JP2001173595A - 遠心型羽根車 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の目的は、羽根間の流れにおける剥離を
防ぎ、広範囲での安定した使用ができる遠心型羽根車を
提供することにある。 【解決手段】羽根車と同一の中心軸を持つ円筒による断
面を平面に展開した時に、側板の板厚が周方向に設けた
羽根を支持する部分で円筒の半径によらず一定で、隣り
合う羽根の間で下に凸で厚くなっていることにある。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、遠心型羽根車に関
するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年、遠心型羽根車の高効率・低騒音化
が技術課題となっており、その研究開発が進められてい
る。これらの技術課題のために羽根車で生じる各損失の
低減が必要となり、羽根車内部の流れ解析が進められて
いる。また、この損失低減による高効率化に伴い、羽根
車内部での更なる損失の低減を図る必要がある。

【０００３】図１に遠心型羽根車の一構造図を示す。遠
心羽根車１は、吸込口９を形成するドーナツ状の側板３
と側板３に対向して置かれた主板２との間に周方向に羽
根４を等間隔に設置した構造となっており、軸方向から
吸引した流体を径方向へ昇圧し吐出している。

【０００４】ところで、このような遠心羽根車は、設計
流量で使うのが望ましいが、これらの遠心羽根車の中に
は、低流量から高風量と幅広い使用範囲で安定した性能
を得ることが望まれているものもある。しかし、広い使
用範囲を考えた場合、羽根入口角と羽根流入角との不一
致による羽根入口部での剥離や、ケーシングと羽根車と
の間による隙間で生じる循環流れや、羽根車出口部で羽
根の圧力面側から負圧面側へ流体が流れ込むことによる
逆流などの損失がある。このような損失を低減するた
め、従来から、遠心型羽根車の羽根車内部で生じる各部
損失の低減方法として数多く提案されている。

【０００５】例えば、特開平11−201093号公報に記載さ
れている電動送風機について述べる。本電動送風機は、
ファンケーシングと羽根車との間に生じる隙間をシール
して循環流の発生を防止し、送風性能を向上させるた
め、ファンケーシングの吸込口の内面側に延伸多孔質の
ポリテトラフロロエチレン樹脂により形成した環状のシ
ール部材を設け、遠心羽根車の前面シュラウドと摺接す
るように構成した。延伸多孔質のポリテトラフロロエチ
レン樹脂のシール部材は、遠心羽根車に摺接しても摩擦
損失を増加させることなく、確実に循環流を防止するこ
とができ、送風性能を向上させることができる電動送風
機である。

【０００６】例えば、特開平9−287593 号公報に記載さ
れている遠心ポンプについて述べる。本遠心ポンプは、
前シュラウドと後シュラウドの間に周方向に沿って設け
られた複数の渦巻状羽根及びこれら渦巻状羽根間に形成
された複数の渦巻流路を有するインペラであり、上記渦
巻状羽根の回転方向前面に、小水量運転時に剥離渦が発
生する領域に渦巻き流路の面積を絞るように突出部を形
成したことを特徴とする遠心ポンプである。

【０００７】上記の場合は、ファンケーシングと羽根車
との間に生じる隙間でおきる循環流を防止することがで
きること、低流量の時の羽根入口角と羽根流入角の不一
致による羽根入口部での剥離が抑さえられる。特に、特
開平9−287593 号公報は、突出部を設け、羽根入口部で
の剥離流域をふさぎ、低流量運転でも、安定した性能を
得ることを図ったものである。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
ような遠心ポンプでは、羽根車出口部で羽根の圧力面側
から負圧面側へ流体が流れ込むことによる逆流によって
生じる損失を低減することは、難しく、より広い範囲の
使用は望みにくい。また、この逆流により、所定の風量
を満足することが難しくなるため、より回転数を高くし
ないとならないといったことになり、回転数の増加分騒
音が高くなるという問題がある。

【０００９】また、低流量での運転では、流れが側板に
よって流れることが多く、主板側で剥離が起こる。この
剥離によって、騒音が高くなるという問題がある。

【００１０】本発明の目的は、側板側で生じる逆流を防
ぐとともに、低流量での運転で生じる側板によって流れ
ることからおきる主板側の剥離を防ぎ、より広い範囲で
の安定した使用ができる遠心型羽根車を提供することに
ある。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記目的は、吸込口を形
成するドーナツ状の側板と側板に対向して置かれた主板
との間に周方向に羽根が配置され、軸方向から吸引した
流体を径方向に昇圧し、吐出す遠心型羽根車において、
羽根車と同一の中心軸を持つ円筒による断面を平面に展
開した時に、側板の板厚が周方向に設けた羽根を支持す
る部分で円筒の半径によらず一定で、隣り合う羽根の間
で下に凸で厚くなっている遠心型羽根車を用いることに
より達成される。

【００１２】上記目的は、隣り合う羽根の同一半径の点
を結ぶ円弧の中点を連ねてできる曲線に沿い、回転軸と
平行な断面を平面に展開した場合、側板の板厚が遠心型
羽根車中心からの半径が大きくなるにつれて、増大する
ようにした遠心型羽根車を用いることによっても達成さ
れる。

【００１３】上記目的は、羽根車出口部の側板上の主板
側に突出部を設けた遠心型羽根車を用いることによって
も達成される。

【００１４】

【発明の実施の形態】図２（ａ）ないし（ｅ）は、本発
明の実施例を示す。吸込口９を形成するドーナツ状の側
板３と側板３に対向して置かれた主板２との間に周方向
に羽根４が配置され、軸方向から吸引した流体を径方向
に昇圧し、吐出する遠心型羽根車１において、羽根車１
中心からの半径（Ｒ１・Ｒ２・Ｒ３）における円筒断面
（Ｂ１−Ｂ１・Ｂ２−Ｂ２・Ｂ３−Ｂ３）を平面に展開
した場合、側板３の板厚５が周方向に設けた羽根４を支
持する部分で円筒の半径によらず一定で、隣り合う羽根
４の間で下に凸で厚くなっている側板３を備えており、
この板厚５が隣り合う羽根の同一半径の点を結ぶ円弧の
中点を連ねてできる曲線（Ａ−Ａ）に沿い、回転軸と平
行な断面を平面に展開した場合、Ａ１からＡ３にいくに
つれ、増大するようになっている。

【００１５】このように構成した第１の実施の形態につ
いて作用を説明する。従来の遠心型羽根車は、回転方向
に対して、羽根の前面側に圧力の高い部分ができ、後面
に負圧部ができる。特に、羽根車出口では、圧力面側か
ら負圧面へ流れ混む、すなわち逆流する流体ができ、羽
根車出口における有効面積を減少させ、動圧を大きくす
ることになる。また、羽根車出口の側板側では、羽根の
圧力面から負圧面へ流れ込む逆流部の面積が大きくな
る。さらに、この逆流部は、羽根車の径方向に大きく入
り込み、羽根入口付近まで生じることがある。

【００１６】しかしながら、本実施の形態の羽根車で
は、羽根車中心からの半径（Ｒ１・Ｒ２・Ｒ３）におけ
る円筒断面（Ｂ１−Ｂ１・Ｂ２−Ｂ２・Ｂ３−Ｂ３）を
平面に展開した場合、側板の板厚が周方向に設けた羽根
を支持する部分で円筒の半径によらず一定で、隣り合う
羽根の間で下に凸で厚くなっている側板を備えているた
め、羽根車の側板側でおきる羽根車出口部の逆流部をう
めることになり、逆流を抑さえることができる。

【００１７】また、板厚を隣り合う羽根の同一半径の点
を結ぶ円弧の中点を連ねてできる曲線（Ａ−Ａ）に沿
い、回転軸と平行な断面を平面に展開した場合、Ａ１か
らＡ３にいくにつれ、増大するように形成することによ
って羽根入口部分から生じる逆流を抑さえることができ
る。このため、羽根車出口部での逆流を防ぐことがで
き、所定の風量を満足することができるため、回転数を
高くするといったことが不要になり、低騒音化につなが
る。さらに、低流量での運転で生じる、側板によって流
れることからおきる主板側の剥離を抑さえることがで
き、この剥離によって、騒音が高くなるという問題を回
避できる。

【００１８】図３（ａ）ないし（ｅ）は、本発明の他の
実施例を示す。

【００１９】羽根車１中心からの各半径（Ｒ１・Ｒ２・
Ｒ３）における円筒断面（Ｂ１−Ｂ１・Ｂ２−Ｂ２・Ｂ
３−Ｂ３）を平面に展開した場合、主板２と側板３の間
の側板３側に部材６を設け、この部材６が周方向に設け
た羽根４を支持する部分で半径によらず一定で、隣り合
う羽根４の間で下に凸で厚くなっていて、この部材６の
凸部が隣り合う羽根の同一半径の点を結ぶ円弧の中点を
連ねてできる曲線（Ａ−Ａ）に沿い、回転軸と平行な断
面を平面に展開した場合、Ａ１からＡ３にいくにつれ、
増大するように設置している。また、側板３と部材６に
よってできた空間８は、羽根車出口で部材６が側板３と
つながっているため、空間は閉じている。

【００２０】このようにすれば、羽根車の隣り合う羽根
の間に部材を設けたことにより、羽根出口部での逆流を
防ぐことができ、所定の風量を満足することができるた
め、回転数を高くするといったことが不要になり、低騒
音化につながる。さらに、低流量での運転で生じる、側
板によって流れることからおきる主板側の剥離を抑さえ
ることができ、この剥離によって、騒音が高くなるとい
う問題を回避できる。

【００２１】図４（ａ）ないし（ｅ）は、本発明の他の
実施例を示す。

【００２２】羽根車１中心からの各半径（Ｒ１・Ｒ２・
Ｒ３）における円筒断面（Ｂ１−Ｂ１・Ｂ２−Ｂ２・Ｂ
３−Ｂ３）を平面に展開した場合、主板２と側板３の間
の側板３側に部材６を設け、この部材６が隣り合う羽根
４の間で下に凸で厚くなっていて、この部材６の凸部が
隣り合う羽根の同一半径の点を結ぶ円弧の中点を連ねて
できる曲線（Ａ−Ａ）に沿い、回転軸と平行な断面を平
面に展開した場合、Ａ１からＡ３にいくにつれ、増大す
るように設置している。また、側板３と部材６によって
できた空間８は、羽根車出口で部材６が側板３とつなが
っているため、空間は閉じている。

【００２３】このようにすれば、羽根車の隣り合う羽根
の間に部材を設けたことにより、羽根出口部での逆流を
防ぐことができ、所定の風量を満足することができるた
め、回転数を高くするといったことが不要になり、低騒
音化につながる。さらに、低流量での運転で生じる、側
板によって流れることからおきる主板側の剥離を抑さえ
ることができ、この剥離によって、騒音が高くなるとい
う問題を回避できる。

【００２４】図５は、本発明の他の実施例を示す。

【００２５】側板３が波打つ形状で、かつ径方向にこの
波打った形状の凹凸が大きくなるようにし、周方向に設
けた羽根４の支持する部分で上に凸、隣り合う羽根４の
間で下に凸となるように設置している。

【００２６】このようにすれば、側板における円管摩擦
損失が大きくなることが予想されるが、羽根車の隣り合
う羽根の間に部材を設けたことにより、羽根出口部での
逆流を防ぐことができ、所定の風量を満足することがで
きるため、回転数を高くするといったことが不要にな
り、低騒音化につながる。さらに、低流量での運転で生
じる、側板によって流れることからおきる主板側の剥離
を抑さえることができ、この剥離によって、騒音が高く
なるという問題を回避できる。

【００２７】図６（ａ）ないし（ｅ）は、本発明の他の
実施例を示す。

【００２８】遠心型羽根車１出口部の側板３上の主板２
側に突出部７を設置している。

【００２９】このようにすれば、羽根車の隣り合う羽根
の間に突出部を設けたことにより、羽根車出口部での逆
流を防ぐことができ、所定の風量を満足することができ
るため、回転数を高くするといったことが不要になり、
低騒音化につながる。さらに、低流量での運転で生じ
る、側板によって流れることからおきる主板側の剥離を
抑さえることができ、この剥離によって、騒音が高くな
るという問題を回避できる。

【００３０】

【発明の効果】前記に説明したように、本発明の遠心型
羽根車にすれば、側板側で生じる逆流を防ぐとともに、
低流量での運転で生じる側板によって流れることからお
きる主板側の剥離を抑さえることができ、広い範囲での
安定した使用ができるという効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】遠心羽根車の代表的な構造の図である。

【図２】本発明の一実施例を示す遠心羽根車の図であ
る。

【図３】本発明の他の実施例を示す遠心羽根車の図であ
る。

【図４】本発明の他の実施例を示す遠心羽根車の図であ
る。

【図５】本発明の他の実施例を示す遠心羽根車の斜視図
である。

【図６】本発明の他の実施例を示す遠心羽根車の図であ
る。

【符号の説明】

１…遠心型羽根車、２…主板、３…側板、４…羽根、５
…板厚、６…部材、７…突出部、８…空間、９…吸込
口。

フロントページの続き (72)発明者 石川 富則 新潟県北蒲原郡中条町大字富岡46番地１ 株式会社日立製作所産業機器グループ内 Ｆターム(参考） 3H033 AA02 BB02 BB06 CC01 DD06 DD09 EE06 EE08

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】吸込口を形成するドーナツ状の側板と側板
   に対向して置かれた主板との間に周方向に羽根が配置さ
   れ、軸方向から吸引した流体を径方向に昇圧し、吐出す
   遠心型羽根車において、羽根車と同一の中心軸を持つ円
   筒による断面を平面に展開した時に、側板の板厚が周方
   向に設けた羽根を支持する部分で円筒の半径によらず一
   定で、隣り合う羽根の間で下に凸で厚くなっていること
   を特徴とする遠心型羽根車。