JP2001152174A - 焼結含油軸受 - Google Patents

焼結含油軸受

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JP2001152174A
JP2001152174A JP33325099A JP33325099A JP2001152174A JP 2001152174 A JP2001152174 A JP 2001152174A JP 33325099 A JP33325099 A JP 33325099A JP 33325099 A JP33325099 A JP 33325099A JP 2001152174 A JP2001152174 A JP 2001152174A
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Motohiro Miyasaka
元博 宮坂
Hidekazu Tokushima
秀和 徳島
Shunichi Togashi
俊一 富樫
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Hitachi Powdered Metals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ポリオレフィンあるいはポリ−α−オレフィ
ン水素化物などを使用することなく、優れた性能を発揮
する潤滑油およびそれを含浸した焼結含油軸受を提供す
る。 【解決手段】 40℃における動粘度が11.9mm2
s未満のエステル油を主成分とする潤滑油を軸受部材1
に含浸したことを特徴とする焼結含油軸受、特にスピン
ドルモータ用の焼結含油軸受。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エステル油を主成
分とする潤滑油を含浸した焼結含油軸受に関し、特にス
ピンドルモータ用として好適な焼結含油軸受に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】ポリオレフィン類にエステル油を配合し
た潤滑油については、特開平9−125086号、特開
平1−279117号、特公昭62−52794号、特
開平8−259985号などの公報に開示されている。
すなわち、ポリ−α−オレフィンやポリ−α−オレフィ
ン水素化物などに、ネオペンチルグリコール、トリメチ
ロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリ
スリトール等の多価アルコールと各種カルボン酸とをエ
ステル化してなるポリオールエステルを配合した潤滑油
が挙げられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】高速回転するスピンド
ルモータ軸受用の潤滑油としては、低粘度であることが
望ましいが、低粘度化にともない潤滑性能が劣化するた
め、高速回転に対応し、かつ潤滑性能の良好な潤滑油が
求められている。然るに、上記の従来の技術において
は、いずれもポリオレフィンあるいはポリ−α−オレフ
ィン水素化物に、ポリオールエステルを配合した組成物
が潤滑油として提案されていが、これらのポリオレフィ
ン類は後に述べるように低粘度では性状が不安定である
ため、高速回転用の潤滑油としては好ましくない。本発
明は、このような事情を考慮し、ポリ−α−オレフィン
水素化物などを使用することなく優れた性能を発揮する
潤滑油を見出し、それを含浸させた焼結含油軸受を提供
することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的に沿って鋭意検討を行った結果、40℃における動粘
度が11.9mm2/s未満のエステル油を主成分とする
潤滑油、または前記エステル油に特定の物質を添加した
潤滑油を用いることにより、優れた焼結含油軸受、特に
スピンドルモータ用に好適な焼結含油軸受を製造し得る
ことを見出し本発明を完成した。
【0005】すなわち、本発明の第1は、40℃におけ
る動粘度が11.9mm2/s未満のエステル油を主成分
とする潤滑油を軸受部材に含浸したことを特徴とする焼
結含油軸受に関するものである。本発明の第2は、前記
エステル油に0.1〜10質量%の金属石鹸、金属複合
石鹸、ユリア樹脂およびポリテトラフルオロエチレンか
らなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を添加して
なる潤滑油を、軸受部材に含浸したことを特徴とする焼
結含油軸受に関するものである。本発明の第3は、前記
エステル油に0.1〜10質量%のステアリン酸リチウ
ム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、
ステアリン酸ナトリウムおよびステアリン酸アルミニウ
ムおよびそれらの金属複合石鹸からなる群から選ばれる
少なくとも1種の金属石鹸類を添加してなる潤滑油を、
軸受部材に含浸したことを特徴とする焼結含油軸受に関
するものである。本発明の第4は、本発明の第1から第
3において、前記エステル油がモノエステル、ジエステ
ルおよびポリオールエステルからなる群から選ばれる少
なくとも1種の成分であることを特徴とする焼結含油軸
受に関する。
【0006】本発明の第5は、両端部に回転軸を摺動支
持する軸受部を設け、かつ両軸受部の間に回転軸と接触
しない中膨み部を設けた軸受部材の、前記中膨み部の外
周面をハウジングの内孔に圧入してなり、軸受部の外周
面とハウジング内孔面との間に間隙を形成し、さらに軸
受部材の圧入部外周面に設けた軸方向の溝とハウジング
内孔面とにより貫通孔を形成した軸受の軸受部材に上記
潤滑油を含浸したことを特徴とするスピンドルモータ用
焼結含油軸受に関するものである。本発明の第6は、本
発明の第5において、軸受部の内周に動圧溝を設けたこ
とを特徴とするスピンドルモータ用焼結含油軸受に関す
る。本発明の第7は、本発明の第5または第6におい
て、軸受部の軸芯と直角方向の断面が三円弧形状または
軸受部の動圧溝がヘリングボーン形状であることを特徴
とするスピンドルモータ用焼結含油軸受に関する。
【0007】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に
おいては、40℃における動粘度が11.9mm2/s未
満のエステル油を主成分とする潤滑油を使用する。潤滑
油としてはエステル油のみでもよい。先行技術において
用いるポリ−α−オレフィン水素化物は、温度により性
状が変化して耐久性に乏しいために、本発明においては
成分として積極的には使用しない。ここでエステル油の
うちポリオールエステル油の代表的な粘度特性は、40
℃における動粘度が9.9mm2/sであり、粘度指数は
135である。エステル油の40℃における動粘度が1
1.9mm2/s以上であると、摩擦トルクが増大し、ス
ピンドルモータの高速化が困難となりとなり好ましくな
い。
【0008】また、本発明においては、エステル油に固
体潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸リチウム、ス
テアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステア
リン酸ナトリウム、ステアリン酸アルミニウムなどの金
属石鹸、および異種の脂肪酸を組合わせて鹸化した金属
複合石鹸、ユリア樹脂またはポリテトラフルオロエチレ
ン(PTFE)等の少なくとも1種の微粒子を0.1〜
10質量%添加した潤滑油を用いることができる。ここ
で、ステアリン酸リチウムを1質量%添加した場合の見
掛け粘度は25℃において100mPa・s(1ポア
ズ)である。これは蜂蜜を水で2倍に希釈したときの見
掛け粘度にほぼ相当する。なお、液体と固体粒子の混合
物であるから「見掛け粘度」なる用語を用いる。
【0009】エステル油は、一般に金属表面に吸着し易
いため潤滑性に優れている。また、温度による粘度変化
が少ないので低温から比較的高温までの広い範囲におい
て安定した潤滑性能を示す。更に、エステル油のような
油に固体潤滑性粒子を分散させると、粒子は増稠効果を
発揮し、潤滑油の粘度を見掛け上増大させる。また、固
体潤滑性粒子はそれ自体で固体潤滑効果を有する。その
ため、見掛け粘度が比較的高い場合には、軸受から出た
潤滑油は軸受要素の外に漏出し難いため、潤滑油の損失
が減少する。 一方、軸受摺動により潤滑油に剪断力が
加わると、液中に粒子が分散した混合物(非ニュートン
流体)であるため見掛けの粘度は低下し、低粘度の潤滑
油として摺動面の潤滑を行う。それに加えて、固体潤滑
剤が摺動面に作用し、摺動面相互の金属接触を防止し、
摺動面に負荷が加わった場合でも潤滑効果をより良好に
保持することができる。このように、固体潤滑剤を添加
することにより、油膜強度が増大して摩擦損失が減少す
ると共に、温度が変化しても摺動特性が大きく変化せ
ず、すなわち温度特性が向上する。
【0010】本発明において最適の効果を得るために
は、固体潤滑剤を含むエステル油を用いる。固体潤滑剤
の添加量は0.1質量%以上であれば添加効果が認めら
れ、添加量の増加と共に見掛け粘度が上昇する。添加量
が5質量%程度までは、スピンドルモータのような小形
の軸受に適する。また、固体潤滑剤の含有量が多いもの
は、汎用の小形モータ軸受、ファンモータ軸受等に適す
る。固体潤滑剤の添加量が10質量%を越える潤滑油は
見掛け粘度が高すぎ、軸受部材への含浸が困難になり、
たとえ含浸が可能であっても小形軸受の用途には適さな
い。
【0011】次に、前記潤滑油を含浸させて使用する上
で特に好適な焼結含油軸受の構造について説明する。す
なわち、次の〔1〕項から〔3〕項の構成、およびそれ
らに〔4〕項の要件を付加した構成の軸受が好ましい。 〔1〕軸受部材の内孔の両端部に軸支面を設け、両者の
中間部の内径を大きくして中膨み部を形成する。 〔2〕軸受部材の中膨み部の外周面をハウジングの内孔
に圧入し、両端側の軸支面に対応する外周面とハウジン
グ内孔面との間に間隙を設ける。中膨み部を造形する際
の軸受部材の外形に応じて、上記の構成になるようにハ
ウジング内孔の形状を調整する。なお、中膨み部の造形
については、後に述べるように各種方法が知られてい
る。 〔3〕軸受部材の外周面に軸方向の溝を設け、軸受部材
をハウジングの内孔に圧入したときに、その溝が通気孔
または通油孔となる軸方向の貫通孔を形成する。
【0012】図1(a)から(c)は、本発明の軸受の
各種実施例の縦断面図であり、図1(d)から(f)は
それらの平面図である。すなわち、図1(d)は図1
(a)の軸受の平面図である。図1(e)は図1(b)
の軸受の平面図であり、また図1(f)は図1(c)の
軸受の平面図である。図1の各図において、軸受部材1
は多孔質の粉末焼結金属からなり、潤滑油を含浸するこ
とができる。軸受部材1の両側部には軸受部2を有し、
かつ両軸受部2の内孔の中間に中膨み部3を有する。ま
た、軸受部材1は中膨み部3の外周面においてハウジン
グ4の内孔(圧入面7)に圧入されており、軸受部2の
外周とハウジング4の内孔との間には間隙が形成されて
いる。更に軸受部材1の圧入部外周面には軸方向に溝5
を設け、溝5とハウジング4の内孔面(圧入面7)とが
貫通孔6を形成する。
【0013】上記〔1〕項から〔3〕項の構成に加え、
更に次のような要件を付加することが好ましい。 〔4〕軸受部2の内孔の摺動面に動圧溝を設ける。動圧
溝はスパイラル形、ヘリングボーン形、傾斜複数溝、周
囲が閉塞された複数溝などの溝を形成するか、あるいは
三円弧軸受部材の形状の何れかにする。図2は動圧溝を
設けた摺動面の展開図である。図2(a)から(d)
は、それぞれスパイラル溝11a、ヘリングボーン溝1
1b、傾斜溝11cおよび閉塞溝11dの例を示す。ま
た、図3は三円弧軸受部材12の軸受部2の内孔の形状
を示す横断面図であり、比較のために仮想円を点線で示
す。
【0014】上記スパイラル溝、ヘリングボーン溝、傾
斜溝および閉塞溝は、次の方法で製作することができ
る。すなわち、軸受部材の摺動面に形成する動圧溝に対
応する凸部を外周に有するマンドレルに、内径寸法のや
や大きい軸受部材を嵌合し、金型中でマンドレルに圧接
させて軸受部材の内周面に溝を形成した後、軸受部材を
マンドレルと共に離型し、軸受部材をスプリングバック
させてマンドレルから抜き取る。三円弧軸受部材は、粉
末成形またはサイジングの際に、コアロッドを用いて造
形する通常の方法で製作することができる。なお、三円
弧軸受部材は、動圧溝を付与した構造の変形と見られ
る。例えば、日本潤滑学会編「潤滑ハンドブック」(1
970)、(株)養賢堂、p.136、あるいは軸受・
潤滑便覧編集委員会編「軸受・潤滑便覧」(196
1)、日刊工業新聞社、p.73などにその構造が記載
されている。
【0015】上記のような構造の軸受部材を用いること
により、特に潤滑油の循環およびそれによる冷却効果が
促進され、エステル油が有する潤滑性能がより有効に引
き出され、特に高速回転に適する軸受要素が得られる。
すなわち、比較的高速回転の小型スピンドル用として好
適な構造を提供することができる。 前記〔1〕項から
〔4〕項の構成は、それぞれ以下のような効果を発揮す
る。 〔1〕摺動面積が比較的小さくなり、上下両方の軸支面
の製作精度が向上する。また、中膨み部を油溜めに利用
することができるので、更に軸受要素として部材数が少
なくすることができる。 〔2〕ハウジングに組込む際に軸支面に変形が生じない
ので、組立精度が良好である。また、組立時に軸支面に
マンドレルを差し込む必要がない。 〔3〕軸受要素の空隙にある熱膨張した空気を貫通孔か
ら排出することにより、軸受要素内の潤滑油の漏出を防
止できる。また潤滑油が貫通孔を介して軸受要素内を循
環するので再潤滑および冷却の効果を奏する。 〔4〕動圧溝を設けることにより動圧作用によって摺動
面の潤滑がより向上し、高速回転のときにその効果が顕
著に現れる。
【0016】軸受部材用の焼結合金としては、青銅系、
または鉄を40%以上含む鉄銅系の材料が好ましい。後
者は耐摩耗性が特に必要な場合に適しており、かつ低コ
ストである。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の具体的な実施の形態を以
下の実施例により説明する。 (1)原料の配合 (a)青銅系の例:銅粉+10%錫粉 (b)鉄銅系の例:以下の範囲から用途に応じて選択す
る。 鉄粉:40〜80% 銅粉:20〜60% 錫粉:銅に対して4〜10% (2)圧粉成形 通常の金型を用いて、円筒形状に粉末成形を行い軸受部
材を作製する。 (3)焼結 前記青銅系および鉄銅系の場合には、アンモニア分解ガ
スの還元雰囲気中において、750℃で焼結を行う。
【0018】(4)中膨み部のサイジング 前記(d)特開昭58−84222号公報に記載された
方法により行う。前記のように、使用するダイは軸方向
に2分割されており、一体化すると中間部の内径が大き
くなっている。円筒焼結体を金型内で圧縮すると、焼結
体はダイ孔の大径部に向かって膨出し、内径中間部も大
径となる。また、内径の両端の小径部はマンドレルによ
って形成する。このサイジングの際に、軸受部材の外周
の大径部に例えば3本の縦溝を形成する。なお、別の方
法で中膨み部を造形すると、軸受部材の外形がこの方法
のものとは異なることがあり、縦溝および後述のハウジ
ング内孔の形状は軸受部材の外形に合わせて製作する。
【0019】(5)動圧溝の形成 前述のスプリングバック方式で動圧溝を形成する場合に
は、上記(4)で造形したサイジング済みの軸受部材の
軸受部の内径寸法より僅かに細いコアロッドの表面に、
電解腐食法等により溝形状パターンに対応する凸部を形
成しておく。サイジング済みの軸受部材にコアロッドを
装着し、金型中で軸受部材の外周または端面側を押圧し
て変形し、コアロッドに密着させて軸受部材に溝を刻印
し、軸受部材をコアロッドと共に離型すると、軸受部材
がスプリングバックしてコアロッドを抜き取ることがで
きる。図4は、ヘリングボーン形動圧溝を形成するため
のコアロッドの部分斜視図である。コアロッド13の表
面には動圧溝のパターンに対応する多数の凸条14が形
成されている。なお、三円弧軸受部材は、上記(4)の
工程で造形することができる。
【0020】(6)潤滑油の含浸 エステル油、またはエステル油にステアリン酸リチウム
を1質量%添加した潤滑油(粘度100センチポアズ程
度)を、常温で通常の方法により真空含浸させる。後者
の混合物の場合には、加温して粘度を低下させた状態で
真空含浸を行ってもよい。また、PTFEを添加した場
合も同様である。 (7)ハウジングの製作 ハウジングの内孔はプレーンな形状の方が製作が容易で
あるから、軸受部材の形状は図1(a)に示すような外
側に大径部を有するものが好ましい。ハウジングは、溶
製棒材を切削したり、粉末冶金法を用いて造形する。 (8)軸受部材の圧入 ハウジングに軸受部材を押し込み圧入する。軸受部材の
圧入部は両軸受部の中間であり、軸受摺動部の内径に圧
入の影響は及ばないので、圧入時に芯出し用のマンドレ
ルを用いる必要はない。ただし、中膨み部を有する軸受
部材が長い場合には、軸心の歪みをできるだけ少なくす
るために、マンドレルを用いて圧入することが好まし
い。
【0021】(9)好ましい用途例 本発明の焼結含油
軸受は、CD−ROMドライブ用のスピンドルモータ
(使用時回転数:2,000〜12,000rpm程
度)、その他MD(ミニディスク)、LBP(レーザビ
ームプリンタ)、IC用の冷却ファン等のスピンドルの
軸受、その他小形高速回転機器用の軸受としての用途が
挙げられる。図5はCD−ROMドライブ用スピンドル
モータの例を示す縦断面図である。軸受部材1は、基盤
21に固定したハウジング4の内孔に圧入されており、
軸受部材1内に装入された軸22の下端はスラスト受板
8により回転自在に支承する。ディスク保持軸23、回
転板24およびローター25は軸22の上端に固定され
ており、ローターの内側に設けた永久磁石26およびハ
ウジング4の外周に設けた電磁コイル27の磁力により
高速に回転する。
【0022】
【実施例】以下の試験例により本発明をさらに詳細に説
明する。 <試験例1>前記のようにして作製した軸受部材に、本
発明のエステル油を含浸し、それらの性能を比較した。 <試験装置および測定条件>試験は図1(c)に示す形
状の軸受を用いて行った。すなわち上下に軸を支持する
摺動面を有し、中央部に中膨み部を有する軸受である。
これを図5に示すCD−ROMドライブ用のスピンドル
モータに組み込んで摩擦トルクを評価した。軸受の材質
は鉄−銅系、寸法は3mmφ×6mmφ×7.3mmで
あり、軸受クリアランスは4μmである。またシャフト
の材質はSUS420J2である。含浸油としては、基
油のポリオールエステルに、添加剤としてステアリン酸
リチウムを添加したものを用いた。測定は室温で行い、
回転数は10,000rpmとした。また、アンバラン
ス量は0.3g・cmである。
【0023】<粘度の影響>種々の粘度のポリオールエ
ステルに、ステアリン酸リチウム1.0質量%を添加し
た含浸油を用いて摩擦トルクを測定した。その結果を図
6に示す。図から判るように、40℃動粘度が31.1
mm2/sおよび16.9mm2/sの場合は、摩擦トル
クが大きいために、高速回転が困難である。また、40
℃動粘度が11.9mm2/s以下であれば、摩擦トルク
の増大を抑制することができ高速回転用モータへの適用
が可能であった。したがって基油の動粘度は11.9m
2/s以下であることが望ましい。また、エステルの
基油としてモノエステルまたはジエステルを使用した実
験を別途行ったが、ポリオールエステル基油の場合と同
等の値が得られ、適用可能であることが判明した。
【0024】<添加剤の量の影響>ポリオールエステル
に、ステアリン酸リチウムを0.1、1.0、2.0およ
び10質量%添加した含浸油を用いて摩擦トルクを測定
した。比較のため、添加材を加えない場合についても測
定を行った。その結果を図7に示す。図から判るよう
に、添加剤の量が0.1から10質量%の範囲では、含
浸油の摩擦トルクはほぼ同等の値を示した。ただし、添
加剤を加えなかったものの摩擦トルクはやや高かった。
したがって、添加剤の量は0.1質量%以上とすること
が好ましい。一方、添加剤が10質量%より多くなる
と、摩擦トルクの上昇は大きくないが、軸受部材への含
浸が困難になり、また、軸受部に付着した含浸油の余剰
分を取り除く作業が煩雑となり、実用に適さない。した
がって添加剤の量は0.1〜10質量%の範囲が望まし
い。
【0025】<試験例2>前記試験例1と同様に、図5
に示すCD−ROMモータに軸受を組み込んで摩擦トル
クを評価した。図8はポリオールエステルにステアリン
酸リチウムを1.0質量%添加したものを含浸した軸受
材および従来のポリ−α−オレフィン系オイル(40
℃、18mm2/s)を含浸した軸受材の各回転数毎に
摩擦トルクを測定した結果を示す。このグラフに示され
るように、本発明品は、従来のポリ−α−オレフィン系
オイルに比べて10000rpmで摩擦トルクが約40
%低かった。これによりモータ回転の高速化に伴う軸受
摩擦トルク増大の問題を解消することができる。
【0026】
【発明の効果】本発明に用いるエステル油を主成分とす
る潤滑油は、温度変化に伴う潤滑性状の変化が少なく、
耐久性に優れている。このような潤滑油を特定の構成を
有する軸受の軸受部材に含浸することにより、高速回転
の小形スピンドルモータなどに好適な焼結含油軸受を提
供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)から(c)は、本発明の各種軸受の
実施例の縦断面図であり、図1(d)から(f)はそれ
らの軸受の平面図である。
【図2】軸受部材の軸受部に、各種の動圧溝を設けた内
孔摺動面の展開図であり、図2(a)から(d)は、そ
れぞれスパイラル溝、ヘリングボーン溝、傾斜溝および
閉塞溝の例を示す。
【図3】三円弧軸受部材の横断面図である。
【図4】動圧溝としてヘリングボーン溝を形成するため
に用いるコアロッドの部分斜視図である。
【図5】CD−ROMドライブ用のスピンドルモータの
実施例の縦断面図である。
【図6】40℃の潤滑油の動粘度と摩擦トルクとの関係
を示すグラフである。
【図7】ステアリン酸リチウムの添加量と摩擦トルクと
の関係を示すグラフである。
【図8】本発明の潤滑油と従来の潤滑油について回転数
と摩擦トルクとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 軸受部材 2 軸受部 3 中膨み部 4 ハウジング 5 溝 6 貫通孔 7 圧入面 8 スラスト受板 11a スパイラル溝 11b ヘリングボーン溝 11c 傾斜溝 11d 閉塞溝 12 三円弧軸受部材 13 コアロッド 14 凸条 21 基盤 22 軸 23 ディスク保持軸 24 回転板 25 ローター 26 永久磁石 27 電磁コイル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16C 33/10 F16C 33/10 A // C10N 10:02 C10N 10:02 10:04 10:04 10:06 10:06 40:02 40:02 Fターム(参考) 3J011 CA03 JA02 KA02 LA01 MA22 SB19 SC05 4H104 BB17C BB32A BB33A BB34A CD02C CE12C EA02A FA01 FA02 LA20 PA01 PA04 QA18 RA03

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 40℃における動粘度が11.9mm2
    s未満のエステル油を主成分とする潤滑油を軸受部材に
    含浸したことを特徴とする焼結含油軸受。
  2. 【請求項2】 40℃における動粘度が11.9mm2
    s未満のエステル油を主成分とする油に0.1〜10質
    量%の金属石鹸、金属複合石鹸、ユリア樹脂およびポリ
    テトラフルオロエチレンからなる群から選ばれる少なく
    とも1種の成分を添加してなる潤滑油を軸受部材に含浸
    したことを特徴とする焼結含油軸受。
  3. 【請求項3】 40℃における動粘度が11.9mm2
    s未満のエステル油を主成分とする油に、0.1〜10
    質量%のステアリン酸リチウム、ステアリン酸バリウ
    ム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム
    およびステアリン酸アルミニウムおよびそれらの金属複
    合石鹸からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属石
    鹸類を添加してなる潤滑油を、軸受部材に含浸したこと
    を特徴とする焼結含油軸受。
  4. 【請求項4】 前記エステル油がモノエステル、ジエス
    テルおよびポリオールエステルからなる群から選ばれる
    少なくとも1種の成分であることを特徴とする請求項1
    から請求項3のいずれかに記載の焼結含油軸受。
  5. 【請求項5】 両端部に回転軸を摺動支持する軸受部を
    設け、かつ両軸受部の間に回転軸と接触しない中膨み部
    を設けた軸受部材の、該中膨み部の外周面をハウジング
    の内孔に圧入してなり、前記軸受部の外周面とハウジン
    グの内孔面との間に間隙を形成し、さらに軸受部材の圧
    入部外周面に設けた軸方向の溝とハウジングの内孔面と
    により貫通孔を形成した軸受の軸受部材に、請求項1か
    ら請求項4のいずれかに記載の潤滑油を含浸したことを
    特徴とするスピンドルモータ用焼結含油軸受。
  6. 【請求項6】 前記軸受部の内周面に動圧溝を設けたこ
    とを特徴とする請求項5に記載のスピンドルモータ用焼
    結含油軸受。
  7. 【請求項7】 前記軸受部の軸芯と直角方向の断面が三
    円弧形状または軸受部の動圧溝がヘリングボーン形状で
    あることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の
    スピンドルモータ用焼結含油軸受。
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