JP2001129371A - 寒天及び/又はアガロースを含有する化合物とセリシンとを含む混合物からなる膜及びその製造法 - Google Patents

寒天及び/又はアガロースを含有する化合物とセリシンとを含む混合物からなる膜及びその製造法

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JP2001129371A
JP2001129371A JP31845499A JP31845499A JP2001129371A JP 2001129371 A JP2001129371 A JP 2001129371A JP 31845499 A JP31845499 A JP 31845499A JP 31845499 A JP31845499 A JP 31845499A JP 2001129371 A JP2001129371 A JP 2001129371A
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film
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agar
sericin
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Masakazu Yoshikawa
正和 吉川
Akira Murakami
章 村上
Yoji Okushita
洋司 奥下
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Ube Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 膜厚のバラツキが小さく、表面平滑性の良好
な寒天及び/又はアガロースを含有する膜およびその製
造法の提供。 【解決手段】 寒天及び/又はアガロースを含有する化
合物にセリシンを加え、必要に応じて水を加えた混合物
をシート状ゲルとした後、該シート状ゲルに0.01〜
2kgf/cm2の荷重を加えながら、0〜40℃で乾
燥することにより寒天及び/又はアガロースを含有する
膜を得る。寒天及び/又はアガロースを含有する化合物
とセリシンを含む混合物からなるシート状ゲルの片面あ
るいは両面を多孔性材料及び/又は吸水性材料で積層し
て、荷重を加えながら、0〜40℃で乾燥後、多孔性材
料及び/又は吸水性材料を取り除くことにより、より効
率的に寒天及び/又はアガロースを含有する膜が製造で
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、寒天及び/又はア
ガロースを含有する化合物とセリシンを含む混合物から
なる膜及びその製造法に関する。この膜は厚みのバラツ
キが小さく、表面平滑性の良好な膜で、分離膜用材料な
ど機能材料としての利用が期待されている。
【0002】
【従来の技術】寒天は、テングサを乾燥して熱湯で浸出
し冷却凝固した、いわゆる「ところてん」を凍結乾燥し
たものであり、主成分はD−ガラクトースと3,6−ア
ンヒドロ−L−ガラクトースのα1,3結合及びβ1,
4結合の繰り返し単位からなるが、一部に、β1,3結
合及びα1,4結合の繰返し単位やD−ガラクトースに
ピルビン酸がアセタール結合した単位や硫酸エステル化
ガラクタン単位を含むものである。一方、アガロースは
寒天の約70%を占める多糖類であり、1,3位で結合
されたβ−D−ガラクトースと1,4位で結合された
3,6−アンヒドロ−α−L−ガラクトースとの交互結
合からなり、分子中に多数の遊離水酸基を有するゲルの
状態になり易い中性多糖類である。一般に、寒天やアガ
ロースはゲルとして利用されることが多く、特に、ゲル
になり易いアガロースは、生体物質の分離を目的とした
電気泳動用ゲルや植物育成用培地などに多く利用されて
いる。また、分子中に多くの遊離水酸基を有するため、
水酸基の水素結合相互作用を利用した新規材料や機能材
料としての用途も開発が進められている。一方、寒天及
びアガロースは安全性が高く、廃棄する場合にも環境に
悪影響を及ぼすことが無いため、この点からも注目され
ている材料である。
【0003】一般に、寒天及び/又はアガロースに水を
加えて加熱すると均一な水溶液が得られ、これを約40
℃以下の温度に冷却するとゲルになることが知られてい
る。寒天のゲルは、例えば、食品用途(特開平8−70
808号公報など)、医薬品・化粧品用途(特開平9−
202713号公報など)、植物や菌体用培地の用途
(特開平5−227992号公報など)、金属及びセラ
ミック成形用助剤の用途などに利用されている。
【0004】一方、アガロースのゲルは、酵素・抗体・
レセプターなどのタンパク質、核酸、糖類などの生体物
質の分離を目的とした高性能電気泳動用ゲルや生化学反
応における反応物質供給用媒体などに利用されている。
【0005】上記のように寒天やアガロースをゲルとし
て利用する用途は数多く知られているが、シート、フィ
ルムあるいは膜(本願では、シート、フィルム、膜など
を総称して「膜」と記載することがある。)の状態にし
て、工業的に利用される例は、ほとんど知られていな
い。この原因の一つは、寒天及び/又はアガロースから
厚みのバラツキが小さい、膜の表面や内部に大きなボイ
ドが発生しない、表面平滑性が良好などの特徴を有する
膜を製造することが難しい点にあった。従来、寒天及び
/又はアガロースを含有する化合物から厚みのバラツキ
が小さく、表面平滑性の良好な膜を製造する方法に関す
る提案は見あたらない。膜の製造を目的としたもので無
いが、特開平5−9208号公報に、エチレン性二重結
合を有する単量体を重合する場合の重合容器内壁面に付
着させる重合体スケール防止剤として、重合容器内壁面
に寒天及びアガロースからなる群より選択された少なく
とも一種の化合物から塗膜を形成させるという技術が開
示されている。この塗膜の製造方法は、寒天及び/又は
アガロースを含む組成物の0.1〜1%の溶液を、この
溶液がゲル状態にならない温度、通常、40℃以上の温
度に加熱した重合容器内壁面の金属に塗布し、ゲル状態
とならない40℃以上の温度を保ちながら乾燥する方法
を提案している。
【0006】この提案は、寒天及び/又はアガロースを
含有する化合物から膜を製造する方法に利用できるが、
膜表面に窪みができ、凹凸があったり、膜の厚みにバラ
ツキがあったり、膜の表面や内部に数mmの大きさのボ
イドがあったり、また、生成した塗膜が金属表面に接着
して、剥がすことが難しかったりなどして、良好な膜を
得ることが困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、寒天
及び/又はアガロースを含有する化合物から、膜厚のバ
ラツキが小さく、表面平滑性の良好な膜及びその製造法
の提供にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、寒天及び
/又はアガロースを含有する化合物からなる膜厚のバラ
ツキが小さく、表面平滑性の良好な、すなわち、膜表面
に窪みなどの凹凸が少なく、膜の表面や内部に特性に影
響を与えるようなボイド、例えば、径が数mm以上のボ
イドの無い膜及びその製造法について鋭意検討を重ねた
結果、寒天及び/又はアガロースを含有する化合物にセ
リシンを加えた水溶液をつくり、この水溶液から寒天ゲ
ル及び/又はアガロースを含有する化合物とセリシンを
含むシート状ゲルをつくり、このシート状ゲルに特定範
囲の荷重を加えながら、特定の温度範囲で乾燥、脱水す
ることにより目的とする膜が得られることを見出し、本
発明に到達した。なお、寒天及び/又はアガロースを含
有する化合物がゲル生成に必要な水分を含んでいる場合
は、特に、水溶液としないで、そのままシート状ゲルを
生成させて荷重を加え、乾燥することで膜を製造できる
こともある。
【0009】すなわち、本発明の第1の発明は、寒天及
び/又はアガロースを含有する化合物とセリシンとを含
む混合物からなる膜である。
【0010】本発明の第2の発明は、寒天及び/又はア
ガロースを含有する化合物とセリシンとを含む混合物に
必要に応じて水を加えてシート状ゲルとした後、該シー
ト状ゲルに荷重を加えながら乾燥することにより寒天及
び/又はアガロースを含有する化合物とセリシンとを含
む混合物からなる膜の製造法である。
【0011】本発明の第3の発明は、寒天及び/又はア
ガロースを含有する化合物、セリシンを含む混合物から
なる膜の片面あるいは両面に多孔性材料及び/又は吸水
性材料とを積層した積層膜である。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、詳細に本発明を説明する。
本発明で使用される寒天及び/又はアガロースを含有す
る化合物は種々のタイプのものが市販されているが、い
ずれのタイプのものでも何らの制約なく用いることがで
きる。寒天及びアガロースを含有する化合物はそれぞれ
単独で使用しても良いし、両者を任意の割合で混合した
ものを使用することができる。寒天の主成分はD−ガラ
クトースと3,6−アンヒドロ−L−ガラクトースのα
1,3結合及びβ1,4結合の繰り返し単位からなる
が、一部に、β1,3結合及びα1,4結合の繰返し単
位やD−ガラクトースにピルビン酸がアセタール結合し
た単位や硫酸エステル化ガラクタン単位などを含んでい
ても良い。
【0013】アガロースは1,3位で結合されたβ−D
−ガラクトースと1,4位で結合された3,6−アンヒ
ドロ−α−L−ガラクトースとの交互結合からなり、分
子中に多数の遊離水酸基を有し、ゲルを生成し易い中性
多糖類である。また、寒天の約70%を占める多糖類で
あり、寒天から分離して得ることもできる。本発明の寒
天やアガロースを含有する化合物は、寒天やアガロース
がそれぞれ40〜100重量%、好ましくは、60〜1
00重量%含有されている化合物である。上記の構成成
分以外としては、公知の単糖類、植物性粘液質多糖類、
動物性粘液質多糖類、デンプン類やその誘導体やセルロ
ース誘導体などが挙げられる。また、本発明の目的を損
なわない範囲で、各種の天然高分子や合成高分子が含ま
れていても良い。
【0014】また、セリシンは絹糸の精練過程で排出さ
れる水溶性の硬質タンパク質である。アミノ酸の含有値
はフィブロインに似ているが、フィブロインよりグリシ
ン、アラニン、チロシンが少なく、セリン、グルタミン
酸、アスパラギン酸の多い化合物である。本発明では、
これらの性質を有する市販品は、特に、制約無く使用さ
れる。セリシンと寒天及び/又はアガロースを含有する
化合物との混合比率はゲルが生成する範囲であればなん
ら制限されず、通常、寒天及び/又はアガロースを含有
する化合物100重量部に対して、セリシン0.1〜
1,000重量部、好ましくは、1〜400重量部であ
る。
【0015】本発明の膜は、寒天及び/又はアガロース
を含有する化合物とセリシンとを、通常、水などの溶媒
に溶解し、ゲルの状態にしてから製造される。寒天及び
/又はアガロースを含有する化合物とセリシンとからの
ゲルの調製は、溶媒として水が好ましく用いられる。使
用される水の種類は特に制限されず、水道水、イオン交
換水、蒸留水など通常入手可能な水であれば使用でき
る。寒天及び/又はアガロースを含有する化合物とセリ
シンとは、同時に水に加えても良いし、どちらか一方を
水溶液としてから、残りの一方をその水溶液に加えても
良い。
【0016】また、ゲルを効率良くつくるため、この水
に他の適当な溶剤を混合しても良い。水に混合される溶
剤の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパ
ノール、ブタノールなどの脂肪族低級アルコール類、ア
セトン、エチルメチルケトンなどのケトン類、酢酸メチ
ル、酢酸エチルなどのエステル類あるいはアセトニトリ
ルなどの水溶性の有機溶剤を挙げることができる。これ
らは1種あるいは2種以上を水に混合して使用すること
ができる。水とこれらの溶剤とからなる溶液を使用する
場合、溶液中の水以外の溶剤の割合は、0より多く20
重量%以下、好ましくは0より多く10重量%以下であ
る。溶剤の割合が20重量%を越えると溶液を冷却した
時、寒天及び/又はアガロースが析出することがあり、
均一な状態のゲルが得られないことがある。
【0017】寒天及び/又はアガロースを含有する化合
物とセリシンと必要により加えられた水とからなる混合
物の溶液は、液温50℃より高い温度、好ましくは60
℃以上に加熱することにより得られる。50℃以下で
は、寒天及び/又はアガロースの溶解に著しく長時間を
要し、実用的ではない。溶液中の寒天及び/又はアガロ
ースの濃度は、溶液を40℃以下に冷却した場合、ゲル
状態となる濃度であれば特に制約はないが、通常、0.
01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%であ
る。濃度が0.01重量%未満の場合、得られるゲルの
強度が低くなりすぎることがあり、均一な状態でゲルに
荷重を加えることが難しくなる。また、濃度が10重量
%を越えると、溶液調製時に不溶物が生成したり、溶液
の粘度が高くなりすぎて、膜製造の作業性が悪くなった
り、表面平滑性の良い膜を得ることが難しくなったりす
ることがある。
【0018】膜製造にあたっては、ゲルの状態となった
寒天及び/又はアガロースを含有する化合物とセリシン
を含む混合物をシート状にして使用することが好まし
い。シート状の寒天及び/又はアガロースを含有する化
合物とセリシンを含む混合物とからなるゲルを調製する
方法は、寒天及び/又はアガロースを含有する化合物と
セリシンを含む混合物とを水などに溶解して得た溶液を
シャーレ、バットなどの底がフラットな容器に入れ、冷
却して造る方法が簡便な方法である。冷却する温度は、
0〜40℃、好ましくは0〜30℃である。冷却する温
度が40℃を越えると、ゲルを造るのに長時間を要し実
用的でない。また、0℃未満では溶液中の水が凍結する
ことがあり、膜製造に適した良好なゲルが得られないこ
とがある。シート状ゲルの厚さは、シートを製造する容
器の底面積とその容器に入れる溶液の量によって調節さ
れる。膜製造に使用されるシート状ゲルの厚さは得よう
とする膜の厚さによって異なるが、一般的には、厚さ
0.1〜10mmのシート状ゲルが、膜製造の作業性が
容易となるので、好ましい。
【0019】寒天及び/又はアガロースを含有する膜の
製造法の一例を以下に示す。得られたシート状ゲルから
製造しようとする膜の寸法(縦×横の大きさ)とほぼ同
じ寸法のシート状ゲルを切り出す。切り出されたシート
状ゲルに、そのまま所定量の荷重を加えるか、あるい
は、切り出されたシート状ゲルの片面又は両面にシート
状ゲルと同面積以上の多孔材料を積層した後、所定量の
荷重を加えるか、あるいは、シート状ゲルの片面又は両
面に多孔材料を積層した後、さらに、その片面又は両面
に吸水性材料を積層し、これに所定量の荷重を加えて、
0〜40℃の温度で保持し、寒天及び/又はアガロース
を含有する化合物とセリシンを含む混合物から得たシー
ト状ゲルから水分を除去、乾燥することにより、寒天及
び/又はアガロースを含有する化合物とヒセリシンを含
む混合物を含む膜は製造される。多孔材料や吸水性材料
はシート状ゲルの片面又は両面のいずれに使用しても良
いが、水分が効率良く除去できる、両面に使用した方が
良い。
【0020】以上の方法で得た膜は、寒天及び/又はア
ガロースを含有する化合物とセリシンを含む混合物を含
む膜単独でも使用できるし、寒天及び/又はアガロース
を含有する化合物とセリシンを含む混合物を含む膜と多
孔材料及び/又は吸水性材料と積層された積層膜として
使用することもできる。また、得られた寒天及び/又は
アガロースを含有する化合物とセリシンを含む混合物を
含む膜は、上記の特定条件下で製造するため、均一な状
態で脱水、乾燥ができ、膜厚のバラツキは小さく、膜表
面や内部に特性に影響を与えるような大きなボイドは存
在しない、表面平滑性の良い膜である。このような膜
は、寒天及び/又はアガロースを含有する化合物からも
得られるが、寒天及び/又はアガロースを含有する化合
物にセリシンを加えた方が、より容易に製造することが
できる。この理由は明確となっていないが、セリシンを
加えた方がより安定した、作業性の良いゲルが生成する
ためと考えられる。
【0021】上記で使用する多孔材料は膜状多孔体で膜
の表面から裏面まで連通した孔を有するものが好ましく
使用される。孔の径や空孔率に特に制約は無いが、孔径
は0.5mmより小さくほうがよく、空孔率は5%以
上、好ましくは、30%以上のものが良い。これら多孔
材料の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリテトラフロロ
エチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフ
ルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体、
ポリフッ化ビニリデン、酢酸セルロース、ナイロン6、
ナイロン66、ナイロン12、ポリエチレンテレフタレ
ート、ポリカーボネートなどの高分子多孔フィルムがあ
る。これらは特別に調製する必要はなく、市販の高分子
多孔フィルムが使用できる。なお、水や水蒸気を透過さ
せる特性を有する材料であれば、特に、多孔材料で無
い、空孔率0%の高分子フィルムを使用することも可能
である。また、寒天及び/又はアガロースを含有する膜
を単独で得ようとする場合、シート状ゲルとの接着性の
小さい多孔材料を積層することが好ましく、これらの具
体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテ
トラフロロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレ
ン、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレ
ン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどの疎水性高分子
が挙げられる。
【0022】シート状ゲルやシート状ゲルと多孔材料と
を積層したものの片面あるいは両面に積層する吸水性材
料は、上記多孔材料を透過してきた水分や水蒸気を吸収
してゲルの乾燥を促進するために使用される。従って、
吸水性を有する多孔材料が好ましく用いられる。これら
吸水性を有する多孔材料の具体例としては、ろ紙などの
紙類、セルロース、酢酸セルロース、ナイロンなどの親
水性高分子が挙げられる。これらの親水性高分子は、織
物、不織布などの形状で使用されることが多い。これら
吸水性を有する多孔材料は、吸湿状態により、適宜交換
することにより脱水が促進され、ゲルの乾燥をより効率
的に行うことができる。
【0023】上記のシート状ゲル、シート状ゲルと多孔
材料及び/又は吸水性材料とからなる積層物に加える荷
重は、できるだけシート面に垂直な方向から、シートの
ほぼ全面に均一に加えることが好ましい。荷重はシート
の片面又は両面のいずれから加えても、問題はないが、
出来るだけシート面に均一に加えることが好ましい。加
える荷重が部分的であったり、不均一であったりする
と、得られる膜の厚さにバラツキが発生して好ましくな
い。加える荷重はゲルの含水率、寒天及び/又はアガロ
ース、セリシンの種類などによって異なるが、一般的に
は、0.01〜2kgf/cm2である。加える荷重が
上記の範囲を外れる場合、得られる膜の厚さにバラツキ
が発生したり、膜表面に窪みができたり、膜の表面や内
部にボイドが発生することがある。
【0024】荷重を加えながらシート状ゲルを乾燥、脱
水する温度は、0〜40℃である。温度が0℃未満であ
ると、ゲル中の水分が凍ることがあり、良好な膜を得る
ことが難しくなる。また、40℃を越えた場合、ゲルが
溶解し、表面平滑性の良好な膜を得ることが難しくなっ
たり、膜の表面や内部にボイドが発生したりして、良好
な膜を得ることが難しくなる。
【0025】荷重を加えながらシート状ゲルを乾燥する
時間は、加える荷重や乾燥する温度によって適宜選択さ
れるが、一般的には、数時間から数週間である。
【0026】本発明の効果が阻害されない範囲で、本発
明の膜に熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止
剤、帯電防止剤、防腐剤、防かび剤、殺菌剤などを添加
することができる。
【0027】本発明の膜は、分子中に多数存在する水酸
基に基づく強固な分子間水素結合を有する分子構造のポ
リマー膜であり、ガスバリヤー材料や分離膜などの機能
材料としての利用が期待される。分離膜としては、例え
ば、本発明の膜でセリシンの配合比率が0.1〜60重
量%の膜は、エーテルとアルコールの混合溶液からアル
コールを選択的に透過し、エーテルとアルコールとを効
率的に分離することができる膜である。この膜は、特
に、メチル−t−ブチルエーテルとメタノールとの混合
溶液の分離に有効である。これらエーテルとアルコール
の混合溶液を分離する場合、膜の上流側を液体状態、下
流側を蒸気状態として使用すると効率的に分離できる。
また、寒天及び/又はアガロースを含有する化合物とセ
リシンとを含む混合物とからなる膜と各種の有機材料や
無機材料との複合化による新規材料の開発も期待されて
いる。
【0028】以下、実施例及び比較例により本発明を具
体的に説明する。
【0029】実施例1 200mlの三角フラスコに粉末アガロース(日本バイ
オ・ラボラトリーズ社製、アガローススタンダードLo
w−mr、Gel Strength≧1000g/c
2(1.0% gel))0.4g、セリシン(セー
レン社製、数平均分子量約20,000)0.4g及び
殺菌剤としてアジ化ナトリウム8mgを入れ、これにイ
オン交換水を加えて全量を40gにした。これを60℃
に加熱して均一な水溶液を調製した。この水溶液全量を
底が平滑な14cm×15cm四方のバットに入れ、水
平状態を保ちつつ室温で24時間保持することにより、
シート状のアガロースとセリシンからなるゲルを調製し
た。一方、水平な台の上に別のバットを準備し、このバ
ットに底から14cm×15cm四方のろ紙(アドバン
テック製、No.2)、14cm×15cm四方のポリ
テトラフロロエチレン製多孔フィルム(アドバンテック
製、平均孔径0.1μm)、先に調製したシート状アガ
ロースとセリシンからなるゲル、ポリテトラフロロエチ
レン製多孔フィルム、ろ紙の順に層状に重ね、その上か
らほぼ同じ寸法の21.9kgの重しを置き圧縮した
(荷重は約0.104kgf/cm2)。ろ紙を1〜2
日おきに新品と交換しながら、この状態で室温で15日
間乾燥した。その後、ポリテトラフロロエチレン製多孔
フィルム及びろ紙を取り外し、アガロースとセリシンか
らなる膜を得た。この膜は無色の透明性を有するフィル
ム状の表面平滑性の良い膜であり、膜厚は23〜25μ
mで、厚みのバラツキの小さい膜であった。なお、膜厚
は厚み計(DIGITAL MICROMETER M-30、Sony Magnesc
ale Inc.製)を使用し、膜の任意の5点を測定し、そ
の最大と最小の膜厚を、実施例、比較例に記載した。
【0030】実施例2 実施例1の粉末状アガロースにかえて粉末状寒天(和光
純薬工業製)0.4gを用いた以外は実施例1と同様に
実施した。得られた膜は無色の透明性を有するフィルム
状の表面平滑性の良い膜であり、膜厚は25〜31μm
で、バラツキの小さい膜であった。
【0031】実施例3 実施例1の粉末状アガロースにかえて粉末状アガロース
(日本バイオ・ラボラトリーズ社製、アガローススタン
ダードLow−mr、Gel Strength≧10
00g/cm2(1.0% gel))0.2gと粉末
状寒天(和光純薬工業製)0.2を用いた以外は実施例
1と同様に実施した。得られた膜は無色の透明性を有す
るフィルム状の表面平滑性の良い膜であり、膜厚は28
〜31μmで、厚みのバラツキが小さい膜であった。
【0032】実施例4 水溶液を調製するのに、200mlの三角フラスコに粉
末アガロース(日本バイオ・ラボラトリーズ社製、アガ
ローススタンダードLow−mr、Gel Stren
gth≧1000g/cm2(1.0% gel))
0.1g、セリシン(セーレン社製、数平均分子量約2
0,000)0.05g及び殺菌剤としてアジ化ナトリ
ウム4mgを入れ、これにイオン交換水を加えて全量を
20gにしたこと、及び、シート状のアガロースとセリ
シンとからなるゲルに重しを置き圧縮しながら乾燥する
時間を7日とした以外は実施例1と同様に実施した。得
られた膜は無色の透明性を有するフィルム状の表面平滑
性の良い膜であり、膜厚は10〜12μmで、厚みのバ
ラツキが小さい膜であった。
【0033】実施例5 水溶液を調製するのに、実施例1で使用した粉末アガロ
ースの使用量を1gとした以外は、実施例1と同様に実
施した。得られた膜は無色の透明性を有するフィルム状
の表面平滑性の良い膜で、膜厚は43〜55μmで、厚
みのバラツキの小さい膜であった。
【0034】実施例6 シート状ゲルに荷重をを加える重しの重量を21.9k
gから100kgに変更し(荷重は0.476kgf/
cm2)、乾燥時間を15日から5日に変更したこと以
外は実施例1と同様に実施した。得られた膜は無色の透
明性を有するフィルム状の表面平滑性の良い膜であり、
膜厚は28〜31μmで厚みのバラツキが小さい膜であ
った。
【0035】実施例7 シート状のアガロースとセリシンとからなるゲルの両面
に積層する高分子多孔フィルムがポリプロピレン製多孔
フィルム(宇部興産社製、空孔率43%、平均孔径0.
1〜0.2μm)である以外は実施例1と同様に実施し
た。得られた膜は無色の透明性を有するフィルム状の表
面平滑性の良い膜で、膜厚は26〜29μmで厚みのバ
ラツキが小さい膜であった。
【0036】実施例8 実施例1で調製したシート状ゲルの両面に酢酸セルロー
ス製多孔フィルム(アドバンテック、東洋濾紙社製、平
均孔径0.1μm)を用いた以外は実施例1と同様に実
施した。得られた膜はアガロースとセリシンとからなる
膜と酢酸セルロース製多孔フィルムが接着しており、膜
表面に窪みが観察されない、表面平滑性の良い積層膜で
あった。
【0037】比較例1 実施例1で調製したシート状ゲルの乾燥温度を−10℃
とした以外は実施例1と同様に実施した。得られた膜は
透明性が悪く、膜表面に窪みが5,6箇所あり、膜厚は
10〜30μmで厚みのバラツキは大きいものであっ
た。また、膜の内部に径1mm以上の孔が数個観察され
た。
【0038】比較例2 実施例1で調製したシート状ゲルの乾燥温度を45℃と
した以外は実施例1と同様に実施した。乾燥温度が40
℃をこえるために、ゲルが部分的に溶液となってシート
の外にはみ出し、均一に荷重できなかった。そのため、
膜表面に大きな窪みが数カ所ある膜であった。
【0039】
【発明の効果】寒天及び/又はアガロースからなる化合
物及びセリシンを含む混合物と必要に応じて水を加えて
作成したシート状ゲルに、0.01〜2kgf/cm2
の荷重を加えながら、0〜40どで乾燥することによ
り、従来、製造困難であった厚みのバラツキの小さい、
表面平滑性の良好な寒天及び/又はアガロースを含有す
る膜を得ることができる、この膜は分離膜など機能材料
用途で有望であり、安全性が高く、廃棄問題の少ない材
料である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4D006 GA25 HA41 HA42 JA02Z MA03 MA08 MA22 MA31 MB01 MC09 MC09X MC10 MC10X MC18X MC23X NA05 NA10 NA50 NA64 PA05 PB13 PB70

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 寒天及び/又はアガロースを含有する化
    合物とセリシンとを含む混合物からなる膜。
  2. 【請求項2】 寒天及び/又はアガロースを含有する化
    合物とセリシンとを含む混合物に必要に応じて水を加え
    てシート状ゲルとした後、該シート状ゲルに荷重を加え
    ながら乾燥することにより製造される請求項1記載の寒
    天及び/又はアガロースを含有する化合物とセリシンと
    を含む混合物からなる膜の製造法。
  3. 【請求項3】 請求項2記載のシート状ゲルに多孔性材
    料及び/又は吸水性材料を積層し、得られた積層物に
    0.01〜2kgf/cm2の荷重を加えながら、0〜
    40℃で乾燥した後、積層した多孔性材料及び/又は吸
    水性材料を取り除くことにより製造される請求項1記載
    の寒天及び/又はアガロースを含有する化合物とセリシ
    ンとを含む膜の製造法。
  4. 【請求項4】 寒天及び/又はアガロースを含有する化
    合物、セリシンを含む混合物からなる膜の片面あるいは
    両面に多孔性材料及び/又は吸水性材料とを積層した積
    層膜。
  5. 【請求項5】 寒天及び/又はアガロースを含有する化
    合物、セリシンとを含む混合物に必要に応じて水を加え
    て得たシート状ゲルの片面あるいは両面に多孔性材料及
    び/又は吸水性材料とを積層し、得られた積層物に0.
    01〜2kgf/cm2の荷重を加えながら、0〜40
    ℃で乾燥することにより製造される請求項4記載の積層
    膜の製造法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN106726681A (zh) * 2016-12-15 2017-05-31 浙江大学 一种用丝胶蛋白制备面膜贴的方法
CN108543112A (zh) * 2018-03-30 2018-09-18 西南大学 具有促进细胞增殖活性的丝胶-琼脂糖复合凝胶的制备方法及其产品
CN108578761A (zh) * 2018-04-12 2018-09-28 西南大学 负载溶菌酶的丝胶/琼脂糖凝胶的制备方法及其应用

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CN106726681B (zh) * 2016-12-15 2019-11-12 浙江大学 一种用丝胶蛋白制备面膜贴的方法
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