JP2001069973A - アルカリラッカーゼおよびその生産方法 - Google Patents

アルカリラッカーゼおよびその生産方法

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JP2001069973A
JP2001069973A JP25075199A JP25075199A JP2001069973A JP 2001069973 A JP2001069973 A JP 2001069973A JP 25075199 A JP25075199 A JP 25075199A JP 25075199 A JP25075199 A JP 25075199A JP 2001069973 A JP2001069973 A JP 2001069973A
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laccase
alkaline
alkaline laccase
filamentous fungus
oxidative
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JP25075199A
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Jun Ogawa
順 小川
Akira Shimizu
昌 清水
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Daiwa Kasei KK
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Daiwa Kasei KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルカリ側に至適pHを有し、かつアルカリ
側での安定性が極めて高いアルカリラッカーゼ、ならび
にその安価で大量な生産方法およびその生産菌を提供す
ること。 【解決手段】 以下の特性:(1)分子量:約62,0
00;(2)至適pH:約9.0;および(3)基質特
異性:リアクティブブルー2、アシッドブルー80、も
しくはダイレクトブルー53の酸化的脱色反応を強く触
媒する;リグニンの酸化的重合反応を強く触媒する;ま
たはカテコール、グアヤコール、ヒドロカフェイン酸も
しくは2,6−ジメトキシフェノールの4−アミノアン
チピリンとの酸化的カップリングによる発色反応を強く
触媒する;を、有するアルカリラッカーゼ。このアルカ
リラッカーゼを生産する糸状菌を培養する工程、およ
び、培養物よりこのアルカリラッカーゼを分離精製する
工程を包含する、方法。ならびに、このアルカリラッカ
ーゼを生産する、糸状菌。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルカリ側に至適
pHを有し、かつアルカリ側での安定性が極めて高いラ
ッカーゼ、ならびにこのようなアルカリラッカーゼを糸
状菌培養物から生産する方法およびアルカリラッカーゼ
を生産する糸状菌に関する。
【0002】
【従来の技術】ラッカーゼは、フェノールオキシダーゼ
またはポリフェノールオキシダーゼとも呼ばれる。ラッ
カーゼは、分子状酸素を用いて種々の基質の一電子酸化
を触媒する酵素であり、反応中間体としてのラジカル種
の生成に起因する多様な化学反応の触媒能力を有する。
【0003】この触媒能力は、発色、脱色、化学発光、
難分解性芳香族化合物の分解、ハロゲン化物の生成およ
び分解、フェノール化合物の重合および分解のような化
学現象に機能している。それゆえ、臨床分析、バイオセ
ンサー、パルプおよび繊維の漂白、ホルムアルデヒドを
含まない合成板の製造、フェノール樹脂の製造、人工漆
塗料の製造、接着剤の製造、有機化合物の合成、染色お
よび抜染、洗濯時の色移り防止、廃液中のフェノールお
よびアニリン系化合物の除去、毒性化合物の解毒、内分
泌撹乱物質の分解、ジュースの混濁防止、食品の苦渋味
の除去、家畜飼料の体内消化の促進、化石燃料の脱硫な
ど、多方面へのラッカーゼの幅広い応用が期待されてい
る。
【0004】例えば、毛髪の染色、洗濯時の色移り防
止、パルプ製造処理等におけるリグニン除去への用途が
意図される。特に、洗濯時の色移り防止には、アルカリ
側に至適pHを有するラッカーゼを使用することが望ま
しい。また、クラフトパルプ製造処理におけるリグニン
除去でも、アルカリ側に至適pHを有するラッカーゼを
使用することがコスト低減の点で重要とされる。以上の
ように、ラッカーゼの利用は、アルカリ側でなされるこ
とが多い。
【0005】従来から、種々の菌類に由来するラッカー
ゼが知られている。例えば、子嚢菌類のモノシリウム・
インディカム(G.D.Thakkerら、Appli
edMicrobiology and Biotec
hnology、Vol.37、321〜323(19
92))およびノイロスポラ・クラッサ(S.C.Fr
oehnerら、Journal of Bacter
iology、Vol.120、No.1、458〜4
65(1974))、不完全糸状菌類のボトリチス・シ
ネレア(N.Zouariら、Applied Bio
chemistry and Biotechnolo
gy、Vol.15、213〜225(1987))お
よびリゾクトニア・ソラニ(WO95/07988)に
由来するラッカーゼが知られている。この他、動物およ
び植物にもラッカーゼの存在が知られている。
【0006】しかしながら、現在公知のいずれのラッカ
ーゼも、酸性から中性の間に至適pHを有することか
ら、上記用途への実用化がほとんどなされていないのが
現状である。これまで、アルカリ側に至適pHを有する
ラッカーゼおよびこれを生産する菌類は知られていな
い。なお、ここでいう「アルカリ側」とは、pH9.0
以上の範囲を指す。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の
課題の解決を意図するものであり、その目的とするとこ
ろは、アルカリ側に至適pHを有し、かつアルカリ側で
の安定性が極めて高いアルカリラッカーゼ、その生産方
法および生産菌を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ミロセシ
ウム(Myrothecium)属に属する、新たに単
離した糸状菌から、新規なラッカーゼを見いだし、これ
に基いて本発明を完成した。
【0009】本発明のアルカリラッカーゼは、次の特性
を有する:(1)分子量:約62,000である;
(2)至適pH:約9.0;および(3)基質特異性:
リアクティブブルー2、アシッドブルー80、もしくは
ダイレクトブルー53の酸化的脱色反応を強く触媒す
る;リグニンの酸化的重合反応を強く触媒する;または
カテコール、グアヤコール、ヒドロカフェイン酸もしく
は2,6−ジメトキシフェノールの4−アミノアンチピ
リンとの酸化的カップリングによる発色反応を強く触媒
する。
【0010】本明細書中で「強く触媒する」とは、吸光
度測定による場合、レマゾールブリリアントブルーRま
たはフェノールを基質とする反応における活性より約3
倍、好ましくは約4倍、より好ましくは約5倍、さらに
より好ましくは約8倍、最も好ましくは約10倍以上高
い活性でその反応を触媒することをいう。
【0011】1つの実施態様では、上記アルカリラッカ
ーゼは、以下の特性:(4)作用適温の範囲:至適温度
は約70℃である;(5)熱安定性:pH9.0で60
分間保持した場合に、約50℃まで安定である;および
(6)安定pH範囲:30℃で17時間処理する場合に
おいて、pH8.0〜11.5;をさらに有する。上記
アルカリラッカーゼは、好ましくはミロセシウム属に属
する糸状菌、より好ましくはMyrothecium
verrucaria、最も好ましくはMyrothe
cium verrucaria 24G−4株(受託
番号:FERMP−17525)により生産される。
【0012】本発明のアルカリラッカーゼを生産する方
法は、以下の特性:(1)分子量:約62,000;
(2)至適pH:約9.0;および(3)基質特異性:
リアクティブブルー2、アシッドブルー80、もしくは
ダイレクトブルー53の酸化的脱色反応を強く触媒す
る;リグニンの酸化的重合反応を強く触媒する;または
カテコール、グアヤコール、ヒドロカフェイン酸もしく
は2,6−ジメトキシフェノールの4−アミノアンチピ
リンとの酸化的カップリングによる発色反応を強く触媒
する;を有するアルカリラッカーゼを生産する糸状菌を
培養する工程、および、培養物より該アルカリラッカー
ゼを分離精製する工程を包含する。
【0013】1つの実施態様では、上記アルカリラッカ
ーゼは、以下の特性:(4)作用適温の範囲:至適温度
は約70℃である;(5)熱安定性:pH9.0で60
分間保持した場合に、約50℃まで安定である;および
(6)安定pH範囲:30℃で17時間処理する場合に
おいて、pH8.0〜11.5;をさらに有する。上記
アルカリラッカーゼは、好ましくはミロセシウム属に属
する糸状菌、より好ましくはMyrothecium
verrucaria、最も好ましくはMyrothe
cium verrucaria 24G−4株(受託
番号:FERMP−17525)により生産される。
【0014】本発明の糸状菌は、以下の特性:(1)分
子量:約62,000;(2)至適pH:約9.0;お
よび(3)基質特異性:リアクティブブルー2、アシッ
ドブルー80、もしくはダイレクトブルー53の酸化的
脱色反応を強く触媒する;リグニンの酸化的重合反応を
強く触媒する;またはカテコール、グアヤコール、ヒド
ロカフェイン酸もしくは2,6−ジメトキシフェノール
の4−アミノアンチピリンとの酸化的カップリングによ
る発色反応を強く触媒する;を、有するアルカリラッカ
ーゼを生産する。
【0015】1つの実施態様では、上記アルカリラッカ
ーゼは、以下の特性:(4)作用適温の範囲:至適温度
は約70℃である;(5)熱安定性:pH9.0で60
分間保持した場合に、約50℃まで安定である;および
(6)安定pH範囲:30℃で17時間処理する場合に
おいて、pH8.0〜11.5;をさらに有する。上記
糸状菌は、好ましくはミロセシウム属に属し、より好ま
しくはMyrothecium verrucaria
であり、最も好ましくはMyrothecium ve
rrucaria 24G−4株(受託番号:FERM
P−17525)である。
【0016】このことによって上記目的が達成される。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】(1)アルカリラッカーゼ 本発明のアルカリラッカーゼは、以下の表1に示す種々
の特性を有する。
【0019】
【表1】
【0020】本明細書では、「酵素が安定である」と
は、ある処理をした場合に、酵素が、約40%以上、好
ましくは約50%以上、より好ましくは約60%以上の
相対残存活性を有することをいう。
【0021】上記特性を有するアルカリラッカーゼは、
これまで知られていない。
【0022】(2)アルカリラッカーゼの起源 本発明のアルカリラッカーゼは、糸状菌、好ましくはミ
ロセシウム属の糸状菌、より好ましくはMyrothe
cium verrucaria、最も好ましくは平成
11年8月20日に工業技術院生命工学工業技術研究所
(生命研と略称する)に寄託したMyrotheciu
m verrucaria 24G−4株(受託番号:
FERM P−17525)(以下、24G−4株と略
称する)により生産される。24G−4株は、発明者ら
が土壌、腐朽木片およびその他等からラッカーゼを生産
する菌類を広くスクリーニングした結果、新たに京都府
内の土壌から単離された新菌株である。
【0023】本発明のアルカリラッカーゼを生産する糸
状菌は、例えば、以下のようにして取得され得る。土
壌、腐朽木片、落ち葉、海水、淡水、海浜または河原で
見られる泡塊、底泥、活性汚泥、アルカリ性の工場廃液
などの試料を採取する。採取した試料を、生理食塩水ま
たは滅菌水とよく混合した後に静置し、上清液を得る。
上清液をアルカリ性の固形培地に接種し、28℃にて数日
間静置培養する。出現した微生物コロニーの上に、フェ
ノールおよび4−アミノアンチピリンを含む緩衝液をし
み込ませた濾紙を載せてしばらく放置する。その後、赤
色の発色スポットが検出されるコロニーを、アルカリラ
ッカーゼ生産菌として単離する。
【0024】単離されるアルカリラッカーゼ生産菌は、
当業者に周知の方法を用いて、生産するアルカリラッカ
ーゼについてさらに詳細に特徴付けられ得る。
【0025】本発明者らにより単離された24G−4株
の菌学的性質は以下の通りである。
【0026】(i)形態および培養 本発明のアルカリラッカーゼ生産菌である24G−4株
は、分生子座を形成すること、フィアロ型分生子を形成
すること、無隔壁の紡錘形の分生子を形成すること、な
らびに分生子は暗橄欖色〜黒緑色の粘塊となること、等
の菌学的性質を有することにより、Myrotheci
um属に分類される。さらに、種については分生子表面
にストライプの模様がないこと、一端に扇状の付属糸を
持つ紡錘形の分生子を形成すること、分生子の長さは1
0μm以下であること、フィアライドは円柱形であるこ
と、先端が球状の周縁菌糸を形成しないこと、ならびに
剛毛を形成しないこと、等の菌学的性質を有することに
より、本菌はMyrothecium verruca
ria(ミロセシウム・ベルキャリア)と同定される。
従って、Myrothecium verrucari
a 24G−4と命名された。
【0027】24G−4株のさらに詳細な菌学的性質
は、以下の通りである。
【0028】(ii)ポテト・グルコース寒天培地での
培養的・形態的性質 30℃で培養を開始後4日目において、コロニーの表面
および裏面は共に白色であり、直径10〜20mmに成
長し、気中菌糸は短く密でビロード状である。分生子形
成構造は、黒色〜暗緑色の分生子座に集まり、約2週間
で分生子の形成が観察される。
【0029】菌糸は滑面、薄壁で、隔壁がある。幅は、
1.5〜3μmである。
【0030】24G−4株の生育範囲は、ポテトグルコ
ース寒天培地(ポテトエキス粉末4g、ブドウ糖20g
および寒天20gを、1リットルの蒸留水中に溶解す
る)において、温度は4〜約40℃、pHは約2〜13
であり、生育好適温度は25〜35℃、生育好適pHは
5.0〜9.0である。特に好ましい生育条件は、温度
30℃でpHが7.0である。
【0031】(3)アルカリラッカーゼを生産させるた
めの培養条件 本発明のアルカリラッカーゼを生産する糸状菌を培養す
る条件を説明する。本発明の糸状菌は、液体培養または
固体培養のいずれでも、培養され得る。本発明の糸状菌
を培養する培地としては、特に限定されず、通常の液体
培地または固体培地が用いられ得る。炭素源の例として
は、本発明の糸状菌が同化し得るものなら何でもよく、
グルコース、ショ糖、糖蜜、澱粉等の糖類、ふすま、み
かんパルプなどが単独で、または組み合わせて用いられ
得る。窒素源の例としては、おから、ペプトン、酵母エ
キス、肉エキス、麦芽エキス、脱脂大豆粉、コーンステ
ィープリカー、尿素などの有機窒素源の他、硝酸カリウ
ム、硫酸アンモニウム等の無機窒素源も、単独で、また
は組み合わせて使用し得る。必要に応じて、リン酸塩、
硫酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、カリウム、カルシ
ウム、鉄、銅、亜鉛、マンガン、コバルト等の無機塩
類、ビタミン類等が添加され得る。これらの培地成分
は、本菌の生育を阻害しない濃度であればよく、炭素源
は0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、窒
素源は0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%で
ある。
【0032】培地のpHを、2.0から13.0、好ま
しくは、4.0〜10.0に調整し、滅菌して使用す
る。培養温度は、糸状菌類が生育し得る温度であればよ
く、実用上、10〜約40℃、好ましくは25〜35℃
である。本菌を液体培養する場合は、通気培養または振
盪培養が好ましい。培養時間は、種々の培養条件によっ
て異なるが、通気または振盪培養の場合は、通常2〜6
日間が好ましい。
【0033】(4)培養液からのアルカリラッカーゼの
分離精製 本菌の培養液からの本発明のアルカリラッカーゼを分離
精製するには、既知の精製法、例えば、透析、塩析、各
種カラムクロマトグラフィー、等電点沈殿、ゲル濾過が
単独もしくは併用して利用され得る。
【0034】本発明のアルカリラッカーゼは、菌体外に
分泌生産され、培養液中に蓄積される。従って、培養
後、菌体等の不溶物を遠心分離、濾紙または濾布などに
よる濾過等により除去し、アルカリラッカーゼを含む培
養液(粗酵素液)を回収し得る。得られた粗酵素液を脱
色、濃縮、塩析(例えば、硫安分画)、透析、各種クロ
マトグラフィー、ゲル濾過などの一般的に用いられる酵
素の精製方法により、アルカリラッカーゼが精製され得
る。例えば、上記で得られた粗酵素液を限外濾過、脱
色、硫安分画後、透析、各種クロマトグラフィーに順次
供試することにより、精製された高活性のアルカリラッ
カーゼを含有する画分が得られる。
【0035】(5)アルカリラッカーゼ活性の測定 本発明のアルカリラッカーゼの活性は、本発明のアルカ
リラッカーゼが触媒する、4−アミノアンチピリンと、
水素供与体との酸化縮合による発色反応で測定し得る。
【0036】水素供与体の例としては、フェノール系化
合物類(フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒ
ドロキノン、グアヤコール、ピロガロール、p−ヒドロ
キシ安息香酸、カフェイン酸、ヒドロカフェイン酸、o
−クレゾール,p−トルイジン、o−クロロフェノー
ル、m−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノー
ル、2,6−ジクロロフェノール、2,6−ジメトキシ
フェノール、n−プロピルガレート)、アニリン系化合
物類(N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホ
プロピル)−3−メチルアニリン、N,N−ジメチルア
ニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチル
−p−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミ
ン)、および複素環化合物(2,2’−アジノービス
(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)が挙
げられる。
【0037】4−アミノアンチピリンおよび任意の水素
供与体を含む、酸化縮合による発色反応系において、5
00nm(フェノール系化合物類および複素環化合物)
または555nm(アニリン系化合物類)における、酵
素添加後の吸光度の変化を測定することにより、アルカ
リラッカーゼの活性を測定し得る。例えば、0.4μm
olのフェノールおよび0.4μmolの4−アミノア
ンチピリンを含む105.3mMトリス塩酸緩衝液(p
H9.0)190μlを30℃にて、1分間プレインキ
ュベートした後、酵素液10μlを混合して、500n
mの吸光度の変化を測定し、1分間に吸光度を1増加さ
せる酵素活性を1単位(U;ユニット)とする。なお、
1単位は1分間の酸素消費量0.0375μmolに相
当する。
【0038】
【実施例】以下の実施例にて、本発明をさらに詳細に説
明するが、これは何ら、本発明を限定するものではな
い。
【0039】(実施例1) (アルカリラッカーゼ生産菌のスクリーニング)以下の
表2に示す組成のプレート培養用スクリーニング培地を
用いて、アルカリラッカーゼを菌体外に生産する好アル
カリ性微生物のスクリーニングを行った。
【0040】
【表2】
【0041】詳細には、日本各地から採集した土壌また
は腐朽木片1gを滅菌水5mlを含有する34ml容試
験管に入れ、よく混合し、しばらく静置した。その後、
上澄液0.2mlを採取し、上記培地に塗り広げ、28
℃で、数日間静置培養した。出現した微生物コロニーの
上に、1ml中に2μmolのフェノールおよび2μm
olの4−アミノアンチピリンを含む100mMトリス
塩酸緩衝液(pH10.0)を滲み込ませた濾紙を載せ
た。しばらく放置した後、赤色の発色スポットが検出さ
れたコロニーを、アルカリラッカーゼ生産菌と判断し
て、常法に従って単離し、いくつかのアルカリラッカー
ゼ生産菌株を得た。
【0042】以下の表3に示す組成を有する液体培養用
スクリーニング培地5mlを含有する34ml容試験管
に、単離した菌株の一白金耳を接種し、28℃で数日
間、往復振盪培養(300往復/分)した。
【0043】
【表3】
【0044】培養後、培養液を濾別して得られた、各単
離菌株の培養濾液について、アルカリラッカーゼ活性を
調べた。すなわち、0.4μmolのフェノールおよび
0.4μmolの4−アミノアンチピリンを含む、10
0mMトリス塩酸緩衝液(pH10.0またはpH8.
5)120μlを30℃にて1分間プレインキュベート
した後、培養濾液を80μlを混合して500nmの吸
光度の変化を測定した。1分間に吸光度を1増加させる
酵素活性を1単位(U;ユニット)とした。
【0045】スクリーニングの結果を図1に示す。な
お、1単位は、1分間の酸素消費量0.0375μmo
lに相当する。図1は、縦軸に菌株を、横軸にラッカー
ゼ活性(U/l)を示す。斜線の棒はpH10.0で
の、白棒はpH8.5での測定の結果を示す。
【0046】図1から、24G−4株(Myrothe
cium verrucaria24G−4株に相当)
が、他の菌株(MP−1、Rc−60A、Rc−72
b、Rc−96、Rc−113、Rc−114、Rd−
20a、Rd−20b、Rd−23、および32−RS
8)と比較して著しく多量のアルカリラッカーゼを生産
することがわかる。
【0047】(Myrothecium verruc
arin 24G−4の培養)以下の表4に示す組成の
液体培養用培地5mlを含有する34ml容試験管に2
4G−4株の一白金耳を接種し、28℃で4日間、往復
振盪培養(300往復/分)した。次いで、この培養液
全量を、500mlの上記培地を含む2l容坂口フラス
コに植菌し、28℃で4日間往復振盪培養(150往復
/分)した。
【0048】
【表4】
【0049】(実施例2) (アルカリラッカーゼの精製)上記実施例1で得られた
24G−4株の培養液を遠心分離により固液分離後、上
清を濾紙で濾過し、回収した濾液を粗酵素液とした。
【0050】この粗酵素液を限外濾過により、濃縮後、
20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)に対して透析
し、透析内液を得た。
【0051】上記透析内液を、上記緩衝液で平衡化した
MonoQ HR 10/10カラム(1.0×10c
m;Pharmacia社製)に供試した。上記カラム
を同緩衝液で洗浄後、同緩衝液に塩化ナトリウム濃度を
0Mから1Mへの濃度勾配をかけた溶出により、上記カ
ラムに吸着されたアルカリラッカーゼを溶出し、分画回
収した。
【0052】得られた各画分の一部をアルカリラッカー
ゼ活性の測定に供試し、活性を有する画分を合わせ、次
いで20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)に対して
透析し、透析内液を得た。
【0053】上記透析内液を、上記緩衝液で平衡化した
セファクリルS−200 HRカラム(1.5×90c
m;Pharmacia社製)に供試し、活性を有する
画分を合わせて、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.
5)に対して透析し、透析内液を得た。
【0054】上記透析内液を、上記緩衝液で平衡化した
MonoQ HR 5/5カラム(0.5×5cm;P
harmacia社製)に供試した。上記カラムを同緩
衝液で洗浄後、同緩衝液に塩化ナトリウム濃度を0Mか
ら1Mへの濃度勾配をかけた溶出により、さらに分画精
製されたアルカリラッカーゼ精製液を得た。
【0055】上記の各精製工程におけるアルカリラッカ
ーゼの全活性およびタンパク質当たりの比活性を表5に
示す。
【0056】
【表5】
【0057】(実施例3) (アルカリラッカーゼの分子量)SDSポリアクリルア
ミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)法(Laemm
li,U.K.、Nature、227、680(19
70))で本発明のアルカリラッカーゼの分子量を測定
した。
【0058】上記実施例2で得られたアルカリラッカー
ゼ精製液および分子量マーカーとして既知の6種のタン
パク質(分子量約97,400、66,300、42,
400、30,000、および20,100)を同時に
泳動した。泳動終了後、クーマシーブリリアントブルー
で染色し、アルカリラッカーゼと各分子量マーカーとの
相対泳動距離より、アルカリラッカーゼの分子量を測定
した。結果を図2に示す。
【0059】左側のレーンは、本発明のアルカリラッカ
ーゼ、右側のレーンは、同時に泳動した各分子量マーカ
ーである。右外側の数値は分子量マーカーの分子量サイ
ズ(kDa)を表す。本SDS−PAGEにより、アル
カリラッカーゼは、単一バンドを示した。このことか
ら、実施例2で精製されたアルカリラッカーゼが実質的
に純粋であることが確認された。アルカリラッカーゼの
SDS−PAGEにおける分子量は、約62,000で
ある。
【0060】(実施例4) (アルカリラッカーゼの作用適温範囲および熱安定性) (1)作用適温の範囲 上記実施例2で得られたアルカリラッカーゼ精製液の活
性を、種々の温度条件(25、30、40、50、6
0、70、および80℃)下で測定した。詳細には、ガ
ラスセル内で、0.4μmolのフェノールおよび0.
4μmolの4−アミノアンチピリンを含む、105.
3mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)190μlを3
0℃にて5分間プレインキュベートした後、アルカリラ
ッカーゼ精製液10μlを混合した。混合液の500n
mの吸光度の変化を分光光度計にて測定し、1分間に吸
光度を1増加させる量を1単位(U;ユニット)とし
て、酵素活性を調べた。
【0061】比較のため、コリオラス・ベルシカラー由
来のラッカーゼおよびトラメテス属Ha1株由来のラッ
カーゼについても、トリス塩酸緩衝液の代わりに10
5.3mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)に置き
換えて、同様に調べた。
【0062】結果を図3に示す。図中の横軸は反応温度
(℃)を表し、縦軸は最大活性値を100とした場合の
相対活性(%)を表す。図中の黒四角はアルカリラッカ
ーゼを、黒菱形はコリオラス・ベルシカラー由来のラッ
カーゼ(天野製薬(株)製)を、そして白丸はトラメテ
ス属Ha1株由来のラッカーゼ(大和化成(株)製)
を、それぞれ示す。
【0063】アルカリラッカーゼの至適温度は、約70
℃であり、相対活性の変化は他の2つのラッカーゼより
も大きい。
【0064】(2)熱安定性 上記実施例2で得られたアルカリラッカーゼ精製液を、
種々の温度条件(30、40、50、60、70、およ
び80℃)下にてトリス塩酸緩衝液(pH8.5)中で
60分間インキュベートして前処理をした後、上記実施
例4(1)に記載されるのと同じ発色反応系において活
性を測定した。
【0065】比較のため、コリオラス・ベルシカラー由
来のラッカーゼおよびトラメテス属Ha1株由来のラッ
カーゼについても、同様に調べた。
【0066】結果を図4に示す。図中の横軸は処理温度
(℃)を表し、縦軸は最大活性値を100とした場合の
相対残存活性(%)を表す。図中の黒四角はアルカリラ
ッカーゼを、黒菱形はコリオラス・ベルシカラー由来の
ラッカーゼを、そして白丸はトラメテス属Ha1株由来
のラッカーゼを、それぞれ示す。
【0067】本ラッカーゼは、処理温度条件が50℃の
場合においても酵素活性の75%以上が保持され、安定
である。
【0068】(実施例5) (本ラッカーゼの至適pHおよび安定pH範囲) (1)至適pH 上記実施例4(1)の105.3mMトリス塩酸緩衝液
(pH9.0)の代わりに、pH領域に応じて、10
5.3mM酢酸ナトリウム塩酸緩衝液、105.3mM
酢酸緩衝液、105.3mMリン酸カリウム緩衝液、1
05.3mMトリス塩酸緩衝液または105.3mMグ
リシン水酸化ナトリウム緩衝液を用いて、pHを3.0
〜11.5(pH3.0、4.0、および4.2には、
105.3mM酢酸ナトリウム塩酸緩衝液;pH4.
2、4.6、5.0、および5.5には105.3mM
酢酸緩衝液;pH5.6、6.3、6.6、7.0、
7.8、および8.2には105.3mMリン酸カリウ
ム緩衝液;pH8.0、8.2、8.8、9.2、およ
び9.4には105.3mMトリス塩酸緩衝液;ならび
にpH9.0、9.4、10.2、10.8、11.
0、および11.5には105.3mMグリシン水酸化
ナトリウム緩衝液)に調整し、上記実施例2で得られた
アルカリラッカーゼ精製液の活性を測定した。
【0069】結果を図5に示す。図中の横軸は反応pH
を表し、縦軸は最大活性値を100とした場合の相対活
性(%)を表す。白丸は終濃度100mM酢酸ナトリウ
ム塩酸緩衝液(AcONa−HCl)を、黒菱形は終濃
度100mM酢酸緩衝液(AcONa−AcOH)を、
半分白い四角は終濃度100mMリン酸カリウム緩衝液
(KPB)を、白三角は終濃度100mMトリス塩酸緩
衝液を、そして逆黒三角は終濃度100mMグリシン水
酸化ナトリウム緩衝液(グリシンNaOH)を用いて行
った測定の結果を示す。
【0070】アルカリラッカーゼの至適pHは、約9.
0である。
【0071】(2)安定pH範囲 実施例2で得られたアルカリラッカーゼ精製液のpHを
5.0〜11.5(pH5.0、5.2および6.0:
酢酸緩衝液;pH7.8および8.2:リン酸カリウム
緩衝液;pH8.5および9.3:トリス塩酸緩衝液;
ならびにpH10.0、10.8、および11.5:グ
リシン水酸化ナトリウム緩衝液をそれぞれ使用;pH処
理液における緩衝液の終濃度はいずれも100mM)に
調整し、30℃で1時間または17時間インキュベート
してpH処理液を得た。次いで、各pH処理液10μl
に0.4μmolのフェノールおよび0.4μmolの
4−アミノアンチピリンを含む105.3mMトリス塩
酸緩衝液(pH9.0)190μlを添加して混合し
た。混合液の500nmの吸光度の変化を分光光度計に
て測定し、1分間に吸光度を1増加させる量を1単位
(U;ユニット)として、相対残存酵素活性を調べた。
【0072】比較のため、コリオラス・ベルシカラー由
来のラッカーゼおよびトラメテス属Ha1株由来のラッ
カーゼについても、活性測定に使用する緩衝液を10
5.3mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)に置き
換えて、同様に調べた。
【0073】結果を図6(A)および(B)に示す。図
6(A)は、30℃にて1時間処理した場合の結果を示
し、そして図6(B)は、30℃にて17時間処理した
場合の結果を示す。図中の横軸は処理pHを表し、縦軸
は、最大活性値を100とした場合の相対残存活性
(%)を表す。図中の黒四角はアルカリラッカーゼを、
黒菱形はコリオラス・ベルシカラー由来のラッカーゼ
を、そして白丸はトラメテス属Ha1株由来のラッカー
ゼを、それぞれ示す。
【0074】アルカリラッカーゼの安定pH範囲は、3
0℃にて1時間処理した場合において、5.0〜11.
5、30℃にて17時間処理した場合において8.0〜
11.5である。本発明のアルカリラッカーゼは、他の
2種のラッカーゼと比較して、アルカリ条件(特に、p
H9.0以上)での安定性に優れている。
【0075】(実施例6) (アルカリラッカーゼの基質特異性:脱色活性)上記
実施例2で精製されたアルカリラッカーゼの基質特異性
(脱色活性)は、アルカリラッカーゼの作用により生じ
た種々の基質の化学的変化を、各基質を含む緩衝液の吸
光度の変化を測定することにより調べた。基質として
は、13種類の市販の色素(レマゾールブリリアントブ
ルーR、リアクティブブルー2、リアクティブブルー
5、アシッドブルー80、:リアクティブブルー2、ア
シッドブルー80、もしくはダイレクトブルー53、ア
シッドオレンジ、ポリR478、ポリS119、アシッ
ドバイオレット17、フェノールレッド、ナチュラルオ
レンジ6、アズールB、およびアシッドレッド52)、
ならびにリグニンを用いた。各基質についての測定波長
を、表6に示す。
【0076】
【表6】
【0077】詳細には、96穴のマイクロプレートのウ
ェル内で反応開始時、表6に記した終濃度となるよう調
整した基質を含む100mMトリス塩酸緩衝液(pH
9.5)にて、本ラッカーゼの脱色活性を、マイクロプ
レート分光光度計にて測定し、1分間に吸光度を1増加
させる量を1単位(U;ユニット)として、脱色活性を
調べた。すなわち、基質を含む111.1mMトリス塩
酸緩衝液(pH9.5)180μLを30℃にて、5分
間プレインキュベートした後、酵素液20μlを混合し
て、吸光度の変化を測定した。
【0078】比較のために、トラメテス属Hal株由来
ラッカーゼおよびコリオラス・ベルシカラー由来ラッカ
ーゼについても、上記の緩衝液を111.1mM酢酸ナ
トリウム緩衝液(pH4.0)に置き換えて、同様に調
べた。
【0079】レマゾールブリリアントブルーRを基質と
した場合の測定値を100とした、各基質についての相
対値(%)を表7に示す。なお、括弧内の数値はレマゾ
ールブリリアントブルーRに対する比活性(U/mg)
である。
【0080】
【表7】
【0081】本発明のアルカリラッカーゼは、アルカリ
条件下でアントラキノン系色素、アゾ系色素、およびポ
リマー色素の酸化的脱色反応、リグニンの酸化的重合反
応を触媒した。アントラキノン系色素では、特に、リア
クティブブルー2およびアシッドブルー80の酸化的脱
色反応を強く触媒した。アゾ系色素では、特に、ダイレ
クトブルー53の酸化的脱色反応を強く触媒した。ま
た、アルカリラッカーゼは、比較のために用いた酸性ラ
ッカーゼ(トラメテス属Hal株由来ラッカーゼおよび
コリオラス・ベルシカラー由来ラッカーゼ)とは、リア
クティブブルー5、ダイレクトブルー53、ポリマー色
素、フェノールレッドおよびアシッドレッド52に対す
る特異性が大きく異なる。
【0082】(実施例7) (アルカリラッカーゼの基質特異性:発色活性)上記
実施例2で精製されたアルカリラッカーゼの基質特異性
(発色活性)は、本発明のアルカリラッカーゼが触媒す
る、基質(水素供与体)と4−アミノアンチピリンとの
酸化縮合による発色反応で測定する。基質としては、フ
ェノール系化合物類(フェノール、カテコール、レゾル
シノール、ヒドロキノン、グアヤコール、ピロガロー
ル、p−ヒドロキシ安息香酸、カフェイン酸、ヒドロカ
フェイン酸、o−クレゾール,p−トルイジン、o−ク
ロロフェノール、m−クロロフェノール、2,4−ジク
ロロフェノール、2,6−ジクロロフェノール、2,6
−ジメトキシフェノール、n−プロピルガレート)、ア
ニリン系化合物類(N−エチル−N−(2−ヒドロキシ
−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン、N,N
−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,
N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、p−フェニレ
ンジアミン)、または、複素環化合物(2,2’−アジ
ノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン
酸)を用いた。そして、反応後の500nm(フェノー
ル系化合物類または複素環化合物)または555nm
(アニリン系化合物類)における吸光度を測定した。
【0083】詳細には、96穴のマイクロプレートのウ
ェル内で、0.4μmolの基質および0.4μmol
の4−アミノアンチピリンを含む、105.3mMトリ
ス塩酸緩衝液(pH9.5)190μlを、30℃にて
5分間プレインキュベートした。次いで、アルカリラッ
カーゼ精製液10μlを混合し、500nmまたは55
5nmの吸光度の変化をマイクロプレート分光光度計に
て測定し、発色活性を調べた。1分間に吸光度を1増加
させる量を1単位(U;ユニット)とした。
【0084】比較のために、トラメテス属Hal株由来
ラッカーゼおよびコリオラス・ベルシカラー由来ラッカ
ーゼについても、上記緩衝液を105.3mM酢酸ナト
リウム緩衝液(pH4.0)に置き換えて、同様に調べ
た。
【0085】フェノールを基質とした場合の測定値を1
00とした、各基質についての相対値(%)を表8に示
す。なお、括弧内の数値はフェノールに対する比活性
(U/mg)である。
【0086】
【表8】
【0087】本発明のアルカリラッカーゼは、アルカリ
条件下で種々のフェノール系化合物類およびアニリン系
化合物類の4−アミノアンチピリンとの酸化的カップリ
ングによる発色反応を触媒した。フェノール系化合物類
においては特に、カテコール、レゾルシノール、ヒドロ
キノン、グアヤコール、ピロガロール、カフェイン酸、
ヒドロカフェイン酸、o−クレゾール、p−トルイジ
ン、または2,6−ジメトキシフェノールとの発色反応
が強く触媒され、この中でも特にカテコール、グアヤコ
ール、ヒドロカフェイン酸または2,6−ジメトキシフ
ェノールとの発色反応が強く触媒された。アニリン系化
合物類においては特に、N,N−ジメチル−p−フェニ
レンジアミンおよびp−フェニレンジアミンの4−アミ
ノアンチピリンとの酸化的カップリングによる発色反応
が強く触媒された。また、本発明のアルカリラッカーゼ
は、他の酸性ラッカーゼとは、グアヤコール、ピロガロ
ール、o−クレゾール、および2,6−ジメトキシフェ
ノールに対する特異性が異なる。
【0088】(実施例8) (ビリルビンオキシターゼとの比較:N末端アミノ酸
配列)上記実施例2で得られた精製されたアルカリラッ
カーゼのN末端アミノ酸配列について、パルス液相法プ
ロテインシーケンサー(476A型;PERKINEL
MER社製)を用い、自動化エドマン分解法にて、調べ
た。その結果を図7および配列番号1に示す。
【0089】上記の方法にて、N末端アミノ酸残基から
数えて、17残基数のN末端アミノ酸配列がわかった。
比較として、ミロセシウム・ベルキャリアMT−1株の
ビリルビンオキシダーゼのN末端アミノ酸配列を、図7
および配列番号2にあわせて記載した。
【0090】本発明のアルカリラッカーゼは、ビリルビ
ンオキシダーゼとN末端アミノ酸配列において、17残
基中2残基が異なる。
【0091】(実施例9) (ビリルビンオキシダーゼとの比較:基質特異性) (1)各基質に対する酸素消費量 上記実施例2で精製された、アルカリラッカーゼの基質
特異性を、ビリルビンまたはN,N−ジメチル−p−フ
ェニレンジアミンを基質として供試し、これらの基質の
酸化に伴う酸素消費量を、酸素電極により電気信号に変
換する酸素電極法を用いて測定することにより調べた。
【0092】詳細には、0.5μmolのビリルビンま
たは8.0μmolのN,N−ジメチル−p−フェニレ
ンジアミンを含む、150.6mMリン酸緩衝液(pH
8.0)2490μlを、30℃で、10分間、空気で
平衡化した。次いで、酵素液10μlを添加することに
より反応を開始し、クラーク型酸素電極で酸素消費量を
測定した。比較のために、ミロセシウム・ベルキャリア
MT−1株由来のビリルビンオキシダーゼについても、
同様に調べた。ビリルビンを基質とした場合の測定値を
1とした、相対値を表9に示す。
【0093】
【表9】
【0094】酸素消費量は、N,N−ジメチル−p−フ
ェニレンジアミンでは、アルカリラッカーゼの方が、M
T−1ビリルビンオキシダーゼよりも1.5倍酸素消費
量が多いことが示された。
【0095】(2)吸光度変化 上記実施例2で精製されたアルカリラッカーゼの基質特
異性を、ビリルビン、N,N−ジメチル−p−フェニレ
ンジアミンまたはフェノールを基質として供試した。こ
こで、ビリルビン、N,N−ジメチル−p−フェニレン
ジアミンについては、これらの基質の酸化によって生じ
る化学構造上の変化を各基質の極大吸収波長における吸
光度の変化として測定することにより調べ、フェノール
については、フェノールと4−アミノアンチピリンとの
酸化縮合により生じたキノンイミン色素をキノンイミン
色素の極大吸収波長における吸光度の変化として測定す
ることにより調べた。
【0096】詳細には、0.125μmolのビリルビ
ンあるいは2μmolのN,N−ジメチル−p−フェニ
レンジアミンを含む150.6mMリン酸緩衝液(pH
8.0)622.5μlを、30℃で、5分間、プレイ
ンキュベートした。次いで、酵素液2.5μlを混合
し、450nm(ビリルビン)の吸光度における減少、
または550nm(N,N−ジメチル−p−フェニレン
ジアミン)の吸光度における増加を測定する。あるい
は、フェノールを基質とする場合は、6.25μmol
のフェノールおよび6.25μmolの4−アミノアン
チピリンを含む150.6mMリン酸緩衝液(pH8.
0)622.5μlを30℃で、5分間、プレインキュ
ベートする。次いで、酵素液2.5μlを混合し、50
0nmの吸光度の変化を測定する。
【0097】本実施例において活性度はビリルビンを基
質にした場合については、1分間に吸光度を1減少させ
る量を、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミンを
基質にした場合については、1分間に吸光度を1増加さ
せる量を、そしてフェノールを基質にした場合について
は、1分間に吸光度を1増加させる量を1単位(U;ユ
ニット)とした。
【0098】比較のために、ミロセシウム・ベルキャリ
アMT−1株由来のビリルビンオキシダーゼについても
同様に調べた。ビリルビンを基質とした場合の測定値を
1とした、相対値を表10に示す。
【0099】
【表10】
【0100】本発明のアルカリラッカーゼは、N,N−
ジメチル−p−フェニレンジアミンまたはフェノールに
対する活性度が、ビリルビンオキシダーゼより約10倍
以上高く、ビリルビンオキシダーゼとは基質特異性が異
なる。
【0101】
【発明の効果】本発明によれば、アルカリ側に至適pH
を有する新規ラッカーゼであるアルカリラッカーゼ、な
らびにその生産方法および生産菌が提供される。本発明
のアルカリラッカーゼは、従来のラッカーゼに比べてア
ルカリ側に至適pHを有し、かつアルカリ側での安定性
が極めて高いので、洗剤および染毛剤の製造、パルプ製
造処理工程等に有用である。本発明のアルカリラッカー
ゼは、糸状菌の培養によって生産されるため、安価に大
量にアルカリラッカーゼを提供することができ、試薬ま
たは工業用途に広く利用され得る。
【0102】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> DAIWA KASEI K.K. <120> Alkaline laccase and production method thereof <130> J199120479 <140> <141> <160> 2 <170> PatentIn Ver. 2.0 <210> 1 <211> 17 <212> PRT <213> Myrothecium verrucaria <400> 1 Ala Pro Gln Ile Ser Pro Gln Tyr Pro Met Phe Thr Val Pro Leu Pro 1 5 10 15 Ile <210> 2 <211> 17 <212> PRT <213> Myrothecium verrucaria <400> 2 Val Ala Gln Ile Ser Pro Gln Tyr Pro Met Phe Thr Val Pro Leu Pro 1 5 10 15 Ile
【図面の簡単な説明】
【図1】スクリーニングにより得られた各種菌株の菌体
外ラッカーゼ活性を示すグラフである。
【図2】本発明のアルカリラッカーゼのSDSポリアク
リルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)による泳
動パターンを示す、ゲル電気泳動写真である。
【図3】25〜80℃の範囲で本発明のアルカリラッカ
ーゼ活性を測定した場合の相対活性を示す。
【図4】本発明のアルカリラッカーゼを、30〜80℃
の条件下、60分インキュベーション後に測定した相対
残存活性を示す。
【図5】pH3.0〜11.5の範囲で本発明のアルカ
リラッカーゼ活性を測定した場合の相対活性を示す。
【図6】本発明のアルカリラッカーゼを、pH5.0〜
11.5の条件下、30℃で(A)1時間、および
(B)17時間インキュベーションした後に測定した相
対残存活性を示す。
【図7】本発明のアルカリラッカーゼおよびミロセシウ
ム・ベルキャリアMT−1株のビリルビンオキシダーゼ
のN末端アミノ酸配列の17アミノ酸残基を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12R 1:645) Fターム(参考) 4B050 CC01 DD03 FF11E FF12E LL01 LL02 LL10 4B065 AA58X CA28 CA41 CA44 CA46 CA57 CA60

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の特性: (1)分子量:約62,000; (2)至適pH:約9.0;および (3)基質特異性:リアクティブブルー2、アシッドブ
    ルー80もしくはダイレクトブルー53の酸化的脱色反
    応を強く触媒する;リグニンの酸化的重合反応を強く触
    媒する;またはカテコール、グアヤコール、ヒドロカフ
    ェイン酸もしくは2,6−ジメトキシフェノールの4−
    アミノアンチピリンとの酸化的カップリングによる発色
    反応を強く触媒する;を、有するアルカリラッカーゼ。
  2. 【請求項2】 以下の特性: (4)作用適温の範囲:至適温度は約70℃である; (5)熱安定性:pH9.0で60分間保持した場合
    に、約50℃まで安定である;および (6)安定pH範囲:30℃で17時間処理する場合に
    おいて、pH8.0〜11.5;をさらに有する、請求
    項1に記載のアルカリラッカーゼ。
  3. 【請求項3】 ミロセシウム(Myrotheciu
    m)属に属する糸状菌が生産する、請求項1または2に
    記載のアルカリラッカーゼ。
  4. 【請求項4】 Myrothecium verruc
    ariaが生産する、請求項3に記載のアルカリラッカ
    ーゼ。
  5. 【請求項5】 Myrothecium verruc
    aria 24G−4株(受託番号:FERM P−1
    7525)が生産する、請求項4に記載のアルカリラッ
    カーゼ。
  6. 【請求項6】 以下の特性: (1)分子量:約62,000; (2)至適pH:約9.0;および (3)基質特異性:リアクティブブルー2、アシッドブ
    ルー80もしくはダイレクトブルー53の酸化的脱色反
    応を強く触媒する;リグニンの酸化的重合反応を強く触
    媒する;またはカテコール、グアヤコール、ヒドロカフ
    ェイン酸もしくは2,6−ジメトキシフェノールの4−
    アミノアンチピリンとの酸化的カップリングによる発色
    反応を強く触媒する;を有するアルカリラッカーゼを生
    産する方法であって、該アルカリラッカーゼを生産する
    糸状菌を培養する工程、および、培養物より該アルカリ
    ラッカーゼを分離精製する工程を包含する、方法。
  7. 【請求項7】 前記アルカリラッカーゼが、以下の特
    性: (4)作用適温の範囲:至適温度は約70℃である; (5)熱安定性:pH9.0で60分間保持した場合
    に、約50℃まで安定である;および (6)安定pH範囲:30℃で17時間処理する場合に
    おいて、pH8.0〜11.5;をさらに有する、請求
    項6に記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記糸状菌が、ミロセシウム属に属す
    る、請求項6または7に記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記糸状菌が、Myrothecium
    verrucariaである、請求項8に記載の方
    法。
  10. 【請求項10】 前記糸状菌が、Myrotheciu
    m verrucaria 24G−4株(受託番号:
    FERM P−17525)である、請求項9に記載の
    方法。
  11. 【請求項11】 以下の特性: (1)分子量:約62,000; (2)至適pH:約9.0;および (3)基質特異性:リアクティブブルー2、アシッドブ
    ルー80もしくはダイレクトブルー53の酸化的脱色反
    応を強く触媒する;リグニンの酸化的重合反応を強く触
    媒する;またはカテコール、グアヤコール、ヒドロカフ
    ェイン酸もしくは2,6−ジメトキシフェノールの4−
    アミノアンチピリンとの酸化的カップリングによる発色
    反応を強く触媒する;を、有するアルカリラッカーゼを
    生産する、糸状菌。
  12. 【請求項12】 前記アルカリラッカーゼが、以下の特
    性: (4)作用適温の範囲:至適温度は約70℃である; (5)熱安定性:pH9.0で60分間保持した場合
    に、約50℃まで安定である;および (6)安定pH範囲:30℃で17時間処理する場合に
    おいて、pH8.0〜11.5;をさらに有する、請求
    項11に記載の糸状菌。
  13. 【請求項13】 ミロセシウム属に属する、請求項11
    または12に記載の糸状菌。
  14. 【請求項14】 前記糸状菌が、Myrotheciu
    m verrucariaである、請求項13に記載の
    糸状菌。
  15. 【請求項15】 Myrothecium verru
    caria 24G−4株(受託番号:FERM P−
    17525)である、請求項14に記載の糸状菌。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN107828667A (zh) * 2017-11-27 2018-03-23 吉林农业大学 一种疣孢漆斑菌突变株t2901及其应用
CN110699395A (zh) * 2019-11-05 2020-01-17 常熟浸大科技有限公司 一种漆酶催化制备聚苯胺的方法
CN113388660A (zh) * 2021-06-29 2021-09-14 白银赛诺动物保健技术有限公司 一种快速筛选漆酶产生菌的液体显色方法
WO2022270589A1 (ja) * 2021-06-23 2022-12-29 天野エンザイム株式会社 ラッカーゼ

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