JP2001085199A - 荷電粒子用加速装置 - Google Patents

荷電粒子用加速装置

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JP2001085199A
JP2001085199A JP25684399A JP25684399A JP2001085199A JP 2001085199 A JP2001085199 A JP 2001085199A JP 25684399 A JP25684399 A JP 25684399A JP 25684399 A JP25684399 A JP 25684399A JP 2001085199 A JP2001085199 A JP 2001085199A
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Tetsuya Matsuda
哲也 松田
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Mitsubishi Electric Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 性能を維持したまま、製作に要する手間や費
用を削減できる荷電粒子用加速装置を提供する。 【解決手段】 ビームを偏向させる磁界を発生するコイ
ル3と、該コイルにより偏向されてビーム軌道面11上
を周回する前記ビームを加速する加速手段と、前記ビー
ム軌道面を挟んで所定のギャップを有して対向し、前記
ビームを収束する磁界を発生する磁性部材5と、該磁性
部材が固定されるヨーク9とを備える荷電粒子用加速装
置において、前記磁性部材は前記ビーム軌道面に近い第
1の磁性部51と、前記ビーム軌道面から離れた第2の
磁性部52とを有し、第1の磁性部は溶融凝固法により
製作されたものであり、第2の磁性部は第1の磁性部と
は異なる方法により製作されたものである。また、第1
の磁性部は第2の磁性部より透磁率が高いものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、荷電粒子用加速装
置に関し、特に、ビームを収束する磁界を発生する磁性
部材の構成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の荷電粒子用加速装置(サイクロト
ロン)として、MSU(ミシガン州立大学)の例が知ら
れている。図10は、文献(「Proposal fo
r aManufacturing Prototyp
e SUPERCONDUCTING CYCLOTR
ON for Advanced Cancer Th
erapy」1993年2月、ミシガン州立大学の国立
超伝導サイクロトロン研究所刊行、p2)に示された従
来のサイクロトロンの一部を分解して示す鳥瞰図であ
る。このサイクトロンは、電磁石内のビーム軌道面上で
荷電粒子を加速し、加速後の荷電粒子を電磁石の外に取
り出し、この荷電粒子を種々の用途(ターゲットに当て
て放射性同位元素を作る、陽子線治療など)に使用する
ものである。
【0003】図10において、1はサイクロトロン、3
は超電導コイル、5は磁性部材、7は加速空洞、9はヨ
ーク、11はビーム(荷電粒子)軌道面、12は超電導
コイル3の軸であり、Z軸である。なお、コイル3の軸
12をZ軸とした場合、サイクロトロンのZ軸に直交す
る面すなわちZ軸対称面がビーム軌道面11であり、ビ
ーム軌道面11上にX軸及びY軸がある。磁性部材5は
ビーム軌道面を挟んで所定のギャップを有して対向配置
されており、図11に示すように、各磁性部材5は符号
14で示す円周方向に4個に分割されてコイル3の軸1
2の周りにリング状に配置されている。超伝導コイル3
の直径は約3mである。
【0004】次に動作について説明する。超電導コイル
3で荷電粒子を偏向させる磁界を発生させる。このコイ
ルは1対のソレノイドコイルである。サイクロトロン1
の内部は常温空間であり、この空間にヨーク9に取り付
けた磁性部材5が存在する。磁性部材5は主に荷電粒子
を収束する磁界を発生する。上記空間には、荷電粒子を
加速する加速空洞7も挿入されている。初期の荷電粒子
はサイクロトロン中心部(Z軸近傍かつビーム軌道面近
傍)で形成され、ビーム軌道面11上を周回中に加速空
洞7で加速され半径が大きくなる。荷電粒子は、所定の
エネルギーに達するとサイクロトロン外部に取り出す。
ヨーク9は磁性部材5を支持・固定すると同時に、超電
導コイル3が発生する磁界が外部へ漏れるのを遮蔽す
る。図10はサイクロトロンのZ軸方向上側のヨーク9
を上側に分解した様子を示している。
【0005】図12は図10のサイクロトロンの要部の
断面図を示す。図において、Rは径方向を示している。
図では磁性部材5の断面を示しており、加速空洞7は示
していない。磁性部材5はZ方向に数十cmの厚みがあ
り、材料として高透磁率の純鉄を使用する場合が多い。
磁性部材5は一般にビーム軌道面11からZ軸12方向
に2cm〜3cm程度しか離れておらず(ギャップ13
は4cm〜6cm)、しかも超電導コイル3が高磁界を
発生するため、磁性部材5は飽和しており、超電導コイ
ル3の磁界に加えて、ほぼ2Tの大きな磁界をビーム軌
道面11上に発生する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の荷電粒子用加速
装置は以上のように構成されており、1周に亘り4個
(ビーム軌道面11を挟んで全合計8個)の磁性部材5
をZ軸12に関し回転対称に配置している。このため、
円周方向14に対し4回凹凸で変化する磁界を発生す
る。即ち、ほぼcos4θで変化する磁界を発生する。
ここで、θは図10のビーム軌道面11におけるX軸か
らの角度である。ところで、この磁性部材5の設置位置
等に誤差があると上記cos4θで変化する磁界以外に
cosθで変化する磁界成分が発生する。この磁界成分
があると、荷電粒子の共鳴と呼ばれる現象が生じ、荷電
粒子が広がり、荷電粒子はビームチェンバー等に当たっ
て失われてしまう。
【0007】したがって、この磁性部材5には、工作
精度が高いこと、ヨーク9に対して高精度に取り付け
られること、および磁気モーメントの大きさが一定で
あること(透磁率が一定であること)が必要である。特
に、磁性部材5が4個付いている例では、Z軸12に対
し、厳密に4回対称で磁性部材5を製作・配置する必要
がある。この対称性がずれると上記cosθで変化する
磁界が発生する原因になる。同様に、上下各4個(上下
合わせて8個)の磁性部材5の透磁率も同じにする必要
がある。
【0008】ところで、加工歪みがあると透磁率が低下
すると言われている。切削加工等で製作した磁性部材5
には大きな加工歪みが発生し、この歪みの大きさは各磁
性部材5毎に異なると考えらる。このため、各磁性部材
5には透磁率に差が生じ、上記cosθで変化する磁界
の発生原因になる。
【0009】磁性部材5の製作方法の一つに、磁性体を
溶融後凝固させて製作する方法、例えば鋳造法で製作す
る方法が知られている。この製法では、磁性部材5を加
工する必要が少なく、加工歪みを低減できるため、磁性
体の透磁率が一定で、4個の磁性部材5の個体差も小さ
くなる利点がある。但し、厚さ数十cm、半径100c
mもの磁性部材5全体を高精度に鋳造で製作するには、
手間と膨大な費用を要していた。
【0010】更に、鋳造法ではなく、鍛造、切削加工等
で磁性部材5を製作する場合にも、従来は磁性部材5全
体を高精度に加工する必要があり、やはり手間と膨大な
費用を要していた。
【0011】更に、高い透磁率を得るため、磁性部材5
全体を純鉄で構成している場合が多く、純鉄は価格も高
価なため、磁性部材5の製作費が高くなるという問題点
があった。
【0012】図12において、磁界の対称性に影響を与
える最も重要な要因は4対の磁性部材5のZ軸12方向
のギャップ13の差である。各磁性部材5間でギャップ
13がばらつくと円周方向14にcosθに比例する大
きな磁界が発生する。片側4個(ビーム軌道面11上下
で8個)の磁性部材5のギャップ13を同じにするに
は、従来の製作法では位置精度が確保できず、実測に基
づいて磁性部材5とヨーク9間にスペーサを挟み込む等
の位置調整が必要である。しかしながら、1個の磁性部
材5の重量は通常1トン程度であることを考慮に入れる
と、この位置調整に大変な手間を要していた。
【0013】以上述べてきたように、磁性部材5の製作
は、重量も大きくかつ手間を要すため、高価になるとい
う欠点があった。このため、荷電粒子用加速装置の製作
費が高くつく原因の一つになっていた。
【0014】本発明は、上記のような従来のものの問題
点を解決するためになされたものであり、性能を維持し
たまま、製作に要する手間や費用を削減できる荷電粒子
用加速装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の構成に係
る荷電粒子用加速装置は、ビームを偏向させる磁界を発
生するコイルと、該コイルにより偏向されてビーム軌道
面上を周回する前記ビームを加速する加速手段と、前記
ビーム軌道面を挟んで所定のギャップを有して対向し、
前記ビームを収束する磁界を発生する磁性部材と、該磁
性部材が固定されるヨークとを備える荷電粒子用加速装
置において、前記磁性部材は前記ビーム軌道面に近い第
1の磁性部と、前記ビーム軌道面から離れた第2の磁性
部とを有し、第1の磁性部は溶融凝固法により製作され
たものであり、第2の磁性部は第1の磁性部とは異なる
方法により製作されたものである。
【0016】本発明の第2の構成に係る荷電粒子用加速
装置は、ビームを偏向させる磁界を発生するコイルと、
該コイルにより偏向されてビーム軌道面上を周回する前
記ビームを加速する加速手段と、前記ビーム軌道面を挟
んで所定のギャップを有して対向し、前記ビームを収束
する磁界を発生する磁性部材と、該磁性部材が固定され
るヨークとを備える荷電粒子用加速装置において、前記
磁性部材は前記ビーム軌道面に近い第1の磁性部と、前
記ビーム軌道面から離れた第2の磁性部とを有し、第1
の磁性部は第2の磁性部より透磁率が高いものである。
【0017】本発明の第3の構成に係る荷電粒子用加速
装置は、ビームを偏向させる磁界を発生するコイルと、
該コイルにより偏向されてビーム軌道面上を周回する前
記ビームを加速する加速手段と、前記ビーム軌道面を挟
んで所定のギャップを有して対向し、前記ビームを収束
する磁界を発生する磁性部材と、該磁性部材が固定され
るヨークとを備える荷電粒子用加速装置において、前記
磁性部材は前記ビーム軌道面に近い第1の磁性部と、前
記ビーム軌道面から離れた第2の磁性部とを有し、第1
の磁性部は第2の磁性部より加工精度が良いものであ
る。
【0018】本発明の第4の構成に係る荷電粒子用加速
装置は、ビームを偏向させる磁界を発生するコイルと、
該コイルにより偏向されてビーム軌道面上を周回する前
記ビームを加速する加速手段と、前記ビーム軌道面を挟
んで所定のギャップを有して対向し、前記ビームを収束
する磁界を発生する磁性部材と、該磁性部材が固定され
るヨークとを備える荷電粒子用加速装置において、前記
磁性部材は前記ビーム軌道面に近い第1の磁性部と、前
記ビーム軌道面から離れた第2の磁性部とを有し、第1
の磁性部は第2の磁性部に位置調整可能に固定されてい
るものである。
【0019】本発明の第5の構成に係る荷電粒子用加速
装置は、前記第1ないし4の何れかの構成において、第
1の磁性部はビーム軌道面に近くしかも外周側に位置し
ているものである。
【0020】本発明の第6の構成に係る荷電粒子用加速
装置は、前記第1ないし5の何れかの構成において、磁
性部材が円周方向に複数個に分割されてコイルの軸の周
りにリング状に配置されているものである。
【0021】本発明の第7の構成に係る荷電粒子用加速
装置は、前記第6の構成において、第1の磁性部に補助
コイルを備えたものである。
【0022】本発明の第1の方法に係る荷電粒子用加速
装置の製造方法は、入射されたビームを偏向させる磁界
を発生するコイルと、該コイルにより偏向されてビーム
軌道面上を周回する前記ビームを加速する加速手段と、
前記ビーム軌道面を挟んで所定のギャップを有して対向
し、前記ビームを収束する磁界を発生する磁性部材と、
該磁性部材が固定されるヨークとを備える荷電粒子用加
速装置の製造方法において、前記磁性部材の全体を粗加
工した後、前記磁性部材の前記ビーム軌道面に近い部分
をさらに高精度に加工するものである。
【0023】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1および図2は
本発明の実施の形態1による荷電粒子用加速装置である
サイクロトロンを説明するための図であり、具体的に
は、図1は要部の構成を示す断面図、図2は磁性部材の
1つを拡大して示す斜視図である。他の構成は例えば図
10で示した従来のものと同様である。なお、図1では
磁性部材5の断面を示しており、加速空洞7は示してい
ない。図において、3は超電導コイル、5は磁性部材で
あり、本実施の形態では、磁性部材5は円周方向14に
4個に分割されてコイル3の軸12の周りにリング状に
配置されている。9はヨーク、11はビーム軌道面、1
2はコイルの軸(Z軸)、14は円周方向を示す矢印で
ある。51はビーム軌道面11に近い第1の磁性部、5
2はビーム軌道面11から離れた第2の磁性部である。
本実施の形態では、第1の磁性部51と第2の磁性部5
2は共に例えば純鉄で形成されており、第1の磁性部5
1は溶融凝固法(例えば鋳造法)により製作され、第2
の磁性部52は溶融凝固方以外の切削法、鍛造法等の方
法で製作されている。
【0024】磁性部材5の磁気モーメントがビーム軌道
面上11に作る磁界は、ビーム軌道面11に近い側の磁
性部材5の磁気モーメントが発生する磁界の寄与が最も
大きく、ビーム軌道面11から遠ざかるにつれて弱くな
る。磁性部材5の厚みはZ方向に数十cmあるため、ビ
ーム軌道面11からZ軸12方向に離れた位置にある磁
性部材5の磁気モーメントが発生する磁界の、ビーム軌
道面11への寄与は小さい。したがって、ビーム軌道面
11からZ軸12方向に遠い磁性部材5には工作精度、
透磁率等に差が生じてもビーム軌道面上11に作る磁界
への影響は少ない。そこで、本実施の形態では、磁性部
材5をビーム軌道面11に近い第1の磁性部51とビー
ム軌道面11から離れた第2の磁性部52とに2分割
し、ビーム軌道面11から近い第1の磁性部51として
は鋳造法で製作した磁性部材を用いて透磁率の個体差を
低減し、ビーム軌道面11から離れた第2の磁性部52
としては加工歪みは多いが安価に製作できる切削法や鍛
造法等で製作した磁性部材を用いた。これにより、荷電
粒子用加速装置の性能を低下させることなく高価な鋳造
部の体積を大幅に減少させることが可能となり、しかも
体積が減少するので鋳造がより容易になり、磁性部材5
の製作コストを低減することができる。
【0025】なお、上記実施の形態では、片側4個で合
計8個の磁性部材5を用いた場合について説明したが、
これに限るものではなく、例えば、片側3個の磁性部材
5を配置したサイクロトロンも一般に使用される。この
場合にもcosθの磁界が荷電粒子の損失に繋がるの
で、上記実施の形態1と同様に構成することにより同様
の効果が得られる。また、磁性部材5を円周方向に分割
しないで用いる場合もあり、この場合にもビーム軌道面
11から近い第1の磁性部51としては鋳造法で製作し
た磁性部材を用いて透磁率の円周方向14のばらつきを
低減し、ビーム軌道面11から離れた第2の磁性部52
としては加工歪みは多いが安価に製作できる切削法や鍛
造法等で製作した磁性部材を用ることにより、上記実施
の形態1と同様の効果が得られる。なお、円周方向に分
割されない場合、荷電粒子の収束力は、円周方向に分割
したものに比べて弱くなる。また、コイル3は超電導コ
イルであったが常電導コイルであってもよい。これら
は、以下の各実施の形態では特に断らないが同様であ
る。
【0026】実施の形態2.図3は本発明の実施の形態
2による荷電粒子用加速装置を説明するための図であ
り、具体的には、磁性部材の1つを示す斜視図である。
本実施の形態では、図3に示すように、ビーム軌道面1
1に近い側の磁性部51をさらに外周側に位置する磁性
部53と内周側に位置する磁性部54とに分割し、ビー
ム軌道面11に近くしかも外周側に位置する磁性部53
を第1の磁性部として溶融凝固法(例えば鋳造法)によ
り製作し、残りの磁性部52と54を第2の磁性部とし
て溶融凝固法とは異なる切削法や鍛造法等の方法で製作
した。なお、第1の磁性部53と第2の磁性部52、5
4は共に例えば純鉄で形成した。ビーム軌道面11に近
い位置でも特に磁界精度の要求が厳しい領域は、半径が
大きな荷電粒子の取り出し付近すなわち図3で示した第
1の磁性部53の辺りであり、この部分53のみを溶融
凝固法で製作してもよく、この場合、溶融凝固法で製作
する部分が実施の形態1に比べてより小さくなり、より
製作が容易になる。
【0027】実施の形態3.次に本発明の実施の形態3
による荷電粒子用加速装置について説明する。本実施の
形態では、図2で示した第1の磁性部51を第2の磁性
部52より透磁率の高い磁性体で形成した。従来技術の
説明で、磁性部材5は高い透磁率を得るため、純鉄で構
成する場合が多いと述べた。また、実施の形態1で、ビ
ーム軌道面11の磁界は、ビーム軌道面11に近い磁性
部材5の寄与が大きく、ビーム軌道面11からZ軸方向
に離れた磁性部材5の寄与は小さいことを説明した。し
たがって、本実施の形態のように、ビーム軌道面11に
近い第1の磁性部51のみを高価であるが高透磁率かつ
飽和磁化の大きい磁性材料である例えば純鉄で形成し、
ビーム軌道面11からZ軸12方向に離れた第2の磁性
部52は安価であるが純鉄より透磁率が低く飽和磁界が
小さいSS41(JIS規格)等の磁性材料で構成すれ
ば、磁性部材5全体を純鉄で形成する場合に比べて安価
に製作できる。数値計算では、純鉄の量が磁性部材5全
体の1/3〜1/4程度以上であれば、全体が純鉄の場
合の磁界と大差なくなる。
【0028】なお、図3で示した実施の形態2と同様
に、磁性部材5をビーム軌道面11に近くしかも外周側
に位置する第1の磁性部53と、残りの第2の磁性部5
2、54とに分割し、第1の磁性部53のみを純鉄で構
成してもよい。
【0029】実施の形態4.図4および図5は本発明の
実施の形態4による荷電粒子用加速装置を説明するため
の図であり、具体的には、図4は実施の形態4に係る磁
性部材の1つを示す斜視図、図5は製造途中の磁性部材
の1つを示す斜視図である。本実施の形態においては、
第1の磁性部51と第2の磁性部52は共に例えば純鉄
で形成されており、第1の磁性部51を第2の磁性部5
2より加工精度良く形成した。磁性部材5のうちビーム
軌道面11に近い部分が作る磁界の寄与が大きいため、
Z軸12方向に沿ってビーム軌道面11に近い磁性部材
すなわち第1の磁性部51を高精度に加工すればよく、
ビーム軌道面11から遠い側の第2の磁性部52の加工
精度は悪くてもビーム軌道面11の磁界分布にはほとん
ど影響しない。したがって、本実施の形態におけるよう
に、第1の磁性部51を第2の磁性部52より加工精度
良く形成することにより、高精度加工が必要な磁性部材
の面積が小さくなり、加工時間を短縮でき、しかも加工
費が安くなる。
【0030】なお、ここで言う加工精度とは加工面の荒
さおよび寸法精度の両方であり、例えばビーム軌道面1
1に面する磁性部材5の面が荒く凹凸があると均一な磁
界が得られず、また、寸法精度が悪く例えばビーム軌道
面11からの距離や対向する磁性部材5との間の距離が
場所によって異なる場合には所望の磁界分布が得られな
い。
【0031】製造方法は、まず図5に示すように、磁性
部材5全体を粗加工した後、図4に示すように第1の磁
性部51のみを高精度で加工すれば、容易に効率良く加
工することが可能である。
【0032】なお、図3で示した実施の形態2と同様
に、磁性部材5をビーム軌道面11に近くしかも外周側
に位置する第1の磁性部53と、残りの第2の磁性部5
2、54とに分割し、第1の磁性部53に第2の磁性部
52、54より高精度に加工されたものを用いてもよ
い。
【0033】実施の形態5.図6は本発明の実施の形態
5による荷電粒子用加速装置を説明するための図であ
り、具体的には磁性部材の構成を示す断面図である。図
において、31は第1の磁性部51を第2の磁性部52
に固定する手段であり例えばボルト等が用いられる。3
3は第2の磁性部52に対する第1の磁性部51の傾き
を調整するためのスペーサである。磁性部材5はビーム
軌道面11または対向する磁性部材5との距離が一定に
なるように調整する必要がある。また、磁性部材5のう
ちビーム軌道面11に近い部分が作る磁界の寄与が大き
いのは前述したとおりである。したがって、第1の磁性
部52を固定した後(ヨーク9等に取り付けた後)、第
1の磁性部51を、スペーサ33を用いてその傾きを調
整しながらボルト31により最適な位置に固定すること
により、ビーム軌道面11または対向する磁性部材5と
の距離を調整すれば、重量の大きな磁性部材5全体の位
置調整をすることなく、体積が小さくかつ軽量な第1の
磁性部51のみの調整を行えばよいので、調整作業が容
易でかつ所望の磁界分布を得ることが可能となる。な
お、ボルト31は第1の磁性部51を貫通しているが、
Z軸12に関して4回対称に配置すれば問題ない。
【0034】以上は、Z軸12方向の位置調整について
述べたが、Z軸12方向の位置調整に加えて、第1の磁
性部51をZ軸12に直交する平面上でZ軸12に対称
に配置するとより好ましい。図7は本発明の実施の形態
5による荷電粒子用加速装置を説明するための図であ
り、具体的には4個の第1の磁性部51を高精度でZ軸
12に関し4回対称に配置するための取付金具を示す斜
視図である。図において、35は取付金具である。36
は第1の磁性部51を図中破線で示すように4回対称に
取付金具35に固定するためのねじ孔であり、図示しな
いが第1の磁性部51の所定の位置にもこれらのねじ孔
36と対応するねじ孔が設けられている。37はねじ孔
36よりも径の大きな孔である。
【0035】第1の磁性部51を第2の磁性部52へ固
定するには、まず、ねじ孔36を用いて4個の第1の磁
性部51を取付金具35に4回対称に固定する。次に、
この状態で、第1の磁性部51を予めヨーク9に取り付
けた第2の磁性部52の上に取付金具35の4回対称の
軸とコイルの中心軸(Z軸)12とを一致させて配置す
る。次に、この状態で取付金具35の孔37からこの孔
37の径よりも十分小さな径を有するねじを第1の磁性
部51を貫通して第2の磁性部52に届くようにねじ込
むことによりに、第1の磁性部51を第2の磁性部52
に固定する。その後、ねじ孔36のねじを外して取付金
具35を取り除けば、高精度で4回対称に第1の磁性部
51を第2の磁性部52に取り付けることができる。な
お、第1の磁性部51を貫通して第2の磁性部52に届
くようにねじをねじ込んで第1の磁性部51を第2の磁
性部52に固定する時に、第1の磁性部51と第2の磁
性部52の間にスペーサ33を挟んでZ軸12方向の位
置調整も同時に行ってもよい。
【0036】実施の形態6.図8および図9は本発明の
実施の形態6による荷電粒子用加速装置を説明するため
の図であり、具体的には図8は磁性部材の構成を示す斜
視図、図9は図8の磁性部材の断面図である。なお、図
2〜図5はX軸より下側にある磁性部材の1つを示して
いたが、図8はX軸より上側にある磁性部材の1つを示
している。図において、15は第1の磁性部51のR方
向に沿った磁場分布を補正するための補正コイルであ
る。本実施の形態では、上記各実施の形態1〜5のうち
の何れかの構成において、第1の磁性部51に補正コイ
ル15を備えたものであり、補正コイル15を備えるこ
とにより、上記各実施の形態の効果に加えて、第1の磁
性部51のR方向に沿った磁場分布を補正することがで
きるので、より性能の向上した荷電粒子用加速装置が得
られる。なお、図3に示したように、磁性部材5をビー
ム軌道面11に近くしかも外周側に位置する第1の磁性
部53と、残りの第2の磁性部52、54とに分割した
場合には、補正コイル15は第1の磁性部53と第2の
磁性部の一部54とに設けるとよい。
【0037】なお、補正コイル15を挿入するために、
元々磁性部材5がZ軸12方向に沿って分割されている
サイクロトロンでは、新たに磁性部材5を第1の磁性部
51と第2の磁性部52とに分割する必要がなく、磁性
部材5に上記実施の形態1〜5のうちの何れかの構成を
導入すれば、より磁性部材の製作が安価になる。
【0038】実施の形態7.なお、上記各実施の形態の
うち、複数の実施の形態の構成を同時に採用してもよ
く、その場合はより安価でかつ性能の低下の少ない荷電
粒子用加速装置を提供することができる。
【0039】
【発明の効果】本発明の第1の構成によれば、ビームを
偏向させる磁界を発生するコイルと、該コイルにより偏
向されてビーム軌道面上を周回する前記ビームを加速す
る加速手段と、前記ビーム軌道面を挟んで所定のギャッ
プを有して対向し、前記ビームを収束する磁界を発生す
る磁性部材と、該磁性部材が固定されるヨークとを備え
る荷電粒子用加速装置において、前記磁性部材は前記ビ
ーム軌道面に近い第1の磁性部と、前記ビーム軌道面か
ら離れた第2の磁性部とを有し、第1の磁性部は溶融凝
固法により製作されたものであり、第2の磁性部は第1
の磁性部とは異なる方法により製作されたものであるの
で、性能を維持したまま、製作に要する手間や費用を削
減できる荷電粒子用加速装置を提供することができる。
【0040】本発明の第2の構成によれば、ビームを偏
向させる磁界を発生するコイルと、該コイルにより偏向
されてビーム軌道面上を周回する前記ビームを加速する
加速手段と、前記ビーム軌道面を挟んで所定のギャップ
を有して対向し、前記ビームを収束する磁界を発生する
磁性部材と、該磁性部材が固定されるヨークとを備える
荷電粒子用加速装置において、前記磁性部材は前記ビー
ム軌道面に近い第1の磁性部と、前記ビーム軌道面から
離れた第2の磁性部とを有し、第1の磁性部は第2の磁
性部より透磁率が高いものであるので、性能を維持した
まま、製作に要する手間や費用を削減できる荷電粒子用
加速装置を提供することができる。
【0041】本発明の第3の構成によれば、ビームを偏
向させる磁界を発生するコイルと、該コイルにより偏向
されてビーム軌道面上を周回する前記ビームを加速する
加速手段と、前記ビーム軌道面を挟んで所定のギャップ
を有して対向し、前記ビームを収束する磁界を発生する
磁性部材と、該磁性部材が固定されるヨークとを備える
荷電粒子用加速装置において、前記磁性部材は前記ビー
ム軌道面に近い第1の磁性部と、前記ビーム軌道面から
離れた第2の磁性部とを有し、第1の磁性部は第2の磁
性部より加工精度が良いものであるので、性能を維持し
たまま、製作に要する手間や費用を削減できる荷電粒子
用加速装置を提供することができる。
【0042】本発明の第4の構成によれば、ビームを偏
向させる磁界を発生するコイルと、該コイルにより偏向
されてビーム軌道面上を周回する前記ビームを加速する
加速手段と、前記ビーム軌道面を挟んで所定のギャップ
を有して対向し、前記ビームを収束する磁界を発生する
磁性部材と、該磁性部材が固定されるヨークとを備える
荷電粒子用加速装置において、前記磁性部材は前記ビー
ム軌道面に近い第1の磁性部と、前記ビーム軌道面から
離れた第2の磁性部とを有し、第1の磁性部は第2の磁
性部に位置調整可能に固定されているので、性能を維持
したまま、製作に要する手間や費用を削減できる荷電粒
子用加速装置を提供することができる。
【0043】本発明の第5の構成によれば、前記第1な
いし4の何れかの構成において、第1の磁性部はビーム
軌道面に近くしかも外周側に位置しているので、性能を
維持したまま、製作に要する手間や費用をより削減でき
る荷電粒子用加速装置を提供することができる。
【0044】本発明の第6の構成によれば、前記第1な
いし5の何れかの構成において、磁性部材が円周方向に
複数個に分割されてコイルの軸の周りにリング状に配置
されているので、分割されていない場合に比べてより強
い荷電粒子収束力を得ることができる。
【0045】本発明の第7の構成によれば、前記第6の
構成において、第1の磁性部に補助コイルを備えたの
で、第1の磁性部のR方向に沿った磁場分布を補正する
ことができ、より性能の向上した荷電粒子用加速装置が
得られる。
【0046】本発明の第1の方法に係る荷電粒子用加速
装置の製造方法は、入射されたビームを偏向させる磁界
を発生するコイルと、該コイルにより偏向されてビーム
軌道面上を周回する前記ビームを加速する加速手段と、
前記ビーム軌道面を挟んで所定のギャップを有して対向
し、前記ビームを収束する磁界を発生する磁性部材と、
該磁性部材が固定されるヨークとを備える荷電粒子用加
速装置の製造方法において、前記磁性部材の全体を粗加
工した後、前記磁性部材の前記ビーム軌道面に近い部分
をさらに高精度に加工するので、性能を維持したまま、
製作に要する手間や費用を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1による荷電粒子用加速
器を説明する図である。
【図2】 本発明の実施の形態1による荷電粒子用加速
器を説明する図である。
【図3】 本発明の実施の形態2による荷電粒子用加速
器を説明する図である。
【図4】 本発明の実施の形態4による荷電粒子用加速
器を説明する図である。
【図5】 本発明の実施の形態4による荷電粒子用加速
器を説明する図である。
【図6】 本発明の実施の形態5による荷電粒子用加速
器を説明する図である。
【図7】 本発明の実施の形態5による荷電粒子用加速
器を説明する図である。
【図8】 本発明の実施の形態6による荷電粒子用加速
器を説明する図である。
【図9】 本発明の実施の形態6による荷電粒子用加速
器を説明する図である。
【図10】 従来のサイクロトロンの全体的な構成を示
す鳥瞰図である。
【図11】 図10の磁性部材の配置を示す平面図であ
る。
【図12】 図10で示した従来のサイクロトロンの要
部の構成を示す断面図である。ある。
【符号の説明】
1 荷電粒子用加速装置、3 コイル、5 磁性部材、
51,53 第1の磁性部、52,54 第2の磁性
部、7 加速空洞、9 ヨーク、11 ビーム軌道面、
12 Z軸、13 ギャップ、14 円周方向を示す矢
印、15 補正コイル、31 ボルト、33 スペー
サ、35 取付金具、36 ねじ孔、37 貫通孔。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ビームを偏向させる磁界を発生するコイ
    ルと、該コイルにより偏向されてビーム軌道面上を周回
    する前記ビームを加速する加速手段と、前記ビーム軌道
    面を挟んで所定のギャップを有して対向し、前記ビーム
    を収束する磁界を発生する磁性部材と、該磁性部材が固
    定されるヨークとを備える荷電粒子用加速装置におい
    て、前記磁性部材は前記ビーム軌道面に近い第1の磁性
    部と、前記ビーム軌道面から離れた第2の磁性部とを有
    し、第1の磁性部は溶融凝固法により製作されたもので
    あり、第2の磁性部は第1の磁性部とは異なる方法によ
    り製作されたものであることを特徴とする荷電粒子用加
    速装置。
  2. 【請求項2】 ビームを偏向させる磁界を発生するコイ
    ルと、該コイルにより偏向されてビーム軌道面上を周回
    する前記ビームを加速する加速手段と、前記ビーム軌道
    面を挟んで所定のギャップを有して対向し、前記ビーム
    を収束する磁界を発生する磁性部材と、該磁性部材が固
    定されるヨークとを備える荷電粒子用加速装置におい
    て、前記磁性部材は前記ビーム軌道面に近い第1の磁性
    部と、前記ビーム軌道面から離れた第2の磁性部とを有
    し、第1の磁性部は第2の磁性部より透磁率が高いこと
    を特徴とする荷電粒子用加速装置。
  3. 【請求項3】 ビームを偏向させる磁界を発生するコイ
    ルと、該コイルにより偏向されてビーム軌道面上を周回
    する前記ビームを加速する加速手段と、前記ビーム軌道
    面を挟んで所定のギャップを有して対向し、前記ビーム
    を収束する磁界を発生する磁性部材と、該磁性部材が固
    定されるヨークとを備える荷電粒子用加速装置におい
    て、前記磁性部材は前記ビーム軌道面に近い第1の磁性
    部と、前記ビーム軌道面から離れた第2の磁性部とを有
    し、第1の磁性部は第2の磁性部より加工精度が良いこ
    とを特徴とする荷電粒子用加速装置。
  4. 【請求項4】 ビームを偏向させる磁界を発生するコイ
    ルと、該コイルにより偏向されてビーム軌道面上を周回
    する前記ビームを加速する加速手段と、前記ビーム軌道
    面を挟んで所定のギャップを有して対向し、前記ビーム
    を収束する磁界を発生する磁性部材と、該磁性部材が固
    定されるヨークとを備える荷電粒子用加速装置におい
    て、前記磁性部材は前記ビーム軌道面に近い第1の磁性
    部と、前記ビーム軌道面から離れた第2の磁性部とを有
    し、第1の磁性部は第2の磁性部に位置調整可能に固定
    されていることを特徴とする荷電粒子用加速装置。
  5. 【請求項5】 第1の磁性部はビーム軌道面に近くしか
    も外周側に位置していることを特徴とする請求項1ない
    し4の何れかに記載の荷電粒子用加速装置。
  6. 【請求項6】 磁性部材が円周方向に複数個に分割され
    てコイルの軸の周りにリング状に配置されていることを
    特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の荷電粒子
    用加速装置。
  7. 【請求項7】 第1の磁性部に補助コイルを備えたこと
    を特徴とする請求項6記載の荷電粒子用加速装置。
  8. 【請求項8】 入射されたビームを偏向させる磁界を発
    生するコイルと、該コイルにより偏向されてビーム軌道
    面上を周回する前記ビームを加速する加速手段と、前記
    ビーム軌道面を挟んで所定のギャップを有して対向し、
    前記ビームを収束する磁界を発生する磁性部材と、該磁
    性部材が固定されるヨークとを備える荷電粒子用加速装
    置の製造方法において、前記磁性部材の全体を粗加工し
    た後、前記磁性部材の前記ビーム軌道面に近い部分をさ
    らに高精度に加工することを特徴とする荷電粒子用加速
    装置の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007128681A (ja) * 2005-11-01 2007-05-24 Japan Atomic Energy Agency 中性子偏極装置
CN103766006A (zh) * 2011-07-07 2014-04-30 艾昂耐提柯斯有限公司 紧凑型冷超导等时性回旋加速器

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