JP2001130010A - インクジェット式記録ヘッドの製造方法 - Google Patents

インクジェット式記録ヘッドの製造方法

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JP2001130010A
JP2001130010A JP31797199A JP31797199A JP2001130010A JP 2001130010 A JP2001130010 A JP 2001130010A JP 31797199 A JP31797199 A JP 31797199A JP 31797199 A JP31797199 A JP 31797199A JP 2001130010 A JP2001130010 A JP 2001130010A
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substrate
recording head
manufacturing
ink jet
thin film
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Hiroshi Kyu
宏 邱
Manabu Nishiwaki
学 西脇
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 圧電体素子の形成工程と、インク室の形成工
程とを同時に行うことを可能とし、インクジェット式記
録ヘッドの製造にかかる時間を短縮する。 【解決手段】 インク室が形成される基板20と、基板
の一方の面に固定される振動板31〜33と、前記振動
板に備えられる圧電体素子41、42と、基板の他方の
面に形成されるインク室の開口を封止するノズル板とを
備えるインクジェット式記録ヘッドの製造方法におい
て、前記インク室を形成するために、基板20の前記他
方の面に保護層51をパターン形成する保護層形成工程
(S3)と、前記圧電体素子41、42を形成するため
に、所定のアルカリ溶液中における少なくとも1回の水
熱処理を実行する水熱処理工程(S4)とを備え、前記
少なくとも1回の水熱処理により、基板20のうち前記
保護層51以外の部分にインク室を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクジェット式
記録ヘッドの製造方法に関する。特に、基板にインク室
を形成するとともに振動板と圧電体素子とを備えてなる
インクジェット式記録ヘッドの製造において、インク室
の形成を含むシリコンプロセス工程のための時間を短縮
した製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】印刷装置等に使用されるインクジェット
式記録ヘッドとして、従来、インク室が形成される基板
と、基板の一方の面に固定された振動板と、振動板に備
えられた圧電体素子と、基板の他方の面に形成されたイ
ンク室の開口を封止するノズル板とを備えたものが知ら
れている。このインクジェット式記録ヘッドを製造する
にあたっては、従来、圧電体素子の形成と、インク室の
形成とを別々の手順で行っている。
【0003】例えば、特開平11−192713号公報
によれば、まず、単結晶シリコン基板の両面を熱酸化し
て、二酸化シリコン層を形成し、そのうち一方の二酸化
シリコン層の上に白金からなる下部電極を積層する。そ
して下部電極上に、圧電体の前駆体薄膜層(非晶質)を
ゾルゲル法によって形成する。これを所定のアルカリ溶
液中で水熱処理すると前駆体薄膜層が結晶化し、PZT
(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電体薄膜が形成され
る。次いで、圧電体薄膜上に白金からなる上部電極を形
成する。
【0004】一方、単結晶シリコン基板の他方の面に形
成された二酸化シリコン層には、表面にフォトレジスト
を形成して所定パターンで二酸化シリコン膜に開口を形
成する。更に二酸化シリコン膜をマスクとして、単結晶
シリコン基板を異方性エッチングすることにより、イン
ク室が形成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うに圧電体素子の形成とインク室の形成を別々の工程で
行うと、各工程にそれぞれ時間がかかり、製造効率が十
分ではない。
【0006】本発明は、圧電体素子の形成工程、特に圧
電体の前駆体膜(非晶質)を結晶化させる工程と、イン
ク室の形成工程、特に単結晶シリコン基板にインク室
(キャビティ)を形成する工程とを同時に行うことを可
能とし、インクジェット式記録ヘッドの製造にかかる時
間を短縮することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本願の請求項1に記載された発明は、インク室が形
成される基板の一方の面に、振動板を形成する工程と、
前記振動板に圧電体素子を形成するために、圧電体の前
駆体薄膜層を形成する前駆体薄膜層形成工程と、前記基
板に前記インク室を形成するために、前記基板の他方の
面に、保護層をパターン形成する保護層形成工程と、前
記振動板と、前記前駆体薄膜層と、前記保護層とを備え
た前記基板に対し、所定のアルカリ水溶液中における水
熱処理を実行することにより、前記前駆体薄膜層を結晶
化させるとともに前記基板のうち前記保護層形成部以外
の部分にインク室を形成する水熱処理工程と、前記基板
の前記他方の面に形成された前記インク室の開口をノズ
ル板で封止する工程とを備える、インクジェット式記録
ヘッドの製造方法である。
【0008】これにより、前駆体薄膜層の結晶化工程と
インク室形成工程を同時に実行することができるので、
製造効率が向上する。
【0009】また、本願の請求項2に記載された発明
は、請求項1に記載のインクジェット式記録ヘッドの製
造方法であって、前記前駆体薄膜層の形成後、当該前駆
体薄膜層の所定部分を除去する工程を備え、前記水熱処
理により、前記除去する工程により残された前記前駆体
薄膜層を結晶化させる、インクジェット式記録ヘッドの
製造方法である。
【0010】圧電体の前駆体薄膜層を結晶化させる前に
所定部分をイオンミリングによって除去する工程を行う
ので、前駆体薄膜層(非晶質)のスパッタ率が高く、加
工時間を短縮することができる。また、圧電体の結晶化
後にイオンミリングにより所定部分を除去する工程を行
うと、圧電体のエッジ部分にダメージ層(非晶質層)が
できてしまうが、本方法では圧電体の結晶化前に所定部
分の除去工程を行うので、かかるダメージ層はできな
い。
【0011】また、本願の請求項3に記載された発明
は、請求項1に記載のインクジェット式記録ヘッドの製
造方法であって、前記振動板を形成する工程は、前記基
板の一方の面に下部電極を形成する工程を含み、前記前
駆体薄膜層の形成後、当該前駆体薄膜層上に上部電極を
形成する工程と、前記上部電極および前記前駆体薄膜層
の所定部分を除去する工程とを更に備え、前記水熱処理
により、前記除去する工程により残された前記前駆体薄
膜層を結晶化させる、インクジェット式記録ヘッドの製
造方法である。
【0012】圧電体前駆体膜の所定部分を除去する前に
上部電極を形成するので、上部電極の形成を容易に行う
ことができる。
【0013】また、本願の請求項4に記載された発明
は、インク室が形成される基板と、前記基板の一方の面
に固定される振動板と、前記振動板に備えられる圧電体
素子と、基板の他方の面に形成されるインク室の開口を
封止するノズル板とを備えるインクジェット式記録ヘッ
ドの製造方法において、前記インク室を形成するため
に、前記基板の前記他方の面に保護層をパターン形成す
る保護層形成工程と、前記圧電体素子を形成するため
に、所定のアルカリ溶液中における少なくとも1回の水
熱処理を実行する水熱処理工程とを備え、前記少なくと
も1回の水熱処理により、前記基板のうち前記保護層形
成部以外の部分にインク室を形成する、インクジェット
式記録ヘッドの製造方法である。
【0014】また、本願の請求項5に記載された発明
は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインクジェ
ット式記録ヘッドの製造方法であって、前記水熱処理
は、水酸化バリウム溶液(Ba(OH))、水酸化バリ
ウムと水酸化カリウムとの混合溶液(Ba(OH)+K
OH)、水酸化バリウムと水酸化鉛と水酸化カリウムと
の混合溶液(Ba(OH)+Pb(OH)+KOH)、
水酸化ストロンチウム溶液(Sr(OH))、水酸化ス
トロンチウムと水酸化カリウムとの混合溶液(Sr(O
H)+KOH)、水酸化ストロンチウムと水酸化バリ
ウムと水酸化カリウムとの混合溶液(Sr(OH)+B
a(OH)+KOH)、水酸化ストロンチウムと水酸化
鉛と水酸化カリウムとの混合溶液(Sr(OH)+Pb
(OH)+KOH)、または水酸化鉛と水酸化カリウム
との混合溶液(Pb(OH)+KOH)のいずれかを使
用する、インクジェット式記録ヘッドの製造方法であ
る。
【0015】また、本願の請求項6に記載された発明
は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインクジェ
ット式記録ヘッドの製造方法であって、前記水熱処理
は、120℃乃至200℃の温度下で行う、インクジェ
ット式記録ヘッドの製造方法である。
【0016】また、本願の請求項7に記載された発明
は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のインクジェ
ット式記録ヘッドの製造方法であって、前記水熱処理
は、2気圧乃至20気圧の圧力下で行う、インクジェッ
ト式記録ヘッドの製造方法である。
【0017】また、本願の請求項8に記載された発明
は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のインクジェ
ット式記録ヘッドの製造方法であって、前記水熱処理の
処理時間は、15分乃至90分である、インクジェット
式記録ヘッドの製造方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態につき
図面を参照して説明する。
【0019】(インクジェット式記録ヘッドの全体構
成)図1は、本発明の1実施形態にかかる製造方法によ
り製造されるインクジェット式記録ヘッドの構造を示す
説明図である。インクジェット式記録ヘッド1は、イン
ク室基板20と、その一方の面に固定された振動板30
と、他方の面に固定されたノズル板10とを備えて構成
されている。このヘッド1は、オンデマンド形のピエゾ
ジェット式ヘッドを構成している。
【0020】インク室基板20は、キャビティ(インク
室)21、側壁(隔壁)22、リザーバ23および供給
口24を備えている。キャビティ21は、シリコン等の
基板をエッチングすることにより形成されたインクなど
を吐出するために貯蔵する空間となっている。側壁22
は複数のキャビティ21間を仕切るよう形成されてい
る。リザーバ23は、インクを共通して各キャビティ2
1に充たすための流路となっている。供給口24は、リ
ザーバ23から各キャビティ21にインクを導入可能に
形成されている。なおキャビティ21などの形状はイン
クジェット方式等によって種々に変形可能である。
【0021】ノズル板10は、インク室基板20に設け
られたキャビティ21の各々に対応する位置にそのノズ
ル穴11が配置されるよう、インク室基板20に貼り合
わせられている。ノズル板10を貼り合わせたインク室
基板20は、筐体25に納められて、インクジェット式
記録ヘッド1を構成している。
【0022】振動板30には圧電アクチュエータ(後
述)が設けられている。振動板30には、インクタンク
口(図示せず)が設けられて、図示しないインクタンク
に貯蔵されているインクをリザーバ23に供給可能にな
っている。
【0023】(層構造)図2に、本発明の製造方法によ
って製造されるインクジェット式記録ヘッドおよび各圧
電アクチュエータ40の層構造を説明する断面図を示
す。図に示すように、振動板30は、絶縁膜31および
下部電極33を積層して構成され、圧電アクチュエータ
40は圧電体薄膜層41および上部電極42を積層して
構成されている。
【0024】絶縁膜31は、導電性のない材料、例えば
二酸化珪素により構成され、圧電体層の変形により変形
し、キャビティ21の内部の圧力を瞬間的に高めること
が可能に構成されている。
【0025】下部電極33は、圧電体層に電圧を印加す
るための一方の電極であり、導電性を有する材料、例え
ば、白金(Pt)などにより構成されている。下部電極
33は、インク室基板20上に形成される複数の圧電ア
クチュエータに共通な電極として機能するように絶縁膜
31と同じ領域に形成される。ただし、圧電体薄膜層4
1と同様の大きさに、すなわち上部電極と同じ形状に形
成することも可能である。下部電極33と絶縁膜31と
の間には、密着層32、例えばチタン(Ti)層が形成
されている。上部電極42は、圧電体層に電圧を印加す
るための他方の電極となり、導電性を有する材料、例え
ば白金(Pt)で構成されている。
【0026】圧電体薄膜層41は、例えばペロブスカイ
ト構造を持つ圧電性セラミックスの結晶であり、振動板
30上に所定の形状で形成されて構成されている。
【0027】圧電体薄膜層41の組成は、例えばジルコ
ニウム酸チタン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O:PZ
T)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)Ti
)、ジルコニウム酸鉛ランタン((Pb,La)Z
rO)またはマグネシウムニオブ酸ジルコニウム酸チ
タン酸鉛(Pb(Mg、Nb)(Zr、Ti)O:P
MN−PZT)のうちいずれかの圧電性セラミックスな
どである。ただし上記組成に限定されるものではない。
【0028】(インクジェット式記録ヘッドの動作)上
記インクジェット式記録ヘッド1の動作を説明する。所
定の吐出信号が供給されず圧電アクチュエータ40の下
部電極33と上部電極42との間に電圧が印加されてい
ない場合、圧電体薄膜層41には変形を生じない。吐出
信号が供給されていない圧電アクチュエータ40が設け
られているキャビティ21には、圧力変化が生じず、そ
のノズル穴11からインク滴は吐出されない。
【0029】一方、所定の吐出信号が供給され圧電アク
チュエータ40の下部電極33と上部電極42との間に
一定電圧が印加された場合、圧電体薄膜層41に変形を
生じる。吐出信号が供給された圧電アクチュエータ40
が設けられているキャビティ21ではその振動板30が
大きくたわむ。このためキャビティ21内の圧力が瞬間
的に高まり、ノズル穴11からインク滴が吐出される。
細長いヘッド中で印刷させたい位置の圧電アクチュエー
タに吐出信号を個別に供給することで、任意の文字や図
形を印刷させることができる。
【0030】(製造方法)次に、本実施形態にかかる製
造方法について説明する。図3及び図4は、本実施形態
にかかる製造方法の工程を示す説明図である。
【0031】(S1:積層工程)図3(S1)の工程で
は、まず、面方位(110)を有する厚さ200μmの
単結晶シリコン基板20上に、シリコン酸化膜等の絶縁
膜31を例えば1μm程度の膜厚に形成する。シリコン
酸化膜は、シリコン基板20の表面を湿式熱酸化するこ
とにより形成される。
【0032】次に、シリコン酸化膜31上に、膜厚が
0.005〜0.04μm程度のチタン膜(チタン、酸
化チタン)32を、例えば直流スパッタ法により形成す
る。このチタン膜32は、シリコン酸化膜31と下部電
極33との密着性を向上させる。このチタン膜上に、白
金(Pt)等の導電性金属からなる下部電極33を、例
えば直流スパッタ法により、0.2〜0.8μm程度の
膜厚で形成する。
【0033】(前駆体薄膜層の形成)次に、この下部電
極33上に圧電体の前駆体薄膜であるPZT前駆体膜を
形成する。この実施形態では、Pb(Zr0.56
0.44)O3で示されるPZTの前駆体薄膜層41’
を、次に示すゾルゲル法を用いて形成する。
【0034】この製造方法では、PZT膜を形成可能な
金属成分の水酸化物の水和錯体、すなわちゾルを下部電
極33上に塗布し、脱水処理してゲル化し、更に脱脂さ
せて、膜厚1μm〜5μm程度のPZT膜の前駆体薄膜
層41’を形成する。
【0035】PZT膜を構成する金属成分のゾルは、P
ZT膜を形成可能な金属のアルコキシドまたはアセテー
トを、例えば酸で加水分解して調整することができる。
ゾル中の金属の組成を制御することで、前述したPZT
膜の組成を得ることができる。すなわち、チタン、ジル
コニウム、鉛、さらに必要に応じて他の金属成分のそれ
ぞれのアルコキシドまたはアセテートを出発原料とす
る。
【0036】例えば、2−n−ブトキシエタノール中に
チタニウムテトライソプロポキシド、ペンタエトキシニ
オブおよびテトラ−n−プロポキシジルコニウムを混入
し、室温下で15分間攪拌する。次いでジエタノールア
ミンを加えて室温下でさらに15分間攪拌する。酢酸鉛
三水和物と酢酸マグネシウム四水和物をジルコニウムア
セチルアセトナートとともに加え75℃に加温する。加
温した状態で30分間攪拌し、その後室温になるまで自
然冷却する。
【0037】そして、このゾル組成物をPZT膜が形成
される下部電極33上に塗布する。この時の塗布方法は
特に限定されず、通常行われている方法、例えば、スピ
ンコート、ディップコート、ロールコート、バーコート
等によって行うことができる。また、フレキソ印刷、ス
クリーン印刷、オフセット印刷等によって塗布すること
もできる。
【0038】例えばスピンコート法を用いる場合には、
毎分500回転で30秒、毎分1500回転で30秒、
最後に毎分500回転で10秒間塗布する。塗布した段
階では、PZTを構成する各金属原子は有機金属錯体と
して分散している。塗布後、一定温度で一定時間乾燥さ
せる。例えば、180℃程度で10分程度乾燥させる。
乾燥後、さらに大気雰囲気下において一定の脱脂温度で
一定時間脱脂する。例えば350℃程度で60分間程度
脱脂する。脱脂により金属に配位している有機物が金属
から解離し酸化燃焼反応を生じ、大気中に飛散する。
【0039】このゾルの塗布→乾燥→脱脂の各工程を所
定回数、例えば4回繰り返して4層からなる圧電体前駆
体薄膜層41’を積層する。多層化するのはクラックの
発生を防止しながら厚膜化するためである。
【0040】(上部電極の形成)次に、圧電体の前駆体
薄膜層41’上に、白金(Pt)等の上部電極42を厚
さ約200nmに成膜する。上部電極42は、電子ビー
ム蒸着法、スパッタ法等により形成される。上部電極4
2の形成により、S1の積層工程を終了する。
【0041】(S2:前駆体パターニング工程)図のS
2に示すように、上部電極42及び圧電体の前駆体薄膜
層41’を、イオンミリングによってパターニングす
る。ここでは、図1のキャビティ21の各位置に対応し
て圧電体素子が形成されるようにするため、島状に前駆
体薄膜層41’及び上部電極42を残し、それ以外の部
分が除去されるようにパターニングする。
【0042】本実施形態は、このように前駆体薄膜層4
1’が非晶質であって後述の水熱処理により結晶化され
る前にパターニングを行う。従って、結晶化された圧電
体をパターニングするのに比べてスパッタ率が高くな
り、パターニングの時間が短くて済む。
【0043】逆に前駆体薄膜層を結晶化させてからパタ
ーニングを行うと、イオンミリングによってPZT結晶
の表面がダメージを受け、厚さ10nm〜20nm程度
の非晶質層が形成されてしまう。この非晶質層は、電圧
印加時の電流路となる可能性もあって好ましくない。本
実施形態ではそのような非晶質層が生じないので、良好
な圧電特性を得ることができる。
【0044】(S3:保護層形成工程)次いで、図のS
3に示すように、PZT前駆体薄膜層41’とは反対側
の基板20上に、保護層51を形成する。基板中、保護
層51により覆われる部分は図1に示される側壁22と
なり、覆われない部分は後の処理で除去されてキャビテ
ィ21となる。従って保護層は、網状に形成される。
【0045】保護層51の材質としては種々のものが考
えられるが、例えば二酸化珪素(SiO)でもよい。
この場合、シリコン基板20の表面全体を熱酸化して二
酸化珪素の層を形成し、側壁22となる所定部分をマス
キングして弗酸と弗化アンモニウムの混合液を用いてパ
ターニングする。残った二酸化珪素の層が保護層51と
なる。
【0046】(S4:水熱処理工程)次いで、この基板
20に水熱処理法を適用する。すなわち、S4に示すよ
うに、圧力を加えることが可能に構成されている水槽1
00にアルカリ性溶液101、例えば、0.1[mol/
l]のBa(OH)及び0.1[mol/l]のK(OH)の
溶液を満たす。基板20を水槽100に浸し、オートク
レーブ中で加熱する。
【0047】なお、アルカリ水溶液の組成は、上記水酸
化バリウムと水酸化カリウムとの混合溶液に限らず、水
酸化バリウム溶液(Ba(OH))、水酸化バリウムと
水酸化鉛と水酸化カリウムとの混合溶液(Ba(OH)
+Pb(OH)+KOH)、水酸化ストロンチウム溶液
(Sr(OH))、水酸化ストロンチウムと水酸化カリ
ウムとの混合溶液(Sr(OH)+KOH)、水酸化ス
トロンチウムと水酸化バリウムと水酸化カリウムとの混
合溶液(Sr(OH)+Ba(OH)+KOH)、水酸
化ストロンチウムと水酸化鉛と水酸化カリウムとの混合
溶液(Sr(OH)+Pb(OH)+KOH)、または
水酸化鉛と水酸化カリウムとの混合溶液(Pb(OH)
+KOH)のいずれかを使用することもできる。
【0048】水熱処理の条件として、処理温度は、12
0℃乃至200℃の範囲内の温度で実施することが好ま
しい。この範囲より低い温度では結晶化が促進されず、
この範囲より高い温度では、圧電体薄膜層がエッチング
されるからである。例えば処理温度を150℃程度にす
る。
【0049】オートクレーブの圧力は、2気圧乃至20
気圧の範囲内の圧力であることが好ましい。この範囲か
らはずれる圧力では、良好な結晶が得られないからであ
る。例えば圧力を6気圧程度にする。
【0050】処理時間は、15分乃至90分の範囲内の
時間で実施することが好ましい。この範囲より短い時間
では十分な結晶ができず、この範囲より長い時間では圧
電体薄膜層が侵食されたりするおそれがあるからであ
る。例えば処理時間を60分程度にする。
【0051】この水熱処理工程により、PZTの前駆体
薄膜層41’が結晶化されてペロブスカイト型の圧電体
薄膜層41が形成される。この前駆体薄膜層の結晶化に
は、溶液中、特にBa(OH)が寄与している。
【0052】この水熱処理工程により、同時に基板20
が保護層51により被覆された部分を除いて除去され、
キャビティ21が形成される。このキャビティ形成に
は、特にK(OH)が寄与している。上述の通り基板2
0は膜厚方向に(110)配向を有するので、膜厚方向
に対する侵蝕速度が他の方向に比べて速い。このため、
図のS4に示すように基板20が膜厚方向に侵蝕され、
キャビティ21が高精度で形成される。
【0053】(S5〜S6:保護層除去工程)基板20
をオートクレーブから取出し(S5)、キャビティ21
に隣接するシリコン基板20の下方表面の保護層51で
ある二酸化シリコン膜を、弗酸と弗化アンモニウムの混
合液でエッチング除去する(S6)。
【0054】(S7:ノズル板形成工程)このようにし
て得られたキャビティ21の開放面側に、インク吐出用
のノズル11を有するノズル板10を接合する等、所望
の工程を行い、インクジェット式プリンタに使用される
インクジェット式記録ヘッドを完成させる。
【0055】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
圧電体素子の形成工程、特に圧電体の前駆体膜(非晶
質)を結晶化させる工程と、インク室の形成工程、特に
単結晶シリコン基板にキャビティを形成する工程とを同
時に行うことを可能となるので、インクジェット式記録
ヘッドの製造にかかる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態にかかる製造方法により製
造されるインクジェット式記録ヘッドの構造を示す説明
図である。
【図2】上記インクジェット式記録ヘッドおよび各圧電
アクチュエータの層構造を説明する断面図である。
【図3】本実施形態にかかる製造方法の工程を示す説明
図である。
【図4】本実施形態にかかる製造方法の工程を示す説明
図である。
【符号の説明】
20:シリコン基板、31:シリコン酸化膜(絶縁
膜)、32:チタン膜、33:下部電極、41’:前駆
体薄膜層、41:圧電体薄膜層、42:上部電極、5
1:保護層、10:ノズル板

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インク室が形成される基板の一方の面
    に、振動板を形成する工程と、 前記振動板に圧電体素子を形成するために、圧電体の前
    駆体薄膜層を形成する前駆体薄膜層形成工程と、 前記基板に前記インク室を形成するために、前記基板の
    他方の面に、保護層をパターン形成する保護層形成工程
    と、 前記振動板と、前記前駆体薄膜層と、前記保護層とを備
    えた前記基板に対し、所定のアルカリ水溶液中における
    水熱処理を実行することにより、前記前駆体薄膜層を結
    晶化させるとともに前記基板のうち前記保護層形成部以
    外の部分にインク室を形成する水熱処理工程と、 前記基板の前記他方の面に形成された前記インク室の開
    口をノズル板で封止する工程とを備える、インクジェッ
    ト式記録ヘッドの製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のインクジェット式記録
    ヘッドの製造方法であって、 前記前駆体薄膜層の形成後、当該前駆体薄膜層の所定部
    分を除去する工程を備え、 前記水熱処理により、前記除去する工程により残された
    前記前駆体薄膜層を結晶化させる、インクジェット式記
    録ヘッドの製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載のインクジェット式記録
    ヘッドの製造方法であって、 前記振動板を形成する工程は、前記基板の一方の面に下
    部電極を形成する工程を含み、 前記前駆体薄膜層の形成後、当該前駆体薄膜層上に上部
    電極を形成する工程と、前記上部電極および前記前駆体
    薄膜層の所定部分を除去する工程とを更に備え、 前記水熱処理により、前記除去する工程により残された
    前記前駆体薄膜層を結晶化させる、インクジェット式記
    録ヘッドの製造方法。
  4. 【請求項4】 インク室が形成される基板と、前記基板
    の一方の面に固定される振動板と、前記振動板に備えら
    れる圧電体素子と、基板の他方の面に形成されるインク
    室の開口を封止するノズル板とを備えるインクジェット
    式記録ヘッドの製造方法において、 前記インク室を形成するために、前記基板の前記他方の
    面に保護層をパターン形成する保護層形成工程と、 前記圧電体素子を形成するために、所定のアルカリ溶液
    中における少なくとも1回の水熱処理を実行する水熱処
    理工程とを備え、 前記少なくとも1回の水熱処理により、前記基板のうち
    前記保護層形成部以外の部分にインク室を形成する、イ
    ンクジェット式記録ヘッドの製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の
    インクジェット式記録ヘッドの製造方法であって、前記
    水熱処理は、 水酸化バリウム溶液(Ba(OH))、 水酸化バリウムと水酸化カリウムとの混合溶液(Ba
    (OH)+KOH)、 水酸化バリウムと水酸化鉛と水酸化カリウムとの混合溶
    液(Ba(OH)+Pb(OH)+KOH)、 水酸化ストロンチウム溶液(Sr(OH))、 水酸化ストロンチウムと水酸化カリウムとの混合溶液
    (Sr(OH)+KOH)、 水酸化ストロンチウムと水酸化バリウムと水酸化カリウ
    ムとの混合溶液(Sr(OH)+Ba(OH)+KO
    H)、 水酸化ストロンチウムと水酸化鉛と水酸化カリウムとの
    混合溶液(Sr(OH) +Pb(OH)+KOH)、ま
    たは水酸化鉛と水酸化カリウムとの混合溶液(Pb(O
    H)+KOH)のいずれかを使用する、インクジェッ
    ト式記録ヘッドの製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の
    インクジェット式記録ヘッドの製造方法であって、 前記水熱処理は、120℃乃至200℃の温度下で行
    う、インクジェット式記録ヘッドの製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の
    インクジェット式記録ヘッドの製造方法であって、 前記水熱処理は、2気圧乃至20気圧の圧力下で行う、
    インクジェット式記録ヘッドの製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の
    インクジェット式記録ヘッドの製造方法であって、 前記水熱処理の処理時間は、15分乃至90分である、
    インクジェット式記録ヘッドの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010036152A (ja) * 2008-08-07 2010-02-18 Utec:Kk 反応装置及び反応方法

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