JP2001225654A - 四輪駆動車の駆動力配分制御装置 - Google Patents

四輪駆動車の駆動力配分制御装置

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JP2001225654A
JP2001225654A JP2000040445A JP2000040445A JP2001225654A JP 2001225654 A JP2001225654 A JP 2001225654A JP 2000040445 A JP2000040445 A JP 2000040445A JP 2000040445 A JP2000040445 A JP 2000040445A JP 2001225654 A JP2001225654 A JP 2001225654A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 計測の容易な車輪速センサ信号に基づく前後
回転数差をクラッチ滑り情報として用いながらも、クラ
ッチ滑りを過大評価することによるトルク配分クラッチ
保護の早期作動を防止し、前後トルク配分制御機能を十
分に生かすことができる四輪駆動車の駆動力配分制御装
置を提供すること。 【解決手段】 車輪速センサ11,12,13,14か
らの信号に基づいて前後回転数差△Vwを計算する前後
回転数差計算部103と、前後回転数差△Vwにフィル
タをかけて前後回転数差フィルタ値△Vwfを演算する
前後回転数差フィルタ値演算部111dと、前後回転数
差フィルタ値△Vwfをクラッチ滑り推定値とし、前後
回転数差フィルタ値△Vwfに基づいて求めたクラッチ
負荷がクラッチ保護判定しきい値以上になるとクラッチ
完全解放によるクラッチ保護機能を作動させるクラッチ
保護判別部111eと、をトルク配分コントローラ10
に設けた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジントルクを
前輪と後輪に配分する駆動系に設けられたトルク配分ア
クチュエータにより前輪と後輪に伝達されるトルク配分
比が制御される四輪駆動車の駆動力配分制御装置の技術
分野に属する。
【0002】
【従来の技術】従来、四輪駆動車の駆動力配分制御装置
としては、例えば、特開平11−278080号公報に
記載のものが知られている。
【0003】この公報には、入力トルク算出手段及び前
後回転数差算出手段により得られた入力トルク及び前後
回転数差に基づいて、電磁クラッチの伝達トルク異常を
判定し、異常であると判定されると、フェール処理を実
行する技術が記載されている。
【0004】このような四輪駆動車の駆動力配分制御装
置では、トルク配分クラッチに大きなトルクを加えてい
る時にクラッチ滑りが発生すると、クラッチが発熱して
クラッチ特性が劣化する。
【0005】そこで、これを防止するため、トルク配分
クラッチへの印加トルクを入力トルクにより推定し、ま
た、トルク配分クラッチの滑りを前後回転数差により推
定し、印加トルクと滑り量からクラッチ負荷を演算し、
クラッチ負荷演算値が所定値以上のときに、トルク配分
クラッチを保護(例えば、クラッチの完全解放あるいは
クラッチの完全締結)することが考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記ク
ラッチ保護技術にあっては、トルク配分クラッチの滑り
量をクラッチ部での相対回転の検出により得るのではな
く、車輪部に設けられた車輪速センサからの車輪速情報
に基づいて演算された前後回転数差によりクラッチ滑り
量を推定するものであるため、車輪からトルク配分クラ
ッチまでの駆動系(プロペラシャフトやドライブシャフ
ト)による応答遅れや、駆動系の剛性による車輪速変動
や路面凹凸等による車輪速変動の影響を受け、トルク配
分クラッチの滑りを誤検出するという問題があった。
【0007】すなわち、車輪部で検出される前後回転数
差の発生に対し、車輪からトルク配分クラッチまでの駆
動系を伝達する時間だけ応答が遅れてトルク配分クラッ
チ部で滑りが発生するし、また、駆動系のねじれ振動に
より車輪部で検出される前後回転数差が振動的となった
り、さらに、路面凹凸等による車輪外乱ノイズがそのま
ま車輪部で検出される前後回転数差となる。つまり、車
輪部で検出される前後回転数差をクラッチ滑りの推定情
報とした場合、安定した前後回転数差が検出される定常
状態では問題がないが、前後回転数差の発生初期や駆動
系ねじれ振動の発生時や車輪外乱ノイズ入力時等の前後
回転数差が変化する過渡期において、クラッチ滑りを過
大評価し、クラッチ滑りの推定精度が低くなってしま
う。
【0008】この結果、実際にはクラッチ保護に入るべ
きレベルのクラッチ滑りが発生していないのに、クラッ
チ滑りの過大評価により早期にトルク配分クラッチの保
護作動に入ってしまい、本来の前後トルク配分制御機能
(4WD機能)が低下してしまう。
【0009】本発明が解決しようとする課題は、計測の
容易な車輪速センサ信号に基づく前後回転数差をクラッ
チ滑り情報として用いながらも、クラッチ滑りを過大評
価することによるトルク配分クラッチ保護の早期作動を
防止し、前後トルク配分制御機能を十分に生かすことが
できる四輪駆動車の駆動力配分制御装置を提供すること
にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明で
は、エンジントルクを前輪と後輪に配分する駆動系に設
けられたトルク配分クラッチに対するトルク配分コント
ローラからの制御指令により前輪と後輪に伝達されるト
ルク配分比が制御される四輪駆動車の駆動力配分制御装
置において、車輪速センサからの信号に基づいて前後回
転数差を計算する前後回転数差計算手段と、前後回転数
差計算値にフィルタをかけて前後回転数差フィルタ値を
演算する前後回転数差フィルタ値演算手段と、前後回転
数差フィルタ値をクラッチ滑り推定値とし、前後回転数
差フィルタ値に基づいて求めたクラッチ負荷がクラッチ
保護判定しきい値以上になるとクラッチ完全解放あるい
は相対滑りのない完全締結によるクラッチ保護機能を作
動させるクラッチ保護制御手段と、を前記トルク配分コ
ントローラに設けたことを特徴とする。
【0011】請求項2記載の発明では、請求項1記載の
四輪駆動車の駆動力配分制御装置において、前記前後回
転数差フィルタ値演算手段を、前後回転数差計算値が発
生してから設定時間の間は前回値をそのまま保持するフ
ィルタ処理により前後回転数差フィルタ値を求める手段
としたことを特徴とする。
【0012】請求項3記載の発明では、請求項2記載の
四輪駆動車の駆動力配分制御装置において、前記前後回
転数差フィルタ値演算手段を、前輪速と後輪速の大小関
係の反転にかかわらず、前後回転数差計算値が発生して
から設定時間の間は前回値をそのまま保持するフィルタ
処理により前後回転数差フィルタ値を求める手段とした
ことを特徴とする。
【0013】請求項4記載の発明では、請求項1乃至請
求項3記載の四輪駆動車の駆動力配分制御装置におい
て、前記クラッチ保護制御手段を、トルク配分クラッチ
の締結により伝達する最適な目標トルクを運転状態に応
じて演算する目標トルク演算手段からの目標トルクと、
前後回転数差フィルタ値演算手段からの前後回転数差フ
ィルタ値と、クラッチ締結継続時間によりクラッチ負荷
積算値を求め、クラッチ負荷積算値がクラッチ保護判定
しきい値以上になると目標トルクをゼロとし、クラッチ
完全解放によるクラッチ保護機能を作動させる手段とし
たことを特徴とする。
【0014】
【発明の作用および効果】請求項1記載の発明にあって
は、エンジントルクを前輪と後輪に配分する駆動系に設
けられたトルク配分クラッチに対するトルク配分コント
ローラからの制御指令により前輪と後輪に伝達されるト
ルク配分比が制御される。このとき、前後回転数差計算
手段において、車輪速センサからの信号に基づいて前後
回転数差が計算され、前後回転数差フィルタ値演算手段
において、前後回転数差計算値にフィルタをかけて前後
回転数差フィルタ値が演算され、クラッチ保護制御手段
において、前後回転数差フィルタ値をクラッチ滑り推定
値とし、前後回転数差フィルタ値に基づいて求めたクラ
ッチ負荷がクラッチ保護判定しきい値以上になるとクラ
ッチ完全解放あるいは相対滑りのない完全締結によるク
ラッチ保護機能が作動することになる。すなわち、トル
ク配分クラッチの滑りを推定するにあたって、車輪速セ
ンサからの信号に基づいて計算された前後回転数差をそ
のまま用いるのではなく、前後回転数差計算値をフィル
タ処理した前後回転数差フィルタ値を用いるようにして
いるため、駆動系のねじれ振動・車輪外乱ノイズ等によ
る影響を残す前後回転数差計算値から、振動やノイズ影
響部分がカットされた前後回転数差フィルタ値、つま
り、トルク配分クラッチ部での実滑りに近い推定値とな
る。よって、計測の容易な車輪速センサ信号に基づく前
後回転数差をクラッチ滑り情報として用いながらも、前
後回転数差計算値をクラッチ滑り推定値とする場合のよ
うなクラッチ滑りを過大評価することによるトルク配分
クラッチ保護の早期作動が防止され、前後トルク配分制
御機能を十分に生かすことができる。
【0015】請求項2記載の発明にあっては、前後回転
数差フィルタ値演算手段において、前後回転数差計算値
が発生してから設定時間の間は前回値をそのまま保持す
るフィルタ処理により前後回転数差フィルタ値が求めら
れる。よって、前後回転数差が発生してから設定時間の
間は、前後回転数差フィルタ値はほぼゼロの値が維持さ
れることになり、前後回転数差の発生から設定時間まで
は駆動系のねじれ振動や車輪外乱ノイズがカットされる
し、また、前後回転数差の発生から実際のクラッチ滑り
発生までの応答遅れにも対応できるという高精度のクラ
ッチ滑り情報により、適正なタイミングでトルク配分ク
ラッチ保護を作動させることができる。
【0016】請求項3記載の発明にあっては、前後回転
数差フィルタ値演算手段において、前輪速と後輪速の大
小関係の反転にかかわらず、前後回転数差計算値が発生
してから設定時間の間は前回値をそのまま保持するフィ
ルタ処理により前後回転数差フィルタ値が求められる。
よって、ねじれ振動時や外乱入力時等で、前輪速大で後
輪速小という関係が前輪速小で後輪速大という関係にな
ることが繰り返される前後回転数差反転時、前後回転数
差フィルタ値とクラッチ印加トルクとを掛け合わせるこ
とによりクラッチ負荷を算出するとき、反転領域のクラ
ッチ負荷の値も正の値としてトータルのクラッチ負荷に
加算でき、前後回転数差の反転にかかわらず高精度のク
ラッチ負荷情報を得ることができる。
【0017】請求項4記載の発明にあっては、クラッチ
保護制御手段において、トルク配分クラッチの締結によ
り伝達する最適な目標トルクを運転状態に応じて演算す
る目標トルク演算手段からの目標トルクと、前後回転数
差フィルタ値演算手段からの前後回転数差フィルタ値
と、クラッチ締結継続時間によりクラッチ負荷積算値が
求められ、クラッチ負荷積算値がクラッチ保護判定しき
い値以上になると目標トルクがゼロとされ、クラッチ完
全解放によるクラッチ保護機能が作動する。よって、ト
ルク配分クラッチへの印加トルクを直接検出する必要な
く、目標トルクと前後回転数差フィルタ値とクラッチ締
結継続時間を用いたクラッチ負荷積算値により、容易に
クラッチ保護が必要かどうかを見極めるクラッチ負荷情
報を得ることができ、しかも、クラッチ保護必要時には
クラッチ負荷ゼロのクラッチ完全解放により確実にトル
ク配分クラッチを保護することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】(実施の形態1)
【0019】実施の形態1は請求項1〜4に記載の発明
に対応する四輪駆動車の駆動力配分制御装置である。
【0020】まず、構成を説明する。
【0021】図1は実施の形態1における四輪駆動車の
駆動力配分制御装置を示す全体システム図で、1はエン
ジン、2は自動変速機、3はフロントディファレンシャ
ル、4はリヤディファレンシャル、5は右前輪、6は左
前輪、7は右後輪、8は左後輪、9はトルク配分クラッ
チ、10はトルク配分コントローラ、11は右前輪速セ
ンサ、12は左前輪速センサ、13は右後輪速センサ、
14は左後輪速センサ、15はアクセル開度センサ、1
6はエンジン回転センサ、17はATコントローラであ
る。
【0022】この実施の形態1の発明が適用される四輪
駆動車は、左右の前輪5,6へはエンジン駆動力が直接
伝達され、左右の後輪7,8へは多板クラッチ構造によ
るトルク配分クラッチ9を介してエンジン駆動力が伝達
される前輪駆動ベースの四輪駆動車である。即ち、トル
ク配分クラッチ9が締結解放状態であれば、前輪:後輪
=100:0のトルク配分比となり、トルク配分クラッ
チ9がエンジントルクの1/2トルク以上にてにて締結
されていれば、前輪:後輪=50:50の等トルク配分
比となり、トルク配分コントローラ10からのトルク配
分クラッチ9に対する制御指令により、前輪5,6と後
輪7,8に伝達されるトルク配分比が、前輪:後輪=1
00〜50:0〜50の範囲にてトルク配分クラッチ9
の締結トルクに応じて可変に制御される。
【0023】前記トルク配分コントローラ10は、各車
輪速センサ11,12,13,14からの車輪速信号
と、アクセル開度センサ15からのアクセル開度信号
と、エンジン回転センサ16からのエンジン回転信号
と、ATコントローラ17からのギア位置信号等を入力
し、決められた制御則にしたがった演算処理を行い、そ
の演算処理結果による制御指令をトルク配分クラッチ9
に出力する。
【0024】図2は実施の形態1の駆動力配分制御装置
に採用されたトルク配分コントローラ10を示す制御ブ
ロック図である。
【0025】4輪車輪速計算部100では、各車輪速セ
ンサ11,12,13,14からの車輪速信号に基づい
て前輪右車輪速度VwFRと前輪左車輪速度VwFLと後輪
右車輪速度VwRRと後輪左車輪速度VwRLが計算され
る。尚、この計算部100は、アンチスキッドブレーキ
システム(ABS)が搭載された車両では、ABSコン
トローラでの計算結果を流用することで省略しても良
い。
【0026】推定車体速計算部101では、各車輪速度
VwFR,VwFL,VwRR,VwRLに基づいて推定車体速
VFFが計算される。
【0027】ゲイン計算部102では、計算された推定
車体速VFFとゲインマップによりゲインKhが計算され
る。
【0028】前後回転数差計算部103(前後回転数差
計算手段)では、左右前輪車輪速度VwFR,VwFLの平
均値と左右後輪車輪速度VwRR,VwRLの平均値との差
により前後回転数差△Vwが計算される。
【0029】前後回転数差トルク計算部104では、前
輪左右輪速差△VwFによりゲインKDFが計算され、
Kh×KDFをトータルゲインとして前後回転数差△V
wに応じた前後回転数差トルクT△Vが計算される。
【0030】旋回半径計算部105では、左右後輪7,
8の車輪間隔であるトレッドtと後輪右輪速度VwRRと
後輪左輪速度VwRLにより旋回半径Rが計算される。
【0031】アクセル開度計算部106では、アクセル
開度センサ15からのセンサ信号に基づいてアクセル開
度ACCが計算される。
【0032】イニシャルトルク計算部107では、推定
車体速VFFによりイニシャルトルクTVが計算される。
このイニシャルトルクTVは、VFF=0の時に最も高く
推定車体速VFFが大きくなるにしたがって小さなトルク
で与えられる。
【0033】駆動力マップトルク計算部108では、推
定車体速VFFと旋回半径Rにより駆動力マップトルクT
Accが計算される。この駆動力マップトルクTAcc
は、推定車体速VFFが20km/h以下の領域で5km
/h前後の推定車体速VFFでピークとなるようなトルク
特性で与えられると共に、旋回半径Rをパラメータと
し、旋回半径が大きいほど大きなトルクで与えられる。
【0034】アクセル開度感応トルク計算部109で
は、アクセル開度ACCと旋回半径Rによりアクセル開
度感応トルクTSが計算される。このアクセル開度感応
トルクTSは、低開度域で上昇し、中開度域で一定で、
高開度域で上昇するトルク特性により与えられると共
に、旋回半径Rをパラメータとし、旋回半径が大きいほ
ど大きなトルクで与えられる。
【0035】第1目標トルク選択部110では、前後回
転数差トルクT△VとイニシャルトルクTVと駆動力マ
ップトルクTAccとアクセル開度感応トルクTSのう
ちセレクトハイにより第1目標トルクT1が選択され
る。
【0036】クラッチ保護ロジック処理部111(クラ
ッチ保護制御手段)では、前記前後回転数差計算部10
3からの前後回転数差△Vwと前記第1目標トルク選択
部110からの第1目標トルクT1を入力し、これらか
ら求められたクラッチ負荷積算値とクラッチ保護判定し
きい値とが比較され、クラッチ保護(2WD)か前後ト
ルク配分制御(4WD)かが判定される。
【0037】第2目標トルク選択部112では、前記ク
ラッチ保護ロジック処理部111において、クラッチ保
護との判別時には、第2目標トルクT2としてT2=0
が選択され、前後トルク配分制御との判別時には、第2
目標トルクT2としてT2=T1が選択される。
【0038】最終目標トルク決定部113では、第2目
標トルク選択部112により選択された第2目標トルク
T2に対しトルク増加/減少のフィルタ処理を行って最
終目標トルクTが決定される。
【0039】最終目標トルク〜電流変換部114では、
最終目標トルクTに対応する電流値Iに電流変換され
る。
【0040】最終出力判断部115では、2WDモード
(I=0)の判断時以外は最終目標トルク〜電流変換部
114により変換された電流値Iが、トルク配分クラッ
チ9内のソレノイドに出力される。
【0041】図3は実施の形態1の駆動力配分制御装置
に採用されたトルク配分コントローラ10の第1目標ト
ルク選択部110,クラッチ保護ロジック処理部111
及び第2目標トルク選択部112を示す制御ブロック図
である。
【0042】前記クラッチ保護ロジック処理部111
は、前後回転数差△Vwを読み込む前後回転数差読み込
み部111aと、前後回転数差△Vwの反転を判断する
と共に反転フラグFDLTPを演算する前後回転数差反
転判断部111bと、反転タイマをセットあるいはクリ
アする反転タイマ部111cと、前後回転数差△Vwに
フィルタ処理を施し前後回転数差フィルタ値△Vwfを
演算する前後回転数差フィルタ値演算部111d(前後
回転数差フィルタ値演算手段)と、第1目標トルクT1
と前後回転数差フィルタ値△Vwfとクラッチ締結継続
時間tによりクラッチ負荷積算値を求め、このクラッチ
負荷積算値がクラッチ保護判定しきい値とが比較され、
クラッチ保護(2WD)か前後トルク配分制御(4W
D)かを判定するクラッチ保護判別部111eを有して
いる。なお、クラッチ保護判定しきい値特性は、クラッ
チ保護判別部111eに示すように、クラッチ負荷T1
×△Vwfが大きいほどクラッチ締結継続時間tが短く
なるというように、クラッチ負荷T1×△Vwfとクラ
ッチ締結継続時間tとを掛け合わせた総熱エネルギ量が
一定となる反比例特性により与えられている。
【0043】次に、作用を説明する。 [クラッチ保護制御処理]
【0044】図4はトルク配分コントローラ10の第1
目標トルク選択部110,クラッチ保護ロジック処理部
111及び第2目標トルク選択部112において行われ
るクラッチ保護制御処理の流れを示すフローチャート
で、以下、各ステップについて説明する。
【0045】ステップ40では、前後回転数差計算部1
03から前後回転数差△Vwが読み込まれる。
【0046】ステップ41では、今回読み込まれた前後
回転数差△Vwと前回読み込まれた前後回転数差△Vw
とが正負の反転があるかどうかにより前後回転数差反転
フラグがセットまたはクリアされる。
【0047】ステップ42では、ステップ41での前後
回転数差反転フラグのセットまたはクリアに応じて前後
回転数差反転タイマがセットまたはクリアされる。
【0048】ステップ43では、前後回転数差フィルタ
値△Vwfが演算される。ここで、前後回転数差△Vw
に対するフィルタ処理は、図5に示すように、車輪速セ
ンサ信号による前後回転数差△Vwは、駆動系ねじれ振
動や外乱等により5〜7Hzの周波数にてハンチングす
ることが多い。よって、この5〜7Hzの周波数による
前後回転数差△Vwのハンチングを抑えるため、前後回
転数差△Vwが発生してから設定時間(例えば、150
ms)は、各制御周期毎にて前回の値(ほぼゼロの値)
を維持して前後回転数差フィルタ値△Vwfとし、設定
時間が経過すると規定された最大変化量による勾配にて
前後回転数差△Vwに近づく値を前後回転数差フィルタ
値△Vwfとし、さらに、前後回転数差△Vwの値に一
致すると前後回転数差△Vwの値をそのまま前後回転数
差フィルタ値△Vwfとする処理によりなされる。
【0049】ステップ44では、第1目標トルク選択部
110において、第1目標トルクT1が選択される。
【0050】ステップ45では、第1目標トルクT1と
前後回転数差フィルタ値△Vwfとクラッチ締結継続時
間tによりクラッチ負荷積算値が求められ、このクラッ
チ負荷積算値がクラッチ保護判定しきい値とが比較さ
れ、クラッチ保護(2WD)か前後トルク配分制御(4
WD)かを判定するクラッチ保護制御が行われる。
【0051】[クラッチ保護制御作用]
【0052】変動する前後回転数差△Vwが発生する時
のクラッチ保護制御作用について、図6に示す一例に基
づいて説明する。
【0053】まず、車輪速センサ11,12,13,1
4からのセンサ信号により求められた前後回転数差△V
wは、図6の上段点線特性に示すように、前輪速が大き
な正の前後回転数差△Vwがでるモードと、後輪速が大
きな負の前後回転数差△Vwがでるモードとが繰り返さ
れるハンチング状態である。
【0054】これに対し、前後回転数差△Vwが発生し
てから設定時間は前回の値を維持し、設定時間が経過す
ると最大変化量を規定し、前後回転数差△Vwの値に一
致すると追従させるフィルタ処理により得られた前後回
転数差フィルタ値△Vwfは、図6の上段実線特性に示
すように、周期が長い1番目の前後回転数差領域では、
設定時間経過後に少しの前後回転数差フィルタ値△Vw
fが発生し、周期が短い2番目,3番目,4番目の前後
回転数差領域では、設定時間内であることから前後回転
数差フィルタ値△Vwfはゼロが維持され、周期が長く
大きく前後回転数差△Vwが発生する5番目の前後回転
数差領域では、設定時間経過後に前後回転数差フィルタ
値△Vwfが発生する。
【0055】また、図6の中段に示す負荷演算値特性を
みると、車輪速センサ11,12,13,14からのセ
ンサ信号により求められた前後回転数差△Vwと第1目
標トルクT1による負荷演算値P(=△Vw×T1)
は、前後回転数差△Vwが発生する5つの領域のうち、
負側領域のみを反転させた連なった山形特性を示すのに
対し、前後回転数差フィルタ値△Vwfと第1目標トル
クT1による負荷演算値P(=△Vwf×T1)は、前
後回転数差フィルタ値△Vwfの特性と同様に、1番目
の前後回転数差領域と5番目の前後回転数差領域で負荷
演算値がでる特性を示す。
【0056】さらに、図6の下段に示す負荷積算値特性
をみると、車輪速センサ11,12,13,14からの
センサ信号により求められた前後回転数差△Vwと第1
目標トルクT1とクラッチ締結継続時間tによる負荷積
算値(=△Vw×T1×t)は、前後回転数差△Vwが
発生する5つの領域での負荷演算値Pがそのまま積算さ
れることで、前後回転数差が発生するt0の時点から早
期の時点t1にて負荷積算値がクラッチ保護判定しきい
値以上となり、トルク配分クラッチ9を完全解放させて
前輪駆動による2WDとするクラッチ保護作動に入るこ
とになる。
【0057】これに対し、前後回転数差フィルタ値△V
wfと第1目標トルクT1とクラッチ締結継続時間tに
よる負荷積算値(=△Vwf×T1×t)は、前後回転
数差が発生するt0の時点から適正タイミングを経過し
た時点t2にて負荷積算値がクラッチ保護判定しきい値
以上となり、トルク配分クラッチ9を完全解放させて前
輪駆動による2WDとするクラッチ保護作動に入ること
になる。
【0058】すなわち、トルク配分クラッチ9の滑りを
推定するにあたって、車輪速センサ11,12,13,
14からの信号に基づいて計算された前後回転数差△V
wをそのまま用いるのではなく、前後回転数差△Vwを
フィルタ処理した前後回転数差フィルタ値△Vwfを用
いるようにしているため、駆動系のねじれ振動・車輪外
乱ノイズ等による影響を残す前後回転数差計算値から、
振動やノイズ影響部分がカットされた前後回転数差フィ
ルタ値△Vwf、つまり、トルク配分クラッチ9部での
実滑りに近い推定値を得ることができる。
【0059】また、前後回転数差フィルタ値演算部11
1dにおいて、前後回転数差△Vwが発生してから設定
時間の間は前回値をそのまま保持するフィルタ処理によ
り前後回転数差フィルタ値△Vwfを求めるようにして
いるため、前後回転数差△Vwが発生してから設定時間
の間は、前後回転数差フィルタ値△Vwfはほぼゼロの
値が維持されることになり、前後回転数差△Vwの発生
から設定時間までは駆動系のねじれ振動や車輪外乱ノイ
ズがカットされるし、また、前後回転数差△Vwの発生
から実際のクラッチ滑り発生までの応答遅れにも対応で
きるという高精度のクラッチ滑り情報を得ることができ
る。
【0060】さらに、クラッチ保護ロジック処理部11
1には、前後回転数差反転判断部111b及び反転タイ
マ部111cを有し、前輪速と後輪速の大小関係の反転
にかかわらず、前後回転数差△Vwが発生してから設定
時間の間は前回値をそのまま保持するフィルタ処理によ
り前後回転数差フィルタ値△Vwfが求められるため、
前後回転数差フィルタ値△Vwfと第1目標トルクT1
とを掛け合わせることによりクラッチ負荷を算出すると
き、反転領域のクラッチ負荷の値も正の値としてトータ
ルのクラッチ負荷に加算でき、前後回転数差△Vwの反
転にかかわらず高精度のクラッチ負荷情報を得ることが
できる。
【0061】加えて、クラッチ保護ロジック処理部11
1において、トルク配分クラッチ9の締結により伝達す
る最適な第1目標トルクT1を運転状態に応じて演算す
る第1目標トルク選択部110からの第1目標トルクT
1と、前後回転数差フィルタ値演算部111dからの前
後回転数差フィルタ値△Vwfと、クラッチ締結継続時
間tによりクラッチ負荷積算値が求められ、クラッチ負
荷積算値がクラッチ保護判定しきい値以上になると第2
目標トルクT2がゼロとされ、クラッチ完全解放による
クラッチ保護機能が作動するため、トルク配分クラッチ
9への印加トルクを直接検出する必要なく、第1目標ト
ルクT1と前後回転数差フィルタ値△Vwfとクラッチ
締結継続時間tを用いたクラッチ負荷積算値により、容
易にクラッチ保護が必要かどうかを見極めるクラッチ負
荷情報を得ることができ、しかも、クラッチ保護必要時
にはクラッチ負荷ゼロのクラッチ完全解放により確実に
トルク配分クラッチを保護することができる。
【0062】次に、効果を説明する。
【0063】(1) 車輪速センサ11,12,13,14
からの信号に基づいて前後回転数差△Vwを計算する前
後回転数差計算部103と、前後回転数差△Vwにフィ
ルタをかけて前後回転数差フィルタ値△Vwfを演算す
る前後回転数差フィルタ値演算部111dと、前後回転
数差フィルタ値△Vwfをクラッチ滑り推定値とし、前
後回転数差フィルタ値△Vwfに基づいて求めたクラッ
チ負荷がクラッチ保護判定しきい値以上になるとクラッ
チ完全解放によるクラッチ保護機能を作動させるクラッ
チ保護判別部111eと、をトルク配分コントローラ1
0に設けたため、計測の容易な車輪速センサ信号に基づ
く前後回転数差△Vwをクラッチ滑り情報として用いな
がらも、前後回転数差△Vwをそのままクラッチ滑り推
定値とする場合のようなクラッチ滑りを過大評価するこ
とによるトルク配分クラッチ保護の早期作動が防止さ
れ、前後トルク配分制御機能を十分に生かすことができ
る。
【0064】(2) 前後回転数差フィルタ値演算部111
dを、前後回転数差△Vwが発生してから設定時間の間
は前回値をそのまま保持するフィルタ処理により前後回
転数差フィルタ値△Vwfを求める手段としたため、前
後回転数差△Vwの発生から設定時間までは駆動系のね
じれ振動や車輪外乱ノイズがカットされるし、また、前
後回転数差△Vwの発生から実際のクラッチ滑り発生ま
での応答遅れにも対応できるという高精度のクラッチ滑
り情報により、適正なタイミングでトルク配分クラッチ
保護を作動させることができる。
【0065】(3) 前後回転数差フィルタ値演算部111
dを、前輪速と後輪速の大小関係の反転にかかわらず、
前後回転数差△Vwが発生してから設定時間の間は前回
値をそのまま保持するフィルタ処理により前後回転数差
フィルタ値△Vwfを求める手段としたため、ねじれ振
動時や外乱入力時等で、前輪速大で後輪速小という関係
が前輪速小で後輪速大という関係になることが繰り返さ
れる前後回転数差反転時、前後回転数差フィルタ値△V
wfと第1目標トルクT1とを掛け合わせることにより
クラッチ負荷を算出するとき、反転領域のクラッチ負荷
の値も正の値としてトータルのクラッチ負荷に加算で
き、前後回転数差△Vwの反転にかかわらず高精度のク
ラッチ負荷情報を得ることができる。
【0066】(4) クラッチ保護判別部111eを、トル
ク配分クラッチ9の締結により伝達する最適な第1目標
トルクT1を運転状態に応じて演算する第1目標トルク
選択部110からの第1目標トルクT1と、前後回転数
差フィルタ値演算部111dからの前後回転数差フィル
タ値△Vwfと、クラッチ締結継続時間tによりクラッ
チ負荷積算値を求め、クラッチ負荷積算値がクラッチ保
護判定しきい値以上になると第2目標トルクT2をゼロ
とし、クラッチ完全解放によるクラッチ保護機能を作動
させる手段としたため、トルク配分クラッチ9への印加
トルクを直接検出する必要なく、第1目標トルクT1と
前後回転数差フィルタ値△Vwfとクラッチ締結継続時
間tを用いたクラッチ負荷積算値により、容易にクラッ
チ保護が必要かどうかを見極めるクラッチ負荷情報を得
ることができ、しかも、クラッチ保護必要時にはクラッ
チ負荷ゼロのクラッチ完全解放により確実にトルク配分
クラッチ9を保護することができる。
【0067】(その他の実施の形態)
【0068】実施の形態1では、前輪駆動ベースの四輪
駆動車への適用例を示したが、後輪駆動ベースの四輪駆
動車にも適用することができる。
【0069】実施の形態1では、前後回転数差のフィル
タ処理として、前後回転数差の発生から設定時間は前回
値を維持する例を示したが、駆動系ねじれ振動や外乱ノ
イズ等による車輪速変動に伴って発生する前後回転数差
の振動的な特性をなだらかにするようなフィルタ処理、
もしくは、振動的な特性を無くすようなフィルタ処理で
あれば、実施の形態1のフィルタ処理に限られるもので
はない。
【0070】実施の形態1では、トルク配分クラッチの
印加トルクを第1目標トルクにより予測してクラッチ負
荷を求める例を示したが、トルク配分クラッチに出力さ
れている電流値によりそのときの印加トルクを推定する
ようにしても良いし、また、トルク配分クラッチの締結
油圧を計測して印加トルクを推定するようにしても良
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1における四輪駆動車の駆動力配分
制御装置を示す全体システム図である。
【図2】実施の形態1の駆動力配分制御装置に採用され
たトルク配分コントローラでのトルク配分制御処理を示
す制御ブロック図である。
【図3】実施の形態1における駆動力配分制御装置のト
ルク配分コントローラの第1目標トルク選択部,クラッ
チ保護ロジック処理部及び第2目標トルク選択部を示す
制御ブロック図である。
【図4】実施の形態1における駆動力配分制御装置のト
ルク配分コントローラの第1目標トルク選択部,クラッ
チ保護ロジック処理部及び第2目標トルク選択部にて行
われるクラッチ保護制御処理の流れを示すフローチャー
トである。
【図5】車輪速センサからのセンサ信号による前後回転
数差のハンチング特性を示す図である。
【図6】従来の駆動力配分制御と実施の形態1の駆動力
配分制御において前後回転数差がハンチングしながら保
護を必要とするクラッチ滑りを生じているときの前後回
転数差,負荷演算値及び負荷積算値の各比較特性を示す
タイムチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン 2 自動変速機 3 フロントディファレンシャル 4 リヤディファレンシャル 5 右前輪 6 左前輪 7 右後輪 8 左後輪 9 トルク配分クラッチ 10 トルク配分コントローラ 11 右前輪速センサ 12 左前輪速センサ 13 右後輪速センサ 14 左後輪速センサ 15 アクセル開度センサ 16 エンジン回転センサ 17 ATコントローラ

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジントルクを前輪と後輪に配分する
    駆動系に設けられたトルク配分クラッチに対するトルク
    配分コントローラからの制御指令により前輪と後輪に伝
    達されるトルク配分比が制御される四輪駆動車の駆動力
    配分制御装置において、 車輪速センサからの信号に基づいて前後回転数差を計算
    する前後回転数差計算手段と、 前後回転数差計算値にフィルタをかけて前後回転数差フ
    ィルタ値を演算する前後回転数差フィルタ値演算手段
    と、 前後回転数差フィルタ値をクラッチ滑り推定値とし、前
    後回転数差フィルタ値に基づいて求めたクラッチ負荷が
    クラッチ保護判定しきい値以上になるとクラッチ完全解
    放あるいは相対滑りのない完全締結によるクラッチ保護
    機能を作動させるクラッチ保護制御手段と、 を前記トルク配分コントローラに設けたことを特徴とす
    る四輪駆動車の駆動力配分制御装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の四輪駆動車の駆動力配分
    制御装置において、 前記前後回転数差フィルタ値演算手段を、前後回転数差
    計算値が発生してから設定時間の間は前回値をそのまま
    保持するフィルタ処理により前後回転数差フィルタ値を
    求める手段としたことを特徴とする四輪駆動車の駆動力
    配分制御装置。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の四輪駆動車の駆動力配分
    制御装置において、 前記前後回転数差フィルタ値演算手段を、前輪速と後輪
    速の大小関係の反転にかかわらず、前後回転数差計算値
    が発生してから設定時間の間は前回値をそのまま保持す
    るフィルタ処理により前後回転数差フィルタ値を求める
    手段としたことを特徴とする四輪駆動車の駆動力配分制
    御装置。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至請求項3記載の四輪駆動車
    の駆動力配分制御装置において、 前記クラッチ保護制御手段を、トルク配分クラッチの締
    結により伝達する最適な目標トルクを運転状態に応じて
    演算する目標トルク演算手段からの目標トルクと、前後
    回転数差フィルタ値演算手段からの前後回転数差フィル
    タ値と、クラッチ締結継続時間によりクラッチ負荷積算
    値を求め、クラッチ負荷積算値がクラッチ保護判定しき
    い値以上になると目標トルクをゼロとし、クラッチ完全
    解放によるクラッチ保護機能を作動させる手段としたこ
    とを特徴とする四輪駆動車の駆動力配分制御装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1359046A2 (en) * 2002-04-26 2003-11-05 Toyoda Koki Kabushiki Kaisha Drive-force distribution controller and drive-force distribution method for four-wheel-drive vehicle
JP2005153780A (ja) * 2003-11-27 2005-06-16 Nissan Motor Co Ltd 四輪駆動車両

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