JP2001118294A - 光磁気記録媒体およびその製造方法 - Google Patents

光磁気記録媒体およびその製造方法

Info

Publication number
JP2001118294A
JP2001118294A JP29697599A JP29697599A JP2001118294A JP 2001118294 A JP2001118294 A JP 2001118294A JP 29697599 A JP29697599 A JP 29697599A JP 29697599 A JP29697599 A JP 29697599A JP 2001118294 A JP2001118294 A JP 2001118294A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
land
magneto
groove
recording medium
optical recording
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP29697599A
Other languages
English (en)
Inventor
Morimi Hashimoto
母理美 橋本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP29697599A priority Critical patent/JP2001118294A/ja
Publication of JP2001118294A publication Critical patent/JP2001118294A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 商業的に量産化を図ることが容易な、高いト
ラック間の分離が達成できる光磁気記録媒体の構造、な
らびにその製造方法の提供。 【解決手段】 ランド・グルーブ基板上に、第1の誘電
体層と磁性材料層を形成し、前記基板平面に対して、所
定の角度傾いた斜め上方からイオンビームを照射して、
磁性材料層の当初膜厚の一部を除去することで、磁性層
に実質的な分断を形成し、その後、第2の誘電体層を磁
性層上に形成してなる光磁気記録媒体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の族する技術分野】本発明は、超高密度な光磁気
記録媒体、ならびにその製造方法に関する。より具体的
には、ランド/グルーブ基板を用い、トラック密度を増
す構成の光磁気記録媒体において、このランド/グルー
ブ部に形成される磁気記録層のトラック間の分離性をよ
り高める構造、ならびにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】書き換え可能な高密度記録媒体として、
光磁気ディスクが近年注目され、また利用が広がってい
る。昨今、画像情報など、情報量のより大きな記録がな
されるようになり、さらに大容量の記録媒体が望まれ、
光磁気ディスクの記録密度をさらに高めた超高密度な光
磁気記録媒体に対する要求が高まっている。光磁気ディ
スクの線記録密度は、再生光学系のレーザー波長λ及び
対物レンズの開口数NAに大きく依存している。すなわ
ち、再生光学系における光の回折限界のため、検出限界
は、信号再生の空間周波数として、NA/λ程度となる。
したがって、光磁気ディスクの高密度化を図るため、再
生光学系のレーザー波長λを短くし、対物レンズの開口
数NAを大きくすることがなされきた。
【0003】例えば、本発明者らは、特開平6−290
496号公報において、光の回折限界以下の周期の信号
を再生する際にも、再生信号振幅の低下を引き起こすこ
とのない再生方式、その再生方式を採用し、高速での再
生を可能とした光磁気記録媒体、ならびに再生装置を提
案している。本発明者らが提案した再生方式は、以下の
原理に基づくものである。光ビーム等の加熱手段によっ
て、光磁気記録媒体の再生層に温度分布を形成すると、
その温度分布に起因して、磁壁エネルギー密度に分布が
生じる。この状況下では、磁壁エネルギーの低い方に磁
壁を瞬時に移動させることができる。この現象を利用す
ることにより、再生信号振幅は、記録されている磁壁の
間隔(すなわち、記録マーク長)によらず、常に一定か
つ最大の振幅となる。すなわち、従来の再生方式では、
再生信号の立ち上がり、立ち下がり部に、再生出力の低
下が必然的に生じていたが、本発明者らが提案した再生
方式では、この再生出力の低下を大幅に改善できる。そ
のため、記録マーク長をさらに短くし、線記録密度を高
めた際にも、再生信号に鋭い立ち上がり/立ち下がりが
得られ、さらなる高密度化を可能とするものである。
【0004】前記線記録密度の向上に加えて、トラック
密度の向上も進められている。一般に、(深溝の)ラン
ド・グルーブ基板を用いることによって、トラック相互
間の分離を図り、隣接トラックとの干渉を低減する方向
に進んでいる。このランド・グルーブ基板を利用するこ
とで、隣接するトラック間に上下の段差を設けることで
分離し、トラック密度も大幅に高めることが可能となっ
ている。
【0005】ところで、前記特開平6−290496号
公報に開示した磁壁移動型の光磁気記録媒体では、磁壁
を移動させる現象を実現するために、媒体に温度勾配を
形成することと、トラック幅いっぱいに記録磁区を形成
し、しかもトラック間では磁性層が分断している(磁区
の両端が切れていて磁区が閉じていない)ことが必須要
件となっている。
【0006】閉じていない磁区(分断された磁壁)を作
成する方法の一つとして、特開平6−290496号公
報では、矩形の深溝基板を用いる方法を提示している。
この矩形の深溝基板を用いる方法では、ランド・グルー
ブ基板のテーパ部を特に急峻とすることで、通常のスパ
ッタ装置を用いて磁性層等の薄膜を積層形成すると、溝
側壁と溝底部の境で積層される膜に途切れが生じ、これ
を用いて、閉じていない磁区(分断された磁壁)を得て
いる。すなわち、溝側壁への積層に伴い、膜原料が消費
され、溝側壁と溝底部の境に達する膜原料の枯渇が生じ
る。その結果、溝側壁と溝底部の境では、積層される膜
の厚さが極度に薄くなる。一方、ランド・グルーブ基板
上に、下地層と磁性層を垂直指向性の高い異方性成膜法
で形成する方法では、溝側壁には本質的に積層がなされ
ないので、ランドとグルーブの間にある溝側壁におい
て、積層される膜に途切れが生じる。その結果、ランド
とグルーブに形成されるトラックは、分断された磁壁を
持つものとなる。
【0007】更に、特開平6−290496号公報に
は、ランド・グルーブ基板上に形成した磁性膜におい
て、溝部分(テーパ部)をレーザーでアニール照射して
磁気的に変質させる方法をも提案している。
【0008】また、本出願人は、トラック間では磁性層
が分断している記録媒体を作製する別の手法として、特
開平10−275369号公報(特願平10−0033
79号)において、(深溝の)ランド・グルーブ基板上
に、下地層と磁性層を垂直指向性の高い異方性成膜法で
形成する方法を提案している。
【0009】さらには、前記磁壁移動型の光磁気記録媒
体に限らず、高密度な光磁気記録媒体及び磁気記録媒体
においても、トラック密度を向上させてゆくと、隣接ト
ラック間でのクロスライトやクロスイレースの問題で、
トラック間の分断は必須の技術となってきている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上で述べた、閉じてい
ない磁区(分断された磁壁)を作成する方法は、いずれ
も有力な手段ではある。これらの手段を適用して、極め
て高密度の光磁気記録媒体を量産する上では、克服しな
ければならない技術的な障害を残している。例えば、矩
形の深溝基板を用いる方法では、樹脂基板を成形して、
矩形の深溝を形成する必要があるが、高密度化に伴い溝
幅が極めて狭くなると、幅/深さのアスペクト比が高く
なり、成形時の転写性に問題が生じてくる。また、溝部
分をレーザーでアニール照射する方法でも、高密度化に
伴い溝幅が極めて狭くなると、アニール処理を施すべ
き、溝部分(テーパ部)幅も極めて狭くなる。レーザー
光自体のビーム径には限界があり、アニールによる磁性
層の変質部分が所望のトラック以外にも広がってしまう
懸念が増す。仮に、磁性層の変質部分が広がると、実際
の情報データ部として使える面積が狭まり、記録信号強
度の低下を引き起こす。結果として、利用可能なトラッ
ク密度が減少するといった問題が起こる。加えて、アニ
ール処理は、ディスク全面に行なうと、相当の時間を要
するため、記録媒体の量産性の面でネックとなってく
る。
【0011】また、深溝のランド・グルーブ基板上に、
下地層と磁性層を垂直指向性の高い異方性成膜法で形成
する方法も、テーパ部に僅かに成長する磁性膜の影響
は、溝幅が狭くなるにつれ、相対的に大きくなる。従っ
て、このテーパ部に僅かに成長する磁性膜を除くことが
望まれる。加えて、垂直指向性の高い異方性成膜法自
体、少数の記録媒体の作製に適用する場合には、格別、
装置上の制約はないが、量産化を図る際には、同時にプ
ロセスできる基板枚数の限界を克服するため、装置上の
大幅な改革が必要となる。
【0012】このように、現状の光磁気記録媒体自体、
優れた特性を持つが、商業的に量産化を図る上では、更
に有効なトラック間分断技術の確立が望まれるものであ
る。
【0013】本発明は、上記の課題を解決するもので、
本発明の目的は、商業的に量産化を図ることが容易な、
トラック間の分離が達成できる光磁気記録媒体の構造、
ならびにその製造方法を提供することにある。より具体
的には、ランド・グルーブ基板を用い、ランド部および
グルーブ部にトラックを形成する光磁気記録媒体におい
て、ランド部およびグルーブ部間の段差を形成するテー
パ部に残る磁性層膜厚を一層薄くする、あるいは、全く
除去された構造を量産性高く、再現性よく作製すること
を可能とする製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の課
題を解決すべく、鋭意検討を進める過程で、ランド・グ
ルーブ基板を用い、ランド部およびグルーブ部にトラッ
クを形成する光磁気記録媒体においては、ランド部およ
びグルーブ部と、その間の段差を形成するテーパ部に成
膜される磁性層膜厚は本来有意に違い、テーパ部に成膜
される磁性層膜厚は格段に薄い点に着目し、この差異を
利用して、テーパ部に成膜される磁性層をより選択的に
エッチングすることで、トラック間の分離が量産性よく
達成できることに想到した。加えて、その選択的エッチ
ングには、イオンビーム照射によるエッチングを適用す
ると、基板に対するイオンビーム照射角が異なると、エ
ッチング速度が異なる性質を利用して、ランド部および
グルーブ部と、その間の段差を形成するテーパ部におけ
るエッチング速度に、大きな差異を導入できることを見
出した。係る知見に基づき、本発明を完成するに至っ
た。
【0015】すなわち、本発明の光磁気記録媒体は、ラ
ンド・グルーブ基板上に、その基板表面に第1の誘電体
層、磁性層、第2の誘電体層がこの順に形成されてなる
光磁気記録媒体であって、前記磁性層は、当初膜厚の磁
性材料層を形成した後、前記ランド・グルーブ基板平面
に対して、所定の角度傾いた斜め上方からイオンビーム
を照射して、前記当初膜厚の一部を除去してなる磁性層
であり、前記当初膜厚の一部除去により、磁性層に実質
的な分断が形成されていることを特徴とする光磁気記録
媒体である。好ましくは、前記磁性層の実質的な分断
が、前記ランド・グルーブ基板のランド部とグルーブ部
間に設けるテーパ部に形成されていることを特徴とする
光磁気記録媒体とする。
【0016】更に好ましくは、前記イオンビームの照射
角は、前記ランド・グルーブ基板のランド部またはグル
ーブ部と、その間に設けるテーパ部とでは異なり、前記
テーパ部に対する照射角の方がより大きな角度に選択さ
れていることを特徴とする光磁気記録媒体とする。より
具体的には、前記テーパ部に対する照射角の方がより9
0°に近い角度に選択する。また、本発明の光磁気記録
媒体においては、前記イオンビーム照射により当初膜厚
の一部を除去してなる磁性層において、ランド部とグル
ーブ部においては膜厚が等しく、テーパ部においては、
前記ランド部とグルーブ部における膜厚より薄い膜厚で
ある、または、実質的に膜厚がない状態であると好まし
い。
【0017】また、本発明の光磁気記録媒体の製造方法
は、ランド・グルーブ基板上に、その基板表面に第1の
誘電体層、磁性層、第2の誘電体層がこの順に形成して
光磁気記録媒体を製造するに際し、当初膜厚の磁性材料
層を形成した後、前記ランド・グルーブ基板平面に対し
て、所定の角度傾いた斜め上方からイオンビームを照射
して、前記当初膜厚の一部を除去して、磁性層に実質的
な分断を形成することを特徴とする光磁気記録媒体の製
造方法である。好ましくは、前記磁性層の実質的な分断
を、前記ランド・グルーブ基板のランド部とグルーブ部
間に設けるテーパ部に形成することを特徴とする光磁気
記録媒体の製造方法とする。
【0018】更に好ましくは、前記イオンビーム照射角
を、前記ランド・グルーブ基板のランド部またはグルー
ブ部と、その間に設けるテーパ部とでは異なり、前記テ
ーパ部に対する照射角の方がより大きな角度に選択する
ことを特徴とする光磁気記録媒体の製造方法とする。よ
り具体的には、前記テーパ部に対する照射角の方がより
90°に近い角度に選択する。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の光磁気記録媒体では、ラ
ンド・グルーブ基板上に、第1の誘電体層、磁性層、第
2の誘電体層から形成される光磁気記録領域が、ランド
部およびグルーブ部上にトラック状に形成される。前記
ランド部とグルーブ部の間には、段差がテーパ部として
設けられ、ランド部とグルーブ部は、ランド・グルーブ
基板平面と平行に形成されるが、テーパ部は、基板平面
と所定の角度を持つように形成されている。ランド・グ
ルーブ基板上に、ランド部とグルーブ部上において、そ
の当初膜厚が等しくなるように、磁性材料層を形成する
と、テーパ部に形成される磁性材料層の当初膜厚は、ラ
ンド部とグルーブ部上の当初膜厚と異なったものとな
る。通常、テーパ部に形成される磁性材料層の当初膜厚
は、ランド部とグルーブ部上の当初膜厚より薄くなる。
【0020】本発明では、その後、この磁性材料層を、
ランド・グルーブ基板の斜め上方からイオンビームでド
ライエッチングするが、その時、ランド部とグルーブ部
に対してはイオンビーム照射角度が実質的に同じである
のに対して、テーパ部に対してはイオンビーム照射角度
が本質的に異なる。イオンビーム照射角度が異なると、
エッチングレートも異なる。このことを利用して、テー
パ部におけるエッチングレートが、ランド部(ならびに
グルーブ部)より相対的に大きくなるように、イオンビ
ーム照射角度を選ぶことことができる。
【0021】この条件(イオンビーム照射角)下で、イ
オンビームエッチングを施すと、相対的には、テーパ部
において、磁性材料層がより多く削られる。当初膜厚自
体、テーパ部に形成される磁性材料層は、より薄いの
で、前記のイオンビームエッチングを施すと、テーパ部
とランド部(ならびにグルーブ部)における、磁性材料
層の膜厚比は一層大きなものとなる。結果的に、テーパ
部の磁性層を選択的に除去することが可能となる。
【0022】なお、このイオンビームエッチングに際
し、相対的にテーパ部より少ないが、ランド部(及びグ
ルーブ部)の磁性層もエッチングされるので、最終的に
所望の膜厚となるように、削られる膜厚を予め考慮し
て、当初成膜する磁性材料層の膜厚を適宜選択するとよ
い。
【0023】本発明の光磁気記録媒体は、トラック間で
の磁性層の磁気的な分断が、イオンビームエッチングを
利用する手法を用いて行われるので、ランド・グルーブ
基板上への磁性層積層と同様に、基板面全体に対して、
磁気的分断も一括で行うことが可能となる。特に、本発
明の光磁気記録媒体では、用いるランド・グルーブ基板
には、ランド部(及びグルーブ部)に積層される磁性材
料層の膜厚が、テーパ部に積層される磁性材料層の膜厚
より有意に厚くなる程度の、極く一般的なランド・グル
ーブ基板を利用できるので、ランド・グルーブ基板の成
形加工に伴う量産性の制約を受けない。加えて、利用す
るイオンビームによるドライエッチング技術自体は、既
に広く使用される範囲の指向性で足りるので、新たな装
置的な改良を要するものでもない。従って、本発明の光
磁気記録媒体は、量産性が高く、また、その特性も再現
性が高いものである。結果的に、本発明の光磁気記録媒
体の製造方法を適用すれば、例えば、上記の磁気的分断
にアニール処理を用いる方法と比較すると、不良の発生
が少なく、かつ製造コスト自体大幅な削減が可能であ
る。また、本発明の製造方法は、磁壁移動再生型の光磁
気記録媒体に限定されず、クロスライトやクロスイレー
スの低減を目的とした高密度なあらゆる磁気記録媒体の
製造にも、容易に適用できる。
【0024】以下、図面を参照しつつ、本発明を適用し
た光磁気記録媒体、その製造工程について、より具体的
に説明する。
【0025】図1は、本発明の光磁気記録媒体に用いる
基板と、その表面に堆積される膜形状を模式的に示す断
面図である。用いる基板は、例えば、ポリカーカーボネ
ート基板11であり、表面にランド部13とグルーブ部
12、その間の段差を形成するテーパ部14を有するラ
ンド/グルーブ基板である。このポリカーカーボネート
基板11上に、第1の誘電体膜を形成し、その上に磁性
材料層を堆積した積層薄膜16を形成する。
【0026】その後、図2に示す様に、基板23の斜め
上方からイオンビーム22を照射することによって、基
板表面全体に堆積されている磁性材料層をドライエッチ
ング(イオンミリング)する。イオン源21から照射さ
れるイオンビーム22は、基板23上において、ランド
部上にイオンビームa25とグルーブ部上にイオンビー
ムc27、ならびにテーパ部上にイオンビームb26
と、それぞれ部分的には、固有の照射角を有するものと
なる。
【0027】この関係をより詳しくみると、、図3に示
すように、イオン源31から照射されるイオンビームが
基板表面に達する際、基板面に対するイオンビームの入
射角は、イオンビームa37とランド部33のなす角θ
a、イオンビームc39とグルーブ部32のなす角θ
b、イオンビームb38とテーパ部34のなす角θcと
なる。その際、θaとθcはほぼ等しく、一方、θbは
θa(ならびにθc)より大きく、およそθb=(θa
+基板テーパ角)となる。一般に、イオンビームの入射
角とエッチングレートは、入射角が大きいほどエッチン
グレートが大きくなるという関係がある。従って、図3
に示す配置では、テーパ部34の方がランド部33(な
らびにグルーブ部32)より、エッチング速度が大きく
なり、エッチングされる膜厚が厚くなる。従って、エッ
チング後に、所望の膜厚がランド部33(ならびにグル
ーブ部32)に残るように、予め磁性材料層を厚く成膜
しておき、その後、イオンビームによって、テーパ部3
4上の磁性材料層が削除されるところまでエッチングを
行ない、テーパ部34上の磁性材料層が無くなった時点
で照射を終了させる。
【0028】結果として、図4に示す様に、ランド部4
3及びグルーブ部42のみに磁性材料層が残る積層薄膜
46が形成されているものが得られる。次いで、その上
に第2の誘電体層を積層して、本発明の光磁気記録媒体
が得られる。
【0029】図5は、上記の工程に利用されるイオンビ
ームミリング装置の構成概要を示す図である。光磁気デ
ィスク53は、ランド・グルーブ形成部分表面を上に向
けて、基板ホルダー54上に固定する。基板ホルダー5
4自体はモーター55で定速回転している。さらに、光
磁気ディスク53各々は自転するように、基板ホルダー
54は2段階回転構成になっている。従って、光磁気デ
ィスク53は、自公転することになる。イオン源51に
対して、光磁気ディスク53を所定の角度に配置し、イ
オンビーム52が基板面に対して、所定の角度で照射す
るようする。この所定の角度は、基板の形状(ランドの
テーパ角やランド高さ)に応じて定めるものである。具
体的には、図3において、θbが約90度となるよう
に、また、θa(=θc)は{90度−(ランド部のテ
ーパ角)}程度が好ましい。なお、光磁気ディスクは、
自公転するため、図3に示すイオン源31の配置をとる
とき、ランド部の左右に位置するテーパ部は、共に周期
的なイオンビームの照射を受けることになる。一方、ラ
ンド部ならびにグルーブ部は、常時イオンビームの照射
を受けることになる。上記の通り、テーパ部面にほぼ垂
直にイオンビームが照射される配置とすることで、前記
の実効的な照射時間の差異を補って、テーパ部における
エッチング速度を相対的に高くすることができる。
【0030】一方、エッチング条件は、装置の種類や大
きさによって、それぞれ異なる。例えば、ビーム径10
0mmφのパケット型イオン源を用いる場合、ビーム電
圧を400eV〜1000eV、ビーム電流を100m
A〜200mAの範囲で調整することによって、約数秒
間で、積層薄膜を厚さ10nm〜50nm程度エッチン
グする(削る)ことが出来る。
【0031】図6は、本発明を適用した光磁気記録媒体
の一つとして、磁壁移動再生型の光磁気記録媒体の膜構
成を模式的に示す断面図である。
【0032】透明基板61上に、第1の誘電体層62、
磁性層63、第2の誘電体層64がこの順に積層形成さ
れている。透明基板61としては、例えば、ガラス、ポ
リカーボネート、ポリメチルメタクリレート、熱可塑性
ノルボルネン系樹脂等を用いることができる。透明基板
61の表面には、上記のランド/グルーブ形状が成形加
工などで形成される。
【0033】磁性層63は、単層であっても積層構造で
あっても良く、特に限定されない。記録方式ならびに再
生方式に応じて、その構成を選択する。例えば、磁壁移
動再生型の光磁気記録媒体とする際には、発明者らが特
開平6−290496号公報に開示した、第1の磁性
層、第2の磁性層、第3の磁性層の三層から形成される
ものが適している。すなわち、第1の磁性層631は、
周囲温度近傍において第3の磁性層633に比べて相対
的に磁壁抗磁力が小さく、磁壁移動度の大きな磁性材料
層(移動層かつ再生層)であり、第2の磁性層632は
前記第1の磁性層及び第3の磁性層633よりもキュリ
ー温度の低い磁性材料層(スイッチング層)からなり、
第3の磁性層633は、磁区の保存安定性に優れた磁気
記録層(メモリ層)である。各磁性層は、スパツタリン
グや真空蒸着等の物理蒸着法で連続的に成膜され、第
1、第2、第3の磁性層は互いに交換結合あるいは静磁
結合をしている。
【0034】第1の磁性層631(移動層かつ再生層)
としては、例えば、GdCo系、GdFe系、GdFe
Co系、TbCo系などの磁気異方性の比較的小さな希
土類−鉄族非晶質合金やガーネット等のバブルメモリ用
の材料が好ましい。
【0035】第2の磁性層632(スイッチング層)と
しては、例えば、Co系あるいはFe系合金磁性材料層
で、キュリー温度が磁性層631及び磁性層633より
小さく、飽和磁化の値が第3の磁性層633より小さい
ものが好ましい。ここで、キュリー温度は、Co、C
r、Ti等の添加量で調整可能である。
【0036】第3の磁性層633(メモリ層)として
は、例えば、TbFeCo、DyFeCo、TbDyF
eCoなどの希土類−鉄族非晶質合金や、Pt/Co、
Pd/Coなどの白金族−鉄族周期構造膜など、垂直磁
気異方性が大きく、安定に磁化状態が保持出来るものが
好ましい。第1の誘電体層62および第2の誘電体層6
4は、所望の光透過性を有する限り、特に限定されな
い。高密度光磁気ディスクに利用されるレーザー光源に
対しては、例えば、SiN、SiO2、ZnS、サイア
ロン等が好ましい。また、第2の誘電体層64上には、
必要に応じて紫外線硬化樹脂等からなる保護層65を形
成すると良い。なお、第2の誘電体層64と保護層65
は、磁性層64ならびに光磁気ディスクを保護する役割
を有するものであり、本発明においては、磁性層64を
形成する工程のイオンビームによるエッチングを行った
後に、形成される。
【0037】
【実施例】以下に、具体例をもって、本発明の光磁気記
録媒体をさらに詳しく説明する。下記する具体例は、本
発明の光磁気記録媒体において、より好ましい態様の例
示ではあるものの、本発明の技術的な範囲は、以下述べ
る具体例に限定されるものではない。
【0038】なお、以下に述べる具体例において、イオ
ンビームによる磁性材料層のエッチング状態や、ランド
・グルーブ構造上に形成される積層薄膜の付きまわりの
評価は、媒体の破断面をFE−SEM(Field Emission Scann
ing Electron Microscope)で観察することによって評価
した。観察は、加速電圧は10KV、倍率は約40,00
0倍で行った。また、得られた光磁気記録媒体の記録再
生特性は、一般に使用されている光磁気ディスクの標準
評価装置で行った。再生に用いる光学系の波長は680
nm、NA0.6、最短記録マーク長0.15μm、線速1.5
m/secの条件下で評価を行った。
【0039】(実施例1)図1は、本実施例の光磁気記
録媒体に用いた基板と、その表面に堆積される膜形状を
模式的に示す断面図である。図6は、本実施例の光磁気
記録媒体に用いた磁気記録膜の層構成を模式的に示した
断面図である。
【0040】図1において、基板11は、ポリカーボネ
ート製基板であり、グルーブ部12の幅及びランド部1
3の幅はそれぞれ0.7μm、テーパ部14の幅は0.
1μm、ランド高さ15は190nm、テーパ角は約7
0度にそれぞれ選択されたランド・グルーブ基板であ
る。
【0041】ポリカーボネート基板11上に、第1の誘
電体膜と三層から構成される磁性材料膜の積層薄膜16
を形成した。この積層薄膜16を図6を参照して説明す
ると、ポリカーボネート基板61上に第1の誘電体層
(干渉層)62として、SiN層を90nm、続いて第
1の磁性層(磁壁移動層)631として、GdFeCr
層を30nm、第2の磁性層(スイッチング層)632
として、TbFeCr層を10nm、第3の磁性層(メ
モリ層)633として、TbFeCoCr層を100n
m、マグネトロンスパッタ装置を用いて順次スパッタリ
ング形成した。
【0042】得られたディスクの断面形状をFE−SE
Mで観察したところ、図1の模式図に示すように、積層
薄膜16がランド部13上面とグルーブ部12上面に蒲
鉾型形状に形成され、テーパ部14面にはそれより薄い
薄膜、具体的には、膜厚はグルーブ部12の約1/3程
度、約60nmになっていた。
【0043】次に、図5に示したイオンビームミリング
装置を用いて、光磁気ディスク53表面のエッチングを
行なった。光磁気ディスク53はランド・グルーブ面を
上面にして、イオンビーム52が基板テーパ部14面に
対してほぼ垂直にあたるように配置した。すなわち、図
3において、θbを90度、θaとθcをそれぞれ20
度となる配置とした。エッチング条件としては、ビーム
電圧650eV、ビーム電流100mA、エッチング時
間を20秒とした。この条件で、テーパ部14上に形成
される積層薄膜、少なくとも磁性材料層は全て除去され
るまでエッチングされた。
【0044】イオンビーム照射後、ディスクの断面形状
をFE−SEMで観察したところ、図4に示したよう
に、テーパ部分44には、ほとんど積層薄膜が残ってい
なかった。少なくとも、テーパ部分44には、磁性材料
層は全く残っていないことを確認した。一方、ランド部
43及びグルーブ部42の積層薄膜は若干(約20n
m)削られていただけであった。従って、第3の磁性層
(メモリ層)は、約80nmに減じていた。
【0045】すなわち、ランド部43及びグルーブ部4
2の第3の磁性層は、前記条件のイオンビームエッチン
グで削られる予定の膜厚分だけ(ここでは20nm)予
め厚く形成しておいたので、イオンビームエッチング後
の第3の磁性層の膜厚は、所望の80nmとなった。す
なわち、イオンビーム照射によるエッチングで、エッチ
ングレートの大きい配置に置かれた、テーパ部44の積
層薄膜を完全に除去し、エッチングレートの小さい配置
に置かれた、ランド部43及びグルーブ部42の積層薄
膜はエッチング後に所望の膜厚を確保することが出来
た。
【0046】続いて、第2の誘電体層(保護層)64と
して、SiN層を50nmスパッタ形成し、さらに保護
層65として紫外線硬化樹脂を10μm塗布形成した。
【0047】このようにして得られた光磁気ディスクを
汎用の光ディスクの評価装置にかけ、通常の磁界変調方
式で、マーク長0.10μm(線速1.5m/sec)
の繰り返し信号を、図4に示すランド部43及びグルー
ブ部42に形成されているトラックに記録した。この光
磁気ディスクを、発明者らが既に提案している『磁性層
の温度勾配を利用した磁壁移動型拡大再生方法(特開平
6−290496号公報参照)』を用いて再生したとこ
ろ、波長680nm、NA0.6の光学系(相対速度
1.5m/s)において、ランド部及びグルーブ部のト
ラックいずれも、C/N40.3dB、ジッター6.2
nsecが再現性良く得られた。また、エラーレートは
実用上全く問題の無いレベルであった。
【0048】以上の結果より、ランド・グルーブ基板に
対するイオンビーム照射角度の違いによってエッチング
速度が異なることを利用して、媒体テーパ部上の積層薄
膜を除去し、光磁気ディスクの磁性層の分断を一括に行
なうことが可能となった。また、本発明を適用して得ら
れた磁壁移動型の光磁気記録媒体は、アニール処理を施
した磁壁移動型の光磁気記録媒体と同等の記録再生特性
であることが確認された。本発明の製造方法を用いるこ
とにより、量産性のある高密度な光磁気記録媒体の提供
が可能となる。
【0049】(比較例1)実施例1の一連の工程におい
て、イオンビームによるエッチング工程を省き、磁性材
料層の堆積後、引き続き、第2の誘電体膜を形成した。
その他は、実施例1と同じ基板と工程を用いて、光磁気
記録媒体を作成した。イオンビームによるエッチングを
行なっていないが、ランド高さ15は190nmのまま
とした。また、光磁気ディスクの断面形状をFE−SE
Mで観察したところ、図1に示すような形状であり、テ
ーパ部14に形成される磁性層と、ランド部13ならび
にグルーブ部12の磁性層は、分断されていないもので
あった。
【0050】このようにして得られた光磁気ディスク
を、実施例1と同じ評価装置にかけ、通常の磁界変調方
式で、マーク長0.10μm(線速1.5m/sec)
の繰り返し信号を、図1に示すランド部13及びグルー
ブ部12上に作製されているトラックに記録した。この
記録トラックを、発明者らが既に提案している『磁性層
の温度勾配を利用した磁壁移動型拡大再生方法(特開平
6−290496号公報参照)』を用いて再生したとこ
ろ、波長680nm、NA0.6の光学系(相対速度
1.5m/s)において、ランド部では、C/N35.
5dB、ジッター9.8nsec、グルーブ部では、C
/N37.0dB、ジッター8.0nsecであった。
また、エラーレートは、実施例1と比較するとランド部
で約50倍以上、グルーブ部で約10倍も劣っていた。
このエラーレートは、高い記録信頼性が求められる、超
高密度光磁気記録媒体に用いる場合、実用上、問題とな
る水準であった。
【0051】以上の結果より、本比較例1の光磁気記録
媒体は、図lの断面図で示されるテーパ部14にも、磁
性層が残った構造であるので、このテーパ部に存在する
磁性層の影響で、ランド部とグルーブ部間での磁性層の
分断が不十分となっている。それに伴い、C/N特性と
ジッターは、実施例1よりは劣ったレベルである。すな
わち、磁壁の移動現象が得られ難くなった結果、特に、
C/Nは低くなっていると推測される。
【0052】(実施例2)図1に示したランド・グルー
ブ形状の基板を用意した。ランド部13の幅は0.5μ
m、グルーブ部12の幅は0.5μm、テーパ部14の
幅は0.1μm、ランド高さ15は160nmにそれぞ
れ選択した。この基板では、テーパ角は約55度であ
る。
【0053】前記形状の基板を用いて、実施例1と同条
件で第3の磁性層まで形成して、FE−SEMでその断
面構造を観察したところ、図3の摸式図で示した様に、
積層薄膜36はランド面33及びグルーブ面32のいず
れにおいても蒲鉾型形状であり、テーパ部34では極薄
の薄膜、膜厚がランド部あるいはグルーブ部の約1/3
程度、約70nmになっていた。
【0054】次に、図5に示すイオンビームミリング装
置を用いて、光磁気ディスク53表面のエッチングを行
なった。光磁気ディスク53はランド・グルーブ面を上
面にして、イオンビーム52が基板テーパ部34面に対
してほぼ垂直にあたるように配置した。すなわち、図3
において、θbを90度、θaとθcをそれぞれ35度
とする配置とした。エッチング条件は、ビーム電圧65
0eV、ビーム電流100mA、エッチング時間を25
秒とした。この条件で、テーパ部34面上の積層薄膜、
少なくとも磁性層は全て除去されるまでエッチングされ
た。
【0055】イオンビーム照射後、ディスクの断面形状
をFE−SEMで観察したところ、テーパ部分34には
はとんど積層薄膜が残ってなく、磁性層は全て除去され
ていることが確認された。一方、ランド部及びグルーブ
部の積層薄膜は若干(約30nm)削られていただけで
あった。なお、ランド部及びグルーブ部の第3の磁性層
は、前記条件のイオンビームエッチングで削られる予定
の膜厚分だけ(ここでは30nm)、予め厚く形成して
おいたので、イオンビームエッチング後の第3の磁性層
の膜厚は、所望の80nmとなっていた。すなわち、イ
オンビーム照射によるエッチングで、エッチングレート
の大きい配置に置かれる、テーパ部の磁性膜を完全に除
去し、エッチングレートの小さい配置に置かれる、ラン
ド部及びグルーブ部の磁性膜はエッチング後において
も、所望の膜厚を確保することが出来た。
【0056】続いて、第2の誘電体層(保護層)64と
してSiN層を50nmスパッタ形成し、保護層65と
して紫外線硬化樹脂を10μm塗布形成した。
【0057】このようにして得られた光磁気ディスクを
汎用の光ディスクの評価装置にかけ、通常の磁界変調方
式で、マーク長0.10μm(線速1.5m/sec)
の繰り返し信号を、図4に示されるようなランド部43
及びグルーブ部42上に形成されたトラックに記録し
た。
【0058】得られた光磁気ディスクを、発明者らが既
に提案している『磁性層の温度勾配を利用した磁壁移動
型拡大再生方法(特開平6−290496号公報参
照)』を用いて再生したところ、波長680nm、NA
0.6の光学系(相対速度1,5m/s)において、ラ
ンド部及びグルーブ部のトラックいずれも、C/N3
9.5dB、ジッター6.9nsecが再現性良く得ら
れた。また、エラーレートは実用上全く問題の無いレベ
ルであった。
【0059】以上の結果より、テーパ角が55度程度と
なっても、実施例1のテーパ角が約70度の事例と同じ
く、ランド・グルーブ基板に対するイオンビーム照射角
度の違いによってエッチング速度が異なることを利用し
て、媒体テーパ部上の積層薄膜を除去し、光磁気ディス
クの磁性層の分断を一括に行なうことが可能であること
が確認された。また、実施例1と同じく、本実施例で得
られた磁壁移動型の光磁気記録媒体は、アニール処理を
施した磁壁移動型の光磁気記録媒体と同等の記録再生特
性であることが確認された。従って、ランド・グルーブ
基板おいて、テーパ角の広い範囲で、テーパ部に対する
エッチング速度が相対的に大きくなる配置が得られる限
り、本発明の製造方法を適用できることが判明した。
【0060】(比較例2)実施例2の一連の工程におい
て、イオンビームによるエッチング工程を省き、磁性材
料層の堆積後、引き続き、第2の誘電体膜を形成した。
その他は、実施例2と同じ基板と工程を用いて、光磁気
記録媒体を作成した。イオンビームによるエッチングを
行なっていないが、ランド高さ14は160nmのまま
とした。また、光磁気ディスクの断面形状をFE−SE
Mで観察したところ、図1に示すような形状であり、テ
ーパ部14に形成される磁性層と、ランド部13ならび
にグルーブ部12の磁性層は、分断されていないもので
あった。
【0061】このようにして得られた光磁気ディスク
を、実施例2と同じ評価装置にかけ、通常の磁界変調方
式で、マーク長0.10μm(線速1.5m/sec)
の繰り返し信号を、図1に示すランド部13及びグルー
ブ部12上に作製されているトラックに記録した。この
記録トラックを、発明者らが既に提案している『磁性層
の温度勾配を利用した磁壁移動型拡大再生方法(特開平
6−290496号公報参照)』を用いて再生したとこ
ろ、波長680nm、NA0.6の光学系(相対速度
1.5m/s)において、ランド部では、C/N34.
5dB、ジッター9.9nsec、グルーブ部では、C
/N36.0dB、ジッター8.5nsecであった。
また、エラーレートは、実施例2と比較するとランド部
で約50倍以上、グルーブ部で約10倍も劣っていた。
このエラーレートは、高い記録信頼性が求められる、超
高密度光磁気記録媒体に用いる場合、実用上、問題とな
る水準であった。
【0062】以上の結果より、上記の比較例1のみでな
く、本比較例2の光磁気記録媒体も、図lの断面図で示
されるテーパ部14に、磁性層が残った構造であるの
で、このテーパ部に存在する磁性層の影響で、ランド部
とグルーブ部間での磁性層の分断が不十分となってい
る。それに伴い、C/N特性とジッターは、実施例1よ
りは劣ったレベルである。すなわち、磁壁の移動現象が
得られ難くなった結果、特に、C/Nは低くなっている
と推測される。
【0063】(実施例3)実施例1と同じ基板を用い
て、実施例1と同様に第3の磁性層まで形成した。ただ
し、各積層薄膜は、通常のマグネトロンスパッタ装置の
代わりに、図7に示す構成を持つ、指向性の高い成膜法
であるイオンビームスパッタリング装置を用いて形成し
た。この指向性の高い成膜法を用いることによって、テ
ーパ角の大きいランド・グルーブ基板に対して成膜する
と、テーパ部に薄膜が一層積層しにくくなる。図7に示
すイオンビームスパッタリング装置は、以下に述べるイ
オンビームミリング装置と実質的に同一のイオンビーム
源を具える装置を用いることが出来る。イオンミリング
の場合は、イオンビーム52が基板面を衝撃するのに対
して、スパッタリングの場合には、イオンビーム72が
ターゲット76を衝撃する点が異なる。従って、同一の
装置を用いて、イオン源71の角度(配置)を変更する
ことによって、イオンビームスパッタリング装置とイオ
ンビームミリング装置に使い分けることが可能となる。
【0064】得られたディスク上の積層薄膜46の断面
構造をFE−SEMでその観察したところ、模式的に図
4で示すことができるように、積層薄膜46は、ランド
部43とグルーブ部42のいずれも蒲鉾型形状であり、
テーパ部44に形成された薄膜は極く薄く、膜厚が10
nm以下であった。
【0065】次に、図7に示すイオンスパッタ装置のイ
オンビーム72の角度を変えて、図5に示す構成のイオ
ンビームミリング装置を用いて、光磁気ディスク53表
面のエッチングを行なった。光磁気ディスク53はラン
ド・グルーブ面を上面にして、イオンビーム52が基板
テーパ部44面に対してほぼ垂直にあたるように配置し
た。すなわち、図3において、θbを90度、θaとθ
cをそれぞれ20度となる配置とした。エッチング条件
としては、ビーム電圧650eV、ビーム電流100m
A、エッチング時間を5秒とした。この条件で、テーパ
部44上に形成される積層薄膜、少なくとも磁性材料層
は全て除去されるまでエッチングされた。
【0066】イオンビーム照射後、ディスクの断面形状
をFE−SEMで観察したところ、テーパ部分44には
はとんど積層薄膜が残ってなく、磁性層は全て除去され
ていることが確認された。一方、ランド部及びグルーブ
部の積層薄膜は極僅か削られているのみであった。
【0067】すなわち、本発明の製造方法においては、
同一のイオンビームスパッタリング装置を用いて、テー
パ部の膜厚を小さくした積層薄膜の形成工程と、その
後、テーパ部の積層薄膜のエッチング工程の両方を、イ
オン源の向きを変更するのみで、装置内の真空を破らず
に、連続して行なうことが可能である。このような装置
選択をすると、本発明の目的とする、磁性層の分断とそ
の生産性の向上が同時に達成でき、より好ましいもので
ある。
【0068】続いて、第2の誘電体層(保護層)64と
してSiN層を50nmスパッタ形成し、さらに保護層
65として紫外線硬化樹脂を10μm塗布形成した。
【0069】このようにして得られた光磁気ディスクを
汎用の光ディスクの評価装置にかけ、通常の磁界変調方
式で、マーク長0.10μm(線速1.5m/sec)
の繰り返し信号を、図4に示されるようなランド部43
及びグルーブ部42上に形成されたトラックに記録し
た。
【0070】得られた光磁気ディスクを、発明者らが既
に提案している『磁性層の温度勾配を利用した磁壁移動
型拡大再生方法(特開平6−290496号公報参
照)』を用いて再生したところ、波長680nm、NA
0.6の光学系(相対速度1,5m/s)において、ラ
ンド部及びグルーブ部のトラックいずれも、C/N4
0.8dB、ジッター5.9nsecが再現性良く得ら
れた。また、エラーレートは実用上全く問題の無いレベ
ルであった。
【0071】以上の結果より、ランド・グルーブ基板に
対するイオンビーム照射角度の違いによってエッチング
速度が異なることを利用して、媒体テーパ部上の積層薄
膜を除去し、光磁気ディスクの磁性層の分断を一括に行
なう際、1台のイオンビームスパッタ装置を用いて、テ
ーパ部の膜厚を小さくした積層薄膜の形成工程と、その
後、テーパ部の積層薄膜のエッチング工程の両方を、イ
オン源の向きを変更するのみで、装置内の真空を破らず
に、連続して行なうことが可能であり、その手法を用い
ると、生産性が一層向上することが判明した。また、こ
の好ましい手法で得られる磁壁移動型の光磁気記録媒体
は、アニール処理を施した磁壁移動型の光磁気記録媒体
と同等以上の記録再生特性であることが確認された。
【0072】
【発明の効果】本発明の光磁気記録媒体とその製造方法
によれば、ランド・グルーブ基板上への磁気記録層の積
層と同じく、ランド・グルーブのトラック間の磁気的分
断を一括で行なうことが可能となり、高密度な光磁気記
録媒体、例えば、特開平6−290496号公報で開示
した磁壁移動型再生に適する高密度な光磁気記録媒体の
量産化が可能となる。また、その高い生産性と記録特性
の再現性は、高密度な光磁気記録媒体を安価に提供する
ことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光磁気記録媒体に用いるランド・グ
ルーブ形状を持つ透明基板の断面構造を模式的に示す図
である。
【図2】 本発明の光磁気記録媒体を製造する方法にお
いて、イオンビームでエッチングする工程の概要を模式
的に示す図である。
【図3】 本発明の光磁気記録媒体を製造する方法の、
イオンビームでエッチングする工程における、イオン源
と基板の配置を模式的に示す図である。
【図4】 本発明の光磁気記録媒体を製造する方法の、
イオンビームでエッチングする工程後、基板表面に残さ
れる積層薄膜形状を模式的に示す断面図である。
【図5】 イオンビームでエッチングする工程に用いる
イオンビームミリング装置構成の概要を示す図である。
【図6】 本発明の光磁気記録媒体に用いる磁気記録層
の層構成の一例を示す断面図である。
【図7】 本発明の光磁気記録媒体を製造する際、指向
性の高い成膜を行うとともに、図5に示す構成に変更し
て、イオンミリングを引き続き行えるイオンビームスパ
ッタリング装置構成の概要を示す図である。
【符号の説明】
11、23、61 透明基板(ポリカーボネート基
板) 14、34、44 テーパ部 13、33、43 ランド部 12、32、42 グルーブ部 15、35 ランド高さ 16、36、46 積層薄膜 17、24、53、73 光磁気ディスク 21、31、51、71 イオン源 22、25、26、27、37、38、39、52、7
2 イオンビーム 62 第1の誘電体層 63 磁性層 631 第1の磁性層(再生層) 632 第2の磁性層(スイッチング層) 633 第3の磁性層(メモリ層) 64 第2の誘電体層 65 保護層(紫外線硬化樹脂層) 56 シャッター 54、74 基板ホルダー 55、75 モーター 76 ターゲット

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ランド・グルーブ基板上に、その基板表
    面に第1の誘電体層、磁性層、第2の誘電体層がこの順
    に形成されてなる光磁気記録媒体であって、前記磁性層
    は、当初膜厚の磁性材料層を形成した後、前記ランド・
    グルーブ基板平面に対して、所定の角度傾いた斜め上方
    からイオンビームを照射して、前記当初膜厚の一部を除
    去してなる磁性層であり、前記当初膜厚の一部除去によ
    り、磁性層に実質的な分断が形成されていることを特徴
    とする光磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 前記磁性層の実質的な分断が、前記ラン
    ド・グルーブ基板のランド部とグルーブ部間に設けるテ
    ーパ部に形成されていることを特徴とする請求項1に記
    載の光磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 前記イオンビームの照射角は、前記ラン
    ド・グルーブ基板のランド部またはグルーブ部と、その
    間に設けるテーパ部とでは異なり、前記テーパ部に対す
    る照射角の方がより大きな角度に選択されていることを
    特徴とする請求項1または2に記載の光磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 前記イオンビーム照射により当初膜厚の
    一部を除去してなる磁性層において、ランド部とグルー
    ブ部においては膜厚が等しく、テーパ部においては、前
    記ランド部とグルーブ部における膜厚より薄い膜厚であ
    る、または、実質的に膜厚がない状態であることを特徴
    とする請求項1〜3のいずれかに記載の光磁気記録媒
    体。
  5. 【請求項5】 ランド・グルーブ基板上に、その基板表
    面に第1の誘電体層、磁性層、第2の誘電体層がこの順
    に形成して光磁気記録媒体を製造するに際し、当初膜厚
    の磁性材料層を形成した後、前記ランド・グルーブ基板
    平面に対して、所定の角度傾いた斜め上方からイオンビ
    ームを照射して、前記当初膜厚の一部を除去して、磁性
    層に実質的な分断を形成することを特徴とする光磁気記
    録媒体の製造方法である。好ましくは、前記磁性層の実
    質的な分断を、前記ランド・グルーブ基板のランド部と
    グルーブ部間に設けるテーパ部に形成することを特徴と
    する光磁気記録媒体の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記磁性層の実質的な分断を、前記ラン
    ド・グルーブ基板のランド部とグルーブ部間に設けるテ
    ーパ部に形成することを特徴とする請求項5に記載の光
    磁気記録媒体の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記イオンビーム照射角を、前記ランド
    ・グルーブ基板のランド部またはグルーブ部と、その間
    に設けるテーパ部とでは異なり、前記テーパ部に対する
    照射角の方がより大きな角度に選択することを特徴とす
    る請求項5または6に記載の光磁気記録媒体の製造方
    法。
JP29697599A 1999-10-19 1999-10-19 光磁気記録媒体およびその製造方法 Pending JP2001118294A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP29697599A JP2001118294A (ja) 1999-10-19 1999-10-19 光磁気記録媒体およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP29697599A JP2001118294A (ja) 1999-10-19 1999-10-19 光磁気記録媒体およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001118294A true JP2001118294A (ja) 2001-04-27

Family

ID=17840635

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP29697599A Pending JP2001118294A (ja) 1999-10-19 1999-10-19 光磁気記録媒体およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2001118294A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112981331A (zh) * 2019-12-02 2021-06-18 佳能特机株式会社 成膜方法和成膜装置

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112981331A (zh) * 2019-12-02 2021-06-18 佳能特机株式会社 成膜方法和成膜装置
CN112981331B (zh) * 2019-12-02 2024-03-08 佳能特机株式会社 成膜方法和成膜装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1050056B1 (fr) Procede de gravure magnetique, pour notamment l'enregistrement magnetique ou magneto-optique
US6177175B1 (en) Magneto-optical medium utilizing domain wall displacement
US6454915B1 (en) Information recording medium and method for producing the same
JPH10228684A (ja) 光磁気記録媒体とその製造方法及びその媒体の再生方法
JP2001118294A (ja) 光磁気記録媒体およびその製造方法
US6343052B1 (en) Magneto-optical medium having film with rounded upper corner and thickness decreasing to the side end on lands
US7399539B2 (en) DWDD-type magneto-optic recording medium including buffer regions between recording track regions and method of producing the same
JPH11120636A (ja) 光磁気記録媒体
JPH11126381A (ja) 光磁気記録媒体
JP2010140592A (ja) L10規則化構造のFePtナノドットアレイの製造方法、それを使用して製造されたL10規則化構造のFePtナノドットアレイ及びL10規則化構造のFePtナノドットアレイを使用した高密度磁気記録媒体
JPH11195252A (ja) 光磁気記録媒体
US20080199602A1 (en) Method for manufacturing magneto-optical recording medium
JP2001167479A (ja) 情報記録媒体の製造方法
JPH11312342A (ja) 光磁気記録媒体
JP2002367249A (ja) 記録媒体およびその製造方法
JP2000348398A (ja) 光磁気記録媒体およびその製造方法
JPH11195253A (ja) 光磁気記録媒体
JP2001118293A (ja) 光磁気記録媒体とその製造方法
JP2007073117A (ja) 光記録媒体およびその製造方法
JPH05250741A (ja) 光記録媒体
JPH05347036A (ja) 光記録媒体およびその製造方法
JP2008152842A (ja) 磁性記録媒体
JP4064637B2 (ja) 光情報記録媒体及びその製造方法
JP2002163848A (ja) 情報記録媒体の製造方法
JP2002042393A (ja) 光磁気記録媒体の製造方法