JP2001207817A - 内燃エンジンの潤滑方法及び装置 - Google Patents

内燃エンジンの潤滑方法及び装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 他の動力源を必要としないで、エンジン振動
を利用して潤滑を行うことのできる内燃エンジンの潤滑
方法および装置を提供する。 【解決手段】 クランクケース22内は仕切壁45によ
ってクランク室20とオイル溜め21とに区画されてい
る。前記仕切壁45は開口45aを有し、この開口45
aには金網47が取付けられている。前記オイル溜め2
1の中には、U字状に宙釣りにされた状態のコイルバネ
50が配設されている。エンジン振動は、前記コイルバ
ネ50の振動を誘起し、振動する前記コイルバネ50は
前記オイル溜め21内のエンジンオイルを撹拌、及び/
又は、跳ね上げ、その油面を全面にわたって波立たせ
る。前記クランク室20の中に入り込んだエンジンオイ
ルは、クランクシャフト23と衝突して微粒化される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般的には、内燃
エンジンの潤滑方法及び装置に関し、限定するものでは
ないが、手持ち式の刈払機、芝刈機、チェーンソーなど
の小型動力作業機の動力源としてのエンジンの潤滑に好
適なものに関する。
【0002】
【従来の技術】刈払機、チェーンソーに代表される手持
ち式の作業機は、作業者が作業姿勢を限定されることな
く作業ができるようにすることが求められる。このこと
から、このような作業機に搭載される動力源としての内
燃エンジンは、その使用時の姿勢を、例えば、横向きに
したとしても、常に安定した作動を行えることが必要と
される。
【0003】このような要請に応じるため、従来一般的
に、燃料と潤滑油とを一定の割合で混合した燃料を使用
する、小型空冷2サイクルガソリンエンジン(以下、単
に2サイクルエンジンという)が採用されてきた。しか
しながら、2サイクルエンジンは、ガスフローによる掃
気方式を採用していることに起因して、排気ガス成分に
未燃ガスを多く含むため、有効なる排気ガス対策、つま
り、エミッション対策を施すのが難しいという欠点があ
る。
【0004】このエミッション対策に関しては、未燃ガ
スの排出が少ない4サイクル内燃エンジン(Otto engin
e)が有利であり、このことから、手持ち式作業機にお
いても、2サイクルエンジンに代わって4サイクルエン
ジンの採用が検討されている。この4サイクルエンジン
は、典型的には、クランクシャフトを収容するクランク
室の底部に、オイルパンによって形成されたオイル溜め
を有し、このオイル溜めの中の潤滑油を、ポンプによっ
て汲み上げる、及び/又は、回転部材(典型的には、い
わゆるオイルディッパー)によって跳ね上げる方式が採
用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、オイルポンプ
による潤滑方式は、潤滑油の送出及び回収等の機構が加
わるため構造が複雑で重くなるので、手持ち式作業機用
エンジンとしては望ましくない。また、オイルディッパ
ーによる潤滑方式は、エンジン設計時のオイルディッパ
ーの長さ寸法の設定が難しいという問題を有している。
すなわち、オイルディッパーが短すぎると、オイル消費
に伴って、早期にオイルディッパーによる所期の潤滑作
用が得られなくなる。逆に、オイルディッパーが長すぎ
ると、オイル充填直後は、多量のオイルがディッパーに
よって跳ね上げられることから、クランク室の中のミス
ト状のオイルの量がリッチ状態(過剰状態)となり、こ
れが原因で、ブローバイガスが汚染されるなどの問題が
発生する。
【0006】本発明は、手持ち式作業機用エンジンを取
り巻く現在の環境及び社会的な要請を背景にして、オイ
ルディッパーによる潤滑方式の改善を意図した技術開発
活動の過程で案出されたものである。本発明の目的は、
内燃エンジンの従来と異なる潤滑方法及び装置を提供す
ることにある。
【0007】本発明の更なる目的は、他の動力源を必要
としないで、エンジン振動を利用して潤滑を行うことの
できる内燃エンジンの潤滑方法および装置を提供するこ
とにある。本発明の更なる目的は、ミスト状オイルの量
を容易に調整することのできる内燃エンジンの潤滑装置
を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用】かかる技術的課
題は、本発明の方法によれば、クランクシャフトを収容
したクランク室と、該クランク室に隣接して配置された
オイル溜めと、を有する内燃エンジンにおいて、前記オ
イル溜め内のエンジンオイルを波立たせ、これにより前
記クランク室の中に侵入した前記エンジンオイルを、前
記クランクシャフトと衝突させてミスト化することによ
って達成される。
【0009】また、本発明の装置によれば、クランクシ
ャフトを収容したクランク室と、該クランク室に隣接し
て配置されたオイル溜めと、を有する内燃エンジンにお
いて、前記オイル溜め内に、エンジン振動によって加振
されるバネ部材が配置されていることによって達成され
る。
【0010】
【実施の形態】本発明は、最も典型的には、エンジン振
動を利用し、これにより加振されるバネ部材(50,501,70
1)によってオイル溜め(21)内のエンジンオイルを撹拌し
て跳ね上げ、及び/又は、その油面を波立たせ、これに
よりクランク室(20)の中に入り込んだエンジンオイル
を、回転するクランクシャフト(23)と衝突させることに
よって微粒化させる。
【0011】前記バネ部材(50,501,701)は、コイルバネ
や板バネを用いることができる。このようなバネ部材(5
0,501,701)は、その固有振動数を選択することによって
例えばアイドル運転時のエンジン振動に共振するように
してもよい。
【0012】また、前記クランク室(20)と前記オイル溜
め(21)とを仕切壁(45)によって区画し、この仕切壁(45)
に、ネット部材(47)を取り付けた開口(45a)を設けるよ
うにしてもよい。このネット部材(47)によって、前記オ
イル溜め(21)から前記クランク室(20)の中に侵入するエ
ンジンオイルの量を抑え、前記クランク室(20)内のミス
ト状のオイルの量を適当な量に保つことができる。本発
明の他の目的及び作用効果は、以下の本発明の好ましい
実施例の説明から明らかになろう。
【0013】
【実施例】以下に、添付した図面に基づいて本発明の好
ましい実施例を詳細に説明する。第一実施例(図1〜図4) 図1〜図4は、本発明を空冷式単気筒4サイクル内燃エ
ンジンに適用した第一実施例を示すものである。図1
は、クランクシャフトの軸線に沿って切断した第一実施
例のエンジンの縦断面図であり、図2は、クランクシャ
フトを横断する方向に切断した、図1と同じエンジンの
縦断面図であり、図3は、図1に対応したエンジンの下
部分の縦断面拡大図であり、図4は、図2に対応したエ
ンジンの下部分の縦断面拡大図である。
【0014】図示のエンジン100は、例えば、刈払機
の動力源に適用される排気量20〜60mL程度の比較的
小型のものである。該エンジン100は、空冷用の冷却
フィン2を備えたシリンダブロック3と、その上に一体
的に固設されたシリンダヘッド4と、を有し、前記シリ
ンダブロック3のシリンダボア5に上下に摺動自在に嵌
挿されたピストン6と前記シリンダヘッド4との間に燃
焼室7が画成されている。
【0015】前記シリンダヘッド4は、前記燃焼室7に
臨んで配置された点火プラグ8(図1)と、前記燃焼室
7に開口する吸気ポート9及び排気ポート10(図2)
と、を備え、前記吸気ポート9は吸気バルブ11よって
開閉され、前記排気ポート10は排気バルブ12によっ
て開閉される。
【0016】図示のエンジン100には、また、前記シ
リンダヘッド4とその上のヘッドカバー4aとで、動弁
機構を配置するための動弁室15が画成されている。前
記動弁機構は、従来から既知のように、カムシャフト1
7、ロッカーアーム18(図2)等を含んでいる。この
ことから理解できるように、前記エンジン100は、い
わゆるOHC式のエンジンである。
【0017】前記シリンダブロック3の下端には、クラ
ンク室20及びエンジンオイル(OIL)を貯留するため
のオイル溜め21を形成するためのクランクケース22
が取付けられ、前記クランク室20内に配置されたエン
ジン出力軸としてのクランクシャフト23は、コンロッ
ド24を介して前記ピストン6に連結されている。前記
クランク室20及び前記オイル溜め21については、後
に詳しく説明する。
【0018】前記クランクシャフト23は、タイミング
ベルト25(図1)を介して前記カムシャフト17に作
動上連結されており、これにより、前記吸気バルブ11
及び前記排気バルブ12は、前記クランクシャフト23
の回転に同期した所定のタイミングで開閉される。
【0019】図1及び図3中、参照符号27はリコイル
スタータを示し、このリコイルスタータ27は、前記ク
ランクシャフト23に作動上連結されている。前記エン
ジン100の始動時には、前記リコイルスタータ27を
用いて、手動により前記エンジン100の起動が行われ
る。また、参照符号28(図1)は遠心クラッチであ
り、前記クランクシャフト23の回転駆動力を図示しな
い刈刃装置に出力する。
【0020】前記吸気ポート9には、図2に示すよう
に、これに連なる吸気通路30を形成するための吸気系
部品31が連結されており、この吸気系部品31は、エ
アクリーナ32と、スロットルバルブ(図示せず)を含
む燃料供給手段であるダイヤフラム式気化器33と、を
含んでいる。他方、前記排気ポート10には、マフラー
を含む排気系部品34が連結されている。
【0021】前記エンジン100の下方には、前記クラ
ンクケース22に近接して燃料タンク36が配置され、
該燃料タンク36には、燃料Fとしてのガソリンが収容
される。この燃料タンク36内の燃料Fは、配管37を
介して前記気化器33に供給され、該気化器33によっ
て霧化された後に、前記吸気通路30及び前記吸気ポー
ト9を通じて前記燃焼室7に充填される。
【0022】前記エンジン100は、また、前記クラン
ク室20と前記動弁室15とを連通させるための複数の
連通路40を有する(図面には、一つの連通路だけが現
れている)。これら複数の連通路40は、前記シリンダ
ブロック3の壁を上下に貫通する貫通孔で構成され、こ
の貫通孔は、前記シリンダブロック3の円周方向に離間
して、例えば四つ設けられている。図1及び図3に現れ
ている連通路40は、他の連通路(図面には現れていな
い)とは異なり、その上端が前記動弁室15の底壁に形
成された凹所15aに開口しており(図1)、また、下
端には、逆止弁41が設けられている。この逆止弁41
は、前記動弁室15から前記クランク室20への流体の
流れは許容し、その逆の流れを禁止して、流体のサーキ
ュレーションをより確実に維持せしめるために介装せし
めたものであり、場合によっては省略することも可能で
ある。
【0023】前述したクランク室20及びオイル溜め2
1について説明すると、前記クランクケース22内の空
間は、仕切壁45によって前記クランク室20と前記オ
イル溜め21とに区画されている。この仕切壁45は、
前記クランクシャフト23の回転軸線を中心とした円弧
状の形状を有し、また、前記クランクシャフト23のバ
ランスウエイト23aの移動軌跡に沿って延びており、
これにより、前記クランク室20を取り囲むようにして
配置されたU字形状の前記オイル溜め21が形成されて
いる。前記仕切壁45には、その下端部分に開口45a
を有し、この開口45aには、ネット部材であるステン
レス鋼線等よりなる金網47が取付けられている。
【0024】前記オイル溜め21の中にはコイルバネ5
0が配設されている。このコイルバネ50は、その両端
50a、50bが前記クランクケース22内の左右上端
部分に保持されて、U字状に延びる前記オイル溜め21
に沿って、その全域にまたがって延びている。すなわ
ち、前記コイルバネ50は、前記オイル溜め21内に、
U字状に宙釣りにされた状態で配置されている。
【0025】以上の構成からなる前記エンジン100
は、通常の4サイクル内燃エンジンと同様に、吸気行程
−圧縮行程−膨張行程−排気行程の一連の行程を反復的
に行い、これに伴う前記ピストン6の上下動作に伴う前
記クランク室20内の圧力変化によって、前記連通路4
0を通じて、前記クランク室20と前記動弁室15との
間の流体のサーキュレーションが生じる。
【0026】前記エンジン100の作動に伴うエンジン
振動は、前記オイル溜め21内の前記コイルバネ50の
振動を誘起し、振動する該コイルバネ50は前記オイル
溜め21内のエンジンオイル(OIL)を撹拌し、及び/又
は、跳ね上げ、その油面を全面にわたって波立たせる。
前記コイルバネ50は、前記クランク室20を取り囲む
前記U字状のオイル溜め21の全領域にまたがって配置
されているため、前記エンジン100が、例えば、横向
き或るいは倒立状態になったとしても、エンジン振動に
よって加振される前記コイルバネ50の振動によって前
記オイル溜め21内のエンジンオイル(OIL)を撹拌、及
び/又は、跳ね上げ、その油面を全面にわたって波立た
せることができる。
【0027】前記仕切壁45の前記開口45aを通じて
前記クランク室20の中に入り込んだエンジンオイルの
細粒は、回転する前記クランクシャフト23と衝突して
更に微粒化され、ミスト状のオイルになって前記クラン
クシャフト23部などの潤滑に寄与する。前記クランク
室20内のミスト状のオイルは、また、前述したサーキ
ュレーションによって前記動弁室15に入って前記動弁
機構の潤滑を行った後、前記動弁室15から前記クラン
ク室20を通じて前記オイル溜め21に環流される。
【0028】前記構成のエンジン100を実際に作製し
て試験した結果、良好な潤滑効果を確認することがで
き、また、排気ガスに含まれる煤の量も大幅に低減でき
ることが確認できた。また、前記開口45aに前記金網
47を設けた場合と、該金網47を取り外した場合とで
比較試験した結果、前記金網47を設けた方が、前記ク
ランク室20内のミスト状オイルの量を適正に保ち得る
ことが判明した。すなわち、前記オイル溜め21から前
記クランク室20の中に侵入するオイルの量を制御する
ための手段として前記金網47を設けた方が、前記クラ
ンク室20内における過剰なミスト状オイルの発生を抑
えて、これを適正な量に保ち得ることが確認できた。
【0029】ちなみに、従来の単なるオイルディッパー
による潤滑方式との対比を、図5に示す。図5から、前
記金網47を設けることによってオイル消費量の経時的
変化が極めて小さくなることが分かるであろう。前記金
網47は、例えば、従来のようにオイルディッパーと組
み合わせて使用しても同様の効果を得ることが可能であ
る。したがって、この金網47による効果は、前記コイ
ルバネ50による潤滑方式との組合せだけに限定される
ものではない。
【0030】前記金網47のメッシュの大きさ、つまり
前記金網47の目の大きさは、前記エンジン100の排
気量の大小、エンジンオイルの適正な量の大小、前記オ
イル溜め21の形状などによって左右されるが、排気量
20〜60mL程度のエンジンの場合には、前記金網47
は0.5〜3.0mL/h程度にオイル通過量を規制することので
きるメッシュの大きさ及び前記開口45aの面積を選定
すればよいと考えられる。
【0031】図6以降の図面は、本発明の他の実施例を
示すものであり、これら他の実施例の説明において、上
述した第一実施例と同一の要素には同一の参照符号を付
すことによりその説明を省略し、その特徴点のみを説明
する。
【0032】第二実施例(図6、図7) 図6、図7は、本発明を、空冷式単気筒2サイクル内燃
エンジンに適用した第二実施例を示すものである。図6
は、クランクシャフトを横断する方向に切断した第二実
施例のエンジンの縦断面図であり、図7は、クランクシ
ャフトに沿って切断した、図6と同じエンジンの縦断面
図である。
【0033】図示のエンジン200は、例えば、刈払機
の動力源に適用される排気量20〜60mL程度の比較的
小型のものである。該エンジン200は、シリンダブロ
ック3に吸気ポート201、排気ポート202および掃
気ポート203を備えた、従来一般的な2サイクル内燃
エンジンである。前記シリンダブロック200の下に
は、前述した第一実施例のエンジン100と同じ形式の
クランクケース22が取り付けられ、仕切壁45によっ
てクランク室20と、これを取り囲むようにして配置さ
れたU字状のオイル溜め21と、が形成されている。ま
た、前記仕切壁45には、その下端部分に前記開口45
aを有し、この開口45aには、前述した金網47が取
付けられている。
【0034】また、前記オイル溜め21の中には前述し
たコイルバネ50が配設されている。このコイルバネ5
0は、その両端50a、50bが前記クランクケース2
2の上端部分に保持されて、U字状に延びるオイル溜め
21に沿って、その全域にまたがって延びている。すな
わち、前記コイルバネ50は、第一実施例と同様に、前
記オイル溜め21内に、U字状に宙釣りにされた状態で
配置されている。
【0035】前記2サイクル内燃エンジン200の前記
吸気ポート201には、キャブレターなどを含む吸気系
部品204が連結され、この吸気系部品204から前記
吸気ポート201に、燃料としてのガソリン(潤滑オイ
ルを含まない)が供給される。
【0036】この第二実施例の2サイクルエンジン20
0にあっても、上述した第一実施例の4サイクルエンジ
ン100と同様に、エンジン振動によって加振された前
記コイルバネ50の振動によって、前記オイル溜め21
内のエンジンオイル(OIL)を撹拌、及び/又は、跳ね上
げ、その油面を全面にわたって波立たせる。前記金網4
7を通じて前記クランク室20の中に入り込んだオイル
は、回転する前記クランクシャフト23と衝突して微粒
化され、ミスト状のオイルになって前記クランクシャフ
ト23などの潤滑に寄与する。
【0037】第三実施例(図8) 図示の第三実施例のエンジン300は、前述した第一実
施例のエンジン100の変形例である。この第三実施例
の4サイクル内燃エンジン300にあっては、オイルデ
ィッパー301を有し、このオイルディッパー301と
前述したコイルバネ50とを併用して潤滑が行われる。
なお、図中、参照符号47aは、前記金網47に形成し
た開口である。前記オイルディッパー301は、この開
口47aを通って前記オイル溜め21の中に侵入してエ
ンジンオイルを掻き上げる。
【0038】前記オイルディッパー301と前記コイル
バネ50とを併用した潤滑方式は、前述した第二実施例
の2サイクルエンジン200に対しても同じく適用する
ことができる。
【0039】図8の第三実施例のエンジン300によれ
ば、その作動により前記オイル溜め21内のエンジンオ
イルを消費した結果、その量が少なくなって前記オイル
ディッパー301による掻き上げが不可能になったとし
ても、前記コイルバネ50によって所期の潤滑効果を維
持することができる。
【0040】第四実施例(図9) 図示の第四実施例のエンジン400は、前述した第一実
施例のエンジン100の変形例である。この第四実施例
の4サイクル内燃エンジン400にあっては、前記クラ
ンクシャフト23部に組み込まれたオイルポンプ401
と、該オイルポンプ401の吸い込み側に接続された入
口側パイプ402と、吐出側に接続された出口側パイプ
403と、を有している。
【0041】前記オイルポンプ401は、前記オイル溜
め21内のエンジンオイルを、前記入口側パイプ402
を通じて汲み上げ、前記出口側パイプ403を通じて前
記動弁室15に圧送する。つまり、この第四実施例のエ
ンジン400によれば、前記動弁室15の動弁機構は、
前記オイルポンプ401から圧送されるオイルによって
強制潤滑され、他方、前記クランク室20内の潤滑は、
前記コイルバネ50の作用によって行われる。
【0042】第五実施例(図10、図11) 図10、図11は、第五実施例のエンジン500を示
す。図10は、クランクシャフトを横断する方向に切断
した前記エンジン500の要部縦断面図であり、図11
は、クランクシャフトに沿って切断した、図10と同じ
エンジン500の縦断面図である。なお、図示のエンジ
ン500は、上述した第一実施例のエンジン100と同
様に4サイクル内燃エンジンであるが、これは典型例と
して図示したに過ぎず、2サイクル内燃エンジンであっ
てもよい。
【0043】この第五実施例のエンジン500にあって
は、前記オイル溜め21の中に板バネ501が配設さ
れ、この板バネ501は、その一端501aが、オイル
溜め21の一方の上端に固定された片持ちの形式で取付
られており、その自由端501bは、前記エンジン50
0が図示の起立状態にあるときには、前記オイル溜め2
1内のエンジンオイルの中に侵入しており、また、前記
クランクシャフト23の下方を通過して前記オイル溜め
21の他方側まで延びている。なお、前記板バネ501
を二つ用意し、他方の板バネを前記オイル溜め21の他
方の上端に固定するようにしてもよい。
【0044】前記第五実施例のエンジン500にあって
も、エンジン振動によって前記板バネ501の自由端5
01bが振動して、第一実施例のエンジン100の前記
コイルバネ50の場合と同様に、前記オイル溜め21内
のエンジンオイルを撹拌、及び/又は、跳ね上げ、その
油面を全面にわたって波立たせ、これにより、前記クラ
ンク室20の中に入り込んだエンジンオイルは、回転す
る前記クランクシャフト23と衝突して微粒化され、ミ
スト状のオイルになって前記クランクシャフト23など
の潤滑に寄与する。
【0045】更に、前記第五実施例のエンジン500で
は、前記コンロッド24から半径方向に突出するオイル
ディッパー状の接触子503を設け、この接触子503
の先端503aが、前記板バネ501の自由端部501
b側に接触することによって、該板バネ501を強制的
に大きく振動させるようにしている。
【0046】第六実施例(図12〜図14) 図12、図13は、第六実施例のエンジン600を示
し、図14はその変形例を示すものである。図12は、
クランクシャフトを横断する方向に切断した前記エンジ
ン600の要部縦断面図であり、図13は、クランクシ
ャフトに沿って切断した、図12と同じエンジン600
の縦断面図である。なお、図示のエンジン600は、上
述した第一実施例のエンジン100と同様に4サイクル
内燃エンジンであるが、これは典型例として図示したに
過ぎず、2サイクル内燃エンジンであってもよい。
【0047】図12のエンジン600は、前記U字状の
オイル溜め21内に宙釣り状態に配置された前記コイル
バネ50をエンジン振動によって加振して、前記オイル
溜め21内のエンジンオイルを撹拌、及び/又は、跳ね
上げ、その油面を全面にわたって波立たせ、これにより
前記クランク室20の中に入り込んだエンジンオイルを
回転する前記クランクシャフト23と衝突させて、ミス
ト状のオイルを生成するものであるが、更に、前記クラ
ンクシャフト23から半径方向に突出するオイルディッ
パー状の接触子601を有している。
【0048】該接触子601は、その先端に、前記コイ
ルバネ50の長手方向に広がりを有する先端面602を
有し、この先端面602は、前記クランクシャフト23
の回転軸線を中心にした円弧状の形状を有している。
【0049】前記第六実施例のエンジン600によれ
ば、前記接触子601の前記先端面602が前記コイル
バネ50に接触することによって、該コイルバネ50を
強制的に大きく振動させることができる。
【0050】前記接触子602に関し、図14に示すよ
うに、この接触子601を先細りの形状に作り、該接触
子601の先端601aを前記コイルバネ50に接触さ
せることによって、該コイルバネ50を強制的に大きく
振動させるようにしてもよい。
【0051】図14は、また、前記クランク室20と前
記オイル溜め21との間を仕切る前記仕切壁45の変形
例を図示している。この図14において、前記仕切壁4
5は、前述した下端部分の開口45a(第一の開口とい
う)の他に、上端部分つまり前記シリンダブロック3に
隣接する左右両側の部分に、各々、第二の開口603を
有し、これら第二の開口603に、前記金網47と同様
の材料からなる第二の金網604が取付けられている。
【0052】運転中に、前記エンジン600を傾ける、
或いは倒立状態にすることによって、前記オイル溜め2
1内のエンジンオイルが、前記オイル溜め21の上端部
分に入り込んだとしても、前記第二の金網604によっ
て、エンジンオイルが前記第二の開口603を通じて一
気に前記クランク室20の中に流入してまうのを防止す
ることができる。
【0053】第七実施例(図15、図16) 図示の第七実施例のエンジン700は、前記オイル溜め
21内の前記クランクシャフト23の下方に配置された
コイルバネ701を有し、このコイルバネ701は、そ
の軸線が前記シリンダボア5の軸線に沿って配置されて
いる。前記コイルバネ701は、一端701aが前記ク
ランクケース22に固設され、自由端701bには、キ
ャッププレート702が取付られている。
【0054】この図15及び図16に示すエンジン70
0は、第一実施例のように4サイクル内燃エンジン、及
び第二実施例のように2サイクル内燃エンジンのいずれ
であってもよい。前記コイルバネ701は、エンジン振
動によって加振されて、その自由端701bに取付られ
た前記キャッププレート702が、上下動又は首振り運
動する。該キャッププレート702の運動によって、前
記オイル溜め21内のエンジンオイルは、その油面が全
面にわたって波立ち、これにより前記クランク室20の
中に入り込んだエンジンオイルが、回転する前記クラン
クシャフト23と衝突してミスト状のオイルが生成され
る。
【0055】更に、第七実施例のエンジン700の変形
例では、前記コンロッド24から半径方向に突出する接
触子703を設け、この接触子703の先端703aが
前記キャッププレート702に接触することによって、
前記コイルバネ701を強制的に押し下げ又は揺動させ
るようにしている。
【0056】この第七実施例のエンジン700にあって
は、前記コイルバネ701が前記シリンダボア5の軸線
に沿って配置されている関係上、図示の起立姿勢で使用
するエンジン、又はこの起立姿勢で定置して使用される
エンジンに適用するのが好ましい。この場合、図15に
図示のエンジン700では、前記オイル溜め21が前記
クランク室20を取り囲むようにU字状の形状を有して
いるが、起立姿勢で使用するエンジン又はこの起立姿勢
で定置して使用されるエンジンの場合には、一般的に知
られているオイルパンによってクランク室の下方領域に
のみオイル溜めを形成してもよい。
【0057】第八実施例(図17、図18) 図示の第八実施例のエンジン800は、前記オイル溜め
21内の前記クランクシャフト23の下方に配置された
回転子801を有している。該回転子801は、前記ク
ランクシャフト23の軸線と平行に延びる軸802を中
心にして自由回転可能であり、前記軸802は、前記シ
リンダボア5の軸線上に配置されている。
【0058】この図17及び図18に示すエンジン80
0は、第一実施例で例示した4サイクル内燃エンジン、
及び第二実施例で例示した2サイクル内燃エンジンのい
ずれであってもよい。前記回転子801は、その両外端
部801a、801bに、前記クランクシャフト23の
バランスウエイト23aが衝突することによって回転
し、前記オイル溜め21内のエンジンオイルを撹拌せし
め、その油面を波立たせる。これにより前記クランク室
20の中に入り込んだエンジンオイルは、回転する前記
クランクシャフト23と衝突してミスト状のオイルにな
る。
【0059】この第八実施例のエンジン800にあって
は、前記回転子801が前記シリンダボア5の軸線に沿
って配置されている関係上、起立姿勢で使用するエンジ
ン又はこの起立姿勢で定置して使用されるエンジンに適
用するのが好ましい。この場合、図17及び図18に図
示のエンジン800では、前記オイル溜め21が前記ク
ランク室20を取り囲むようにU字状の形状を有してい
るが、起立姿勢で使用するエンジン又はこの起立姿勢で
定置して使用されるエンジンの場合には、一般的に知ら
れているオイルパンによってクランク室の下方領域にオ
イル溜めを形成してもよい。
【0060】以上、本発明の様々な実施例を説明した
が、本発明は、これに限定されることなく、以下に示す
如き次の変形例をも包含するものである。 (1)当業者であれば分かるように、オイル溜めを備え
たエンジンであればエンジンの具体的な形式を問うこと
なく本発明の適用は可能であり、例えばOHV形式のエ
ンジンであってもよい。
【0061】(2)比較的小型のエンジンを中心にして
本発明の好ましい実施例を説明したが、例えば、オイル
ポンプによって潤滑を行う自動車用エンジンについて
も、オイルパンによって形成されるオイル溜めの中に前
記U字状コイルバネ50、前記板バネ501或いは前記
直立状コイルバネ701を設け、これを補助的な潤滑機
構として併用するようにしてもよい。
【0062】(3)前記オイル溜め21内に配置した前
記U字状コイルバネ50、前記板バネ501、前記直立
状コイルバネ701の共振を利用して、特定のエンジン
回転数のときに、共振現象を用いて高い潤滑効果が得ら
れるようにしてもよい。例えば、手持ち式の刈払機、芝
刈機、チェーンソーなどの小型動力作業機の動力源とし
てのエンジンの場合、一般的に比較的高いアイドル回転
数が設定されているが(2,000〜3,000r/min)、アイド
ル運転状態のときに、前記U字状コイルバネ50、前記
板バネ501あるいは前記直立状コイルバネ701が共
振する固有振動数をそれぞれ選定するようにしてもよ
い。
【0063】(4)前記U字状コイルバネ50、前記板
バネ501あるいは前記直立状コイルバネ701を複数
設けてもよく、この場合、異なるエンジン回転数のとき
にそれぞれ共振現象が現れるように、個々のバネの固有
振動数を選定するようにしてもよい。 (5)前記U字状コイルバネ50、前記板バネ501あ
るいは前記直立状コイルバネ701を、一つのバネで様
々なエンジン回転数のときに共振点が得られるようにし
てもよい。例えば、前記U字状コイルバネ50の長手方
向に沿ってその直径を徐々に縮径させることにより、長
手方向に沿って異なる固有振動数を具備させるようにし
てもよい。 (6)前記金網47に代えて、空気と液体を通せる適宜
の多孔性物質を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】クランクシャフトの軸線に沿って切断した第一
実施例のエンジンの縦断面図
【図2】クランクシャフトを横断する方向に切断した、
図1と同じエンジンの縦断面図
【図3】図1に対応したエンジンの下部分の縦断面拡大
【図4】図2に対応したエンジンの下部分の縦断面拡大
【図5】クランク室とオイル溜めとの間に金網を設けた
場合の本発明の効果を従来と対比した試験結果を示すグ
ラフ
【図6】クランクシャフトを横断する方向に切断した第
二実施例のエンジンの縦断面図
【図7】クランクシャフトに沿って切断した、図6と同
じエンジンの縦断面図
【図8】第三実施例のエンジンの下部分をクランクシャ
フトの軸線に沿って切断した縦断面図
【図9】第四実施例のエンジンの下部分をクランクシャ
フトの軸線に沿って切断した縦断面図
【図10】第五実施例のエンジンの下部分をクランクシ
ャフトを横断する方向に切断した縦断面図
【図11】図10の第五実施例のエンジンの下部分をク
ランクシャフトに沿って切断した縦断面図
【図12】第六実施例のエンジンの下部分をクランクシ
ャフトを横断する方向に切断した縦断面図
【図13】図12の第六実施例のエンジンの下部分をク
ランクシャフトに沿って切断した断面図
【図14】第六実施例のエンジンの変形例を示す図12
と同様の縦断面図
【図15】第七実施例のエンジンの下部分をクランクシ
ャフトを横断する方向に切断した縦断面図
【図16】図15の第七実施例のエンジンの下部分をク
ランクシャフトに沿って切断した断面図
【図17】第八実施例のエンジンの下部分をクランクシ
ャフトを横断する方向に切断した縦断面図
【図18】図17の第八実施例のエンジンの下部分をク
ランクシャフトに沿って切断した断面図
【符号の説明】
100〜800 内燃エンジン 3 シリンダブロック 6 ピストン 20 クランク室 21 オイル溜め 22 クランクケース 23 クランクシャフト 23a クランクシャフトのバランスウエイト 45 仕切壁 45a 仕切壁の開口 47 金網(ネット部材) 50 U字状コイルバネ(バネ部材) 501 板バネ(バネ部材) 701 直立状コイルバネ(バネ部材)

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クランクシャフト(23)を収容したクラン
    ク室 (20)と、該クランク室(20)に隣接して配置された
    オイル溜め(21)と、を有する内燃エンジン(100〜800)に
    おいて、 前記オイル溜め(21)内のエンジンオイルを波立たせ、こ
    れにより前記クランク室(20)の中に侵入した前記エンジ
    ンオイルを、前記クランクシャフト(23)と衝突させてミ
    スト化することを特徴とする内燃エンジンの潤滑方法。
  2. 【請求項2】 前記内燃エンジンが、前記オイル溜め(2
    1)の中に配置されたバネ部材(50,501,701)を有し、エン
    ジン振動によって前記バネ部材(50,501,701)を振動させ
    ることにより、前記オイル溜め(21)内のエンジンオイル
    を波立たせることを特徴とする請求項1に記載の内燃エ
    ンジンの潤滑方法。
  3. 【請求項3】 前記バネ部材(50,501,701)が、アイドル
    運転のときのエンジン振動によって共振する固有振動数
    を有することを特徴とする請求項1または2に記載の内
    燃エンジンの潤滑方法。
  4. 【請求項4】 クランクシャフト(23)を収容したクラン
    ク室(20)と、該クランク室(20)に隣接して配置されたオ
    イル溜め(21)とを有する内燃エンジンにおいて、 前記オイル溜め(21)内に、エンジン振動によって振動す
    るバネ部材(50,501,701)が配置されていることを特徴と
    する内燃エンジンの潤滑装置。
  5. 【請求項5】 前記オイル溜め(21)が、前記クランク室
    (20)を囲む仕切壁(45)によって、前記クランクシャフト
    (23)のバランスウエイト(23a)の移動軌跡に沿って延び
    るU字状の形状を有するとともに、 前記バネ部材(50,501)が、前記U字状のオイル溜め(21)
    のほぼ全ての領域にまたがって配置されていることを特
    徴とする請求項4に記載の内燃エンジンの潤滑装置。
  6. 【請求項6】 前記仕切壁(45)が、前記クランク室(20)
    と前記オイル溜め(21)とに連通する開口(45a)を有し、
    該開口(45a)にネット部材(47)が取付けられていること
    を特徴とする請求項5に記載の内燃エンジンの潤滑装
    置。
  7. 【請求項7】 前記バネ部材がコイルバネ(50)からな
    り、該コイルバネ(50)の両端(50a,50b)が前記U字状の
    オイル溜め(21)の各端部に保持されて、前記コイルバネ
    (50)が前記U字状のオイル溜め(21)内に宙釣り状態で配
    置されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の
    内燃エンジンの潤滑装置。
  8. 【請求項8】 前記バネ部材が、片持ち状態で設けられ
    た板バネ(501)からなることを特徴とする請求項5又は
    6に記載の内燃エンジンの潤滑装置。
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