JP2001079534A - 汚染地盤の清浄化方法 - Google Patents

汚染地盤の清浄化方法

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JP2001079534A
JP2001079534A JP25721799A JP25721799A JP2001079534A JP 2001079534 A JP2001079534 A JP 2001079534A JP 25721799 A JP25721799 A JP 25721799A JP 25721799 A JP25721799 A JP 25721799A JP 2001079534 A JP2001079534 A JP 2001079534A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 有機物で汚染された地盤を迅速に清浄化す
る。 【解決手段】 地盤を掘削してロッド11の先端を汚染
地盤に到達させる。ロッド11の内部に設けられた第1
流路12に硫酸第一鉄水溶液を注入し、ロッド11の内
部に設けられた第2流路13に過酸化水素水を注入し、
第1流路12の先端の開口部から硫酸第一鉄水溶液を地
盤中に噴射し、第2流路13の先端の開口部から過酸化
水素水を地盤中に噴射しながら、撹拌翼14,15,1
6をそれぞれ回転させ、硫酸第一鉄水溶液と過酸化水素
水とが噴射された地盤を混合撹拌する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、汚染地盤の清浄化
方法に関し、特に、汚染された地下地盤中の有機物を分
解し、この地下地盤に対応する地盤及び地表部を地盤本
来の目的に利用できるように清浄化する汚染地盤の清浄
化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】トリクロロエチレン、パークロロエチレ
ン、トリクロロエタン等に代表される有機塩素化合物等
の液体有機物は、溶剤、洗浄剤、消炎剤として、或いは
有機化学製品合成の中間体等として幅広い用途を有して
いる。従って、これらの有機塩素化合物は、その製造、
貯蔵、輸送、利用の過程で、漏洩、飛散、事故等によ
り、地盤中に浸透する恐れがある。
【0003】地盤中に浸透した上記有機物は、比較的密
度が高く、高い揮発性を有しているために、地中に浸透
するだけでなく、地盤に含有される有機物や粘土鉱物等
の土壌構成成分に吸着される。さらに、水への若干の溶
解性があるため、帯水層中の地下水流により移動・拡散
する恐れがある。そのため、汚染発生域だけでなく、地
下水流の下流域等の地域にもその影響が及ぶことにな
る。
【0004】これらの液体有機物が地下水流を汚染し、
汚染発生地域の下流域で表面水、或いは汲み上げられた
水として飲料水、灌漑用水、工業用水に利用されると
き、上記有機物の毒性や有害性が、利用者、或いはその
水域の生態系に悪影響を及ぼすことになる。従って、上
記液体有機物で汚染された地盤は、できる限り早急に清
浄化されねばならない。
【0005】このような地盤中に浸透した有機物は、化
学構造的に安定なものが多い。従って、汚染地下地盤の
清浄化の処理方法としては、この汚染地下地盤の深度が
浅い場合、地表より機械的に掘削して汚染土壌を除去す
ることにより、汚染地下地盤の清浄化を図ることができ
る。しかし、汚染域が拡大している、深度が深い等の理
由で、掘削・除去できない場合が圧倒的に多い。
【0006】そのような地下地盤の清浄化方法として、
液体有機物が混入している水を揚水してから、活性炭等
の吸着剤に吸着させたり、化学的に分解させたりする方
法、汚染域を囲い込むことによって、地下水流の流れる
向き(流向)を規制して、反応性を有する透過壁を通過
させる方法、汚染域に微生物を供給し、生物分解させる
方法等が知られている。また、有機塩素化合物の揮発性
を利用して、地下地盤の汚染域を減圧したり、加熱する
ことにより、有機塩素化合物を蒸散させる方法も用いら
れている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た方法は、地盤水中の液体有機物の濃度が低い(ppm
のオーダー)ため、処理効率が低く、汚染された地域の
清浄化に非常に時間がかかる欠点がある。このため、汚
染域の地表を再利用するのに数ヶ月乃至数年を必要とす
るのが普通である。さらに、汚染地域の清浄化に際して
は、長期に渡り、監視及び管理が必要であったり、清浄
化の実施に多額の費用が必要であり、経済的にも不利な
ものが多い。
【0008】これらの清浄化方法に対して、汚染地域を
低価格で迅速に浄化する方法として、過酸化水素水を地
盤中に注入する方法が特願平7−75772において開
示されている。この方法は、いわゆるフェントン試薬と
して古くから知られている鉄化合物(Fe2+)と過酸化
水素水(H22)の組み合わせにより、有機汚染物を分
解しようとするものである。
【0009】それは、第一鉄化合物と過酸化水素水を混
合すれば、瞬時に過酸化水素水の分解反応が始まり、そ
の過程で発生する中間体のヒドロキシ・ラジカル(OH
・)が有機汚染物を分解する性質を有しているためであ
る。
【0010】従って、水中に存在する有機汚染物の分解
には、上記薬剤、或いはその混合で生じる中間体の拡散
が期待されるため、有機汚染物を分解する効果が発揮さ
れる。ところが、土、砂等の固形分が水と共存する場合
において、これらの固形分に薬剤やその混合で生じる中
間体が吸着されて水に溶出するのが困難なとき、上記薬
剤、或いはその混合で生じる大部分の中間体は、水中で
の連鎖反応により酸素ガスを発生させるだけか、鉄塩が
酸化されて触媒としての能力を喪失するか、地下水又は
土壌中の有機塩素系化合物以外の被酸化性物質により無
駄に消費されてしまうことになる。
【0011】このような場合、水中の有機物は分解され
ても、土、砂等の固形物から再び有機塩素系化合物が溶
出して水を汚染してしまうことが確認された。
【0012】さらに、過剰量の過酸化水素水と第一鉄塩
が用いられても、第一鉄塩が酸化されてしまうと、フェ
ントン試薬としての強い分解能力が失われて、水中には
過酸化水素水が残存するだけとなり、無駄に分解されて
酸素ガスを放出し続ける。この酸素ガスの密度が低いと
きは、土壌粒子中の隙間に入ったりし、酸素ガスの密度
が高いときは、上方に解放されようとして土壌粒子を持
ち上げてでも移動することになる。
【0013】従って、薬液を注入した箇所の水中に溶解
している有機汚染物だけが分解され、その箇所より注入
された薬液の届かない水平方向、及び薬液の浸透がなさ
れなかった土壌部分は改良されないことになる。
【0014】このように、上述した方法では、地下水流
の迅速な帯水域の上部の水に浸潤されていない地盤や帯
水層の下部の水の浸透が困難な汚染されている土壌、さ
らには、ローム土のような非常に粒子の細かいものなど
に有機物が吸着していて移動が困難な土壌の修復は困難
である課題があった。
【0015】本発明はこのような状況に鑑みてなされた
ものであり、帯水層上の土壌で水と接触していない汚染
域や、帯水層の下部の水の浸透が困難な汚染されている
土壌、さらには、ローム土のような非常に粒子の細かい
ものなどに有機物が吸着していて移動が困難な土壌の有
機汚染物を、迅速に酸化反応が進行する薬剤を用いて効
率よく分解することができるようにするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の汚染地
盤の清浄化方法は、有機物で汚染された地盤を清浄化す
る汚染地盤の清浄化方法であって、先端付近に撹拌翼を
有するロッドを回転させつつ、汚染地盤中に貫入する貫
入工程と、汚染地盤に過酸化水素水と第一鉄塩を供給す
る供給工程と、汚染地盤を撹拌翼によって撹拌する撹拌
工程と、ロッドを引き抜く引き抜き工程とを備え、撹拌
工程においては、過酸化水素と第一鉄塩とが供給された
汚染地盤が撹拌され、汚染地盤と過酸化水素水と第一鉄
塩とが混合されることを特徴とする。また、供給工程に
おいては、過酸化水素水と第一鉄塩がロッドに形成され
た別々の流路を通じて、かつ同時に汚染地盤に供給され
るようにすることができる。また、供給工程において
は、過酸化水素水と第一鉄塩が、ロッドに形成された同
一の流路を通じて、所定の時間間隔で交互に汚染地盤に
供給されるようにすることができる。また、供給工程に
おいては、過酸化水素水と第一鉄塩が、ロッドに形成さ
れた流路に供給される直前に混合された後、該流路を通
じて汚染地盤に供給されるようにすることができる。ま
た、供給工程においては、貫入工程において、ロッドが
汚染地盤中に貫入されるとき、過酸化水素水および第一
鉄塩のうちの一方がロッドに形成された流路を通じて、
汚染地盤に供給され、引き抜き工程において、ロッドが
引き抜かれるときに、過酸化水素水および第一鉄塩のう
ちの他方がロッドに形成された流路を通じて、汚染地盤
に供給されるようにすることができる。また、供給工程
においては、過酸化水素水および第一鉄塩のうちの少な
くとも一方は、汚染地盤の同一箇所に所定の時間間隔で
2回以上供給されるようにすることができる。本発明に
係る汚染地盤の清浄化方法においては、先端付近に撹拌
翼を有するロッドを回転させつつ、汚染地盤中に貫入
し、汚染地盤に過酸化水素水と第一鉄塩を供給し、汚染
地盤を撹拌翼によって撹拌し、ロッドを引き抜く。そし
て、撹拌するときに、過酸化水素水と第一鉄塩とが供給
された汚染地盤が撹拌され、汚染地盤と過酸化水素水と
第一鉄塩とが混合される。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の汚染地盤の清浄化
方法について説明する。
【0018】図1は、本発明が適用される撹拌機の一実
施の形態の構成例を示している。同図に示すように、2
種類の薬液のうちの一方の薬液をA液(例えば、過酸化
水素水)とし、他方の薬液をB液(例えば、第一鉄塩)
とすると、A液とB液をY字管2で合流させ、スイベル
3を介してロッド1に供給し、ロッド1の先端の開口部
からA液とB液の混合液を吐出させる。このとき、撹拌
翼6,7,8をそれぞれ回転させて、A液とB液の混合
液を地盤内で混合撹拌するようになされている。また、
撹拌翼6の回転方向と、撹拌翼7,8の回転方向とは、
同方向又は逆方向にすることができる。
【0019】図2は、本発明が適用される撹拌機の他の
実施の形態の構成例を示している。この実施の形態の場
合、図1の実施の形態の場合とは異なり、A液をロッド
11の内部に形成された第1流路12に供給し、B液を
ロッド11の内部に形成された第2流路13に供給し、
第1流路12に連通するロッド11に設けられた先端の
開口部からA液を地盤中に吐出させ、第2流路13に連
通するロッド11に設けられた先端の開口部からB液を
地盤中に吐出させる構造となっている。従って、両液を
混合せずに別々に地盤中に吐出させることができ、撹拌
翼14,15,16をそれぞれ回転させることによっ
て、地盤内で初めてA液とB液が混合撹拌されるように
することができるようになされている。なお、A液を第
2流路13に供給し、B液を第1流路12に供給しても
よい。また、撹拌翼14の回転方向と、撹拌翼15,1
6の回転方向とは、同方向又は逆方向にすることができ
る。
【0020】図3は、本発明が適用される撹拌機のさら
に他の実施の形態の構成例を示している。同図に示すよ
うに、この実施の形態の場合、1つのロッド21がある
のみで、撹拌翼22,23,24の貫入時に、ロッド2
1にA液を注入し、先端の開口部からA液を吐出させな
がら、所定の深さまで貫入し、地盤内にA液を浸透させ
る。そして、ロッド21を引き抜くときに、ロッド21
にB液を注入し、先端の開口部からB液を吐出させなが
ら、なおかつ、撹拌翼22,23,24を回転させてA
液とB液を地盤内で混合撹拌させるようになされてい
る。このとき、撹拌翼22の回転方向と、撹拌翼23,
24の回転方向とは、同方向又は逆方向にすることがで
きる。
【0021】図4は、本発明が適用される撹拌機のさら
に他の実施の形態の構成例を示している。同図に示すよ
うに、この実施の形態の場合、内管31と外管ロッド3
2とからなる二重管の例えば内管31にA液を注入し、
外管ロッド32にB液を注入する。そして、二重管の先
端の内管31に連通する開口部からA液を吐出させ、外
管ロッド32の先端の開口部からB液を吐出させ、撹拌
翼33,34,35をそれぞれ回転させて、A液とB液
を地盤内で混合撹拌するようになされている。このと
き、撹拌翼33の回転方向と、撹拌翼34,35の回転
方向とは、同方向又は逆方向にすることができる。
【0022】図5は、本発明が適用される撹拌機のさら
に他の実施の形態の構成例を示している。同図に示すよ
うに、電磁弁(A)44、電磁弁(B)45、電磁弁
(C)46はそれぞれ所定のタイミングで開閉し、電磁
弁44が開いてA液が外管ロッド42の内部に設けられ
た内管41にスイベル43を介して注入されるとき、電
磁弁(B)45、電磁弁(C)46が閉じてB液及び空
気が内管41に注入されないようになっている。また、
電磁弁(B)45が開いてB液がスイベル43を介して
内管41に注入されるとき、電磁弁(A)44、電磁弁
(C)46が閉じてA液及び空気が内管41に注入され
ないようになっている。そして、電磁弁(C)46を開
き、A液及びB液の両液の代わりに空気をスイベル43
を介して内管41に注入するとき、電磁弁(A)44及
び電磁弁(B)45を閉じてA液及びB液の両液の内管
41への注入を停止させるようになされている。
【0023】即ち、最初、電磁弁(A)44、電磁弁
(B)45、電磁弁(C)46が共に閉じている状態か
ら、電磁弁(A)44のみを開き、A液を内管41に注
入し、次に、電磁弁(A)44を閉じ、電磁弁(C)4
6のみを開いて空気を内管41に注入し、次に、電磁弁
(C)46を閉じ、電磁弁(B)45のみを開き、B液
を内管41に注入する。次に、電磁弁(B)45を閉
じ、電磁弁(C)46のみを開いて空気を内管41に注
入する。これらの動作を数秒乃至数十秒の間隔で繰り返
すことにより、内管41にはA液とB液が空気層に隔て
られた状態で交互に並ぶように供給され、内管41の先
端からA液とB液が交互に吐出されるようにすることが
できる。このとき、撹拌翼47,48,49をそれぞれ
回転させることにより、A液とB液を地盤内で混合撹拌
することができる。また、撹拌翼47の回転方向と、撹
拌翼48,49の回転方向とは、同方向又は逆方向にす
ることができる。
【0024】過酸化水素水と第一鉄塩が接触したときに
生成されるヒドロキシル・ラジカル等の中間体が無駄に
消費されるのを防ぐため、いずれか一方の薬液のみを複
数回に分けて同一深度の汚染地盤に対して供給すること
もできる。例えば、図2の撹拌機を用いる場合の説明を
すると、まず、ロッド11を汚染地盤に貫入する際、過
酸化水素水については対象汚染土壌を浄化するのに十分
な量を注入し、もう一方の第一鉄塩については必要量の
半分のみを注入し、これらの薬液と汚染地盤を撹拌混合
し、地盤の清浄化を行う。その後、ロッド11を引き抜
く際、第一鉄塩の残り半分を地盤に注入して地盤をさら
に撹拌混合し、地盤の清浄化を行う。これは、一方の薬
液のみを複数回に分けて注入する方法の一例であり、こ
れ以外にも種々の方法があるが、ここではその説明を割
愛する。なお、このように薬液を複数回に分けて注入す
る際には、時間的に1分以上、好ましくは5分以上の間
隔をおいて注入することが望ましい。
【0025】薬液の1つである過酸化水素水は、市販の
濃度がほぼ30パーセント(%)以上のものがそのまま
用いられるが、使用に適するように適宜希釈したものを
用いるようにしてもよい。
【0026】なお、汚染地盤の修復に用いる場合には、
有機汚染物の種類と濃度によっても異なるが、地盤中の
水分で希釈されても、地盤内で0.1%以上、好ましく
は0.5%以上となるようにするのがよい。
【0027】薬液の1つである第一鉄塩としては、特に
化合物の種類に限定されず、例えば、硫酸第一鉄、塩化
第一鉄、燐酸第一鉄、モール氏塩、蓚酸鉄のように、水
溶性の塩類を用いるのが好ましく、使用量は有機物の種
類と濃度、過酸化水素水の使用量によって変化する。例
えば、硫酸第一鉄を用いる場合、汚染物水溶液中で0.
1グラム(g)/リットル(L)以上、できれば0.5
g/L以上の濃度になるように調整することが望まれ
る。なお、地盤中の土壌成分中の鉄化合物の濃度が高い
場合、上記数値よりも低い濃度の硫酸第一鉄を使用して
も十分な効果が得られる。
【0028】上述した2種類の薬液、即ち、第一鉄塩と
過酸化水素水は、汚染地盤中で初めて接触するようにす
るのが望ましい。それが困難な場合には、第一鉄塩と過
酸化水素水を所定の配合量で混合したら、直ちに汚染地
盤中に送り込むようにすることが望ましい。
【0029】これは、第一鉄塩と過酸化水素水を混合し
てから汚染地盤に送り込まれるまでの間に、過酸化水素
水が無駄に分解されるのを抑制するためである。
【0030】第一鉄塩と過酸化水素水の両液を地盤中に
供給する方法としては、定量ポンプを用いて所定量を上
記注入管やロッドから注入し、汚染地盤中に噴出させる
のが望ましい。汚染地盤中に両液を噴出させる方向は特
に限定されないが、汚染地盤を回転しながら機械的に撹
拌する回転撹拌軸に対して直交する方向、即ち、水平方
向に噴出させるのがよい。第一鉄塩と過酸化水素水は、
同一の水平位置では交互に噴出させても構わないが、噴
出孔(開口部)若しくはその付近で両液を混合させるよ
うにするのが好ましい。
【0031】修復すべき地下地盤中に貫入するために用
いられる撹拌装置は、土壌を窄孔しつつ、地盤中に撹拌
翼を貫入させて、撹拌翼を回転させることができる機能
を有するものであれば特に限定されない。
【0032】例えば、ロッドの下端部に開閉自在に取り
付けられた撹拌翼を、地上からの制御により開閉できる
ようにし、この撹拌翼の下端部が土壌を剪断できる構造
とする。即ち、ロッドを回転させつつ、撹拌翼を閉じ
て、改良すべき地盤中に貫入させる。次に、半径が50
0乃至1000ミリメートル(mm)となるように、撹
拌翼を開いて回転させながら、撹拌を行う。なお、ロッ
ドの回転速度は、汚染物の種類と濃度、撹拌翼の回転半
径によっても異なるが、10乃至100rpm(rev
olution per minute)の範囲で選択
される。
【0033】浄化の対象となる有機汚染物は、トリクロ
ロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロエタ
ン、四塩化炭素などのいわゆる揮発性を有する有機塩素
化合物であるが、必ずしもこれらのものに限定されな
い。
【0034】例えば、2,4−D、ペンタクロロフェノ
ール、2,3,7,8−テトラクロロダイオキシン、P
CBのような沸点の高い各種の有機塩素化合物、ローダ
ミンB、マラカイト・グリーン等の色素、さらには、各
種の炭化水素化合物、フェノール類、ニトロ化合物等で
汚染された土壌の修復にも本発明の方法を適用すること
ができる。
【0035】また、本発明の方法では、帯水層から分離
している土壌中に存在している汚染物にも、上記フェン
トン試薬を強制的に接触させることが可能であるため、
従来の撹拌を伴わない注入での処理では不可能であった
地盤の修復も可能となる。
【0036】本発明の方法で地盤の修復を行うために
は、上記撹拌翼を回転させながらそれを昇降させつつ、
フェントン試薬を噴出させるのが好ましい。このように
することにより、汚染地盤を均一に浄化させることがで
きる。そして、このような方法を採用することより、副
生した酸素を撹拌翼の軸(例えば、図1のロッド1な
ど)と土壌の隙間より地上に散逸させることが可能で、
土壌中での滞留を抑制させることができる。
【0037】さらに、本発明の方法で修復された地盤の
鉛直方向の一部又は全部をセメント系の固化剤により改
良することが可能である。即ち、鉛直方向に撹拌翼を地
中に侵入させるときに、フェントン試薬を撹拌翼で撹拌
しつつ土壌中に拡散させ、有機物を分解する。そして、
撹拌翼を引き上げるときに、セメント・ミルクを噴出さ
せて、フェントン試薬で酸性になった地盤を中和するこ
とができる。さらに、セメント量を多くさせれば、乱さ
れた地盤を固化することにより、地盤の地耐力を増強さ
せることができる。
【0038】また、本発明の方法では、フェントン試薬
で汚染地盤を浄化・修復させるのに必要な時間は、揮発
性有機化合物の場合、TCEの地盤中の水分中の濃度が
200乃至1000ppmのように高い場合も、15乃
至60分で十分であり、他の浄化方法と比較して非常に
迅速に浄化・修復を行うことができる。
【0039】以下、本発明の方法を用いて行った実験例
について詳細に説明する。
【0040】(実験例1)図6は、本発明を試験的に実
験するための実験装置の模式図である。同図に示すよう
に、ステンレス製の円筒状の容器(例えば、ドラム缶)
51には、着脱可能に蓋52が取り付けられており、容
器51を密閉できるようになされている。また、容器5
1には、内容物の流体を取り出すためのコック53,5
4,55が取り付けられている。
【0041】蓋52には、コック56が取り付けられ、
チューブ57を介して水シールされた容器(図示せず)
に接続されている。また、蓋52の中央には、回転軸5
8を固定させるための軸封装置59が設けられ、回転軸
58を自在に昇降できるようになされている。回転軸5
8は2重管構造になっており、2重管の内管には硫酸第
一鉄水溶液を供給するための配管60及び過酸化水素水
を供給するための配管61が挿入され、回転軸58の先
端の開口部62から硫酸第一鉄水溶液と過酸化水素水と
が混合された後、噴射されるようになされている。この
とき、回転軸58が回転しているので、噴射された硫酸
第一鉄水溶液と過酸化水素水とは水平方向に四周に噴射
される。
【0042】この容器51内に、鹿島珪砂6号をコック
55のやや下方まで充填し、次に、蓋52を取り付けて
密閉した。その後、ブレード型の撹拌翼63を図6に示
したような位置(容器51の底部)までゆっくりと回転
させながら降下させる。次に、コック53を開けて、コ
ック53から300ppmの濃度に調整されたトリクロ
ロエチレンの水溶液を供給し、コック53から供給した
トリクロロエチレンの水溶液がコック55から溢流した
ところで、トリクロロエチレンの水溶液の供給を停止さ
せ、コック53,55を閉じる。
【0043】撹拌翼63を30rpmので回転させつ
つ、先に供給したトリクロロエチレンの水溶液に対し
て、総量で硫酸第一鉄水溶液が0.2グラム/リット
ル、過酸化水素水が0.5%になるように、配管60よ
り硫酸第一鉄水溶液を供給し、配管61より過酸化水素
水を供給した。そして、撹拌翼63を、約10分で容器
51の底部と最上部との間を往復するように昇降させ、
砂と汚染水とが均一に混ざるように撹拌しながら12時
間放置した。
【0044】表1は、硫酸第一鉄水溶液と過酸化水素水
とを供給した直後から、5分間隔でコック54から少量
の試料を採取し、トリクロロエチレンの濃度を測定した
結果である。硫酸第一鉄水溶液と過酸化水素水とを供給
する直前には210ppmであったトリクロロエチレン
濃度が、時間が経過するのに伴って低下し、45分後に
は9.1ppb(1ppb=1/1000ppm)とな
り、環境基準値である30ppbを下回った。そして、
トリクロロエチレンの分解により、塩化物が生成したこ
とが確認された。
【0045】
【表1】
【0046】(実験例1に対する比較例)次に、実験例
1との比較のために、図6に示した装置と同一のものを
用いて次のような実験を行った。まず、実験例1の場合
と同様に鹿島珪砂6号をトリクロロエチレンで汚染させ
た。次に、撹拌翼63を図6に示すように容器51の底
部に停止させて、昇降させたり回転させたりして撹拌を
行わずに、実験例1の場合と同量の硫酸第一鉄の水溶液
を配管60から供給し、実験例1の場合と同量の過酸化
水素水を配管61から供給する。そして、撹拌翼63を
2分間だけ回転させて停止させた後、実験例1の場合と
同様に、コック54から試料を採取してトリクロロエチ
レン濃度を5分毎に測定した。この場合、硫酸第一鉄の
水溶液と過酸化水素水を供給する直前のトリクロロエチ
レン濃度は203ppmであった。
【0047】その結果、表2に示したような結果が得ら
れた。表2に示すように、60分経過しても、トリクロ
ロエチレン濃度は9.0ppmであり、環境基準値の3
0ppbを大きく上回っている。また、フェントン酸化
反応により発生し、水シールされた容器内にチューブ5
7を介して供給された酸素の量は実験例1の場合とほぼ
同量であった。このことから、フェントン酸化反応にお
いて試薬が無駄に消費されていることが確認された。
【0048】
【表2】
【0049】実験例1とその比較例の測定結果から、撹
拌翼63を用いてトリクロロエチレンに汚染された土壌
を撹拌することにより、トリクロロエチレンが短時間で
分解され、迅速に土壌を清浄化することができることが
わかる。
【0050】(実験例2)図7に示すように、3つ頸の
ガラス製の600ミリリットル(ml)の容器71の中
央の頸に、プロペラ式の撹拌翼73を回転軸72を介し
て回転自在に挿入し、回転軸72を固定させるための軸
封装置75を設け、モータ74の回転力が回転軸72を
介して撹拌翼73に伝達され、撹拌翼73が回転するよ
うになされている。
【0051】残りの2つの頸のうちの一方には活栓76
を施し、他方の頸には分液ロート79を取り付けて、薬
液(硫酸第一鉄の水溶液と過酸化水素水)を供給できる
ようにした。撹拌翼73は摺り合わせで回転させるよう
にし、分液ロート79等も摺り合わせを用いて、外部に
ガスが漏れないようにした。
【0052】この容器71に、鹿島珪砂6号500グラ
ム(g)と、トリクロロエチレン溶液を含む純水250
mlを添加し、12時間静置して、トリクロロエチレン
汚染珪砂を調整した。
【0053】次に、活栓76の部分は摺り合わせの配管
とチューブ77により、水シールされた容器(図示せ
ず)に導いた。その後、低速で撹拌翼73を回転させた
が、この過程で水シールされた容器にガスが流れ込むの
は確認されなかった。次に、硫酸第一鉄の0.5gを水
5mlに溶解した後、分液ロート79より容器71内に
添加した。
【0054】次に、15.5%の過酸化水素水40ml
をさらに添加して、撹拌翼73による撹拌を続けた。過
酸化水素水の添加後、水シールされた容器には、フェン
トン酸化反応により発生した酸素が観察された。そし
て、所定時間毎(5分毎)に、30秒だけ撹拌をストッ
プさせ、コック80より試料を採取し、その中のトリク
ロロエチレンの濃度を測定する操作を行った。測定結果
は表3に示す通りである。
【0055】なお、硫酸第一鉄は、0分、10分、20
分後の試料採取後に等しく3分割して反応系に添加し
た。また、時間0分の濃度(15.9ppm)は、過酸
化水素水を添加する直前の試料のトリクロロエチレンの
濃度である。
【0056】
【表3】
【0057】表3に示したように、20分後にトリクロ
ロエチレンの濃度が23.9ppbとなり、環境基準値
である30ppbを下回っている。
【0058】次に、同様の試験を初期のトリクロロエチ
レンの濃度を146.5ppmにして実施したとき、表
4に示すような結果が得られた。
【0059】
【表4】
【0060】表4に示したように、30分後にトリクロ
ロエチレンの濃度が11.6ppbとなり、環境基準値
である30ppbを下回っている。
【0061】これらの実験を行う際に、水シールされた
容器に逃げるガス(酸素等)の量は多くはなく、反応の
後期30分以降にやや激しくガスが発生したことが確認
された。後者の実験(表4)において、50分以降にト
リクロロエチレンの濃度が高くなっているのは、一旦気
相に逃げていたものが液相に戻ったためと考えられる。
いずれの場合も、環境基準値である30ppbはクリア
している。
【0062】以上の結果から、鉄塩を添加した直後の5
分間に大きくトリクロロエチレン(TCE)の濃度が低
下していることが確認された。従って、汚染物の存在下
で過酸化水素水と鉄塩を機械的に撹拌して反応させるこ
とが望ましいと思われる。
【0063】なお、上記各実施の形態及び各実験におい
て用いたものは例であって、これに限定されるものでは
ない。
【0064】また、上記各実施の形態及び各実験におい
て用いた具体的な数値は例であって、これに限定される
ものではない。
【0065】また、上記各実施の形態及び各実験におい
ては、第一鉄塩を液体状にして地盤中に供給するように
したが、粉体状にして地盤中に供給するようにすること
も可能である。
【0066】
【発明の効果】以上の如く、本発明に係る汚染地盤の清
浄化方法によれば、先端付近に撹拌翼を有するロッドを
回転させつつ、汚染地盤中に貫入し、汚染地盤に過酸化
水素水と第一鉄塩を供給し、汚染地盤を撹拌翼によって
撹拌し、ロッドを引き抜く。そして、撹拌するときに、
過酸化水素水と第一鉄塩とが供給された汚染地盤が撹拌
され、汚染地盤と過酸化水素水と第一鉄塩とが混合され
るようにしたので、有機物等によって汚染された汚染地
盤を、迅速かつ効率的に清浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される撹拌機の一実施の形態の構
成例を示す図である。
【図2】本発明が適用される撹拌機の他の実施の形態の
構成例を示す図である。
【図3】本発明が適用される撹拌機のさらに他の実施の
形態の構成例を示す図である。
【図4】本発明が適用される撹拌機のさらに他の実施の
形態の構成例を示す図である。
【図5】本発明が適用される撹拌機のさらに他の実施の
形態の構成例を示す図である。
【図6】実験例1で用いる実験装置の構成を示す図であ
る。
【図7】実験例2で用いる実験装置の構成を示す図であ
る。
【符号の説明】 1,11,21 ロッド 6,7,8,14,15,16,22,23,24,3
3,34,35,47,48,49 撹拌翼 2 Y字管 3,43 スイベル 12 第1流路 13 第2流路 31,41 内管 32,42 外管ロッド 44 電磁弁(A) 45 電磁弁(B) 46 電磁弁(C) 51,71 容器 52 蓋 53,54,55,56,80 コック 57,77 チューブ 58,72 回転軸 59,75 軸封装置 60,61 配管 62 開口部 63,73 撹拌翼 64,74 モータ 76 活栓 79 分液ロート
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 千秋 由里 東京都千代田区九段北4丁目2番35号 ラ イト工業株式会社内 Fターム(参考) 2D040 AA00 AB05 AC00 BA08 BC03 CA01 CA10 CB03 CC05 CD03 CD06 CD09 DA02 DA03 DA17 DB07 EA18 2E191 BB01 4D004 AA41 AB06 AC07 CA15 CA34 CB27 CB42 CB45 CC11

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機物で汚染された地盤を清浄化する汚
    染地盤の清浄化方法であって、 先端付近に撹拌翼を有するロッドを回転させつつ、前記
    汚染地盤中に貫入する貫入工程と、 前記汚染地盤に過酸化水素水と第一鉄塩を供給する供給
    工程と、 前記汚染地盤を前記撹拌翼によって撹拌する撹拌工程
    と、 前記ロッドを引き抜く引き抜き工程と、 を備え、 前記撹拌工程においては、前記過酸化水素水と前記第一
    鉄塩とが供給された前記汚染地盤が撹拌され、前記汚染
    地盤と前記過酸化水素水と前記第一鉄塩とが混合される
    ことを特徴とする汚染地盤の清浄化方法。
  2. 【請求項2】 前記供給工程においては、前記過酸化水
    素水と前記第一鉄塩が前記ロッドに形成された別々の流
    路を通じて、かつ同時に前記汚染地盤に供給されること
    を特徴とする請求項1に記載の汚染地盤の清浄化方法。
  3. 【請求項3】 前記供給工程においては、前記過酸化水
    素水と前記第一鉄塩が、前記ロッドに形成された同一の
    流路を通じて、所定の時間間隔で交互に前記汚染地盤に
    供給されることを特徴とする請求項1に記載の汚染地盤
    の清浄化方法。
  4. 【請求項4】 前記供給工程においては、前記過酸化水
    素水と前記第一鉄塩が、前記ロッドに形成された流路に
    供給される直前に混合された後、該流路を通じて前記汚
    染地盤に供給されることを特徴とする請求項1に記載の
    汚染地盤の清浄化方法。
  5. 【請求項5】 前記供給工程においては、前記貫入工程
    において、前記ロッドが前記汚染地盤中に貫入されると
    き、前記過酸化水素水および前記第一鉄塩のうちの一方
    が前記ロッドに形成された流路を通じて、前記汚染地盤
    に供給され、前記引き抜き工程において、前記ロッドが
    引き抜かれるときに、前記過酸化水素水および前記第一
    鉄塩のうちの他方が前記ロッドに形成された流路を通じ
    て、前記汚染地盤に供給されることを特徴とする請求項
    1に記載の汚染地盤の清浄化方法。
  6. 【請求項6】 前記供給工程においては、前記過酸化水
    素水および前記第一鉄塩のうちの少なくとも一方は、前
    記汚染地盤の同一箇所に所定の時間間隔で2回以上供給
    されることを特徴とする請求項1に記載の汚染地盤の清
    浄化方法。
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