JP2001088259A - 易搬送性芳香族ポリアミドフィルム - Google Patents

易搬送性芳香族ポリアミドフィルム

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JP2001088259A
JP2001088259A JP12482998A JP12482998A JP2001088259A JP 2001088259 A JP2001088259 A JP 2001088259A JP 12482998 A JP12482998 A JP 12482998A JP 12482998 A JP12482998 A JP 12482998A JP 2001088259 A JP2001088259 A JP 2001088259A
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average particle
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真 飯田
Mitsumasa Ono
光正 小野
Takeo Asai
武夫 浅井
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 高密度磁気記録媒体用ベースフィルムとして
有用な表面平坦性と優れた搬送性を兼備し、カレンダー
工程における耐削れ性と裏面からの突起の突上げ防止お
よび易巻取り性の相反した特性を同時に満足する。 【解決手段】 フィルム内での平均粒径が5〜1500
nmであるM(OH)x またはM2(CO3x(Mは周
期律表Ia族、IIa族の金属元素、Xは1〜2)で示さ
れ、芳香族ポリアミド重合工程中の中和剤の残渣である
無機粒子を含有し、縦方向と横方向のヤング率の和が2
000Kg/mm2以上の芳香族ポリアミド二軸延伸フ
ィルムの一つの表面に、平均粒径dxが100〜100
0nmの粒子Xと、平均粒径dyが5〜100nmでか
つdx/dyが1.2以上の粒子Yを含有し、Xの合有
量が0.01〜40重量%、Yの含有量が1〜70重量
%、かつXとYの総量が75重量%以下であり、厚みが
4nm以上dy未満である塗膜を設ける。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は芳香族ポリアミドフ
ィルムに関し、更に詳しくは表面が平坦でありながら搬
送性に優れ、かつロール状に巻き取る際にフィルム層間
からの空気が抜け易くかつ滑り性が良好なために良好な
巻姿の得られる易搬送性芳香族ポリアミドフィルムに関
する。
【0002】
【従来の技術】芳香族ポリアミドフィルムは、薄膜にお
ける強度(高ヤング率など)、耐熱性などに優れ、磁気
記録媒体、熱転写記録体、コンデンサ用誘電体、印刷回
路基板等に使用されており、特に、高密度磁気記録媒体
に適した素材である。芳香族ポリアミドフィルムの磁気
記録媒体への適用の例としては、特開昭51−1292
01号公報、などが知られている。
【0003】磁気記録媒体の記録密度の向上にともなっ
て、近年ベースフィルムには優れた滑り性(搬送性)を
保持しながら表面平坦性をより一層向上することが要求
されている。
【0004】従来、この滑り性と表面平坦性を両立させ
る手段として、例えば不活性粒子(滑剤)を全く含有し
ないか、小さいものをわずかしか含有しない芳香族ポリ
アミドフィルム(層)の片面に不活性粒子を含有した芳
香族ポリアミドフィルム(層)を積層して両面異なる表
面粗さを持たせることにより、表面平坦性と巻取り性又
は搬送性の両立を狙った積層フィルム(例えば特開平1
−247162号)が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる
積層フィルムにあっては、露出する一方の表面に粒子に
よる突起が全く存在しなかったり、存在していてもその
大きさや高さ、頻度などが適当な範囲にないと、フィル
ムの製膜工程中あるいは製品使用時にガイドロール等と
の接触摩擦が大きくなり、搬送性が著しく劣るというト
ラブルを生じる。
【0006】また、磁性塗料を塗布した後のカレンダー
仕上げ工程で非常に高い圧力がベースフィルムに負荷さ
れるが、このときたとえ一方のフィルム層表面(磁性層
形成面)に突起が存在していなくとも、もう一方のフィ
ルム(走行面)層に含有されている粒子の影響で磁性層
表面が粗れてしまう、いわゆる突出し現象が生じる。こ
の現象は粒子の粒径が大きく、含有量が高いほど、また
粒子含有フィルム層の厚みが厚く、粒子無含有フィルム
層の厚みが薄いほど顕著である。そこで、特に高級ビデ
オ用途のようにベースフィルム全体の厚みが薄い場合注
意を要する。
【0007】しかしながら、共押出法のような従来の方
法による積層フィルムでは、フィルム製膜時の押出工程
へのポリマー安定供給の点から、粒子含有フィルム層の
厚みをある程度以上薄くすることができず、このために
この問題を厚み調整で解決することに限界があった。さ
らに、粒子の粒径を小さくしたり、含有量を下げること
で突出し現象を回避しようとすると、ベースフィルムを
巻き取る際にエア抜け性、滑り性が悪化するために良好
な巻姿のフィルムロールを確保できないという問題が起
こってくる。
【0008】一方、磁気記録媒体の大容量化に伴い、ベ
ースフィルムの薄膜化、高ヤング率化が要望されてい
る。本発明者は、これらの問題に着目し、高密度磁気記
録媒体用ベースフィルムとして特に有用な表面平坦性と
優れた搬送性を兼備し、カレンダー工程における突起の
突上げ防止と易巻取り性という相反した特性を同時に満
足しうる易搬送性薄膜フィルムを開発すべく鋭意研究を
重ねた結果、微細不活性粒子を少量含有する芳香族ポリ
アミドフィルム(層)の少なくとも片面に、平均粒径の
異なる2種の微細粒子を特定量含有した塗膜層を設け、
この2種の粒子の平均粒径の比及び塗膜層の厚みを特定
の値とすることで上述の課題を解決しうることを見出
し、本発明に到達した。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、芳
香族ポリアミドからなる、二軸延伸フィルムで、フィル
ム内での平均粒径が5〜1500nmである一般式M
(OH)x またはM2(CO3x(ここでMは周期律表
Ia族、IIa族から選ばれる少なくともl種の金属元
素、Xは1〜2の数)で示される無機粒子を含有し、か
つその粒子が芳香族ポリアミド重合工程中の中和剤の残
渣として得られるものであり、縦方向と横方向のヤング
率の和が2000Kg/mm2以上である芳香族ポリア
ミドフィルム(C層)の一つの表面に、平均粒径の異な
る2種の粒子を合有する塗膜(A層)を設け、該塗膜の
合有する2種の粒子が平均粒径(dx)が100〜10
00nmの粒子Xと、平均粒径(dy)が5〜100n
mでかつdx/dyが1.2以上の粒子Yであり、粒子
Xの合有量が0.01〜40重量%、粒子Yの含有量が
1〜70重量%、かつ粒子Xと粒子Yの総量が75重量
%以下であり、そして塗膜の厚みが4nm以上dy(n
m)未満であることを特徴とする易搬送性芳香族ポリア
ミドフィルムである。
【0010】本発明における芳香族ポリアミドとして
は、その主鎖が芳香核およびアミド結合基を主たる構成
成分とするものであれば良いが、その中でも、その主鎖
を形成する芳香核のうち、芳香核上の主鎖形成置換基が
パラ配向性であるものが50〜99.5モル%であるも
のが、磁気記録媒体、熱転写記録体、コンデンサ用誘電
体、などの強度を要求される用途の場合に好ましい。5
0モル%未満では強度が不足し、99.5モル%を越え
ると延伸が困難となり後述の粒子による表面突起形成の
効果が見られないため、易滑性、巻取り性などのハンド
リング性に劣るため好ましくない。
【0011】ここで、主鎖形成置換基とは、アミド基な
どの高分子主鎖に含まれる原子または原子団、例として
は、−C(=O)−NH−、−O−、−CH2−、−C
(CH32−、−SO2−、−S−、該芳香核に直接結
合した他の芳香核、などのことを示す。また、パラ配向
性とは、例えば芳香核がフェニレン基の場合はl,4−
置換、ナフチレン基の場合は1,4−置換,2,6−置
換,などの状態にあることを示す。上記の中でも特に、
芳香族ポリアミドが一般式−(−C(=O)−Ar1
C(=O)−NH−Ar2−NH−)k−(−C(=O)
−Ar3−C(=O)NH−Ar4−Y1−Ar5−NH
−)l−(−C(=O)−Ar6−NH−)m−(−C(=
O)−Ar7−Y2−Ar8−NH−)n−(ここでk、
l、m、nは0および正の整数Ar1、Ar2、Ar3
Ar4、Ar5、Ar6、Ar7、Ar8は一般式−C6p
4-p−、−C6p4-p−C6p4-p−、−C10q
6-q−(ここでpは0〜4の整数、qは0〜6の整数、
Rはハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、炭素数l〜4の
アルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、トリアルキ
ルシリル基から選ばれる原子または原子団で表わされる
芳香核であり、同じでも異なっていても良い。Y1、Y2
はO、CH2、C(CH3)2、SO2、S、COから1種
選ばれる原子または原子団であり、同じでも異なってい
ても良い)で示される高分子化合物であるものが好まし
く、さらにその中でも、酸成分としてテレフタル酸、ア
ミン成分としてp−フェニレンジアミンおよび3,4’
−ジアミノジフェニルエーテルを用いてなる高分子化合
物であることが好ましい。
【0012】また、本発明における芳香族ポリアミドに
は、フィルムの物性を損なわない程度に、酸化防止剤、
帯電防止剤、離型剤、その他の添加剤や他のポリマーが
ブレンドされていても良い。
【0013】本発明における芳香族ポリアミドフィルム
は、面積倍率にして5.0倍以上、好ましくは6.0〜
10.0倍に延伸された二軸延伸フィルムである。延伸
倍率が小さい場合、高強度が得られないだけではなく、
後述の粒子による表面突起形成の効果が見られないた
め、易滑性、巻取り性などのハンドリング性に劣るため
好ましくない。この二軸延伸によって,芳香族ポリアミ
ドフィルムの長手方向と巾方向のヤング率の和が200
0kg/mm2以上、好ましくは2200kg/mm2
上とされる。ヤング率の長手方向と巾方向との和が20
00kg/mm2未満の場合には、記録ヘッドとの接触
状態が不適当なものとなるため電磁変換特性が悪化し、
また数μmオーダーの薄いベースフィルムで十分な強度
を有し得ないので好ましくない。また、この値の製造上
の上限としては4000kg/mm2である。長手方
向、幅方向のそれぞれのヤング率は600kg/mm2
以上が好ましく、さらに好ましくは800kg/mm2
以上、特に好ましくは1000kg/mm2以上であ
る。また、それぞれの方向のヤング率の上限は3500
kg/mm2である。
【0014】本発明における芳香族ポリアミドフィルム
には、フィルム内での平均粒径が5〜1500nm、好
ましくは10〜1300nm、さらに好ましくは30〜
1000nmである一般式M(OH)xまたはM2(C
3x(ここでMは周期律表Ia族、IIa族から選ばれ
る少なくとも1種の金属元素、xは1〜2の数)で示さ
れる無機粒子を含有する。この無機粒子は、芳香族ポリ
アミド重合工程中の中和剤の残渣としで得られるもので
あり、重合工程の段階において系内に十分分散している
ために、削れの原因となりうる粒子の凝集の心配がな
い。フイルム内での平均粒径が5nm未満の場合は粒子
による表面突起形成の効果が小さく、十分な易滑性、巻
取り性などのハンドリング性が得られないため好ましく
ない。また、平均粒径が1500nmを越えると、延伸
によって形成されるボイドが大きくなりすぎるため、耐
削れ性に劣る場合があるので好ましくない。なお、該無
機粒子は、中和剤として添加される際の平均粒径が10
〜3000nm、好ましくは30〜1500nmであ
る。この平均粒径がl0nm未満の場合は粒子による表
面突起形成の効果が小さく、十分な易滑性、巻取り性な
どのハンドリング性が得られないため好ましくない。ま
た、平均粒径が3000nmを越えると、中和反応後の
残渣粒径も大きくなり、延伸によって形成されるボイド
が大きくなりすぎるため、耐削れ性に劣る場合があるの
で好ましくない。
【0015】本発明において、フィルム内での無機粒子
の平均粒径が前述の範囲を満足させる手段は、特に限定
されるものではないが、例えば、中和剤添加工程におい
て、反応系のpHが上記平均粒径を与える適当なものに
なるよう中和剤の添加量と粒径を調整するなどの方法が
好ましく挙げられる。
【0016】該無機粒子の粒径を調整する手段について
も、特に限定されないが、例えば、溶媒に該粒子を分散
した後、サンドグラインダーなどの装置を用いて細粉化
し、その分散液を濾過して粗大粒子を除去する方法が好
ましく挙げられる。
【0017】この上記無機粒子が、フィルムの表面の突
起頻度が1×102〜1×108個/mm2となるように
含有されていると、磁気記録媒体などのように良好な電
磁変換特性のための平坦性と良好な走行性、耐久性、の
ための適度な粗さとの両立を要求される用途の場合に好
ましい。
【0018】上記芳香族ポリアミドを製造する方法とし
ては、公知の界面重合、溶液重合などの方法を用いるこ
とができ、特に溶液重合による方法が好ましい。重合溶
媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトア
ミド、N−メチルピロリドン、N‐メチルカプロラクタ
ム、ジメチルスルホキシド、へキサメチルホスホリルト
リアミド、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−
イミダゾリジノンなどから選ばれた少なくとも一種を主
成分として用いることができる。この時ポリマーの溶解
性を改善する目的で、重合の前、途中、終了時に、塩化
カルシウム、塩化リチウムなどの無機塩を適当量添加し
ても良い。また、酸成分とアミン成分とは実質的に等モ
ルで反応させるが、重合度の制御などの目的でいずれか
の成分を過剰に用いることもできる。さらに末端封止剤
として少量の単官能性の酸成分、アミン成分を使用して
も良い。また、反応によって生成する塩化水素を捕捉す
るために重合系に脂肪族や芳香族のアミン、第4級アン
モニウム塩を添加することもできる。さらに、本発明の
効果を阻害しない範囲で、紫外線吸収剤、染料、離型
剤、その他の剤が添加されていても良い。反応の終了
後、上述の、平均粒径が10〜3000nm、好ましく
は30〜1500nmの、一般式M(OH)xまたはM2
(CO3x(ここでMは周期律表Ia族、IIa族から選
ばれる少なくとも1種の金属元素、xは1〜2の数)で
示される無機粒子を添加し、中和反応を行う。
【0019】このような芳香族ポリアミドの製法につい
ては、例えば、特公昭52-39719号公報、特公昭
53-32828号公報などに詳しく記載されており、
これらの方法を用いることも出来る。
【0020】本発明の芳香族ポリアミドフィルムが優れ
た機械的性質を持つためには、ポリマーの対数粘度(濃
硫酸中、30℃で測定した値から求める)は0.5g/
dl以上が好ましく、1g/dl以上が更に好ましい。
【0021】このようにして得られる芳香族ポリアミド
は、アルコール、水などの溶媒の中に投入し、再沈、分
離することができ、これを再び溶媒に溶解させてフィル
ムの成形に用いることもできるが、好ましくは重合反応
によって得た溶液をそのまま、もしくは重合後に適宜濃
度を調整して用いることができる。この時の濃度の調整
は濃縮もしくは他の溶媒での希釈により行うことができ
る。かかる溶媒としては、重合溶媒として例示したもの
と同様なものを使用できる。上記のように調整された製
膜原液は、いわゆる溶液製膜法によりフィルム化が行わ
れる。溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などが
あるが、乾湿式法、乾式法が表面性のよいフィルムを得
るには好ましい。
【0022】湿式法で製膜する場合には、該原液を口金
から直接製膜用浴中に押出すか、または一旦ドラムなど
の支持体上に押出し、支持体ごと湿式浴中に導入する方
法を用いるのが好ましい。この浴は一般に水系媒体から
なるものであり、水のほかに有機溶媒や無機塩などを含
有していても良い。湿式浴を通すことでフィルム中に含
有された塩類、有機溶媒などの抽出を行うことができ
る。これら湿式浴全体を通過する時問はフィルムの厚み
にもよるが、10秒〜30分であることが好ましい。さ
らにフィルムの長手方向に延伸を行う。次いで乾燥、横
延伸、熱処理を行うが、これらの処理は一般に100〜
500℃で、合計で1秒〜30分間である。
【0023】乾湿式法で製膜する場合は該原液を口金か
らドラム、エンドレスベルトなどの支持体上に押出して
薄膜とし、次いでかかる薄膜層から溶媒を飛散させ薄膜
が自己保持性を持つまで乾燥する。乾燥条件は室温〜3
00℃、60分以内の範囲である。乾式工程を終えたフ
ィルムは支持体から剥離されて湿式工程に導入し、上記
の湿式法と同様に脱塩、脱溶媒などを行い、さらに延
伸、乾燥、熱処埋を行ってフィルムとする。
【0024】乾式法のプロセスを採用した場合には、ド
ラム、エンドレスベルトなどの上で乾燥し、自己保持性
を持ったフィルムを、これら支持体から剥離し、さらに
残存溶媒を除去するための乾燥や、延伸、熱処理を行う
が、これらの処理は100〜500℃で、合計で1秒〜
30分間である。
【0025】上記工程により得られるフィルムの厚み
は、特に限定されないが、通常0.1〜20μm、好ま
しくは0.5〜10μmである。
【0026】また本発明における芳香族ポリアミドフィ
ルムの表面には、搬送性を確保する目的で、薄い皮膜層
Aを設ける必要があり、好ましくはその反対側表面にB
層を塗設する。塗布は塗布膜を過度に加熱せぬよう延
伸、熱処理後の芳香族ポリアミドフィルムに施し、塗布
後に塗膜を乾燥するのが好ましい。乾燥条件は30℃〜
230℃の乾燥炉中を1秒〜10秒間で通過させること
が好ましい。塗布方法としては特に限定されないが、例
えばロールコート法、ダイコート法等が好ましく例示で
きる。塗布順序は限定されないが、相前後してほぼ同時
に塗布し、両面を同時に乾燥することが好ましい。
【0027】塗膜(A層)につき、説明する。塗膜(A
層)に含有される2種の粒子のうち、大きい平均粒径を
もつ粒子Xの平均粒径dxは100〜1000nm、好
ましくは105〜800nm、特に好ましくは110〜
500nmであり、小さい平均粒径をもつ粒子Yの平均
粒径dyは5〜100nm、好ましくは10〜95n
m、特に好ましくは15〜90nmであり、そしてこれ
ら平均粒径の比(dx/dy)が1.2以上、好ましく
は1.3以上、特に好ましくは1.4以上である。この
比の上限は特に限定しないが、粒子Xと粒子Yの粒径範
囲から200以下となる。
【0028】粒子Xの平均粒径dxが100nm未満で
は、フイルムをロール状に巻取る際に巻き込まれるエア
ーを排除可能な空間を、フイルム同士の問に形成するこ
とができないため、フイルムが横ずれを起こしたり、し
わが入ったりするという問題が解決できない。一方、粒
子Xの平均粒径dxが1000nmを超えると、塗膜
(A層)から脱落し易くなってしまい、製膜工程中あるい
は加工工程中で接触するロールを汚してしまうという問
題がある。
【0029】また、粒子Yの平均粒径dyが5nm未満
であると、フイルム同士の滑り性を改良することができ
ないために、フイルムをロール状に捲取る際にブロッキ
ングを引き起こし、ブツとよばれる突起状のものを生成
し巻姿を悪化させる。一方、粒子Yの平均粒径dyが1
00nmを超える場合も、フイルム同士の滑り性が悪く
なり、結果としてフイルムロールの巻姿が悪化してしま
う。そして、平均粒径の比(dx/dy)が1.2未満
であると塗膜(A層)に形成される突起の高さが均一に
近くなるため、充分なエア抜け性を確保することができ
ない。
【0030】塗膜(A層)中の粒子Xの含有量は0.0
1〜40重量%、好ましくは0.05〜35重量%、特
に好ましくは0.1〜30重量%であり、粒子Yの含有
量は1〜70重量%、好ましくは5〜60重量%、特に
好ましくは7〜50重量%であり、そして粒子XとYの
総含有量は75重量%以下、好ましくは65重量%以
下、特に好ましくは60重量%以下である。また総含有
量の下限は好ましくは1重量%、更に好ましくは3重量
%、特に好ましくは5重量%である。
【0031】粒子Xの含有量が0.01重量%未満では
突起の頻度が少なすぎるために、フイルム同士が密着
し、巻込みエアーの排除がなされず、一方40重量%を
超えると塗膜から脱落する粒子が多くなり工程を汚して
しまう。また粒子Yの含有量が1重量%未満であるとフ
イルム同士の滑り性が悪化するためにフイルムロールの
巻姿が悪化し、一方70重量%を超えると塗膜から粒子
が脱落しやすくなってしまう。また粒子Xと粒子Yの総
含有量が75重量%を超えると、バインダー樹脂の割合
が少なくなりすぎ、粒子の脱落が極めて起こりやすくな
る。
【0032】塗膜に含有される2種の粒子の種類は特に
限定されないが、塗液中で沈降しにくい、比較的低比重
のものが好ましい。例えば、耐熱性ポリマー(例えば、
架橋シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチ
レン、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリア
ミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステル
等)からなる粒子、二酸化ケイ素(シリカ)、炭酸カル
シウム等が挙げられる。粒子Xと粒子Yの種類は同じで
も異なってもよい。
【0033】前記2種の粒子の形状は特に限定されない
が、球状もしくは球状に近いものの方が効率的な突起を
形成する点から有利である。また、かかる粒子はそれぞ
れ粒径分布が狭いことが好ましく、例えば相対標準偏差
が0.5以下、さらに0.3以下、特に0.2以下であ
ることが好ましい。
【0034】本発明における塗膜(A層)では、前述し
た2種の粒子を固着させるのにバインダー樹脂を用い
る。このバインダー樹脂としては例えば水性ポリエステ
ル樹脂、水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂等が好ま
しく拳げられるが、特に水性ポリエステル樹脂が好まし
い。
【0035】水性ポリエステル樹脂は、酸成分が例えば
テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−シク
ロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボ
ン酸、4,4'-ジフエニルジカルボン酸、アジピン酸、
セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、コハク酸、5−N
aスルホイソフタル酸、2−Kスルホテレフタル酸、ト
リメリット酸、トリメシン酸、トリメリット酸モノカリ
ウム塩、p−ヒドロキシ安息香酸等の多価カルボン酸よ
りなり、グリコール成分が例えばエチレングリコール、
ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4
−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、l,4
−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコ
ール、ジメチロールプロピオン酸、ビスフェノールA−
エチレンオキシド付加物等の多価ヒドロキシ化合物より
主としてなるポリエステル樹脂であり、またポリエステ
ル鎖にアクリル重合体鎖を結合させたグラフトポリマー
又はブロックコポリマー、あるいは2種のポリマーがミ
クロな粒子内で特定の物理的構成(IPN、コアシエ
ル)を形成したアクリル変性ポリエステル樹脂を包含す
る。この水性ポリエステル樹脂としては水に溶解、乳
化、微分散するタイプを自由に用いることができ、また
これらは親水性を付与するため分子内に例えばスルホン
酸塩基、カルボン酸塩基、ポリエーテル単位等が導入さ
れていてもよい。
【0036】本発明において塗膜(A層)の厚みは4n
m以上dy(粒子Yの平均粒径)未満である。塗膜の厚
みが4nm未満であると、塗膜中に粒子を保持するのが
困難となり、結果として粒子の脱落を起こしてしまう。
さらに粒子X及び粒子Yの含有量が同じ場合、塗膜の厚
みを薄くすればする程粒子間の距離が大きくなり、滑り
性、エア抜け性が共に悪化して、フイルムロールの巻姿
が悪くなる。一方、塗膜の厚みが塗膜中に含有される粒
子Y(小粒子)の平均粒径以上であると、粒子Yの添加
による滑り性向上の効果が発揮されず、フイルムロール
の巻姿が悪化する。さらに、塗膜の厚みが厚ければ厚い
程、含有される粒子の数が増えるため、カレンダー工程
で突出現象が起こり易くなり、結果として例えば磁気テ
ープとしたときの電磁変換特性が劣るようになる。
【0037】本発明における塗膜(A層)は、芳香族ポ
リアミドフイルムの少なくとも片面に、前述した粒子
X、Y及びバインダー樹脂を含む塗液、好ましくは水性
塗液を塗布、乾燥することで形成するが、該塗液の固形
分濃度は1〜10重量%、さらに1.5〜8重量%、特
に2〜6重量%であることが好ましい。そしてこの塗液
(好ましくは水性塗液)には、所望により、他の成分例
えば、界面活性剤、安定剤、分散剤、UV吸収剤、増粘
剤等を添加することができる。
【0038】本発明の易搬送性芳香族ポリアミドフィル
ムは、フィルムC層の塗膜A層に接しない反対の表面に
平均粒径(dz)が1〜300nmの粒子Zを0.01
〜50重量%合有する塗膜(B層)を設けることが磁気
記録媒体用として用いる場合に好ましい。以下、この塗
膜(B層)について説明する。
【0039】塗膜(B層)に含有される粒子Zの平均粒
径(dz)は1〜300nm、さらには5〜250n
m、特に10〜200nmであることが好ましい。粒子
Zの平均粒径dzが1nm未満では滑り性付与の効果が
少なく、―方300nmを超えると磁気テープとしたと
き電磁変換特性の悪化をもたらす場合がある。
【0040】塗膜(B層)中の粒子Zの含有量は0.0
1〜50重量%、さらには0.1〜45重量%、特に1
〜40重量%であることが好ましい。粒子Zの含有量が
0.01重量%未満では形成する突起の頻度が少ないた
め滑り性改善の効果が小さく、一方50重量%を超える
と塗膜から脱落する粒子が多くなり工程を汚す場合があ
る。
【0041】塗膜(B層)中に含有される粒子Zの種類
は特に限定されないが、塗液中で沈降しにくい、比較的
低比重のものが好ましい。A層の説明で述べた粒子と同
様の粒子が、例示される。
【0042】本発明における塗膜(B層)を設ける場合
に、粒子Zを固定させるためにバインダー樹脂を用いて
よい。このバインダー樹脂としては例えば水性ポリエス
テル樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂等
が好ましく挙げられるが、特に水性ポリエステル樹脂が
好ましい。この水性ポリエステル樹脂に関してはA層の
説明で述べた事項がそのまま適用される。
【0043】本発明の易搬送性芳香族ポリアミドフィル
ムは、製膜工程及び加工工程での搬送性に優れ、表面が
極めて平坦でありながら巻取り性にも優れ、かつ、過酷
な加工条件例えばカレンダー条件においても走行面側粒
子が反対面へ突出すことがなく磁気用途をはじめ他用途
でも極めて有用であり、特に塗布型高密度磁気記録媒体
用ベースフィルムとして好適である。
【0044】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。なお、本発明における種々の物性値及び特性は、以
下の如く測定したものであり、かつ定義される。
【0045】(1)ポリマー溶液のpH ポリマー溶液5gを採取し、300mlの水に加え、2
分間撹拌した後に該水溶液のpHを測定した。
【0046】(2)対数粘度 重合後の芳香族ポリアミドを含むポリマー原液をアルコ
ール、水などの溶媒の中に投入し、再沈、分離されたポ
リマーを濃硫酸中、30℃で測定した値から求めた。
【0047】(3)面積倍率 フィルムの縦延伸倍率と横延伸倍率を乗じて求めた。
【0048】(4)ヤング率 東洋ボールドウイン社製の引張試験機テンシロンを用い
て、温度20℃、湿度50%に調節された室内におい
て、長さ300mm、幅12.7mmの資料フィルム
を、10%/分の歪み速度で引張り、引張応力−歪み曲
線の立ち上がりの直線部分を用いて、次式(1)により
計算する。
【0049】
【数1】 E=Δσ/Δε (1) ここで、Eはヤング率、Δσは直線上の2点間の元の平
均断面積による応力差、Δεは同じ2点間の歪み差であ
る。
【0050】(5)粒子の平均粒径(DP) 島津製作所製CP―50型セントリフューグル パーテ
ィクル サイズ アナライザー(Cenirifuga
l Particle Size Analyzer)
を用いて測定する。得られる遠心沈降曲線を基に算出し
た各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50重
量%に相当する粒径を読み取り、この値を上記平均粒径
とする(Book「粒度測定技術」日刊工業新聞発行、
1975年、頁242〜247参照)。
【0051】(6)層厚み フィルムの小片をエポキシ樹脂にて固定成形し、ミクロ
トームにて約60nmの厚みの超薄切片(フィルムの流
れ方向に平行に切断する)を作成する。この試料を透過
型電子顕微鏡(日立製作所製:H―800型)にて観察
し、各層の境界面を捜して各層の層厚みを求める。
【0052】(7)フィルムの表面粗さ(中心線平均粗
さ:Ra) 中心線平均粗さ(Ra)はJlS−B601に準じて測
定する。本発明では(株)小坂研究所の触針式表面粗さ
計(SURFC0RDER SE−30C)を用い、次
の条件で測定して求める。 (a)触針先端半径:2μm (b)測定圧力 :30mg (c)カットオフ :0.08mm (d)測定長 :8.0mm (e)データのまとめ方:同―試料について6回繰返し
測定し、最も大きい値を1つ除き、残り5つのデータを
用いて平均値としての中心線平均粗さ(Ra)を求め
る。
【0053】(8)巻姿 フィルムを70cm幅で9000mロール状に100本
巻取った時に次の欠点がないものを良品としてカウント
し、下記の判定をする。 欠点1:ロール端面がずれている。 欠点2:ロール表面に突起(ブツ)が3個以上存在す
る。 欠点3:ロールに縦シワが発生している。
【0054】(9)耐削れ性 3段のミニスーパーカレンダー(ナイロンロール×スチ
ールロール)を使用して評価した。処理温度80℃、線
圧200kg/cmで、該フィルムを速度50m/分で
2000m走行させた。カレンダーのナイロンロールに
付着する汚れにより、次の基準により判定する。
【0055】(10)カレンダー突上げ 前記(9)の削れ性の評価で用いたのと同じ装置、同じ
条件にてカレンダー処理を施した該フィルムの塗膜(A
層)と反対側の表面について、前記の(7)と同様の方
法で表面粗さ Rac を測定する。カレンダー未処理品
のRa,処理品のRacから、下記式(2)によって、
【0056】
【数2】 Ra変化率=(Rac−Ra)/Ra (2) にてRa変化率を算出し、次の基準により判定する。 判定 ◎:Ra変化率が +0.2以下 ○:Ra変化率が +0.2を超え+1.0以下 ×:Ra変化率が +1.0を超える
【0057】(11)磁気テープの製造及び特性評価 該芳香族ポリアミドフィルムの塗膜(B層)の表面に、
下記調製の磁性塗料を塗布厚1.2μmとなるように塗
布し、次いで2500ガウスの直流磁場中で配向処理を
行い、120℃で加熱乾燥後、スーパーカレンダー処理
(線圧300kg/cm、温度90℃)を行い、巻取っ
た。この巻取ったロールを55℃のオーブン中に3日間
放置した。
【0058】磁性塗料の調製:下記に示す組成をボール
ミルに入れ、16時間混練、分散した後、イソシアネー
ト化合物(バイエル製、デスモジュールL)5重量部を
加え、1時間高速剪断分散して磁性塗料とした。 塗料の組成: 針状Fe粒子 100重量部 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(積水化学製、エスレック7A)15重量部 熱可塑性ポリウレタン樹脂 5重量部 酸化クロム 5重量部 カーボンブラック 5重量部 レチシン 2重量部 脂肪酸エステル 1重量部 トルエン 30重量部 メチルエチルケトン 50重量部 シクロヘキサノン 70重量部
【0059】さらに、磁気記録層の反対側のフィルム表
面(塗膜(A層)表面)に、下記組成の塗液をバックコ
ート層として厚さ0.8μmに塗布し、乾燥した後裁断
し、磁気テープを得た。 バックコート層組成: カーボンブラック 100重量部 熱可塑性ポリウレタン樹脂 60重量部 イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業製、コロネートL) 18重量部 シリコーンオイル 0.5重量部 メチルエチルケトン 250重量部 トルエン 50重量部
【0060】次いで、以下の市販の機器を用いてテープ
の特性を測定する。 使用機器: 8mmビデオテープレコーダー:ソニー(株)製EDV−600 0 C/N測定:シバソク(株)製ノイズメーター C/N測定 記録波長0.5μm(周波数約7.4MHz)の信号を
記録し、その再生信号の6.4MHzと7.4MHzの
値の比をそのテープのC/Nとし、市販8mmビデオ用
テープのC/Nを0dBとし、相対値で表し、次の基準
で判定する。 ドロップアウト(D/O)測定 ドロップアウトカウンターを用いて、15μs/18d
Bにて1分間当たりの個数を測定し、次の基準で判定す
る。
【0061】〔実施例1〕パラフェニレンジアミン25
モル%と、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル25
モル%をアミン成分とし、テレフタル酸ジクロライド5
0モル%を酸成分としてNMP(N−メチルピロリド
ン)中で重合した。一方、平均粒径8000nmの水酸
化カルシウム(井上石灰製)を、ホモジナイザーでNM
P中に分散し、サンドグラインダーで平均粒径2300
nmとなるように細粉化した後、フィルター(日本ポー
ル製、HDCII;目開き50μ)で濾過して、平均粒
径1500nmの水酸化カルシウムのNMPスラリーを
作成した。このスラリーを上記の重合物に、テレフタル
酸ジクロライド50モル%に対し水酸化カルシウムが5
0.3モル%となるように添加し、製膜原液とした。こ
の製膜原液のpHは4.7であった。また、このポリマ
ーの対数粘度は3.5であった。
【0062】得られた製膜原液を100℃に加熱し、1
00℃の口金から、100℃の金属ベルト上に流延し、
100℃で2分間乾燥後、120℃、150℃と段階的
に温度を上げ、合計で10分間乾燥させて自己保持性を
持つ未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを連続
的にベルトから剥離して水槽中に導入し、脱溶媒と脱塩
とを行い、その後、150℃で15分間乾燥した。
【0063】得られた未延伸フイルムを低速、高速のロ
ール間でフィルム温度350℃で2.5倍に延伸し、続
いてステンターに供給して、400℃で3.0倍に延伸
し、得られた二軸延伸フィルムを400℃で1分間熱処
理し、35℃まで冷却し、A層を、続いて反対面にB層
を塗布し、最終厚み4.0μmの芳香族ポリアミドフィ
ルムを得た。得られたフィルム中での中和剤残渣の平均
粒径は300nmであった。
【0064】A、B層;表1に示す塗膜組成を含む水性
塗液(いずれもバインダー樹脂として下記の共重合ポリ
エステルの水分散体を使用し、かつHLB値12.6の
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを5重量%
含有。全固形分濃度4重量%)をキスコート法により塗
布した。 共重合ポリエステルの組成: 酸成分 2,6―ナフタレンジカルボン酸 50モル% イソフタル酸 45モル% 5−ナトリウムスルホイソフタル酸 5モル% グリコール成分 エチレングリコール 70モル% ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物 30モル% この共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度は95℃
であった。得られたフィルム及び磁気テープの特性を表
1に示す。
【0065】〔実施例2〕B層の塗布を省略した以外は
実施例1と同様にした。得られたフィルム及び磁気テー
プの特性を表1に示す。
【0066】〔実施例3〕実施例1と同じ中和剤の水酸
化カルシウムを、サンドグラインダーで平均粒径480
0nmとなるように細粉化した後、そのままNMPスラ
リーを作成した。このスラリーを上記の重合物に,テレ
フタル酸ジクロライド50モル%に対し水酸化カルシウ
ムが50.06モル%となるように添加し、製膜原液
(ア)とした(pHは5.2、ポリマーの対数粘度は
3.5であった)。
【0067】一方、実施例1と同じ中和剤の水酸化カル
シウムを、サンドグラインダーで平均粒径2000nm
となるように細粉化した後、フィルター(日本ポール
製、HDCII;目開き20μ)で濾過して、平均粒径
600nmの水酸化カルシウムのNMPスラリーを作成
した。このスラリーを上記の重合物に、テレフタル酸ジ
クロライド50モル%に対し水酸化カルシウムが51.
5モル%となるように添加し、製膜原液(イ)とした
(pHは4.8、ポリマーの対数粘度は3.5であっ
た)。
【0068】さらに製膜原液(ア)と(イ)を同量混合
して、最終的な製膜原液とした。それ以外は、実施例2
と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを得た。得られ
たフィルム中での中和剤残渣の粒径分布は500nmお
よび180nmに極大を持つものであった。その他のフ
ィルム物性および特性について、表1に示す。
【0069】〔実施例4〕実施例1と同じ中和剤の水酸
化カルシウムを、サンドグラインダーで平均粒径200
0nmとなるように細粉化した後、フィルター(日本ポ
ール製、HDCII;目開き20μ)で濾過して、平均
粒径600nmの水酸化カルシウムのNMPスラリーを
作成した。このスラリーを上記の重合物に、テレフタル
酸ジクロライド50モル%に対し水酸化カルシウムが5
0.4モル%となるように添加し、製膜原液とした(p
Hは4.8、ポリマーの対数粘度は3.5であった)以
外は、実施例2と同様にして芳香族ポリアミドフィルム
を得た。得られたフィルム中での中和剤残渣の平均粒径
は120nmであった。その他のフィルム物性および特
性について、表1に示す。
【0070】〔実施例5〜12〕表1に示す塗膜構成と
した以外は実施例1と同様にした。得られたフィルム及
び磁気テープの特性を実施例5〜7については表1に、
実施例8〜12については表2示す。
【0071】〔比較例1〕製膜時の延伸条件を1.1×
1.2倍とした以外は実施例2と同様にした。得られた
フィルム及び磁気テープの特性を表3に示す。表3から
明らかな様にヤング率が不足しており、電磁変換特性に
劣り、走行安定性が不十分であった。
【0072】〔比較例2〕A層の塗布を省略した以外は
実施例2と同様にした。得られたフィルム及び磁気テー
プの特性を表3に示す。滑り性やエア抜け性が適当でな
く、巻取り性に劣るものであった。
【0073】〔比較例3〕製膜原液のpHを3.8に調
整した以外は実施例2と同様にした。得られたフィルム
中に中和剤残渣と考えられる粒子は見いだせなかった。
得られたフィルム及び磁気テープの特性を表3に示す。
滑り性やエア抜け性が適当でなく、巻取り性に劣るもの
であった。
【0074】〔比較例4〕製膜原液のpHを4.7に調
整し、また、水酸化カルシウムの細分化は行わずに添加
した以外は実施例2と同様にした。得られたフィルム中
での中和剤残渣の平均粒径は2250nmであった。得
られたフィルム及び磁気テープの特性を表3に示す。表
面性が適当でないため電磁変換特性に劣り、フィルム中
粒子に起因するボイドのため耐削れ性が不十分であっ
た。
【0075】〔比較例5〕A層の厚みを200nmとし
た以外は実施例2と同様にした。得られたフィルム及び
磁気テープの特性を表3に示す。巻取り性に劣るもので
あった。
【0076】〔比較例6〜7〕A層塗膜中の粒子組成を
表3の通りとした以外は実施例2と同様にした。得られ
たフィルム及び磁気テープの特性を表3に示す。塗膜中
の粒子組成が範囲外であるため滑り性やエア抜け性が適
当でなく、巻取り性に劣るものであった。
【0077】〔比較例8〕A層塗膜中の粒子組成を表4
の通りとした以外は実施例2と同様にした。得られたフ
ィルム及び磁気テープの特性を表4に示す。巻取り性、
耐削れ性に劣り、ドロップアウト数が多かった。
【0078】〔比較例9〕A層塗膜中の粒子組成を表4
の通りとした以外は実施例2と同様にした。得られたフ
ィルム及び磁気テープの特性を表4に示す。塗膜中の粒
子組成が範囲外であるため粒子が脱落し易く、耐削れ性
に劣り、それに起因するドロップアウトが多発し、電磁
変換特性も不十分なものであった。
【0079】〔比較例10〕比較例3において、重合工
程において中和反応完了後,前もってNMPに分散させ
ておいた平均粒径430nmのシリカを重合系に添加し
て製膜原液とし、A層の塗工を行わなかった以外は,比
較例3と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られたフィルム及び磁気テープの特性を表4に示す。
粒子の凝集が起こり粗大粒子が発生するため適度な表面
性が損なわれ、電磁変換特性が不十分であった。また、
凝集粒子はボイドに起因する耐削れ性の悪化を引き起こ
し、ドロップアウトが多発していた。
【0080】〔比較例11〕比較例3で用いた製膜原液
(フィルムC1層側)と比較例10で用いた製膜原液
(フィルムC2層側)を、両方の粘度が100℃で10
00ポイズとなるよう調整し、口金内で、最終フィルム
でC1層は3.0μm、C2層は1.0μmとなるよう
に2層に積層し、C2層側を金属ベルト側にして流延し
てフィルムを製膜し、A層の塗工を行わなかった以外
は、実施例2と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを
得た。得られたフィルム及び磁気テープの特性を表4に
示す。磁性層塗布後のカレンダー工程にてC2層側粒子
の突上げが生じ、C1層側表面の平坦性が損なわれ、電
磁変換特性が不十分であった。なお、磁気テープ特性評
価に際し、C1層側表面に磁性層を、C2層側表面にバ
ックコート層を設けた。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】表1−表4から明らかなように、本発明に
よるフィルムは、磁気テープとしたときにドロップアウ
トが少なく、優れた電磁変換特性を示すと共に、ベース
フィルムの搬送性、巻取り性に優れていること、一方、
本発明の要件を満たさないものは、これらの特性を同時
に満足することが出来ないことが分かる。
【0086】
【発明の効果】本発明によれば、表面が平坦でありなが
ら搬送性に優れ、かつ巻き取り性、電磁変換特性の良好
な、高密度磁気記録媒体用ベースフィルム等に適した、
易搬送性芳香族ポリアミドフィルムを提供することがで
きる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浅井 武夫 神奈川県相模原市小山3丁目37番19号 帝 人株式会社相模原研究センター内 Fターム(参考) 4F100 AA00A AK47A AT00B AT00C BA02 BA03 BA10B BA10C BA41B DE01A DE01B DE01C GB41 JA20A JA20C JG06 JK02A YY00A YY00C 4J001 DA01 DB01 DC16 EB37 EC46 EC67 EE09E FA01 FB03 FC03 FD01 GA13 GA16 HA10 JA12 JB23 JB28 JB50 JC01 4J002 BC032 BG002 CC182 CF002 CL061 CL062 CM042 CP032 DE056 DE066 DE226 DE236 DE237 DJ017 FD012 FD016 FD017 GF00 GQ00 GS01 5D006 CB03 CB06 CB07 CB08 FA00 FA09

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芳香族ポリアミドからなる、二軸延伸フ
    ィルムで、フィルム内での平均粒径が5〜1500nm
    である一般式M(OH)x またはM2(CO3x(ここ
    でMは周期律表Ia族、IIa族から選ばれる少なくとも
    l種の金属元素、Xは1〜2の数)で示される無機粒子
    を含有し、かつその粒子が芳香族ポリアミド重合工程中
    の中和剤の残渣として得られるものであり、縦方向と横
    方向のヤング率の和が2000Kg/mm2以上である
    芳香族ポリアミドフィルム(C層)の一つの表面に、平
    均粒径の異なる2種の粒子を合有する塗膜(A層)を設
    け、該塗膜の合有する2種の粒子が平均粒径(dx)が
    100〜1000nmの粒子Xと、平均粒径(dy)が
    5〜100nmでかつdx/dyが1.2以上の粒子Y
    であり、粒子Xの合有量が0.01〜40重量%、粒子
    Yの含有量が1〜70重量%、かつ粒子Xと粒子Yの総
    量が75重量%以下であり、そして塗膜の厚みが4nm
    以上dy(nm)未満であることを特徴とする易搬送性
    芳香族ポリアミドフィルム。
  2. 【請求項2】 芳香族ポリアミドの主鎖を形成する芳香
    核のうち、芳香核上の主鎖形成置換基がパラ配向性であ
    るものが50〜99.5モル%であることを特徴とする
    請求項1に記載の易搬送性芳香族ポリアミドフィルム。
  3. 【請求項3】 芳香族ポリアミドが、酸成分としてテレ
    フタル酸、アミン成分としてp−フェニレンジアミンお
    よび3,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いてな
    る高分子化合物であることを特徴とする、請求項1また
    は2に記載の易搬送性芳香族ポリアミドフィルム。
  4. 【請求項4】 該C層のA層に接しない表面に平均粒径
    (dz)が1〜300nmの粒子Zを0.01〜50重
    量%合有する塗膜(B層)を設けることを特徴とする請
    求項1、2または3に記載の易搬送性芳香族ポリアミド
    フィルム。
  5. 【請求項5】 磁気記録媒体用として用いられることを
    特徴とする,請求項1,2,3または4に記載の易搬送
    性芳香族ポリアミドフィルム。
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