JPH1060636A - Al系スパッタリング用ターゲットおよびその製造方法 - Google Patents

Al系スパッタリング用ターゲットおよびその製造方法

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JPH1060636A
JPH1060636A JP11527397A JP11527397A JPH1060636A JP H1060636 A JPH1060636 A JP H1060636A JP 11527397 A JP11527397 A JP 11527397A JP 11527397 A JP11527397 A JP 11527397A JP H1060636 A JPH1060636 A JP H1060636A
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forming
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Hideo Murata
英夫 村田
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Hitachi Metals Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ターゲットの組織中に存在し、スプラッシュ
の原因となる微小な空隙の発生を防止したAl系スパッ
タリング用ターゲットと製造方法を提供する。 【課題手段】 Ti,Zr,Cr,Mo,W,V,N
b,Ta,Bおよび希土類元素などのAl化合物形成可
能元素が、Alマトリックス中に金属状態もしくは元素
単体で残留分散しているAl系スパッタリング用ターゲ
ット材である。0.3m2以上のスパッタ平面積を有するタ
ーゲットに適用する。このターゲットは、Al粉末と、
Al化合物形成可能元素の粉末とを混合し、好ましくは
50MPa以上、400℃〜600℃で低温加圧焼結す
ることにより得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、Alを主体とする
Al系スパッタリング用ターゲットに関し、特に液晶デ
ィスプレイ(Liquid Cristal Display 以下LCDと略
す)の薄膜電極、薄膜配線等、あるいは反射膜等を形成
するために用いられるAl系スパッタリング用ターゲッ
トおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ガラス基板上に薄膜デバイスを作製する
LCD、薄膜センサー等に用いる電気配線膜、電極等に
は従来から主に高融点金属である純Cr膜、純Ta膜、
純Ti膜等の純金属膜またはそれらの合金膜が用いられ
ている。LCDの大型化、高精細化に伴い配線膜、電極
膜には信号の遅延を防止するために低抵抗化、低応力化
とそれら特性の安定化が要求される。たとえば、12イン
チ以上の大型カラーLCDに用いられる電極用では15μ
Ωcm以下にすることが要求される。しかし従来のC
r、Ta系の高融点合金膜では膜の安定性には優れる
が、抵抗値が高く、Crで約30μΩcm、Taで約l80
μΩcm、Tiで約60μΩcmである。このため、これ
ら金属より、さらに低抵抗なAl系膜を用いるようにな
っている
【0003】また、基板サイズの大型化に伴い、金属膜
を形成するためのターゲットにも大型化が要求されてい
る。たとえば、LCDの高精細化に伴い、高品質の膜質
の金属膜を安定して製造するために、金属膜の形成に用
いられるスパッタ装置は、従来の非常に大きな基板搬送
式のインライン方式の装置から、基板を静止させて成膜
する枚様式の装置が多く用いられるようになってきた。
この枚様式のスパッタ装置では基板に対してターゲット
を静止させて膜形成を行うために、基板サイズより大き
なターゲットが要求される。
【0004】従来は必要なターゲットサイズに対して2
分割や3分割の大きさで製造したターゲットを貼り合わ
せて用いていたが、高精細化のために分割したターゲッ
トではその継ぎ目から異物が発生し、不良となるため一
体物のターゲットが要求されている。
【0005】現在主流である基板サイズは370×470mmで
あり、この基板に金属膜を形成するための枚様式スパッ
タ装置用のターゲットには550×650mm程度のスパッタリ
ング面を有する大型のターゲットを一体で製造する必要
がある。一般的なAl系スパッタリング用ターゲット
は、Al合金を鋳造してインゴットを製造し、これを機
械加工してターゲットとする場合が多い。Alを主体と
する合金は冷間での塑性加工性に優れるため、CrやT
a等の高融点の金属のターゲットを製造する場合に比較
して、一体で大きなターゲットを製造しやすいという利
点があり、鋳造インゴットに鍛造、冷間圧延等を施しタ
ーゲットの形状に機械加工を行なう場合もある。たとえ
ば、550×650mmに対応する枚様式の0.3m2以上のスパッ
タ平面積を有する大型のターゲットを製造するためには
インゴットを大きくし、冷間で高い加工率(80%程度
以上)を適用して一体のターゲットを製造できるように
塑性加工、機械加工を行って製造していた。
【0006】また、ターゲットの組成の改良に関する提
案も多くなされている。たとえば、純Al膜では比抵抗
は低いが耐熱性に問題があり、TFT(Thin-Film-Tran
sister)製造プロセス上不可避である電極膜形成後の加
熱工程(250〜400℃程度)等において、ヒロックといわ
れる微小な突起が表面に生じるという問題点がある。こ
のヒロックはストレスマイグレーション、サーマルマイ
グレーション等により発生すると考えられ、このヒロッ
クが発生するとAl配線膜上に絶縁膜や保護膜等を形成
し、さらに配線膜、電極膜等を形成しようとした場合に
電気的短絡(ショート)や、このヒロックを通してエッ
チング液等が侵入しAl配線膜が腐食してしまうという
問題点がある。
【0007】このため、純Alではなく、これらの問題
を解決する目的で高融点の金属を添加する。たとえば、
特開平4-323872号ではMn、Zr、Crを0.05〜1.0at%
添加することが有効であることが述べられている。ま
た、特公平4-48854号では、Bを0.002〜0.5wt%、H
f、Nb、Ta、Mo、Wを0.002〜0.7wt%添加する
方法や、さらにSiを0.5〜1.5wt%加える方法が開示
されている。また、特開平5-65631号ではTi、Zr、
Taを0.2〜10at%添加することがヒロックの発生の抑制
に効果があることが述べられている。さらに特開平7-45
555号で述べられているようにFe、Co、Ni、R
u、Rh、Irを0.1〜10at%、また希土類元素を0.05〜
15at%添加する方法や、特開平5-335271号のようにAl
−Si合金にCu、Ti、Pd、Zr、Hf、Y、Sc
を0.01〜3wt%添加する方法が知られている。
【0008】このような添加元素を加えて鋳造しようと
すると添加元素は、Alと化合物を形成しAlの溶湯中
に分散する。しかし、形成した化合物はAlと比重が異
なるため、偏析を生じやすい。添加元素が偏析したター
ゲットをスパッタすると形成した膜の成分が面内におい
て異なる原因となる。こうなると、部分的にヒロックの
発生を抑制できなくなる場合がある。また、膜の成分が
面内で異なることは結果として抵抗値が面内で異なるこ
とになるため、配線材料として使用すると、装置の動作
不良の原因となる恐れがある。そのため特開平5-335271
号、特開平6-336673号に記載されるように、偏析を防止
する鋳造技術の提案がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、これ
までのAl系スパッタリング用ターゲットについては、
ヒロックを防止するために添加元素を加えたものや、そ
の偏析を防止する鋳造方法に重点が置かれていた。しか
し、Al系ターゲットにおいてはインゴットを大きく
し、冷間で高い加工率で塑性加工を行ったターゲットを
用いてスパッタするとターゲットからスプラッシュと呼
ばれる異常飛沫が発生する問題がある。スプラッシュと
は、ターゲットから発生する異常飛沫のことであり、通
常のスパッタ粒子に比較して大きく、このスプラッシュ
が基板上に付着すると配線間のショート、断線等を引き
起こす可能性が高くなり、製造した液晶ディスプレイの
歩留まりを大きく低下させてしまう問題がある。
【0010】すなわち、このAl系ターゲットからのス
プラッシュの発生は、配線の形成に使用する場合におい
て、不良に直結するため重大な問題である。特に、大型
のLCDを得るために必要な0.3m2以上のスパッタ平面
積を有する大型のターゲットを適用する場合において、
高価な大型液晶ディスプレイの不良要因としてその対策
が急がれている。
【0011】本発明者は上述した問題を解決するため
に、スプラッシュの発生原因を鋭意検討した。その結果
スプラッシュの原因がターゲット中にある微小な空隙に
あることを見いだした。さらに検討した結果、この微小
な空隙の発生原因の一つは、溶解鋳造法で大型のインゴ
ットを製造する場合、Alの熱収縮が大きいため発生す
る引け巣にあることが判明した。
【0012】また、もう一つの原因は、Alの溶湯は水
素を溶存し易いが、凝固過程では水素を放出するため、
この水素放出により微細な空隙が発生しやすいというこ
とである。特に偏析を防止するために、急冷凝固すると
空隙がインゴット中に包括されやすくなる。また、Al
以外の添加元素によって生成するAl化合物が、ターゲ
ットへの加工中に割れて、空隙の原因となる場合も確認
された。本発明の目的は、ターゲットの組織中に存在す
るスプラッシュの原因となる微小な空隙の発生を防止す
ることができるAl系スパッタリング用ターゲットおよ
びその製造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者がターゲット組
織における微小な空隙の発生を抑えるべく検討したとこ
ろ、本来Alと化合物を形成する添加元素を、金属もし
くは元素の状態を残すように制御して焼結すれば、化合
物の割れに起因した微小な空隙の発生を防止できること
を見いだし本発明に到達した。
【0014】すなわち本発明は、Al化合物形成可能元
素が、Alマトリックス中に金属状態もしくは元素単体
状態で分散しているAl系スパッタリング用ターゲット
である。好ましくは、Al化合物形成可能元素は、外接
円径80μm以下の粒子としてAlマトリックス中に分
散させる。さらに好ましくは、外接円径60μm以下の
粒子とする。また、本発明は0.3m2以上のスパッタ平面
積を有するターゲットに好適である。
【0015】Al化合物形成可能元素として、好ましく
は、(Ti,Zr,Cr,Mo,W,V,Nb,Ta、
B、希土類元素)の1種または2種以上を適用すること
が可能である。Al化合物形成可能元素の添加量は、具
体的には5原子%以下、より望ましくは3%以下、0.
1%以上とする。
【0016】また、上述したターゲットを得る本発明の
製造方法は、Al粉末と、Al化合物形成可能元素の粉
末とを混合し、400℃〜600℃で加圧焼結するもの
である。本発明の製造方法は、特に加圧焼結後、圧延に
より板状にし、圧延面側をスパッタリング面とする場合
に適用することが望ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の最大の特徴の一つは、タ
ーゲット組織をAlマトリックス中にAl化合物形成可
能元素を金属状態もしくは元素単体状態を残留させて分
散させたことにある。通常溶解法で作製するAl系のタ
ーゲットでは添加元素は実質的にすべて金属間化合物と
してターゲット組織中に存在することになる。この化合
物は、マトリックスであるAlに比較し、硬く、脆く、
延性の低い性質を有する。この化合物が液晶ディスプレ
イ用大型一体のターゲットを製造するために行う、鍛造
や圧延等の塑性加工工程で、化合物の割れや化合物周囲
にボイドが発生し、これらがターゲット中の空隙となっ
てしまう。これらの空隙が存在するとスパッタ時この空
隙部に電荷が集中しやすくなり、異常放電によりスプラ
ッシュが発生しやすくなる。また、空隙部の存在は部分
的な冷却効率を低下させ、空隙部近傍の温度が上昇し、
溶解してスプラッシュが発生する場合もある。
【0018】本発明者は、溶解法ではなく、焼結法を適
用し、その焼結温度を400〜600℃と低温域と設定
することで、溶解法を適用したターゲット組織ではAl
化合物となってしまう(Ti,Zr,Cr,Mo,W,
V,Nb,Ta,B,希土類元素)等の1種または2種
以上のAl化合物形成可能元素を金属状態もしくは元素
単体状態で分散できることを見い出し、このように分散
することによって、Al化合物に起因する空隙の発生を
抑制でき、スパッタリング時のスプラッシュの発生を防
止できることを見いだしたのである。
【0019】具体的には、たとえばAl粉末にTiを2
at%添加して、520、570、620℃の温度で1
00MPaの圧力を適用して焼結すると、それぞれ図1
ないし図3の組織が得られる。図1ないし図3は、40
0倍のターゲットの金属ミクロ組織であり、図1は、A
lマトリックス中に存在する粒子の表面に明確な化合物
層が認められない本発明の組織の一例であり、図2は粒
子表面に化合物層が認められるが、心部は金属状態を保
っている本発明の組織である。一方図3は金属状態を残
さない化合物となっている比較例の組織である。
【0020】本発明は、図1あるいは図2に示すよう
に、Al化合物形成可能元素が金属状態でAlマトリッ
クス中に分散していることを特徴とするものである。A
l化合物形成可能元素がAl化合物のみで分散する場合
よりも、Al化合物形成可能元素を靱性のある状態で組
織に存在させることができる。従って、塑性変形が加わ
る工程においてターゲット組織に空隙の発生するのを防
止できたものである。
【0021】もちろん、本発明においては、金属状態を
残留した粒子の他に、Al化合物粒子が若干分散してい
ても良い。現実的にはAl化合物形成可能元素のうち原
料粉末として粒径の小さいものは、Al化合物粒子とな
る。しかし、微小な粒子は塑性変形時に割れにくく、ス
プラッシュの原因となる空隙を発生しにくいため、大き
な問題とならないのである。スプラッシュの原因となる
のは、Alマトリックス中に存在する特に大きな粒子で
あり、本発明においては、Alマトリックス中に分散す
るAl化合物形成可能元素を含む粒子は、好ましくは外
接円径80μm以下、さらに望ましくは60μm以下と
する。
【0022】本発明においては、焼結後に塑性加工を適
用しなくてもかまわないが、大型ターゲットを製造する
の場合にはこれを適用するのが好ましい。本発明は、A
l化合物形成可能元素を金属の状態で残留させることに
より、特に焼結後に塑性加工を適用する場合において、
Al化合物の割れに起因する空隙の発生を防止し、スプ
ラッシュの発生を抑制することにも一つの特徴がある。
【0023】また、小型のターゲットは、鋳造まま、あ
るいは加工率が少なくても製造することができる。した
がって、マトリックスにAl化合物のみを分散するもの
であっても空隙が発生する頻度が少ない、したがって、
本発明のようにAl化合物形成可能元素が、Alマトリ
ックス中に金属状態で分散しているターゲットは、液晶
ディスプレイ用として使用可能な0.3m2以上という大型
のターゲットに適用することが、スプラッシュ防止の効
果をより明瞭なものとすることができ、有効である。
【0024】上述したAl化合物形成可能元素として
は、ヒロックの防止に効果がある元素が電極や配線形成
用ターゲットとして添加される。具体的に効果のある元
素としては、(Ti,Zr,Cr,Mo,W,V,N
b,Ta、B、希土類元素)の1種または2種以上の金
属あるいは元素単体またはそれらの合金である。特に、
これら元素を添加することで液晶ディスプレイ用Al系
配線等に求められるヒロックを低減し、上記したように
これらの元素が金属もしくは元素単体のまま存在するこ
とによりスプラッシュの発生を低減できる。
【0025】上記したターゲットを製造する方法の最大
の特徴は、Al粉末とAl化合物形成可能元素の粉末と
を混合し、400℃〜600℃という、低温側で焼結す
ることである。好ましくは580℃以下を適用する。こ
れにより、Al化合物形成可能元素をAl化合物のみが
分散する組織ではなく、Al化合物形成可能元素が、金
属もしくは元素(合金も含む)の状態を残して分散した
本発明のターゲット組織を得ることができるのである。
なお、本発明で加圧焼結というのは、大気圧よりも高圧
を意味するものであるが、不完全な焼結を行うと、焼結
に起因する空隙が残留し、スプラッシュが発生するとい
う別の問題が生ずる場合があるため、より好ましくは5
0MPa以上の圧力で加圧焼結する。
【0026】また、本発明の製造方法は、焼結法の適用
により、溶解法を適用することにより生じていた問題点
の多くを解決することができる。たとえば、上述したよ
うに、ターゲット組織に生じた空隙は、スプラッシュの
原因となるため、できる限り少ないものとすることが必
要である。しかし、溶解法では、Alは熱収縮が大きい
ために引け巣が生じ易く空隙が発生しやすい。また、A
lは、溶融時に水素を溶存するが凝固時に水素を放出す
るという独特の現象がある。そのため、溶解法では凝固
時に発生する水素に起因した微細な欠陥(空隙)が発生
しやすい。また、Alと添加元素はAl化合物を形成す
るが、軽いAlと添加元素化合物が重力偏析を引き起こ
しやすく、溶解法では組成が均一になりにくいという問
題もある。
【0027】さらに、これらの問題は、大型のインゴッ
トを溶解法で製造する場合、さらに深刻となる。大型化
により、熱収縮が大きくなり引け巣が大きくなるととも
に、冷却速度が遅くなり重力偏析により均一な組成とな
りにくい。また、重力偏析を防ぐために急冷すると放出
された水素が抜けづらくなり、水素欠陥が発生が多くな
る。これに対して、焼結法を適用する本発明では、鋳造
時の巣の発生や、溶存ガスの放出に起因する空隙の発生
はない。また、粉末状態で混合できるため、重力偏析も
実質的に起こらず、均質なターゲットを得ることができ
るのである。
【0028】
【実施例】
(実施例)窒素アトマイズにより製造した市販の平均粒
径70μmの純Al粉末と市販の平均粒径20μmのT
i、Ta、W、B、Gd、Nd、Y、Zrの金属粉末を
表1に示す組成にV型ブレンダーで混合し、鉄製の缶に
充填し、10マイナス4乗Paより真空に引きながら加
熱して脱ガス処理を行った後に封止した。なお、原料粉
末を充填した缶の大きさは80mm×350mm×350mm
である。その後520℃、100MPaの圧力で熱間静
水圧プレス装置を用いて焼結を行いインゴット製造し
た。このインゴットを圧延により、800mm×700mm
×8mmの板材に加工した後、機械加工により690mm×
550mm×6mmのターゲットを製造した。また比較のた
めに、熱間静水圧プレス温度を620℃に変更した例を
試料12として示す。また、到達真空度 10マイナス
4乗Paに排気した真空溶解鋳造炉を用いて、Tiを混
入させたAl原料を溶解した後、鋳型に注入してAlの
インゴットを製造し、同様の圧延を行い、ターゲットを
製造した比較例を試料13として示す。
【0029】
【表1】
【0030】次に、ターゲットを切り出した板材から、
試験片を採取し、400倍のミクロ観察とX線分析によ
り、ターゲット組織中に分散する添加物粉末を起源とす
る粒子を分析して、化合物となっているか金属として残
留しているかを確認した。その結果、本発明のターゲッ
トである試料1ないし11は、図1もしくは図2に示す
組織と同様の組織となった。本発明の組織においては、
添加元素粒子とAlマトリックスの界面で拡散し、Al
化合物粒子となったものも確認されたが、特に添加元素
粉末の最大径が20μmを越えるものには心部までAl
の拡散が到達しておらず、金属もしくは元素状態が保た
れていた。
【0031】一方、比較例として示した熱間静水圧プレ
ス温度を620℃とした試料12は、図3に示す組織と
なり、組織中に分散する添加元素粒子は最大径によら
ず、すべてAl化合物であった。また、比較例の溶解鋳
造して得たインゴットからターゲットを得た試料13に
も組織中に分散する粒子に金属状態を保ったものは認め
られなかった。また、ターゲットを切り出した板材か
ら、試験片を切り出し、400倍の光学顕微鏡にて観察
し、2μm以上の空隙を欠陥とターゲット中の単位面積
(0.01m2)当たりの欠陥数として評価した。また、Al
マトリックス中に存在する粒子の最大外接円径(粒子の
最大径と表記する)を測定した。結果を表1に示す。
【0032】これらのターゲットを用いてAr圧力0.2P
a、ターゲット印加電力は8W/cm2として、実験用100
×100mmサイズのガラス基板に150nmの膜厚の薄膜を形成
した。このとき形成した薄膜上に認められる2μm以上
の異物をスプラッシュとしてカウントした。その結果を
表1に付記した。表1の試料1〜11に示すように、本
発明のターゲットは、比較例のターゲットに比較して、
欠陥が少なくスプラッシュの発生が少ないことがわか
る。一方、高い焼結温度を適用して添加した元素がすべ
て化合物となった比較例12においては、欠陥数および
スプラッシュ数が本発明の試料に比べて著しく多い結果
となった。
【0033】
【発明の効果】本発明によれば、スプラッシュの発生が
大きな問題であった0.3m2以上スパッタ平面積を有する
LCD用Al系ターゲットに対して、ヒロック防止のた
めにターゲットに添加する元素を金属状態もしくは元素
単体状態で組織中に残留させることにより、空隙を少な
くでき、結果としてスプラッシュを抑制することが可能
となった。したがって、本発明は今後さらに大型化が求
められるLCD等に対応するターゲットとして、LCD
等の品質向上を達成する上で極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すターゲットの金属ミク
ロ組織写真である。
【図2】本発明の別の実施例を示すターゲットの金属ミ
クロ組織写真である。
【図3】比較例を示すターゲットの金属ミクロ組織写真
である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Al化合物形成可能元素が、Alマトリ
    ックス中に金属状態もしくは元素単体状態で分散してい
    ることを特徴とするAl系スパッタリング用ターゲッ
    ト。
  2. 【請求項2】 Al化合物形成可能元素は、外接円径8
    0μm以下の粒子としてAlマトリックス中に分散して
    いることを特徴とする請求項1に記載のAl系スパッタ
    リング用ターゲット。
  3. 【請求項3】 0.3m2以上のスパッタ平面積を有するこ
    とを特徴とする請求項1または2に記載のAl系スパッ
    タリング用ターゲット。
  4. 【請求項4】 Al化合物形成可能元素は、(Ti,Z
    r,Cr,Mo,W,V,Nb,Ta,B,希土類元
    素)の1種ないし2種以上であることを特徴とする請求
    項1ないし3のいずれかに記載のAl系スパッタリング
    用ターゲット。
  5. 【請求項5】 ターゲット中の2μm以上の欠陥個数
    が、0.01m2当たり、1個以下であることを特徴とする請
    求項1ないし4のいずれかに記載のAl系スパッタリン
    グ用ターゲット。
  6. 【請求項6】 Al粉末と、Al化合物を形成可能元
    素の粉末とを混合し、400℃〜600℃で加圧焼結す
    ることを特徴とするAl系スパッタリング用ターゲット
    の製造方法。
  7. 【請求項7】 加圧焼結後、圧延により板状にし、圧延
    面側をスパッタリング面とすることを特徴とする請求項
    6に記載のAl系スパッタリング用ターゲットの製造方
    法。
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