JP2001211894A - 水素資化メタン菌からのビタミンb12の生産方法 - Google Patents

水素資化メタン菌からのビタミンb12の生産方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ビタミンB12を高い含有量と回収率で効率的
に生産する。 【解決手段】 消化汚泥から得た中温メタン菌をH2
CO2 を培地として馴化を行い、馴化メタン菌を微量金
属要素の無機栄養塩包括担体上で固定床バイオリアクタ
ーにより増殖させ、石炭ガスおよびバイオガスの少くと
も1種に水素を加えた混合ガスを資化させてメタンに改
質させると同時に、菌体外生成物として発酵液中に存在
するコバラミンをシアン化カリウムを用いてシアノコバ
ラミンとして回収する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、ビタミン
12の生産方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】コバラミン、すなわちビタミ
ンB12類縁体は化学合成が困難であり、バクテリアや放
線菌から生合成され、酵母、カビ、植物、動物には生合
成能力がないことが知られている。産業上はメタノール
を基質とするプロピオン酸菌の菌体から抽出することが
行われている。このようなビタミンB12は、薬品として
利用されることが主であるが、近年では、食品の中に添
加する機能性食品の開発や健康維持食品への需要が高ま
り、低コスト化が望まれている。
【0003】従来、プロピオン酸菌からのビタミンB12
の生産はメタノールを基質とすること、ならびにこの菌
の増殖は通性嫌気性菌であるためにきわめて遅く、また
プロピオン酸を酢酸に変換するために、酢酸による増殖
阻害が発生し、発酵液中の菌体密度が高くならず、菌体
から抽出できるビタミンB12は1mg/L程度でその生
産性は低い。そして、永久史郎ら(生物工学会誌、 76
(6)、447-455 、1998)はメタノールを基質とするメタ
ン菌の固定床バイオリアクターを用いて、メタン菌とプ
ロピオン酸菌のビタミンB12の生産量との比較を行い、
約10倍の収量が得たが、主成分がコバラミンの型が少
ないコリノイドであり、この場合にはメタノールとの分
離法が複雑になりビタミンB12の回収率が上がらないこ
と、ビタミンB12の含有量が少ないので生産コストダウ
ンに結びつかないという問題がある。
【0004】そこで、この出願の発明は、以上のような
従来技術の問題点を解消し、ビタミンB12を高い含有量
と回収率で効率的に生産することのできる新しい方法を
提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記
の課題を解決するものとして、第1には、消化汚泥から
得た中温メタン菌をH2 /CO2 を培地として馴化を行
い、馴化メタン菌を微量金属要素の無機栄養塩包括担体
上で固定床バイオリアクターにより増殖させ、石炭ガス
およびバイオガスの少くとも1種に水素を加えた混合ガ
スを資化させてメタンに改質させると同時に、菌体外生
成物として発酵液中に存在するコバラミンをシアン化カ
リウムを用いてシアノコバラミンとして回収することを
特徴とするビタミンB12の生産方法を提供する。
【0006】また、第2には、消化汚泥から得た中温メ
タン菌をH2 /CO2 を培地として馴化を行い、馴化メ
タン菌を微量金属要素含有の限外濾過膜併用懸濁培養リ
アクターにより増殖させ、限外濾過膜の透過液中に含ま
れる細胞外コバラミンをシアン化カリウムを用いてシア
ノコバラミンとして回収し、石炭ガスおよびバイオガス
の少くとも1種に水素を加えた混合ガスを資化させるた
めにメタン菌を限外濾過膜から培養液中に戻して培養す
ることを特徴とするビタミンB12の生産方法を提供す
る。
【0007】また、この出願の発明は、第3には、上記
方法において微量金属濃度を標準組成の10〜1000
倍とする方法を、第4には、水素資化メタン菌の培地の
微量金属塩の濃度のうち、Co/Fe比を標準組成比よ
り10〜100倍にする方法を提供する。
【0008】さらに、この出願の発明は、第5には、石
炭ガスやバイオガスに水素を添加する方法として、固定
床または縣濁型バイオリアクターの底部に多孔性セラミ
ックスを介して陰極部を上部に陽極部を下部に置き、直
流電圧印加し、培養液中の水を電気分解することによっ
て、発生する水素を微量要素強化担体固定床または膜複
合型メタン発酵バイオリアクターへ利用し、酸素を大気
放出するメタン発酵方法を、第6には、菌体外生産物で
あるコバラミンをシアン化カリウムによって、シアノコ
バラミンとして抽出した残液に直流電圧を印加し、電気
分解を行い、これらから得られた水素を一酸化炭素や二
酸化炭素を含む石炭ガスやバイオガスに供給し、膜複合
バイオリアクターや固定床リアクターによってメタネー
ションを行うことを特徴とするガスの改質法を提供す
る。
【0009】すなわち、この出願の発明は、発明者ら
が、微量要素・無機栄養塩包括担体(特願平9−140
181、特開平10−327850)の開発中にバイオ
ガス中のCO2 (約40%)をH2 の添加によるCH4
化(メタネーション)を試みた実験において、従来の報
告でメタン生成菌以外の菌ではビタミンB12の大部分が
菌体中に存在していると言うことであったが、メタネー
ション化(4H2 +CO 2 →CH4 +2H2 O)の実験
においては培養液中に存在するビタミンB12が全体量の
70%になる菌体外溶出が起こり、メタン菌体中には3
0%しかないことがビタミンB12の物質収支の計算から
判明したことと、中温メタン菌を水素と二酸化炭素の混
合ガスを基質とする馴化培養で選択培養したメタン菌は
発酵液中から高い濃度のコバラミン(ビタミンB12類縁
体)をシアノコバラミンとして抽出可能であるとの知見
を得たことを契機とし、またこれらを踏まえて完成され
ている。
【0010】
【発明の実施の形態】この出願の発明は上記のとおりの
特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態につい
て説明する。
【0011】まず、この出願の発明方法においては、基
本的には、 1)消化汚泥から得た中温メタン菌をH2 /CO2 を培
地として馴化を行い、 2)馴化メタン菌を、微量金属要素の無機栄養塩包括担
体上での固定床バイオリアクターにより増殖させ、 3)石炭ガス、バイオガスに水素を加えた混合ガスを資
化させメタンに改質させると同時に、 4)菌体外生成物として発酵液中に存在するコバラミン
をシアン化カリウムを用いてシアノコバラミン、すなわ
ちビタミンB12として回収する。
【0012】この方法では、たとえば、前記包括担体に
おいて、微量金属濃度を従来の10〜1000倍に高め
ることが有効である。そして、また、限外ろ過膜を併設
した膜複合型バイオリアクターにおける懸濁培養等にお
いても微量金属塩濃度と栄養塩濃度を従来より、10〜
1000倍高くすることが有効である。この限外ろ過膜
併用縣濁培養については、この発明では、前記のよう
に、消化汚泥から得た中温メタン菌をH2 /CO2 を培
地として馴化を行い、馴化メタン菌を微量金属要素含有
の限外濾過膜併用懸濁培養リアクターにより増殖させ、
限外濾過膜の透過液中に含まれる細胞外コバラミンをシ
アン化カリウムを用いてシアノコバラミンとして回収
し、石炭ガスおよびバイオガスの少くとも1種に水素を
加えた混合ガスを資化させるためにメタン菌を限外濾過
膜から培養液中に戻して培養するビタミンB12の生産方
法が提供されることになる。
【0013】以上のいずれの方法においても、この発明
では、特にCo/Feの比率を10〜100倍大きくす
る培地の部分的な改変によって、培養塩中のコバラミン
の濃度を高めることができる。従って、この出願の発明
はCO2 やCOの多い石炭ガスやバイオガスの100%
CH4 化を図るメタネーションによる石炭ガスやバイオ
ガス組成の改質を行うと同時にこの培養液からシアン化
カリウムを用いてシアノコバラミン(ビタミンB12)化
することにより、ビタミンB12の回収は従来の菌体から
の回収法に比べ非常に簡素化され、ビタミンB12の濃度
もプロピオン酸菌に比べ、50〜100倍となり、メタ
ノール資化メタン菌(永井史郎:1996,生物工学会
誌 74(6), 447-455)からの回収の2−10倍に達し、
V.B12の製造コストを極めて低くできる。
【0014】次に添付図面に従い、この出願の発明につ
いてさらに説明する。図1は中温メタン菌を水素80
%、二酸化炭素20%のガスを基質として液体状の標準
合成培地を用いて十分馴化したメタン菌を、同じ中温
(35℃〜36℃)で、栄養塩や微量金属塩を従来の1
0〜1000倍に高めた無機栄養塩包括担体(特願平9
−140181、特開平10−327850、微量要素
・無機栄養塩類拡散型菌体培養担体)を用いて連続培養
した時のメタン菌体密度の増加を示したものである。メ
タン菌体密度が26g−dry/Lの時ビタミンB12
濃度は185mg/Lに達した。これはプロピオン酸菌
による方法の50〜100倍であった。
【0015】また、図2は、従来法の10倍の微量金属
濃度の合成培地に水素80%二酸化炭素20%を基質と
して吹き込み、懸濁培養液中の菌体内V.B12と菌対外
のV.B12の割合を調べたところ、それぞれ30%と7
0%になっていることが判り、微量要素・栄養塩包括担
体を用いる菌体外溶出ビタミンB12を分離する方が効率
的生産が可能となると考えられる。
【0016】そして、図3は二酸化炭素濃度40%〜6
0%、水素濃度60%の混合ガスを基質として微量要素
・栄養塩包括担体中の微量元素のコバルトと鉄との比率
をバラメータとしてバイオリアクタを運転し、シアノコ
バラミンの濃度を示したものである。コバラミンはビタ
ミンB12の類縁体であり、コバルト要求性が高いことが
わかる。
【0017】図4は、炭酸ガスバイオガスに水素を流加
する方法としてバイオガスリアクターで多孔質セラミッ
クス1をリアクター2の底部に置き、その下とリアクタ
ー2の最下部の液中に正極10に相当する金属極(チタ
ン、鉄)を置き、多孔質セラミックス1の真上の散気ノ
ズル5の真上に白金又はチタン製の陰極4電極板を置
き、電圧20〜100Vを印加する。これによって水素
が陰極4の板に、酸素は正極10の電極板上に発生する
が酸素放出部9を設けてブロアB2により大気に拡散さ
れる。多孔質セラミックス1の間隙のサイズは発生した
酸素の気泡の直径より1/20〜1/100に小さくし
ておき、ブロアによって常に大気圧より高い圧力にして
おけば、電気分解により発生した酸素を多孔質セラミッ
クス1を通してリアクター2内に侵入することはないの
で、バイオリアクター内の絶対嫌気性が保持できる。担
体充填槽3は微量要素・包括担体を固定床になるように
リアクター2に組み込んである。この容積は有効容積の
30〜60%として充填している。石炭ガスやバイオガ
スは13の圧力検出制御器の指示によりバイオガス又は
石炭ガス送入管8から入るが、電磁弁11と12の開操
作によりB1のブロアの動作で循環し、二酸化炭素濃度
が低下し、CH4 濃度が高くなると20のガス濃度検出
制御器の指示で電磁弁6が開になり、7のガスホルダー
にメタンを送気する。バイオリアクター2内圧力が低下
した段階で電磁弁6と12が閉操作となり、バイオガス
又は石炭ガス送入管8から新しくガスが供給される。
【0018】図5は、コバラミンを含む発酵液を17の
電気分解装置によって分解し、水素のみをバイオリアク
ター2に供給し、担体充填槽3の固定床に生息している
メタン菌によってメタネーションがなされ、バイオガス
又は石炭ガス送入管8から供給される二酸化炭素が電気
分解装置17より供給する水素によってメタンとなる。
バイオリアクター内のメタン濃度が上昇し、100%に
近くなったとき、20のガス検出制御器で6のバルブを
開き、7のガスホルダにメタンを送気する。バイオリア
クター内の圧力が低下した段階で電磁弁6と12が閉操
作となり、11の電磁弁の開操作により、バイオガス又
は石炭ガス送入管8から新しくガスが供給される。この
ように図4、5は共にガスを基質とする場合には半連続
操作になる。一方、液の方にはコバラミン濃度が上昇す
るので、15又は16のドレイン弁でこの濃度を調べな
がら、最大濃度に達した時に液を一定量引き抜き、この
液からビタミンB12を回収する。液の引き抜きは8から
新規なガスの供給のもとにドレイン弁15、又は16を
使用して引き抜き、バイオリアクター2内に酸素の浸入
がないような操作手順で行い、その後図4、5の培地用
液供給ノズル21よりポンプを用いて培地溶液を供給す
る。
【0019】これら図4および図5に例示した方法、装
置は、この発明の第1ないし第4のいずれかの方法の実
施において有用となる。次にこの発明の実施例を説明す
る。
【0020】
【実施例】<1>従来法の10倍の微量要素濃度のう
ち、そこに塩化コバルトの濃度を上昇させた回分式懸濁
培養による実験でCO2 20%、H2 80%の合成ガス
を基質とした場合、培養液中のビタミンB12の濃度は4
8時間後に25.2mg/Lとなった。従来のプロピオ
ン酸菌から得られたビタミンB12の濃度の文献値は0.
5〜1mg/Lであったので、この発明の方法は、ビタ
ミンB12の収量の高いことと、シアノコバラミンが菌体
外に溶出して培養液中からの回収が容易であることを確
認した。 <2>従来法の1000倍の濃度をもつ溶液と微量要素
・栄養包括固定担体に閉じ込めたものを5Lの容の固定
床バイオリアクター充填し、CO2 40%、CH 4 60
%のバイオガス中に、培養液を電解法によって水素を連
続供給し、バイオガスの改質連続運転を行い、98−9
9%のCH4 に改質できた。また、同時に培養液中のビ
タミンB12の濃度は180mg/Lに達した。これはプ
ロピオン酸菌による方法の50−100倍であり、生産
速度も25−50倍であった。
【0021】以上より、実施例の具体的作用と特有の効
果をまとめると次のとおりである。 1.微量金属塩を強化した培養液からビタミンB12を回
収し、菌体そのものからビタミンB12を回収するもので
はないので高密度の菌体の維持が可能となり、菌体外生
産物であるコバラミンを従来法よりはるかに超えて回収
し、ビタミンB 12の収率を高くすることができる。
【0022】2.水素の供給は当該バイオリアクター中
の溶液そのものを電解法により供給できるので、バイオ
ガスや石炭ガスの改質ならびに高エネルギー化が達成で
きる。
【0023】3.ビタミンB12の回収法はシアン化カリ
ウムを用いることでシアノコバラミンとしての回収が単
純化され、ビタミンB12の製造コストを更に低くするこ
とができる。
【0024】
【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、この出願の
発明によって、高い回収率と、高い含有量で、従来に比
べてはるかに効率的にビタミンB12の生産が可能とされ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】メタン菌体密度の増加を例示した図である。
【図2】菌体内ビタミンB12と菌体外ビタミンB12の割
合を例示した図である。
【図3】Co/Fe比とシアノコバラミン密度との関係
を例示した図である。
【図4】バイオリアクターの構成例を示した図である。
【図5】バイオリアクターの別の構成例を示した図であ
る。
【符号の説明】
1 多孔質セラミックス 2 リアクター 3 担体充填槽 4 陰極 5 散気ノズル 6 電磁弁 7 ガスホルダー 8 バイオガス又は石炭ガス送入管 9 酸素放出部 10 正極 11 電磁弁 12 電磁弁 13 圧力検出制御器 14 逆止弁 15 ドレイン弁 16 ドレイン弁 17 電気分解装槽 18 限外濾過膜ユニット 19 圧力制御電磁弁 20 ガス濃度検出制御器 21 培地用液供給ノズル

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 消化汚泥から得た中温メタン菌をH2
    CO2 を培地として馴化を行い、馴化メタン菌を微量金
    属要素の無機栄養塩包括担体上で固定床バイオリアクタ
    ーにより増殖させ、石炭ガスおよびバイオガスの少くと
    も1種に水素を加えた混合ガスを資化させてメタンに改
    質させると同時に、菌体外生成物として発酵液に中存在
    するコバラミンをシアン化カリウムを用いてシアノコバ
    ラミンとして回収することを特徴とするビタミンB12
    生産方法。
  2. 【請求項2】 消化汚泥から得た中温メタン菌をH2
    CO2 を培地として馴化を行い、馴化メタン菌を微量金
    属要素含有の限外濾過膜併用懸濁培養リアクターにより
    増殖させ、限外濾過膜の透過液中に含まれる細胞外コバ
    ラミンをシアン化カリウムを用いてシアノコバラミンと
    して回収し、石炭ガスおよびバイオガスの少くとも1種
    に水素を加えた混合ガスを資化させるためにメタン菌を
    限外濾過膜から培養液中に戻して培養することを特徴と
    するビタミンB12の生産方法。
  3. 【請求項3】 微量金属濃度を標準組成の10〜100
    0倍とする請求項1または2の方法。
  4. 【請求項4】 水素資化メタン菌の培地の微量金属塩の
    濃度のうち、Co/Fe比を標準組成比より10〜10
    0倍にする請求項1または2の方法。
  5. 【請求項5】 固定床または縣濁型バイオリアクターの
    底部に多孔性セラミックスを介して陰極部を上部に陽極
    部を下部に置き、直流電圧印加し、培養液中の水を電気
    分解することによって、発生する水素を微量要素強化担
    体固定床または膜複合型メタン発酵バイオリアクターへ
    利用し、酸素を大気放出することを特徴とするメタン発
    酵方法。
  6. 【請求項6】 菌体外生産物であるコバラミンをシアン
    化カリウムによってシアノコバラミンとして抽出した残
    液に直流電圧を印加し、電気分解を行い、これらから得
    られた水素を一酸化炭素や二酸化炭素を含む石炭ガスや
    バイオガスに供給し、膜複合バイオリアクターや固定床
    リアクターによってメタネーションを行うことを特徴と
    するガスの改質法。
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