JP2001170956A - ポリプロピレン系樹脂射出成形体 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂射出成形体

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JP2001170956A
JP2001170956A JP35984199A JP35984199A JP2001170956A JP 2001170956 A JP2001170956 A JP 2001170956A JP 35984199 A JP35984199 A JP 35984199A JP 35984199 A JP35984199 A JP 35984199A JP 2001170956 A JP2001170956 A JP 2001170956A
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molded article
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injection
propylene
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Isao Shoda
勲 正田
Teruhiko Nawata
輝彦 縄田
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Tokuyama Corp
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Tokuyama Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】清掃作業等における布や紙などによる繰返し摩
擦や他の物品の接触による表面傷付きや外観低下のない
耐擦傷性に優れた、大型家電製品の外板部品や容器等の
用途に好適なポリプロピレン系樹脂射出成形体を提供す
る。 【解決手段】軟質成分と硬質成分からなるポリプロピレ
ン系樹脂を用い、射出成形体の表面に軟質部分と硬質部
分からなる相分離構造を形成させ、該硬質部分の表面に
占める面積を20%以上とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリプロピレン系
樹脂からなる新規な射出成形体に関する。詳しくは、耐
衝撃性と表面の耐擦傷性が共に優れたポリプロピレン系
樹脂射出成形体を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリプロピレンは、剛性、耐熱性、光沢
および耐薬品性等に優れ、また、成形やリサイクルが容
易である特徴を生かし、種々の家電製品の部材や容器の
成形用材料としてとして幅広く用いられている。
【0003】しかし、ポリプロピレンは、特に、低温に
おける耐衝撃性が低く、これを改良するために、該ポリ
プロピレンと実質的に相溶しない軟質成分(ゴム成分)
を含有するポリプロピレン系樹脂が使用されている。例
えば、プロピレン−エチレンブロック共重合体、ポリプ
ロピレンと軟質のエチレン−α−オレフィン共重合体と
のブレンド等が使用される。
【0004】ところが、上記ポリプロピレン系樹脂を使
用して、射出成形により成形体を製造した場合、得られ
る成形体表面における耐擦傷性の指標である鉛筆硬度
は、例えば、プロピレン−エチレンブロック共重合体の
場合、3B程度と低く、実用上満足のいくものではなか
った。
【0005】即ち、これらの射出成形体を洗濯機や冷蔵
庫等の大型家電製品の外板部品に用いた場合には、表面
の耐擦傷性が低いことにより、清掃時の拭磨や他の物品
の接触等により表面が傷付き、また傷に汚れが溜まる等
の外観に関する使用上の問題があった。
【0006】このような問題を解決する手段として、従
来、滑剤を添加して表面における摩擦抵抗の低減化によ
ってポリプロピレン系樹脂射出成形体の耐擦傷性を改良
する方法が試みられているが、かかる方法は表面にかか
る応力の相対的な軽減にすぎず、上記問題の本質的な解
決までには至っていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、前記軟質成分を含有することによって優れた耐衝撃
性を有しながら、清掃作業等における布や紙などによる
繰返し摩擦や他の物品の接触による表面傷付きや外観低
下のない、優れた耐擦傷性を有するプロピレン系樹脂射
出成形体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる目
的を達成すべく鋭意検討を重ねた。その結果、軟質成分
を含有するポリプロピレン系樹脂の射出成形において
は、成形の過程で、存在せしめた軟質成分が成形体表面
に露出し易く、かかる表面における軟質成分の割合が多
いことが表面高度の低下を招くという知見を得た。ま
た、かかる現象は、ポリプロピレン系樹脂中の軟質成分
の割合をかなり低減した場合でも生じる。
【0009】上記知見に基づき、更に研究を重ねた結
果、ポリプロピレン系樹脂の射出成形体の表面におい
て、軟質成分の量を減少せしめ、主に、硬質成分によっ
て形成される硬質部分の面積割合が特定の値を有する表
面構造とすることにより、上記ポリプロピレン系樹脂の
元来有する優れた耐衝撃性を低下させることなく、その
表面硬度が著しく向上され、耐擦傷性に優れたポリプロ
ピレン系樹脂射出成形体の得られることを見い出し、本
発明を完成するに至った。
【0010】即ち、本発明は、軟質成分と硬質成分との
相分離構造を有するポリプロピレン系樹脂より成り、成
形体表面において原子間力顕微鏡により測定される硬質
部分の占める面積が20%以上であることを特徴とする
ポリプロピレン系樹脂射出成形体である。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の上記ポリプロピレン系樹
脂は、軟質成分と硬質成分との相分離構造を有する公知
のポリプロピレン系樹脂が特に制限なく使用される。代
表的なポリプロピレン系樹脂を例示すれば、プロピレン
−エチレンブロック共重合体等のプロピレンとプロピレ
ン以外のα−オレフィンとのブロック共重合体、プロピ
レン重合体と低分子量ポリプロピレン、エチレン−プロ
ピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレン−ブテ
ン−1−ランダム共重合体等のα−オレフィン共重合体
などの主として軟質成分を構成する重合体との混合物、
更に、上記重合体の混合物が挙げられる。
【0012】かかる混合物において、プロピレン重合体
は、プロピレンの単独重合体、他のα−オレフィンを1
0重量%以下、好ましくは5重量%以下の割合でランダ
ム共重合した重合体が好適に使用される。
【0013】上記ポリプロピレン系樹脂は、軟質成分と
硬質成分とより成る相分離構造を実現するため、沸騰ヘ
プタン不溶部の割合が、65〜95重量%、好ましくは
75〜95重量%であり、また、残部の沸騰ヘプタン可
溶部におけるエチレン等、プロピレン以外のα−オレフ
ィン含量が10〜70重量%、好ましくは、15〜40
重量%であることが好ましい。
【0014】即ち、上記沸騰ヘプタン不溶部の割合が9
5重量%を超えた場合、軟質成分量も低下するため、耐
衝撃性の改良効果が十分発揮されず、また、沸騰ヘプタ
ン不溶部の割合が65重量%未満の場合、硬質成分の低
下による成形体表面の「硬質部分」の面積を所期の値に
調整することが困難となる傾向があり、表面硬度の改良
効果を十分に得ることができ難くなる。そればかりでな
く、成形体としての基本的な強度である剛性なども低下
する傾向がある。
【0015】また、沸騰ヘプタン可溶部におけるα−オ
レフィン含量が10重量%に達しない場合、ポリプロピ
レンを主とする硬質成分と相分離する成分である、軟質
成分が形成され難くなり、本発明の相分離構造を採るこ
とが困難となる。一方、α−オレフィン含量が70重量
%を超えた場合、軟質成分による耐衝撃性の改良効果が
低減する傾向にある。
【0016】尚、本発明において、沸騰ヘプタン不溶部
は、実施例で詳細に説明するが、沸騰n−ヘプタン中で
7時間抽出を行った後の不溶部である。
【0017】上記ポリプロピレン系樹脂のうち、得られ
る射出成形体を大型家電製品の外板部品等に使用する際
に必要な耐衝撃性を勘案すると、プロピレン−エチレン
ブロック共重合体が好適である。
【0018】この場合、プロピレン−エチレンブロック
共重合体において好適なエチレン含有量は、得られる射
出成形体の耐擦傷性と耐衝撃性を勘案すれば、3〜10
重量%、特に、3〜8重量%の範囲が好適である。
【0019】また、本発明のポリプロピレン射出成形体
に使用されるポリプロピレン系樹脂は、前記沸騰ヘプタ
ン不溶部の13C―NMRによるアイソタクチックペンタ
ッド分率が0.96以上、特に0.98以上であること
が、ポリプロピレン系樹脂射出成形体の表面において硬
質部分が占める面積を増大せしめ、成形体の耐擦傷性、
耐衝撃性を一層高めることができるため好ましい。
【0020】尚、上記沸騰ヘプタン不溶部のアイソタク
チックペンタット分率は、ポリプロピレン系樹脂の沸騰
ヘプタン不溶部を、A.Zambelliらによって発表された
方法(Macromolecules,13,267(1980))に
従って、13C−NMRスペクトルのピ−クの帰属に基づ
いて定量されたポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単
位でプロピレンが5個連続してメソ結合した連鎖の中心
にあるプロピレンモノマー単位の分率を測定した値をい
う。
【0021】本発明において、ポリプロピレン系樹脂の
流動性は、特に制限されるものではないが、成形性や剛
性、耐衝撃性を勘案するとメルトフローレイト(以下、
MFRとも略す)が1〜100g/10min、好まし
くは、3〜70g/10min、更に好ましくは、5〜
50g/10minである。ここでMFRとはJISK
7210に準じ、シリンダ温度が230℃における値
である。
【0022】また、上記ポリプロピレン系樹脂の重量平
均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw
/Mn)で表される分子量分布は、特に制限されるもの
ではないが、射出成形時の容易さや溶融流動性を向上さ
せ加工性を向上させることを勘案すると、2〜20であ
ることが好ましく、さらに4〜10であることがより好
ましい。なお、上記分子量分布は、o−ジクロルベンゼ
ンを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフ法
(以下、GPCともいう)で測定された値であり、検量
線は標準ポリスチレンで較正されたものである。
【0023】更に、上記ポリプロピレン系樹脂の融点も
特に制限されるものではないが、150℃以上であるこ
とが好ましく、155℃以上であることがより好まし
く、さらに160℃以上であることが好ましい。
【0024】ここでいうポリプロピレン系樹脂の融点は
示差走査熱量計(以下、DSCともいう)で測定された
昇温時の結晶融解曲線の最大ピーク温度である。
【0025】本発明において、ポリプロピレン系樹脂
は、如何なる方法により得られたものであっても良い。
一般には、チーグラー・ナッタ型立体特異性触媒系やメ
タロセン立体特異性触媒系を用い重合して得られたもの
が好ましい。
【0026】前記チーグラー・ナッタ型立体特異性触媒
としては、塩化マグネシウム担持チタン化合物または三
塩化チタン化合物と有機アルミニウム化合物からなる触
媒、或いは、それらに各種の電子供与性物質を加えた触
媒が用いられる。チタン化合物としては、オレフィンの
重合に使用される公知の化合物が何等制限なく採用され
る。特に、チタン、マグネシウムおよびハロゲンを成分
とする触媒活性が高く、且つ高結晶ポリマーが得られる
チタン化合物が好適である。この様なチタン化合物とし
て、ハロゲン化チタン、特に四塩化チタンを種々のマグ
ネシウム化合物に担持させたものが挙げられる。
【0027】この触媒の製法は、公知の方法が何等制限
なく採用される。例えば、四塩化チタンを塩化マグネシ
ウムなどのマグネシウム化合物と共粉砕する方法、アル
コール、エーテル、エステル、ケトンまたはアルデヒド
等の電子供与体の存在下にハロゲン化チタンとマグネシ
ウム化合物を共粉砕する方法、または溶媒中でハロゲン
化チタン、マグネシウム化合物および電子供与体を接触
させる方法等が挙げられる。
【0028】次に、有機アルミニウム化合物としては、
オレフィンの重合に用いられる公知の化合物を何等制限
することなく使用できる。例えば、トリメチルアルミニ
ウム、トリエチルアルミニウムおよびトリ−nプロピル
アルミニウム等のアルキルアルミニウム類;エチルアル
ミニウムセキスクロライドおよびジエチルアルムニウム
クロライド等のハロゲン原子含有のアルキルアルムニウ
ム類を用いることができる。
【0029】さらに、得られる射出成形体の結晶性を高
めるために、上記のチタン化合物と有機アルミニウム化
合物に加え、電子供与体を用いることが好ましい。電子
供与体としては、例えば、エーテル、アミン、アミド、
含硫黄化合物、ニトリル、カルボン酸、酸アミド、酸無
水物、酸エステル、有機ケイ素化合物等が挙げられる。
このなかでも、有機ケイ素化合物が最も好ましい。
【0030】上記重合法は、気相中および液相中のいず
れで重合したものであってもよい。また、触媒に対する
不活性液体あるいは不活性溶媒中において重合したもの
でもよく、重合中、水素を導入することにより分子量調
節したものや、得られた重合体を有機過酸化物等の分子
量調節剤により減成したものでもよい。さらに、重合は
回分式、半回分式、連続式のいずれの方法によっても行
うことができる。
【0031】また、重合条件は、本発明の効果が認めら
れる限り特に制限されず、公知の条件を採用することが
できる。例えば、重合温度は20〜200℃、好ましく
は50〜150℃の範囲である。さらに重合は条件の異
なる2段階以上に分けて行うこともできる。
【0032】本発明において、上記ポリプロピレン系樹
脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記ポリプ
ロピレン系樹脂のほかに他の樹脂が配合されていてもよ
い。
【0033】かかる配合される樹脂としては、特に制限
されないが、一般的には、エチレン、プロピレン、1−
ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、
1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−
1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−
1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシク
ロブタン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサ
ン等のオレフィン単独重合体、またはこれらのオレフィ
ン同士の共重合体、または、これらの重合体の2種以上
の混合物等のポリオレフィン系樹脂や、脂肪族系炭化水
素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、ロジン誘導体、テルペ
ン樹脂、テルペンフェノール樹脂等、およびこれらの水
素添加系樹脂等の石油樹脂類の熱可塑性樹脂を挙げるこ
とができる。
【0034】また、上記ポリプロピレン系樹脂射出成形
体に用いられるポリプロピレン系樹脂には、上記成分の
他にタルク、ワラストナイト、硫酸バリウム、炭酸カル
シウム、ガラス等の無機充填材を配合しても良い。当該
無機充填材は、2種以上を併用しても良い。この無機充
填材の好ましい配合量は、ポリプロピレン系樹脂100
重量部に対して0.1〜100重量部である。
【0035】更に、上記ポリプロピレン系樹脂射出成形
体に用いられるポリプロピレン系樹脂には、発明の効果
を損なわない範囲で、適宜、各種の添加剤を配合するこ
とができる。具体的には、フェノール系、ヒンダードア
ミン系、リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;有機
系、無機系、高分子系の結晶化核剤;ベンゾフェノン
系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線
吸収剤;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の帯電
防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の
分散剤;アルカリ土類金属塩のカルボン酸塩系、ハイド
ロタルサイト系等の塩素補足剤;アミド系、ワックス
系、有機金属塩系、エステル系等の滑剤;オキシド系、
ハイドロタルサイト系等の分解剤;ヒドラジン系、アミ
ン系等の金属不活性剤;含臭素有機系、リン酸系、三酸
化アンチモン、水酸化マグネシウム、赤リン等の難燃
剤;有機系、無機系顔料;発泡剤;有機充填剤;金属イ
オン系等の無機、有機抗菌剤等の公知の各種添加剤が本
発明の効果を阻害しない範囲で配合されていてもよい。
【0036】本発明のポリプロピレン系樹脂射出成形体
は、表面において原子間力顕微鏡により測定される硬質
部分の占める面積が20%以上であることを最大の特徴
とする。
【0037】即ち、前記本発明で使用されるポリプロピ
レン系樹脂を使用して得られる射出成形体は、全体に、
前記硬質成分と軟質成分とによる微細な相分離構造を有
しており、上記成形体表面における「硬質部分」は、一
般に、該硬質成分により形成される。
【0038】尚、本発明において、「硬質」および「軟
質」は、絶対的な硬さを示すものではなく、相対的な硬
さを示すものである。
【0039】上記ポリプロピレン系樹脂を使用し、通常
の射出成形方法によって得られる射出成形体の表面にお
ける硬質部分の割合は、高々18%であり、後述する比
較例からも明らかなように、このような成形体の耐擦傷
性は低い。
【0040】これに対して、本発明のポリプロピレン系
樹脂射出成形体は、かかる硬質部分の占める面積が20
%以上、場合によっては、30%以上を達成するもので
あり、これにより、表面硬度が飛躍的に向上し、優れた
耐擦傷性を示すものである。
【0041】上記硬質部分の表面に占める面積は、25
〜80%であることが好ましく、特に、30〜70%で
あることがより好ましい。
【0042】本発明において、成形体表面における上記
硬質部分は、市販されている原子間力顕微鏡(以下、A
FMともいう。)によって確認することができる。
【0043】AFMとしては、デジタルインスツルメン
ツ社製、セイコーインスツルメンツ社製、トポメトリッ
クス社製等の原子間力顕微鏡装置を用いることができ
る。例えば、デジタルインスツルメンツ社製AFM装置
NanoScopeIIIaを使用した場合には、タッピングモード
で、ポリプロピレン系樹脂射出成形体の表面を1μm四
方の面積で走査し、同時に位相検出エクステンダーモジ
ュールにより位相像を測定する。
【0044】ここで、タッピングモードとは、Q.Zhong
ら,Surface Science Letter,290,668(19
93)に記載されている方法である。また、位相像と
は、例えば、R.van den Bergら,Polymer,35,5
778(1994)、M.A.van Dijkら,Macromolecu
les,28,6773(1995)等に説明が記載され
ているとおりである。タッピングモードでは、ピエゾド
ライバーでカンチレバーを励起して振動させながら、試
料表面の形状を測定する。このとき、試料表面の粘弾性
的性質により、カンチレバーを振動させるピエゾドライ
ブの信号に対して、カンチレバーの振動信号に位相の遅
れが生じる。この位相差をマッピングし画像化したもの
が位相像である。軟質部分は位相の遅れが大きく、位相
像では暗く観察され、一方、硬質部分は位相の遅れが小
さく、位相像では明るく観察される。
【0045】尚、測定において、カンチレバーは摩耗や
変形、汚れの無い状態のものを使用し、測定個所は射出
成形体中の傷や汚れの無い個所を選択して行う。
【0046】図1は実施例1で成形したポリプロピレン
系樹脂射出成形体の表面のタッピングモードAFM位相
像であり、軟質部分からなる連続相(暗い領域)と硬質
部分からなる分散相(明るい領域)とで形成された微細
な相分離構造が認められる。
【0047】本発明のポリプロピレン系樹脂射出成形体
は、上記のように、軟質部分からなる連続相と硬質部分
からなる分散相とで形成された微細な相分離構造を有す
る表面であることが好ましい。
【0048】また、上記の硬質成分の表面に占める面積
とは、前述のタッピングモードAFMを用いて1μm四
方の面積を測定した位相像について、フラット処理を行
なった後、ベアリング解析によって求めた値である。前
記フラット処理は、AFM装置に付属のソフトウェアを
用いることができ、試料表面のうねりや傾きを平滑化す
る処理である。また、ベアリング解析も付属のソフトウ
ェアであり、画像中の全測定点(512×512点)の
コントラストを深さとして、任意の深さにおける断面積
を評価することができる。
【0049】位相像を用いてベアリング解析を行なう場
合、コントラストは位相差であるから、位相差が0〜任
意値の領域の全データに占める面積を求めることができ
る。本発明のポリプロピレン系樹脂射出成形体表面の位
相像では、ベアリング解析において、位相差(ソフトウ
ェアでは深さ)の分布は硬質成分と軟質成分に対応した
二様分布を示す。位相差が0の点から、二様分布の中間
の極小値(硬質成分と軟質成分の分布に対応する二つの
山間において最も低い点)までの全データに占める面積
を求めることで、硬質成分の表面に占める面積(%)を
求めることができる。
【0050】本発明のポリプロピレン系樹脂射出成形体
は、上記表面構造を有していれば、本発明の効果を十分
に達成することができるが、さらに、射出成形体の耐擦
傷性と耐衝撃性の向上を勘案すると、以下の要件を満足
することが好ましい。
【0051】即ち、本発明のポリプロピレン系樹脂射出
成形体の表面における硬質部分と軟質部分の形態は特に
制限されるものではないが、ポリプロピレン系樹脂射出
成形体の耐衝撃性を勘案すると、軟質部分が連続相を、
硬質部分が分散相を形成していることが好ましく、さら
に、その硬質部分の大きさは相当径で5〜100nmで
あることが好ましく、10〜80nmであることがより
好ましい。
【0052】本発明のポリプロピレン系樹脂射出成形体
は、その内部も前記した軟質成分と硬質成分とによる相
分離構造を有しているのが一般的である。この相分離構
造は、ポリプロピレン系樹脂射出成形体の耐衝撃性を勘
案すると、軟質成分が分散相、硬質成分が連続相を形成
していることが好ましい。また、成形体内部における軟
質成分の占める割合は3〜40%であることが好まし
く、5〜20%であることがより好ましい。また、軟質
成分からなる分散相の径は0.1〜20μmであること
が好ましく、0.5〜5μmであることがより好まし
い。
【0053】上記成形体の内部の構造は公知の電子顕微
鏡法によって観察することが可能である。例えば、成形
体を四酸化ルテニウム等の染色剤で染色した後、ウルト
ラミクロトームを用いて超薄切片を作製して透過電子顕
微鏡で観察する方法、成形体断面を高温のヘプタン等の
溶剤で洗浄し軟質成分を抽出した後、走査電子顕微鏡で
観察する方法等が挙げられる。
【0054】本発明のポリプロピレン系樹脂射出成形体
表面の結晶化度(XS)は、特に制限されるものではな
いが、53%以上であることが好ましく、55%以上で
あることがより好ましい。また、該表面結晶化度
(XS)の上限は、特に制限されるものではないが、成
形体の耐衝撃性、寸法安定性を勘案すると75%である
ことが好ましい。
【0055】上記の表面結晶化度(XS)とは、ポリプ
ロピレン系樹脂射出成形体の表面層(100μm以下)
におけるポリプロピレンの結晶成分率を表す指標であ
り、以下に示す反射X線回折法によって求められる値で
ある。
【0056】この表面結晶化度(XS)は、具体的に
は、下記の方法によって測定される。即ち、薄膜試料装
置を装着したX線回折装置を用い、ポリプロピレン系樹
脂射出成形体試料表面に入射するX線の入射角αを1.
0°に固定し、X線検出器のみ走査する2θ単独駆動方
式でX線回折強度を測定する。
【0057】次に、得られたX線回折強度曲線を非晶質
ハローと各結晶質ピークに波形分離を行い、非晶質ハロ
ーの面積(非晶質ハローの積分強度)と全結晶質ピーク
の面積(各結晶質ピークの積分強度の総和)から(I)
式によって表面結晶化度の値が求められる。
【0058】 表面結晶化度(XS)=Sc,S/(Sc,S+Sa,S)×100 (%) (I) (但し、Sc,Sは全結晶質ピークの面積、Sa,Sは非晶質
ハローの面積である。) また、本発明のポリプロピレン系樹脂射出成形体におい
て、表面結晶化度(X S)とバルク(内部)の結晶化度
(XB)との比で表される表面結晶化指数(XS/XB
は、特に制限されるものではないが、ポリプロピレン系
樹脂射出成形体の耐擦傷性をより向上させるため、0.
9以上であることが好ましく、0.95〜1.5である
ことがより好ましい。
【0059】ここで、バルクの結晶化度(XB)とは、
通常の対称反射X線回折法で測定された値である。詳し
くは、射出成形体試料表面に対して入射するX線の入射
角θと回折線検出角2θがθ−2θの関係を保って回転
する集中光学系でX線回折強度を測定する。次いで、得
られたX線回折強度曲線を前記と同様の方法で、非晶質
ハローと各結晶質ピークに波形分離を行い、非晶質ハロ
ーの面積(非晶質ハローの積分強度)と全結晶質ピーク
の面積(各結晶質ピークの積分強度の総和)から(II)
式によってバルクの結晶化度の値が求められる。
【0060】 バルクの結晶化度(XB)=Sc,B/(Sc,B+Sa,B)×100 (%)(II) (但し、Sc,Bは全結晶質ピークの面積、Sa,Bは非晶質
ハローの面積を示す。) 本発明のポリプロピレン系樹脂射出成形体について、バ
ルクの結晶化度(XB)は特に制限されるものではない
が、ポリプロピレン系樹脂射出成形体の耐擦傷性、剛
性、耐熱性を勘案すると、50%以上であることが好ま
しく、55%以上であることがより好ましい。
【0061】また、バルクの結晶化度(XB)の上限
は、特に制限されるものではないが、成形体の耐衝撃
性、寸法安定性を勘案すると75%以下であることが好
ましい。
【0062】本発明のポリプロピレン系樹脂射出成形体
の大きさ、形状は特に制限されないが、家電製品外板部
品や容器としての強度と成形サイクルを勘案すると、肉
厚は0.5〜10mm、好ましくは1.5〜6mmであ
ることが好ましい。
【0063】本発明のポリプロピレン系樹脂射出成形体
の成形方法は特に制限されないが、得られるポリプロピ
レン系樹脂射出成形体の表面において前記特定の硬質部
分の占める面積を効果的に上昇せしめるために、以下に
示す断熱金型を用いた射出成形を実施することが好まし
い。
【0064】尚、射出成形方法は、公知の射出成形技術
が特に制限なく採用され、例えば、単軸射出成形、多軸
射出成形、射出圧縮成形、ガスアシスト射出成形、ガス
圧縮射出成形、メルトコア射出成形、インサート射出成
形、コアバック射出成形、二色射出成形等が挙げられ
る。
【0065】上記断熱金型は、金型内表面に断熱層とし
てポリプロピレン系樹脂樹脂よりも耐熱温度の高い耐熱
性樹脂、或いは熱伝導率の低いセラミックス材料等の断
熱層を設けたものである。かかる構造は、例えば、特許
第2733400号等の公報に記載された構造が代表的
である。
【0066】従来、上記断熱金型は、主に、ポリスチレ
ン系樹脂やABS樹脂等の非晶性樹脂成形体の表面光沢
や金型転写性を向上させる手段として用いられてきた
が、これを本発明で特定するポリプロピレン系樹脂に対
して適用した例はない。
【0067】そして、本発明においては、該断熱金型を
使用して下記の好適な条件でポリプロピレン系樹脂の射
出成形を行うことにより、得られる射出成形体の表面硬
度が著しく向上するという驚くべき効果を発揮するので
ある。
【0068】前記断熱金型の断熱層に用いる耐熱性樹脂
としては、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が用い
られるが、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテ
ルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、芳香族ポリ
エスレル、芳香族ポリアミド、フッ素樹脂、シリコン樹
脂、エポキシ樹脂等の耐熱温度200℃以上の樹脂が使
用できる。
【0069】断熱層の形成方法は、特に制限されるもの
ではないが、用いる耐熱性樹脂の特性に応じ、耐熱性樹
脂のフィルムを金型内表面に貼りつける方法、溶融した
樹脂を金型内表面に塗布し固化させる方法、樹脂を溶剤
に溶かした溶液を金型内表面に塗布し乾燥させる方法、
モノマーを金型内表面に塗布し重合させる方法等が挙げ
られる。
【0070】また、断熱層の厚さは特に制限されるもの
ではないが、断熱層の強度と射出成形サイクルの効率を
勘案すれば、1〜1000μmであることが好ましく、
10〜500μmであることがより好ましい。また、本
発明の効果を勘案すると、断熱層の厚さと断熱層の熱伝
導率の関係において、断熱層厚さ(μm)/断熱層の熱
伝導率(W/m・K)の数値が、3〜3000であるこ
とが好ましく、30〜1500であることがより好まし
い。
【0071】上記の形態の断熱層を有する金型を用いる
ことにより本発明の効果を最も顕著に発現することがで
きるが、繰り返し成形における金型の耐久性を付与する
ため、断熱層の表面には金属製の保護層が設けられても
良い。保護層の厚さは特に制限されないが、断熱層の効
果の維持と耐久性を勘案すると、0.01〜2mmにす
ることが好ましく0.1〜1mmにすることが更に好ま
しい。
【0072】保護層に使用される金属は、特に制限され
るものではないが、鉄、ニッケル、アルミニウム、チタ
ン、錫、銀、銅等、およびこれら金属の合金が好適に使
用できる。また、保護層表面には、酸化処理等の化学的
処理、物理的処理が施されていてもよい。
【0073】本発明の射出成形体を成形する際の成形機
シリンダ温度は特に制限されないが、ポリプロピレン系
樹脂樹脂の流動性と耐熱性を勘案すると、180〜30
0℃、好ましくは190〜290℃の範囲である。断熱
層の表面に金属製の保護層が設けられた金型を用いる場
合は、シリンダ温度を250℃以上にすることにより成
形時に保護層の温度を急上昇できるため断熱金型の効果
を良好に得ることができ好ましい。
【0074】また、金型温度も特に制限されるものでは
ないが、成形体の表面結晶化度と成形サイクルを勘案す
ると、10〜120℃、好ましくは30〜80℃の範囲
である。金型内での保持時間も制限されるものではない
が、成形体の表面結晶化度と成形サイクルを勘案する
と、5〜300秒、好ましくは10〜120秒の範囲で
ある。
【0075】
【発明の効果】以上の説明により理解されるように、
このようにして、本発明のプロピレン系樹脂射出成形体
は、優れた耐衝撃性を有しながらも、従来のポリプロピ
レン系樹脂射出成形体では実現することのできなかった
極めて高い表面硬度を有し、清掃作業等における布や紙
などによる繰返し摩擦や他の物品の接触による表面傷付
きや外観低下のない、優れた耐擦傷性を発現する。
【0076】したがって、本発明のポリプロピレン系樹
脂射出成形体は、一般成形体はもとより、特に大型家電
製品の外板部品、大型容器として好適に使用することが
できる。
【0077】本発明のポリプロピレン系樹脂射出成形体
が、耐擦傷性に優れる理由は、未だ明らかではないが、
本発明者らは以下の解析結果から次のように考えてい
る。
【0078】例えば、プロピレン−エチレンブロック共
重合体の場合、その射出成形体内部のモルフォロジーを
透過電子顕微鏡等で観察すると、プロピレン単独重合体
の硬質成分が連続相を形成し、エチレン−プロピレン共
重合体ゴムの軟質成分が分散相となる相分離構造、いわ
ゆる海−島構造が見られる。一般に、プロピレン−エチ
レンブロック共重合体の内部においては、硬質成分であ
るプロピレン単独重合体が全体の70%以上の面積を占
めている。しかしながら、同じ成形体の最表面をタッピ
ングモードでAFMにより観察すると、内部とは逆に、
表面に占める硬質部分は20%に満たず、軟質部分が大
部分を占め連続相を形成していることが判明した。
【0079】このように、プロピレン−エチレンブロッ
ク共重合体では、射出成形体の表面の大部分が軟質成分
であるエチレン−プロピレン共重合体ゴムに覆われるた
めに、プロピレン単独重合体に比べて著しく耐擦傷性が
劣るものと思われる。
【0080】また、プロピレン−エチレンブロック共重
合体を例に説明すると、その射出成形体の表面における
硬質部分の大きさは数10nmのオーダーであり、数μ
m〜数10μmの相分離構造を有する内部に比べて遥か
に小さい。このような表面に見られる微細な相分離構造
は、以下のようにして形成するものと推定される。
【0081】即ち、一般に、プロピレン−エチレンブロ
ック共重合体中のプロピレン単独重合体を主とする相と
エチレン−プロピレン共重合体ゴムを主とする相とは溶
融状態において相溶しない系であるが、射出成形時にお
いて、金型表面に接する樹脂表面では剪断速度が非常に
大きいために、二つの相が相溶化し、固化する最にスピ
ノーダル分解のような機構で規則的な相分離構造を形成
するのではないかと想像される。
【0082】このような相分離過程において、硬質部分
を構成するプロピレン単独重合体を主とする相の表面に
占める割合が高くなる結果、表面の硬度が上昇し、耐擦
傷性が向上するものと推察される。
【0083】従来のポリプロピレン系樹脂射出成形体で
は、表面に占める硬質部分の割合が低く、軟質部分の占
める割合が高いために、最表面が軟らかく、耐擦傷性が
著しく劣る。
【0084】また、成形体表面の結晶化度を高めること
で、該表面の硬度が更に上昇し、耐擦傷性がより向上す
るものと考えられる。
【0085】
【実施例】本発明をさらに具体的に説明するために、以
下に実施例および比較例を掲げて説明するが、本発明は
これらの実施例に限定されるものではない。
【0086】尚、以下の実施例および比較例で得られた
射出成形体および原料ポリプロピレン系樹脂の評価は以
下に示す方法にて行った。
【0087】(1)タッピングモードAFM位相像 位相検出エクステンダーモジュールを装備した原子間力
顕微鏡装置(デジタルインスツルメンツ社製NanoScopeI
IIa/大型試料ステージD3100)を用い、タッピングモ
ード、次の条件で位相像を測定した。
【0088】 ・カンチレバー:Nano Probe社製タッピングモードカンチレバーNCH 単結晶シリコン製,長さ:125μm ・共振周波数:280〜320kHz ・自由振幅:1.5V ・セットポイント振幅:1.0〜1.3V ・走査範囲:1μm×1μm ・データ点数:512点×512点 ・走査速度:0.5Hz カンチレバーは摩耗や変形、汚れの無い状態のものを使
用し、測定個所は射出成形体中の傷や汚れの無い個所と
した。ポリプロピレン系樹脂射出成形体の表面に占める
硬質成分の面積(%)は、得られた1μm四方の位相像
から、同機器に付属のソフトウエアであるフラット処理
を行なった後、前述したベアリング解析によって求め
た。これをポリプロピレン系樹脂射出成形体表面の任意
の15点で求め、それらの平均値とした。
【0089】(2)表面結晶化度(XS) 薄膜試料装置(日本電子社製DX−GOT1)を装着し
たX線回折装置(日本電子社製JED−3500)を用
い、次の条件で回折強度を測定した。
【0090】 ・ターゲット:銅(Cu−Kα線) ・単色化:平板グラファイトモノクロメータ ・管電圧―管電流:40kV−400mA ・X線入射方法:反射法(薄膜法) ・X線入射角(α):1.0°固定 ・発散スリット幅:0.1mm ・受光スリット幅:0.2mm ・検出器:シンチレーションカウンター ・測定角度(2θ)範囲:8〜32° ・ステップ角度:0.04度 ・計数時間:2.0秒 上記測定条件により得られたX線回折強度曲線を、同機
器に付属のソフトウエアである一般ピーク分離プログラ
ムを用いて回折角(2θ)9〜31゜の範囲で空気散乱
等によるバックグラウンドを除いた後、ガウス関数とロ
ーレンツ関数を用いた一般的なピーク分離法によって非
晶質ピークと各結晶質ピークに分離した。
【0091】射出成形体の表面結晶化度(XS)(%)
は、非晶質ハローの面積(非晶質ハローの積分強度)と
全結晶質ピークの面積(各結晶質ピークの積分強度の総
和)から前述した(I)式により算出した。
【0092】(3)バルク結晶化度(XB) X線回折装置(日本電子社製JED−3500)を用
い、次の条件で回折強度を測定した。
【0093】 ・ターゲット:銅(Cu−Kα線) ・単色化:平板グラファイトモノクロメータ ・管電圧―管電流:40kV−400mA ・X線入射方法:対称反射法(粉末法) ・X線入射角(θ):θ−2θ連動 ・発散スリット幅:0.1mm ・受光スリット幅:0.2mm ・検出器:シンチレーションカウンター ・測定角度(2θ)範囲:8〜32° ・ステップ角度:0.04度 ・計数時間:2.0秒 上記測定条件により得られたX線回折強度曲線を、同機
器に付属のソフトウエアである一般ピーク分離プログラ
ムを用いて回折角(2θ)9〜31゜の範囲で空気散乱
等によるバックグラウンドを除いた後、ガウス関数とロ
ーレンツ関数を用いた一般的なピーク分離法によって非
晶質ピークと各結晶質ピークに分離した。
【0094】射出成形体のバルク結晶化度(XS
(%)は、非晶質ハローの面積(非晶質ハローの積分強
度)と全結晶質ピークの面積(各結晶質ピークの積分強
度の総和)から前述した(II)式により算出した。
【0095】 (4)沸騰ヘプタン不溶分[C7sol.](wt%) ポリプロピレン系樹脂2gをp−キシレン200mlに
加え、オイルバス中で撹拌しながら120℃まで昇温し
た後、さらに30分撹拌を続け、ポリマーを完全に溶解
させ均一な溶液を調製した。
【0096】次いで、オイルバスの電源を切り、p−キ
シレン溶液をオイルバス内で24時間放置し、室温(2
3℃)まで徐冷した。ポリマーの白色の析出物を含むp
−キシレン溶液を2000mlのメタノールに投入し、
4時間攪拌の後、ポリマーの析出物を櫨別し、減圧下7
0℃で24時間乾燥した。
【0097】乾燥したポリマー粉末1gを円筒濾紙に詰
め、ソックスレー抽出器を用いてn−ヘプタンで7時間
抽出を行なった。その後、抽出残分を円筒濾紙ごと減圧
下70℃で24時間乾燥した。抽出前後の重量変化によ
り沸騰ヘプタン不溶分量を求めた。沸騰ヘプタン不溶分
量[C7sol.]は下記式で求められる。
【0098】
【数1】 (5)ヘプタン不溶分のアイソタクチックペンタッド分
率[mmmm] 前述の方法で得られたヘプタン不溶分を試料として、13
C−NMR(日本電子社製JNM−GSX−270(13
C核共鳴周波数67.8MHz))を用い、以下の条件
で測定した。
【0099】 ・測定モード:1H−完全デカップリング ・パルス幅 :7.0マイクロ秒(C45度) ・パルス繰り返し時間:3秒 ・積算回数 :10000回 ・溶媒 :オルトジクロルベンゼン/重ベンゼンの
混合溶媒(90/10容量%) ・試料濃度 :120mg/2.5ml溶媒 ・測定温度 :120℃ この場合、アイソタクチックペンタッド分率[mmmm]
は、13C−NMRスペクトルのメチル基領域における分
裂ピークの測定により求めた。また、メチル基領域のピ
ークの帰属は前記のA.Zambelliら、[macromolecule
s,13,267(1980)]によった。
【0100】(6)ポリプロピレン系樹脂のメルトフロ
ーレイト(MFR) JIS K7210に準じて測定した。
【0101】(7)ポリプロピレン系樹脂の分子量分布
(Mw/Mn) 高温GPC装置(センシュー科学社製SSC−710
0)を用い、以下の条件で測定した。
【0102】 ・溶媒 :オルトジクロルベンゼン ・流速 :1.0ml/分 ・カラム温度:145℃ ・検出機 :高温示差屈折検出器 ・カラム :昭和電工社製「SHODEX UT」
807,806M,806M,802.5の4本を直列
につないで使用。
【0103】 ・試料濃度 :0.1重量% ・注入量 :0.50ml (8)ポリプロピレン系樹脂の融点(Tm)℃ DSC装置(セイコーインスツルメンツ社製DSC62
00)を用い、以下の条件で測定した。
【0104】 ・試料量 :約5mg ・雰囲気ガス:窒素(流量20ml/分) ・温度条件 :230℃に10分間保持した後、10℃
/分で30℃まで降温、引き続き10℃/分で230℃
まで昇温 ・解曲線の吸熱ピーク温度を融点とした。
【0105】 (9)ポリプロピレン系樹脂射出成形体の鉛筆硬度 射出成形体表面の耐擦傷性評価方法の一つとして鉛筆硬
度を用いた。詳しくは、JIS K5400に記載され
た方法に準じて鉛筆引掻き試験機を用い測定した。成形
体表面の硬さを鉛筆の濃度記号6B〜9Hで表し、6
B,5B,4B,3B,2B,B,HB,F,H,2
H,3H,4H,5H,6H,7H,8H,9Hの順に
硬くなり、鉛筆硬度は9Hが最も硬く、6Bが最も柔ら
かい。実際の家電製品外板部品等に用いた場合の耐擦傷
性を勘案すると、HB以上であることが好ましい。
【0106】(10)ポリプロピレン系樹脂射出成形体
の耐擦傷性評価A 射出成形体試料を全自動クロスカット剥離試験機(安田
精機製作所製)に固定し、ダイヤモンド針(R=250
μm)を試料試験面に垂直に立てた状態で100gの荷
重を付加し、試料を10mm/秒の速度でスライドさせ
た。
【0107】試験終了後、レーザー顕微鏡(レーザーテ
ック社製1LM21)を用いて傷跡を観察し、傷部の最
も高い点と最も低い点の高低差を測定し、最大傷深さ
(μm)により傷付き性の評価を行なった。本実施例で
は、最大傷深さ3μm以下を合格とした。
【0108】(11)ポリプロピレン系樹脂射出成形体
の耐擦傷性評価B 射出成形体試料を全自動クロスカット剥離試験機(安田
精機製作所製)に固定し、トイレットペーパーを2cm
角のパッドに装着し、100g/cm2の圧力で試料試
験面に接触させ、試料を10mm/秒の速度で100回
往復させた。その後、本試験面の表面状態を目視により
観察し、外観により耐擦傷性を以下の基準で評価した。 ◎:擦傷がほとんど観られない。 ○:擦傷が僅かに観察されるが、外観に影響は無い程
度。 △:擦傷が確認され、外観の低下が認められる。 ×:擦傷が多く、外観の低下が著しい。
【0109】本実施例では、上記外観評価基準のうち◎
〜○を合格とした。
【0110】(12)ポリプロピレン系樹脂射出成形体
の耐衝撃性評価 射出成形体試料をJIS K7211に準じ、1kgの
なす形重錘を用いて50%破壊エネルギー(E50)を
測定し、耐衝撃性を評価した。重錘の落下位置は便蓋の
天面の中心部とした。本実施例では、50%破壊エネル
ギー(E50)5J以上を合格とした。
【0111】実施例1 (原料ペレットの作製)表1に示したプロピレン−エチ
レン共重合体Aのパウダー100重量部に、酸化防止剤
としてテトラキス[メチレン−3,5−ジ−t−ブチル
−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート]メタンを
0.05重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェ
ニル)フォスファイトを0.05重量部、塩素捕捉剤と
してステアリン酸カルシウムを0.1重量部添加し、ヘ
ンシェルミキサーで5分間予備混合した後、スクリュー
径50mmφの単軸押出造粒機を用い、220℃で溶融
混練してペレットを造粒し原料ペレットを得た。
【0112】(射出成形体の成形)得られた原料ペレッ
トを用いて以下の方法で射出成形体の成形を行なった。
原料ペレットを、日本製鋼所製150トン射出成形機を
用いてシリンダ温度220℃で射出充填し、長さ100
mm×幅100mm×厚さ3mmの成形体を成形した。
このとき、金型内表面には50μm厚のポリイミドフィ
ルムを1枚貼り付けることで断熱層を設けた。金型温度
は40℃に保ち、射出充填後の保持時間は30秒で成形
を行なった。
【0113】得られた射出成形体を用いて表面結晶化
度、表面結晶化指数、表面b軸配向度、表面b軸配向指
数、鉛筆硬度、耐傷付き性、耐擦傷性および剛性の評価
を行なった。結果を表2に示した。
【0114】また、図1にタッピングモードAFM位相
像を示した。図1には、軟質成分からなる連続相と硬質
成分からなる分散相とで形成された微細な相分離構造が
観察される。
【0115】実施例2 金型内断熱層として50μm厚のポリイミドフィルムを
3枚貼り付け、150μmとしたこと以外は実施例1と
同様に行なった。
【0116】その結果を表2に示した。また、図2にタ
ッピングモードAFM位相像を示した。硬質成分からな
る分散相は実施例1の射出成形体(図1)に比べて大き
く、表面に占める面積割合が大きい。
【0117】比較例1 金型内断熱層を設けない(ポリイミドフィルムを貼り付
けない)こと以外は実施例1と同様に行なった。その結
果を表2に示した。
【0118】また、図3にタッピングモードAFM位相
像を示した。硬質成分からなる分散相は実施例1の射出
成形体(図1)に比べて小さく、表面に占める面積割合
が非常に小さい。
【0119】実施例3,4 金型内断熱層として100μm厚のポリイミドフィルム
を3枚貼り付け、300μmとしたこと(実施例3)、
8枚貼り付け、800μmとしたこと(実施例4)以外
は実施例1と同様に行なった。その結果を表2に示し
た。
【0120】実施例5 金型内断熱層として25μm厚のポリイミドフィルムを
1枚貼り付け、25μmとしたこと以外は実施例1と同
様に行なった。その結果を表2に示した。
【0121】実施例6 表1に示したプロピレン−エチレン共重合体Bを用いた
以外は実施例1と同様に行なった。その結果を表2に示
した。
【0122】実施例7 金型内断熱層として50μm厚のポリイミドフィルムを
3枚貼り付け、150μmとしたこと以外は実施例6と
同様に行なった。その結果を表2に示した。
【0123】比較例2 金型内断熱層を設けない(ポリイミドフィルムを貼り付
けない)こと以外は実施例6と同様に行なった。その結
果を表2に示した。
【0124】実施例8 表1に示したプロピレン−エチレン共重合体Cを用いた
以外は実施例2と同様に行なった。その結果を表2に示
した。
【0125】比較例3 表1に示したプロピレン−エチレン共重合体Dを用いた
以外は実施例2と同様に行なった。その結果を表2に示
した。
【0126】実施例9 表1に示したプロピレン−エチレン共重合体Eを用いた
以外は実施例2と同様に行なった。その結果を表2に示
した。
【0127】実施例10 金型内断熱層として50μm厚のポリイミドフィルムを
1枚貼付け、その上に保護層として0.5mm厚のニッ
ケル板を貼り付け、シリンダー温度を270℃とした以
外は実施例1と同様に行った。その結果を表2に示し
た。
【0128】実施例11 成形の際のシリンダー温度を220℃とした以外は実施
例10と同様に行った。その結果を表2に示した。
【0129】実施例12 金型内断熱層として50μm厚のポリイミドフィルムを
3枚貼付け、150μmとした以外は実施例10と同様
に行った。その結果を表2に示した。
【0130】実施例13 表1に示したポリプロピレンBを用いたこと以外は実施
例11と同様に行った。その結果を表2に示した。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得たポリプロピレン系樹脂射出成
形体の表面のタッピングモードAFM位相像(1μm×
1μm)。
【図2】 実施例2で得たポリプロピレン系樹脂射出成
形体の表面のタッピングモードAFM位相像(1μm×
1μm)。
【図3】 比較例1で得たポリプロピレン系樹脂射出成
形体の表面のタッピングモードAFM位相像(1μm×
1μm)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F071 AA15X AA20 AA20X AA21X AA75 AA80 AA89 AC09 AC11 AC15 AE05 AE22 AH05 AH12 BA01 BB05 BC03 BC10 4F206 AA11B AA11C AH33 AH42 JA07 JF01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軟質成分と硬質成分との相分離構造を有
    するポリプロピレン系樹脂より成り、成形体表面におい
    て原子間力顕微鏡により測定される硬質部分の占める面
    積が20%以上であることを特徴とするポリプロピレン
    系樹脂射出成形体。
  2. 【請求項2】 反射X線回折法による表面結晶化度(X
    S)が53%以上である請求項1記載のポリプロピレン
    系樹脂射出成形体。
  3. 【請求項3】 沸騰ヘプタン不溶部が65〜95重量%
    の割合で存在し、残部の沸騰ヘプタン可溶部におけるプ
    ロピレン以外のα−オレフィン含量が10〜70重量%
    である請求項1記載のポリプロピレン系樹脂射出成形
    体。
  4. 【請求項4】 ポリプロピレン系樹脂がプロピレン−エ
    チレンブロック共重合体である請求項1記載のポリプロ
    ピレン系樹脂射出成形体。
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