JP2001106835A - 高強度ポリオレフィン系樹脂組成物 - Google Patents

高強度ポリオレフィン系樹脂組成物

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JP2001106835A
JP2001106835A JP28562699A JP28562699A JP2001106835A JP 2001106835 A JP2001106835 A JP 2001106835A JP 28562699 A JP28562699 A JP 28562699A JP 28562699 A JP28562699 A JP 28562699A JP 2001106835 A JP2001106835 A JP 2001106835A
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polyolefin resin
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Hideo Kinoshita
秀雄 木下
Ikuji Otani
郁二 大谷
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Asahi Kasei Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い衝撃強度、高い耐熱性を有するポリ
オレフィン系樹脂組成物の提供。 【解決手段】 繊維状フィラーで強化された熱可塑性樹
脂組成物よりなり、その組成物が、少なくとも(A)ポ
リオレフィン系樹脂 94〜30重量部、(B)ゴム状
重合体 5〜40重量部、(C)ゴム用軟化剤 1〜3
0重量部 及び(A)成分、(B)成分、(C)成分の
合計量100重量部に対して(D)平均の直径が1〜5
0μmであり且つ平均のアスペクト比(長さ/直径)が
50〜2500の繊維状フィラー 5〜100重量部よ
りなる高強度ポリオレフィン系樹脂組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、繊維状フィラー及
び軟化剤を含むゴム状重合体、好ましくは部分的または
完全に架橋されたゴム状重合体で強化された高強度ポリ
オレフィン系樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ガラス繊維等の繊維状フィラーで補強し
た耐衝撃性の熱可塑性樹脂は、ポリアミド系樹脂、ポリ
プロピレン系樹脂、スチレン系樹脂等多くの樹脂が知ら
れている。この中でも特にガラス繊維で補強されたポリ
アミド系樹脂は、ラジエータタンク等の自動車用材料、
電動ドリル等の工具ハウジング材料、事務用椅子等の事
務機器等に使用されている。しかしながら、このガラス
繊維強化されたポリアミド系樹脂は、母体であるポリア
ミド系樹脂が比重が高い為、例えば燃費向上の為に軽量
化が必要な自動車用途あるいは軽いことが好ましい電動
ドリル等の工具ハウジング用途等においては、より比重
の低い材料の開発が要望されている。更に、ラジエータ
タンク用途では、高温のクーラントでポリアミド系樹脂
が加水分解し、分子量低下による強度低下があり耐久性
に劣る問題点も有り、耐薬品性に優れた材料の開発が要
望されている。又、更にポリアミド系樹脂は、吸水性が
高く、成形時乾燥が必要あるいは吸水による寸法変化が
あることも問題点となっている。これに代わる材料とし
てポリオレフィン系の材料が候補としてある。
【0003】ガラス繊維強化されたポリオレフィン系樹
脂は、例えば特開昭61−97344号公報、特開平8
−302103号公報に開示されている。特開昭61−
97344号公報は、ガラス繊維と部分的に架橋された
オレフィン系共重合体ゴムとで補強されたエチレン−プ
ロピレンブロック共重合体を母体としたフェイッシャー
用オレフィン系樹脂組成物に関するものである。この特
許では成形品の表面平滑性を重視し、平均のアスペクト
比(長さ/直径)が30以下のガラス繊維を使用してい
る。しかしながら、この様な短繊維を使用した場合に
は、例えば、本発明の狙いの用途であるラジエータタン
ク等の自動車用材料、電動ドリル等の工具ハウジング材
料、事務用椅子等の事務機器等に使用した場合、耐衝撃
性が低く使用できない問題点がある。又、特開平8−3
02103号公報は、無機充填剤と部分的にあるいは完
全に架橋されたオレフィン系共重合体ゴムとで補強され
たプロピレンのホモ共重合体あるいはエチレン−プロピ
レンブロック共重合体を母体とした熱可塑性樹脂組成物
に関するものであるが、無機充填剤としてガラス繊維も
開示されている。しかしながら、ガラス繊維の例は実施
例に記載されておらず、主体はタルクである。ガラス繊
維による効果は明確に記載されていないのみならず、チ
ョップドガラスが好適に用いられるとの記載がある様に
そのガラス繊維の概念は短繊維であり、本発明の狙いで
ある用途には適さない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
現状に鑑み、上記のような問題点のない、即ち、機械的
強度、特に耐衝撃性、耐熱性等に優れた高強度ポリオレ
フィン系樹脂組成物を提供することを目的とするもので
ある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、機械的強
度、特に耐衝撃性に優れた高強度ポリオレフィン系樹脂
組成物を開発すべく鋭意検討した。
【0006】まず、ポリオレフィン系樹脂単独では、機
械的強度、特に耐衝撃性が無い為、ガラス繊維、特に高
強度化が期待できる長いガラス繊維、即ちアスペクト比
の大きなガラス繊維を共存させ強度を大幅にアップする
検討を進めたが、耐衝撃性及び耐熱性は確かに向上す
る。しかしながら、単にポリオレフィン系材料とガラス
繊維を共存させたのみでは、実用的な意味での機械的強
度の特性を付与することが出来なかった。この理由は、
ポリオレフィン系材料とガラス繊維のみの組成物から材
料を成形加工する時、ガラス繊維、特にアスペクト比の
大きなガラス繊維では、成形品中でガラス繊維が配向し
成形方向に対して縦と横方向で機械的強度が異なり、機
械的強度に方向性が生じる。例えばその成形品を電動工
具のハウジング等に使用し、それを使用時落下させた場
合割れが発生し実用的な特性を有する材料とすることが
出来ないことが判明した。
【0007】この結果を受けて更に鋭意検討した結果、
ポリオレフィン系材料、アスペクト比の大きなガラス繊
維に更にゴム状重合体、好ましくは部分的あるいは完全
に架橋したゴム状重合体を共存させれば、機械的強度、
特に耐衝撃性が更に大きく向上し実用的な意味で充分な
強度とすることができる。即ち、落下等による破損も軽
微となり実用可能な特性の材料となることを見出した。
しかしながら、この組成でも充分な実用特性を持つに至
らなかった。即ち、このポリオレフィン系材料、アスペ
クト比の大きなガラス繊維及びゴム状重合体、好ましく
は部分的または完全に架橋したゴム状重合体よりなる組
成物では、落下時の破損は軽微となるが、落とす、物に
あたるあるいは飛んでくるもの、例えば自動車用途では
石ころがあたる等の衝撃により白化現象が生ずる問題点
があることも判明した。この白化現象は、衝撃により母
体であるポリオレフィン系樹脂の結晶配向により生ずる
と推定されるが、この白化現象は、製品価値を無くして
しまい好ましくない。この為、更に鋭意検討を進めた結
果、驚くべきことにポリオレフィン系材料、アスペクト
比の大きなガラス繊維及びゴム状重合体に第4成分とし
て軟化剤を添加すると問題である白化現象も大きく改良
されることを見出し本発明を完成するに至った。更に、
ガラス繊維以外にカーボン繊維、ポリアクリロニトリル
(PAN)繊維等の繊維状フィラーでも同様の効果があ
ることを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】即ち、本発明は、繊維状フィラーで強化さ
れた熱可塑性樹脂組成物よりなり、その組成物が、少な
くとも(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ゴム状重合
体、(C)ゴム用軟化剤 及び(D)平均の直径が1〜
50μmであり且つ平均のアスペクト比(長さ/直径)
が50〜2500の繊維状フィラーよりなることを特徴
とする高強度ポリオレフィン系樹脂組成物に関するもの
である。その量比は、(A)成分が94〜30重量部、
(B)成分が5〜40重量部、(C)成分が1〜30重
量部 及び(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計
量100重量部に対して(D)成分が5〜100重量部
よりなることを特徴とする高強度ポリオレフィン系樹脂
組成物に関するものである。
【0009】なお、特開平8−302103号公報と
は、本発明はアスペクト比の大きなガラス繊維を用いて
いるのに比して、該特許は短繊維を用いることで異なる
と同時に、本発明は、軟化剤を必須成分としているのに
比して、該特許は軟化剤を使用しない方が好ましいとし
ている点でも大きく異なる。又、特開昭61−9734
4号公報では、アスペクト比の大きなガラス繊維を原料
とすると成形品の表面平滑性が失われるとされている
が、下記の述べる様な特殊な成形方法を採ることによっ
て、アスペクト比の大きなガラス繊維を使用しても表面
平滑性に優れた成形品とすることができる。むしろ、ア
スペクト比の小さなガラス繊維は、表面に出て手で触る
時毛羽立ち感を感ずるが、アスペクト比の大きなガラス
繊維を使用した場合、これが無くなり逆に好ましい結果
も得られている。
【0010】以下、本発明に関して詳しく述べる。ま
ず、本発明の各成分について詳細に説明する。最初に、
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物中の(A)成分で
あるポリオレフィン系樹脂について述べる。
【0011】本発明においてポリオレフィン系樹脂は、
大きく分けてポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹
脂あるいはポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂
の混合物からなる。
【0012】ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリ
エチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDP
E)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、アク
リル系ビニルモノマーとエチレンとの共重合体(EE
A、EMMA等)あるいは酢酸ビニルモノマーとエチレ
ンとの共重合体(EVA)等を挙げることができる。し
かしながら、これらの中でも高密度ポリエチレン(HD
PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低
密度ポリエチレン(LLDPE)は、耐熱性が高く且つ
安価に入手できる為、特に好ましい。これらのポリエチ
レン系樹脂は、単独で用いても良いし、又2種以上を組
み合わせて用いても良い。
【0013】高密度ポリエチレン(HDPE)を使用す
る場合、その密度は、一般に、0.930〜0.970
g/cm2の範囲であり、190℃、2.16kg荷重
で測定されたメルトフローレート(MFR)は、0.0
5〜100g/10分の範囲であることが好ましい。低
密度ポリエチレン(LDPE)あるいは直鎖状低密度ポ
リエチレン(LLDPE)を使用する場合、その密度
は、一般に、0.900〜0.930g/cm2の範囲
であり、190℃、2.16kg荷重で測定されたメル
トフローレート(MFR)は、0.05〜100g/1
0分の範囲であることが好ましい。メルトフローレート
が100g/10分を越えると、本発明のポリオレフィ
ン系樹脂組成物から成形される成形品の機械的強度、耐
熱性が不十分であり、また0.05g/10分より小さ
いと本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を成形する
際、流動性が悪く、成形加工性が低下して望ましくな
い。
【0014】ポリプロピレン系樹脂としては、ホモのポ
リプロピレン、プロピレンとエチレン、ブテン−1、ペ
ンテン−1、ヘキセン−1等の他のα−オレフィンとの
共重合樹脂(ブロック、ランダムを含む)等を挙げるこ
とができる。
【0015】本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の原
料として使用するポリプロピレン系樹脂の230℃、
2.16kg荷重で測定されたメルトフローレート(M
FR)は、0.1〜100g/10分の範囲であること
が好ましい。メルトフローレートが100g/10分を
越えると、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物から成
形される成形品の機械的強度が不十分であり、また0.
1g/10分より小さいと本発明のポリオレフィン系樹
脂組成物を成形する際、流動性が悪く、成形加工性が低
下して望ましくない。
【0016】本発明のポリオレフィン系樹脂組成物に使
用するポリオレフィン系樹脂は、上述の如くポリエチレ
ン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂からなるが、
例えばその組成物をラジエータタンクに使用する場合
は、クーラントの温度が瞬間的に130℃付近まで上昇
する。あるいはその組成物を電動工具ハウジングに使用
する時、内蔵するモーターの発熱によりハウジングその
ものも高温となり耐熱性が要求される。従って本発明の
ポリオレフィン系樹脂組成物は、耐熱性が高いことが好
ましく、ポリプロピレン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂
に比較して耐熱性が高い為、(A)成分であるポリオレ
フィン系樹脂としてはポリプロピレン系樹脂がより好ま
しい。しかしながら、ホモのポリプロピレンは一般に酸
化分解し易く長期使用時分子量低下により機械的強度が
低下する傾向にある。一方、ポリエチレンは一般に酸化
分解せず架橋し機械的強度を維持あるいは向上する傾向
がある。この為、ポリプロピレン系樹脂を使用する際、
特に、本発明の耐久性が要求される工具では、ホモのポ
リプロピレンとポリエチレン系樹脂と併用するかあるい
はプロピレンとエチレン系のランダムあるいはブロック
ポリマーを使用あるいは併用することもある。
【0017】次に本発明のポリオレフィン系樹脂組成物
の(B)成分であるゴム状重合体について述べる。
【0018】本発明のゴム状重合体は、ガラス転移温度
(Tg)が−30℃以下であることが好ましく、このよ
うなゴム状重合体は、例えば、ポリブタジエン、ポリ
(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−
ブタジエン)等のジエン系ゴム及び上記ジエンゴムを水
素添加した飽和ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴ
ム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム及びエチ
レン・α−オレフィン系共重合体ゴム等を挙げることが
できる。これらの中でも、特にエチレンとα−オレフィ
ンを主体としたエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴ
ムが最も好ましい。この理由は、エチレン・α−オレフ
ィン系共重合体ゴムは、本発明のポリオレフィン系樹脂
組成物の(A)成分として使用するポリオレフィン系樹
脂と相溶性が良く、エチレン・α−オレフィン系共重合
体ゴムがポリオレフィン系樹脂と界面接着し耐衝撃性等
の機械的強度の高いものとなることによる。
【0019】このエチレン・α−オレフィン系共重合体
ゴムを更に詳しく述べると、エチレンと炭素数3〜20
のα−オレフィンを主体としたエチレン・α−オレフィ
ン系共重合体がより好ましい。炭素数3〜20のα−オ
レフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン−1、
ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−
1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン
−1、ウンデセン−1、ドデセン−1等が挙げられる。
これらα−オレフィンは単独で用いても良いし、又2種
以上を組み合わせても良い。更に第3成分として共重合
成分を含むこともできる。第3成分の共重合成分として
は1,3−ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン、ジ
シクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオ
クタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボ
ルネン等の非共役ジエン等が挙げられる。第3成分の共
重合成分を含むエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴ
ムとしては、エチレン−プロピレンン−共役若しくは非
共役ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)等を挙げるこ
とができる。しかしながら、本発明のポリオレフィン系
樹脂組成物の成形品は屋外で使用されることが多く耐候
性が要求される為、共役若しくは非共役ジエンを含むエ
チレン・α−オレフィン系共重合体ゴムは、共役若しく
は非共役ジエンを含まないエチレン・α−オレフィン系
共重合体ゴムに比較して耐候性に劣り好ましくない。
【0020】本発明は、共役若しくは非共役ジエンを含
むエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムを排除する
ものではないが、共役若しくは非共役ジエンを含まない
エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムの方がより好
ましい。この例としては、エチレンとヘキセン−1、4
−メチルペンテン−1あるいはオクテン−1との共重合
体ゴム等を好ましい例として挙げることができる。これ
らの中でも、特にエチレンとオクテン−1との共重合体
ゴムが好ましい。理由は、耐候性に優れ且つ少量でもゴ
ム弾性に優れることによる。
【0021】本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の
(B)成分として好適に用いられるエチレン・オクテン
−1共重合体ゴムは、メタロセン系触媒を用いて製造さ
れたものが好ましい。
【0022】(B)成分であるゴム状重合体は、部分的
または完全に架橋していることが好ましい。本発明は、
繊維状フィラー、特にアスペクト比の大きな繊維状フイ
ラー及びゴム状重合体を共存させることにより機械的強
度、特に耐衝撃強度を大幅に改良することができる。し
かしながら、ゴム状重合体を部分的または完全に架橋し
た時、架橋しない時に比較してその改良効果は更に大き
くなる。この理由は、ゴム状重合体が架橋されていない
場合は、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を成形加
工する際、樹脂組成物の流動方向に引き伸ばされ繊維状
フィラーと同様にゴム状重合体も配向するが、このゴム
状重合体が架橋されている場合、流動方向に引き伸ばさ
れることなく組成物中のゴム状重合体の形状を成形品中
でも維持する為、ガラス繊維が配向していてもゴム状重
合体は配向しない。その為大幅な機械的強度、特に耐衝
撃性アップにつながる為と推定している。更に、本発明
のポリオレフィン系樹脂組成物の(C)成分である軟化
剤の保持率、即ち、ブリードアウトすることなく樹脂内
部にどじ込める量が、架橋しないゴム状重合体に比較し
て架橋したゴム状重合体の方が高いことにもよる。
【0023】架橋させる場合は、熱可塑性樹脂成形品中
に存在する全ゴム状重合体中の架橋しているゴム状重合
体(溶媒に溶解しないゴム状重合体)の比率を架橋度で
定義すると、架橋度は、20%以上が好ましい。更に、
50%以上であることがより好ましい。
【0024】次に本発明のポリオレフィン系樹脂組成物
の(C)成分であるゴム用軟化剤について述べる。
【0025】ゴム用軟化剤には、鉱物油系軟化剤又は合
成系軟化剤がある。一般には鉱物油系軟化剤を用いるこ
とが多いが、この種類としては、パラフィン系、ナフテ
ン系、芳香族系等がある。本発明に用いるゴム用軟化剤
としては、パラフィン系、ナフテン系が好ましい。
【0026】次に本発明のポリオレフィン系樹脂組成物
の(D)成分である繊維状フィラーについて述べる。
【0027】(D)成分である繊維状フィラーは、平均
の直径が1〜50μmであり、好ましくは5〜30μ
m、又、平均のアスペクト比(長さ/直径)が50〜2
500であり、好ましくは50〜1000であるもので
あれば特に限定されない。平均の直径が1μm未満で
は、補強効果が小さく、機械的強度改良の効果が充分で
はない。50μmを越えると分散性が低下し、同様に機
械的強度改良の効果が充分ではない。又、平均のアスペ
クト比(長さ/直径)が50未満では、異方性が不足し
補強効果が小さく、一方、それが2500を越えると成
形加工時流動性が充分でなく成形加工で問題を起こす。
【0028】繊維状フィラーとしては、例えば、綿、
絹、羊毛あるいは麻等の天然繊維、レーヨンあるいはキ
ュプラ等の再生繊維、アセテートあるいはプロミックス
等の半合成繊維、ポリエステル、ポリアクリロニトリ
ル、ポリアミド、アラミド、ポリオレフィン、炭素ある
いは塩化ビニル等の合成繊維、ガラスあるいは石綿等の
無機繊維またはSUS、銅あるいは黄銅等の金属繊維等
を挙げることが出来る。
【0029】本発明の繊維状フィラーは、上述の材料を
任意に選定して1種あるいは複数の組み合わせで使用す
ることが出来るが、これら材料の中でも、フィラーとし
てガラス繊維及び炭素繊維が衝撃強度、剛性、耐熱性の
点で好ましい。これらは単独で使用しても良いし、又組
み合わせて使用しても良い。
【0030】本発明の(D)成分である繊維状フィラー
は、上記の通りであるが、性能面で好ましいガラス繊維
と炭素繊維の中でもガラス繊維は安価に市場から入手が
出来、特に好ましい。ガラス繊維を使用する場合は、通
常の市販のものを使用する。市販されているガラス繊維
は、Eガラス、Sガラス、Cガラス、ARガラス等があ
るが、この何れも使用することができる。ガラス繊維の
場合の直径は一般に10〜30μmが好ましい。なお、
使用するガラスは、樹脂との接着性を上げる為に、例え
ばシランカップリング剤等前処理したものが好ましい。
【0031】本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、
少なくとも(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ゴム状
重量体、好ましくは部分的または完全に架橋されたゴム
状重合体、(C)ゴム用軟化剤及び(D)平均の直径が
1〜50μmであり且つ平均のアスペクト比が50〜2
500の繊維状フィラーからなるが、必要に応じてその
他の成分、例えばポリオレフィン系樹脂以外のポリマ
ー、粉末状無機フィラーおよび可塑剤等を含有すること
が可能である。他のポリマーとして、特に繊維状フィラ
ーとポリオレフイン系樹脂との界面接着性を向上させる
ものは耐衝撃性向上に有効である。この様な材料として
は、例えばマレイン酸変成あるいは共重合ポリオレフイ
ン、アクリル酸変成あるいは共重合ポリオレフィン、フ
マル酸変成あるいは共重合ポリオレフィン等を共存させ
ることが好ましい。この材料は、繊維としてガラス繊維
を使用した時に特に有効である。
【0032】この様なフィラーとポリオレフィン系樹脂
との接着性を向上させるポリマー以外に、本発明のポリ
オレフィン系樹脂組成物の特性を阻害しないレベルで他
のポリマーを共存させることが可能である。
【0033】粉末状の無機フィラーとしては、例えば、
炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、カーボン
ブラック、酸化チタン、クレー、マイカ、タルク、水酸
化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
また、可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコー
ル、ジオクチルフタレート(DOP)等のフタル酸エス
テル等が挙げられる。また、その他の添加剤、例えば、
有機・無機顔料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収
剤、光安定剤、難燃剤、シリコンオイル、アンチブロッ
キング剤、発泡剤、帯電防止剤、抗菌剤等も好適に使用
される。
【0034】本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、
上記の如く、少なくとも(A)ポリオレフィン系樹脂、
(B)ゴム状重合体、好ましくは部分的または完全に架
橋されたゴム状重合体(C)ゴム用軟化剤及び(D)平
均の直径が1〜50μmであり且つ平均のアスペクト比
が50〜2500の繊維状フィラーからなるが、その熱
可塑性樹脂成形品中の各成分の比率は、(A)成分が、
94〜30重量部、(B)成分が、5〜40重量部、
(C)成分が、1〜30重量部及び(A)成分、(B)
成分、(C)成分の合計量100重量部に対して(D)
成分が、5〜100重量部、好ましくは、(A)成分
が、88〜45重量部、(B)成分が、10〜30重量
部、(C)成分が、2〜25重量部及び(A)成分、
(B)成分、(C)成分の合計量100重量部に対して
(D)成分が、10〜75重量部、特に好ましくは、
(A)成分が、85〜55重量部、(B)成分が、10
〜25重量部、(C)成分が、5〜20重量部及び
(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計量100重
量部に対して(D)成分が、20〜60重量部である。
【0035】(A)成分であるポリオレフィン系樹脂
が、94重量部を超える場合は、結果的にゴム状重合体
及び繊維状フィラーの量が少なく機械的強度が低い。3
0重量部未満の場合は、本発明のポリオレフィン系樹脂
組成物を成形加工する際に流動性が低く成形加工が困難
となる。
【0036】(B)成分であるゴム状重合体が、5重量
部未満の場合は、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物
を成形して得られる成形品の機械的強度、特に耐衝撃性
が実用領域に至らない。30重量%を超える場合は、結
果としてゴム状弾性が大きくなり、本発明のポリオレフ
ィン系樹脂組成物を成形して得られる成形品の剛性等が
低くなる。
【0037】(C)成分であるゴム用軟化剤が、1重量
部未満の場合は、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物
を成形して得られる成形品の落下試験で白化現象が大き
く、好ましくない。30重量部を越える場合、成形品が
軟質化し剛性が低く好ましくない。
【0038】(D)成分である繊維状フィラーが、
(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計量100重
量部に対して5重量部未満の場合は、本発明のポリオレ
フィン系樹脂組成物を成形して得られる成形品の剛性、
耐熱性等が低く好ましくない。40重量部を超える場合
は、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を成形して得
られる成形品の剛性は高くなり且つ耐衝撃性も高く好ま
しい方向ではあるが、成形加工時流動性が低下するある
いは成形品の外観が低下し商品価値が低下し好ましくな
い。
【0039】次に本発明のポリオレフィン系樹脂組成物
の好ましい製造方法及びその好ましい成形方法について
述べる。
【0040】本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、
一般には(I)(A)成分であるポリオレフィン系樹
脂、(B)成分であるゴム状重合体、好ましくは部分的
または完全に架橋されたゴム状重合体及び(C)成分で
あるゴム用軟化剤とよりなる熱可塑性エラストマー、好
ましくは架橋熱可塑性エラストマーと(II)(C)成分
である繊維状フィラー、特に好ましくはガラス繊維及び
(III)必要に応じてゴム重合体とフィラーの濃度を調
整する為のポリオレフィン系樹脂等を予め二軸押出機等
で溶融押出しペレット化し、得られたペレットを原料と
して射出成形等で加工して製造する。
【0041】しかしながら、この様に予め二軸押出機等
で溶融押出する方法では、押出機を通す際に繊維状フィ
ラーが破砕されアスペクト比が小さくなる。この場合、
目的とする機械的強度の成形品とならないことも有る。
この為、次の様な方法を好ましく採用する。
【0042】即ち、(I)(A)成分であるポリオレフ
ィン系樹脂、(B)成分であるゴム状重合体、好ましく
は部分的または完全に架橋されたゴム状重合体及び
(C)成分であるゴム用軟化剤よりなる熱可塑性エラス
トマー、好ましくは架橋熱可塑性エラストマーのペレッ
トと(II)繊維状フィラーそのものあるいはラテックス
等の収束剤等で固めた繊維状フィラーあるいはポリオレ
フイン系樹脂等で固めた繊維状フィラー等及び(III)
必要に応じてゴム重合体とフィラーの濃度を調整する為
のポリオレフィン系樹脂のペレットをブレンドし、この
ブレンド品を直接射出成形する等の方法で成形品を得
る。
【0043】この場合は、混練が一度で済む為、二軸押
出機で熱可塑性エラストマー、好ましくは架橋熱可塑性
エラストマーと繊維状フィラーとを溶融押出しペレツト
化し、更にこのペレットを原料として射出成形する方法
に比較してアスペクト比が原料のアスペクト比により近
いものとなり、高い機械的強度の成形品となる。
【0044】好ましい方法としては、ポリオレフィン系
樹脂、ゴム状重量体、好ましくは部分的または完全に架
橋されたゴム状重合体及びゴム用軟化剤よりなる熱可塑
性エラストマー、好ましくは架橋熱可塑性エラストマー
のペレット及びガラス繊維の束にポリオレフィン系樹脂
を含浸あるいは押出し被覆しペレット化して得られたペ
レット長と同じ長さの繊維状フィラーを含む樹脂で被覆
された繊維状フィラーペレット(長繊維ペレットと称
す)及び必要に応じて組成調整の為にポリオレフィン系
樹脂ペレットをブレンドし、本発明の組成物とし、この
ペレットブレンド品を射出成形して製造する。繊維状フ
ィラー、特にガラス繊維の場合、ポリオレフィン系樹脂
との接着性を上げる為に添加する酸変成ポリオレフィン
系樹脂は、長繊維ペレット製造時ガラス繊維に被覆する
ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー若しくは
架橋熱可塑性エラストマーあるいはポリオレフィン系樹
脂ペレットのいずれかあるいは二つ以上にまたがって添
加したものを用いる。しかしながら、長繊維ペレット製
造時ガラス繊維に被覆するポリオレフィン系樹脂に添加
する方法が繊維と樹脂との密着性が高く最も好ましい。
【0045】ここで好適に用いられる部分的または完全
架橋されたゴム状重合体とポリオレフィン系樹脂及びゴ
ム用軟化剤とよりなる架橋熱可塑性エラストマーは、例
えば次の様にして製造する。
【0046】好ましくは、エチレンとα−オレフィンを
主体としたエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム、
ポリオレフィン系樹脂、架橋剤及び架橋助剤を二軸押出
機、バンバリーミキサー等で熱処理することにより製造
する。ゴム用軟化剤は、二軸押出機の中間から注入する
等で添加する。この際、好ましく使用する架橋剤は、有
機過酸化物、有機アゾ化合物等のラジカル開始剤が挙げ
られる。ラジカル開始剤の具体的な例としては、1,1
−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメ
チルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパー
オキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサ
ン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデ
カン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘ
キサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタ
ン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキ
シ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパ
ーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類;ジ−
t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、
t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t
−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、
α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピ
ルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブ
チルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−
2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等
のジアルキルパーオキサイド類;アセチルパーオキサイ
ド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオ
キサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパー
オキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパー
オキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジク
ロロベンゾイルパーオキサイドおよびm−トリオイルパ
ーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチ
ルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブ
チレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノ
エート、t−ブチルパーオキシラウリレート、t−ブチ
ルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシ
イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベン
ゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマ
レイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネ
ート、およびクミルパーオキシオクテート等のパーオキ
シエステル類;ならびに、t−ブチルハイドロパーオキ
サイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピ
ルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル
ヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドおよび
1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキサイド等
のハイドロパーオキサイド類を挙げることができる。
【0047】これらの化合物の中では、1,1−ビス
(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシ
クロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミ
ルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス
(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメ
チル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン
−3が好ましい。
【0048】これらのラジカル開始剤は、エチレン・α
−オレフィン系共重合体ゴムとポリオレフィン系樹脂1
00重量部に対し0.02〜3重量部、好ましくは0.
05〜1重量部の量で用いられる。架橋のレベルは、主
としてこの量で決まる。0.02重量部未満では架橋が
不十分であり、3重量部を越えても大きく架橋率が向上
することは無い為、好ましい方向ではない。
【0049】架橋助剤としては、ジビニルベンゼン、ト
リアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、
ダイアセトンジアクリルアミド、ポリエチレングリコー
ルジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリ
レート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、
トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレング
リコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジ
メタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレー
ト、ジイソプロペニルベンゼン、P−キノンジオキシ
ム、P,P’−ジベンゾイルキノンジオキシム、フェニ
ルマレイミド、アリルメタクリレート、N,N’−m−
フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、テト
ラアリルオキシエタン、1,2−ポリブタジエン等が好
ましく用いられる。これらの架橋助剤は複数のものを併
用して用いてもよい。
【0050】架橋助剤は、エチレン・α−オレフィン系
共重合体ゴムとポリオレフィン系樹脂100重量部に対
し0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜2重量部の量
で用いられる。0.1重量部未満では架橋率が低く好ま
しくない。5重量部を越えても架橋率が大きく向上する
ことはなく好ましい方向ではない。
【0051】架橋の方法として上記の様に架橋剤と架橋
助剤を使用することが好ましいが、これ以外にフェノー
ル樹脂あるいはビスマレイミド等を架橋剤として使用す
ることもできる。
【0052】次に長繊維ペレット、即ちペレット長と同
じ長さ繊維状フィラーを含む樹脂で被覆された繊維状フ
ィラーペレットの製造方法をガラス繊維を例にして述べ
る。
【0053】その製造方法は、例えば溶融したポリオレ
フィン系樹脂の中にガラス繊維のロービングを浸漬しそ
の後所定の長さにペレタイズする方法あるいは一般にプ
ルトルージョン法といわれる方法であるが、ガラス繊維
のロービングを張力下で引き揃えながらポリオレフィン
系樹脂を押出機により繊維をほぐしつつサイドより押出
し、ガラス繊維の表面にポリオレフィン系樹脂を押出被
覆し、ペレット化する方法等がある。
【0054】この様にして得られた長繊維ペレットは、
通常、2〜100mm、好ましくは3〜50mm、より
好ましくは5〜20mm、特に好ましくは5〜10mm
の長さである。この長繊維ペレットの中には、ペレット
長と同じ長さのガラス繊維が含まれる。この様な長いガ
ラス繊維を含むペレットと熱可塑性エラストマー若しく
は架橋熱可塑性エラストマーのペレット、必要に応じて
ポリオレフィン系樹脂のペレットとを混合して射出成形
すると、成形品中のガラス繊維の平均繊維長は、結果と
して0.5〜10mmとなる。又、上記長繊維ペレット
の製造方法の中でもプルトルージョン法で製造した場
合、繊維をほぐしつつ繊維状フィラーにポリオレフィン
系樹脂を押出被覆する為、繊維一本一本の間に樹脂が存
在することになる。従って、この長繊維ペレットを原料
として成形加工する時、成形品中の繊維は分散し易く、
アスペクト比の大きな繊維を原材料として使用しても、
成形品の平面平滑性は良好となる。
【0055】本発明のポリオレフィン系樹脂組成物から
成形品を得る為には、上述の射出成形の他、押出成形、
圧縮成形等で成形加工することも可能である。
【0056】この様に製造された本発明のポリオレフィ
ン系樹脂組成物から得られる成形品は、機械的強度、特
に耐衝撃性、剛性、耐熱性、耐薬品性等に優れた製品と
なる。
【0057】
【実施例】以下、本発明を実施例、比較例により更に詳
細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでは
ない。なお、これら実施例および比較例において、各種
物性の評価に用いた試験法、原材料及び配合に使用した
熱可塑性エラストマーの製造方法は以下の通りである。
【0058】1.試験法 (1)引張強度 JIS K6251に準拠した方法で23℃で測定し
た。 (2)曲げ強度 JIS K6758に準拠した方法で23℃で測定し
た。 (3)曲げ弾性率 JIS K6758に準拠した方法で23℃で測定し
た。
【0059】(4)アイゾット衝撃強度 JIS K6758に準拠した方法で23℃で測定し
た。(Vノッチ、1/4インチ試験片) (5)落錘衝撃強度 落錘衝撃試験機(東洋精機製作所製)を使用し、落錘先
端径:13.6mm、重量:6.5kg、落下高さ:1
00cm、ホルダー直径:50mm、試験片厚さ:3m
m、温度:23℃、湿度50%の条件で全吸収エネルギ
ーを測定した。値が大きい方が割れ難い。
【0060】衝撃による白化も同時評価した。白化しや
すいものは、中心部より周辺に広がって白化する。白化
のレベルを目視で観察し次の格付けとした。 ◎:白化なし ○:わずか白化 △:全体が白化しているが比較的薄い白化 ×:全体が白化 (6)耐熱性(HDT) JIS K7207に準拠した方法で測定した。荷重は
18.6kgである。
【0061】(7)フイラーの平均直径、アスペクト比 電子顕微鏡によりフィラーの数平均粒子直径を求め、一
方光学顕微鏡によりフィラーの長さを求め、長さ/直径
の比からアスペクト比を算出した。即ち、各フィラーの
断面を円と仮定し、長径と短径の算術平均を各フィラー
の平均直径とする。そして、100個のフィラーの平均
直径の算術平均により数平均粒子直径を求めた。上記フ
イラーの平均長さも数平均長さとして同様に求めた。
【0062】(8)架橋度 架橋熱可塑性エラストマー0.5gを、キシレン200
ml中で4時間リフラックスさせる。溶液を定量用濾紙
で濾過し、濾紙上の残さを真空乾燥後定量し、架橋熱可
塑性エラストマー中のゴム状重合体の重量に対する残さ
の重量の比率(%)として算出した。
【0063】2.原材料 (1)ゴム状重合体 (a)エチレン・オクテン−1共重合体 特開平3−163088号公報に記載のメタロセン触媒
を用いた方法により製造した。共重合体のエチレン/オ
クテン−1の組成比は、72/28(重量比)であった
(TPE−1と称する)。
【0064】(b)エチレン・プロピレン・ジシクロペ
ンタジエン共重合体 特開平3−163088号公報に記載のメタロセン触媒
を用いた方法により製造した。共重合体のエチレン/プ
ロピレン/ジシクロペンタジエンの組成比は、72/2
4/4(重量比)であった(TPE−2と称する)。
【0065】(2)オレフィン系樹脂 (a)ポリプロピレン 日本ポリケム(株)製、アイソタクチックホモポリプロ
ピレン(商品名 MA03)(PPと称する) (b)エチレン(E)−プロピレン(PP)共重合樹脂
−1 日本ポリオレフィン(株)製、ブロックE−PP樹脂
[E/PP=6/94(重量比)(商品名 PM970
A)](EP−1と称する) (c)エチレン(E)−プロピレン(PP)共重合樹脂
−2 日本ポリオレフィン(株)製、ランダムE−PP樹脂
[E/PP=7/93(重量比)(商品名 PM940
M](EP−2と称する) (d)マレイン化ポリプロピレン 三井化学(株)製、マレイン化ポリプロピレン(商品名
アドマーGF305)(M−PPと称する)。
【0066】(3)高密度ポリエチレン 旭化成工業(株)製、サンテックHD(商品名 B47
0)(HDPEと称する) (4)ラジカル開始剤 日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−
ブチルパーオキシ)ヘキサン(商品名パーヘキサ25
B)(POXと称する) (5)架橋助剤 和光純薬製、ジビニルベンゼン(DVBと称する) (6)ゴム用軟化剤(パラフィンオイル) 出光興産製、ダイアナプロセスオイル(商品名PW−3
80) (7)フィラー (a)ガラス繊維 旭ファイバー製アミノシラン処理ガラス繊維ロービング
(商品名:ER740)(太さ:13μm) (b)炭素繊維 東邦レーヨン製炭素繊維ロービング(商品名:HTA−
12K)(太さ:7μ)。
【0067】3.架橋熱可塑性エラストマーの製造方法 (1)TPV−1A 押出機として、バレル中央部に注入口を有した2軸押出
機(40mmφ、L/D=47)を用いた。スクリュー
としては注入口の前後に混練部を有した2条スクリュー
を用いた。TPE−1/PP/POX/DVB=60.
0/40.0/0.38/0.74(重量比)を混合し
シリンダー温度220℃で溶融押出を行った。得られた
架橋熱可塑性エラストマーの架橋度は、81%であっ
た。
【0068】(2)TPV−1B 押出機の中央部にある注入口よりTPE−1とPPの合
計量100重量部に対して軟化剤(パラフィンオイル)
を36重量部注入すること以外(1)と同じ方法で架橋
熱可塑性エラストマーを得た。この架橋熱可塑性エラス
トマーの架橋度は、81%であった。
【0069】(3)TPV−1C 軟化剤の注入量を24重量部とすること以外(2)と同
じ方法で架橋熱可塑性エラストマーを得た。この架橋熱
可塑性エラストマーの架橋度は、81%であった。
【0070】(4)TPV−1D 軟化剤の注入量を15重量部とすること以外(2)と同
じ方法で架橋熱可塑性エラストマーを得た。この架橋熱
可塑性エラストマーの架橋度は、81%であった。
【0071】(5)TPV−2 TPE−1/PP/POX/DVBの比率を60.0/
40.0/0.19/0.37(重量比)とすること以
外(3)と同じ方法で架橋熱可塑性エラストマーを得
た。この架橋熱可塑性エラストマーの架橋度は、55%
であった。
【0072】(6)TPV−3 TPE−1/PP/POX/DVBをTPE−1/EP
−1/POX/DVBとすること以外(3)と同じ方法
で架橋熱可塑性エラストマーを得た。この架橋熱可塑性
エラストマーの架橋度は、80%であった。
【0073】(7)TPV−4 TPE−1/PP/POX/DVBをTPE−1/PP
/HDPE/POX/DVBとし、その比率を60.0
/28.9/11.1/0.19/0.37(重量比)
とすること以外(3)と同じ方法で架橋熱可塑性エラス
トマーを得た。この架橋熱可塑性エラストマーの架橋度
は、57%であった。
【0074】(8)TPV−5 TPE−1/PP/POX/DVBをTPE−2/PP
/POX/DVBとすること以外(3)と同じ方法で架
橋熱可塑性エラストマーを得た。この架橋熱可塑性エラ
ストマーの架橋度は、ほぼ100%であった。
【0075】4.非架橋熱可塑性エラストマーの製造方
法 (1)TPO−1 押出機として、バレル中央部に注入口を有した2軸押出
機(40mmφ、L/D=47)を用いた。スクリュー
としては注入口の前後に混練部を有した2条スクリュー
を用いた。TPE−1/PP=60.0/40.0(重
量比)を混合しシリンダー温度200℃で溶融押出を行
った。この際、押出機の中央部分にある注入口よりTP
E−1とPPの合計量100重量部に対して軟化剤(パ
ラフィンオイル)を12重量部注入して非架橋熱可塑性
エラストマーを得た。
【0076】実施例1 13μmの太さのガラス繊維のロービングを張力下で引
き揃えながら5%M−PP/95%PPを押出機でサイ
ドから押出し、ガラス繊維の表面にポリオレフィン系樹
脂を押出被覆し、長さ7mmのペレットにカットし、長
繊維ペレット(GF−1と称する)を製造した。長繊維
ペレット中のガラス繊維のアスペクト比は538であ
る。又、この長繊維ペレットのガラス/ポリオレフィン
系樹脂の比率は、56/44(重量比)であった。GF
−1、TPV−1Bの各ペレットを53.6/46.4
(重量比)で混合し、成形温度を240℃とし射出成形
機(東芝IS45PNV)により成形し、成形品を得
た。成形品の最終組成及び特性を表1に示す。なお、こ
の成形品の比重は、1.10g/cc、吸水率(25
℃、50%RH)は、0.1%以下であった。一方、市
販の30%のガラス繊維を含むポリアミド(6ナイロ
ン)の比重は、1.36g/cc、吸水率は2.1%で
あった。
【0077】実施例2 TPV−1BをTPV−1Cとし、GF−1、TPV−
1B及びPPの各ペレットを53.6/41.3/5.
1(重量比)で混合して成形すること以外実施例1と同
様に実施して成形品を得た。成形品の最終組成及び特性
を表1に示す。
【0078】実施例3 TPV−1BをTPV−1Dとし、GF−1、TPV−
1D及びPPの各ペレットを53.6/38.3/8.
1(重量比)で混合して成形すること以外実施例1と同
様に実施して成形品を得た。成形品の最終組成及び特性
を表1に示す。
【0079】比較例1 TPV−1BをTPV−1Aとし、GF−1、TPV−
1A及びPPの各ペレットを53.6/33.3/1
3.1(重量比)で混合して成形すること以外実施例1
と同様に実施して成形品を得た。成形品の最終組成及び
特性を表1に示す。
【0080】実施例4 GF−1、TPV−1B、PPの各ペレットをGF−1
/TPV−1B/PP=53.6/22.7/23.7
(重量比)で混合すること以外実施例1と同様に実施し
て成形品を得た。成形品の最終組成及び特性を表1に示
す。
【0081】実施例5 GF−1、TPV−1B、PPの各ペレットをGF−1
/TPV−1B/PP=35.7/45.4/18.9
(重量比)で混合すること以外実施例1と同様に実施し
て成形品を得た。成形品の最終組成及び特性を表1に示
す。
【0082】実施例6 TPV−1BをTPO−1とし、GF−1、TPO−1
及びPPの各ペレットを53.6/37.3/9.1
(重量比)で混合して成形すること以外実施例1と同様
に実施して成形品を得た。成形品の最終組成及び特性を
表1に示す。
【0083】実施例7 TPV−1BをTPV−2とすること以外実施例2と同
様に実施して成形品を得た。成形品の最終組成及び特性
を表1に示す。
【0084】実施例8 ガラス繊維に押出被覆する材料を5%M−PP/95%
PPより5%M−PP/95%EP−1とすること以外
実施例1と同様にして、長繊維ペレット(GF−2と称
する)を製造した。この長繊維ペレットのガラス/ポリ
オレフィン系樹脂との比率は、56/44(重量比)で
あった。GF−2、TPV−3、EP−1の各ペレット
を53.6/41.3/5.1(重量比)で混合し、実
施例1と同様に成形し、成形品を得た。成形品の最終組
成及び特性を表1に示す。
【0085】実施例9 GF−1、TPV−1B、PPの各ペレットの成分、組
成をGF−1/TPV−1C/EP−2=53.6/4
1.3/5.1(重量比)で混合すること以外実施例2
と同様に実施して成形品を得た。成形品の最終組成及び
特性を表1に示す。
【0086】実施例10 ガラス繊維に押出被覆する材料を5%M−PP/95%
PPより5%M−PP/71.3%PP/23.7%H
DPEとすること以外実施例1と同様にして、長繊維ペ
レット(GF−3と称する)を製造した。この長繊維ペ
レットのガラス/ポリオレフィン系樹脂との比率は、5
6/44(重量比)であった。GF−3、TPV−4、
PPの各ペレットを53.6/41.3/5.1(重量
比)で混合し、実施例1と同様に成形し、成形品を得
た。成形品の最終組成及び特性を表1に示す。
【0087】実施例11 TPV−1BをTPV−5とすること以外実施例2と同
様に実施して成形品を得た。成形品の最終組成及び特性
を表1に示す。
【0088】実施例12 13μmの太さのガラス繊維のロービングを7mmに切
断しチョップとした。このチョップ及びTPV−1C、
PPの各ペレットを30.0/41.3/28.7(重
量比)で混合し、2軸押出機(東芝TEM−35B)で
樹脂温度230℃で押出しペレット化した。ペレット中
のガラス繊維の径は13μm、長さ0.7mmであっ
た。ペレット中のガラス繊維のアスペクト比は54であ
る。このペレットを原料として成形温度を240℃とし
射出成形機(東芝IS45PNV)により成形し、成形
品を得た。成形品の最終組成及び特性を表2に示す。
【0089】比較例2 13μmの太さのガラス繊維のロービングを7mmに切
断しチョップとした。更にこのチョップをボールミルで
粉砕して平均長さ約100μmの超短繊維を得た。この
超短繊維及びTPV−1C、PPの各ペレットを30.
0/41.3/28.7(重量比)で混合し、2軸押出
機(東芝TEM−35B)で樹脂温度230℃で押出し
ペレット化した。ペレット中のガラス繊維の径は13μ
m、平均長さは42μmであった。ペレット中のガラス
繊維のアスペクト比は3.2である。このペレットを原
料として成形温度を240℃とし射出成形機(東芝IS
45PNV)により成形し、成形品を得た。成形品の最
終組成及び特性を表2に示す。
【0090】実施例13 7μmの太さの炭素繊維のロービングを張力下で引き揃
えながら5%M−PP/95%PPを押出機でサイドか
ら押出し、炭素繊維の表面にポリオレフィン系樹脂を押
出被覆し、長さ7mmのペレットにカットし、長繊維ペ
レット(CF−1と称する)を製造した。長繊維ペレッ
ト中の炭素繊維のアスペクト比は1000である。この
長繊維ペレットの炭素繊維/ポリオレフィン系樹脂との
比率は、56/44(重量比)であった。CF−1、T
PV−1C、PPの各ペレットを19.6/41.3/
39.1(重量比)で混合し、成形温度を240℃とし
射出成形機(東芝IS45PNV)により成形し、成形
品を得た。成形品の最終組成及び特性を表2に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【発明の効果】本発明の(A)ポリオレフィン系樹脂、
(B)ゴム状重量体、好ましくは部分的または完全に架
橋されたゴム状重合体、(C)ゴム用軟化剤及び(C)
平均の直径が1〜50μmであり且つ平均のアスペクト
比(長さ/直径)が50〜1000の繊維状フィラーよ
りなるポリオレフィン系組成物は、高い耐衝撃性、高い
耐熱性、高い耐薬品性等を示し、更に落下時あるいは物
があたった時等でも白化現象が軽微で、製品価値を低下
させることが無い。ラジエータータンク等の自動車用材
料、電動工具ハウジング等の工具用材料、事務椅子等の
事務用品用材料等に幅広く使用可能であり、産業界に果
たす役割は大きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 23/08 C08L 23/08 23/10 23/10 Fターム(参考) 4J002 AB014 AC03X AC06X AC07X AC08X AC09X AE05Y BB03W BB06W BB07W BB12W BB14W BB15X BC04X BD044 BG104 BP02W CF004 CL004 CL064 DA016 DJ026 DL006 FA044 FA046 FD010 FD014 FD016 FD20Y

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維状フィラーで強化された熱可塑性樹
    脂組成物よりなり、その組成物が、少なくとも(A)ポ
    リオレフィン系樹脂 94〜30重量部、(B)ゴム状
    重合体 5〜40重量部、(C)ゴム用軟化剤 1〜3
    0重量部 及び(A)成分、(B)成分、(C)成分の
    合計量100重量部に対して(D)平均の直径が1〜5
    0μmであり且つ平均のアスペクト比(長さ/直径)が
    50〜2500の繊維状フィラー 5〜100重量部よ
    りなることを特徴とする高強度ポリオレフィン系樹脂組
    成物。
  2. 【請求項2】 (A)成分であるポリオレフィン系樹脂
    は、ポリプロピレン系樹脂を主とする請求項1記載の高
    強度ポリオレフィン系樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 (B)成分であるゴム状重合体は、部分
    的または完全な架橋ゴム重合体である請求項1〜2記載
    の高強度ポリオレフィン系樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 (B)成分であるゴム状重合体は、エチ
    レンと炭素数3〜20のα−オレフィンを主体としたエ
    チレン・α−オレフィン系共重合体である請求項1〜3
    記載の高強度ポリオレフィン系樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 (D)成分である繊維状フィラーは、ガ
    ラス繊維及び/または炭素繊維である請求項1〜4記載
    の高強度ポリオレフィン系樹脂組成物。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015063707A (ja) * 2007-10-22 2015-04-09 スティロン ヨーロッパ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 物品を成形するためのポリマー組成物及び方法
US10253167B2 (en) 2015-05-07 2019-04-09 Lotte Chemical Corporation Preparing method of polyolefin resin mono chip and polyolefin resin mono chip
US11780991B2 (en) 2016-08-12 2023-10-10 Dow Global Technologies Llc Compositions comprising carbon fibers and at least one thermoplastic polyolefin elastomer
US11827776B2 (en) 2016-08-12 2023-11-28 Dow Global Technologies Llc Propylene-based compositions comprising carbon fibers and a thermoplastic polyolefin elastomer

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