JP2001187802A - 超低分子量ヘパリン組成物 - Google Patents

超低分子量ヘパリン組成物

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い抗Xa活性および低い抗IIa活性を有す
る低分子量オリゴ糖鎖が豊富である新規の低分子量ヘパ
リン組成物を提供する。 【解決手段】 以下の式Iで表される超低分子量ヘパリ
ン組成物: 【化4】 (ただし式中、nが1ないし12の間で変化し、R1
HまたはSO3 Na、R 2 =SO3 NaまたはCOCH
3 である)は、オリゴ糖鎖またはヘパリンフラグメント
の混合物から形成されており、抗Xa活性および抗第II
a因子活性を有し、抗血栓症剤として使用可能であるこ
とを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、4−エノピラノシ
ルウロネート(4-enopyranosyl uronate)基を非還元末
端に有する、限定された数のヘパリンフラグメントから
なる、新規の低分子量ヘパリン組成物(HLMW)に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】ヘパリナ(Heparina)は動物由来のムコ
多糖体硫酸塩であって、哺乳動物の腸あるいは肺(ウ
シ、子ヒツジ、ブタ)から抽出され、現在ではヒトの血
栓塞栓症の予防や治療に利用されることがある。
【0003】このヘパリンの使用は、非常に重症の大出
血(very upsetting haemorrhaging)作用を伴うととも
に、その毎日の投薬において、3回の皮下注射または静
脈注射を伴うことから、非常に重大な欠点を有すること
がよく知られている。
【0004】ここ数年間の推移では、以下に示すよう
な、様々な化学的手法がヘパリンの解重合のために用い
られている。 −酸性溶媒中での亜硝酸ナトリウムを用いた処理 −エステルのアルカリ処理 −酸素処理水(oxygenated water)の存在下で発生する
フリーラジカルの利用 −β−脱離(a beta elimination)機構による、強塩基
を用いた非水性溶媒中でのヘパリンの四級アンモニウム
塩の処理。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】これらの方法は、操作
の手順や状況によって、平均分子量や抗凝固活性(anti
-coagulant activity )が変化するヘパリンフラグメン
トの混合物が得られるという、一定しない生産となって
しまう。上記従来の技術で述べられているか、または商
品化された低分子量ヘパリン(HLMW)は、様々な解
重合手順によって得られている。これらの平均分子量
(Mw)は、4,000ないし6,000ダルトンの範
囲にある。
【0006】現在では、次のことが認められている。す
なわち、HLMWの抗血栓活性(anti-thrombic activi
ty)は、主に、血漿タンパク質である抗トロンビンIII
(anti-thrombin III)活性化作用、および活性化第X因
子およびトロンビンの有力な阻害作用の能力によるもの
である。このようにして、ヘパリンの抗血栓活性は、上
記各因子の阻害を特異的に調べるテストにより測定する
ことができる。
【0007】近年、様々な著作者による研究結果から次
のことが分かっている。すなわち、4,800ダルトン
未満(<4,800 Daltons )の中程度の分子量の短鎖から
なるヘパリンのオリゴ糖鎖のフラグメントは、活性化第
X因子への選択的な作用を有する一方、ファルマコペア
(farmacopea)の手法を用いて測定される全体的な凝固
にはほとんど影響を及ぼさないということである。
【0008】さらに、以下のことも見い出されている。
すなわち、超低分子量のフラグメントが強い抗Xa活性
を有することが要求される場合には、米国特許4,981,95
5 号に記載しているように、抗トロンビンIII に結合す
る部位を攻撃する危険を冒さない、非水性溶媒中での選
択的な解重合技術を用いることが好ましい。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述した背景
技術および従来技術に鑑みてなされたものであって、非
水性溶媒中での手順を用いた、制御されたヘパリンの解
重合を提供するものであり、このヘパリンの解重合は、
高い抗Xa活性および低い抗IIa活性を有する低分子量
オリゴ糖鎖が豊富なHLMWの新たな種類(family)を
得るものであって、該HLMWは、以下の一般式にて示
される。
【0010】
【化2】
【0011】(ただし、式中、nが1ないし12の間で
変化し、R1 =HまたはSO3 Na、R2 =SO3 Na
またはCOCH3 である)上記のような超低分子量ヘパ
リンは、β−脱離の手順によって、非水性溶媒中でヘパ
リンを選択的に解重合させることによって得られる。
【0012】本発明にかかる超低分子量ヘパリン組成物
は、分子量が2,000ないし4,000ダルトンの範
囲にあり、抗第Xa因子活性が少なくとも100I.U./
mgに等しく、6量体糖鎖(hexasaccharide, n=1)
から12量体糖鎖(dodecasaccharide,n=4)までに
及ぶ低重合度のオリゴ糖鎖の割合が大きく、75%にも
達しているということを特徴としている。
【0013】このような組成物は、静脈及び動脈の血栓
症の予防や治療において有用であって、抗血栓症剤とし
て用いることができる。
【0014】従来知られている、または市販で利用され
ているHLMWは、低分子量(lowmolecular mass)オ
リゴ糖鎖、特に、6量体糖鎖から12量体糖鎖までに及
ぶ重合度のオリゴ糖鎖の割合が小さいものであった。
【0015】本発明の成果であるヘパリン組成物の主な
特徴は、そのようなオリゴ糖鎖の割合が大きく、75%
にも達しているということである。さらに、このような
オリゴ糖鎖は、高い抗Xa活性(≧100I.U./mg)
を有し、長い持続性と、高い抗血栓活性が得られる。
【0016】上記のヘパリン組成物は、抗Xa活性が1
00ないし150I.U./mgの範囲にあり、抗第IIa因
子活性が10I.U./mg以下である。
【0017】本発明のヘパリン組成物の平均分子量は
2,000ないし4,000ダルトンの範囲にあり、そ
の組成は以下の通りである。 −分子量が2,000ダルトン未満のオリゴ糖鎖を25
〜60%含んでおり; −分子量が2,000ないし6,000ダルトンのオリ
ゴ糖鎖を40〜75%含んでおり; −分子量が6,000ダルトンを超えるオリゴ糖鎖を1
5%未満含んでいる。
【0018】本発明のヘパリン組成物は、オリゴ糖鎖、
すなわちヘパリンフラグメントの混合物からなってい
る。本発明の一部を形成するフラグメントのパーセンテ
ージは以下の通りである。 −nが10ないし12の範囲にあるフラグメントを10
%未満含んでおり; −nが1ないし6の範囲にあるフラグメントを80〜9
0%含んでおり; −nが7ないし9の範囲にあるフラグメントを15%未
満含んでいる。
【0019】
【実施例】本発明を、以下の各実施例によって説明する
が、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものでは
ない。
【0020】分子量(Mw)、分子分布(molecular di
stribution)、同じく抗第Xa因子活性は、モノグラフ
第828号、『低分子量ヘパリン(“Heparin of low m
olecular weight ”)』第3版 ファルマコペア・エウ
ロペア(Farmacopea Europea)に記載の手法によって決
定した。
【0021】〔実施例1〕1kgの未分別ヘパリンナト
リウムを7L(リットル:litres) の精製水に溶解した
後、50重量(質量)/体積%(% w/v)の塩化ベンザ
ルコニウム水溶液4.4Lを該ヘパリン溶液へ攪拌しな
がら添加した。水を加えて体積を30Lにして、デカン
テーション(傾瀉)した。
【0022】次に、上澄液を取り除き、水を加えて体積
を30Lにして、デカンテーション状態とした。デカン
テーション終了後、上澄液を取り除き、沈澱物を凍結乾
燥(liophilised)した。約2.7kgのヘパリンのベン
ザルコニウム塩(生成物A)が得られた。
【0023】100gの生成物Aを300mlのジクロ
ロメタンに溶解した後、トリトンBを以下の3ロットに
分けて添加した。 −25mlのトリトンBを添加し、混合物を25℃で8
時間放置した。 −25mlのトリトンBを添加し、混合物を25℃で1
6時間放置した。 −25mlのトリトンBを添加し、混合物を25℃で8
時間放置した。
【0024】上記溶液を、10重量/体積%の酢酸ナト
リウムのメタノール溶液600mlで沈澱させ、沈殿物
をメタノールで洗浄しながらの遠心分離によって回収し
た。
【0025】該生成物を500mlの水に溶解し、0.
1mol /L(0.1N)のHClで中和し、塩化ナトリ
ウムを10重量/体積%の濃度に到達するまで添加し
た。沈殿は1.25Lのメタノールの添加によりもたら
された。
【0026】次に、メタノールで洗浄しながらの濾過、
および35℃での真空乾燥により沈澱物を回収したとこ
ろ、33gの生成物Bが得られ、該生成物Bを10重量
/体積%で水に溶解した。
【0027】温度を25℃に設定し、塩化ナトリウムを
添加して濃度を10重量/体積%にした。沈殿は2.5
倍のメタノールの添加によってもたらされた。それか
ら、メタノールで洗浄しながらの濾過、および35℃で
の真空乾燥により沈澱物を回収したところ、26gの精
製された生成物が得られた。該生成物を5重量/体積%
で水に溶解した。
【0028】0.1mol /L(0.1N)のHClによ
りpHを6.6に調整し、塩化ナトリウムを添加して濃
度を5重量/体積%とした。沈殿は0.8倍のメタノー
ルの添加によりもたらされた。沈澱物を、メタノールで
洗浄しながらの濾過により回収し、生成物を35℃で真
空乾燥させた。
【0029】上澄液を1.6倍のメタノールで沈澱させ
た。メタノールで洗浄しながらの濾過、および35℃で
真空乾燥により沈澱物を回収した。上記プロセスの終了
で、22gの生成物が得られた。
【0030】〔実施例2〕実施例1における生成物Bを
得る方法を繰り返した。20gの生成物Bを150ml
の水に溶解し、50重量/体積%の塩化ベンザルコニウ
ム水溶液100mlを添加した。
【0031】次に、水を加えて該混合物の体積を500
mlにした。該混合物をデカンテーション状態とした。
デカンテーション終了後、上澄液を取り除き、水を加え
て体積を500mlにして、該混合物をデカンテーショ
ン状態とした。
【0032】上澄液を取り除いた後、沈澱物を凍結乾燥
させたところ、50gのベンザルコニウム塩が得られ
た。得られた上記塩20gを60mlのジクロロメタン
に溶解した。5mlのトリトンBを添加し、該混合物を
35℃で8時間放置した。
【0033】次に、上記溶液を、10重量/体積%の酢
酸ナトリウムのメタノール溶液120mlで沈澱させ、
沈澱物をメタノールで洗浄しながらの遠心分離により回
収した。
【0034】得られた上記生成物を100mlの水に溶
解し、0.1mol /L(0.1N)のHClで中和し
て、塩化ナトリウムを10重量/体積%の濃度に到達す
るまで添加した。沈殿は250mlのメタノールの添加
によりもたらされた。
【0035】メタノールで洗浄しながらの濾過、および
35℃での真空乾燥により沈澱物を回収した。上記プロ
セスの終了で、6.3gの生成物が得られた。
【0036】〔実施例3〕まず、実施例2で得られた生
成物5gを、5重量/体積%の濃度となるように水に溶
解した。
【0037】0.1mol /L(0.1N)のHClでp
Hを6.6に調整し、塩化ナトリウムを5重量/体積%
の濃度に到達するまで添加した。沈殿は1.5倍のメタ
ノールの添加によりもたらされた。
【0038】次に、メタノールで洗浄しながらの濾過、
および35℃での真空乾燥により沈澱物を回収した。上
記プロセスの終了で、3gの生成物が得られた。
【0039】〔実施例4〕実施例1における生成物Bを
得る方法を繰り返した。
【0040】20gの生成物Bを150mlの水に溶解
し、50重量/体積%の塩化ベンザルコニウム水溶液1
00mlを添加した。それから、水を加えて該混合物の
体積を約500mlにした。
【0041】その後、上澄液を取り除いて、水を加えて
体積を500mlにして、該混合物をデカンテーション
状態とした。上澄液を取り除いて、水を加えて容量を5
00mlにして、該混合物をデカンテーション状態とし
た。
【0042】その後、上記により得られた上記塩20g
を60mlのジクロロメタンに溶解し、トリトンBを以
下の2ロットに分けて添加した。 −5mlのトリトンBを添加し、35℃で8時間放置。 −5mlのトリトンBを添加し、35℃で16時間放
置。
【0043】上記の溶液を、10重量/体積%の酢酸ナ
トリウムのメタノール溶液120mlで沈澱させ、沈澱
物をメタノールで洗浄しながらの遠心分離により回収し
た。
【0044】得られた上記生成物を100mlの水に溶
解し、0.1mol /L(0.1N)のHClで中和し、
塩化ナトリウムを10重量/体積%の濃度に到達するま
で添加した。250mlのメタノールを添加して沈澱さ
せた。
【0045】メタノールで洗浄しながらの濾過、および
35℃での真空乾燥により沈澱物を回収した。上記プロ
セスの終了で、8.7gの生成物が得られた。
【0046】〔実施例5〕まず、実施例4で得られた生
成物5gを5重量/体積%となるように水に溶解した。
【0047】0.1mol /L(0.1N)のHClでp
Hを6.6に調整し、塩化ナトリウムを5重量/体積%
の濃度に到達するまで添加した。次に、沈殿は0.93
倍のメタノールの添加によりもたらされた。
【0048】その後、メタノールで洗浄しながらの濾過
により沈澱物を回収し、35℃で真空乾燥させた。上澄
液を2倍のメタノールで沈澱させた。
【0049】メタノールで洗浄しながらの濾過、および
35℃での真空乾燥により沈澱物を回収した。その結
果、4gの生成物が得られた。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【発明の効果】以上のように、本発明にかかるヘパリン
組成物は、以下の一般式で表され、
【0053】
【化3】
【0054】(ただし、式中、nが1ないし12の間で
変化し、R1 がHまたはSO3 Naであり、R2 がSO
3 NaまたはCOCH3 である)非常に分子量の低いも
のである。
【0055】それゆえ、このような組成物は、静脈及び
動脈の血栓症の予防や治療において有用であって、抗血
栓症剤として用いることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4C086 AA01 AA03 EA02 EA27 NA14 ZA54 4C090 AA01 AA02 AA09 BA68 BB02 BB19 BB55 BB62 BB84 BC27 BD03 BD35 BD37 CA31 DA09 DA23

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】以下の一般式で表され、 【化1】 (ただし、式中、nが1ないし12の間で変化し、R1
    =HまたはSO3 Na、R2 =SO3 NaまたはCOC
    3 である)非常に分子量の低いことを特徴とするヘパ
    リン組成物。
  2. 【請求項2】オリゴ糖鎖またはヘパリンフラグメントの
    混合物からなることを特徴とする請求項1記載のヘパリ
    ン組成物。
  3. 【請求項3】nが10ないし12の範囲にあるフラグメ
    ントを10%未満、 nが1ないし6の範囲にあるフラグメントを80〜90
    %、 および、nが7ないし9の範囲にあるフラグメントを1
    5%未満含有していることを特徴とする請求項1または
    2記載のヘパリン組成物。
  4. 【請求項4】平均分子量(Mw)が2,000ないし
    4,000ダルトンの範囲にあり、分子量が2,000
    ダルトン未満のオリゴ糖鎖を25ないし60%含んでい
    ることから、40ないし75%のオリゴ糖鎖の分子量が
    2,000ないし6,000ダルトンの範囲にあり、1
    5%未満のオリゴ糖鎖の分子量が6,000ダルトンよ
    り大きいことを特徴とする請求項1または2記載のヘパ
    リン組成物。
  5. 【請求項5】抗Xa活性が100ないし150I.U./m
    gの範囲にあり、抗第IIa因子活性が10I.U./mg以
    下であることを特徴とする請求項1または2記載のヘパ
    リン組成物。
  6. 【請求項6】抗血栓症剤として使用可能であることを特
    徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載のヘパリ
    ン組成物。
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