JP2001223183A - Al系電極膜および液晶ディスプレイ - Google Patents

Al系電極膜および液晶ディスプレイ

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JP2001223183A
JP2001223183A JP2000382109A JP2000382109A JP2001223183A JP 2001223183 A JP2001223183 A JP 2001223183A JP 2000382109 A JP2000382109 A JP 2000382109A JP 2000382109 A JP2000382109 A JP 2000382109A JP 2001223183 A JP2001223183 A JP 2001223183A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ミクロ的な組織偏析を防止し、さらにスプラ
ッシュの原因となる微小な空隙の発生を防止した新規な
Al系ターゲット材で成膜されるAl系電極膜およびL
CDを提供する。 【解決手段】 Alマトリックスに、遷移元素から選択
される元素のいずれか1種または2種以上とAlとの化
合物が分散した組織を有し、前記遷移元素として3A族
元素を必須として含有し、前記組織における長径0.5
μm以上の前記化合物を含まないAl域が、内接円径で
10μmを超えないAl系スパッタリング用ターゲット
材で成膜されてなるAl系電極膜とする。そしてこのA
l系電極膜をLCDに適用する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Alを主体とする
Al系スパッタリングターゲット材で成膜されるAl系
電極膜と、それを用いてなる液晶ディスプレイ(Liquid
Crystal Display以下LCDと略す)に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】ガラス基板上に薄膜デバイスを作製する
LCD、薄膜センサ−等に用いる電気配線膜、電極等に
は従来から主に高融点金属である純Cr膜、純Ta膜、
純Ti膜等の純金属膜またはそれらの合金膜が用いられ
ている。LCDの大型化、高精細化に伴い配線膜、電極
膜には信号の遅延を防止するために低抵抗化、低応力化
とそれら特性の安定化が要求される。たとえば、12イン
チ以上の大型カラーLCDに用いられる電極用では15μ
Ωcm以下にすることが要求される。しかし従来のC
r、Ta系の高融点合金膜では膜の安定性には優れる
が、抵抗値が高く、Crで約30μΩcm、Taで約l80μΩ
cm、Tiで約60μΩcmである。このため、これら金属
より、さらに低抵抗なAl系膜を用いるようになってい
る。
【0003】このAl系膜を形成するのに対して、ター
ゲット材の組成の改良に関する提案も多くなされてい
る。たとえば、純Al膜では比抵抗は低いが耐熱性に問
題があり、TFT(Thin-Film-Transistor)製造プロセ
ス上不可避である電極膜形成後の加熱工程(250〜400℃
程度)等において、ヒロックといわれる微小な突起が表
面に生じるという問題点がある。このヒロックはストレ
スマイグレ−ション、サ−マルマイグレ−ション等によ
り発生すると考えられ、このヒロックが発生するとAl
配線膜上に絶縁膜や保護膜等を形成し、さらに配線膜、
電極膜等を形成しようとした場合に電気的短絡(ショ−
ト)や、このヒロックを通してエッチング液等が侵入し
Al配線膜が腐食してしまうという問題点がある。
【0004】このため、純Alではなく、これらの問題
を解決する目的で高融点の金属を添加することが検討さ
れ、たとえば、特開平4-323872号ではMn、Zr、Cr
を0.05〜1.0at%添加することが有効であることが述べら
れている。また、特公平4-48854号では、Bを0.002〜0.
5wt%、Hf、Nb、Ta、Mo、Wを0.002〜0.7w
t%添加する方法や、さらにSiを0.5〜1.5wt%加え
る方法が開示されている。また、特開平5-65631号では
Ti、Zr、Taを0.2〜10at%添加することがヒロック
の発生の抑制に効果があることが述べられている。さら
に特開平6-299354号や特開平7-45555号で述べられてい
るようにFe、Co、Ni、Ru、Rh、Irを0.1〜10at%、また希
土類元素を0.05〜15at%添加する方法や、特開平5-33527
1号のようにAl-Si合金にCu、Ti、Pd、Zr、Hf、Y、Scを
0.01〜3wt%添加する方法が知られている。このよう
な添加元素は、Alと化合物を形成しAlのマトリック
ス中に分散するが、形成した化合物は、Alと比重が異
なるため、偏析を生じやすい。そのため特開平5-335271
号、特開平6-336673号に記載されるように、偏析を防止
する鋳造技術の提案もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、これ
までのAl系スパッタリング用タ−ゲット材について
は、ヒロックを防止するために添加元素を加えたもの
や、その偏析を防止する鋳造方法に重点が置かれてい
た。従来の改良法により、溶解鋳造法によってターゲッ
ト材を得る方法では、たとえばできるだけ急冷すること
によりインゴット組織におけるAlと添加元素とのマク
ロ的な偏析は防止できる。しかし、鋳造法の場合、組織
中に薄片状等の化合物の凝集部分が生じてミクロ的な偏
析はどうしても残留するため、LCD配線等の微小な薄
膜にとっては、なお偏析の問題が存在している。
【0006】ターゲット材のマクロ的な偏析を防止する
方法として、粉末を混合して焼結する方法が考えられ
る。しかし、我々の検討によれば、純Al粉末を原料と
する場合、Al粉末原料の大きさが大きいと偏析域が大
きくなる。偏析域を小さくするためには、微細な原料粉
末を使用することが考えられる。しかし、微細なAl粉
末および添加元素粉末は、酸化や発火の対策という取り
扱い上の問題と、混合時の粉末の凝集といった製造上の
問題から、満足できる均一組織のターゲット材が得られ
ていない。また、溶製法を開示する特開平6-299354号が
指摘するようにAl粉末と合金化元素粉末を混合した焼
結ターゲット材では、各元素のスパッタ効率の違いから
Al膜中の合金元素濃度が経時的に変動するという問題
がある。本発明の第1の目的は、ミクロ的な組織偏析を
防止した新規なAl系ターゲット材で成膜されるAl系
電極膜およびLCDを提供することである。
【0007】また、Al系ターゲット材においてはイン
ゴットを大きくし、冷間で高い加工率で塑性加工を行っ
たタ−ゲット材を用いてスパッタするとターゲット材か
らスプラッシュと呼ばれる異常飛沫が発生する問題があ
る。スプラッシュとは、タ−ゲット材から発生する異常
飛沫のことであり、通常のスパッタ粒子に比較して大き
く、このスプラッシュが基板上に付着すると配線間のシ
ョ−ト、断線等を引き起こす可能性が高くなり、製造し
た液晶ディスプレイの歩留まりを大きく低下させてしま
う問題がある。
【0008】このAl系ターゲット材からのスプラッシ
ュの発生は、配線の形成に使用する場合において、不良
に直結するため重大な問題である。特に、大型のLCD
を得るために必要な0.3m2以上のスパッタ平面積を有す
る大型のタ−ゲット材を適用する場合において、高価な
大型液晶ディスプレイの不良要因としてその対策が急が
れている。
【0009】本発明者らは、スプラッシュの発生原因を
鋭意検討した。その結果スプラッシュの原因がターゲッ
ト材中にある微小な空隙にあることを見いだした。さら
に検討した結果、この微小な空隙の発生原因の一つは、
溶解鋳造法で大型のインゴットを製造する場合、Alの
熱収縮が大きいため発生する引け巣にあることが判明し
た。また、もう一つの原因は、Alの溶湯は水素を溶存
するが、冷えて固まる際には水素を放出するため、この
水素により微細な空隙が発生しやすいということであ
る。特に偏析を防止するために、できるだけ急冷して凝
固すると空隙がインゴット中に包括されやすくなる。
【0010】また、Al以外の添加元素によって生成す
るAl化合物が、ターゲット材への加工中に割れて、空
隙の原因となる場合がある。本発明者がターゲット材組
織における微小な空隙の発生を抑えるべく検討したとこ
ろ、溶解鋳造法を適用する限りは、引け巣や溶存水素に
よる空隙の発生を抑えることは困難であった。そのた
め、本発明者は粉末焼結法を適用することを試みた。粉
末焼結法を適用すると、上述した引け巣や溶存水素によ
る空隙の発生を抑制することができる。
【0011】しかし、単純に上述したようなヒロックを
防止する元素の粉末をAl粉末と混合して焼結すると、
Alとの反応により粗大な化合物を形成する場合があ
り、この化合物も、溶解鋳造法によって生成される化合
物と同様に加工中に割れやすく、スプラッシュの原因と
なる空隙を形成してしまうことがわかった。本発明の第
2の目的は、スプラッシュの原因となる微小な空隙の発
生を防止したAl系ターゲット材で成膜される電極膜お
よびLCDを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者は、ヒロックを
防止することを主目的とする遷移元素をAlに添加した
合金溶湯から急冷凝固粉末を得てこれを加圧焼結するこ
とにより、薄片状に成長しやすいAl化合物の成長を抑
え、組織中に均一に化合物が分散した組織を得ることが
できることを見いだし、この方法で製造した微細組織を
有するターゲット材を用いれば、スプラッシュの防止と
形成する薄膜の濃度の変動を防止できることを見いだし
本発明に到達した。
【0013】すなわち、本発明は、Alマトリックス
に、遷移元素から選択される元素のいずれか1種または
2種以上とAlとの化合物が分散した組織を有し、前記
遷移元素として3A族元素を必須として含有し、前記組
織における長径0.5μm以上の前記化合物を含まない
Al域が、内接円径で10μmを越えないAl系スパッ
タリング用ターゲット材で成膜されてなるAl系電極膜
である。
【0014】また、本発明のAl系電極膜は、Alスパ
ッタリング用ターゲット材の分散する化合物の最大外接
円径は、実質的に5μm以下であることが好ましい。さ
らに、上記Al系電極膜はLCDに用いることができ
る。
【0015】本発明においては、特に3A族元素はAl
と薄片状の化合物を形成しやすい。そのためターゲット
材を製造する行程で化合物が割れてスプラッシュの原因
となる空隙を生じやすい。したがって、3A族元素を添
加したAl系ターゲット材に対して、本発明は特に有効
である。
【0016】なお、本発明において遷移元素とは、S
c,Y,ランタノイドでなる希土類元素と称される3A
族、Ti,Zr,Hfの4A族、V,Nb,Taの5A
族、Cr,Mo,Wの6A族、Mn,Tc,Reの7A
族、Fe,Co,Ni,Ru,Rh,Pd,Os,I
r,Ptの8族、Cu,Ag,Auの1B族である。こ
れらの遷移元素は、スパッタリングにより薄膜を形成
後、典型的には加熱温度150℃〜400℃の熱処理を
施すことによって金属間化合物として組織に析出する。
析出した化合物は、熱や電位差によりAlの結晶粒の成
長、あるいは流動を抑えるピンニングポイントとなり、
薄膜にヒロックが発生するのを防止するものである。ま
た、本発明のAl系スパッタリング用ターゲット材を成
膜することによりAl系電極膜を形成することが可能で
あり、その電極膜を液晶ディスプレイに適用することが
可能である。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明において、最大の特徴の一
つは、Alとの化合物が分散したターゲット材組織にお
いて、長径0.5μm以上の前記化合物を含まないAl
域(以下Al偏在域と言う)が、前記化合物に対する内
接円径で10μm以下という、ミクロ的な組織偏析を防
止した新規なAl系スパッタリング用ターゲット材を用
いて電極膜を形成したことにある。上述したように、こ
の微細な組織は、たとえばガスアトマイズ法等のアトマ
イズ法に代表される溶湯急冷法により作製した粉末を加
圧焼結することによって得ることができるものである。
この溶湯急冷法の適用は、従来の溶解鋳造法によるAl
の偏析を防止するだけでなく、微細に分散する化合物に
よって、まず生成薄膜の濃度分布の従来にない均一化を
達成することができる。すなわち、粉末状に急冷凝固さ
せることによって、粗大なデンドライト組織が発達しな
い微細な化合物が存在する組織の粉末が得られるのであ
る。
【0018】これを焼結すると、Al偏在域がほとんど
ない金属組織のターゲット材が得られる。このターゲッ
ト材により、溶解鋳造により得られるターゲット材の問
題であった、Al偏在域が存在するためにAl膜中に添
加元素の濃度分布が生ずるのを防止できる。また、この
ように微細な化合物を含んだ急冷凝固粉末を使用するこ
とは、従来の粉末焼結ターゲット材のようにAlをAl
単体粉末とし、添加元素の単体粉末と混合する場合に問
題であった異なる粉末を使用することによるスパッタ効
率の違いの問題も解消することができる。
【0019】本発明において、Al域の定義として長径
0.5μm以上の前記化合物を含まない領域とした。A
l域に0.5μm未満の化合物が存在している場合に
は、光学顕微鏡では、同定しにくいためである。またA
l域の内接円径を10μm以下としたのは、これ以上大
きい偏在域が存在すると、生成薄膜の組成分布のばらつ
きが無視できないほど大きくなるためである。
【0020】また、急冷凝固法を適用すれば、上述した
化合物を外接円径を実質的に5μm以下とすることがで
きる。また、ターゲット材の断面組織における0.5μ
m以上の化合物の長径/短径で規定するアスペクト比を
10以下、好ましくは5未満とすることもできる。Al
系ターゲット材にこのようなヒロックを防止する元素を
導入する方法としては焼結法の適用が望ましい。添加元
素を粉末にしてそのまま導入すると、焼結過程でAlと
反応し典型的には、バラの花状の如き粗大な薄片状の化
合物あるいは樹状の粗大な化合物を形成する場合が多
い。
【0021】粗大な化合物が存在すると、圧延などの加
重により組織内で容易に割れが発生する。この割れた部
分に空隙が発生し、スパッタリング時にスプラッシュを
発生するのである。本発明者の検討によれば、スプラッ
シュの原因となる空隙の発生は、組織中の化合物の形態
に依存し、できるだけ微細で、好ましくはアスペクト比
の1に近い球状とすることにより、発生を防止できるこ
とを見いだした。上述したように、本発明はターゲット
材の断面組織における0.5μm以上の化合物の長径/
短径で規定するアスペクト比を5未満とすることが可能
であり、圧延等を適用してもスプラッシュの原因の空隙
を生成しにくいため好ましいのである。
【0022】さらに検討した結果、急冷凝固粉末のう
ち、凝固速度が速い小径、典型的には200μm以下の
直径の粒子は、化合物が薄板状に成長せずに微細に凝固
できており、これを焼結すれば、圧延などの加工によっ
てもスプラッシュの原因となる空隙の発生を一段と防止
できるターゲット材が得られる。また、本発明におい
て、特に化合物の外接円径を5μm以下としたのは、こ
れ以下の微粒子を分散することにより、トータルの加工
率が50%以上であっても、化合物の割れに起因する空
隙は発生せず、スプラッシュの増加もないことを確認し
たためである。
【0023】上述した粉末原料は、典型的には400℃
以上600℃以下で焼結する。400℃未満では、焼結
が進行しにくく、600℃を越えるとAlが溶解する危
険があるためである。加圧焼結は、空隙のない緻密な焼
結体とするために、好ましくは50MPa以上の圧力で
行うものとする。この焼結時に空隙が残留することは、
ターゲット材にスプラッシュが発生する原因となるた
め、できるだけさけなければならない。
【0024】50%以上の加工率で圧延をする場合、加
工温度を高めることにより、加工時の割れを低減するこ
とが可能である。実質的にはAlの再結晶温度以上の4
00℃以上とし、また圧延等の加工による局所的な温度
上昇により、Alの融点を越えない550℃以下とする
ことが望ましい。
【0025】
【実施例】(実施例1)表1に示すAl合金系のインゴ
ットを溶解鋳造し、このインゴットを窒素ガス雰囲気中
ガスアトマイズ法により急冷凝固粉末とした後、体積平
均径60μmとなるよう分級した。この粉末を内径133mm
高さ15mmの鉄製の缶に充填し、10マイナス3乗Pa以
下の圧力に排気を行いながら加熱を行い、脱ガス処理を
行った。次に圧力100MPa、温度550℃の条件下でHIP
(熱間静水圧プレス)により加圧焼結した後機械加工を
施すことにより直径100mm厚さ4mmのターゲット材に加工
し、表1に示す本発明で用いるターゲット材を得た。
【0026】比較例として、体積平均径60μmの純A
l粉と体積平均径35μmの添加元素金属粉をロッキン
グミキサーで混合し、この粉末を内径133mm高さ15mmの
鉄製の缶に充填し、本発明の試料と同様に脱ガス処理を
行った。次に本発明例と同様にHIPにより加圧焼結し
た後機械加工を施すことにより直径100mm厚さ4mmのター
ゲット材に加工し、表1に示す単体焼結ターゲット材
(試料No.11、試料No.12)を得た。また、別
の比較例として、合金組成を調整した溶湯を直径150mm
高さ100mmの円柱形状の鋳型に鋳造し、機械加工を施し
て直径100mm厚さ4mmのターゲット材に加工し、表1に示
す溶製ターゲット材(試料No.13、試料No.1
4、試料No.15)を得た。
【0027】得られた本発明および比較例のターゲット
材組織を400倍の光学顕微鏡で組織観察を行い、組織
中に存在する化合物の最大長径(化合物の外接円径にほ
ぼ相当)、最大アスペクト比=最大の(長径/短径)
値、およびAl域の最大内接円径を測定した。結果を表
1に示す。また、本発明および比較例の典型的な組織と
して、Al-2原子%Ndの組成の試料において、本発明の試
料No.3の組織写真を図1に、比較例の単体焼結ター
ゲット材の試料No.12の組織写真を図2に、比較例
の溶製ターゲット材試料No.14の組織写真を図3に
それぞれ示す。図1〜図3は、それぞれ400倍の光学
顕微鏡写真である。また得られた本発明および比較例の
ターゲット材の表面を鏡面研磨し、染色浸透探傷法によ
り1μm以上の空隙を検出しその数を表1に付記した。
【0028】
【表1】
【0029】表1および図1〜図3より明白なように、
本発明の試料No.1〜No.7は、微細な化合物が組
織中に分散する組織となっている。一方、比較例の単体
焼結ターゲット材は、粗大な化合物が存在する組織とな
っている。また比較例の溶製ターゲット材においては、
単体焼結ターゲット材に比べて化合物は微細になってい
るが、化合物のアスペクト比が増加し、扁平な化合物と
なっていること、および化合物が存在しない広いAl域
が存在することがわかる。なお、染色浸透探傷法による
空隙は、溶製法のターゲット材がやや多くなる傾向が見
られる。
【0030】得られたターゲット材を用いてDCマグネ
トロンスパッタリング法により、Ar圧力0.3Pa、
投入電力0.5kWの条件下で4インチのSiウェーハ
ー上に膜厚200nmのAl合金膜を形成し、全てのターゲ
ット材について投入電力0.5kWで約1時間使用後、
約20時間使用後のそれぞれについて成膜した膜の組成
変化を調べた。また上記成膜条件にてターゲット材1枚
につき10枚の膜を成膜し、膜表面上に認められた5μ
m以上の異物をスプラッシュと見なし、基板1枚当たり
の平均数を算出した。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】表2に示すように、本発明で用いるターゲ
ット材試料No.1ないしNo.7は、スパッタリング
期間においてほとんど遷移金属の濃度は変化しない。こ
れに対して、比較例の単体焼結ターゲット材試料No.
11およびNo.12は、形成した薄膜中の遷移金属濃
度が上昇する傾向があり、好ましくないことが認められ
る。また、比較例の溶製ターゲット材では、形成した薄
膜中の遷移金属の濃度の変動は、単体焼結ターゲット材
に比べて小さいが、本発明のターゲット材よりも大きい
ものとなっている。また、溶製ターゲット材では、欠陥
数が多いことに対応して、スプラッシュの発生が多くな
り、好ましくないことがわかる。
【0033】(実施例2)表3に示すAl合金系のイン
ゴットを溶解鋳造し、このインゴットを窒素ガス雰囲気
中ガスアトマイズ法により急冷凝固粉末とした後、体積
平均径60μmとなるよう分級した。この粉末を330mm×
530mm×50mmの鉄製の缶に充填し、10マイナス3乗P
a以下の圧力に排気を行いながら加熱を行い、脱ガス処
理を行った。次に圧力100MPa、温度550℃の条件下でH
IP(熱間静水圧プレス)により加圧焼結した後、圧
延、機械加工を施すことにより550mm×690mm×6mmのタ
ーゲット材に加工し、本発明で用いるターゲット材を得
た。
【0034】比較例として、体積平均径60μmの純A
l粉と体積平均径35μmの添加元素金属粉をロッキン
グミキサーで混合し、この粉末を330mm×530mm×50mmの
鉄製の缶に充填し、本発明の試料と同様に脱ガス処理を
行った。次に本発明例と同様にHIPにより加圧焼結し
た後、圧延、機械加工を施して550mm×690mm×6mmのタ
ーゲット材に加工し、表3に示す単体焼結ターゲット材
(試料No.31、試料No.32)を得た。また、別
の比較例として、合金組成を調整した溶湯を330mm×530
mm×50mmの鉄製平板形状の鋳型に鋳造し、これを圧延
し、ついで機械加工を施し550mm×690mm×6mmのターゲ
ット材に加工し、表3に示す溶製ターゲット材(試料N
o.33、試料No.34、試料No.35)を得た。
【0035】実施例1と同様に、得られた本発明および
比較例のターゲット材組織を観察し、組織中に存在する
化合物の最大長径(化合物の外接円径にほぼ相当)、最大
アスペクト比=最大の(長径/短径)値、およびAl域
の最大内接円径を測定した。また、本発明および比較例
の典型的な組織として、Al-2原子%Ndの組成の試料にお
いて、本発明の試料No.23の組織写真を図4に、比
較例の単体焼結ターゲット材の試料No.32の組織写
真を図5に、比較例の溶製ターゲット材試料No.34
の組織写真を図6にそれぞれ示す。図4〜図6は、それ
ぞれ400倍の光学顕微鏡写真である。また得られた本
発明および比較例のターゲット材の表面を鏡面研磨し、
染色浸透探傷法により1μm以上の空隙を検出しその数
を表3に付記した。
【0036】
【表3】
【0037】表3および図4〜図6より明白なように、
本発明の試料No.21〜No.27は、微細な化合物
が組織中に分散する組織となっている。一方、比較例の
単体焼結ターゲット材は、粗大な化合物が存在する組織
となっている。また、この単体焼結ターゲット材は、図
5の写真の黒色分に対応する大きな空隙が形成されてい
る。これは、圧延によって化合物にクラックが入り、空
隙を生じたものである。また比較例の溶製ターゲット材
においては、単体焼結ターゲット材に比べて化合物は微
細になっているが、化合物が存在しない広いAl域が残
存している。また、実施例1と比較すると欠陥数がやや
増加している。これはアスペクト比の大きい化合物が割
れて、空隙を生じたものと推測された。
【0038】得られたターゲット材を用いてDCマグネ
トロンスパッタリング法により、Ar圧力0.3Pa、
投入電力11kWの条件下で370mm×470mm×1.1mmのガ
ラス基板上に膜厚200nmのAl合金膜を形成した。全て
のターゲット材について投入電力0.5kWで約1時間
使用後、約20時間使用後のそれぞれについて成膜した
膜の組成変化を調べた。また、上記成膜条件にてターゲ
ット材1枚につき10枚の膜を成膜し、膜表面上に認め
られた5μm以上の異物をスプラッシュと見なし、基板
1枚当たりの平均数を算出した。結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】表4に示すように、本発明で用いるターゲ
ット材試料No.21ないしNo.27は、スパッタリ
ング期間においてほとんど遷移金属の濃度は変化しな
い。これに対して、比較例の単体焼結ターゲット材試料
No.31およびNo.32は、形成した薄膜中の遷移
金属濃度が大幅に上昇する傾向があり、好ましくないこ
とが認められる。さらに、表3に示すように、圧延の適
用によりターゲット材中に多数の空隙が発生し、これに
伴ってスプラッシュ数が著しく増加し、好ましくないこ
とがわかる。また、比較例の溶製ターゲット材では、形
成した薄膜中の遷移金属の濃度の変動は、実施例1と同
様に、単体焼結ターゲット材に比べて小さいが本発明で
用いるターゲット材よりも大きいものとなっている。ま
た、溶製ターゲット材では、単体焼結ターゲット材ほど
ではないが、本発明のターゲット材に比べて欠陥数が多
く、これに伴ってスプラッシュの発生が多くなっている
ことがわかる。
【0041】
【発明の効果】本発明によれば、膜組成の変動をなくす
とともに、欠陥を少なくでき、結果としてスプラッシュ
を抑制することが可能となった。したがって、本発明は
今後さらに大型化が求められるLCDの品質向上を達成
する上で極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いるターゲット材の金属ミクロ組織
を示す写真である。
【図2】比較例の単体焼結ターゲット材の金属ミクロ組
織を示す写真である。
【図3】比較例の溶製ターゲット材の金属ミクロ組織を
示す写真である。
【図4】本発明で用いる圧延処理したターゲット材の金
属ミクロ組織を示す写真である。
【図5】比較例の圧延処理した単体焼結ターゲット材の
金属ミクロ組織を示す写真である。
【図6】比較例の圧延処理した溶製ターゲット材の金属
ミクロ組織を示す写真である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Alマトリックスに、遷移元素から選択
    される元素のいずれか1種または2種以上とAlとの化
    合物が分散した組織を有し、前記遷移元素として3A族
    元素を必須として含有し、前記組織における長径0.5
    μm以上の前記化合物を含まないAl域が、内接円径で
    10μmを越えないAl系スパッタリング用ターゲット
    材で成膜されてなることを特徴とするAl系電極膜。
  2. 【請求項2】 Alスパッタリング用ターゲット材の分
    散する化合物の最大外接円径は、実質的に5μm以下で
    あることを特徴とする請求項1に記載のAl系電極膜。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載のAl系電極膜
    を用いたことを特徴とする液晶ディスプレイ。
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