、耐薬品性が強くなりパターンニングに要する時間が
かかるため生産性が劣化する場合があるからである。
【0012】また、本発明の遮光膜を構成するニッケル
とバナジウムとの酸化物、窒化物、酸窒化物とは、各
々、ニッケルとバナジウムとのほかに酸素、窒素および
その両者を含み透明でない程度の酸化度、窒化度および
酸窒化度を有すればよく、必ずしも化学量論的な化合物
に限定されるものではない。酸素、窒素の導入量は遮光
膜としての光学特性が得られる範囲であれば良く、特に
限定されない。これらの薄膜の膜厚は、十分な遮光特性
を得るために70nm以上が好ましく、成膜時間やエッ
チング時間などの生産性を考慮すると200nm以下が
好ましい。
【0013】成膜条件としては、スパッタリングチャン
バー内の残留ガスの影響を避けるため、バックグランド
プレッシャーは、できるだけ低いことが好ましく、5×
10 -5torr以下が好ましい。また、成膜時のガス圧
は、0.5〜5×10-3torrの範囲が放電安定性の
点で好ましい。なお、本発明の遮光膜はDCスパッタリ
ング法に限らず、RFスパッタリング法、DCにRFを
重畳させたスパッタリング法や、蒸着法などによっても
製造することができる。上記のようにして、遮光膜をガ
ラス基板やフィルム基板上に形成することにより、本願
発明の遮光膜付き基板を得ることができる。
【0014】一方、本発明の低反射膜は、ニッケルとバ
ナジウムとの酸化物、窒化物または酸窒化物から選ばれ
る材質より得られる薄膜を一層以上積層した積層膜から
なる吸収層と、ニッケルとバナジウムとの合金、または
ニッケルとバナジウムとの酸化物、窒化物若しくは酸窒
化物から選ばれる材質より得られる薄膜を一層以上積層
した積層膜からなる遮光層とを、この順に積層してなる
低反射膜であって、上記吸収層および遮光層を構成する
薄膜中のニッケルに対するバナジウムの原子比(バナジ
ウム/ニッケル)が26/74〜49/51であること
を特徴とするものである。
【0015】例えば、このような薄膜をDCスパッタリ
ング法により製造する場合には、スパッタガスとして、
アルゴンガスと酸素ガスとの混合ガス、アルゴンガスと
窒素ガスとの混合ガス、アルゴンガス、酸素ガスおよび
窒素ガスとの混合ガスのいずれかを用いることにより、
ニッケルとバナジウムとの酸化物薄膜、窒化物薄膜およ
び酸窒化物薄膜を得ることができ、これらの薄膜の一層
以上を積層した積層膜により吸収層を形成する。次い
で、この吸収層の上に、スパッタガスとして、アルゴン
ガスを用いて得られるニッケルとバナジウムとの合金薄
膜、また上記と同様な方法を用いて得られるニッケルと
バナジウムとの酸化物薄膜、窒化物薄膜若しくは酸窒化
物薄膜の一層以上を積層した積層膜による遮光層を形成
し低反射膜を得る。
【0016】これらの吸収層および遮光層を構成する薄
膜中のニッケルに対するバナジウムの原子比(バナジウ
ム/ニッケル)は、いずれも26/74〜49/51で
あることが好ましい。これは、この組成範囲にある薄膜
が、パターンニング特性、密着性、高温多湿環境下での
耐久性において優れているからである。また、前述の遮
光膜の場合と同じ理由で、ニッケルに対するバナジウム
の原子比(バナジウム/ニッケル)が26/74〜52
/48であるスパッタリングターゲットを用いることが
好ましい。さらに、表示特性に影響を及ぼすパターンニ
ング特性より33/67〜49/51であることが好ま
しく、特に37/63〜49/51であればよりパター
ンニング特性が改善され好ましい。また、本発明の遮光
層を構成するニッケルとバナジウムとの酸化物、窒化
物、酸窒化物とは、各々、ニッケルとバナジウムとのほ
かに、酸素、窒素およびその両者を含み光学的に透明で
ない程度の酸化度、窒化度および酸窒化度であれば良
く、必ずしも化学量論的な化合物に限定されるものでは
ない。酸素、窒素の導入量は、遮光膜としての光学特性
が得られる範囲であれば良く、特に限定されない。
【0017】吸収層を構成するニッケルとバナジウムと
の酸化物、窒化物、酸窒化物とは、各々、ニッケルとバ
ナジウムのほかに酸素、窒素およびその両者を含み、少
なくとも光学的に透明である程度の酸化度、窒化度およ
び酸窒化度であれば良く、必ずしも化学量論的な化合物
に限定されるものではない。酸素、窒素の導入量は、吸
収層としての光学特性が得られる範囲であれば良く、特
に限定されない。
【0018】本発明の遮光層の膜厚は、前述の遮光膜と
同じ理由により、70〜200nmが好ましい。なお、
遮光層が複数の薄膜の積層膜として構成されている場合
は、積層膜全体の膜厚がこの範囲であることが好まし
い。また、吸収層の膜厚は、十分な吸収効果を得るため
に10nm以上とすることが好ましく、成膜時間やエッ
チング時間などの生産性を考慮して150nm以下とす
ることが好ましい。吸収層が複数の薄膜の積層膜として
構成されている場合は、積層膜全体の膜厚がこの範囲で
あることが好ましい。成膜条件としては、前述の遮光膜
の場合と同様に、スパッタリングチャンバー内の残留ガ
スの影響を避けるため、バックグランドプレッシャーは
できるだけ低いことが好ましく、5×10-5torr以
下が好ましい。また、成膜時のガス圧は、0.5〜5×
10-3torrの範囲が放電安定性の点で好ましい。な
お、本発明の遮光層および吸収層を構成する薄膜はDC
スパッタリング法に限らず、RFスパッタリング法、D
CにRFを重畳させたスパッタリング法や、蒸着法など
によっても製造することができる。
【0019】また、本発明の低反射膜では、遮光層の上
にさらに吸収層を積層することにより、低反射膜の特性
を制御することもでき、例えば、液晶セル内の反射光が
問題となるような特定用途に対してより好ましいBMを
形成することもできる。さらに本発明の吸収層は、酸化
物、窒化物、酸窒化物以外に、炭化物などの薄膜も使用
することもできる。上記のようにして、低反射膜をガラ
ス基板やフィルム基板上に形成することにより、本願発
明の低反射膜付き基板を得ることができる。
【0020】また、本発明にかかる機器とは、遮光膜付
き基板または低反射膜付き基板を用いてなることを特徴
とする機器であり、プラズマディスプレー、液晶ディス
プレー、フィールドエミッション方式ディスプレー、E
Lディスプレーなどである。例えば、液晶ディスプレー
の場合、上記方法で製造された遮光膜付き基板、または
低反射膜付き基板を、所望のパターンにエッチングし、
BMを形成した後、R、G、Bの顔料などのパターン、
保護層、透明電極などを形成しカラーフィルター基板を
形成する。次に、TFT基板などの対向電極基板とカラ
ーフィルター基板を貼り合わせ、これらの基板間に液晶
を封入することで液晶パネルを製造し、得られた液晶パ
ネルを使用し液晶ディスプレーを有する機器を製造す
る。このようにして、本発明である遮光膜または低反射
膜付き基板を用いてなるフラットパネルディスプレイな
どの機器を構成することができる。
【0021】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明
するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 実施例1 粒径10μm以下のニッケル粉末1122g、粒径25
0μm以下のバナジウム粉末378gをポリエチレン製
のポットに入れ、乾式ボールミルにより16時間混合
し、混合粉末を製造した。この粉末を内径200mmの
カーボン製のモールドに入れ、ホットプレス法にて以下
の焼結条件により焼結を行った。 焼結温度:1,200℃ 荷重:200kg/cm2 昇温速度:200℃/h 焼結時間:2時間 雰囲気:真空 得られた焼結体の密度をアルキメデス法により測定した
ところ、7.95g/cm3であった。また、焼結体の
組成をICP法により分析したところ原子比でニッケル
が72%、バナジウムが28%であった。この焼結体を
湿式加工法により直径150mm、厚さ3mmの焼結体
に加工し、インジウム半田を用いて無酸素銅のバッキン
グプレートにボンディングしてターゲットとした。この
ターゲットを以下のスパッタリング条件でスパッタリン
グして基板上に薄膜を形成し、遮光膜付き基板を得た。 基板:ガラス基板 DC電力:400W ガス圧:1.1mTorr アルゴンガス流量:120SCCM 基板温度:150℃ 膜厚:130nm 得られた薄膜の組成をICP法により分析したところ、
原子比でニッケルが72.1%、バナジウムが27.9
%であった。
【0022】実施例2 粒径10μm以下のニッケル粉末1051g、粒径25
0μm以下のバナジウム粉末449gをポリエチレン製
のポットに入れ、乾式ボールミルにより16時間混合
し、混合粉末を製造した。この粉末を使用し焼結温度を
1,100℃とした以外は実施例1と同様の方法で焼結
を行った。得られた焼結体の密度をアルキメデス法によ
り測定したところ、7.80g/cm3であった。ま
た、焼結体の組成をICP法により分析したところ原子
比でニッケルが67%、バナジウムが33%であった。
この焼結体を実施例1と同様な加工方法によりターゲッ
トとした。このターゲットを実施例1と同様な方法でス
パッタリングして基板上に薄膜を形成し、遮光膜付き基
板を得た。得られた薄膜の組成をICP法により分析し
たところ、原子比でニッケルが67.1%、バナジウム
が32.9%であった。
【0023】実施例3 サイズが10mm×10mm×5mm程度のニッケルチ
ップ1576g、サイズが10mm×5mm×5mm程
度のバナジウムチップ674gを真空溶解装置内の坩堝
に投入後、誘導加熱方式により溶解し溶湯の温度を1,
600℃とした。このまま15分保持した後、この溶湯
を内寸法180mm×180mm×5mmのカーボン製
モールドに注ぎ、そのまま真空中で自然冷却し合金板を
得た。得られた合金の密度をアルキメデス法により測定
したところ、7.82g/cm3であった。また、焼結
体の組成をICP法により分析したところ原子比でニッ
ケルが67%、バナジウムが33%であった。この焼結
体を実施例1と同様な加工方法によりターゲットとし
た。このターゲットを実施例1と同様な方法でスパッタ
リングして基板上に薄膜を形成し、遮光膜付き基板を得
た。得られた薄膜の組成をICP法により分析したとこ
ろ、原子比でニッケルが67.2%、バナジウムが3
2.8%であった。
【0024】実施例4 粒径10μm以下のニッケル粉末950g、粒径250
μm以下のバナジウム粉末550gをポリエチレン製の
ポットに入れ、乾式ボールミルにより16時間混合し、
混合粉末を製造した。この粉末を使用し実施例2と同様
の方法で焼結を行った。得られた焼結体の密度をアルキ
メデス法により測定したところ、7.60g/cm3
あった。また、焼結体の組成をICP法により分析した
ところ原子比でニッケルが60%、バナジウムが40%
であった。この焼結体を実施例1と同様な加工方法によ
りターゲットとした。このターゲットを実施例1と同様
な方法でスパッタリングして基板上に薄膜を形成し、遮
光膜付き基板を得た。得られた薄膜の組成をICP法に
より分析したところ、原子比でニッケルが59.9%、
バナジウムが40.1%であった。
【0025】実施例5 粒径10μm以下のニッケル粉末803g、粒径250
μm以下のバナジウム粉末697gをポリエチレン製の
ポットに入れ、乾式ボールミルにより16時間混合し、
混合粉末を製造した。この粉末を使用し実施例2と同様
の方法で焼結を行った。得られた焼結体の密度をアルキ
メデス法により測定したところ、7.31g/cm3
あった。また、焼結体の組成をICP法により分析した
ところ原子比でニッケルが50%、バナジウムが50%
であった。この焼結体を実施例1と同様な加工方法によ
りターゲットとした。このターゲットを実施例1と同様
な方法でスパッタリングして基板上に薄膜を形成し、遮
光膜付き基板を得た。得られた薄膜の組成をICP法に
より分析したところ、原子比でニッケルが50.0%、
バナジウムが50.0%であった。
【0026】比較例1 粒径10μm以下のニッケル粉末1408g、粒径25
0μm以下のバナジウム粉末92gをポリエチレン製の
ポットに入れ、乾式ボールミルにより16時間混合し、
混合粉末を製造した。この粉末を使用し実施例1同様の
方法で焼結を行った。得られた焼結体の密度をアルキメ
デス法により測定したところ、8.64g/cm3であ
った。また、焼結体の組成をICP法により分析したと
ころ原子比でニッケルが93%、バナジウムが7%であ
った。この焼結体を実施例1と同様な加工法によりター
ゲットとした。このターゲットを実施例1と同様な方法
でスパッタリングして基板上に薄膜を形成し、遮光膜付
き基板を得た。得られた薄膜の組成をICP法により分
析したところ、原子比でニッケルが92.9%、バナジ
ウムが7.1%であった。
【0027】比較例2 粒径10μm以下のニッケル粉末1301g、粒径25
0μm以下のバナジウム粉末199gをポリエチレン製
のポットに入れ、乾式ボールミルにより16時間混合
し、混合粉末を製造した。この粉末を使用し実施例1同
様の方法で焼結を行った。得られた焼結体の密度をアル
キメデス法により測定したところ、8.37g/cm3
であった。また、焼結体の組成をICP法により分析し
たところ原子比でニッケルが85%、バナジウムが15
%であった。この焼結体を実施例1と同様な加工法によ
りターゲットとした。このターゲットを実施例1と同様
な方法でスパッタリングして基板上に薄膜を形成し、遮
光膜付き基板を得た。得られた薄膜の組成をICP法に
より分析したところ、原子比でニッケルが85.1%、
バナジウムが14.9%であった。
【0028】比較例3 粒径10μm以下のニッケル粉末1,177g、粒径2
50μm以下のバナジウム粉末323gをポリエチレン
製のポットに入れ、乾式ボールミルにより16時間混合
し、混合粉末を製造した。この粉末を使用し実施例1同
様の方法で焼結を行った。得られた焼結体の密度をアル
キメデス法により測定したところ、8.09g/cm3
であった。また、焼結体の組成をICP法により分析し
たところ原子比でニッケルが76%、バナジウムが24
%であった。この焼結体を実施例1と同様な加工法によ
りターゲットとした。このターゲットを実施例1と同様
な方法でスパッタリングして基板上に薄膜を形成し、遮
光膜付き基板を得た。得られた薄膜の組成をICP法に
より分析したところ、原子比でニッケルが76.2%、
バナジウムが23.8%であった。
【0029】比較例4 粒径10μm以下のニッケル粉末728g、粒径250
μm以下のバナジウム粉末772gをポリエチレン製の
ポットに入れ、乾式ボールミルにより16時間混合し、
混合粉末を製造した。この粉末を使用し実施例1同様の
方法で焼結を行った。得られた焼結体の密度をアルキメ
デス法により測定したところ、7.18g/cm3であ
った。また、焼結体の組成をICP法により分析したと
ころ原子比でニッケルが45%、バナジウムが55%で
あった。この焼結体を実施例1と同様な加工法によりタ
ーゲットとした。このターゲットを実施例1と同様な方
法でスパッタリングして基板上に薄膜を形成し、遮光膜
付き基板を得た。得られた薄膜の組成をICP法により
分析したところ、原子比でニッケルが45.1%、バナ
ジウムが54.9%であった。
【0030】比較例5 粒径10μm以下のニッケル粉末1,500gを内径2
00mmのカーボン製のモールドに入れ、実施例2同様
の方法で焼結体を得た。得られた焼結体の密度をアルキ
メデス法により測定したところ、8.89g/cm3
あった。この焼結体を実施例1と同様な加工法によりタ
ーゲットとした。このターゲットを実施例1と同様な方
法でスパッタリングして基板上に薄膜を形成し、遮光膜
付き基板を得た。
【0031】実施例6 実施例1と同様の方法によりスパッタリングターゲット
を得た後、このターゲットを以下のスパッタリング条件
でスパッタリングして基板上に薄膜を形成し、低反射膜
付き基板を得た。製造手順としてはスパッタリング条件
1による吸収層、スパッタリング条件2による遮光層の
順にガラス基板上に連続成膜を実施した。 (スパッタリング条件1) DC電力:400W ガス圧:1.1mTorr アルゴンガス流量:120SCCM 酸素ガス流量:10SCCM 基板温度:150℃ 膜厚:43nm (スパッタリング条件2) DC電力:400W ガス圧:1.1mTorr アルゴンガス流量:120SCCM 窒素ガス流量:5SCCM 基板温度:150℃ 膜厚:130nm スパッタリング条件1で得られた薄膜の組成をICPに
より定量分析したところ、ニッケル、バナジウム、およ
び酸素により構成されており、薄膜中のニッケルに対す
るバナジウムの原子比(V/Ni)は26.0/74.
0であった。スパッタリング条件2で得られた薄膜の組
成をICPにより定量分析したところ、ニッケル、バナ
ジウム、および窒素により構成されており、薄膜中のニ
ッケルに対するバナジウムの原子比(V/Ni)は2
7.3/72.7であった。
【0032】実施例7 実施例2と同様の方法によりスパッタリングターゲット
を得た後、実施例6と同様なスパッタリング条件でスパ
ッタリングして基板上に薄膜を形成し、低反射膜付き基
板を得た。スパッタリング条件1で得られた薄膜の組成
をICPにより定量分析したところ、ニッケル、バナジ
ウム、および酸素により構成されており、薄膜中のニッ
ケルに対するバナジウムの原子比(V/Ni)は31.
0/69.0であった。スパッタリング条件2で得られ
た薄膜の組成をICPにより定量分析したところ、ニッ
ケル、バナジウム、および窒素により構成されており、
薄膜中のニッケルに対するバナジウムの原子比(V/N
i)は32.2/67.8であった。
【0033】実施例8 実施例3と同様の方法によりスパッタリングターゲット
を得た後、実施例6と同様なスパッタリング条件でスパ
ッタリングして基板上に薄膜を形成し、低反射膜付き基
板を得た。スパッタリング条件1で得られた薄膜の組成
をICPにより定量分析したところ、ニッケル、バナジ
ウム、および酸素により構成されており、薄膜中のニッ
ケルに対するバナジウムの原子比(V/Ni)は31.
2/68.8であった。スパッタリング条件2で得られ
た薄膜の組成をICPにより定量分析したところ、ニッ
ケル、バナジウム、および窒素により構成されており、
薄膜中のニッケルに対するバナジウムの原子比(V/N
i)は32.3/67.7であった。
【0034】実施例9 実施例2と同様の方法によりスパッタリングターゲット
を得た後、このターゲットを以下のスパッタリング条件
でスパッタリングして基板上に薄膜を形成し、低反射膜
付き基板を得た。製造手順としてはスパッタリング条件
3、スパッタリング条件2の順にガラス基板上に連続成
膜を実施した。 (スパッタリング条件3) DC電力:400W ガス圧:1.1mTorr アルゴンガス流量:120SCCM 酸素ガス流量:6SCCM 窒素ガス流量:20SCCM 基板温度:150℃ 膜厚:43nm (スパッタリング条件2) DC電力:400W アルゴンガス圧:1.1mTorr アルゴンガス流量:120SCCM 窒素ガス流量:5SCCM 基板温度:150℃ 膜厚:130nm スパッタリング条件3で得られた薄膜の組成をICPに
より定量分析したところ、ニッケル、バナジウム、酸素
および酸素により構成されており、薄膜中のニッケルに
対するバナジウムの原子比(V/Ni)は31.1/6
8.9であった。スパッタリング条件2で得られた薄膜
の組成をICPにより定量分析したところ、ニッケル、
バナジウム、および窒素により構成されており、薄膜中
のニッケルに対するバナジウムの原子比(V/Ni)は
32.1/67.9であった。
【0035】実施例10 実施例4と同様の方法によりスパッタリングターゲット
を得た後、実施例6と同様なスパッタリング条件でスパ
ッタリングして基板上に薄膜を形成し、低反射膜付き基
板を得た。スパッタリング条件1で得られた薄膜の組成
をICPにより定量分析したところ、ニッケル、バナジ
ウム、および酸素により構成されており、薄膜中のニッ
ケルに対するバナジウムの原子比(V/Ni)は37.
2/62.8であった。スパッタリング条件2で得られ
た薄膜の組成をICPにより定量分析したところ、ニッ
ケル、バナジウム、および窒素により構成されており、
薄膜中のニッケルに対するバナジウムの原子比(V/N
i)は39.0/61.0であった。
【0036】実施例11 実施例5と同様の方法によりスパッタリングターゲット
を得た後、実施例6と同様なスパッタリング条件でスパ
ッタリングして基板上に薄膜を形成し、低反射膜付き基
板を得た。スパッタリング条件1で得られた薄膜の組成
をICPにより定量分析したところ、ニッケル、バナジ
ウム、および酸素により構成されており、薄膜中のニッ
ケルに対するバナジウムの原子比(V/Ni)は46.
5/53.5であった。スパッタリング条件2で得られ
た薄膜の組成をICPにより定量分析したところ、ニッ
ケル、バナジウム、および窒素により構成されており、
薄膜中のニッケルに対するバナジウムの原子比(V/N
i)は48.8/51.2であった。
【0037】比較例6 比較例1と同様な方法によりスパッタリングターゲット
を得た後、実施例6と同様なスパッタリング条件でスパ
ッタリングして基板上に薄膜を形成し、低反射膜付き基
板を得た。スパッタリング条件1で得られた薄膜の組成
をICPにより定量分析したところ、ニッケル、バナジ
ウム、および酸素により構成されており、薄膜中のニッ
ケルに対するバナジウムの原子比(V/Ni)は6.5
/93.5であった。スパッタリング条件2で得られた
薄膜の組成をICPにより定量分析したところ、ニッケ
ル、バナジウム、および窒素により構成されており、薄
膜中のニッケルに対するバナジウムの原子比(V/N
i)は6.8/93.2であった。
【0038】比較例7 比較例2と同様の方法によりスパッタリングターゲット
を得た後、実施例6と同様なスパッタリング条件でスパ
ッタリングして基板上に薄膜を形成し、低反射膜付き基
板を得た。スパッタリング条件1で得られた薄膜の組成
をICPにより定量分析したところ、ニッケル、バナジ
ウム、および酸素により構成されており、薄膜中のニッ
ケルに対するバナジウムの原子比(V/Ni)は14.
0/86.0であった。スパッタリング条件2で得られ
た薄膜の組成をICPにより定量分析したところ、ニッ
ケル、バナジウム、および窒素により構成されており、
薄膜中のニッケルに対するバナジウムの原子比(V/N
i)は14.6/85.4であった。
【0039】比較例8 比較例3と同様の方法によりスパッタリングターゲット
を得た後、実施例6と同様なスパッタリング条件でスパ
ッタリングして基板上に薄膜を形成し、低反射膜付き基
板を得た。スパッタリング条件1で得られた薄膜の組成
をICPにより定量分析したところ、ニッケル、バナジ
ウム、および酸素により構成されており、薄膜中のニッ
ケルに対するバナジウムの原子比(V/Ni)は22.
3/77.7であった。スパッタリング条件2で得られ
た薄膜の組成をICPにより定量分析したところ、ニッ
ケル、バナジウム、および窒素により構成されており、
薄膜中のニッケルに対するバナジウムの原子比(V/N
i)は23.4/76.6であった。
【0040】比較例9 比較例4と同様の方法によりスパッタリングターゲット
を得た後、実施例6と同様なスパッタリング条件でスパ
ッタリングして基板上に薄膜を形成し、低反射膜付き基
板を得た。スパッタリング条件1で得られた薄膜の組成
をICPにより定量分析したところ、ニッケル、バナジ
ウム、および酸素により構成されており、薄膜中のニッ
ケルに対するバナジウムの原子比(V/Ni)は51.
2/48.8であった。スパッタリング条件2で得られ
た薄膜の組成をICPにより定量分析したところ、ニッ
ケル、バナジウム、および窒素により構成されており、
薄膜中のニッケルに対するバナジウムの原子比(V/N
i)は53.6/46.4であった。
【0041】比較例10 比較例5と同様な方法によりスパッタリングターゲット
を得た後、実施例6と同様なスパッタリング条件でスパ
ッタリングして基板上に薄膜を形成し、低反射膜付き基
板を得た。スパッタリング条件1で得られた薄膜の組成
をICPにより定量分析したところ、ニッケルおよび酸
素により構成されていた。スパッタリング条件2で得ら
れた薄膜の組成をICPにより定量分析したところ、ニ
ッケルおよび窒素により構成されていた。
【0042】実施例12 粒径10μm以下のニッケル粉末1037g、粒径25
0μm以下のバナジウム粉末463gをポリエチレン製
のポットに入れ、乾式ボールミルにより16時間混合
し、混合粉末を製造した。この粉末を使用し実施例2と
同様の方法で焼結を行った。得られた焼結体の密度をア
ルキメデス法により測定したところ、7.65g/cm
3であった。また、焼結体の組成をICP法により分析
したところ原子比でニッケルが66%、バナジウムが3
4%であった。この焼結体を実施例1と同様な加工方法
によりターゲットとした。このターゲットを実施例1と
同様な方法でスパッタリングして基板上に薄膜を形成
し、遮光膜付き基板を得た。得られた薄膜の組成をIC
P法により分析したところ、原子比でニッケルが66.
1%、バナジウムが33.9%であった。
【0043】実施例13 粒径10μm以下のニッケル粉末1,008g、粒径2
50μm以下のバナジウム粉末492gをポリエチレン
製のポットに入れ、乾式ボールミルにより16時間混合
し、混合粉末を製造した。この粉末を使用し実施例2と
同様の方法で焼結を行った。得られた焼結体の密度をア
ルキメデス法により測定したところ、7.60g/cm
3であった。また、焼結体の組成をICP法により分析
したところ原子比でニッケルが64%、バナジウムが3
6%であった。この焼結体を実施例1と同様な加工方法
によりターゲットとした。このターゲットを実施例1と
同様な方法でスパッタリングして基板上に薄膜を形成
し、遮光膜付き基板を得た。得られた薄膜の組成をIC
P法により分析したところ、原子比でニッケルが63.
9%、バナジウムが36.1%であった。
【0044】実施例14 粒径10μm以下のニッケル粉末980g、粒径250
μm以下のバナジウム粉末520gをポリエチレン製の
ポットに入れ、乾式ボールミルにより16時間混合し、
混合粉末を製造した。この粉末を使用し実施例2と同様
の方法で焼結を行った。得られた焼結体の密度をアルキ
メデス法により測定したところ、7.51g/cm3
あった。また、焼結体の組成をICP法により分析した
ところ原子比でニッケルが62%、バナジウムが38%
であった。この焼結体を実施例1と同様な加工方法によ
りターゲットとした。このターゲットを実施例1と同様
な方法でスパッタリングして基板上に薄膜を形成し、遮
光膜付き基板を得た。得られた薄膜の組成をICP法に
より分析したところ、原子比でニッケルが62.1%、
バナジウムが37.9%であった。
【0045】実施例15 実施例12と同様の方法によりスパッタリングターゲッ
トを得た後、実施例6と同様なスパッタリング条件でス
パッタリングして基板上に薄膜を形成し、低反射膜付き
基板を得た。スパッタリング条件1で得られた薄膜の組
成をICPにより定量分析したところ、ニッケル、バナ
ジウム、および酸素により構成されており、薄膜中のニ
ッケルに対するバナジウムの原子比(V/Ni)は3
1.6/68.4であった。スパッタリング条件2で得
られた薄膜の組成をICPにより定量分析したところ、
ニッケル、バナジウム、および窒素により構成されてお
り、薄膜中のニッケルに対するバナジウムの原子比(V
/Ni)は33.1/66.9であった。
【0046】実施例16 実施例13と同様の方法によりスパッタリングターゲッ
トを得た後、実施例6と同様なスパッタリング条件でス
パッタリングして基板上に薄膜を形成し、低反射膜付き
基板を得た。スパッタリング条件1で得られた薄膜の組
成をICPにより定量分析したところ、ニッケル、バナ
ジウム、および酸素により構成されており、薄膜中のニ
ッケルに対するバナジウムの原子比(V/Ni)は3
3.5/66.5であった。スパッタリング条件2で得
られた薄膜の組成をICPにより定量分析したところ、
ニッケル、バナジウム、および窒素により構成されてお
り、薄膜中のニッケルに対するバナジウムの原子比(V
/Ni)は35.1/64.9であった。
【0047】実施例17 実施例14と同様の方法によりスパッタリングターゲッ
トを得た後、実施例6と同様なスパッタリング条件でス
パッタリングして基板上に薄膜を形成し、低反射膜付き
基板を得た。スパッタリング条件1で得られた薄膜の組
成をICPにより定量分析したところ、ニッケル、バナ
ジウム、および酸素により構成されており、薄膜中のニ
ッケルに対するバナジウムの原子比(V/Ni)は3
5.3/64.7であった。スパッタリング条件2で得
られた薄膜の組成をICPにより定量分析したところ、
ニッケル、バナジウム、および窒素により構成されてお
り、薄膜中のニッケルに対するバナジウムの原子比(V
/Ni)は37.1/62.9であった。
【0048】上記実施例1〜5、12〜14および比較
例1〜5によって得られた遮光膜付き基板について、パ
ターンニング特性、耐熱性、耐湿性、反射率特性の評価
を実施した。また、実施例6〜11、15〜17および
比較例6〜10によって得られた低反射膜付き基板につ
いて、パターンニング特性およびエッチング特性の評価
を実施した。パターンニング特性評価は、遮光膜または
低反射膜付き基板上にレジストを塗布し、フォトリソグ
ラフィー法を用いてラインアンドスペースが20μmの
パターンを形成する。その後、塩酸(7.2N)に塩化
第二鉄を5容積%加えたエッチング液を40℃に調整し
た後、パターンニングを行った。エッチング時間はジャ
ストエッチングに要した時間の2倍とした。この時のレ
ジストの密着性およびパターンニングされた遮光膜また
は低反射膜のオーバーエッチング量を評価し、レジスト
剥離が生じたもの、オーバーエッチング量が1.5μm
以上であるものをNGとした。
【0049】耐熱性の評価は、遮光膜または低反射膜付
き基板を大気中で、200℃、2時間放置後、クロスカ
ット試験を行うことによって行った。クロスカット試験
では1mm角のパターンをカッターナイフにて100個
製造し、その後セロハンテープを密着した後、剥離させ
たときにセロハンテープに付着した膜のパターン数が1
個以上であるものをNGとした。耐湿性試験は、遮光膜
または低反射膜付き基板を60℃、90%RH、120
時間放置後の表面粗さをAFMにて測定し、試験前後で
の表面粗さ(Rmax)が変化したものをNGとした。
反射率安定性は、遮光膜付き基板を2時間煮沸した後、
波長550nmでの反射率を測定し、試験前後での反射
率変化量が5.0%以上のものNGとした。エッチング
特性評価は、パターンニング特性と同様に低反射膜付き
基板上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィー法を
用いてラインアンドスペースが20μmのパターンを形
成する。その後、塩酸(7.2N)に塩化第二鉄を5容
積%加えたエッチング液を40℃に調整した後、パター
ンニングを行った。エッチング時間は、ジャストエッチ
ングに要した時間の2倍とした。その後、レジストを除
去しエッチングされたパターンの吸収層の幅(a)と遮
光膜の幅(b)をSEMにて測定し、(a−b)/2の
絶対値を段差量として定義した。段差量が0.5μm以
上であるものや、SEM観察時に基板上にエッチング残
り(残渣)がある場合は、パネルにした際のコントラス
トに悪影響を及ぼす可能性があるためNGとした。ま
た、実施例6〜11、15〜17および比較例6〜10
で用いたターゲットについて、放電特性試験を行った。
放電特性試験は、各々のターゲットを用いて、成膜パワ
ーを400W、成膜ガス圧を1.1×10-3torr、
Arガス流量を120SCCMの条件で酸素ガス流量を
0から15SCCMに変化させたときのスパッタリング
レートの変化を測定することにより行った。この時のス
パッタリングレートの変化が0.025nm/sec以
上の場合、低反射膜を製造する場合反射特性に影響が生
じるためNGとした。また、実施例および比較例中のI
CP法による分析方法は、試料を王水中で分解した後I
CP発光法によりNiとVの定量分析を行った。
【0050】実施例1〜5、12〜14および比較例1
〜5の遮光膜付き基板の評価結果を表1に、実施例6〜
11、15〜17および比較例6〜10の低反射膜付き
基板の評価結果を表2にそれぞれ示す。表2には、ター
ゲットの放電特性試験として測定したスパッタレート変
化も併せて示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】表1に示すように、遮光膜のパターンニン
グ特性、耐熱性、耐湿性については、実施例1から実施
例5、実施例12から実施例14のいずれにおいても、
NGは発生しなかった。これに対して、バナジウムの含
有量が原子比で24%以下のターゲットを用いた比較例
1〜3および比較例5では、いずれの試験結果もNGで
あった。また、バナジウムの含有量が原子比で55%の
ターゲットを用いた比較例4では、レジスト剥離性、耐
熱性、耐湿性は良好であったが、遮光層のエッチングに
長時間が必要であった。遮光膜の煮沸前後での反射率変
化量についてはバナジウム含有量が原子比で28%以上
のターゲットを用いた実施例1〜5、実施例12〜14
の遮光膜は、反射率の変化量が5%以下であった。バナ
ジウム含有量が原子比で34%以上のターゲットを用い
た実施例4〜5、実施例12〜14の遮光膜は反射率の
変化量が2%以下と良好であった。さらにバナジウム含
有量が原子比で40%以上のターゲットを用いた実施例
4〜5の遮光膜は反射率の変化量が1.5%未満と特に
良好であった。
【0054】また、表2に示すように、低反射膜のパタ
ーンニング特性および放電特性は、実施例6から実施例
11、実施例15から実施例17のいずれにおいても良
好であった。これに対して、バナジウムの含有量が原子
比で24%以下のターゲットを用いた比較例6〜8およ
び比較例10では、レジストの剥離が生じ、またオーバ
ーエッチング量が1.5μm以上であった。バナジウム
の含有量が原子比で55%のターゲットを用いた比較例
9では、レジスト剥離性、放電特性は良好であったが、
遮光層のエッチングにかかる時間が長く、また、時間を
かけてエッチングを行った後においても、吸収層のパタ
ーンニングができなかった。低反射膜のエッチング特性
については、バナジウム含有量が原子比で28%以上の
ターゲットを用いた実施例6〜11、実施例15〜17
の低反射膜は、パターンニング後の段差量が0.30μ
m以下であった。バナジウム含有量が原子比で34%以
上のターゲットを用いた実施例10〜11、実施例15
〜17の低反射膜は反射率の変化量が0.20μm以下
と良好であった。さらにバナジウム含有量が原子比で4
0%以上のターゲットを用いた実施例15〜17の遮光
膜は反射率の変化量が0.10μm未満と特に良好であ
った。これに対して、バナジウムの含有量が原子比で2
4%以下のターゲットを用いた比較例6〜8では、段差
料が0.5μm、または残渣が基板上に確認された。ま
た、実施例2の遮光膜付き基板および実施例7の低反射
膜付き基板について、波長400nmから700nmの
範囲における反射率の測定を実施した結果を図1および
図2に示すが、これらの反射率特性は従来のクロム系の
もつ反射率と同等以上の特性を示した。
【0055】
【発明の効果】本発明のニッケル・バナジウム系の遮光
膜および低反射膜は、クロムを一切使用しないため、パ
ターンニング工程の際に環境を汚染する有害物質を排出
することがない。また、ターゲット中のバナジウム組成
を調整することにより、従来のクロム系と同等以上の光
学特性、パターンニング特性、耐熱性、耐湿性、反射率
特性、エッチング特性を有する遮光膜または低反射膜を
得ることができ、かつ、これらの遮光膜付き基板または
低反射膜付き基板を、従来のプロセスを大幅に変更する
ことなく得ることができる。また、それらをフラットパ
ネルディスプレイのBM基板として用い、フラットパネ
ルディスプレイを有する機器に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で得られた遮光膜付き基板の反射率測
定結果を示す図である。
【図2】実施例7で得られた低反射膜付き基板の反射率
測定結果を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 1/04 C22C 1/04 E 27/02 101 27/02 101Z C23C 14/34 C23C 14/34 A G02B 5/00 G02B 5/00 B 5/20 101 5/20 101 (72)発明者 鈴木 光悦 東京都大田区矢口3−13−7 ジオマテッ ク株式会社内 (72)発明者 黒澤 聡 神奈川県厚木市長谷1540−21 (72)発明者 満 俊宏 神奈川県川崎市麻生区王禅寺西7−9−4

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 実質的にニッケルおよびバナジウムから
    なり、バナジウムを原子比で26〜52%含有している
    ことを特徴とする薄膜形成用合金。
  2. 【請求項2】 実質的にニッケルおよびバナジウムから
    なり、バナジウムを原子比で26〜52%含有している
    ことを特徴とする金属焼結体。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の薄膜形成用合金からな
    るスパッタリングターゲット。
  4. 【請求項4】 請求項2に記載の金属焼結体からなるス
    パッタリングターゲット。
  5. 【請求項5】 ニッケルとバナジウムとの合金、または
    ニッケルとバナジウムとの酸化物、窒化物若しくは酸窒
    化物のいずれか一つの薄膜からなる遮光膜であって、薄
    膜中のニッケルに対するバナジウムの原子比(バナジウ
    ム/ニッケル)が26/74〜52/48であることを
    特徴とする遮光膜。
  6. 【請求項6】 薄膜中のニッケルに対するバナジウムの
    原子比(バナジウム/ニッケル)が28/72〜50/
    50である請求項5に記載の遮光膜。
  7. 【請求項7】 薄膜が請求項3に記載のスパッタリング
    ターゲットを用いて形成されたものである請求項5また
    は請求項6に記載の遮光膜。
  8. 【請求項8】 薄膜が請求項4に記載のスパッタリング
    ターゲットを用いて形成されたものである請求項5また
    は請求項6に記載の遮光膜。
  9. 【請求項9】 ニッケルとバナジウムとの酸化物、窒化
    物または酸窒化物から選ばれる材質より得られる薄膜を
    一層以上積層した積層膜からなる吸収層と、ニッケルと
    バナジウムとの合金、またはニッケルとバナジウムとの
    酸化物、窒化物若しくは酸窒化物から選ばれる材質より
    得られる薄膜を一層以上積層した積層膜からなる遮光層
    とを、この順に積層してなる低反射膜であって上記吸収
    層および遮光層を構成する薄膜中のニッケルに対するバ
    ナジウムの原子比(バナジウム/ニッケル)が26/7
    4〜52/48であることを特徴とする低反射膜。
  10. 【請求項10】 薄膜中のニッケルに対するバナジウム
    の原子比(バナジウム/ニッケル)が26/74〜49
    /51である請求項9に記載の低反射膜。
  11. 【請求項11】 薄膜が請求項3に記載のスパッタリン
    グターゲットを用いて形成されたものである請求項9ま
    たは請求項10に記載の低反射膜。
  12. 【請求項12】 薄膜が請求項4に記載のスパッタリン
    グターゲットを用いて形成されたものである請求項9ま
    たは請求項10に記載の低反射膜。
  13. 【請求項13】 請求項5〜8のいずれか1項に記載の
    遮光膜が基板上に形成されていることを特徴とする遮光
    膜付き基板。
  14. 【請求項14】 請求項9〜12のいずれか1項に記載
    の低反射膜が基板上に形成されていることを特徴とする
    低反射膜付き基板。
  15. 【請求項15】 基板が透明である請求項13に記載の
    遮光膜付き基板。
  16. 【請求項16】 基板が透明である請求項14に記載の
    低反射膜付き基板。
  17. 【請求項17】 請求項15に記載の遮光膜付き基板を
    用いてなることを特徴とする機器。
  18. 【請求項18】 請求項16に記載の低反射膜付き基板
    を用いてなることを特徴とする機器。
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