JP2001091476A - 配向測定装置 - Google Patents

配向測定装置

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JP2001091476A JP26566399A JP26566399A JP2001091476A JP 2001091476 A JP2001091476 A JP 2001091476A JP 26566399 A JP26566399 A JP 26566399A JP 26566399 A JP26566399 A JP 26566399A JP 2001091476 A JP2001091476 A JP 2001091476A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高精度にかつ安定して測定でき、測定対象も紙
に代表されるように比較的異方性の小さいものに対して
も高い感度を得られる配向測定装置を提供すること。 【解決手段】試料の一面側のみに配置された1個の誘電
体共振器20と、前記誘電体共振器をその試料測定面を
除いて実質的に覆い、前記誘電体共振器の試料測定面以
外の面と間隙を有するように配置される導電性材料から
なるシールド容器40と、マイクロ波用励振装置と、そ
の誘電体共振器による透過エネルギー又は反射エネルギ
ーを検出する検出装置と、前記試料又は前記誘電体共振
器を前記平面に平行な面内で回転させる回転機構と、前
記回転機構による回転にともなう前記検出装置の検出出
力の変化から試料の誘電的異方性を求めるデータ処理装
置とを備えたことを特徴とする配向測定装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紙、不織布、フィ
ルムをはじめとするシート状物質のみならず、プラスチ
ック、ゴム、セラミックなどの成型品のような立体的物
品も含めて、それらの配向性あるいは誘電的異方性をマ
イクロ波により測定する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】シート状物質の配向を測定する方法とし
ては、従来からX線回折、赤外二色性、力学的破断強
度、超音波伝搬速度、複屈折、偏光蛍光法、マイクロ波
法などが用いられてきている。これらの中で、試料が走
行中に測定できる、いわゆるオンライン測定装置として
実用化されている方法は、複屈折による方法のみであ
る。これは、屈折率の異方性つまりシート面内での複屈
折率あるいはレターデーション(複屈折率×厚さ)を求
める方法であり、特開平4−89553号公報などに紹
介されている。しかし、この複屈折を用いる方法は、可
視光(偏光)を透過させて測定する必要があるため、透
明フィルムのようにある程度、光を透過する物質でない
と測定できないという問題があった。そこで、発明者ら
はマイクロ波誘電体共振器を用いて、試料の片側から検
出部を接触もしくは近接させることにより、配向を測定
する装置を考案した(特開平10−325811号公報
参照)。この方法は、基本的に誘電体共振器が試料の片
側から接触あるいは近接したときの共振周波数の変化を
利用するものであり、PETフィルムなどのシート状物
質をオンラインで測定する事が可能な方法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】PETフィルムなどの
延伸された高分子フィルムに比べて、比較的誘電的異方
性が小さいもの、例えば、紙、不織布などに適用するた
めには、実用上わずかな共振周波数の変化をより正確に
捉える必要があることがわかってきた。本発明は以上の
ような課題を解決し、従来の方法よりさらに高精度にか
つ安定して測定でき、測定対象も紙に代表されるように
比較的異方性の小さいものに対しても高い感度を得られ
る配向測定装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明に係る配向測定装
置は、試料に接近又は接触する測定平面を備え、試料の
一面側のみに配置された1個の誘電体共振器と、前記誘
電体共振器をその試料測定面を除いて実質的に覆い、前
記誘電体共振器の試料測定面以外の面と間隙を有するよ
うに配置される導電性材料からなるシールド容器と、試
料が存在するときの前記誘電体共振器の共振周波数近傍
の周波数で、かつ前記平面に平行な試料内平面において
一方向成分をもつ電界ベクトルをその誘電体共振器に発
生させるマイクロ波用励振装置と、その誘電体共振器に
よる透過エネルギー又は反射エネルギーを検出する検出
装置と、前記試料又は前記誘電体共振器を前記平面に平
行な面内で回転させる回転機構と、前記回転機構による
回転にともなう前記検出装置の検出出力の変化から試料
の誘電的異方性を求めるデータ処理装置と、を備えたこ
とを特徴とする。また、更に誘電体共振器が角柱状また
は円柱状であって、その柱の片側の底面を試料測定面と
し、その面に対向する底面とシールド容器の間にスぺー
サを設けることが感度向上の上で好ましい。また、誘電
体共振器が角柱状または円柱状であって、その柱の片側
の底面を試料測定面とし、その柱の側面とシールド容器
の間にスぺーサを設けることが感度向上の上で好まし
い。また、スぺーサが該スぺーサの支持する柱の面の略
中央部を一点支持することが感度向上の上で好ましい。
また誘電体共振器の試料測定面以外の面と前記シールド
容器との間隙の少なくとも一部を、試料測定面の外縁部
分を全て含むように誘電率および誘電損率の小さい物質
によって塞ぐように構成することにより、ごみ等が測定
部に入ることを防ぎ、感度向上の上でも好ましい。また
励振装置と前記検出装置の端子は、前記誘電体共振器の
試料に接近又は接触する平面に垂直な方向に配置された
棒状のロッドアンテナにすることが感度向上の上で好ま
しい。また複数の誘電体共振器をその発生する電界ベク
トル方向を変えて配置することにより上記のような回転
機構を使用せずに誘電的異方性を求めることもできる。
【0005】
【発明の実施の形態】図1(A)に一実施形態を概略的
に示す。誘電体共振器20に対し、適当なマイクロ波用
ロッドアンテナ22a,22bを誘電体共振器20に対
して適当な位置に適当な方向で配置することにより、誘
電体共振器20を共振させ、かつ誘電体共振器20から
外部にしみだした電界ベクトルが存在するような共振モ
ードを作ることができる。尚、本図ではシールド容器を
簡単のために図示を省略している。その共振モードとし
ては、誘電体共振器20が角柱状(方形)の場合にはT
MモードやTEモード、円柱形の場合にはHEMモード
などがある。電界ベクトル24の強度は誘電体共振器2
0から離れるにつれてほぼ指数関数的に減少していく
が、誘電体共振器20から僅かな距離を離して、又は誘
電体共振器20に接触させて試料25を置くことによ
り、電磁的結合により試料の誘電率に応じて共振周波数
がシフトする。
【0006】発振器26から出たマイクロ波はロッドア
ンテナ22aにより誘電体共振器20と電磁的に結合
し、誘電体共振器20は共振状態となることができる。
誘電体共振器20の電界ベクトルは試料25の面にほぼ
平行な形で現われ、試料25のもつ双極子モーメントと
の相互作用が起こる。ここで、試料25又は誘電体共振
器20を試料25と誘電体共振器20との平行面内で回
転させながら、検出器28に現われるマイクロ波強度を
その回転角度に対応して検出することにより、その強度
の角度依存性から配向状態を求めることができる。コン
トローラ30は発振器26から発生するマイクロ波の周
波数を制御し、検出器28によるマイクロ波強度を取り
込む。32はその検出されたマイクロ波強度の角度依存
性から配向状態を求めるデータ処理装置としてのコンピ
ュータである。
【0007】次に配向測定の原理を説明する。誘電体共
振器20において、透過マイクロ波強度と周波数との間
には図2(A)に示されるような関係がある。この共振
カーブをQカーブと呼ぶ。Qカーブは、試料25が置か
れることによって、以下の関係により変化する。
【0008】
【数1】
【0009】その変化を示したのが図2(B)である。
試料25が誘電体共振器20と対向する平面内に異方性
をもつ場合、試料25又は誘電体共振器20をその平面
に平行な面内で回転させると、例えば図3(A)のよう
に、誘電体共振器20に対する試料25の相対的な回転
角度位置(S)ごとにQカーブのピーク周波数(共振周
波数)が変化する。この回転の中で、例えば最も高周波
側にシフトしたQカーブにおいて、そのピーク周波数で
の透過マイクロ波検出強度をIとし、高周波側での検出
強度がI/2となる周波数をf1とする。周波数f1での
各回転角度の透過マイクロ波検出強度は、図3(B)の
断面として示されるものである。それを回転角度Sを横
軸にして書き直すと、図4(A)に示されるようにな
る。さらにそれを極座標系に書き直すと、図4(B)の
ように楕円となり、この結果から配向角度(φ:基準方
向と誘電率最大の方向とのなす角度)及び配向度(a/
b)を求めることができる。aはその楕円の長軸長さ、
bは単軸長さである。ここで、長軸aと短軸bの差は異
方性の程度を表す。
【0010】上記のような、誘電体共振器の感度をより
向上させるためには、まず共振の鋭さ(Q値)をさらに
大きくして、共振曲線をシャープにすることが有効であ
ると考えた。そこで本発明者等は誘電体共振器の形状、
シールド容器の形状、それらの関係等について種々の試
行を重ねた。その結果、誘電体共振器の形状について
は、角柱状(方形状)が円柱状(円筒形状)より好まし
いことが分かった。円柱状(円筒形状)誘電体共振器で
は、円柱の底面を試料測定平面とした場合、その共振モ
ードがHEM11δモードの場合、試料が存在する平面
における電界ベクトル群がほぼ同一方向を向いているた
め配向測定に向いているが、HEM21δモードやTE
01δモードでは、電界ベクトルが四方に向いたり、円
を描くように分布するため、配向測定には好ましくな
い。
【0011】一方、角柱状(方形状)誘電体共振器で
は、角柱の底面を試料測定平面とした場合、その形状か
ら電界ベクトルが平行になり、たとえばTM101やT
M201モードなど、ほとんどのTMモードが異方性測
定に好ましい。また、角柱状の方は電界ベクトルが完全
に平行になるのに比べて、円形の方はたとえHEM11
δモードであっても完全には平行にならず、端部分は円
に沿って曲線になるため、異方性検出の感度は角柱状
(方形)に比べて低いと思われる。これらの各モードに
おける電界が誘電体共振器の外部にもエバネセント波と
してしみ出しており、このしみ出した電界ベクトルの方
向とロッドアンテナの方向を合致させることにより、電
磁的に結合されるため、共振エネルギーを供給したり、
反対側に同様のアンテナを置けば、そこから共振エネル
ギーを取り出すことができる。
【0012】また、試料測定面以外の面とシールド容器
との距離を適度に離すことが有効であることを見出し
た。また、その最適値を見いだした。この値は具体的に
は、誘電体共振器の底面(測定面と対向する面)とシー
ルド容器の間は0.2から0.8mm好ましくは0.3から0.6m
mが好適であった。また、誘電体共振器の側面とシール
ド容器の間はロッドアンテナのない側面では2から5mm
好ましくは1から3mmが好適であった。また、ロッドア
ンテナのある側面であってもほぼ同様であった。ただ
し、こちらのロッドアンテナのある側面の間隔の方が先
の間隔より、より狭い方がより好適であった。なお以上
の数値は使用周波数や誘電体共振器の寸法にも依存して
おり、現在の寸法である底面(30mm*20mm)、高さ(20m
m)程度では先ほどの値程度が好ましいと考えられる。
この寸法がより小さくなった場合や使用周波数が現在使
用しているギガヘルツ程度より上がれば間隔をより短距
離にすることが好ましいと考えられる。いずれにしても
誘電体共振器とシールド容器が接触しないことが好まし
い。
【0013】また、測定面に対向する誘電体共振器の底
面(測定面と対向する面)とシールド容器とが接触する
面の間に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や
石英等の誘電損失率の小さい物質をスペーサとして挿入
することで、Q値が大幅に向上し、正確な共振周波数の
測定が可能となることがわかった。スペーサはできるだ
け小さい、できれば無い状態で間隔を保てれば良いが、
実用的には数mm角の平板または直径数mmの円盤等を
使用した。
【0014】さらに、ロッドアンテナの長さや太さつい
ても最適にすることでQ値が向上することもわかった。
また、紙、不織布などの製造ラインで実際に使用する場
合には、紙粉やゴミなどの微細な異物が誘電体共振器と
シールド容器との間隙部に入りこれらが堆積し、これに
よって測定値が少しずつずれることもわかってきた。こ
のため、紙粉などの異物が混入しないようにすることが
必要であることが分かった。この紙粉や更には液体など
の混入防止については、誘電体共振器とシールド容器と
の間隙の一部または全部を誘電率が小さくかつ誘電損失
率が小さい物質(例えばポリテトラフルオロエチレン
(テフロン(登録商標)))で埋めることにより、Q値
をほとんど落とすことなく、異物混入を防ぐことができ
ることがわかった。とくに好ましくは、前記誘電体共振
器の試料測定面以外の面と前記シールド容器との間隙
を、少なくとも試料測定面の外縁部分を含むように埋め
ることが良かった。またこのように間隙を埋めた場合、
先に説明したような測定面に対向する誘電体共振器の底
面(測定面と対向する面)とシールド容器とが接触する
面の間にスペーサとして挿入した誘電損失率の小さい物
質を挿入せずにすみ、一層の高いQ値を確保できる。あ
るいは、同様に誘電率が小さくかつ誘電損失率が小さい
物質(例えばポリテトラフルオロエチレン(テフロ
ン))の薄いシートで検出部全体を覆うことによっても
同様の目的が達成できることもわかった。
【0015】また、以上のような測定を試料と検出部の
相対位置を回転させて行う代わりに複数個の測定部をそ
れぞれの電界ベクトルの方向が異なるように配置して迅
速に測定することができる。以上に説明したような複数
個の測定部を用いて試料の誘電的異方性、つまり分子配
向あるいは繊維配向を測定する1つの方法としては、図
5に示したように例えば30度毎に6個の誘電体共振器
の発生する電界ベクトル方向を変えて配備し、各誘電体
共振器での周波数シフト量(ブランク時の共振周波数−
試料が有る時の共振周波数)を求める。図5は6個の誘
電体共振器を発生する電界ベクトル方向を変えて配置し
た状態を示す平面図である。このように配置した6個の
誘電体共振器から得られる周波数シフト量を極座標上に
プロットし、この6ポイントで楕円近似すれば、配向パ
ターンと呼ぶ楕円が図6に示されるように計算により得
られる。図6は6個の誘電体共振器から得られた配向パ
ターンの一例を示す図である。図6中の楕円上の点が図
5のそれぞれの誘電体共振器から得られたデータを示
す。
【0016】また、複数個の検出部の個体差(同一試料
を接触させても同一の共振周波数シフトをしないで、わ
ずかに差異が生ずること)をできるだけ小さくする必要
があり、そのために測定部が試料と接触または近接する
面をできるだけフラットにすることが好ましい。この場
合複数個の測定部の面をフラットにする方法として、一
枚のフラットな金属塊から誘電体共振器を埋める部分の
みを削り出して、その中に誘電体共振器を埋め込む方法
を考案した。これによって、非測定物であるシート状物
質のたわみによる悪影響を無くすことができた。その一
例を図7に示した。図7は6個の誘電体共振器を一つの
金属ケースに30度毎に方向を変えて配置した一例を示
すものである。この図のように配置することにより、非
常に小さな面積の中に30度毎に6個の誘電体共振器を
方向を変えて配置することが可能になった。
【0017】以上の説明の中で、繊維配向を測定する場
合、何故誘電率の異方性を測るのが妥当なのかの説明を
省いたが、平均的かつマクロ的に見た場合の繊維の配向
角度(繊維が並んでいる方向)と、シート面内における
巨視的な誘電率の最大方向とが一致することは周知の事
実であるので、ここでの説明は省略する。
【0018】このような複数の測定部を使用した場合、
信号処理的には、図8のようにマイクロ波掃引発振器か
ら出た信号を6個の誘電体共振器に分配し、透過強度を
検波ダイオードで電圧に変換する。これを増幅、A/D
変換し、ピーク検出回路によってピーク位置が検出され
る。周波数の掃引は一定の周期で繰り返され、かつ掃引
中のみハイレベルとなる同期信号が同時にマイクロ波掃
引発振器から出ているため、この同期信号がハイレベル
になる瞬間から透過強度が最大値をとるまでの時間を測
定すれば、共振周波数が求められる。図8は6個の誘電
体共振器からの信号を処理する回路のブロック図であ
る。例えば、250MHzを10msecで掃引する場
合のタイムチャートを図9に示す。図9は図8に示した
ブロック図における信号の処理を示すタイムチャートで
ある。
【0019】
【実施例】誘電体共振器のQ値(共振の鋭さ)を向上さ
せるために、図10に示すように誘電体共振器20の底
面とシールド容器40の間にスペーサ41を介在させ
た。図10(a)は誘電体共振器をシールド容器に入れ
た状態を示す平面図であり、図10(b)は同図の横断
面図である。スペーサ41の厚さとQ値との関係は、4
GHzでTM201モードの共振をさせた場合、図11
のように変化した。図11はスペーサの厚さとQ値の関
係を示す図であり、(A)はスぺーサ41が金属シート
の場合、(B)はスぺーサ41がPET(ポリエチレン
テレフタレート)フィルムの場合である。この結果から
スペーサ41の厚みは0.5mm前後がQ値向上には最
適な厚さであることがわかった。
【0020】図12及び図13に、スペーサの有無によ
るQ値の違いを測定した結果を示す。横軸は周波数、縦
軸はマイクロ波透過強度を示す。図12はスぺーサを使
用せずに誘電体共振器20の底面をシールド容器に直接
接触させた場合である。図13はスペーサ41を介在さ
せた場合である。それぞれの図において下側に示したス
ペクトル(B)はそれぞれのスペクトル(A)における
同じ周波数位置のピークを、横軸を100倍に拡大して
示したものである。図12と13を比較すると、スペー
サ41を付けることでQ値が360から1050に上昇
している。これによって、ピーク検出つまり共振周波数
の測定精度が大幅に向上した。
【0021】スペーサに用いる材料としては、金属、高
分子フィルムなどがあるが、誘電的ロスの少ない石英板
などが好ましい。また、スペーサ40は誘電体共振器2
0の底面の複数個所、例えば誘電体共振器20が角柱状
(方形)である場合にはその底面の4隅に小さく分けて
配置することもできるが、そのように複数個所に配置す
るよりも、図10に示したように中央部に1枚置く方が
Q値が高くなることもわかった。結局スペーサはできる
だけ小さい方が好ましい。発明者等は試行の結果、数m
m角の平板状または数mmの直径の円盤状のスペーサを
使用した。
【0022】ロッドアンテナ22a、22bは、図10
に示したように誘電体共振器20とシールド容器40の
金属壁のほぼ中央に配置させるのが好ましく、長さは長
くすると受信マイクロ波強度は大きくなるがQ値は下が
る傾向があり、誘電体共振器20の高さの1/2から2
/3程度にするのが好ましい。また太さは、細いほどQ
値が高いが、強度との関係から直径0.1から0.5m
m程度が好ましい。
【0023】誘電体共振器20を図10に示したように
配置して、誘電体共振器とシールド容器とのギャップを
上述したように適当に開けることで、例えば図14に示
すように、誘電体共振器20表面で電界ベクトルがすべ
て長軸方向に平行になる共振モード(TM201)を作
ることができる。(A)は平面図における誘電体共振器
20表面での電界ベクトルを示したもの。(B)はスペ
ーサ41を通るように垂直方向に切断した位置における
誘電体共振器20の内部の電界ベクトルを示したもので
ある。図14ではロッドアンテナの図示を略している
が、図10と同様に配置されている。このような共振モ
ードが、試料の誘電率の異方性を測定する上で最適なモ
ードの一つである。
【0024】誘電体共振器20とシールド容器40との
ギャップを図15のように、ポリテトラフルオロエチレ
ンのような低誘電率、低誘電損失率の物質42で埋める
ことで、Q値をほとんど落とすことなく異物混入を防ぐ
ことができる。図15で、(A)は平面図、(B)は垂
直断面図である。
【0025】また、図16に示したように、シールド容
器の高さを低くし、代わりに上述のような低誘電率、低
誘電損失率の物質43を取り付けることによりQ値をほ
とんど落とすことなく、かつ共振モードを変えることな
く異物混入を防ぐことができる。図16で、(A)は平
面図、(B)は垂直断面図である。
【0026】また、図17に示すように、誘電体共振器
20はその上面がシールド容器40の開口縁及び誘電体
共振器20とシルールド容器40とのギャップを含むセ
ンサ全体を、ポリテトラフルオロエチレンのシート44
で覆うことによっても異物混入を防ぐことができる。図
17で、(A)は平面図、(B)は垂直断面図である。
【0027】図18(A)は厚さ50μmのポリテトラ
フルオロエチレンシートを被せた場合(左側)と、被せ
なかった場合(右側)のマイクロ波透過強度スペクトル
の同じピークを示したものである。誘電率の変化により
共振周波数のシフトは見られるが、ピークの形状はほと
んど変化していないのでQ値も下がっていない。図18
(B)はセンサ全体をポリテトラフルオロエチレンのシ
ート44で覆った状態で、ポリテトラフルオロエチレン
のシート44上に試料としてのPETフィルムを載せて
共振周波数のシフトを測定した結果を示したものであ
る。右側のピークは試料を載せていない場合、左側のピ
ークは試料を載せた場合であり、このように誘電体共振
器20とシールド容器40とのギャップに異物が混入す
るのを防ぎながら、試料の誘電率の異方性を測定するこ
とができる。以上の図15、16、17に示したような
測定系では測定面を上向きにした例を説明したが、測定
面が鉛直方向や斜め方向になるように使用しても良い。
以上の図15、16、17に示したような測定系では4
2、43、44の部材によって挟むことや、接着剤を使
用することにより誘電体共振器20を機械的に保持させ
ればスペーサ41を使用せずに済み、よりQ値を向上さ
せることもできる。
【0028】また図10に示したような測定系において
底面のスペーサの代わりにスペーサを円柱または角柱状
誘電体共振器の側面を両側から挟んで支持するように配
置することもできる。この場合スペーサによって誘電体
共振器を支える必要があるので接着剤を使用したり、ス
ペーサに弾性力を持たせて支えたりすることが必要にな
る。またこのような場合の特殊な場合として測定面を略
鉛直方向にするとスペーサは下方から支えるだけで良
く、誘電体共振器を挟む必要はなくなる。いずれにして
も角柱の場合は側面側からスペーサを使用する場合はそ
の場合スペーサによって支える側面にはアンテナがない
ほうがより好ましい。
【0029】また、6個の誘電体共振器を入れたシール
ド容器を30度毎に方向を変えて配備する場合、従来は
6個のシールド容器を個別に平面上に配備していたが、
試料のたわみによる測定値の変動を防ぐ意味でも、図1
9に示すように、表面がフラットな金属塊45に直方体
の穴Hを6個所開けて、その中に誘電体共振器20・・
・を埋め込む方が、試料のたわみが無くなり、結果とし
て安定してかつ精度良く測定できることがわかった。図
19で、(A)は正面図、(B)は平面図である。
【0030】この測定ヘッドを用いて実際に2軸延伸P
ETを測定した例を図20に示す。図20は配向角を測
定した状態のディスプレイを示す図である。ディスプレ
イ上の上側の折れ線グラフの前半部(左側)は配向角度
が60度で安定して測定できていることが分かる。次
に、巻き取りを反転させて裏側を測定すると、上側の折
れ線グラフの後半部(右側)が相当するが、配向角度も
−60度前後となり、理論通り(絶対値が同じで符号が
反対)の結果となった。また、この配向角度は、ラボ用
の配向測定装置である分子配向計(王子計測機器社製M
OA3001A)による配向角度と一致した。
【0031】また、王子製紙社製アラミド紙を測定した
結果を図21に示す。配向角度はほぼ0度を示してお
り、これは繊維の配向方向が平均的に見てMD(マシン
の流れ方向)を向いていることを意味し、この値は前述
の王子計測機器社製の分子配向計で測定した結果と一致
した。
【0032】
【発明の効果】誘電体共振器をその試料測定面を除いて
実質的に覆い、前記誘電体共振器の試料測定面以外の面
と間隙を有するように導電性材料からなるシールド容器
を配置することによってQ値を上げ、感度を向上させる
ことができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の原理を説明する一実施形態の
概略斜視図、(B)はその等価回路図である。
【図2】(A)は誘電体共振器における透過マイクロ波
強度と周波数の関係を示すQカーブの図であり、(B)
は誘電率変化に伴う共振周波数シフトを示す図である。
【図3】(A)は試料又は誘電体共振器を回転させたと
きのQカーブの変化を示す図であり、(B)は特定の周
波数での断面を示す図である。
【図4】(A)は図3の(B)の断面を回転角度Sを横
軸にして書き直した図であり、(B)はさらにそれを極
座標系に書き直した図である。
【図5】6個の誘電体共振器を発生する電界ベクトル方
向を変えて配置した状態を示す平面図である。
【図6】図5に示した6個の誘電体共振器から得られた
配向パターンの一例を示す図である。
【図7】6個の誘電体共振器を一つの金属ケースに30
度毎に方向を変えて配置した一例を示す平面図である。
【図8】6個の誘電体共振器からの信号を処理する回路
のブロック図である。
【図9】図8に示したブロック図における信号の処理を
示すタイムチャートである。
【図10】(a)は誘電体共振器をシールド容器に入れ
た状態を示す平面図であり、(b)は同図の横断面図で
ある。
【図11】スペーサの厚さとQ値の関係を示す図であ
り、(A)はスぺーサ41が金属シートの場合、(B)
はスぺーサ41がPET(ポリエチレンテレフタレー
ト)フィルムの場合である。
【図12】スペーサの有無によるQ値の違いを測定した
結果を示し、横軸は周波数、縦軸はマイクロ波透過強度
を示す。スぺーサを使用せずに誘電体共振器20の底面
をシールド容器に直接接触させた場合である。
【図13】スペーサの有無によるQ値の違いを測定した
結果を示し、横軸は周波数、縦軸はマイクロ波透過強度
を示す。スペーサ41を介在させた場合である。
【図14】(A)は平面図における誘電体共振器20表
面での電界ベクトルを示したもの。(B)はスペーサ4
1を通るように垂直方向に切断した位置における誘電体
共振器20の内部の電界ベクトルを示したものである。
【図15】誘電体共振器20とシールド容器40とのギ
ャップを物質42で埋めた状態を示し、(A)は平面
図、(B)は垂直断面図である。
【図16】シールド容器の高さを低くし、代わりに物質
43を取り付けた状態を示し、(A)は平面図、(B)
は垂直断面図である。
【図17】誘電体共振器20の上面でシールド容器40
の開口縁及び誘電体共振器20とシルールド容器40と
のギャップを含むセンサ全体を、シート44で覆った状
態を示し、(A)は平面図、(B)は垂直断面図であ
る。
【図18】図18(A)は厚さ50μmのポリテトラフ
ルオロエチレンシートを被せた場合(左側)と、被せな
かった場合(右側)のマイクロ波透過強度スペクトルの
同じピークを示したものであり、(B)はセンサ全体を
ポリテトラフルオロエチレンのシート44で覆った状態
で、ポリテトラフルオロエチレンのシート44上に試料
としてのPETフィルムを載せて共振周波数のシフトを
測定した結果を示したものであり、右側のピークは試料
を載せていない場合、左側のピークは試料を載せた場合
である。
【図19】金属塊45に直方体の穴Hを6個所開けて、
その中に誘電体共振器20・・・を埋め込んだ状態を示
し、(A)は正面図、(B)は平面図である。
【図20】2軸延伸PETの配向角を測定した状態のデ
ィスプレイを示す図である。
【図21】アラミド紙の配向角を測定した状態のディス
プレイを示す図である。
【符号の説明】
20:誘電体共振器 22a、22b:ロッドアンテナ 40:シールド容器 41:スペーサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/38 G01N 33/38

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】試料に接近又は接触する測定平面を備え、
    試料の一面側のみに配置された1個の誘電体共振器と、
    前記誘電体共振器をその試料測定面を除いて実質的に覆
    い、前記誘電体共振器の試料測定面以外の面と間隙を有
    するように配置される導電性材料からなるシールド容器
    と、試料が存在するときの前記誘電体共振器の共振周波
    数近傍の周波数で、かつ前記平面に平行な試料内平面に
    おいて一方向成分をもつ電界ベクトルをその誘電体共振
    器に発生させるマイクロ波用励振装置と、その誘電体共
    振器による透過エネルギー又は反射エネルギーを検出す
    る検出装置と、前記試料又は前記誘電体共振器を前記平
    面に平行な面内で回転させる回転機構と、前記回転機構
    による回転にともなう前記検出装置の検出出力の変化か
    ら試料の誘電的異方性を求めるデータ処理装置と、を備
    えたことを特徴とする配向測定装置。
  2. 【請求項2】前記誘電体共振器が角柱状または円柱状で
    あって、その柱の片側の底面を試料測定面とし、その面
    に対向する底面とシールド容器の間にスぺーサを設けた
    請求項1記載の配向測定装置。
  3. 【請求項3】前記誘電体共振器が角柱状または円柱状で
    あって、場合にその柱の片側の底面を試料測定面とし、
    その柱の側面とシールド容器の間にスぺーサを設けた請
    求項1記載の配向測定装置。
  4. 【請求項4】前記スぺーサが該スぺーサの支持する柱の
    面の略中央部を一点支持する請求項2または3記載の配
    向測定装置。
  5. 【請求項5】前記誘電体共振器の試料測定面以外の面と
    前記シールド容器との間隙の少なくとも一部を、試料測
    定面の外縁部分を全て含むように誘電率および誘電損率
    の小さい物質によって塞ぐように構成した請求項1から
    4のいずれか一項に記載の配向測定装置。
  6. 【請求項6】前記励振装置と前記検出装置の端子は、前
    記誘電体共振器の試料に接近又は接触する平面に垂直な
    方向に配置された棒状のロッドアンテナである請求項1
    から5のいずれか一項に記載の配向測定装置。
  7. 【請求項7】前記回転機構の代わりに前記誘電体共振器
    をその発生する電界ベクトル方向を変えて複数個有する
    請求項1から6のいずれか一項に記載の配向測定装置。
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