JP2001114981A - 擬似均一相溶構造を有する樹脂複合体 - Google Patents

擬似均一相溶構造を有する樹脂複合体

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JP2001114981A JP2000282729A JP2000282729A JP2001114981A JP 2001114981 A JP2001114981 A JP 2001114981A JP 2000282729 A JP2000282729 A JP 2000282729A JP 2000282729 A JP2000282729 A JP 2000282729A JP 2001114981 A JP2001114981 A JP 2001114981A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 熱硬化性樹脂あるいは感光性樹脂が示す特有
の物性を維持しつつ、複合化させる熱可塑性樹脂が示す
本来の物性よりもさらに高い物性値を示す新規な樹脂複
合体を開発すること。 【構成】 フェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂
およびエポキシ変性樹脂から選ばれるいずれか1つの熱
硬化性樹脂あるいは感光性樹脂と熱可塑性樹脂とを擬似
均一相形成点を超える硬化速度および/または擬似均一
相形成点を超えない相分離速度で硬化させることにより
得られる擬似均一相溶構造を有する樹脂複合体である
(図2(a),(c) )。この複合体を構成する樹脂粒子の粒
径は、TEM観察による測定値で0.1 μm以下であり、
かつ動的粘弾性測定による樹脂のガラス転移温度ピーク
値が1つである(図2(c) )。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フェノール樹脂、アミ
ノ樹脂、エポキシ樹脂およびエポキシ変性樹脂から選ば
れるいずれか1つの熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂、ある
いは感光性樹脂と熱可塑性樹脂とからなる新規な樹脂複
合体についての提案である。
【0002】
【従来の技術】樹脂複合体の技術は、熱硬化性樹脂に熱
可塑性樹脂を混合して複合させることにより、この熱硬
化性樹脂の物性を改善する技術などが代表的である。例
えば、エポキシ樹脂とポリエーテルスルホン(以下、
「PES」で示す)との混合系(PES変成エポキシ樹
脂)において、エポキシ樹脂とPESとが形成する共連
続構造により、エポキシ樹脂の靱性を改善する技術がそ
れである(Keizo Yamanakaand Takashi Inoue, Polyme
r, vol.30, P662(1989)参照)。
【0003】2種の樹脂を混合してなる上記PES変性
エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂単独のものに比べて、樹
脂の靱性が向上する。この理由は、このPES変性エポ
キシ樹脂が以下に述べるような樹脂構造を形成するから
である。すなわち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂な
どのエポキシ樹脂とPESとの混合系は、エポキシ樹脂
を高温で硬化すると、エポキシ樹脂とPESとが完全に
溶け合った状態(相溶状態)とはならず、スピノーダル
分解を起こしてエポキシ樹脂とPESが分離状態で混合
している状態(相分離状態)となる。このような相分離
状態は、混合する樹脂の最初の分散状態における非相溶
の度合いに依存するもので、非相溶の度合いが大きい場
合には球状ドメイン構造となり、非相溶の度合いが小さ
い場合には、共連続構造となる。上記「球状ドメイン構
造」とは、PESを主とする樹脂マトリックス中に、エ
ポキシ樹脂を主とする樹脂からなる球状ドメインが互い
に独立し、あるいはそれらの一部が連結して分散してい
る状態の構造を指し、「共連続構造」とは、主として、
PESを主とする樹脂マトリックス中に、エポキシ樹脂
を主とする樹脂からなる球状ドメインが互いに連結し合
い、かつ規則正しく分散している状態の構造を指す。こ
のような構造は、構成樹脂のそれぞれが完全に分離して
いるのではなく、PESの中にもエポキシ樹脂が含有さ
れていて、その比率は圧倒的にPESが高く、一方、エ
ポキシ樹脂の中にも、PESが含有されていて、その比
率はエポキシ樹脂が高いような構造であり、それぞれの
樹脂が完全に相分離しているのではなく、互いに一部が
相溶している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記共連続
構造は、エポキシ樹脂とPESとが相分離状態となるこ
とによって形成されるものであり、スピノーダル分解に
よって生成するエポキシ樹脂の球状ドメインが単にPE
Sマトリックス中に分散しているだけの構造である。そ
のため、エポキシ樹脂に、PESを分散導入する効果は
あるものの、PES本来の物性よりも高くすることはで
きない。この理由は、共連続構造を形成した複合体のガ
ラス転移温度を動的粘弾性測定により測定すると、ガラ
ス転移温度のピーク数が2つであることが認められるこ
とから、エポキシ樹脂とマトリックスであるPESとの
相互作用が弱いためと考えられる。上述したような共連
続構造に関する知見は、感光性樹脂と熱可塑性樹脂との
混合系、例えばアクリル系樹脂とポリエーテルスルホン
との混合系(PES変成アクリル系樹脂)についても同
様であった。
【0005】本発明の目的は、エポキシ樹脂などの熱硬
化性樹脂あるいはアクリル系樹脂などの感光性樹脂が示
す特有の物性、例えば耐熱性や感光特性を具えると共
に、PESなどの熱可塑性樹脂が示す本来の物性よりも
さらに高い物性値を示す新規な樹脂複合体およびその製
造技術を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上記の目的
を実現すべく、まず、樹脂複合体の1つの混合系である
熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との系について研究した。
熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合系,例えば、エポ
キシ樹脂/PES混合系において、エポキシ樹脂とPE
Sは、図1に示すように、低温では相溶するが高温では
2相分離する,いわゆるLCST型(Low Critical Sol
ution Temperature )の相図を示す。しかし、エポキシ
樹脂が、硬化反応に伴って高分子化され、その樹脂のガ
ラス転移温度(Tg )が高くなって硬化温度以上になる
と、その温度において分子運動が凍結され相分離できな
くなる。なぜなら、相分離するには分子の運動,拡散が
必要だからである。
【0007】本発明は、このような事実に着目して鋭意
研究した結果完成されたものであり、熱硬化性樹脂と熱
可塑性樹脂とが相分離することによって明確な共連続構
造あるいは球状ドメイン構造を形成しないように、硬化
速度や相分離速度を制御して樹脂を硬化させ複合化させ
ることにより、上記目的を実現することができる。
【0008】すなわち本発明は、フェノール樹脂、アミ
ノ樹脂、エポキシ樹脂およびエポキシ変性樹脂から選ば
れるいずれか1つの熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とから
なる樹脂複合体、あるいは前記熱硬化性樹脂と熱可塑性
樹脂とからなり、かつ感光性が付与されてなる樹脂複合
体であって、前記熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とが擬似
均一相溶構造を形成してなることを特徴とする樹脂複合
体であり、上記擬似均一相溶構造を形成する構成樹脂粒
子の粒径が透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」で示
す)観察による測定値で 0.1μm以下であり、かつ動的
粘弾性測定による樹脂のガラス転移温度のピーク数が1
つであることを特徴とする。ここに、本発明における動
的粘弾性測定の条件は、振動周波数6.28 rad /se
c、昇温速度5℃/分である。
【0009】一方、発明者らは、樹脂複合体の他の混合
系である感光性樹脂と熱可塑性樹脂との系について、上
記の目的を実現すべく研究した。その結果、基本的に
は、前記熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合系と同様
に、感光性樹脂と熱可塑性樹脂とが相分離することによ
って明確な共連続構造あるいは球状ドメイン構造を形成
しないように、硬化速度や相分離速度を制御して樹脂を
硬化させ複合化させることにより、上記目的を実現する
ことができることを突き止めて本発明を完成した。
【0010】すなわち、本発明は、感光性樹脂と熱可塑
性樹脂とからなる樹脂複合体において、感光性樹脂と熱
可塑性樹脂とが擬似均一相溶構造を形成してなることを
特徴とする樹脂複合体であり、上記擬似均一相溶構造を
形成する構成樹脂粒子の粒径がTEM観察による測定値
で 0.1μm以下であり、かつ動的粘弾性測定による樹脂
のガラス転移温度のピーク数が1つであることを特徴と
する。ここに、本発明における動的粘弾性測定の条件
は、振動周波数6.28 rad/sec、昇温速度5℃/分
である。
【0011】そして、上述したような本発明の樹脂複合
体を製造する方法は、第1に、熱可塑性樹脂と混合した
フェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂およびエポ
キシ変性樹脂から選ばれるいずれか1つの熱硬化性樹脂
あるいは感光性樹脂を硬化することにより前記熱硬化性
樹脂あるいは感光性樹脂と熱可塑性樹脂とを複合化する
に当たり、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との場合は、熱
硬化性樹脂の硬化温度、硬化剤の種類、および感光性付
与の有無のうちから選ばれる1種または2種以上の因
子、一方、感光性樹脂と熱可塑性樹脂との場合は、感光
性樹脂の光硬化因子によって決定される擬似均一相形成
点を超える硬化速度で硬化させることを特徴とする。第
2に、熱可塑性樹脂と混合した前記フェノール樹脂、ア
ミノ樹脂、エポキシ樹脂およびエポキシ変性樹脂から選
ばれるいずれか1つの熱硬化性樹脂あるいは感光性樹脂
を硬化することにより、前記熱硬化性樹脂あるいは感光
性樹脂と熱可塑性樹脂とを複合化するに当たり、未硬化
の熱硬化性樹脂あるいは未硬化の感光性樹脂の架橋密度
または分子量のいずれか1種以上の因子によって決定さ
れる擬似均一相形成点を超えない相分離速度で硬化させ
ることを特徴とする。第3に、熱可塑性樹脂と混合した
フェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂およびエポ
キシ変性樹脂から選ばれるいずれか1つの熱硬化性樹脂
あるいは感光性樹脂を硬化することにより、前記熱硬化
性樹脂あるいは感光性樹脂と熱可塑性樹脂とを複合化す
るに当たり、上記擬似均一相形成点を超える硬化速度
で、かつ上記擬似均一相形成点を超えない相分離速度で
硬化させることを特徴とする。上記樹脂複合体におい
て、熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂が望まし
い。また、前記熱硬化性樹脂あるいは感光性樹脂と熱可
塑性樹脂の配合比を、熱可塑性樹脂の含有量で15〜50wt
%とすることが望ましい。
【0012】
【作用】本発明のフェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキ
シ樹脂およびエポキシ変性樹脂から選ばれるいずれか1
つの熱硬化性樹脂あるいは感光性樹脂と熱可塑性樹脂と
からなる樹脂複合体の特徴は、前記熱硬化性樹脂あるい
は感光性樹脂と熱可塑性樹脂とが擬似均一相溶構造を形
成してなる点にある。この擬似均一相溶構造は、発明者
らが考え出した新しい概念であり、以下に説明する構造
をいう。すなわち、擬似均一相溶構造は、エポキシ樹脂
などの熱硬化性樹脂が示す特有の物性もしくはアクリル
系樹脂などの感光性樹脂が示す特有の物性を具えると共
に、PESなどの熱可塑性樹脂本来の物性よりも高い物
性値を示す,より均質な構造をいい、動的粘弾性測定に
よるガラス転移温度のピーク数が1つであり、熱硬化性
樹脂あるいは感光性樹脂と熱可塑性樹脂間との相互作用
が極めて強いものである。したがって、本発明の樹脂複
合体は、図2(a) の走査型電子顕微鏡(以下、「SE
M」で示す。)写真に示すような構造を有し、図2(b)
のSEM写真に示す従来の共連続粒子構造とは明らかに
相違するものである。しかも、この樹脂複合体は、TE
M観察(図2(c) 参照)による構成樹脂粒子の粒径が
0.1μm以下であってより均質となっているものであ
る。このような均質な樹脂複合体であるため、有機溶剤
などにより熱可塑性樹脂が溶出されにくく、耐薬品性に
優れる。従来技術において説明した共連続構造では、塩
化メチレンによりPESが溶出して、表面が凹凸になる
が (図2(b) 図面代用写真参照) 、本発明では、塩化メ
チレンによってもPESなどの熱可塑性樹脂の溶出量は
少なく、表面に凹凸が発生することがない。
【0013】このような樹脂複合体の構造による効果
は、前記複合体における熱可塑性樹脂(例えば、PES
やフェノキシ樹脂)の含有量が固形分で15〜50wt%であ
る場合に特に顕著となる。この理由は、熱可塑性樹脂の
含有量が15wt%未満では、樹脂成分の網目に絡み合う熱
可塑性樹脂分子が少ないため強靱化の効果が十分に発揮
されず、一方、熱可塑性樹脂の含有量が50wt%を超える
と、架橋点の減少によって熱硬化性樹脂あるいは感光性
樹脂と熱可塑性樹脂間との相互作用が小さくなるからで
ある。
【0014】このような熱硬化性樹脂あるいは感光性樹
脂と熱可塑性樹脂との擬似均一相溶構造は、以下に示す
本発明方法によって形成されるものである。すなわち、
本発明に係る擬似均一相溶構造は、フェノール樹脂、ア
ミノ樹脂、エポキシ樹脂およびエポキシ変性樹脂から選
ばれるいずれか1つの熱硬化性樹脂あるいは感光性樹脂
と熱可塑性樹脂を必要に応じて溶剤に溶解して均一に混
合し、その後、硬化速度を速くすること、および/また
は相分離速度を遅くすることにより、構成樹脂粒子の粒
径をTEM観察による測定値で 0.1μm以下にすること
により、形成される。
【0015】具体的には、本発明方法は、第1に、フェ
ノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂およびエポキシ
変性樹脂から選ばれるいずれか1つの熱硬化性樹脂を用
いる場合は、熱硬化性樹脂の硬化温度、硬化剤の種類、
および感光性付与の有無のうちから選ばれる1種または
2種以上の因子によって決定される擬似均一相形成点を
超える硬化速度で、一方、感光性樹脂を用いる場合は、
感光性樹脂の光硬化因子,例えば開始剤や増感剤,感光
性モノマー,露光条件などによって決定される擬似均一
相形成点を超える硬化速度で硬化させる点に特徴があ
る。ここでの擬似均一相形成点とは、複合体を構成する
樹脂粒子の粒径がTEM観察による測定値で 0.1μm以
下である擬似均一相溶構造を得ることができる,硬化速
度の下限値を意味する。
【0016】また、本発明方法は、第2に、未硬化の前
記熱硬化性樹脂あるいは未硬化の感光性樹脂の架橋密度
または分子量のいずれか1種以上の因子によって決定さ
れる擬似均一相形成点を超えない相分離速度で硬化させ
る点に特徴がある。ここでの擬似均一相形成点とは、複
合体を構成する樹脂粒子の粒径がTEM観察による測定
値で 0.1μm以下である擬似均一相溶構造を得ることが
できる,相分離速度の上限値を意味する。
【0017】さらに、本発明方法は、第3に、上記擬似
均一相形成点を超える硬化速度で、かつ上記擬似均一相
形成点を超えない相分離速度で硬化させる点に特徴があ
る。これは、硬化速度と相分離速度を決定する因子が相
互に影響する場合の方法を意味する。
【0018】次に、硬化速度または相分離速度を決定す
る上述した種々の因子の相互関係について説明する。ま
ず、硬化速度を決定する因子については、他の因子条件
を一定とすると、 前記熱硬化性樹脂の硬化温度が高いほど硬化速度は速
くなる。従って、擬似均一相形成点を超える硬化速度を
得るのに必要な硬化温度の下限値を超えて熱硬化性樹脂
を硬化すると、得られる樹脂複合体の構造は擬似均一相
溶構造となる。 ゲル化時間が短い硬化剤ほど硬化速度は速くなる。従
って、擬似均一相形成点を超える硬化速度を得るのに必
要なゲル化時間の上限値を超えないような硬化剤を用い
て熱硬化性樹脂を硬化すると、得られる樹脂複合体の構
造は擬似均一相溶構造となる。 感光性を付与するほど硬化速度は速くなる。 従って、他の因子条件が擬似均一相溶構造を形成する組
み合わせにおいては、樹脂に感光性を付与することによ
って、得られる樹脂複合体はより均質な擬似均一相溶構
造となる。なお、感光性を付与する方法としては、熱硬
化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂に感光性基を導入する方
法、感光性モノマーを配合する方法があり、必要に応じ
て光開始剤,光増感剤を配合してもよい。また、アクリ
ル系樹脂などの感光性樹脂を熱硬化性樹脂の代わりに使
用することができる。この場合は、感光性樹脂の,例え
ば開始剤や増感剤,感光性モノマー,露光条件などの光
硬化因子によって決定される擬似均一相形成点を超える
硬化速度で硬化させる必要がある。
【0019】このような事実を考慮すると、熱硬化性樹
脂あるいは感光性樹脂と熱可塑性樹脂の複合化に当たっ
て上記変動因子が1種の場合は、擬似均一相形成点に対
応するその因子の値が1点決まる。それ故に、上記変動
因子が2種以上の場合には、擬似均一相形成点に対応す
るその因子の値は種々の組み合わせが考えられる。すな
わち、構成樹脂粒子の粒径がTEM観察による測定値で
0.1μm以下となるような硬化速度を示す組み合わせを
選定することができる。
【0020】次に、相分離速度を決定する因子について
は、他の因子条件を一定とすると、 未硬化の熱硬化性樹脂あるいは未硬化の感光性樹脂の
架橋密度が高いほど相分離は起きにくい(相分離速度は
遅くなる)。従って、擬似均一相形成点を超えない相分
離速度を得るのに必要な架橋密度の下限値を超える架橋
密度を有する未硬化の熱硬化性樹脂あるいは未硬化の感
光性樹脂を用いて硬化すると、得られる樹脂複合体の構
造は擬似均一相溶構造となる。 未硬化の熱硬化性樹脂あるいは未硬化の感光性樹脂の
分子量が大きいほど相分離は起きにくい(相分離速度は
遅くなる)。従って、擬似均一相形成点を超えない相分
離速度を得るのに必要な分子量の下限値を超える分子量
を有する未硬化の熱硬化性樹脂あるいは未硬化の感光性
樹脂を用いて硬化すると、得られる樹脂複合体の構造は
擬似均一相溶構造となる。
【0021】このような事実を考慮すると、熱硬化性樹
脂あるいは感光性樹脂と熱可塑性樹脂の複合化に当たっ
て上記変動因子が1種の場合は、擬似均一相形成点に対
応するその因子の値が1点決まる。それ故に、上記変動
因子が2種の場合には、擬似均一相形成点に対応するそ
の因子の値は種々の組み合わせが考えられる。すなわ
ち、構成樹脂粒子の粒径がTEM観察による測定値で
0.1μm以下となるような相分離速度を示す組み合わせ
を選定することができる。
【0022】以上説明したような本発明方法により得ら
れる樹脂複合体は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が
示す特有の物性あるいはアクリル系樹脂などの感光性樹
脂が示す特有の物性を具えると共に、フェノキシ樹脂な
どの熱可塑性樹脂本来の物性よりもさらに高い物性値を
示すことができる。すなわち、本発明にかかる擬似均一
相溶構造を有する樹脂複合体は、フェノキシ樹脂等の単
独の樹脂強度よりも高くなり、従来にはないエポキシ樹
脂あるいはアクリル樹脂の強靱化効果を有するものであ
る。
【0023】本発明においては、上述したように熱硬化
性樹脂あるいは感光性樹脂と熱可塑性樹脂とを複合化す
るに先立って、熱硬化性樹脂あるいは感光性樹脂と熱可
塑性樹脂は、必要に応じて溶剤に溶解することにより均
一に混合される。このような溶剤としては、例えば、ジ
メチルホルムアミド(DMF)や塩化メチレン、ジメチル
スルホキシド(DMSO)、ノルマルメチルピロリドン(NM
P)などが使用できる。また、相分離開始温度未満で、
かつ硬化開始温度未満の温度にて、熱硬化性樹脂あるい
は感光性樹脂と熱可塑性樹脂とを加熱溶融させて混合さ
せることも可能である。
【0024】本発明において熱硬化性樹脂としては、フ
ェノール樹脂、メラミン樹脂や尿素樹脂などのアミノ樹
脂、エポキシ樹脂およびエポキシ変成ポリイミド樹脂等
のエポキシ変性樹脂の他に、不飽和ポリエステル樹脂、
ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹
脂などが使用できる。この熱硬化性樹脂は、部分的に熱
硬化に寄与する官能基の一部を感光基で置換したものも
使用でき、例えば、エポキシ樹脂の20〜50%アクリル化
物などが好適である。
【0025】本発明において熱可塑性樹脂としては、フ
ェノキシ樹脂やポリエーテルスルホンの他に、ポリスル
ホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテ
ルケトン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエ
ーテルイミドなどのエンジニアリングプラスチック、ポ
リスチレン、ポリエチレン、ポリアリレート、ポリアミ
ドイミド、ポリオキシベンゾエート、ポリ塩化ビニル、
ポリ酢酸ビニルなどが使用できる。
【0026】本発明において感光性樹脂としては、ポリ
メタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂や熱硬化性樹
脂の官能基を 100%アクリル化したものが好適である。
ここで、この感光性樹脂の光硬化因子として重要である
光開始剤としては、ベンゾイソブチルエーテル,ベンジ
ルジメチルケタール,ジエトキシアセトフェノン,アシ
ロキシムエステル,塩素化アセトフェノン,ヒドロキシ
アセトフェノン等の分子内結合開裂型、ベンゾフェノ
ン,ミヒラーケトン,ジベンゾスベロン,2−エチルア
ンスラキノン,イソブチルチオキサンソン等の分子内水
素引抜型のいずれか1種以上が好適に用いられる。光開
始助剤としては、トリエタノールアミン,ミヒラーケト
ン,4,4-ジエチルアミノベンゾフェノン,2−ジメチル
アミノエチル安息香酸,4−ジメチルアミノ安息香酸エ
チル,4−ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチ
ル,4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル,4−ジメ
チルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル,重合性3級ア
ミン等のいずれか1種以上が用いられる。増感剤として
は、ミヒラーケトンやイルガキュア651 ,イソプロピル
チオキサンソンなどが好適であり、上記光開始剤のなか
には、増感剤として作用するものもある。なお、上記光
開始剤と増感剤の組成比は、例えば、感光性樹脂100 重
量部に対して、 ベンゾフェノン/ミヒラーケトン=5重量部/0.5 重量
部 イルガキュア184 /イルガキュア651 =5重量部/0.5
重量部 イルガキュア907 /イソプロピルチオキサンソン=5重
量部/0.5 重量部 が好適である。また、感光性樹脂を構成する感光性モノ
マーあるいは感光性オリゴマーとしては、エポキシアク
リレートやエポキシメタクリレート,ウレタンアクリレ
ート,ポリエステルアクリレート,ポリスチリルメタク
リレートなどが好適に用いられる。
【0027】本発明において、熱硬化性樹脂としてエポ
キシ樹脂を用いる場合の硬化剤としては、イミダゾール
系硬化剤やジアミン、ポリアミン、ポリアミド、無水有
機酸、ビニルフェノールなどが使用できる。一方、エポ
キシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を使用する場合は、周知の
硬化剤を使用できる。
【0028】なお、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂特
有の物性、あるいはアクリル系樹脂などの感光性樹脂特
有の物性を具えると共に、複合化させるフェノキシ樹脂
やPESなどの熱可塑性樹脂本来の物性よりもさらに高
い物性値を示す,本発明の樹脂複合体は、プリント配線
板用接着剤などの無電解めっき用接着剤や、プリント配
線板等に用いられる基板材料,レジスト材料およびプリ
プレグ材料、半導体パッケージの封止材、繊維強化複合
材料の母材、射出成形用材料、圧縮成形用材料などさま
ざまな用途に利用されることが期待される。
【0029】
【実施例】(実施例1:硬化剤の影響) (1) エポキシ樹脂/PES系において、ゲル化時間(硬
化速度)の異なる硬化剤を用い、エポキシ樹脂の硬化剤
の種類が上記混合系の樹脂構造および物性にどのような
影響を及ぼすかについて調べた。 (2) ゲル化時間の異なる硬化剤としては、表1に示す数
種類のイミダゾール系硬化剤(四国化成製)を用いた。 (3) なお、硬化剤の影響を調べるために、エポキシ樹脂
としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル
製、商品名:エピコート828 )を用い、エポキシ樹脂/
PESの配合比を70/30とし、PESを2倍量のジメチ
ルホルムアミド(DMF)で溶解させ、所定量のエポキシ
樹脂と硬化剤を混合して硬化させ、また、エポキシ樹脂
のエポキシ当量を184 〜194 、硬化条件を120 ℃×5時
間+150 ℃×2時間、と一定条件にした。
【0030】得られた樹脂硬化物の構造および物性を調
べた結果を 図3および表1に示す。 図3(a) 〜(d)
は、表1に示すイミダゾール系硬化剤を用いて得られた
樹脂硬化物の組織を示すSEM写真であり、(a)2PHZ-C
N, (b)2PZ-OK, (c)2E4MZ-CN,(d)1 B2MZを用いた場合を
示す。これらの写真および表1に示す結果から明らかな
ように、硬化速度の遅い硬化剤を用いると、相分離の進
行によって球状ドメイン構造が形成され、樹脂の強度や
伸び率が低いことが判った。これに対し、擬似均一相形
成点を超える硬化速度を示す硬化剤で硬化させると、エ
ポキシ樹脂とPESとが擬似均一相溶構造を形成し、こ
の硬化物の強度および伸び率は共に大きく向上すること
が判った。
【0031】図4は、上記樹脂硬化物のSEM観察によ
り得られた樹脂の粒径と硬化剤のゲル化時間の関係を示
す図である。この図に示す結果から明らかなように、12
0 ℃でのゲル化時間が約5分以下になると、樹脂の粒径
が急激に小さくなり、球状ドメイン構造から擬似均一相
溶構造になることが判った。すなわち、本実施例の条件
下では、硬化剤のゲル化時間によって決定される擬似均
一相形成点は、ゲル化時間が5分程度のところに存在す
ることが判る。
【0032】
【表1】
【0033】(実施例2:硬化温度の影響) (1) エポキシ樹脂/PES系において、硬化温度の異な
る硬化条件にて硬化することにより、エポキシ樹脂の硬
化温度が、得られる樹脂硬化物の樹脂構造にどのような
影響を及ぼすかについて調べた。 (2) 硬化温度の異なる硬化条件としては、以下に示す4
条件を実施した。 a.80℃で6時間 b.100 ℃で6時間 c.120 ℃で5時間 d.150 ℃で4時間 (3) 硬化剤によって、 硬化温度が低いほど、擬似均一相溶構造を形成する場
合 硬化温度が高いほど、擬似均一相溶構造を形成する場
合があるとの知見から、硬化剤としては、アミン系硬
化剤(住友化学製、商品名:DDM ),イミダゾール系
硬化剤(四国化成製、商品名:2E4MZ-CN)を用いた。 (4) なお、硬化温度の影響を調べるために、エポキシ樹
脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル
製、商品名:エピコート828 )を用い、エポキシ樹脂/
PES/硬化剤の配合比を、アミン系硬化剤(DDM) の
場合は70/30/20、イミダゾール系硬化剤(2E4MZ-CN)
の場合は70/30/5とし、PESを2倍量のジメチルホ
ルムアミド(DMF )で溶解させ、所定量のエポキシ樹脂
と硬化剤を混合して硬化させ、また、エポキシ樹脂のエ
ポキシ当量を184 〜194 、と一定条件にした。
【0034】得られた樹脂硬化物の構造を調べた結果を
図5および図6に示す。 図5(a)〜(d) および図6(a)
〜(d) はそれぞれ、アミン系硬化剤およびイミダ
ゾール系硬化剤に関するものであり、いずれも、上記種
々の硬化温度にて得られた樹脂硬化物の組織を示すSE
M写真であり、(a) 80℃, (b)100℃ , (c)120 ℃ , (d)
150℃の場合を示す。硬化剤としてタイプのアミン系
硬化剤(DDM )を用いた場合、図5の写真から明らかな
ように、樹脂構造は、硬化温度が80℃の時には擬似均一
相溶構造を形成したが、硬化温度が100 ℃以上になると
球状ドメイン構造を形成するようになり、その粒子径は
0.2 μm以上になることが判った。一方、硬化剤として
タイプのイミダゾール系硬化剤(2E4MZ-CN)を用いた
場合、図6の写真から明らかなように、樹脂構造は、逆
に硬化温度が100 ℃以上では擬似均一相溶構造を形成し
たが、硬化温度が80℃の時には粒径約0.3 μmの球状ド
メイン構造を形成するようになることが判った。
【0035】図7および図8はそれぞれ、上記2つのタ
イプの硬化剤について、SEM観察により得られた樹脂
の粒径とエポキシ樹脂の硬化温度の関係を示す図であ
る。これらの図に示す結果から明らかなように、タイ
プのアミン系硬化剤では、硬化温度が90℃以下になると
球状ドメイン構造から擬似均一相溶構造になり、一方、
タイプのイミダゾール系硬化剤では、硬化温度が90℃
以上になると球状ドメイン構造から擬似均一相溶構造に
なることが判った。すなわち、本実施例の条件下では、
エポキシ樹脂の硬化温度によって決定される擬似均一相
形成点は、硬化温度が90℃程度のところに存在すること
が判る。
【0036】(実施例3:架橋密度の影響) (1) エポキシ樹脂/PES系において、骨格構造が同じ
でエポキシ当量の異なるエポキシ樹脂を硬化することに
より、エポキシ樹脂のエポキシ当量が、得られる樹脂硬
化物の樹脂構造にどのような影響を及ぼすかについて調
べ、これにより樹脂の架橋密度の影響を考察した。 (2) エポキシ当量の異なるエポキシ樹脂としては、表2
に示す数種類のビスフェノールA型エポキシ樹脂を用い
た。 (3) なお、エポキシ当量の影響を調べるために、硬化剤
としてイミダゾール系硬化剤(四国化成製、商品名:2E
4MZ-CN)を用い、エポキシ樹脂/PES/硬化剤の配合
比を70/30/5とし、PESを2倍量のジメチルホルム
アミド(DMF )で溶解させ、所定量のエポキシ樹脂と硬
化剤を混合して硬化させ、また、硬化条件を80℃で1時
間, 100℃で1時間, 120℃で1時間, 150℃で3時
間、と一定条件にした。
【0037】得られた樹脂硬化物の構造を調べた結果を
図9および表2に示す。図9(a) 〜(d) は上記種々のエ
ポキシ当量を有するエポキシ樹脂を用いて得られた樹脂
硬化物の組織を示すSEM写真であり、(a) エピコート
828, (b)エピコート1001, (c) エピコート1004, (d) エ
ピコート1007の場合を示す。これらの写真および表2に
示す結果から明らかなように、エポキシ当量が大きく、
言い換えれば架橋密度が低いほど、相分離がし易く、一
方、エポキシ当量が小さく、言い換えれば架橋密度が高
いほど、その樹脂構造は擬似均一相溶構造となることが
判った。すなわち、本実施例の条件下では、エポキシ樹
脂のエポキシ当量(または架橋密度)によって決定され
る擬似均一相形成点は、エポキシ当量が300 前後程度の
ところに存在することが判る。
【0038】
【表2】
【0039】(実施例4:感光性モノマー導入の影響) (1) エポキシ樹脂/PES系において、感光性モノマー
を導入することにより、得られる樹脂硬化物の樹脂構造
および物性にどのような影響を及ぼすかについて調べ、
これにより感光性付与の影響を考察した。 (2) 感光性モノマーとしては、表3に示すように、ジペ
ンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPE-6A、共栄
社油脂製)およびネオペンチルグリコール変性トリメチ
ロールプロパンジアクリレート(R-604 、日本化薬製)
を用い、光開始剤としてベンゾフェノン(BP、関東化学
製)、促進剤としてミヒラーケトン(MK、関東化学製)
を用い、下記硬化条件にて樹脂硬化物を得た。 〔光硬化条件〕3J/cm2 〔熱硬化条件〕80℃で1時間, 100℃で1時間, 120℃
で1時間, 150℃で3時間 (3) なお、感光性モノマーの導入効果を調べるために、
エポキシ樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂
(油化シェル製、商品名:エピコート828 )、硬化剤と
してはイミダゾール系硬化剤(四国化成製、商品名:2E
4MZ-CN)を用い、エポキシ樹脂/PESの配合比を70/
30とし、PESを2倍量のジメチルホルムアミド(DMF
)で溶解させ、所定量のエポキシ樹脂と硬化剤を混合
して硬化させ、また、エポキシ樹脂のエポキシ当量を18
4 〜194 、と一定条件にした。
【0040】得られた樹脂硬化物の構造および物性を調
べた結果を表3に示す。この表3に示す結果から明らか
なように、低温側でエポキシ樹脂とPESが均一相溶し
たままで光反応を利用して硬化させ、さらに熱硬化する
ことによって、粒径のより小さい擬似均一相溶構造を形
成する結果、この硬化物の強度および伸び率がさらに大
きく向上することが判った。
【0041】
【表3】
【0042】さらに、得られた樹脂硬化物について、下
記条件にてTEM観察を行った。その結果、樹脂硬化物
を構成する樹脂の粒径は0.1 μm以下であった。 〔観察条件〕 ミクロトームを用いて、試料を70nmの薄片に切り取
る。 切り取った薄片を四酸化オスミウム(OsO4)のメタノ
ール溶液に24時間浸漬させる。 TEM観察時の加速電圧を80kVとして観察する。 さらに、動的粘弾性にてガラス転移温度Tg を測定し
た。その結果、図10に示すようにTg のピークは1つで
あり、物性的に均質であることが判った。これによっ
て、引張強度や伸び率などの物性値が、構成樹脂成分単
独のものよりも高くなるものと推察する。
【0043】(実施例5:PES配合量の影響) (1) エポキシ樹脂/PES系において、PES配合量を
種々変化させることにより、得られる樹脂硬化物の物性
にどのような影響を及ぼすかについて調べた。 (2) PES配合量としては、0wt%〜60%まで種々変化
させた。 (3) なお、PES配合量の影響を調べるために、エポキ
シ樹脂としてはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂
(日本化薬製、商品名:EOCN-103S )、硬化剤としては
イミダゾール系硬化剤(四国化成製、商品名:2E4MZ-C
N)を用い、PESを2倍量のジメチルホルムアミド(D
MF )で溶解させ、所定量のエポキシ樹脂と硬化剤を混
合して硬化させ、また、エポキシ樹脂のエポキシ当量を
210 〜230 、エポキシ樹脂の硬化条件を80℃で1時間,
100℃で1時間, 120℃で1時間, 150℃で3時間、と
一定条件にした。
【0044】このようにして得た樹脂硬化物の物性変化
を調べた結果を図11に示す。この図に示す結果から明ら
かなように、PESの配合量が増加するにしたがい樹脂
の強度が大きくなり、30%PESのところで極大値を示
し、以降樹脂強度が逆に小さくなった。特に30%PES
の樹脂硬化物は、エポキシ樹脂単独のみならず、PES
単独よりも強度が高い。なお、本実施例の条件下では、
得られる樹脂硬化物は、すべての配合組成において擬似
均一相溶構造を形成していた。このように本実施例の結
果から、エポキシ樹脂/PES系においては、PES配
合量は、15〜50wt%,より好ましくは20〜40wt%が望ま
しいことが判った。
【0045】(実施例6) (1) エポキシ樹脂/PES系において、エポキシ樹脂と
してエポキシ当量が184〜194 のビスフェノールA型エ
ポキシ樹脂(油化シェル製、商品名:エピコート828
)、硬化剤としてイミダゾール系硬化剤(四国化成
製、商品名:2E4MZ-CN)を用い、下記組成でDMF を用い
て樹脂を混合し、 120℃で5時間, 150℃で2時間の硬
化条件にて硬化し、擬似均一相溶構造の樹脂硬化物を得
た。なお、120 ℃での硬化剤のゲル化時間は3分であっ
た。 樹脂組成:エピコート828 /PES /2E4MZ-CN=70/30/
【0046】このようにして得た樹脂硬化物について、
実施例4と同様にしてTEM観察を行った結果、樹脂粒
径は0.1 μm以下であった。また、動的粘弾性測定にて
ガラス転移温度Tg を測定した結果、実施例4と同様に
Tg のピーク値は1つであった。
【0047】さらに、得られた樹脂硬化物の引張強度と
引張伸び率は、それぞれ835kg/cm、8.0 %であり、構
成樹脂成分単独のものより高いことを確認した。なお、
同じ硬化剤,硬化条件で作製したエポキシ樹脂のみから
なる硬化物の引張強度と引張伸び率は、それぞれ約500
kg/cm, 4.8 %であった。
【0048】上述したような結果は、硬化剤としてイミ
ダゾール系硬化剤(四国化成製、商品名:1B2MZ )を用
いた場合でも同様に得られた。この場合、120 ℃での硬
化剤のゲル化時間は44秒であった。
【0049】(実施例7) (1) エポキシ樹脂/PES系において、エポキシ樹脂と
してエポキシ当量が184〜194 のビスフェノールA型エ
ポキシ樹脂(四国化成製、商品名:エピコート828 )、
硬化剤としてイミダゾール系硬化剤(油化シェル製、商
品名:2E4MZ-CN)を用い、下記組成でDMF を用いて樹脂
を混合し、80℃×1時間+ 150℃×4時間の硬化条件に
て硬化し、擬似均一相溶構造の樹脂硬化物を得た。な
お、本実施例は、実施例6とはエポキシ樹脂の硬化温度
が相違するだけである。 樹脂組成:エピコート828 /PES /2E4MZ-CN=70/30/
【0050】このようにして得た樹脂硬化物について、
実施例4と同様にしてTEM観察を行った結果、樹脂粒
径は0.1 μm以下であった。また、動的粘弾性測定にて
ガラス転移温度Tg を測定した結果、実施例4と同様に
Tg のピークは1つであった。
【0051】さらに、得られた樹脂硬化物の引張強度と
引張伸び率は、それぞれ835kg/cm、9.1 %であり、構
成樹脂成分単独のものより高いことを確認した。なお、
同じ硬化剤,硬化条件で作製したエポキシ樹脂のみから
なる硬化物の引張強度と引張伸び率は、それぞれ約500
kg/cm、 4.5 %であった。
【0052】(実施例8) (1) エポキシ樹脂/PES系において、エポキシ樹脂と
してエポキシ当量が184〜194 のビスフェノールA型エ
ポキシ樹脂(油化シェル製、商品名:エピコート828
)、硬化剤としてアミン系硬化剤(住友化学製、商品
名:DDM )を用い、下記組成でDMF を用いて樹脂を混合
し、80℃で6時間, 150℃で2時間の硬化条件にて硬化
し、擬似均一相溶構造の樹脂硬化物を得た。 樹脂組成:エピコート828 /PES /DDM =70/30/18
【0053】このようにして得た樹脂硬化物について、
実施例4と同様にしてTEM観察を行った結果、樹脂粒
径は0.1 μm以下であった。また、動的粘弾性にてガラ
ス転移温度Tg を測定した結果、実施例4と同様にTg
のピークは1つであった。
【0054】さらに、得られた樹脂硬化物の引張強度と
引張伸び率は、それぞれ860kg/cm、8.6 %であり、構
成樹脂成分単独のものより高いことを確認した。なお、
同じ硬化剤,硬化条件で作製したエポキシ樹脂のみから
なる硬化物の引張強度と引張伸び率は、それぞれ約500k
g/cm、5%であった。
【0055】(実施例9)エポキシ樹脂/PES系にお
いて、エポキシ樹脂としてエポキシ当量が210 〜230 の
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製、商
品名:EOCN-103S)、硬化剤としてイミダゾール系硬化
剤(四国化成製、商品名:2E4MZ-CN)を用い、下記組成
でDMF を用いて樹脂を混合し、80℃で1時間、150 ℃で
4時間の硬化条件にて硬化し、疑似均一相溶構造の硬化
物を得た。 樹脂組成:EOCN-103S /PES /2E4MZ-CN=70/30/5
【0056】このようにして得た樹脂硬化物について、
実施例4と同様にしてTEM観察を行った結果、樹脂粒
径は0.1 μm以下であった。また、動的粘弾性測定にて
ガラス転移温度Tg を測定した結果、実施例4と同様に
Tg 点のピークは1つであった。
【0057】さらに、得られた樹脂硬化物の引張強度と
引張伸び率はそれぞれ990 kg/cm、6.5 %であり、構
成樹脂成分単独のものより高いことを確認した。なお、
同じ硬化剤、硬化条件で作成したエポキシ樹脂のみから
なる硬化物の引張強度と引張伸び率は、それぞれ約550
kg/cm、2.8 %であった。
【0058】(実施例10:アディティブ配線板用接着剤
への適用) (1) クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬
製)70重量部、ポリエーテルスルホン(PES,ICI
製)30重量部、イミダゾール系硬化剤(四国化成製、商
品名:2E4MZ-CN)5重量部、およびエポキシ樹脂微粉末
(東レ製)を平均粒径5.5 μmのものを25重量部, 平均
粒径0.5 μmのものを10重量部を混合した後、ジメチル
ホルムアミド/ブチルセロソルブ(1/1)混合溶剤を
添加しながら、ホモディスパー攪拌機で粘度120cpsに調
整し、続いて、3本ロールで混練して接着剤溶液を得
た。 (2) この接着剤溶液を、銅箔が貼着されていないガラス
エポキシ絶縁板(東芝ケミカル製)上に、ローラーコー
ターを用いて塗布し、その後、80℃で1時間,100 ℃で
1時間,120 ℃で1時間,150 ℃で3時間、乾燥硬化さ
せて厚さ20μmの接着剤層を形成した。 (3) 接着剤層を形成した上記基板を、クロム酸水溶液
(CrO , 500g/l)に70℃15分間浸漬して接着剤層の表
面を粗化し、次いで、中和溶液(シプレイ製)に浸漬し
たのち水洗した。 (4) 接着剤層の表面を粗化した基板にパラジウム触媒
(シプレイ製)を付与して接着剤層の表面を活性化さ
せ、その後、表4に示す組成のアディティブ用無電解め
っき液に11時間浸漬して、めっき膜の厚さが25μmの無
電解銅めっきを施した。
【0059】
【表4】
【0060】(比較例1:アディティブ配線板用接着剤
への適用) (1) 以下に示す条件以外は実施例10と同様にして、エポ
キシ樹脂微粉末含有の接着剤溶液を調製し、銅箔が貼着
されていないガラスエポキシ絶縁板(東芝ケミカル製)
上に、厚さ20μmの接着剤層とめっき膜の厚さが25μm
の無電解銅めっき膜を形成した。 〔樹脂組成〕 フェノールノボラック型エポキシ樹脂: 100重量部 イミダゾール系硬化剤(四国化成製、商品名:2P4MH
Z):4重量部 〔接着剤層の硬化条件〕 100 ℃で1時間,150 ℃で5時間
【0061】実施例10および比較例1にて形成した無電
解銅めっき膜のピール強度、ならびに接着剤層の絶縁抵
抗とガラス転移点Tg を測定した。その結果を表5に示
す。この表に示す結果から明らかなように、擬似均一相
溶構造を形成する本発明にかかるPES変性エポキシ樹
脂を配線板用接着剤に適用することにより、接着強度、
耐熱性および電気絶縁性が、従来のものに比べ著しく向
上することが判った。
【0062】
【表5】
【0063】(実施例11:多層配線板の層間絶縁材料へ
の適用) (1) ガラスエポキシ銅張積層板(東芝ケミカル製)上に
感光性ドライフィルム(デュポン製)をラミネートし、
所望の導体回路パターンが描画されたマスクフィルムを
通して紫外線露光させ画像を焼きつけた。次に、1,1,1-
トリクロロエタンで現像を行い、塩化第2銅エッチング
液を用いて非導体部の銅を除去したのち、塩化メチレン
でドライフィルムを剥離した。これにより、基板上に複
数の導体パターンからなる第1層導体回路を有する配線
板を作成した。 (2) エポキシ樹脂粒子(東レ製、平均粒径:3.9 μm)
200gを5lのアセトン中に分散させて得たエポキシ樹脂
粒子懸濁液を、ヘンシェルミキサー内で攪拌しながら、
この懸濁液中に、アセトン1lに対してエポキシ樹脂
(三井石油化学製)を30g の割合で溶解させたアセトン
溶液中にエポキシ樹脂粉末(東レ製、平均粒径:0.5 μ
m)300gを分散させて得た懸濁液を滴下することによ
り、上記エポキシ樹脂粒子表面にエポキシ樹脂粉末を付
着せしめた後、上記アセトンを除去し、その後、150 ℃
に加熱して擬似粒子を作成した。この擬似粒子は、平均
粒径が約4.3 μmであり、約75重量%がこの平均粒径を
中心として±2μmの範囲に存在していた。 (3) クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェル
製)の50%アクリル化物 を70重量部、ポリエーテルスルホン(PES)30重量
部、ジアリルテレフタレート15重量部、2-メチル-1-[4-
( メチルチオ) フェニル]-2-モリフォリノプロパノン-1
(チバ・ガイギー製)4重量部、イミダゾール系硬化剤
(四国化成製、商品名:2E4MZ-CN)4重量部、および前
記(2) で作成した擬似粒子50重量部を混合した後、ブチ
ルセロソルブを添加しながら、ホモディスパー攪拌機で
粘度250cpsに調整し、続いて、3本ロールで混練して感
光性樹脂組成物の溶液を調製した。 (4) この感光製樹脂組成物の溶液を、前記(1) で作成し
た配線板上に、ナイフコーターを用いて塗布し、水平状
態で20分間放置してから70℃で乾燥させて厚さ約50μm
の感光性樹脂絶縁層を形成した。 (5) 前記(4) の処理を施した配線板に、100 μmφの黒
円が印刷されたフォトマスクフィルムを密着させ、超高
圧水銀灯500mj/cm で露光した。これをクロロセン溶
液で超音波現像処理することにより、配線板上に100 μ
mφのバイアホールとなる開口を形成した。さらに、前
記配線板を超高圧水銀灯により約3000mj/cmで露光
し、100 ℃で1時間、その後150 ℃で10時間の加熱処理
を行うことによりフォトマスクフィルムに相当する寸法
精度に優れた開口を有する樹脂絶縁層を形成した。 (6) 前記(5) の処理を施した配線板を、クロム酸水溶液
(CrO, 500g/l)に70分間浸漬して樹脂絶縁層の表面
を粗化し、次いで、中和溶液(シプレイ製)に浸漬した
のち水洗した。 (7) 樹脂絶縁層の表面を粗化した基板にパラジウム触媒
(シプレイ製)を付与して絶縁層の表面を活性化させ、
その後、表4に示す組成のアディティブ用無電解めっき
液に11時間浸漬して、めっき膜の厚さが25μmの無電解
銅めっきを施した。 (8) 前記(4) 〜(7) までの工程をさらに2回繰り返しす
ことにより、配線層が4層のビルドアップ多層配線板を
製造した。
【0064】(比較例2:多層配線板の層間絶縁材料へ
の適用) (1) 以下に示す樹脂組成以外は実施例11と同様にして、
エポキシ樹脂からなる擬似粒子含有の感光性樹脂組成物
の溶液を調製し、第1層導体回路を有する配線板上に、
厚さ約50μmの層間樹脂絶縁層とめっき膜の厚さが25μ
mの無電解銅めっき膜を交互に形成し、配線層が4層の
ビルドアップ多層配線板を製造した。 〔樹脂組成〕 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェル製)の 50%アクリル化物:60重量部 ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル製) :40重量部 ジアリルテレフタレート :15重量部 2-メチル-1-[4-( メチルチオ) フェニル]-2-モリフォリノ プロパノン-1(チバ・ガイギー製) :4重量部 イミダゾール系硬化剤(四国化成製、商品名:2P4MHZ) :4重量部
【0065】実施例11および比較例2にて製造したビ
ルドアップ多層配線板における無電解銅めっき膜のピー
ル強度、ならびに層間樹脂絶縁層の絶縁抵抗とガラス転
移点Tg を測定した。さらに、−65℃×30min 〜125 ℃
×30min のヒートサイクル試験を行った。その結果を表
6に示す。この表に示す結果から明らかなように、本発
明の樹脂複合体をビルドアップ多層配線板の樹脂絶縁層
に適用することにより、接着強度、絶縁性、耐熱性およ
びヒートサイクル特性が従来のものに比べ著しく向上す
ることが判った。
【0066】
【表6】
【0067】(実施例12:エポキシ樹脂/PES系)
エポキシ樹脂/PES系において、エポキシ当量が210
〜230 のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化
薬製、商品名:ECON-103S )70重量部、ポリエーテルス
ルホン(PES,ICI製)30重量部およびイミダゾー
ル系硬化剤(四国化成製、商品名:2E4MZ-CN)5重量部
を、DMFを用いて混合し、その後、80℃で1時間、15
0 ℃で5時間の硬化条件にて硬化し、疑似均一相溶構造
の硬化物を得た。
【0068】このようにして得た樹脂硬化物について、
実施例4と同様にしてTEM観察を行った結果、樹脂粒
径は0.1 μm以下であった。また、動的粘弾性測定にて
ガラス転移温度Tg を測定した結果、実施例4と同様に
Tg 点のピークは1つであった。
【0069】さらに、得られた樹脂硬化物の引張強度と
引張伸び率はそれぞれ995 kg/cm,6.4 %であり、構
成樹脂成分単独のものより高いことを確認した。なお、
同じ硬化剤,硬化条件で作成したエポキシ樹脂のみから
なる硬化物の引張強度と引張伸び率は、それぞれ約550
kg/cm ,3.0 %であった。
【0070】(実施例13:エポキシ樹脂/PSF系)
エポキシ樹脂/ポリスルホン(PSF)系において、エ
ポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(油
化シェル製、商品名:エピコート828 )、硬化剤として
イミダゾール系硬化剤(四国化成製、商品名:2E4MZ-C
N)を用い、下記組成でDMF を用いて樹脂を混合し、80
℃で1時間、150 ℃で5時間の硬化条件にて硬化し、疑
似均一相溶構造の硬化物を得た。樹脂組成:エピコート
828 /PSF /イミダゾール系硬化剤=70/30/5
【0071】このようにして得た樹脂硬化物について、
実施例4と同様にしてTEM観察を行った結果、樹脂粒
径は0.1 μm以下であった。また、動的粘弾性測定にて
ガラス転移温度Tg を測定した結果、実施例4と同様に
Tg 点のピークは1つであった。
【0072】さらに、得られた樹脂硬化物の引張強度と
引張伸び率はそれぞれ800 kg/cm,7.8 %であり、構
成樹脂成分単独のものより高いことを確認した。なお、
同じ硬化剤,硬化条件で作成したエポキシ樹脂のみから
なる硬化物の引張強度と引張伸び率は、それぞれ約500
kg/cm ,4.5 %であった。また、この実施例13で得
られた樹脂は、誘電率が4.0 で、熱膨張率が5.5 ×10
−5/℃であり、シリカ粉などと混合して半導体パッケ
ージの封止樹脂としても使用できる。
【0073】(実施例14:エポキシ変成ポリイミド樹
脂/PSF系)エポキシ変成ポリイミド樹脂/ポリスル
ホン(PSF)系において、エポキシ変成ポリイミド樹
脂(三井石油化学工業製、商品名:TA-1800 )とイミダ
ゾール系硬化剤(四国化成製、商品名:2E4MZ-CN)を用
い、下記組成でDMFを用いて樹脂を混合し、80℃で1
時間、150 ℃で5時間の硬化条件にて硬化し、疑似均一
相溶構造の硬化物を得た。樹脂組成:TA-1800 /PSF /
イミダゾール系硬化剤=75/25/5
【0074】このようにして得た樹脂硬化物について、
実施例4と同様にしてTEM観察を行った結果、樹脂粒
径は0.1 μm以下であった。また、動的粘弾性測定にて
ガラス転移温度Tg を測定した結果、実施例4と同様に
Tg 点のピークは1つであった。
【0075】さらに、得られた樹脂硬化物の引張強度と
引張伸び率はそれぞれ980 kg/cm,9.0 %であり、構
成樹脂成分単独のものより高いことを確認した。なお、
同じ硬化剤、硬化条件で作成したエポキシ樹脂のみから
なる硬化物の引張強度と引張伸び率は、それぞれ約700
kg/cm ,6.0 %であった。
【0076】(実施例15:感光性樹脂/PES系)
(1) 感光性樹脂/PES系において、感光性樹脂として
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェル製)
の 100%アクリル化物、感光性モノマーとしてジペンタ
エリスリトールヘキサアクリレート(共栄社油脂製)お
よびネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパ
ンジアクリレート(日本化薬製)、光開始剤としてベン
ゾフェノン(関東化学製)、促進剤としてミヒラーケト
ン(関東化学製)を用い、下記組成,硬化条件にて樹脂
硬化物を得た。〔樹脂組成〕 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の100%アクリル化物 :70重量部 PES :30重量部 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート :10重量部 ネオペンチルグリコール 変性トリメチロールプロパンジアクリレート :5重量部 ベンゾフェノン :5重量部 ミヒラーケトン :0.5 重量部 〔硬化条件〕 乾燥 : 80℃×1時間 光硬化: 3J/cm 後硬化: 150 ℃×2時間
【0077】このようにして得られた樹脂硬化物の引張
強度と引張伸び率は、それぞれ865kg/cm、6.8%であ
り、構成樹脂成分単独のものより高いことを確認した。
なお、同じ硬化条件で作成した感光性樹脂のみからなる
硬化物の引張強度と引張伸び率は、それぞれ約560 kg/
cm、3.1 %であった。
【0078】なお、上記ピール強度、絶縁抵抗、ガラス
転移点Tg およびヒートサイクル試験の方法または評価
方法を説明する。 (1) ピール強度 JIS−C−6481 (2) 絶縁抵抗 基板に層間絶縁層を形成し、粗化したのち触媒付与を行
い、次いで、めっきレジストを形成してレジストパター
ンを作成した。その後、無電解めっきを施し、パターン
間の絶縁抵抗を測定した。なお、パターン間絶縁性は、
L/S=75/75 μmのくしばパターンにて、80℃/85%/24
V,1000時間後の値を測定した。 (3) ガラス転移点Tg 動的粘弾性測定により測定した。 (4) ヒートサイクル試験 −65℃×30min 〜125 ℃×30min のヒートサイクル試験
を行い、クラックの発生と層間絶縁層の剥離の有無を調
べ、その耐久サイクル数で評価した。
【0079】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、フ
ェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂,エポキシ変
性樹脂などの熱硬化性樹脂が示す特有の物性,例えば耐
熱性を具えると共に、複合化させる熱可塑性樹脂本来の
物性よりもさらに高い物性値を示す新規な樹脂複合体を
確実に提供することができる。同様に、アクリル系樹脂
等の感光性樹脂が示す特性を具えると共に、複合化させ
る熱可塑性樹脂本来の物性よりもさらに高い物性値を示
し、さらに、耐薬品性にも優れる新規な樹脂複合体をも
得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱可塑性樹脂−熱硬化性樹脂の混合系の状態図
を示す図である。
【図2】(a) 本発明にかかる樹脂複合体の擬似均一相溶
構造を示す結晶構造のSEM写真、(b) 従来技術にかか
る樹脂複合体の共連続粒子構造を示す結晶構造のSEM
写真、および(c)本発明にかかる樹脂複合体の擬似均一
相溶構造を示す結晶構造のTEM写真である。
【図3】各種イミダゾール系硬化剤(a)2PHZ-CN, (b)2PZ
-OK, (c)2E4MZ-CN, (d)1B2MZを用いて得られた樹脂硬化
物の結晶構造を示すSEM写真である。
【図4】硬化剤のゲル化時間と複合体を構成する樹脂の
粒径との関係を示す図である。
【図5】アミン系硬化剤に関し、各種硬化温度(a) 80
℃, (b)100℃ , (c)120 ℃ , (d)150℃にて得られた樹
脂硬化物の結晶構造を示すSEM写真である。
【図6】イミダゾール系硬化剤に関し、各種硬化温度
(a) 80℃, (b)100℃ , (c)120 ℃, (d) 150℃にて得ら
れた樹脂硬化物の結晶構造を示すSEM写真である。
【図7】樹脂の硬化温度と複合体を構成する樹脂の粒径
との関係を示す図(アミン系硬化剤の場合)である。
【図8】樹脂の硬化温度と複合体を構成する樹脂の粒径
との関係を示す図(イミダゾール系硬化剤の場合)であ
る。
【図9】各種エポキシ当量のエポキシ樹脂(a) エピコー
ト828, (b)エピコート1001, (c) エピコート1004, (d)
エピコート1007を用いて得られた樹脂硬化物の結晶構造
を示すSEM写真である。
【図10】本発明にかかる樹脂複合体の動的粘弾性測定結
果を示す図である。
【図11】本発明にかかる樹脂複合体の強度試験測定結果
で、(a) 引張強さ,(b)引張伸び率を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 101:00) C08L 101:00)

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ
    樹脂およびエポキシ変性樹脂から選ばれるいずれか1つ
    の熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とからなる硬化された樹
    脂複合体であって、前記熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂と
    が擬似均一相溶構造を有し、その擬似均一相溶構造は、
    前記複合体を構成する樹脂粒子の粒径が、透過型電子顕
    微鏡観察による測定値で0.1μm以下であり、かつ昇
    温速度が5℃/分、振動周波数6.28rad/秒の条
    件で測定した動的粘弾性測定による樹脂のガラス転移温
    度のピーク数が1つである特性を示すものであることを
    特徴とする樹脂複合体。
  2. 【請求項2】 フェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ
    樹脂およびエポキシ変性樹脂から選ばれるいずれか1つ
    の熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とからなり、かつ感光性
    が付与されてなる樹脂複合体であって、熱硬化性樹脂と
    熱可塑性樹脂とが擬似均一相溶構造を有し、その擬似均
    一相溶構造は、前記複合体を構成する樹脂粒子の粒径
    が、透過型電子顕微鏡観察による測定値で0.1μm以
    下であり、かつ昇温速度が5℃/分、振動周波数6.2
    8rad/秒の条件で測定した動的粘弾性測定による樹
    脂のガラス転移温度のピーク数が1つである特性を示す
    ものであることを特徴とする樹脂複合体。
  3. 【請求項3】 フェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ
    樹脂およびエポキシ変性樹脂から選ばれるいずれか1つ
    の熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とからなる樹脂複合体で
    あって、感光性樹脂と熱可塑性樹脂とが擬似均一相溶構
    造を有し、その擬似均一相溶構造は、前記複合体を構成
    する樹脂粒子の粒径が、透過型電子顕微鏡観察による測
    定値で0.1μm以下であり、かつ昇温速度が5℃/
    分、振動周波数6.28rad/秒の条件で測定した動
    的粘弾性測定による樹脂のガラス転移温度のピーク数が
    1つである特性を示すものであることを特徴とする樹脂
    複合体。
  4. 【請求項4】 上記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂で
    あることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記
    載の樹脂複合体。
  5. 【請求項5】 上記樹脂複合体における熱硬化性樹脂あ
    るいは感光性樹脂と熱可塑性樹脂の配合比は、熱可塑性
    樹脂の含有量で15〜50wt%である請求項1〜4のいずれ
    か1つに記載の樹脂複合体。
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