JP2001170756A - アルミ合金製多気筒シリンダブロックの製造方法 - Google Patents

アルミ合金製多気筒シリンダブロックの製造方法

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JP2001170756A
JP2001170756A JP35219599A JP35219599A JP2001170756A JP 2001170756 A JP2001170756 A JP 2001170756A JP 35219599 A JP35219599 A JP 35219599A JP 35219599 A JP35219599 A JP 35219599A JP 2001170756 A JP2001170756 A JP 2001170756A
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aluminum alloy
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plating film
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Osamu Ishigami
修 石上
Yoshimitsu Ogawa
義光 小川
Nobuhiko Yoshimoto
信彦 吉本
Takashi Idekago
隆 井手籠
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Honda Motor Co Ltd
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Honda Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 多気筒シリンダブロックを小型にするため
に、シリンダを仕切る仕切壁の肉厚を小さくすることが
できるアルミ合金製多気筒シリンダブロックの製造方法
を提供する。 【解決手段】 溶融状態のアルミニウム合金を冷却して
半凝固状態にする工程と、半凝固状態のアルミニウム合
金27を成形型30のキャビティ35に射出して多気筒
シリンダブロックを成形する工程と、多気筒シリンダブ
ロックを成形型30から離型する工程と、離型した多気
筒シリンダブロックのシリンダ内面にNi−Cu合金の
メッキ被膜を形成する工程とからなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はシリンダ内面にメッ
キ被膜を形成したアルミ合金製多気筒シリンダブロック
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車用の内燃機関としてアルミ合金製
の多気筒シリンダブロックがあり、このシリンダブロッ
クのなかにはシリンダ内面をシリンダブロックと一体に
鋳造したものがある。シリンダ内面にはニッケル(N
i)メッキ被膜を形成して、シリンダ内面の硬度や摺動
性、摩耗性を維持している。
【0003】この多気筒シリンダブロックの製造工程を
説明する。先ず鋳型を型閉めした後、アルミ合金の溶湯
を鋳型のキャビティに充填する。次に、充填した溶湯が
凝固した後、鋳型を型開きして鋳造物を鋳型から取り出
す。次いで、鋳造物のシリンダ内面を機械加工し、その
内面にNiメッキ被膜を形成することによりシリンダブ
ロックを得る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、アルミ合金
の溶湯がキャビティに進入する際に、溶湯の流れが乱れ
て溶湯の内部に気泡が発生する場合がある。発生した気
泡は多気筒シリンダブロックの内部に鋳巣として残る、
即ち鋳造欠陥の要因になる。この様な鋳巣を考えると、
シリンダとシリンダを仕切る仕切壁を予め厚くすること
で対処する必要がある。
【0005】また、燃料(ガソリン)には不純物として
微量の硫黄成分が含まれており、万一シリンダ内で硫黄
成分から硫酸が生成された場合、シリンダ内面のNiメ
ッキ被膜が硫酸で腐食される虞がある。このため、シリ
ンダ内面をNiメッキ被膜で十分に保護することができ
ない場合がある。従って、Niメッキ被膜の腐食を考慮
して、仕切壁を比較的厚く設定する必要がある。
【0006】この様に、鋳巣やメッキ被膜の腐食を見込
むと、仕切壁を厚くせざるを得ないが、仕切壁を厚く設
定すると、シリンダのピッチが大きくなり、そのことが
多気筒シリンダブロックの小型化を妨げる要因になる。
【0007】そこで、本発明の目的は、多気筒シリンダ
ブロックを小型にするために、シリンダを仕切る仕切壁
の肉厚を小さくすることができるアルミ合金製多気筒シ
リンダブロックの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に請求項1は、溶融状態のアルミニウム合金を冷却して
半凝固状態にする工程と、半凝固状態のアルミニウム合
金を成形型のキャビティに射出して多気筒シリンダブロ
ックを成形する工程と、多気筒シリンダブロックを成形
型から離型する工程と、離型した多気筒シリンダブロッ
クのシリンダ内面にNi−Cu合金のメッキ被膜を形成
する工程とからなることを特徴とする。
【0009】ここで、アルミニウム合金の半凝固状態と
は、純アルミニウムの融点(660℃)より100〜2
50℃低い温度、すなわち略560〜410℃まで下げ
た状態をいう。以下、半凝固状態のアルミニウム合金を
「半凝固アルミ合金」という。
【0010】溶融状態のアルミニウム合金を冷却して半
凝固状態にし、この半凝固アルミ合金で多気筒シリンダ
ブロックを射出成形する。半凝固アルミ合金は粘性が増
加するので、射出成形の際に、半凝固アルミ合金の流れ
に乱れが生じない。従って、半凝固アルミ合金内に気泡
が発生することを防ぐことができるので、シリンダの仕
切壁に鋳巣が発生することを防止できる。
【0011】加えて、シリンダ内面のメッキ被膜をNi
−Cu合金で形成した。Cu成分は耐食性に優れた金属
なので、メッキ被膜の硫酸に対する耐食性を高めること
ができる。従って、シリンダの仕切壁を十分に保護する
ことができる。
【0012】請求項2は、多気筒シリンダブロックにお
いて、隣接するシリンダ間を仕切る仕切壁の肉厚を2〜
3mmに設定し、メッキ被膜の膜厚を20〜60μmに
設定したことを特徴とする。
【0013】シリンダを仕切る仕切壁の肉厚を2〜3m
mに設定した。仕切壁の肉厚が2mm未満では、肉厚が
小さ過ぎて仕切壁の強度を確保することができない。そ
こで、肉厚を2mm以上に設定することで、仕切壁の強
度を確保するようにした。また、仕切壁の肉厚が3mm
を超えると、肉厚が大きくなり過ぎてシリンダのピッチ
が大きくなる。そこで、仕切壁の肉厚を3mm以下に設
定することで、シリンダのピッチを小さくするようにし
た。
【0014】加えて、シリンダ内面のメッキ被膜を20
〜60μmの膜厚に設定した。メッキ被膜の膜厚が20
μm未満では、膜厚が小さ過ぎてメッキ被膜の密着性を
高めることができない。そこで、膜厚を20μm以上に
設定することでメッキ被膜の密着性を高めるようにし
た。また、メッキ被膜の膜厚が60μmを超えると、膜
厚が大き過ぎてメッキ処理に時間がかかる。そこで、膜
厚を60μm以下に設定することでメッキ処理時間を短
くするようにした。
【0015】請求項3は、Ni−Cu合金のNi成分を
50〜90wt%とし、残部をCu成分とすることを特
徴とする。
【0016】Ni−Cu合金のNi成分を50〜90w
t%とし、残部をCu成分とすることにより、Ni−C
uマトリックス中のCu成分を10〜50wt%に設定
することができる。Cu成分が10wt%未満では、C
u成分が少な過ぎてメッキ被膜の耐食性が低下する。そ
こで、Cu成分を10wt%以上に設定することで、メ
ッキ被膜の耐食性を確保するようにした。また、Cu成
分が50wt%を超えると、Cu成分が多過ぎてメッキ
被膜の耐摩耗性を確保することができない。そこで、C
u成分を50wt%以下に設定することで、メッキ被膜
の耐摩耗性を確保するようにした。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を添付図に基
づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見る
ものとする。図1は本発明に係るアルミ合金製多気筒シ
リンダブロックの製造方法で製造したアルミ合金製多気
筒シリンダブロックの平面図である。多気筒シリンダブ
ロック10は、4個のシリンダ11・・・(・・・は複数個を
示す)をピッチPで形成し、シリンダ11・・・のシリン
ダ内面13・・・(図2に示す)にメッキ被膜15・・・を形
成したアルミ合金製の4気筒エンジン用シリンダブロッ
クである。
【0018】図2は図1の2−2線断面図であり、隣接
するシリンダ11,11間を仕切壁12で仕切り、仕切
壁12の表面(すなわち、シリンダ内面13)にNi−
Cu合金のメッキ被膜15を形成した状態を示す。な
お、17はクランクシャフトを支持するための軸孔、1
8はウオータジャケットである。
【0019】多気筒シリンダブロック10は仕切壁12
の肉厚t1を2〜3mmに設定した。仕切壁12の肉厚
t1が2mm未満では、肉厚t1が小さ過ぎて仕切壁1
2としての強度を保つことができない。そこで、肉厚t
1を2mm以上に設定することで、仕切壁12の強度を
確保するようにした。また、仕切壁12の肉厚t1が3
mmを超えると、肉厚t1が大き過ぎてシリンダ11の
ピッチを小さくすることができない。そこで、肉厚t1
を3mm以下に設定することでシリンダ11のピッチP
を小さくするようにした。従って、多気筒シリンダブロ
ック10を小型にすることができる。
【0020】加えて、多気筒シリンダブロック10はメ
ッキ被膜15の膜厚t2を20〜60μmに設定した。
メッキ被膜15の膜厚t2が20μm未満では、膜厚t
2が小さ過ぎてメッキ被膜15の密着性を高めることが
できない。そこで、膜厚t2を20μm以上に設定する
ことでメッキ被膜15の密着性を高めるようにした。ま
た、メッキ被膜15の膜厚t2が60μmを超えると、
膜厚t2が大き過ぎてメッキ処理に時間がかかる。そこ
で、膜厚t2を60μm以下に設定することでメッキ処
理時間を短くするようにした。従って、メッキ被膜を耐
食性に優れたものとし、このメッキ被膜を短い時間で形
成することができる。
【0021】また、メッキ被膜15は、Ni−Cu合金
のNi成分を50〜90wt%とし、残部をCu成分と
することで、Cu成分を10〜50wt%に設定したも
のである。Ni−Cu合金のNi成分を50〜90wt
%とし、残部をCu成分とすることにより、Ni−Cu
マトリックス中のCu成分を10〜50wt%に設定す
ることができる。
【0022】Cu成分が10wt%未満では、Cu成分
が少な過ぎてメッキ被膜15の耐食性が低下する。そこ
で、Cu成分を10wt%以上に設定することで、メッ
キ被膜15の耐食性を確保するようにした。また、Cu
成分が50wt%を超えると、Cu成分が多過ぎてメッ
キ被膜15の耐摩耗性を確保することができない。そこ
で、Cu成分を50wt%以下に設定することで、メッ
キ被膜15の耐摩耗性を確保するようにした。従って、
メッキ被膜15の耐食性や耐摩耗性を確保して、耐久性
の高い多気筒シリンダブロック10を得ることができ
る。
【0023】図3は本発明に係るアルミ合金製多気筒シ
リンダブロックの製造方法を示すフローチャートであ
り、図中ST××はステップ番号を示す。 ST10;溶融状態のアルミニウム合金を冷却攪拌して
半凝固状態にする。これで半凝固アルミ合金を得る。 ST11;半凝固アルミ合金を成形型のキャビティに射
出して多気筒シリンダブロックを成形する。
【0024】ST12;多気筒シリンダブロックを成形
型から離型する。 ST13;離型した多気筒シリンダブロックのシリンダ
内面にNi−Cu合金のメッキ被膜を形成する。 これで、アルミ合金製多気筒シリンダブロックの製造が
完了する。以下、前記ST10〜ST13を図4〜図7
で詳しく説明する。
【0025】図4(a),(b)は本発明に係るアルミ
合金製多気筒シリンダブロックの製造方法の第1説明図
であり、ST10の半凝固工程を説明する。(a)にお
いて、坩堝(るつぼ)20に溶融状態のアルミニウム合
金21を蓄え、坩堝20の上方に配置した冷却手段22
を矢印の如く下降する。
【0026】(b)において、冷却手段22の冷し金2
3を溶融状態のアルミニウム合金21内に漬け、駆動部
24で駆動軸25を回転することにより、冷し金23を
矢印の如く回転する。これにより、坩堝20内の溶融
状態のアルミニウム合金21を全体的に均一に冷却して
半凝固アルミ合金27を得る。
【0027】図5は本発明に係るアルミ合金製多気筒シ
リンダブロックの製造方法の第2説明図であり、ST1
1の成形工程を説明する。半凝固アルミ合金27(図4
(b)に示す)を供給手段28に矢印の如く移し、成
形型30(固定型31、可動型32)を型閉めした状態
で、供給手段28から半凝固アルミ合金27を矢印の
如くゲート33に射出する。半凝固アルミ合金27はゲ
ート33を通ってキャビティ35に矢印の如く進入す
る。
【0028】図6(a),(b)は本発明に係るアルミ
合金製多気筒シリンダブロックの製造方法の第3説明図
であり、図5の6部拡大図を(a)に示す。なお、
(a)は半凝固アルミ合金27による成形例を「実施
例」として示し、(b)は溶融状態のアルミニウム合金
103による成形例を「比較例」として示した。(a)
において、半凝固アルミ合金27が矢印の如くキャビ
ティ35に進入する。アルミニウム合金を半凝固状態と
することで、アルミニウム合金の粘性を増加させること
ができる。このため、半凝固アルミ合金27を流れが乱
れない状態でキャビティ35に進入させることができ
る。従って、半凝固アルミ合金27内に気泡が発生する
ことを防ぐことができる。
【0029】この結果、シリンダ11の仕切壁12に鋳
巣が発生することを防ぐことができるので、図2に示す
ように仕切壁12の肉厚t1を2〜3mmと小さくして
も仕切壁12の強度を十分に保つことができる。従っ
て、シリンダブロック10を小型にすることができる。
【0030】(b)において、成形型100(固定型1
01、可動型102)を型閉めした後、溶融状態のアル
ミニウム合金103を矢印の如くキャビティ105に
進入させる。アルミニウム合金が溶融状態なのでアルミ
ニウム合金の粘性は比較的低い。このため、溶融状態の
アルミニウム合金103の流れに乱れが生じ、溶融状態
のアルミニウム合金103内に気泡104が発生する。
この気泡104がシリンダの仕切壁に鋳巣として残るの
で、仕切壁の肉厚t3を比較的大きく設定する必要があ
る。従って、シリンダブロックを小型にすることができ
ない。
【0031】図7(a),(b)は本発明に係るアルミ
合金製多気筒シリンダブロックの製造方法の第4説明図
であり、ST12の離型工程を説明する。(a)におい
て、キャビティ35に半凝固アルミ合金27を充填する
まで、半凝固アルミ合金27を矢印の如く継続してキ
ャビティ35に供給する。キャビティ35の半凝固アル
ミ合金27が凝固した後、可動型32を矢印の如く移
動して、成形型30を型開きする。
【0032】(b)において、型開きした成形型30か
らシリンダブロックの成形品40を取出す。これで、S
T12の離型工程が完了する。この成形品40のシリン
ダ41の内面(以下、「シリンダ内面」という)42
や、クランクケースのクランク軸孔17(図2に示す)
を機械加工する。
【0033】次に、図2に戻って、ST13のメッキ工
程を説明する。成形品40のシリンダ内面42(図7
(b)に示す)を機械加工してシリンダ内面13を形成
する。このシリンダ内面13にメッキ処理を施すことに
より、シリンダ内面13にNi−Cu合金のメッキ被膜
15を形成する。これで、図2に示す多気筒シリンダブ
ロック10の製造が完了する。以下、メッキ被膜15の
密着性について図8で説明し、耐食性について図9で説
明し、耐摩耗性について図10で説明する。
【0034】図8は本発明に係るアルミ合金製多気筒シ
リンダブロックの製造方法で処理したメッキ被膜の被膜
厚さと剥離発生率との関係を示したグラフであり、横軸
はメッキ膜厚t2を示し、縦軸はメッキ被膜の剥離発生
率を示す。このグラフは、図2に示す多気筒シリンダブ
ロック10のシリンダ11でピストン(図示しない)を
摺動させて、摩擦距離((ピストンのストローク)×
(ピストンの往復運動回数))が1kmのときのメッキ
被膜の剥離状態を示したものである。
【0035】Ni−Cu合金のメッキ被膜15(図2に
示す)は、膜厚t2が20μm未満のとき剥離が発生す
るが、膜厚t2が20μmを超えると剥離発生率を0%
に抑えることができる。この結果、Ni−Cu合金のメ
ッキ被膜15において、膜厚t2を少なくとも20μm
に設定することで密着性の高いメッキ被膜15を得るこ
とができることが判る。また、メッキ被膜15の膜厚t
2は、エンジンの耐久性やメッキ処理時間を考慮して最
大60μmと設定した。
【0036】図9(a),(b)は本発明に係るアルミ
合金製多気筒シリンダブロックの製造方法で処理したメ
ッキ被膜の硫酸濃度と腐食摩耗量との関係を示したグラ
フであり、横軸は硫酸濃度を示し、縦軸は腐食摩耗量を
示す。なお、(a)は比較例、(b)は実施例を示す。
【0037】このグラフは、電気化学測定方法で測定し
た結果を示したもので、測定条件は以下の通りである。
メッキ被膜を陽極とし、硫酸水溶液の温度を80℃に設
定し、この硫酸水溶液にメッキ被膜を10分間浸漬した
後、掃引速度50mV/分をかけて硫酸水溶液中で電解
を行い、メッキ被膜の腐食摩耗量を測定する。
【0038】ここで、腐食摩耗とは、摩擦面が化学変化
を起こして変質し、変質した部分が相互運動により取り
去られて摩耗が進行することをいい、酸化などもこの範
疇に入る。
【0039】(a)において、Ni−9wt%Cu合金
のメッキ被膜は、硫酸濃度が30%を超えると腐食摩耗
量が大きくなり、硫酸濃度が50%で腐食摩耗量は5μ
mと多くなる。従って、Cuの含量が9wt%と少ない
と、耐食性を確保することができない。
【0040】(b)において、Ni−10wt%Cu合
金のメッキ被膜(実線で示す)は、硫酸濃度が増しても
腐食摩耗量を2μm未満に抑えることができる。従っ
て、Cuの含量が10wt%のとき耐食性を確保するこ
とができる。また、Ni−50wt%Cu合金のメッキ
被膜(破線で示す)は、硫酸濃度が増しても腐食摩耗量
を2μm未満に抑えることができる。従って、Cuの含
量が50wt%のとき耐食性を確保することができる。
この結果、Ni−Cu合金のメッキ被膜の場合、Cuの
含量が10wt%以上であれば、耐食性に優れたメッキ
被膜を得ることができることが判る。
【0041】図10(a),(b)は本発明に係るアル
ミ合金製多気筒シリンダブロックの製造方法で処理した
メッキ被膜の摩擦距離と凝着摩耗量との関係を示したグ
ラフであり、横軸は摩擦距離を示し、縦軸は凝着摩耗量
を示す。なお、(a)は比較例、(b)は実施例を示
す。
【0042】ここで、凝着摩耗とは、摩擦面において金
属同士の凝着が起こり、柔らかいほうの金属が引きさか
れて、硬いほうの金属に移行することにより起こる摩耗
をいい、正常な摩耗をいう。
【0043】(a)において、Ni−51wt%Cu合
金のメッキ被膜は、摩擦距離が略20kmで凝着摩耗量
が1.5μmとなり、摩擦距離が略50kmで凝着摩耗
量が1.8μmと大きくなり、さらに摩擦距離が100
km以上になると凝着摩耗量は2.0μmになる。従っ
て、Cuの含量が51wt%と多いと、耐摩耗性を確保
することができない。
【0044】(b)において、Ni−50wt%Cu合
金のメッキ被膜(破線で示す)は、摩擦距離が略50k
mで凝着摩耗量が略0.25μmと少なく、摩擦距離が
100kmを超えても凝着摩耗量を0.5μm未満に抑
えることができる。従って、Cuの含量が50wt%の
とき耐摩耗性を確保することができる。
【0045】また、Ni−10wt%Cu合金のメッキ
被膜(実線で示す)は、摩擦距離が100kmを超える
までは凝着摩耗量は略0で、摩擦距離が180kmを超
えても凝着摩耗量を0.1μm未満に抑えることができ
る。従って、Cuの含量が10wt%のとき耐摩耗性を
確保することができる。この結果、Ni−Cu合金のメ
ッキ被膜の場合、Cuの含量が50wt%以下であれ
ば、耐摩耗性に優れたメッキ被膜を得ることができるこ
とが判る。
【0046】
【発明の効果】本発明は上記構成により次の効果を発揮
する。請求項1は、溶融状態のアルミニウム合金を冷却
して半凝固状態にし、この半凝固アルミ合金で多気筒シ
リンダブロックを射出成形する。この製造方法によれ
ば、半凝固アルミ合金の粘性が増加するので、射出成形
の際に、半凝固アルミ合金の流れに乱れが生じない。こ
のため、半凝固アルミ合金内に気泡が発生することを防
ぐことができる。従って、シリンダの仕切壁に鋳巣が発
生することを防ぐことができるので、仕切壁を薄くする
ことができる。
【0047】加えて、シリンダ内面のメッキ被膜をNi
−Cu合金で形成した。Cu成分は耐食性に優れた金属
なので、メッキ被膜の硫酸に対する耐食性を高めること
ができる。従って、シリンダの仕切壁を十分に保護する
ことができるので、仕切壁の耐久性を高めることができ
る。この結果、シリンダのピッチを小さくして多気筒シ
リンダブロックを小型にすることができる。
【0048】請求項2は、シリンダを仕切る仕切壁の肉
厚を2〜3mmに設定した。仕切壁の肉厚を2mm以上
に設定することで仕切壁の強度を確保し、かつ仕切壁の
肉厚を3mm以下に設定することでシリンダのピッチを
小さくした。この結果、多気筒シリンダブロックを小型
にすることができる。
【0049】加えて、シリンダ内面のメッキ被膜を20
〜60μmの膜厚に設定した。メッキ被膜の膜厚を20
μm以上に設定することでメッキ被膜の密着性を高め、
かつメッキ被膜の膜厚を60μm以下に設定することで
メッキ処理時間を短くした。この結果、多気筒シリンダ
ブロックの生産性を高めることができる。
【0050】請求項3は、Ni−Cu合金のNi成分を
50〜90wt%とし、残部をCu成分とした。このた
め、Ni−Cuマトリックス中のCu成分を10wt%
以上に設定してメッキ被膜の耐食性を確保し、かつCu
成分を50wt%以下に設定してメッキ被膜の耐摩耗性
を確保することができる。この結果、メッキ被膜の耐食
性や耐摩耗性を確保して、耐久性の高い多気筒シリンダ
ブロックを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアルミ合金製多気筒シリンダブロ
ックの製造方法で製造したアルミ合金製多気筒シリンダ
ブロックの平面図
【図2】図1の2−2線断面図
【図3】本発明に係るアルミ合金製多気筒シリンダブロ
ックの製造方法を示すフローチャート
【図4】本発明に係るアルミ合金製多気筒シリンダブロ
ックの製造方法の第1説明図
【図5】本発明に係るアルミ合金製多気筒シリンダブロ
ックの製造方法の第2説明図
【図6】本発明に係るアルミ合金製多気筒シリンダブロ
ックの製造方法の第3説明図
【図7】本発明に係るアルミ合金製多気筒シリンダブロ
ックの製造方法の第4説明図
【図8】本発明に係るアルミ合金製多気筒シリンダブロ
ックの製造方法で処理したメッキ被膜の被膜厚さと剥離
発生率との関係を示したグラフ
【図9】本発明に係るアルミ合金製多気筒シリンダブロ
ックの製造方法で処理したメッキ被膜の硫酸濃度と腐食
摩耗量との関係を示したグラフ
【図10】本発明に係るアルミ合金製多気筒シリンダブ
ロックの製造方法で処理したメッキ被膜の摩擦距離と凝
着摩耗量との関係を示したグラフ
【符号の説明】
10…多気筒シリンダブロック、11…シリンダ、12
…仕切壁、13…シリンダ内面、15…メッキ被膜、2
1…溶融状態のアルミニウム合金、27…半凝固状態の
アルミニウム合金(半凝固アルミ合金)、30…成形
型、35…キャビティ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F02F 1/00 F02F 1/00 G (72)発明者 吉本 信彦 埼玉県狭山市新狭山1丁目10番地1 ホン ダエンジニアリング株式会社内 (72)発明者 井手籠 隆 埼玉県狭山市新狭山1丁目10番地1 ホン ダエンジニアリング株式会社内 Fターム(参考) 3G024 AA21 DA17 GA06 GA18 HA07 4K024 AA14 AA15 BA06 BB04 BC04 CA16 GA03 GA04

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶融状態のアルミニウム合金を冷却して
    半凝固状態にする工程と、 半凝固状態のアルミニウム合金を成形型のキャビティに
    射出して多気筒シリンダブロックを成形する工程と、 多気筒シリンダブロックを成形型から離型する工程と、 離型した多気筒シリンダブロックのシリンダ内面にNi
    −Cu合金のメッキ被膜を形成する工程と、からなるア
    ルミ合金製多気筒シリンダブロックの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記多気筒シリンダブロックは、隣接す
    るシリンダ間を仕切る仕切壁の肉厚を2〜3mmに設定
    し、前記メッキ被膜の膜厚を20〜60μmに設定した
    ものであることを特徴とする請求項1記載のアルミ合金
    製多気筒シリンダブロックの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記Ni−Cu合金のNi成分を50〜
    90wt%とし、残部をCu成分とすることを特徴とす
    る請求項1又は請求項2記載のアルミ合金製多気筒シリ
    ンダブロックの製造方法。
JP35219599A 1999-12-10 1999-12-10 アルミ合金製多気筒シリンダブロックの製造方法 Pending JP2001170756A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007051372A (ja) * 2005-08-10 2007-03-01 Waertsilae Schweiz Ag 対高温腐食保護手段を含む製品と、該製品を有する往復動ピストン燃焼機関、タービンまたは燃焼ユニットと、高温腐食保護手段としての合金の使用

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