JP2001151872A - 液晶性芳香族ポリエステルフィルムおよびその製造方法 - Google Patents

液晶性芳香族ポリエステルフィルムおよびその製造方法

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JP2001151872A JP2000262677A JP2000262677A JP2001151872A JP 2001151872 A JP2001151872 A JP 2001151872A JP 2000262677 A JP2000262677 A JP 2000262677A JP 2000262677 A JP2000262677 A JP 2000262677A JP 2001151872 A JP2001151872 A JP 2001151872A
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liquid crystalline
aromatic polyester
crystalline aromatic
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Kazunori Akiyoshi
一徳 秋吉
Shino Moriyama
志乃 森山
Yoshitaka Obe
良隆 大部
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Sumitomo Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】包装材料用として十分な強度と低温加工性を有
し、ガスバリア性に優れた、液晶性芳香族ポリエステル
からなるフィルムを提供する。 【解決手段】下記の繰り返し単位(A)を繰り返し単位
全体の65モル%を越え80モル%以下、繰り返し単位
(B)を35モル%未満20モル%以上含み、流動温度
が300℃以下であり、対数粘度が6.0dl/g以上
であり、流動温度において、剪断速度100sec-1
測定した溶融粘度(粘度1)と、流動温度より20℃高
い温度において、同剪断速度で測定した溶融粘度(粘度
2)との比(粘度2/粘度1)の値が、0.20以上で
あり、流動温度より40℃以上高い温度で測定されるメ
ルトテンションが4.0g以上である液晶性芳香族ポリ
エステルから溶融押し出しされてなるフィルム。 【化1】 【化2】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶性芳香族ポリ
エステルフィルムおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、各種のポリマーから製造されたフ
ィルムは、日常生活に欠かせないものとなっている。た
とえば、高強力フィルム、高弾性フィルム、酸素バリア
性フィルム、導電性フィルム、耐熱性フィルム、あるい
は光バリア性フィルムなどの各種のフィルムが開発され
ている。中でも、酸素バリア性または水蒸気バリア性を
有するフィルムは、包装用材料として産業用、民生用を
問わず我々の生活の中に浸透しつつある。
【0003】従来、この分野には、ポリエチレン、ポリ
プロピレン等のポリオレフィンの延伸フィルム、ポリエ
チレンテレフタレート(以下PETと略する。)の延伸
フィルム、ポリ塩化ビニリデン(以下PVDCと略す
る。)フィルム、ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体
(以下EVOHと略する。)フィルム等が開発され、目
的・用途により単層または2層以上の多層フィルムとし
て利用されている。ガスバリア性を維持するためには多
層化が必須の場合が多く、製造コストを上げる要因の一
つになっている。また最近、レトルトパウチ等の食品包
装分野では、滅菌処理の効率化の為、高温短時間処理す
る傾向にあり、耐熱性の高い包装材料が求められてい
る。シリカ、アルミナ等を蒸着したPETフィルム等を
基材としたラミネートフィルムが既に開発されている。
PETフィルムの耐熱性や酸素バリア性を改良したポリ
エチレンナフタレート(以下PENと略する。)系包装
材料(容器)の開発がなされている(例えば特開平8−
113631号公報、特開平8−92467号公報)
が、ハイガスバリア性(酸素透過度1cc/m2・24h
r・atm以下)用途にはガスバリア性が未だ不十分で
ある。また、酸素バリア性には優れるが、水蒸気バリア
性能が劣るEVOHに対しては、水蒸気バリア性の優れ
るポリオレフィン等をラミネートした多層フィルムとす
ることで、水蒸気バリア性の課題は解消されつつある
が、耐熱性には課題が残っている。
【0004】これらの分野には、安価で耐熱性があり、
将来的な常温流通を想定した場合、水蒸気バリア性、酸
素バリア性が共に高いフィルム用樹脂材料(ハイガスバ
リア材料)が望まれている。酸素バリア性と水蒸気バリ
ア性を有する材料として、液晶性ポリマー、特にサーモ
トロピック液晶ポリエステル(以下LCPと略すことが
ある。)が注目され、これのフィルム化の検討がなされ
ている。例えば、脂肪族鎖を主鎖に有するPET/p−
ヒドロキシ安息香酸(以下POBと略すことがある。)
からなる液晶性共重合ポリエステル(特公平8−297
4号公報)や他の液晶性半芳香族ポリエステル(特公平
6−53383号公報)のフィルム、および液晶性全芳
香族ポリエステル(特開平7−323506号公報、特
開平7−251438号公報)のフィルム等が報告され
ている。
【0005】しかしながら、これらの検討においては、
LCPの特徴である流動方向(MD)に分子配向が起こ
り、それに直交する方向(TD)との機械強度の異方性
が生じるため、薄膜化が困難であり、実用性を有するL
CPフィルムの厚みが50μm以下の薄膜フィルムを得
ることが困難であった。PET/POBの共重合ポリエ
ステルの一部や、異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を
共重合して得られるポリエステル(例えばベクトラシリ
ーズ)等をのぞき、全芳香族LCPの加工温度は、30
0℃を越えるものが多く、また荷重撓み温度(TDU
L)が250℃を越える耐熱性を有する液晶性全芳香族
ポリエステルは、さらに高い350℃以上の加工温度を
必要とすることがあり、特殊仕様の高価な加工機械を必
要としていた。
【0006】さらに、例えばガスバリアフィルムとして
実用的に用いるためには、他の熱可塑性樹脂フィルムと
の複合化(多層化)が容易であることが望まれる。その
ためには、薄膜化とともに低温加工性に優れ、他の熱可
塑性樹脂フィルムと同様に正の熱収縮率を有することも
望まれていた。
【0007】溶融時に光学異方性溶融物を形成する全芳
香族ポリエステルからの製膜法は、例えば、特公昭62
−58378号公報、特公昭63−33450号公報等
にインフレーション製膜法やTダイによる製膜法が記載
されているが、いずれも340℃以上の加工温度が必要
であり、加工温度の面でまだ改良の余地があった。ま
た、回転ダイ等を使用する製膜法が、米国特許第497
5312号明細書、WO9015706号公報に記載さ
れているが、いずれも特殊な成形法により液晶ポリエス
テル特有の異方性を緩和する方法を示したものである。
【0008】低温(320℃以下)で成形加工可能な異
種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を共重合して得られる
液晶性全芳香族ポリエステルは、特公昭63−3888
号公報等に記載されている。これを使用し、製膜上の指
標として一定条件下で測定したメルト強度を技術上の因
子として用い、500sec-1以上の高剪断速度下でイ
ンフレーション製膜する製膜法が特開平2−3430号
公報に記載されており、16μm〜22μmのフィルム
が例示されている。しかしながら、これらのフィルム
は、250℃での熱収縮率が機械軸方向(MD方向)お
よびそれに直角な方向(TD方向)のいずれも1%以下
と非常に寸法安定性に優れている。そのため、他のフィ
ルムとの熱収縮率の差が大きすぎて、多層フィルムとし
て用いた場合、反りやしわの原因となると考えられる。
また、さらなる薄膜化への課題も残っている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、包装
材料用として十分な強度を有すると共に低温加工性を有
し、ガスバリア性に優れた液晶性芳香族ポリエステルか
らなるフィルムおよび該フィルムの製造方法を提供する
ことにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、2種以上
の芳香族ヒドロキシカルボン酸単位からなる液晶性芳香
族ポリエステルのフィルム化について鋭意検討し、分子
量を従来法に比べ高めることで安定的にメルトテンショ
ン(以下「MT」と略称することがある。)を高めるこ
とが可能となり、該樹脂の持つ溶融粘度の温度依存性を
小さくすることで、低剪断下においても溶融押し出し、
特にインフレーション製膜ができ、得られたフィルムが
包装材料用として十分な強度を有すると共に低温加工性
を有し、ガスバリア性に優れることを見出し、本発明を
完成させるに至った。
【0011】即ち、本発明は、〔1〕2種以上の芳香族
ヒドロキシカルボン酸単位からなる液晶性芳香族ポリエ
ステルにおいて、下記の繰り返し単位(A)を繰り返し
単位全体の65モル%を越え80モル%以下、繰り返し
単位(B)を35モル%未満20モル%以上含み、流動
温度が300℃以下であり、対数粘度が6.0dl/g
以上であり、流動温度において、剪断速度100sec
-1で測定した溶融粘度(粘度1)と、流動温度より20
℃高い温度において、同剪断速度で測定した溶融粘度
(粘度2)との比(粘度2/粘度1)の値が、0.20
以上であり、流動温度より40℃以上高い温度で測定さ
れるメルトテンションが4.0g以上である液晶性芳香
族ポリエステルから溶融押し出しされてなるフィルムに
係るものである。
【化5】
【化6】 ここで流動温度とは、毛細管型レオメーターで測定さ
れ、4℃/分の昇温速度で加熱溶融された樹脂を、荷重
100kgf/cm2のもとで、内径1mm、長さ10
mmのノズルから押し出した時に、溶融粘度が48,0
00ポイズを示す温度(℃)をいう。
【0012】さらに、本発明は、〔2〕液晶性芳香族ポ
リエステルが、下記式(I)で表わされる化合物を65
モル%を越え80モル%以下、下記式(II)で表わされ
る化合物を35モル%未満20モル%以上の割合で混合
して反応槽に仕込み、270〜350℃で重縮合反応さ
せて、流動温度が210℃以上かつ重縮合反応温度より
30℃以上低い温度の液晶性芳香族ポリエステルを製造
し、反応槽の内容物である該液晶性芳香族ポリエステル
を溶融状態で回収して固化させた後、3mm以下の粒径
の粒子に粉砕し、固相状態のまま不活性気体雰囲気下2
00℃〜310℃で熱処理してなる前記〔1〕に記載の
液晶性芳香族ポリエステルから溶融押出しされてなるフ
ィルムに係るものである。
【化7】 (但し、R1は水素原子、ホルミル基、アセチル基、プ
ロピオニル基またはベンゾイル基を表し、R2は水素原
子、メチル基、エチル基、プロピル基、ベンジル基また
はフェニル基を表す。)
【化8】 (但し、R1とR2の定義は、式(I)におけるそれぞれ
の定義と同じである。式(I)と式(II)におけるR
1は、互いに同一でも異なってもよく、式(I)と式
(II)におけるR2は、互いに同一でも異なってもよ
い。)
【0013】また、本発明は、〔3〕前記〔1〕または
〔2〕に記載の液晶性芳香族ポリエステルを流動温度よ
り20℃高い温度以下でインフレーション製膜する液晶
性芳香族ポリエステルフィルムの製造方法に係るもので
ある。さらに、本発明は、〔4〕前記〔1〕または
〔2〕に記載の液晶性芳香族ポリエステルを、ブロー比
(TD延伸倍率)1.5〜15、ドロー比(MD延伸倍
率)1.5〜60で、インフレーション製膜する液晶性
芳香族ポリエステルフィルムの製造方法に係るものであ
る。
【0014】さらに本発明は、〔5〕MD方向およびそ
れに直角なTD方向における250℃での熱収縮率の、
少なくともいずれか一方が1.5%以上である前記
〔1〕または〔2〕記載の液晶性芳香族ポリエステルフ
ィルムに係るものである。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明における液晶性芳香族ポリ
エステルは、2種以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸単
位からなる液晶性芳香族ポリエステル樹脂において、前
記の繰り返し単位(A)を繰り返し単位全体の65モル
%を越え80モル%以下、繰り返し単位(B)を35モ
ル%未満20モル%以上含み、流動温度が300℃以下
であり、対数粘度が6.0dl/g以上であり、流動温
度において、剪断速度100sec-1で測定した溶融粘
度(粘度1)と、流動温度より20℃高い温度におい
て、同剪断速度で測定した溶融粘度(粘度2)との比
(粘度2/粘度1)の値が、0.20以上であり、流動
温度より40℃高い温度で測定されるメルトテンション
が4.0g以上を示す液晶性芳香族ポリエステルであ
り、溶融時に光学異方性(液晶性)を示し、溶融成形
性、耐薬品性、機械物性に優れるという特徴を有してい
る。
【0016】本発明における2種以上の芳香族ヒドロキ
シカルボン酸単位からなる液晶性芳香族ポリエステルと
しては、好ましくは、前記の繰り返し単位(A)65モ
ル%を越え80モル%以下、より好ましくは65モル%
を越え75モル%以下、および繰り返し単位(B)35
モル%未満20モル%以上、より好ましくは35モル%
未満25モル%以上からなる液晶性芳香族ポリエステル
である。
【0017】繰り返し単位(A)の割合が、80モル%
を越えると、液晶性芳香族ポリエステル中には、加熱に
よって溶融しない部分が存在することが多いため、溶融
加工性が悪くなる場合がある。また、繰り返し単位
(A)の割合が、65モル%以下の場合は、成形加工性
(製膜性)が低下する場合がある。前記の範囲で、より
低温での成形(製膜)が可能となり、特に20μm以下
の酸素バリア性、水蒸気バリア性に優れる薄膜フィルム
を得ることも可能となり、該液晶性芳香族ポリエステル
からなるフィルムは、バランスの取れた物性および加工
性を示す。従来法の減圧1段重合では、取り出し時の滞
留や重合槽へのポリマーの付着の問題が生じるため、製
膜に適した十分な分子量で取り出すことが容易ではない
ので、本発明で言う高いメルトテンションを達成できな
いものと考えられる。本発明のフィルムにおいては、原
料の液晶性芳香族ポリエステルを溶融重縮合(プレ重
合)し、溶融状態で回収し固化させた後、粉砕した粉末
でさらに固相重合を行なうので、該液晶性芳香族ポリエ
ステルのメルトテンションを高くすることが可能とな
り、該樹脂を用いたフィルムの製膜上好ましい。
【0018】本発明における液晶性芳香族ポリエステル
は、流動温度が300℃以下、好ましくは230〜29
5℃、さらに好ましくは240〜290℃である。該流
動温度が300℃を越えると、製膜加工温度が350℃
を越えることがあり、好ましくない。
【0019】ここで流動温度(以下「FT」と略称する
ことがある。)とは、毛細管型レオメーター(例えば島
津製作所製高化式フローテスターCFT−500型)で
測定され、4℃/分の昇温速度で加熱溶融された樹脂
を、荷重100kgf/cm2のもとで、内径1mm、
長さ10mmのノズルから押し出した時に、溶融粘度が
48,000ポイズを示す温度(℃)をいう。
【0020】本発明における液晶性芳香族ポリエステル
は、次式で定義される対数粘度(ηinh)が6.0dl
/g以上であり、より好ましくは8.0dl/g以上、
さらに好ましくは10.0dl/g以上のものが、機械
的物性、成形性から見て好ましい。また、ηinhの上限
は、好ましくは20dl/g以下、さらに好ましくは1
5dl/g以下が成形性等から見て好ましい。ηinhが
6.0dl/g未満のものは、メルトテンションが小さ
く製膜性に問題があったり、機械的強度に問題があった
りする。 ηinh=(ln(ηrel))/C (上式中、ηrelは相対粘度と呼ばれるもので、ポリマ
ー溶液と溶媒との毛細管中の一定標線間を落下する時間
の比(ポリマー溶液/溶媒)である。Cは、ポリマー溶
液の濃度で、単位は、g/dlである。本発明において
は、溶媒として、3,5−ビス(トリフルオロメチル)
フェノールを用い、ポリマー濃度0.1g/dl、温度
60℃でウベローデ粘度計にて測定した値である。)
【0021】本発明における液晶性芳香族ポリエステル
として、好ましくは、異方性溶融相を形成し始める温度
(流動温度)において、剪断速度100sec-1で測定
した溶融粘度(粘度1)と、流動温度より20℃高い温
度において同剪断速度で測定した溶融粘度(粘度2)と
の比(粘度2/粘度1)の値が、0.20以上、好まし
くは0.40以上であるものが、溶融粘度の温度依存性
が小さく、加工時の成形安定性は良くなる方向になるの
で好ましい。
【0022】本発明における液晶性芳香族ポリエステル
は、流動温度より40℃以上高い温度で、キャピラリー
内径2.1mm、長さ8mm、ピストン速度5mm/分
の条件で測定されるMTが4.0g以上を示すものであ
り、好ましくは8.0g以上、さらに好ましくは10.
0g以上である。MTの上限は、30.0g、好ましく
は25.0gである。その際測定される切断時の巻取り
速度は、通常5〜200m/分、好ましくは5〜100
m/分、より好ましくは、10〜80m/分である。液
晶性芳香族ポリエステルの組成にも依存するが、MT値
が4.0g未満の場合は、インフレーション製膜におけ
る安定製膜温度域が狭くなる場合がある。製膜性の観点
からは、MTの温度依存性が小さいものが好ましい。
【0023】本発明のフィルムに用いるのに好ましい液
晶性芳香族ポリエステルは、下記式(I)で表わされる
化合物を65モル%を越え80モル%以下、下記式(I
I)で表わされる化合物を35モル%未満20モル%以
上の割合で混合して反応槽に仕込み、270〜350℃
で重縮合反応させて、流動温度が210℃以上(より好
ましくは220℃以上)かつ重縮合反応温度より30℃
以上低い温度の液晶性芳香族ポリエステルを製造し、反
応槽の内容物である該液晶性芳香族ポリエステルを溶融
状態で回収して固化させた後、3mm以下の粒径の粒子
に粉砕し、固相状態のまま不活性気体雰囲気下200℃
〜310℃で熱処理して得ることができる。該熱処理の
時間は、1〜24時間が好ましい。該熱処理した樹脂を
加熱溶融下にペレット状に造粒することが好ましい。
【化9】 (但し、R1は水素原子、ホルミル基、アセチル基、プ
ロピオニル基またはベンゾイル基を表し、R2は水素原
子、メチル基、エチル基、プロピル基、ベンジル基また
はフェニル基を表す。)
【化10】 (但し、R1とR2の定義は、式(I)におけるそれぞれ
の定義と同じである。式(I)と式(II)におけるR
1は、互いに同一でも異なってもよく、式(I)と式
(II)におけるR2は、互いに同一でも異なってもよ
い。)
【0024】本発明における式(I)においては、ベン
ゼン核がハロゲンやアルキル基等で置換されたものも含
むものとする。上記式(I)で表わされる化合物の例と
しては、4−ヒドロキシ安息香酸、4−ホルモキシ安息
香酸、4−アセトキシ安息香酸、4−プロピオニルオキ
シ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒド
ロキシ安息香酸プロピル、4−ヒドロキシ安息香酸フェ
ニル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−アセトキ
シ安息香酸メチル、4−アセトキシ安息香酸フェニルな
どが挙げられ、特に4−ヒドロキシ安息香酸または4−
アセトキシ安息香酸が好ましい。
【0025】さらに、上記式(I)で表わされる化合物
の例としては、3−クロロ−4―ヒドロキシ安息香酸、
2−クロロ−4―ヒドロキシ安息香酸、2,3−ジクロ
ロ−4―ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジクロロ−4―
ヒドロキシ安息香酸、2,5−ジクロロ−4―ヒドロキ
シ安息香酸、3−ブロモ−4―ヒドロキシ安息香酸およ
びこれらのアセチル化物が核置換化合物として、ガスバ
リア性を向上する目的で併用することもできる。
【0026】本発明における式(II)においては、ナ
フタレン核がハロゲンやアルキル基等で置換されたもの
も含むものとする。上記式(II)で表わされる化合物の
例としては、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ア
セトキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフ
トエ酸メチル、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニ
ル、または6−アセトキシ−2−ナフトエ酸メチルなど
が挙げられ、特に6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6
−アセトキシ−2−ナフトエ酸が好ましい。
【0027】さらに、上記式(II)で表わされる化合物
の例としては、6―ヒドロキシ−5−クロロ−2−ナフ
トエ酸、6―ヒドロキシ−7−クロロ−2−ナフトエ
酸、6―ヒドロキシ−4,7−ジクロロ−2―ナフトエ
酸およびこれらのアセチル化物が核置換化合物として、
ガスバリア性を向上する目的で併用することもできる。
【0028】本発明においては、得られる液晶性芳香族
ポリエステルの物性や加工性(製膜性)に重大な影響を
与えない範囲で、3−ヒドロキシ安息香酸、3−ホルモ
キシ安息香酸、3−アセトキシ安息香酸、3−プロピオ
ニルオキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸メチル、
3−ヒドロキシ安息香酸プロピル、3−ヒドロキシ安息
香酸フェニル、3−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、3−
アセトキシ安息香酸メチル、4‘−ヒドロキシビフェニ
ルー4−カルボン酸、4‘−アセトキシビフェニルー4
−カルボン酸等を併用することができる。
【0029】本発明における液晶性芳香族ポリエステル
を製造する際には先ず、上記の式(I)、および(II)
で表わされる化合物からなる混合物を反応槽中で重縮合
反応させるが、これらの化合物の重合槽への仕込みは一
括方式でも、回分方式でも良い。反応は不活性気体、例
えば窒素雰囲気下に、常圧、減圧、またはそれ等の組み
合わせで行うことができ、プロセスは回分式、連続式、
またはそれ等の組み合わせを採用できる。
【0030】なお、式(I)または(II)としてフェノ
ール性水酸基を有する化合物を用いる場合には、それら
をより重縮合反応し易い化合物に変える反応、例えば無
水酢酸などの酸無水物を用いるエステル化反応を重縮合
反応に先立って、該重縮合反応を行うのとは別の、また
は同一の反応槽で行った後、引き続き重縮合反応を行う
ことが好ましい。上記の式(I)または(II)としてフ
ェノール性水酸基を有する化合物を用いる場合には、該
フェノール性水酸基の当量以上、より好ましくは1.1
〜1.3倍当量の量の無水酢酸などの低級脂肪酸の酸無
水物を、上記の式(I)および(II)で表わされる化合
物からなる混合物とともに反応槽に仕込み、エステル化
反応を行った後、重縮合反応させることがより好まし
い。その際、アセチル化反応槽の材質は、SUS31
6、チタン、ハステロイ等の耐腐食性の材料の使用が可
能である。また、ポリエステルが高い色調(L値)を必
要とする場合はグラスライニングされた反応槽等を使用
することが好ましい。
【0031】本発明における液晶性芳香族ポリエステル
の重縮合反応の温度は、270〜350℃が好ましく、
より好ましくは280〜330℃である。温度が270
℃より低いと反応の進行が遅く、350℃を越えると分
解等の副反応が起こりやすい。
【0032】反応槽が多段に分かれていたり、仕切られ
ている場合には、最終部分の反応温度が本発明で言うと
ころの重縮合反応温度である。重縮合反応の時間は反応
条件等により適宜決められるべきであるが、該反応温度
において0.5〜5時間が好ましい。多段階の反応温度
を採用しても構わないし、場合により、反応途中で、あ
るいは最高温度に達したら直ぐに反応生成物である液晶
性芳香族ポリエステルを溶融状態で抜出し、回収するこ
とができる。
【0033】該溶融重縮合反応は、通常無触媒下でも十
分進行するが、必要に応じて触媒として、Ge、Sn、
Ti、Sb、Co、Mn等の酸化物、酢酸塩等の化合物
を使用することもできる。食品包装用フィルムに使用す
る場合は、触媒成分の除去等が必要な場合があり無触媒
が好ましい。
【0034】反応槽の形状は、公知のものを用いること
ができる。縦型の反応槽の場合、多段のパドル翼、ター
ビン翼、モンテ翼、ダブルヘリカル翼が好ましく、横型
の反応槽では、1軸または2軸の攪拌軸に垂直に、種々
の形状の翼、例えばレンズ翼、眼鏡翼、多円平板翼等が
設置されているものが良い。また、翼にねじれを付け
て、攪拌性能や送り機構を向上させたものも良い。
【0035】反応槽の加熱は、熱媒、気体、電気ヒータ
ーにより行うが、均一加熱という目的で攪拌軸、翼、邪
魔板等も加熱することが好ましい。
【0036】本発明における液晶性芳香族ポリエステル
の製造方法においては、重縮合反応により得られる液晶
性芳香族ポリエステルの流動温度が、210℃以上かつ
重縮合反応温度より30℃以上低い温度であることが重
要である。更に好ましくは、得られる液晶性芳香族ポリ
エステルの流動温度が、220℃以上かつ重縮合温度よ
り35℃以上低いことが好ましい。流動温度が、210
℃未満では、液晶性芳香族ポリエステルの分子量が十分
でなく、成形加工上、物性上問題がある。さらに、固相
重合等の後処理を施すにしても、液晶性芳香族ポリエス
テル同士の融着や副生物が大量に生じ、経済的にも好ま
しくない。また、流動温度が、重縮合反応温度に近い
と、ポリエステルの粘度が高くなり、回収が困難となる
ばかりか、攪拌混合性も悪くなり、不均一加熱のため、
ポリマーの熱安定性に影響を及ぼすことがある。
【0037】また、工業的には、バッチ重合方式では、
重合槽の洗浄がコストを増大させるため、重合槽の連続
使用が有利であり、溶融抜き出し条件が特に重要であ
る。反応釜の洗浄方法としては、特開平5−29592
号、特開平5−29593号公報に記載されているグリ
コール類および/またはアミン類による洗浄法が挙げら
れる。
【0038】該液晶性芳香族ポリエステルを溶融状態で
取出す場合、不活性気体雰囲気中、例えば窒素雰囲気中
で実施するのが、得られるポリマーの色調の点で好まし
いが、水分が少ない場合は空気中でも良い。
【0039】本発明における液晶性芳香族ポリエステル
を溶融状態で取出す機構としては、公知の押出機、ギヤ
ポンプが挙げられるが、単なるバルブだけでも良い。取
出されたものは通常、しばらくすると固化するので、目
的に応じて、ストランドカッターやシートカッターでカ
ットしたり、粉砕することができる。また、大量かつ短
時間処理する手段としては、特開平6−256485号
公報で記載されている定量供給装置を経てダブルベルト
クーラーで冷却する方法等が挙げられる。
【0040】溶融状態で回収された液晶性芳香族ポリエ
ステルは、未反応原料を除去したり、分子量を上げ物性
を上げる意味から固相重合を実施することが好ましい。
また、減圧重合法を併用して分子量を上げる場合は、ポ
リマーの取り出しの際の溶融粘度の関係から、所望のM
Tを示すまで分子量を上げると、ポリマーの連続的な回
収が困難な場合があったり、高温処理する為、重合釜や
抜出し口等に滞留したポリマーがコンタミネーションと
なる問題がある。
【0041】得られた液晶性芳香族ポリエステルを公知
の粉砕機で粉砕し、3mm以下、好ましくは0.5mm
以下、更に好ましくは0.1〜0.4mmの平均粒径
(Rosin−Rammlar法)の粒子(粉末)に
し、固相状態のまま不活性気体雰囲気下熱処理する固相
重合を実施することが好ましい。
【0042】該平均粒子径が3mmを越えると、表面層
と内部との間で、重合速度、未反応原料の反応の結果生
じた副生物の拡散時間が異なることから、分子量分布を
広げたり、除去すべきものを十分除去できないために発
泡やガス発生の原因となる場合があり、好ましくない。
【0043】固相重合時の昇温速度、最高処理温度は、
液晶性芳香族ポリエステル粒子を融着させないように選
ぶ必要がある。融着を起こした場合、表面積が減少し、
重縮合反応や低沸点成分の除去が遅くなり好ましくな
い。固相重合の最高処理温度としては、融着させない
で、200〜310℃の範囲、より好ましくは230〜
300℃の範囲で不活性気体雰囲気下に処理することが
効果的である。200度未満の温度では、反応が遅く、
処理時間がかかり不経済であり、310℃を越えると、
粉体粒子同士が融着したり、溶融したりするため固相状
態が保持できないので好ましくない。
【0044】不活性気体としては、窒素、ヘリウム、ア
ルゴン、炭酸ガスから選ばれるものが好ましく、さらに
好ましくは窒素である。空気、特に酸素が存在すると、
液晶性芳香族ポリエステルは高温では酸化され、物性低
下や着色が起こりやすく好ましくない。
【0045】固相重合装置としては、既知の乾燥機、反
応機、混合機、電気炉等を用いることができるが、上記
の趣旨から、密閉度の高いガス流通式の装置が好まし
い。
【0046】本発明に用いられる液晶性芳香族ポリエス
テルの通常の成形加工時の使用形態は、粉末または2軸
押出機等で加熱溶融下にペレット状に造粒した後のペレ
ット(造粒ペレット)であるが、より好ましくは、造粒
ペレットである。本発明における液晶性芳香族ポリエス
テルの造粒後のペレットの流動温度(FT1という)
は、粉末段階での流動温度(FT0という)より低下す
る傾向を示す。この傾向は、固相重合法を使用する従来
の液晶性芳香族ポリエステルと比べて低下の度合いが大
きい。この差異は、固相重合条件の差異による結晶化度
の違い等がその要因と考えられる。
【0047】液晶性芳香族ポリエステルを加熱溶融下に
ペレット状に造粒してペレット化する方法としては、公
知の方法を用いることができる。重合槽から溶融状態
で、溝付きの平行ローラーに供給し、ストランド状(紐
状)に賦形し、ストランドカッター等で切断する方法も
ある。液晶性芳香族ポリエステル粉体を造粒してペレッ
トを製造する方法としては、一般に使用されている一軸
または二軸の押出機を用い溶融混練し、空冷または必要
に応じて水冷した後、通常用いられるペレタイザー(ス
トランドカッター)でペレットに賦形する。溶融均一化
と賦形が目的であるが、同一組成では、高分子量と考え
られる高FT0のアドバンスポリマーの場合は、高混練
機が必要な場合がある。溶融混練に際しては、混練装置
のシリンダー設定温度(ダイヘッド温度)は200〜3
50℃の範囲が好ましく、より好ましくは230〜33
0℃、更に好ましくは240〜320℃である。
【0048】本発明に使用する液晶性芳香族ポリエステ
ルには、所望により無機充填剤を添加することができ
る。このような無機充填剤としては、炭酸カルシウム、
タルク、クレー、シリカ、炭酸マグネシウム、硫酸バリ
ウム、酸化チタン、アルミナ、モンモリロナイト、石
膏、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ
繊維、シリカアルミナ繊維、ホウ酸アルミニウムウィス
カ、チタン酸カリウム繊維等が例示される。これらの無
機充填剤は、フィルムの透明性や機械強度を著しく損な
わない範囲で用いることができる。
【0049】本発明に使用する液晶性芳香族ポリエステ
ルに、必要に応じて、さらに、有機充填剤、酸化防止
剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、
無機もしくは有機系着色剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、
蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、またはフッ素樹
脂などの離型改良剤などの各種の添加剤を製造工程中あ
るいはその後の加工工程において添加することができ
る。
【0050】本発明における液晶性芳香族ポリエステル
よりなるフィルムの成形方法は特に制限するものではな
く、周知の方法で行うことができる。例えば、Tダイか
ら溶融樹脂を押し出し、巻き取るTダイ法、環状ダイス
を設置した押し出し機から溶融樹脂を円筒状に押し出
し、冷却、巻き取るインフレーション製膜法によりフィ
ルムを得ることもできるし、射出成形法や押し出し法で
得られたシートをさらに一軸延伸してフィルムを得るこ
ともできる。
【0051】これらの中で、該液晶性芳香族ポリエステ
ルフィルムの成形(製膜)方法として、好適なインフレ
ーション製膜について説明する。即ち、該液晶性芳香族
ポリエステルは、環状スリットのダイを備えた溶融混錬
押出機に供給され、シリンダー設定温度好ましくは20
0〜320℃、より好ましくは210〜310℃、更に
好ましくは220〜300℃で溶融混錬され、押出機の
環状スリットを通して筒状フィルムとして上方または下
方に押し出される。環状スリットの間隔は、通常0.2
5〜2mm、好ましくは0.5〜1.5mm、より好ま
しくは0.7〜1.2mm、環状スリットの直径は、通
常20〜1000mm、好ましくは25〜600mmで
ある。
【0052】溶融押出された筒状の溶融樹脂フィルム
に、長手方向(MD)にドラフトをかけると共に、この
筒状フィルムの内側から空気または不活性ガス、例えば
窒素ガス等を吹き込むことにより長手方向に直角な横手
方向(TD)にフィルムを膨張延伸させる。
【0053】本発明における液晶性芳香族ポリエステル
フィルムのインフレーション製膜において、好ましいT
D延伸倍率即ちブロー比は、1.5〜15であり、更に
好ましくは、2.5〜15である。また、好ましいMD
延伸倍率即ちドロー比は、1.5〜60であり、更に好
ましくは、2.5〜50である。ここで、 ブロー比
は、(円筒型のフィルムの直径)/(ダイスの直径)で
求め、ドロー比は、(環状スリットの面積)/(フィル
ムの断面積)から求められる。インフレーション製膜時
の設定条件が上記の範囲外であると、厚さが均一で皺の
ない強度のある液晶性芳香族ポリエステルフィルムを得
ることが困難になる。
【0054】さらに、本発明においては、溶融粘度の温
度依存性が小さく、成形加工温度範囲が広い傾向を示
し、加工温度の上昇を抑えながら、メルトテンションを
上げることが可能な液晶性芳香族ポリエステルを用いる
ので、500sec-1以下の低剪断下においても液晶性
芳香族ポリエステルフィルムのインフレーション製膜が
可能である。ここで、せん断速度γ(単位sec-1
は、吐出量Q(単位g/sec)、ダイ幅ω(単位c
m)、ダイギャップL(単位cm)、LCP密度ρ(単
位g/cm2)を用いて、式γ=6Q/(ωL2ρ)から
算出される。
【0055】膨張させたフィルムは、通常、その円周
を、空気または不活性ガス、例えば窒素ガス等で冷却し
た後、ニップロールを通過させて引き取る。インフレー
ション製膜に際しては、液晶性芳香族ポリエステルの組
成に応じて、筒状の溶融体フィルムが均一な厚みで表面
が平滑な状態に膨張するような条件を選択することがで
きる。
【0056】本発明における液晶性芳香族ポリエステル
層の厚みには特に制限はないが、好ましくは1〜500
μm、より好ましくは5〜200μm、さらに好ましく
は5〜50μmである。
【0057】本発明における液晶性芳香族ポリエステル
フィルムの250℃における熱収縮率は、機械軸方向
(MD方向)およびそれに直角な方向(TD方向)にお
ける250℃での熱収縮率の、少なくともいずれか一方
が1.5%以上であることが好ましく、さらに好ましく
は2.0%以上である。いずれの熱収縮率も、1.5%
以上であることがより好ましく、特に好ましくは2.0
%以上である。かかる熱収縮率が1.5%よりも小さく
なると、他のフィルムとの多層化フィルムの成形時や加
熱時での、反りやしわの原因となる場合がある。また、
熱収縮率の上限は好ましくは50%であり、さらに好ま
しくは40%である。これ以上収縮すると、形状を保持
できなくなり、実用性に欠ける場合がある。
【0058】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳しく説明する
が、これによって本発明の範囲が限定されるものではな
い。なお、各物性は次に示す方法により測定した。
【0059】[物性の測定法] 流動温度(FT):溶融流動性を表す指標であり、その
測定法は、毛細管式レオメーター((株)島津製作所
製、高化式フローテスターCFT500型)で測定さ
れ、4℃/分の昇温速度で加熱溶融されたサンプル樹脂
(約2g)を100kg/cm2の荷重下で内径1m
m、長さ10mmのノズルから押し出した時に、該溶融
粘度が48,000ポイズを示す温度(℃)として表し
た。
【0060】光学異方性:サンプル樹脂の溶融状態にお
ける光学異方性は、加熱ステージ上に置かれた粒径25
0μm以下のサンプル樹脂粉末を偏光下、25℃/分で
昇温して、肉眼観察または透過光量をXYレコーダーに
記録することにより行った。
【0061】溶融粘度:キャピログラフ1B型(東洋精
機製作所製)を用いて、キャピラリーの内径は、0.5
mm、長さは10mmのものを使用し、試料約10gを
仕込み、所定の温度下に所定の剪断速度(100sec
-1)で溶融粘度を測定した。
【0062】メルトテンション(溶融張力)テスト:キ
ャピログラフ1B型(東洋精機製作所製)を用いて、試
料約10gを仕込み、キャピラリーの内径2.095m
m、長さは8.0mm、ピストンの押出し速度は5.0
mm/分、速度可変巻取機で自動昇速しながら試料を糸
状に引き取り、破断したときの張力および巻取り速度を
測定した。
【0063】酸素ガス透過度: JIS K7126
B法に準拠して、OX−TRAN 2/20型(Mod
ern Control社製)を用い、温度23.5
℃、相対湿度60±5%の条件で測定した。単位はcc
/m2・24hr・atmである。
【0064】水蒸気透過度(透湿度):JIS Z02
08(カップ法)に準拠して温度25℃、相対湿度90
%の条件で測定した。単位はg/m2・24hrであ
る。
【0065】熱収縮率:試料のMD方向およびTD方向
に一定長さの印を付け、250℃に設定したTABAI
製高温熱風乾燥機内に無荷重下で30分間放置した後、
熱処理前後の長さの変動を測定した。具体的には、下式
で算出した。ここで、LBは加熱処理前の印の間の長さ
を示し、LAは加熱処理後の印の間の長さを示す。 (LB−LA)/LB×100 %
【0066】せん断速度γ(単位sec-1):吐出量Q
(単位g/sec)、ダイ幅ω(単位cm)、ダイギャ
ップL(単位cm)、液晶性芳香族ポリエステルの密度
ρ(単位g/cm2)を用いて、式γ=6Q/(ωL
2ρ)から算出される。
【0067】実施例1 (1)溶融重合 液晶性芳香族ポリエステルの繰り返し構造単位中のPO
B/HNA=73/37(モル%)に相当する例を示
す。ジムロート冷却管、窒素導入管と内温測定用の熱電
対を取り付けたト型連結管、イカリ型攪拌翼を有し、フ
ラスコ外側にも熱電対を取り付けた3リットル四ツ口セ
パラブルフラスコを用いて、この重合槽にP−ヒドロキ
シ安息香酸(POB)1207.3g(8.74モ
ル)、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(HNA)60
8.4g(3.23モル)、および無水酢酸1345g
(13.2モル)を投入し、窒素気流下、マントルヒー
ターにてフラスコ外温を150℃まで昇温し、200r
pmで攪拌しながら、還流下約3時間アセチル化反応を
行った。アセチル化反応に引き続き、1℃/分で昇温し
310℃で1〜2時間温度を保持し、溶融重縮合を行っ
た。この間に重縮合反応で副生する酢酸を留去し続け
た。重合途中310℃到達から60分後にサンプリング
し、流動温度を測定したところ、246℃であった。同
90分後、撹拌を停止させ、ポリマーを溶融状態で容易
に取出すことができた。重合槽および攪拌翼への付着は
殆どなかった。得られたポリエステルはしばらくすると
固化した。収量は1573g(理論収量に対して、9
8.3%)であった。
【0068】全く同様の操作を7回繰り返し、得られた
ポリエステルを3〜5cm角程度の大きさにした後、粉
砕機を用い、平均粒径1mm以下に粉砕した後、流動温
度(FT)を測定した所、248℃であった。このポリ
マー(プレポリマー)は溶融時に光学異方性を示した。
【0069】(2)固相重合 このプレポリマーをアルミ製トレーに入れ、窒素雰囲気
炉に仕込み、窒素雰囲気下に、室温から180℃まで3
時間で昇温し、同温度で2時間保持した後、さらに約
8.3時間かけて280℃まで昇温し、同温度で5時間
保持し、放冷した後取出し、FTが357℃の液晶性芳
香族ポリエステル(アドバンストポリマー)の粉末を得
た。ここでの重量減少は、1.2%であった。
【0070】(3)造粒 得られたアドバンストポリマーを、池貝機販(株)製P
CM−30二軸押出機にて、ダイヘッド温度は340℃
に設定し、スクリュー回転数100rpmで溶融混練を
行い、FTが277℃の液晶性芳香族ポリエステルペレ
ットを得た。この樹脂ペレットの307℃(FT+40
℃)におけるメルトテンションは、23.1gであり、
60℃で測定した対数粘度(ηinh)は、11.1dl
/gであった。溶融粘度は表1に示す。
【0071】(4)インフレーション製膜 得られた液晶性芳香族ポリエステルペレットをラボプラ
ストミル(東洋精機製作所製)に30mmφの二軸押出
機を設置し、ヘッド部に25mmφ、ダイギャップ0.
75mmのインフレーションダイを取り付け、シリンダ
ー温度260〜295℃、ダイヘッド温度295℃、引
き取り速度5m/分で製膜し、折幅120mmのフィル
ムを得た。バブルも安定し、膜厚は69μmであり、フ
ィルム外観は良好であった。
【0072】シリンダーおよびダイヘッド温度を順次下
げて製膜したところ、シリンダー温度230〜245
℃、ダイヘッド温度245℃まで製膜可能であり、膜厚
5〜70μmのフィルムが得られた。表2にその結果を
示した。ダイヘッド温度が300℃以上および235℃
以下では、バブルが不安定で製膜ができなったり、外観
が不良であったりするため、製膜温度範囲は65℃程度
と考えられる。こうして得られた20μmのフィルムの
酸素透過度は0.52cc/m2・24h・atm、水
蒸気透過度は0.30g/m2・24hであった。ま
た、250℃における熱収縮率は、MD方向が0.9
%、TD方向が9.0%であった。
【0073】比較例1 (1)溶融重合 P−ヒドロキシ安息香酸(POB)1108.1g
(8.03モル)、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸5
58.4g(2.97 モル)および無水酢酸123
4.2g(12.1モル)を櫛型攪拌翼付きの重合槽に
投入し、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら、重合槽の外
壁温を150℃まで昇温し、還流下約3時間アセチル化
反応を行った。アセチル化反応に引き続き、副生する酢
酸を留去し続けながら、1℃/分で昇温し、重合槽外温
を320℃で保持し1時間、そして更に、重合槽外温を
320℃で保持しながら、減圧操作を実施し、約45分
後、撹拌を停止させ、ポリマーの高粘度物を取リ出し
た、重合槽および攪拌翼への重合物の付着が見られた。
収量は1469g(理論収量に対して、99.7%)で
あった。全く同様の操作を4回繰り返し、得られたポリ
エステルを3〜5cm角程度の大きさにした後、粗砕機
を用い、粉砕を試みたが、ファイバライズして、微粉砕
が難しく、粉砕速度が遅かった。平均粒径3mm以下フ
ィルターを通過したものについて、流動温度(FT)を
測定したところ、260℃であった。
【0074】(2)造粒 得られたポリエステルを、池貝機販(株)製PCM−3
0二軸押出機にて、ダイヘッド温度は280℃に設定
し、スクリュー回転数80rpmで溶融混練を行って、
FTが255℃の液晶性芳香族ポリエステルペレットを
得た。この樹脂ペレットの295℃(FT+40℃)に
おけるメルトテンションは、2.2gであり、60℃で
測定した対数粘度(ηinh)は、5.13dl/gであ
った。溶融粘度は表1に示す。
【0075】(3)インフレーション製膜 実施例1と全く同じ製膜装置を用い、シリンダー温度平
均275℃、ダイヘッド温度280℃、にてインフレー
ション製膜を行い、折幅150mmのフィルムを得た。
バブルも比較的安定し、膜厚は5〜40μmであり、フ
ィルム外観は比較的良好で、突起状のブツは見られなか
った。シリンダーおよびダイヘッド温度を順次下げて製
膜したところ、ダイヘッド温度265℃まで製膜可能で
あった。表3にその結果を示した。ダイヘッド温度が2
55℃以下および285℃以上では、バブルが不安定で
製膜ができなったり、外観が不良であったりする為、製
膜温度範囲は30℃程度と狭いと考えられる。こうして
得られた20μmのフィルムの酸素透過度は0.75c
c/m2・24h・atm、水蒸気透過度は0.20g
/m2・24hであった。また、250℃における熱収
縮率は、MD方向が−0.2%、TD方向が0.0%で
あった。
【表1】
【表2】
【表3】
【0076】
【発明の効果】本発明の液晶性芳香族ポリエステルより
なるフィルムは、従来の液晶性芳香族ポリエステルよ
り、溶融粘度の温度依存性が小さく、成形加工温度範囲
が広い傾向を示し、加工温度の上昇を抑えながら、メル
トテンションを上げることが可能な液晶性芳香族ポリエ
ステルを用いるので、製膜加工性が良好であり、特に低
剪断で製膜が可能である。該ポリエステルフィルムは、
包装材料用として十分な耐熱性を有すると共に低温加工
性を有し、ガスバリア性に優れたフィルムであり、単層
フィルムのみならず他の熱可塑性樹脂との多層フィルム
でガスバリア層として使用でき、食品包装、薬品包装、
化粧品包装、電子材料包装など各種包装用途のフィルム
用の樹脂材料として使用することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 67:04 C08L 67:04

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】2種以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸単
    位からなる液晶性芳香族ポリエステルにおいて、下記の
    繰り返し単位(A)を繰り返し単位全体の65モル%を
    越え80モル%以下、繰り返し単位(B)を35モル%
    未満20モル%以上含み、流動温度が300℃以下であ
    り、対数粘度が6.0dl/g以上であり、流動温度に
    おいて、剪断速度100sec-1で測定した溶融粘度
    (粘度1)と、流動温度より20℃高い温度において、
    同剪断速度で測定した溶融粘度(粘度2)との比(粘度
    2/粘度1)の値が、0.20以上であり、流動温度よ
    り40℃以上高い温度で測定されるメルトテンションが
    4.0g以上であることを特徴とする液晶性芳香族ポリ
    エステルから溶融押し出しされてなるフィルム。 【化1】 【化2】 ここで流動温度とは、毛細管型レオメーターで測定さ
    れ、4℃/分の昇温速度で加熱溶融された樹脂を、荷重
    100kgf/cm2のもとで、内径1mm、長さ10
    mmのノズルから押し出した時に、溶融粘度が48,0
    00ポイズを示す温度(℃)をいう。
  2. 【請求項2】液晶性芳香族ポリエステルが、下記式
    (I)で表わされる化合物を65モル%を越え80モル
    %以下、下記式(II)で表わされる化合物を35モル%
    未満20モル%以上の割合で混合して反応槽に仕込み、
    270〜350℃で重縮合反応させて、流動温度が21
    0℃以上かつ重縮合反応温度より30℃以上低い温度の
    液晶性芳香族ポリエステルを製造し、反応槽の内容物で
    ある該液晶性芳香族ポリエステルを溶融状態で回収して
    固化させた後、3mm以下の粒径の粒子に粉砕し、固相
    状態のまま不活性気体雰囲気下200℃〜310℃で熱
    処理してなることを特徴とする請求項1に記載の液晶性
    芳香族ポリエステルから溶融押出しされてなるフィル
    ム。 【化3】 (但し、R1は水素原子、ホルミル基、アセチル基、プ
    ロピオニル基またはベンゾイル基を表し、R2は水素原
    子、メチル基、エチル基、プロピル基、ベンジル基また
    はフェニル基を表す。) 【化4】 (但し、R1とR2の定義は、式(I)におけるそれぞれ
    の定義と同じである。式(I)と式(II)におけるR
    1は、互いに同一でも異なってもよく、式(I)と式
    (II)におけるR2は、互いに同一でも異なってもよ
    い。)
  3. 【請求項3】請求項1または2に記載の液晶性芳香族ポ
    リエステルを流動温度より20℃高い温度以下でインフ
    レーション製膜することを特徴とする液晶性芳香族ポリ
    エステルフィルムの製造方法。
  4. 【請求項4】請求項1または2に記載の液晶性芳香族ポ
    リエステルを、ブロー比(TD延伸倍率)1.5〜1
    5、ドロー比(MD延伸倍率)1.5〜60で、インフ
    レーション製膜することを特徴とする液晶性芳香族ポリ
    エステルフィルムの製造方法。
  5. 【請求項5】MD方向およびそれに直角なTD方向にお
    ける250℃での熱収縮率の、少なくともいずれか一方
    が1.5%以上であることを特徴とする請求項1または
    2に記載のフィルム。
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