JP2001089876A - 高面圧低減機能を有する耐摩耗性に優れた鋼製部材とその製造方法 - Google Patents

高面圧低減機能を有する耐摩耗性に優れた鋼製部材とその製造方法

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JP2001089876A
JP2001089876A JP26962899A JP26962899A JP2001089876A JP 2001089876 A JP2001089876 A JP 2001089876A JP 26962899 A JP26962899 A JP 26962899A JP 26962899 A JP26962899 A JP 26962899A JP 2001089876 A JP2001089876 A JP 2001089876A
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Atsushi Kato
淳 加藤
Toshiki Sato
俊樹 佐藤
Katsuhiro Iwasaki
克浩 岩崎
Satoshi Abe
安部  聡
Yoshitake Matsushima
義武 松島
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 他の部材と共働して作動する際に非常に高い
面圧が生じても、優れた耐摩耗性を発揮することができ
る鋼製部材、その製造方法を提供する。 【解決手段】 表面硬化層2を有する鋼製母材1と、前
記表面硬化層2の上に形成され、その表面硬度に対して
硬度がHv150以上低いSn、Sn−Cu合金等の
質金属からなる面圧低減層3とを備える。面圧低減層3
は鋼製部材が他の部材と共働して作動する際に局部的に
生じた高面圧の下で塑性変形することにより接触面積を
増大させて面圧を低減する。このため、表面硬化層2に
局部的な摩耗や損傷が生じず、耐摩耗性が有効に発揮さ
れる。前記表面硬化層2と前記面圧低減層3との間に両
層の密着性を向上させる中間層を設けてもよい。前記面
圧低減層3、中間層4は250℃以下で形成することに
より、表面硬化層2の熱軟化を抑制することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】自動車などの輸送機、産業機
械、レジャー用品などの機械、装置に組み込まれて、他
の部材と共働して作動する鋼製の部材に関する。このよ
うな部材の典型例としては、車軸、等速ジョイント、レ
ールガイド、歯車等の転動部材を例示することができ
る。
【0002】
【従来の技術】車軸、等速ジョイント、レールガイド、
歯車等の転動部材に対して、耐摩耗性を付与して、耐久
性を向上させる手段として、鋼製母材の表面に浸炭、浸
炭窒化、窒化、高周波焼入等によって母材よりも高硬度
の表面硬化層を形成することが従来から行われている。
しかしながら、母材に表面硬化層を形成することによる
耐摩耗性、耐久性の向上は限界に近づきつつある。
【0003】すなわち、近年、地球環境問題の観点か
ら、種々の機械、装置に使用される鋼製部材の省エネル
ギー化、高効率化が進められており、より軽量化、コン
パクト化が指向されている。これに伴って、部材同士の
接触部における面圧が高く設計される傾向があり、特に
使用開始時においては部材の製作誤差や組み立て誤差等
があるために、部材同士の接触部に非常に高い面圧が生
じる傾向にある。このため、単なる表面硬化層の形成に
よる耐摩耗性の改善では、近年の使用環境の過酷化には
対応できなくなりつつある。
【0004】本発明はかかる問題に鑑みなされたもの
で、他の部材と共働して作動する際に非常に高い面圧が
生じても、優れた耐摩耗性を発揮することができる鋼製
部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋼製母材
の表面に表面硬化層を形成した各種の転動部材の破壊部
の調査を通じて、作動初期に部材同士の接触部に非常に
高い面圧が発生し、これによって部材の表面硬化層に局
部的な摩耗、損傷が生じるため、表面硬化層が有効に作
用せず、耐摩耗性が劣化することを知見した。すなわ
ち、機械、装置の設計段階では、転動する部材同士の接
触部に過度な局部摩耗や損傷が生じないように、機械的
に完全な噛み合わせ状態が得られるように設計される
が、現実には製作誤差、組み立て誤差等があるために理
想的な共働状態は得られ難い。このため、機械、装置の
稼働初期には、部材同士の接触部は片当たりに近い状態
になる。機械、装置のコンパクト化の下では、設計段階
での接触部の面圧がもともと高く計画されるので、この
ように状態が生じると、接触部に非常に高い面圧が発生
する。かかる高面圧が生じると、部材に局部的な摩耗や
損傷が生じて、部材に表面硬化層を形成した場合でも、
表面硬化層の本来の作用が発揮できず、耐摩耗性が低下
し、引いては機械、装置の寿命を短縮させるのである。
【0006】本発明はかかる知見に基づいてなされたも
のであり、請求項1に記載した本発明は、他の部材と共
働して作動する鋼製部材であって、表面硬化層を有する
鋼製母材と、前記表面硬化層の表面硬度に対して硬度が
Hv150以上低い軟質金属からなる面圧低減層とを備
え、前記面圧低減層は前記表面硬化層の上に形成され、
鋼製部材が他の部材と共働して作動する際に局部的に生
じた高面圧の下で塑性変形することにより面圧を低減す
る、高面圧低減機能を有する耐摩耗性に優れた鋼製部材
である。
【0007】この発明の鋼製部材によると、面圧低減層
は表面硬化層の表面硬度に対して硬度がHv150以上
低いので、作動初期に片当たりなどに起因する非常に高
い面圧が他の部材との接触部に局部的に発生しても、面
圧低減層が速やかに塑性変形を起こして接触面積を増大
させて面圧を低下させ、また部材同士を高負荷のかから
ない適正な位置に保持しようとするため、表面硬化層に
は高面圧が直接作用せず、局部的な摩耗や損傷が生じ難
くなる。このため、表面硬化層の耐摩耗性が有効に発揮
されるようになり、高面圧下においても優れた耐摩耗
性、耐久性が得られ、本発明の部材が組み込まれた機
械、装置においては、設計どおりの本来の寿命を達成す
ることができるようになる。面圧低減層の表面硬度が高
いと局部的な高面圧が作用したとき、円滑な塑性変形が
起こりにくくなり、面圧低減作用や位置調整作用が低下
するようになるので、本発明では面圧低減層の硬度を表
面硬化層の表面硬度よりHv150以上、好ましくはH
v200以上低くするのがよい。なお、前記面圧低減層
は機械、装置の初期において有効な作用を奏するもので
あり、定常運転状態に至れば部材同士の接触部では磨滅
して消失し、部材の耐摩耗性は鋼製部材の表面に形成さ
れた表面硬質層が担うようになる。
【0008】また、請求項2に記載したように、前記表
面硬化層と前記面圧低減層とに対する密着性が良好な金
属によって形成された中間層を設け、前記面圧低減層を
前記表面層の上に前記中間層を介して形成することで、
表面硬化層と機械的性質の異なる面圧低減層を表面硬化
層に強固に被覆させることがき、面圧低減層に局部的な
高面圧が作用した際に、面圧低減層が表面硬化層に対し
て剥離やずれが生じず、面圧低減層に局部的な塑性変形
が速やかに生じるようになり、部材の耐摩耗性、耐久性
をより向上させることがきる。
【0009】前記面圧低減層を形成する金属としては、
Sn、Zn、Pb、In、Snを30wt%以上含有する
Sn−Cu合金あるいはSn−Ni合金、Sn−Pb合
金、Zn−Sn合金などの軟質金属を適用できるが、特
に請求項3に記載したように、Sn、Sn:30wt%以
上,残部実質的にCuを本質的成分とするSn−Cu合
金、あるいはSn:30wt%以上,残部実質的にNiを
本質的成分とするSn−Ni合金が好適である。これら
のSn系金属は、Pbを含まないため環境汚染の問題も
なく、Inのような高価な元素を含まないため経済的で
あり、面圧低減層として必要な特性も優れているからで
ある。
【0010】また、前記鋼製母材に形成された表面硬化
層は、請求項4に記載したように、表面硬度を600H
v以上とするのがよい。表面硬化層の表面硬度が高いほ
ど耐摩耗性あるいは耐久性が向上する傾向があり、好ま
しくはHv600以上、より好ましくはHv750とす
ることで、面圧低減層の面圧低減作用により表面硬化層
の耐摩耗性が極めて効果的に発揮され、非常に優れた耐
摩耗性、耐久性を確保することができる。
【0011】また、本発明の製造方法は、請求項5に記
載したように、表面硬化層を有する鋼製母材の最外層に
請求項1に記載した面圧低減層を形成する鋼製部材の製
造方法であって、前記表面硬化層の上に直接に、あるい
は前記表面硬化層および前記面圧低減層に対する密着性
が良好な金属によって形成された中間層を介して前記面
圧低減層を形成するに際し、前記面圧低減層あるいは前
記中間層および前記面圧低減層を250℃以下で形成す
る高面圧低減機能を有する耐摩耗性に優れた鋼製部材の
製造方法である。
【0012】この発明の製造方法によると、面圧低減
層、あるいは中間層および面圧低減層を形成する際に、
表面硬化層の温度が250℃以下とされるので、表面硬
化層の熱軟化が抑制され、硬度低下を防止することがで
きる。このため、表面硬化層を形成した際の硬度をほぼ
維持することができ、優れた耐摩耗性、耐久性を備えた
鋼製部材が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】図1は本発明の第1実施形態にか
かる鋼製部材の要部断面図を示しており、鋼製母材1の
表面に表面硬化層2が形成されており、その表面硬化層
2の上に面圧低減層3が被覆形成されている。
【0014】前記鋼製母材1は、表面硬化処理によって
表面硬化層2を形成することができる鋼材で形成されて
いる。このような鋼材としては、例えば機械構造用鋼、
合金鋼、工具鋼、軸受鋼を用いることができる。表面硬
化処理としては、浸炭焼入、高周波焼入、窒化処理、浸
炭窒化処理などがある。表面硬化層の硬度は、高いほど
よく、Hv600以上、好ましくはHv700以上、よ
り好ましくはHv750以上とするのがよい。なお、表
面硬化処理によって得られた表面硬化層の表面に異常組
織が形成される場合には、面圧低減層3を形成する前に
表層の数十μmを研削等により削除しておくことが好ま
しい。
【0015】前記面圧低減層3は、前記表面硬化層2の
表面硬度に対して硬度がHv150以上、好ましくはH
v200以上低い軟質金属で形成されている。このよう
な金属としては、Sn、Zn、Pb、In、Snを30
wt%以上含有するSn−Cu合金あるいはSn−Ni合
金、Sn−Pb合金、Zn−Sn合金などの金属を適用
できるが、特に純Sn、Sn:30wt%以上(好ましく
は40wt%以上、より好ましく50wt%以上),残部実
質的にCuを本質的成分とするSn−Cu合金、あるい
はSn:30wt%以上(好ましくは40wt%以上、より
好ましくは50wt%以上),残部実質的にNiを本質的
成分とするSn−Ni合金が好適である。これらのSn
系金属は、Pbを含まないため環境汚染の問題もなく、
Inのような高価な元素を含まないため経済的であり、
適度な硬度を有しており、機能的に優れているからであ
る。前記軟質金属は、概ね相手部材に対する摩擦抵抗が
表面硬化層2よりも小さく、滑り性に優れており、摺動
性も良好である。
【0016】面圧低減層3の硬度は、表面硬化層2の表
面硬度よりもHv150以上、好ましくHv200以上
低ければよい。もっとも、面圧低減層3の硬度が高い場
合には一般的に摩耗速度が遅いために面圧低減効果が長
く得られる利点があるが、面圧を分散、低減する効果は
硬度上昇と共に低下する。一方、硬度が低い場合には摩
耗速度が速いために効果が得られる期間が短くなるが、
面圧の分散、低減効果は優れている。このため、あえて
好適な範囲を設定すれば概ねHv15〜400が好まし
く、より好ましくはHv30〜250程度がよい。
【0017】面圧低減層3の層厚は、1〜15μm 程度
が好ましい。1μm 未満では面圧低減作用が不足し、一
方15μm を超えて形成しても面圧低減作用は飽和し、
経済的でないばかりか、寸法精度が悪化して部材の耐摩
耗性が低下するようになり、さらに面圧低減層の摩耗粉
が増大して潤滑油を汚染し、耐摩耗性に悪影響を及ぼす
スラッジを生成したり、潤滑油添加剤の消耗を促進した
りする。このため、面圧低減層の層厚は1〜15μm 、
より好ましくは、5〜10μm 程度にするのがよく、2
0μm 以上は避けるべきである。
【0018】図2は、本発明の第2実施形態を示す鋼製
部材の要部断面を示しており、この実施形態では、鋼製
母材1に形成された表面硬化層2に中間層4を介して面
圧低減層3が被覆形成されている。なお、第1実施形態
と同機能を有する部分には同符号が付されており、その
説明を省略する。
【0019】前記中間層4は、表面硬化層2および面圧
低減層3の両層になじみ易く、密着性の良好な金属によ
って形成されている。このような金属としては、Cu、
Ni、あるいはCu,Niを本質的成分としてなるCu
−Ni合金を例示することができる。純Cu、あるいは
Ni:30wt%以下、残部実質的にCuを本質的成分と
してなるCu−Ni合金は密着性が良好で、経済的であ
るので、好ましい。
【0020】前記中間層の層厚は、Cu,Niともに原
子オーダーの厚さでも効果を発揮するが、いたずらに薄
層を形成する必要はなく、層厚の下限は一般的には0.
1μm 程度でよい。一方、厚すぎると経済的でない他、
摩耗により寸法変化が大きくなるため、10μm 程度以
下に止めておくことが好ましく、数十μm 以上の中間層
は避けるべきである。好ましくは、0.2〜5μm 程度
がよい。
【0021】さらに、密着性をより向上させるには、中
間層4と面圧低減層3との間に両層の成分が拡散した拡
散層を形成すればよい。拡散層を形成する方法は種々あ
るが、表面硬化層の上に中間層、面圧低減層をこの順序
で積層形成した後、拡散温度にて加熱保持する拡散熱処
理を施せばよい。拡散温度は、表面硬化層の硬度を低下
させないように、250℃以下、好ましくは200℃以
下に止めるのがよい。面圧低減層を形成する際に加熱を
行う成膜法、例えば真空蒸着や気相コーティングを適用
する場合、拡散熱処理を別個に行う必要はなく、拡散熱
処理を省略することができる。
【0022】前記拡散層の厚さは、加熱温度と保持時間
によって調整可能であり、軟質金属の原子が中間層4と
表面硬化層2の界面付近まで拡散するようにしてもよ
い。この場合、前記界面付近において、中間層4の主成
分の合計濃度が概ね50wt%以上あれば、中間層4から
置き換わった拡散層と表面硬化層2との密着性を確保す
ることがきる。なお、前記拡散熱処理によって、中間層
4と表面硬化層2との間に、両層の成分が拡散した拡散
層が形成されることはほとんどないが、両層の密着性も
向上させる作用がある。
【0023】前記面圧低減層3、中間層4を形成するプ
ロセスは特に指定されないが、処理時の温度上昇がほど
んど無視できるため、めっき処理が一般的に好ましい。
その他、真空蒸着、イオンプレーティング、スパックリ
ング等の気相コーティングを適用することもできる。こ
れら気相コーティング法を用いて成膜する際には、25
0℃以下、好ましくは200℃以下の処理温度に制限す
ることによって、鋼製母材1に形成された表面硬化層2
の熱軟化による硬度劣化を抑制することができる。
【0024】
【実施例】化学組成の異なる種々のクロムモリブデン浸
炭窒化鋼によって軸状の鋼製母材を製作し、この母材に
浸炭窒化を施して、母材の表面に種々の硬度を有する表
面硬化層を形成した。さらに、その後、表面硬化層に研
削仕上を施し、その表層の約50μmを除去した。この
鋼製母材の表面硬化層に直接に、あるいは中間層を形成
後、その上に面圧低減層を被覆形成して試験用部材を得
た。面圧低減層は湿式めっき法、多元EB(電子ビー
ム)法によって形成された。一方、中間層は湿式めっき
法、AIP(アークイオンプレーティング)法によって
形成された。これらの各層の成膜条件を下記に示す。
【0025】 (1) 面圧低減層 湿式めっき法 ・Sn層のめっき条件 めっき液組成:硫酸第1スズ 40〜70g/l 硫酸 80〜100g/l ホルマリン 5ml/l 電流密度:2〜5A/dm2 めっき液温:10〜200℃ ・Zn層のめっき条件 めっき液組成:硫酸亜鉛 150〜230g/l 酢酸ナトリウム 30〜5Og/l 硫酸 数ml/l 電流密度:5〜15A/dm2 めっき液温:50〜60℃ 多元EB蒸着法 ・Sn−Pb(70wt%)合金層、Cu−Sn(40wt%)合金層の成膜条件 真空度 :3〜7×10-4Torr 基板温度:250℃ EB出力:1kW
【0026】 (2) 中間層 AIP法 ・Cu層、Ni層 窒素導入前真空度:1×10-3〜5×10-5Torr スパッタクリーニング:−500〜−800V、2min 成膜開始時の被処理材温度:180〜300℃ 窒素導入後圧力:20mTorr 成膜時カソード電流:100A 成膜時バイアス電圧:−10〜−30V 湿式めっき法 ・Cu層 めっき液組成:ピロリン酸銅 70〜90g/l ピロリン酸カリウム 240〜400g/l アンモニア水 4ml/l 電流密度:2〜5A/dm2 めっき液温:50〜60℃ ・Ni層 めっき液組成:硫酸ニッケル 220〜300g/l 塩化ニッケル 40〜50g/l ホウ酸 30〜40g/l 電流密度:2〜5A/dm2 めっき液温:45〜60℃
【0027】以上のようにして製作した各試料(試験部
材)の層の構成、製法、種類(組成)、層厚、硬度、被
処理材の最高到達温度、中間層あるいはさらに面圧低減
層の成膜前および成膜後の表面硬化層の表面硬度を表1
にまとめて示す。表1において、中間層を形成後に多元
EB蒸着法によって面圧低減層を形成した試料(No.8
および9)は、同法の実施の際に被処理材(鋼製母材お
よび中間層)が処理温度に保持されるため、中間層と面
圧低減層との間に拡散層が形成された。また、中間層お
よび面圧低減層を共にめっき法により形成した試料No.
6は、両層を成膜後に部材を200℃に保持する拡散熱
処理を行って、拡散層を形成した。
【0028】各試料の試験部材を用いて、摺動の要素も
加味したローラピッチング試験を行った。この試験は、
図3に示すように、大ローラ11の外周部に小ローラ
(試料試験部材)12の面圧低減層13が被覆された部
分を当接させ、下記の条件にて大ローラ11および小ロ
ーラ12を回転させ、ピッチングの発生により小ローラ
12に生じた振動で小ローラ12が停止するまでの回転
数を求め、これにより試験部材の耐摩耗性、耐久性を評
価した。これらの結果を表1に併せて示す。なお、No.
17は面圧低減層を形成していない無処理の鋼製母材を
用いたものである。
【0029】〔ローラピッチング試験条件〕 大ローラと小ローラの当接部における面圧:3.0GP
a 大ローラの回転数:1500rpm 大ローラ周面における小ローラの滑り率:−40% 当接部に供給した潤滑油:ディーゼルオイル(2L/mi
n 、90℃) 大ローラの材質:SUJ2鋼(表面硬度Hv780)
【0030】
【表1】
【0031】表1より、発明例の試料No. 1〜16は、
ローラピッチング試験において、面圧低減層を有しない
No. 17の試料に比して5〜16倍寿命が向上し、優れ
た耐摩耗性、耐久性が得られた。特に、面圧低減層をS
nあるいはSn−Cu合金で形成したものは耐久性に優
れている。もっとも、面圧低減層を20μm と厚く形成
した試料No. 16では、磨滅して剥離したSn粉に起因
したスラッジが潤滑油内に明瞭に認められ、層厚を10
μm に形成した試料No. 1に比して耐久性の低下が認め
られた。
【0032】
【発明の効果】本発明によれば、鋼製母材の表面硬化層
に所定の軟質金属によって形成された面圧低減層を設け
るという実施容易な手段により、部材のコンパクト化に
伴って、今後ますます厳しくなる、転動を含む高面圧下
での摩耗環境において優れた耐摩耗性、耐久性を発揮し
うる鋼製部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる鋼製部材の要部
断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態にかかる中間層を備えた
鋼製部材の要部断面図である。
【図3】実施例におけるローラピッチング試験要領を示
す説明図である。
【符号の説明】
1 鋼製母材 2 表面硬化層 3 面圧低減層 4 中間層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩崎 克浩 兵庫県神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会 社神戸製鋼所神戸製鉄所内 (72)発明者 安部 聡 兵庫県神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会 社神戸製鋼所神戸製鉄所内 (72)発明者 松島 義武 兵庫県神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会 社神戸製鋼所神戸製鉄所内 Fターム(参考) 3J030 BC02 CA10 4K044 AA02 AB10 BA06 BA10 BB03 BB04 BC01 CA12 CA13 CA14 CA18

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 他の部材と共働して作動する鋼製部材で
    あって、 表面硬化層を有する鋼製母材と、 前記表面硬化層の表面硬度に対して硬度がHv150以
    上低い軟質金属からなる面圧低減層とを備え、 前記面圧低減層は前記表面硬化層の上に形成され、鋼製
    部材が他の部材と共働して作動する際に局部的に生じた
    高面圧の下で塑性変形することにより面圧を低減する、
    高面圧低減機能を有する耐摩耗性に優れた鋼製部材。
  2. 【請求項2】 他の部材と共働して作動する鋼製部材で
    あって、 表面硬化層を有する鋼製母材と、 前記表面硬化層の表面硬度に対して硬度がHv150以
    上低い軟質金属からなる面圧低減層と、 前記表面硬化層および前記面圧低減層に対する密着性が
    良好な金属によって形成された中間層とを備え、 前記面圧低減層は前記表面硬化層の上に前記中間層を介
    して形成され、鋼製部材が他の部材と共働して作動する
    際に局部的に生じた高面圧の下で塑性変形することによ
    り面圧を低減する、高面圧低減機能を有する耐摩耗性に
    優れた鋼製部材。
  3. 【請求項3】 面圧低減層はSn、Sn:30wt%以
    上,残部実質的にCuを本質的成分とするSn−Cu合
    金、あるいはSn:30wt%以上,残部実質的にNiを
    本質的成分とするSn−Ni合金によって形成された請
    求項1または2に記載した高面圧低減機能を有する耐摩
    耗性に優れた鋼製部材。
  4. 【請求項4】 鋼製母材の表面硬化層は表面硬度がHv
    600以上である請求項1、2または3に記載した高面
    圧低減機能を有する耐摩耗性に優れた鋼製部材。
  5. 【請求項5】 表面硬化層を有する鋼製母材の最外層に
    請求項1に記載した面圧低減層を形成する鋼製部材の製
    造方法であって、 前記表面硬化層の上に直接に、あるいは前記表面硬化層
    および前記面圧低減層に対する密着性が良好な金属によ
    って形成された中間層を介して前記面圧低減層を形成す
    るに際し、前記面圧低減層あるいは前記中間層および前
    記面圧低減層を250℃以下で形成する高面圧低減機能
    を有する耐摩耗性に優れた鋼製部材の製造方法。
JP26962899A 1999-09-24 1999-09-24 高面圧低減機能を有する耐摩耗性に優れた鋼製部材とその製造方法 Pending JP2001089876A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010013941A (ja) * 2008-07-01 2010-01-21 Toyota Central R&D Labs Inc 内燃機関及びその動弁機構

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