JP2001217764A - 単一周波数中継放送装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】パイロット信号発生器等を付加することなく、
受信信号から自局回り込み成分をキャンセルし、装置が
発振する現象などを低減する単一周波数放送波中継装置
の提供。 【解決手段】受信増幅部の出力と送信増幅部の出力の一
部とを加算合成する合成器と、合成器の出力の一部を分
配する分配器と、分配器の出力のうち、特定のＩＭ成分
を抽出するフィルタと、フィルタの出力を増幅する増幅
器と、増幅器の出力を検波してＩＭ成分のレベルを検知
する検波器と、検波器の出力から、残留している回り込
み成分を導出するＣＰＵと、送信増幅部の出力の一部を
取り出す方向性結合器と、遅延回路と、遅延回路の出力
を入力としレベルおよび位相をそれぞれ制御する可変抵
抗減衰器および可変位相調整器と、を備え、ＣＰＵ、検
波器の出力から残留しているＩＭ成分を検知し、その値
に従って可変抵抗減衰器および可変位相調整器を制御し
て帰還量を変化させ、受信信号のうち自局回り込み成分
を打ち消す。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は単一周波数中継放送
装置に関し、特に、単一周波数放送波の中継を行う中継
装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】将来実施が予定されている地上波デジタ
ルテレビ放送において、周波数の有効利用の観点から、
単一周波数で放送を行うことが検討されており、その単
一周波数放送には中継装置が必要とされる。

【０００３】かかる中継装置は、無線放送信号を受信ア
ンテナで受信し、これを増幅したのち、受信放送波信号
と同一周波数で送信信号として送信アンテナから再送信
するため、送信アンテナから送信した信号の一部が空間
を介して回り込み、電波として受信アンテナで再受信さ
れる、いわゆる自局かぶり、が生じ、この自局かぶりに
より、正規の受信信号に対して、回り込みによる送信信
号が干渉信号として作用し、装置の発振等、中継装置の
機能を阻害し、回り込みをどのように克服するかが、大
きな問題となっている。

【０００４】自局かぶりの対策として、現状では、送信
所と受信所を分離した送受分離方式が有力であるが、こ
の方式は、送信所の他に受信所を設置する必要がある。
送受分離を行うためには、新たに受信所を設置する必要
があり、受信所のための土地の確保、受信所局舎の建設
費用と、莫大な費用がかかる、という問題点を有してい
る。

【０００５】そして、現状の中継放送は、自局回り込み
の問題から、送信と受信はチャンネル（周波数）を換え
ており、ほとんどの中継放送局では、送受分離を行って
いない。

【０００６】かかる問題に対処するための中継装置とし
て、例えば特許第２９５４１８１号には、単一周波数放
送波を受信する受信アンテナと、前記放送波とは異なる
周波数のパイロット信号を発生するパイロット信号発生
器と、前記受信アンテナからの受信信号から前記パイロ
ット信号を分離抽出する第１のフィルタと、受信した前
記単一周波数放送波を受信時と同一周波数で、かつ前記
パイロット信号発生器からのパイロット信号とともに送
信する送信アンテナと、送信アンテナに入力される、前
記受信単一周波数放送波と前記パイロット信号発生器か
らのパイロット信号とを含む送信信号から前記パイロッ
ト信号を分離抽出する第２のフィルタと、前記第１、第
２のフィルタの各出力信号の位相及びレベルをそれぞ比
較して位相差検出信号及びレベル差検出信号を出力する
比較手段と、前記比較手段からの位相差検出信号及びレ
ベル差検出信号に基づいて、上位位相差及びレベル差を
無くすように前記送信信号の位相及びレベルを調整して
から、前記受信アンテナからの受信信号に逆相で合成す
る処理手段と、前記処理手段より取り出された受信信号
に前記パイロット信号を合成した前記送信信号を生成
し、前記送信信号を、前記送信アンテナ及び前記処理手
段で出力する第１の合成器を備えた単一周波数放送波中
継装置の構成が開示されている。

【０００７】上記特許第２９５４１８１号に記載された
単一周波数放送波中継装置は、装置内に配設されたパイ
ロット信号発生器からのパイロット信号を送信信号に多
重し、受信部で、このパイロット信号を用いて、親局か
らの信号と、自局回り込み成分とを区別することによ
り、受信信号から、親局からの信号だけを選別して再送
信する構成としている。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特
許第２９５４１８１号に記載された単一周波数放送波中
継装置においては、パイロット信号を用いるため、不要
な成分を送信することになり、周波数有効利用の点か
ら、決して、得策とはいえない。

【０００９】また、装置内に、パイロット信号発生器を
具備することが必要とされており、装置の構造が複雑化
する、装置の価格の低減が困難である、という問題点を
有している。

【００１０】したがって、本発明は、上記問題点に鑑み
てなされたものであって、その目的は、送信信号にパイ
ロット信号を付加することなく、受信信号から、自局回
り込み成分をキャンセルすることにより、装置が発振す
る現象などを低減する単一周波数放送波中継装置を提供
することにある。

【００１１】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成する本発
明の単一周波数中継放送装置は、装置内の電力増幅部で
発生する複数のキャリアの相互変調により生じるＩＭ成
分を検出し、受信アンテナで受信した受信信号と、前記
ＩＭ成分の逆極性の信号とを合成することで、前記受信
信号から親局からの信号のみを選別して再送信する、構
成とされている。本発明は、受信増幅器の出力と送信増
幅器の出力の一部とを合成する合成器と、前記合成器の
出力から所定のＩＭ（Inter Modulation：相互変調）
成分を検出する手段と、前記検出されたＩＭ成分に基づ
き、前記送信増幅器の出力の一部を取り出した信号のレ
ベルと位相を制御して自局回り込み信号と同レベルで逆
相となるように調整し、前記送信増幅器の出力の一部と
して前記合成器に入力する手段と、を備えている。

【００１２】

【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について説明
する。本発明は、単一周波数中継放送装置において、自
局送信電波が受信空中線に回り込むこと（「自局回り込
み」という）により、装置が発振するなどの現象を、装
置内の電力増幅部で発生する複数のキャリアの相互変調
により生じる成分（「ＩＭ成分」という）を検出するこ
とにより、親局からの信号と、自局回り込みとと、を区
別し、受信信号から親局からの信号のみを選別して再送
信する、ことにより、装置の発振現象などを抑制してい
る。

【００１３】本発明の装置は、その好ましい一実施の形
態において、図１を参照すると、受信増幅部（２）と、
送信増幅部（３）と、を有する中継放送装置において、
受信増幅部（２）の出力に、送信増幅部（３）の出力の
一部を加算合成する合成器（１１）と、合成器（１１）
の出力の一部を分配する分配器（１２）と、分配器（１
２）の出力のうち特定のＩＭ成分を抽出するフィルタ
（１３）と、ＩＭ成分のレベルを検知する検波器（１
５）と、検波器（１５）の出力から、残留している回り
込み成分を計算し、可変抵抗減衰器（２３）、可変位相
調整器（２４）に指示を与える制御を行うＣＰＵ（中央
演算処理装置）（１６）と、送信増幅部（３）の出力の
一部を取り出す方向性結合器（２１）と、方向性結合器
（２１）の出力を一定時間遅延させる遅延回路（２２）
と、遅延回路２２出力のレベル及び位相を制御する可変
抵抗減衰器（２３）及び可変位相調整器（２４）と、を
有しており、可変抵抗減衰器（２３）及び可変位相調整
器（２４）でレベル及び位相が制御された信号が、送信
増幅部（３）の出力の一部として、合成器（１１）に入
力される。

【００１４】検波器（１５）により、残留しているＩＭ
成分を検知し、その値に従って、可変抵抗減衰器（２
３）及び可変位相調整器（２４）を制御して、帰還量を
変化させ、受信信号のうち自局回り込み成分を打ち消
す。

【００１５】本発明の単一周波数中継放送装置は、上記
特許第２９５４１８１号とは相違して、パイロット信号
を送信信号に付加することなく（パイロット信号発生器
を内蔵することは必要とされない）、受信信号から時局
回り込み成分をキャンセルすることにより、装置が発振
する現象などを抑止低減している。

【００１６】

【実施例】本発明の実施例について図面を参照して以下
に説明する。図１は、本発明の一実施例の構成を示す図
である。図１を参照すると、本発明の一実施例は、受信
増幅部２と、送信増幅部３と、を有する単一周波数中継
放送装置において、受信増幅部２の出力に、送信増幅部
３の出力の一部を加算合成する合成器１１と、合成器１
１の出力の一部を分配する分配器１２と、分配器１２の
出力の内、特定のＩＭ成分を抽出するフィルタ１３と、
フィルタ１３の出力を増幅する増幅器１４と、増幅器１
４の出力を検波して、ＩＭ（Ｉnter Modulation：相互
変調）成分のレベルを検知する検波器１５と、検波器１
５の出力から、残留している回り込み成分を計算し、計
算結果に基づき、可変抵抗減衰器２３、可変位相調整器
２４に対して指示を与えるＣＰＵ１６と、送信増幅部３
の一部を取り出す方向性結合器２１と、方向性結合器２
１を一定時間遅延させる遅延回路２２と、遅延回路２２
出力のレベル及び位相を制御する可変抵抗減衰器２３及
び可変位相調整器２４を有している。

【００１７】受信アンテナ１で受信される信号には、親
局からの信号Ａと、送信アンテナ４から回り込んでくる
信号Ｂとがあり、これらは周波数が同じであるため、信
号Ａ、Ｂを区別することはできない。

【００１８】図２（ａ）、図２（ｂ）は、図１の信号
Ａ、及び信号Ｂの周波数領域でのスペクトラムの一例を
それぞれ示す図である。

【００１９】図２（ｃ）は、受信アンテナ１で受信した
信号の周波数領域でのスペクトラムの一例を示す。な
お、図２（ｃ）は、ベクトル図として表しており、親局
からの信号Ａと、送信アンテナ４から回り込んでくる信
号Ｂとが、ある位相関係で合成されていることを示して
いる。図２（ｃ）に示すように、送信アンテナからの信
号Ｂは、送信増幅部３を通っているため、ＩＭが発生し
ている。従って、このＩＭを観測することにより、信号
Ａ、Ｂを区別することが可能である。

【００２０】方向性結合器２１から抽出された信号は、
遅延回路２２により、送信アンテナ４から受信アンテナ
１を経て入力される自局回り込み信号と同じ遅延を与え
られ、可変抵抗減衰器２３と可変位相調整器２４によ
り、自局回り込み信号と逆相で、同レベルに調整され、
合成器１１において、アンテナ１からの受信信号と合成
することで、受信信号から、自局回り込み信号のみを相
殺（キャンセル）することができ、親局からの信号Ａの
みを抽出することができる。

【００２１】この動作を、図２（ｄ）を参照して説明す
る。図２（ｄ）は、図２（ｃ）と同様に、ベクトル図が
示されている。図２（ｄ）において、帰還信号は、方向
性結合器２１、遅延回路２２、可変抵抗減衰器２３、可
変位相調整器２４を経て、合成器１１に供給される信号
であり、送信アンテナ４から回り込んでくる信号と、逆
相で、同レベルに調整されている。帰還信号と送信アン
テナ４から回り込んでくる信号とは、互いに打ち消しあ
う。

【００２２】ここで、方向性結合器２１から抽出された
信号を、自局回り込み信号と逆相で同レベルに調整する
方法について、以下に説明する。

【００２３】分配器１２により、方向性結合器２１によ
り合成された信号の一部を抽出し、ＩＭ成分のみ観測す
るため、フィルタ１３で予め与えられた周波数成分のみ
選択し、増幅器１４で増幅した後、検波器１５でそのＩ
Ｍ成分を検波し、残留しているＩＭ成分の量を検知す
る。

【００２４】検波器１５で得られたＩＭ成分の量は、デ
ィジタル信号形式でＣＰＵ１６に入力され、ＣＰＵ１６
において、残留しているＩＭ成分の量が最小になるよう
に可変抵抗減衰器２３と可変位相調整器２４を制御す
る。ＣＰＵ１６における制御方法（アルゴリズム）は、
例えば以下のようにすることにより実現可能である。

【００２５】ステップ１： 検知器１５で得たパイロッ
ト信号（モニタ信号）のレベルから、あらかじめ測定を
行って設定された、レベル差、及び、位相差を格納した
テーブル（記憶部）を参照し、可変位相調整器８及び可
変減衰器７に指示を与え、パイロット信号のレベルを読
む。

【００２６】ステップ２： レベル及び位相を若干変更
するよう可変位相調整器８及び可変減衰器７に指示を与
え、残留しているパイロット信号のレベルを読む。

【００２７】ステップ３： ステップ２の結果、残留し
ているパイロット信号のレベルが少なければ、ステップ
２のレベル及び位相を採用し、そうでなければ、ステッ
プ２の一つ前のレベル及び位相を採用する。

【００２８】上記ステップ２からステップ３を、数回繰
り返す。

【００２９】本発明においては、受信信号から、自局回
り込み成分のみを打ち消し、親局からの信号のみを抽出
するため、自局回り込みが多い場合でも、自局かぶりに
よる発振を抑えることができる。また、発振に至らない
場合でも、自局回り込みによって発生するゴーストによ
る特性劣化を低減する。単一周波数で中継放送を行う場
合に、自局回り込みを避けるために受信アンテナを送信
アンテナから離して設置するいわゆる送受分離を行うこ
とを不要とし、設備費用の低減を図っている。

【００３０】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば下
記記載の効果を奏する。

【００３１】本発明の第１の効果は、受信信号から自局
回り込み成分のみ打ち消して親局からの信号のみを抽出
する構成としたことにより、自局回り込みが多い場合で
も、自局かぶりによる発振を抑えることができる、とい
うことである。

【００３２】本発明の第２の効果は、発振に至らない場
合でも、自局回り込みによって発生するゴーストによる
特性劣化を低減することができる、ということである。

【００３３】本発明の第３の効果は、単一周波数で中継
放送を行う場合に、自局回り込みを避けるために受信ア
ンテナを送信アンテナから離して設置するいわゆる送受
分離を行う必要がなくなり、設備費用の低減を行うこと
ができる、ということである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例の構成を示す図である。

【図２】（ａ）は、図１のＡポイントでのスペクトラ
ム、（ｂ）は、図１のＢポイントでのスペクトラム、
（ｃ）は、図１のＣポイントでのスペクトラム、（ｄ）
は、図１のＤポイントでのスペクトラム、をそれぞれ示
す図である。

【符号の説明】 １ 受信アンテナ ２ 受信増幅部 ３ 送信増幅部 ４ 送信増幅部 １１ 合成器 １２ 分配器 １３ フィルタ １４ 増幅器 １５ 検波器 １６ ＣＰＵ ２１ 方向性結合器 ２２ 遅延回路 ２３ 可変抵抗減衰器 ２４ 可変位相調整器

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】受信増幅器の出力と送信増幅器の出力の一
   部とを合成する合成器と、 前記合成器の出力から所定のＩＭ（Inter Modulatio
   n：相互変調）成分を検出する手段と、 前記検出されたＩＭ成分に基づき、前記送信増幅器の出
   力の一部を取り出した信号のレベルと位相を制御して自
   局回り込み信号と同レベルで逆相となるように調整し、
   前記送信増幅器の出力の一部として前記合成器に入力す
   る手段と、 を備えた、ことを特徴とする単一周波数中継放送装置。
2. 【請求項２】受信アンテナで受信した信号を入力する受
   信増幅部と、送信アンテナに送信信号を出力する送信増
   幅部と、を有する単一周波数中継放送装置において、 前記受信増幅部の出力と、前記送信増幅部の出力の一部
   とを合成する合成器と、 前記合成器の出力の一部を分配する分配器と、 前記分配器の出力から特定のＩＭ成分を抽出するフィル
   タと、 前記フィルタの出力を増幅する増幅器と、 前記増幅器の出力を検波してＩＭ成分のレベルを検知す
   る検波器と、 前記検波器の出力から、残留している回り込み成分を導
   出する演算制御部と、 前記送信増幅部の出力の一部を取り出す方向性結合器
   と、 前記方向性結合器の出力を予め定められた時間遅延させ
   る遅延回路と、 前記遅延回路の出力のレベル及び位相をそれぞれ制御す
   る可変抵抗減衰器及び可変位相調整器と、 を備え、 前記可変抵抗減衰器及び前記可変位相調整器でレベル及
   び位相が制御された信号が、前記送信増幅部の出力の一
   部として、前記合成器に帰還入力され、 前記演算制御部は、前記検波器の出力から残留している
   ＩＭ成分を検知し、その値に従って、前記可変抵抗減衰
   器及び前記可変位相調整器を制御して、帰還量を変化さ
   せ、受信信号のうち自局回り込み成分を打ち消す、こと
   を特徴とする単一周波数中継放送装置。
3. 【請求項３】前記遅延回路は、前記送信アンテナから前
   記受信アンテナを経て入力される自局回り込み信号と同
   じ遅延時間を有し、 前記遅延回路の出力が前記可変抵抗減衰器と前記可変位
   相調整器により、自局回り込み信号と、同レベルで逆相
   に調整され、前記合成器に入力される、ことを特徴とす
   る請求項２記載の単一周波数中継放送装置。
4. 【請求項４】前記演算制御部が、残留しているＩＭ成分
   の量が、最小となるように前記可変抵抗減衰器の減衰量
   と、前記可変位相調整器の位相を制御する、ことを特徴
   とする請求項２又は３記載の単一周波数中継放送装置。