JP2001107035A - 蓄熱材およびこれを用いた空調装置用蓄熱器 - Google Patents

蓄熱材およびこれを用いた空調装置用蓄熱器

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JP2001107035A
JP2001107035A JP2000220912A JP2000220912A JP2001107035A JP 2001107035 A JP2001107035 A JP 2001107035A JP 2000220912 A JP2000220912 A JP 2000220912A JP 2000220912 A JP2000220912 A JP 2000220912A JP 2001107035 A JP2001107035 A JP 2001107035A
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glacial acetic
urea
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Kenzo Kaneda
堅三 金田
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Original Assignee
Denso Corp
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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 過冷却を防止でき、融解・凝固を繰り返して
も相分離せず安定して使用できる安価な蓄熱材を提供す
る。 【解決手段】 蓄熱材の主成分として氷酢酸を用いるこ
とで、融解・凝固を繰り返しても相分離しない蓄熱材を
得ることができる。この蓄熱材に融点・凝固点調整剤を
添加することで冷房空調用に適した融解温度を得ること
ができる。また、蓄熱材には、過冷却防止剤を氷酢酸に
溶解可能な量より多く添加することで容易に過冷却を防
止できる。具体的には、氷酢酸を主成分として、尿素を
添加することで、氷酢酸の過冷却を防止できるととも
に、氷酢酸の融点を冷房空調用として適した温度に下げ
ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、融解・凝固にとも
なう潜熱を利用する蓄熱材およびこれを用いた蓄熱器に
関する。
【0002】
【従来の技術】近年、住宅用冷房における省エネルギ等
の目的のために融解潜熱を利用する蓄熱材が使用されて
きている。この代表的な例として深夜電力を利用した蓄
熱システムがある。これは、安価な深夜電力を利用して
冷凍装置を運転することにより蓄熱材を凝固させて蓄熱
(蓄冷)し、昼間にその融解潜熱を利用して放冷し、冷
房を行うものである。
【0003】しかし、凝固点・融点が0℃以下である蓄
熱材は、冷房用の空調温度(7〜12℃)が得られる凝
固点・融点(5〜10℃)に比較してかなり低いため、
蓄熱材を冷やすための冷凍装置の冷媒温度をそれだけ低
くする必要がある。このためコンプレッサ動力が大きく
なり冷凍装置の運転コストが大きくなるという問題があ
る。このため、コンプレッサ動力を低減するために蓄熱
材の凝固点・融点は5〜10℃の範囲内であることが望
ましい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような凝固点・融
点を持つ蓄熱材として、米国特許第5,037,571
号、第4,689,164号明細書に、NaOH水溶液
やNa2SO4・10H2Oを主原料とした蓄熱材が記載
されている。しかしながら、これらの蓄熱材は融解・凝
固を繰り返すと相分離を起こしやすく、徐々に融解潜熱
(蓄熱量)が低下するという問題がある。さらに過冷却
を起こしやすいという問題もある。また、特開平9−2
96163号公報にはテトラデカン等のパラフィン類を
用いた蓄熱材が記載されているが、このようなパラフィ
ン類は価格が高い上に、蓄熱材を収納するプラスチック
容器を溶かしてしまうという問題がある。
【0005】また、酢酸は融解潜熱が大きく、従来より
蓄熱材として用いることが知られている。このような酢
酸を蓄熱材として用いたものに、(1)特開平1−43
796号公報、(2)特開昭58−138772号公
報、(3)特開平2−1195号公報、(4)特開昭5
8−79080号公報、(5)特開昭58−14128
1号公報に記載されたものがある。
【0006】しかしながら、酢酸は過冷却を生じやすい
ため過冷却を防止する必要がある。また、氷酢酸(純度
99%)の融点は16.7℃であり、冷房用に適した温
度(7〜12℃)が得られる蓄熱材の融点(5〜10
℃)に比較すると若干高いため、融点を調整する必要が
ある。
【0007】上記(2)(4)(5)の公報に記載の蓄
熱材では、過冷却防止剤が添加されていないので蓄熱材
として不適である。上記(1)の公報に記載の蓄熱材で
は、過冷却防止剤として塩化カルシウムが記載されてい
るが、添加量についての記載はなく、実際にはある一定
量以上添加しないと過冷却防止効果は得られない。上記
(3)の公報に記載の蓄熱材では、過冷却防止剤として
の尿素添加量が20重量%以下と記載されているが、実
際にはある一定量以上添加しないと過冷却防止効果は得
られない。また、(3)の公報の蓄熱材では融点を10
℃以下に調整することができない。
【0008】そこで、上記問題点に鑑み、酢酸を主成分
とした蓄熱材であって、過冷却を防止できるとともに融
点を調整でき、融解・凝固を繰り返しても相分離せず安
定して使用できる安価な蓄熱材を提供することを目的と
する。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1に記載の発明は、氷酢酸を主成分とする蓄
熱材であって、尿素または塩化カルシウムのうち少なく
とも1種と、カルボン酸(酢酸を除く)または多価アル
コールのうち少なくとも1種とが添加されていることを
特徴としている。
【0010】過冷却防止剤として、尿素または塩化カル
シウムを用い、融点・凝固点調整剤として、カルボン酸
(酢酸を除く)または多価アルコールを用いることで、
酢酸を主成分とした蓄熱材の過冷却を容易に防止できる
とともに、融点を容易に調整できる。
【0011】また、請求項2に記載の発明では、尿素が
6重量%以上添加されていることを特徴としている。こ
のように、氷酢酸に尿素を添加することで、氷酢酸の過
冷却を防止できるとともに、氷酢酸の融点を下げる効果
が得られる。さらに、尿素の添加によって氷酢酸が融解
・凝固する際の体積変動を少なくすることができ、蓄熱
材を収容する容器の破損を防止できる。また、氷酢酸に
尿素を6重量%以上添加することで氷酢酸中に未溶解の
尿素が残留し、これが種結晶となって氷酢酸が凝固しや
すくなり、過冷却を容易に防止できる。
【0012】また、請求項3に記載の発明では、塩化カ
ルシウムが8重量%以上添加されていることを特徴とし
ている。このように、氷酢酸に塩化カルシウムを添加す
ることで、氷酢酸の過冷却を防止できるとともに、氷酢
酸の融点を下げる効果が得られる。また、氷酢酸に塩化
カルシウムを8重量%以上添加することで氷酢酸中に未
溶解の塩化カルシウムが残留し、これが種結晶となって
氷酢酸が凝固しやすくなり、過冷却を容易に防止でき
る。
【0013】上記カルボン酸は、請求項4に記載の発明
のように、蟻酸またはプロピオン酸を用いることがで
き、上記多価アルコールは、請求項5に記載の発明のよ
うに、グリセリンまたはエチレングリコールを用いるこ
とができる。これらの添加量を調整することにより、氷
酢酸を主成分とする蓄熱材の融点を連続的に調整するこ
とができる。また、これらは複合添加しても沈殿物を生
成することもなく、過冷却防止効果も失われず、融解潜
熱の大きな低下もみられない。
【0014】また、請求項6に記載の発明では、氷酢酸
を主成分とする蓄熱材であって、尿素と蟻酸とが添加さ
れ、尿素は6重量%〜40重量%の範囲で添加されてい
ることを特徴としている。
【0015】また、上記蓄熱材は、請求項7に記載の発
明のように、空調装置用蓄熱器として用いることができ
る。この空調装置用蓄熱器は、例えば車両用空調装置や
住宅用空調装置に適用することができ、冷房に蓄熱材の
融解潜熱を利用することで、省エネルギ等の効果を得る
ことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を適用した実施形態
について説明する。 (第1実施形態)蓄熱材の主成分として、一般的な薬品
であり、入手容易で安価である氷酢酸を用いる。本明細
書において氷酢酸とは、純度95%以上の酢酸を意味す
る。氷酢酸の純度は、過冷却防止効果の点で高い方が好
ましく、本実施形態では純度99%の氷酢酸を使用して
いる。この氷酢酸(純度99%)は、融点16.7℃、
融解潜熱44cal/gであって、その融点は融解潜熱
を充分に冷房に使用できる温度である。また、氷酢酸は
融解・凝固を繰り返しても塩水和物等のように相分離を
起こさず安定しているという長所を有する。
【0017】一方、氷酢酸の融点は、冷房空調用に適し
た温度(7〜12℃)が得られる蓄熱材の融点・凝固点
(5〜10℃)に比較すると若干高い。そこで、本発明
者が氷酢酸の融点・凝固点を調整できる添加材(融点・
凝固点調整剤)について検討したところ、水が最も適し
ていることを見出した。
【0018】図1は、氷酢酸−水系蓄熱材における水分
添加量と融点・凝固点との関係を示している。図1から
氷酢酸の融点・凝固点は、水分添加量に伴って変化して
いることがわかる。従って、氷酢酸に対する水分添加量
を調整することにより、氷酢酸の融点・凝固点を容易に
調整することが可能である。また、図1から蓄熱材の融
点・凝固点を5〜10℃に調整するためには、氷酢酸に
対して3.4〜7.4重量%の水分を添加すればいいこ
とがわかる。但し、水分添加量が多いと蓄熱材の融解潜
熱が減少することから、水分添加量は少ない方が望まし
い。
【0019】ところで、氷酢酸は過冷却を起こしやすい
という性質を持っている。水は氷酢酸の融点調整剤とし
て優れている一方、過冷却を防止する効果はない。ま
た、氷酢酸に水分を添加した場合には、さらに、過冷却
防止剤を添加しても過冷却防止効果を得ることは困難で
ある。過冷却状態の蓄熱材を凝固させるには、溶液中で
金属板同士を擦りあわせる等の機械的刺激を与える方法
がある。しかしながら、このような機械的刺激で過冷却
を抑えて蓄熱材を凝固させる方法は煩雑であり、コスト
が高い。
【0020】そこで、本発明者が、氷酢酸の過冷却を簡
易に防止できる過冷却防止剤について鋭意検討したとこ
ろ、尿素が過冷却防止剤として適していることを見出し
た。尿素は肥料として一般的に用いられており、入手容
易で安価な物質である。また、尿素は氷酢酸の過冷却を
防止すると同時に、融点・凝固点調整剤としての水分を
添加しなくとも氷酢酸の融点を16.7℃から9℃に下
げる効果があることがわかった。これは冷房空調用に用
いる蓄熱材の望ましい融点範囲内(5〜10℃)であ
る。
【0021】さらに、氷酢酸に尿素を添加することで、
氷酢酸の融解・凝固時における体積変動が減少するとい
う効果がある。何も添加していない状態の氷酢酸では、
液相から固相に相変化する際に(凝固する際に)体積は
約17%減少する。これに対し、尿素を添加した氷酢酸
では、凝固する際に体積は2%減少するのみである。従
って、蓄熱材を容器に入れて使用する場合に、融解・凝
固を繰り返し行ったとしても、体積変動が小さいことか
ら容器の破損を回避できるという利点がある。
【0022】本発明者が、氷酢酸(純度99%)に対す
る尿素の添加量について、融解・凝固の実験を行ったと
ころ、尿素の添加量が6重量%未満では蓄熱材を0℃ま
で冷却しても自然凝固せず、過冷却防止効果が得られな
かった。一方、氷酢酸に尿素を6重量%以上添加した場
合には、30℃の室温付近でも氷酢酸中に未溶解の尿素
が残留する。この未溶解分の尿素が種結晶となり、9℃
で蓄熱材は自然凝固して過冷却は起きなかった。尿素を
添加する際の氷酢酸の温度によって最適な尿素の添加量
は異なるが、氷酢酸中に未溶解の尿素を確実に残留させ
るという点から8重量%以上が望ましい。また、尿素の
添加量は、多すぎると蓄熱材の蓄熱密度が減少するので
40重量%以下であることが望ましく、氷酢酸中に未溶
解の尿素が確実に存在する範囲で少ないほど望ましい。
【0023】次に、本発明者が本実施形態の氷酢酸−尿
素系蓄熱材について行ったヒートサイクル試験を図2に
基づいて説明する。図2は蓄熱材の融解・凝固特性を示
しており、縦軸を温度(℃)、横軸を時間(分)として
いる。
【0024】このヒートサイクル試験では、氷酢酸(純
度99%)に9重量%の尿素を添加して攪拌混合した蓄
熱材20グラムを用意した。この蓄熱材を中央部に熱電
対が備えられた試験管に入れて用いた。そして、温度の
異なる2つの恒温槽を用意し、第1恒温層の水温を0
℃、第2恒温層の水温を30℃に調整した。そして、蓄
熱材を入れた試験管を第1恒温槽と第2恒温槽に交互に
入れることを繰り返して昇温・降温のヒートサイクルを
実施した。
【0025】図2に示すように、試験管を第1恒温層か
ら第2恒温層に移すと、水温は0℃から直ちに30℃に
なり、蓄熱材の温度Thsは水温Twに追従して上昇す
る。所定時間経過後、試験管を第2恒温層から第1恒温
層に移すと、水温は30℃から直ちに0℃になり、蓄熱
材の温度Thsは水温Twに追従して下降する。このと
き、蓄熱材の温度Thsは9℃で明確な凝固点を示し
た。図2において斜線で示す水温Twと蓄熱材温度Th
sとの差が蓄熱材の蓄熱量となる。
【0026】以上の昇温・降温のヒートサイクルを10
0回繰り返したところ、蓄熱材は相分離を起こさず安定
していた。また、図2に示す融解・凝固曲線に変化はな
かった。すなわち、蓄熱材の蓄熱・放熱特性に変化は起
こらず、融解潜熱は低下しなかった。
【0027】次に、本発明者が、尿素以外の氷酢酸の過
冷却を防止できる材料について検討したところ、塩化カ
ルシウムにも過冷却防止効果があることを見いだした。
この塩化カルシウムの添加量は8重量%以上でないと過
冷却防止効果が得られない。すなわち、添加量が8重量
%より少ないと添加した全ての塩化カルシウムが氷酢酸
に融解してしまい、種結晶となる未溶解部分が氷酢酸に
存在しなくなるからである。
【0028】図3は、氷酢酸−塩化カルシウム系蓄熱材
における塩化カルシウム添加量と融点変化との関係を示
しており、図4は、氷酢酸−塩化カルシウム系蓄熱材が
融解・凝固する際の温度変化を示している。図4に示す
例では、氷酢酸に塩化カルシウムを16.4重量%添加
した蓄熱材を用いて、上記図2と同様の条件で実験を行
っている。
【0029】図3中Aで示されるように、塩化カルシウ
ムは単独でも添加量を調整することで、融点を連続的に
変化させる効果があることが分かる。また、この蓄熱材
は、図3中Bで示されるように共融点が0℃付近に存在
するので、図4に示すように融解・凝固曲線は2つのピ
ーク(凝固点)を示す。図4に示すように氷酢酸−塩化
カルシウム系蓄熱材は凝固する際、第1のピークが9℃
付近に現れ、第2のピークが2℃付近に現れる。すわな
ち、この蓄熱材は温度が下降する際に、第1のピーク温
度で凝固を開始し、第1のピーク温度から第2のピーク
温度の間の温度では一部凝固した状態で推移し、第2の
ピーク温度で完全に凝固する。
【0030】次に、氷酢酸−尿素系蓄熱材に融点・凝固
点調整剤を添加する場合について説明する。本発明者の
検討によれば、氷酢酸−尿素系蓄熱材にカルボン酸(酢
酸を除く)若しくは多価アルコールを添加することで連
続的に蓄熱材の融点を調整することができ、これらが融
点・凝固点調整剤として優れていることを見いだした。
これらの融点・凝固点調整剤は、複合添加しても沈殿物
を生成することがなく、過冷却防止効果が失われること
もなく、融解潜熱の大きな低下もみられない。また、い
ずれも価格の安価なものである。
【0031】図5は、氷酢酸−尿素系蓄熱材に融点・凝
固点調整剤としてカルボン酸(酢酸を除く)を添加した
ときの融点変化を示している。図5中、Cは氷酢酸−尿
素(14重量%)系蓄熱材に蟻酸を添加した場合の融点
変化を示し、Dは氷酢酸−尿素(11重量%)系蓄熱材
にプロピオン酸を添加した場合の融点変化を示してい
る。
【0032】図5に示すように、カルボン酸の添加量を
調整することにより、蓄熱材の融点を10℃〜−10℃
の間で連続的に変化させることができた。また、複合添
加による沈殿物生成もみられなかった。カルボン酸の必
要添加量は所望の融点によって異なるが、冷房用蓄熱材
として適当な融点を得るために、例えば蟻酸であれば0
〜40重量%の範囲(0重量%は除く)で添加すること
が望ましい。
【0033】このとき上述のように尿素は6〜40重量
%の範囲で添加することが望ましい。6重量%以下だ
と、室温で完全融解して氷酢酸中に種結晶が存在しなく
なるからであり、40重量%以上添加した場合には、蓄
熱材の蓄熱量が低下してしまうからである。なお、尿素
は蟻酸への溶解性に優れるため、蟻酸の添加量を増やし
た場合には尿素の添加量も増やす必要がある。
【0034】図6、図7は、氷酢酸−尿素−カルボン酸
系蓄熱材についてヒートサイクル試験を行ったときに、
蓄熱材が融解・凝固する際の温度変化を示している。図
6における蓄熱材は、氷酢酸を主成分として尿素が14
重量%、蟻酸が2.8重量%添加され、図7における蓄
熱材は、氷酢酸を主成分として尿素が11重量%、プロ
ピオン酸が3.2重量%添加されている。ヒートサイク
ル試験の条件は、上記図2で説明したヒートサイクル試
験と同様である。但し、恒温槽は−10℃と30℃に調
整した。
【0035】図6、図7において斜線で示すように、蓄
熱材の発熱部の面積が大きく、蓄熱材の蓄熱量低下が少
ないことが分かる。また、5℃付近で明確な凝固点を示
した。
【0036】図8は、氷酢酸−尿素(10重量%)系蓄
熱材に融点・凝固点調整剤として多価アルコールを添加
したときの融点変化を示している。図8中、Eは氷酢酸
−尿素(10重量%)系蓄熱材にグリセリンを添加した
場合の融点変化を示し、Fは氷酢酸−尿素(10重量
%)系蓄熱材にエチレングリコールを添加した場合の融
点変化を示している。
【0037】図8に示すように、多価アルコールの添加
量を調整することで、蓄熱材の融点を連続的に変化させ
ることができた。また、この場合にも沈殿などの生成は
みられなかった。
【0038】なお、カルボン酸や多価アルコールからな
る融点・凝固点調整材は、上記で説明した尿素を過冷却
防止剤とする蓄熱材のみならず、塩化カルシウムを過冷
却防止剤とする蓄熱材に添加しても同様の融点調整効果
を得ることができる。
【0039】(第2実施形態)上記第1実施形態で説明
した蓄熱材は、例えばカプセル状の蓄熱材容器(蓄熱カ
プセル)に充填して使用することができる。これを第2
実施形態として説明する。
【0040】蓄熱カプセルの例を図9に示す。容器の材
質としては、ポリプロピレン等のプラスチック、あるい
はアルミニウム、ステンレス等の氷酢酸に侵されない金
属を用いることができる。本実施形態ではポリプロピレ
ン容器を用いている。
【0041】図9(a)に示す球状蓄熱カプセル1は、
ポリプロピレンからなる中空球をA−Aで切断して本体
部2と蓋部3に分離して、本体部2に蓄熱材充填用の開
口部2aを形成したものである。室温状態で液体の蓄熱
材を開口部2aから本体部2に注入し、後の作業容易化
のため0℃前後に冷却して固体化させる。その後、本体
部2と蓋部3をポリプロピレンの融点である165℃以
上(例えば250℃)に加熱した金属板で加熱して熱溶
着して容器を密封する。
【0042】また、図9(b)に示すパイプ状蓄熱カプ
セル4は、一方は開口し他方は閉塞しているポリプロピ
レンからなる中空パイプを用いる。上記球状容器と同様
に、開口部4aから蓄熱材を注入し、0℃に冷却して蓄
熱材を固体化させる。その後、開口部4aを加熱して軟
化させ、引き伸ばして細くして、最後に圧着して容器を
密封する。
【0043】蓄熱材を収納する蓄熱カプセルの形状・大
きさは特に限定されず、上記の球状やパイプ状カプセル
の他、用途に応じて適宜選択することができる。
【0044】以上のように得られた蓄熱カプセルを多数
積み重ねることにより、熱交換性能、蓄熱密度、耐食性
に優れた蓄熱器を得ることができる。
【0045】なお、本実施形態では、氷酢酸に添加する
過冷却防止剤として尿素を用いたが、尿素に代えて塩化
アンモニウム(NH4Cl)、あるいは塩化ナトリウム
(NaCl)を過冷却防止剤として用いることもでき
る。これらを未溶解の結晶が残留する程度に氷酢酸に添
加することで、尿素と同様に氷酢酸の過冷却防止効果を
得ることができる。
【0046】(第3実施形態)上記第2実施形態で説明
した蓄熱器を車両用空調装置に用いた例を第3実施形態
として説明する。
【0047】近年、環境保護や省エネルギといった目的
から、信号待ちの停車時等にエンジンを停止させる車両
が増加する傾向にある。ところで、車両用空調装置にお
いては、車両エンジンにより冷房装置(冷房サイクル)
の圧縮機を駆動している。従って、信号待ち等で停車し
てエンジンが停止される毎に、圧縮機も停止して蒸発器
(エバポレータ)の温度が上昇することになる。このた
め冷房装置は冷房能力がなくなり、車室内への送風空気
温度が上昇するという問題が発生する。
【0048】そこで、本第3実施形態では、蒸発器の内
部に上記第2実施形態で説明した蓄熱器を組み込み、蓄
熱材の融解潜熱を利用することで、エンジン停止時にも
送風ファンのみを作動させて、冷風を車室内に供給でき
るように構成している。
【0049】以下、第3実施形態の内容を図10、図1
1に基づいて説明する。図10は車両用空調装置の冷房
サイクル10の概略構成図であり、図11は蒸発器17
の外観斜視図である。車両用空調装置に一般的に用いら
れる冷房サイクル10は、図10に示すように、フロン
等の冷媒が循環する冷媒流路11に圧縮機12、凝縮器
13、受液器14、減圧装置15、蒸発器16が配置さ
れている。図11に示すように本実施形態における蒸発
器16は、一部のフィンが蓄熱器17に置き換えられて
いる。この蓄熱器17は、上記図9(b)で示した蓄熱
材を内蔵したパイプ状蓄熱カプセルを複数積み重ねたも
のである。
【0050】エンジン稼動時には、まず、気体状の冷媒
は圧縮機12で圧縮され、その後、凝縮器13で冷やさ
れ液化する。次に冷媒は受液器14および減圧装置15
を通過した後、蒸発器16にて気化する。これにより蒸
発器16を通過する空気を冷やす。このとき、冷媒温度
は蓄熱材の凝固点以下の温度になっており、蒸発器16
に組み込まれた蓄熱器16中の蓄熱材は凝固して蓄熱す
ることになる。
【0051】一方、エンジン停止時には圧縮機12は停
止するため、蒸発器温度が上昇する。そして、エンジン
稼動時に凝固した蓄熱材が徐々に融けて放冷する。この
蓄熱材の融解潜熱によって蒸発器を通過する空気を冷や
すことが可能となり、エンジン停止時においても送風フ
ァンを作動させておくだけで、車室内に冷風を送ること
ができる。
【0052】(第4実施形態)第2実施形態で説明した
蓄熱器を住宅用空調装置に用いた例を第4実施形態とし
て説明する。これは、安価な深夜電力を利用して蓄熱材
を凝固させて蓄熱しておき、昼間の冷房に蓄熱材の融解
潜熱を利用するものであり、省エネルギおよび昼間にお
けるピーク電力の低減に有効である。
【0053】以下、第4実施形態の内容について図12
に基づいて説明する。図12は本実施形態の住宅用空調
装置における冷房サイクル20の概略構成を示してい
る。
【0054】この住宅用冷房サイクル20は、2つの冷
媒流路を備えている。冷媒としてフロン等を用いる第1
冷媒流路21には、圧縮機22、凝縮器23、受液器2
4、蒸発器25および蓄熱カプセルを内蔵した蓄熱器2
6が配置されている。第1冷媒流路21は、受液器24
の下流側で蒸発器側と蓄熱器側とに分岐している。蒸発
器25の上流側には第1電磁弁27および第1減圧装置
28が備えられ、蓄熱器26の上流側には第2電磁弁2
9および第2減圧装置30が備えられている。
【0055】住宅用冷房サイクル20は、上記第1冷媒
流路21の他に、蓄熱器26の融解潜熱を利用するため
の第2冷媒流路31を備えている。第2冷媒流路31
は、冷媒としてエチレングリコール水溶液を用いる。第
2冷媒流路31には、冷媒循環用ポンプP、蓄熱器2
6、蓄熱材の融解潜熱で空気を冷却する熱交換器32が
配置されている。
【0056】次に、住宅用空調装置の作動について説明
する。まず、通常運転時には、蒸発器側の第1電磁弁2
7が開き、蓄熱器側の第2電磁弁29は閉じた状態にな
っている。このとき、冷媒は、圧縮機22、凝縮器2
3、受液器24、第1減圧装置28、蒸発器25の順に
流れ、蒸発器25により冷やされた空気により室内の冷
房が行われる。
【0057】一方、安価な深夜電力を利用して蓄熱する
蓄熱運転時には、第1電磁弁27が閉じ、第2電磁弁2
9は開いた状態になっている。このとき、冷媒は、圧縮
機22、凝縮器23、受液器24、第2減圧装置30、
蓄熱器26の順に流れ、蓄熱器26の温度が蓄熱材の融
点以下まで低下すると蓄熱器26内部の蓄熱材が凝固し
始める。
【0058】そして、昼間に冷房が必要なときに蓄熱材
の融解潜熱を利用する放冷運転時には、凝固した蓄熱材
を徐々に融解させ、このときの融解潜熱によって第2冷
媒流路31の冷媒を冷却する。蓄熱器26で冷やされた
冷媒が第2冷媒流路31を循環して熱交換器32に流
れ、ここで熱交換して空気を冷やすことにより室内の冷
房を行う。
【0059】なお、第1電磁弁27および第2電磁弁2
9を間欠的に作動させることにより、蒸発器25と蓄熱
器26に冷媒が交互に流れるように構成して通常運転と
蓄熱運転を同時に行ってもよい。
【0060】また、上記第4実施形態では、第1冷媒流
路のほかに、蓄熱器の融解潜熱を利用するための熱交換
器を備える第2冷媒流路を設けたが、例えば第2冷媒流
路を廃止して、蓄熱器の内部に空気が通過できる空気通
路を形成するとともにこの空気通路に送風するファンを
設けて、蓄熱器にて冷風を発生するように構成してもよ
い。
【0061】また、上記第4実施形態では、蓄熱材の融
解潜熱を直接空気を冷却するために用いたが、これに限
らず、蓄熱材の融解潜熱を冷房サイクルの冷媒を冷却す
るために用いてもよい。このように構成することによ
り、圧縮機の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】氷酢酸に水分を添加したときの融点変化を示す
特性図である。
【図2】氷酢酸−尿素(9重量%)系蓄熱材が融解・凝
固する際の温度変化を示す特性図である。
【図3】氷酢酸−塩化カルシウム系蓄熱材の塩化カルシ
ウム添加量と融点変化との関係を示す特性図である。
【図4】氷酢酸−塩化カルシウム系蓄熱材が融解・凝固
する際の温度変化を示す特性図である。
【図5】氷酢酸−尿素系蓄熱材にカルボン酸を添加した
ときの融点変化を示す特性図である。
【図6】氷酢酸−尿素−蟻酸系蓄熱材が融解・凝固する
際の温度変化を示す特性図である。
【図7】氷酢酸−尿素−プロピオン酸系蓄熱材が融解・
凝固する際の温度変化を示す特性図である。
【図8】氷酢酸−尿素系蓄熱材に多価アルコールを添加
したときの融点変化を示す特性図である。
【図9】第2実施形態の蓄熱材を充填する蓄熱材容器を
示す断面図である。
【図10】第3実施形態の蓄熱器を備えた車両用空調装
置の冷房サイクルを示すブロック図である。
【図11】第3実施形態の蓄熱器を組み込んだ蒸発器を
示す斜視図である。
【図12】第4実施形態の蓄熱器を備える住宅用空調装
置の冷房サイクルを示すブロック図である。
【符号の説明】
1…球状蓄熱カプセル、4…パイプ状蓄熱カプセル、1
0…車両用空調装置の冷房サイクル、20…住宅用空調
装置の冷房サイクル。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 氷酢酸を主成分とする蓄熱材であって、
    尿素または塩化カルシウムのうち少なくとも1種と、カ
    ルボン酸(酢酸を除く)または多価アルコールのうち少
    なくとも1種とが添加されていることを特徴とする蓄熱
    材。
  2. 【請求項2】 前記尿素が6重量%以上添加されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の蓄熱材。
  3. 【請求項3】 前記塩化カルシウムが8重量%以上添加
    されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱材。
  4. 【請求項4】 前記カルボン酸は、蟻酸またはプロピオ
    ン酸であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれ
    か1つの記載の蓄熱材。
  5. 【請求項5】 前記多価アルコールは、グリセリンまた
    はエチレングリコールであることを特徴とする請求項1
    ないし3のいずれか1つの記載の蓄熱材。
  6. 【請求項6】 氷酢酸を主成分とする蓄熱材であって、
    尿素と蟻酸とが添加され、前記尿素は6重量%〜40重
    量%の範囲で添加されていることを特徴とする蓄熱材。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし5に記載の蓄熱材を備え
    た空調装置用蓄熱器。
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