JP2001065615A - ドラムブレーキ装置のシュー駆動機構 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ブレーキの高い効きと安定性を確保すること
ができ、しかも、電動式又は液圧式又は手動式の各種の
操作力発生手段と組み合わせることができるドラムブレ
ーキ装置のシュー駆動機構を得る。 【解決手段】 ブレーキシュー３、４をドラムに押圧す
るドラムブレーキ装置のシュー駆動機構７を、プライマ
リ・シュー用のアンカピン１１に回動可能に嵌合装着さ
れる基板２５、２６に、セカンダリ・シュー４用のアン
カピン１２と、第１及び第２のレバー支持ピン２８、３
０と、第１及び第２のレバー支持ピン２８、３０によっ
て揺動可能に支持されて先端側外周がプライマリ・シュ
ー３の一端に当接させられるバランスレバー３２と、操
作力発生手段６から入力したシュー操作力をバランスレ
バー３２及びセカンダリ・シュー４に伝達する入力レバ
ー３４とを組み付けた組立体として構成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ブレーキシューの
ドラムへの押圧力をアンカ反力に応じて制御して、高い
効きと安定性を確保することができ、しかも、操作力発
生手段の電動化にも適すると同時に、組立性の向上を図
ることのできるドラムブレーキ装置のシュー駆動機構に
関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、車両の走行を制動するために種々
の形式のドラムブレーキ装置が用いられているが、これ
らのドラムブレーキ装置は、略円筒状のドラムの内周面
に押圧されるブレーキシューの配置によって、リーディ
ングトレーリング式やツーリーディング式、若しくはデ
ュオサーボ式等に分類される。

【０００３】デュオサーボ式のドラムブレーキ装置は、
一般に、円筒状のドラム内に、互いに対向して配置され
たプライマリ・シューとセカンダリ・シューの一対のブ
レーキシューを備える。プライマリ・シューは、ドラム
の前進回転方向入口側が入力部とされると共に、ドラム
の前進回転方向出口側が例えばアジャスタを介してセカ
ンダリ・シューの入口側に連結される。一方、セカンダ
リ・シューの出口側はバッキングプレート上に装備され
たアンカー部に当接され、プライマリ・シュー及びセカ
ンダリ・シューに作用するアンカー反力をアンカー部で
受け止めるようになっている。

【０００４】これにより、プライマリ・シュー及びセカ
ンダリ・シューを拡開させてドラムの内周面に押し付け
ると、プライマリ・シューに作用するアンカー反力がセ
カンダリ・シューの入口側に入力してセカンダリ・シュ
ーをドラム内周面に押し付けるように作用するため、プ
ライマリ・シュー及びセカンダリ・シューの双方がリー
ディング・シューとして動作し、非常にゲインの高い制
動力を得ることができる。

【０００５】前述したデュオサーボ式ドラムブレーキ装
置は、リーディングトレーリング式やツーリーディング
式のドラムブレーキ装置と比較して、極めて高い制動力
を得ることができるばかりでなく、小型化し易く、かつ
駐車ブレーキの組み込みも容易である等の多くの長所を
有している。ところが、このようなデュオサーボ式ドラ
ムブレーキ装置は、ブレーキシューのライニングの摩擦
係数の変化に敏感であるため、制動力を安定させにくい
傾向にあり、制動力を安定化させる工夫が要求されてい
る。

【０００６】このような背景から、本願出願人は、一対
のブレーキシューを拡開操作する液圧式のホイールシリ
ンダに液圧制御用のバルブを組み込み、ホイールシリン
ダへの液圧供給をアンカ反力に応じて制御することで制
動力を安定させるシュー駆動機構を既に提案している。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】しかし、最近の車両の
ブレーキ装置は、アンチロックブレーキシステムの装備
や、トラクションコントロールシステムの装備など、ブ
レーキ機能のインテリジェント化が活発に行われてい
る。また、環境汚染の軽減等の観点から、電気自動車
（ＥＶ車）やハイブリッド車の開発も活発になってい
る。そして、このようなブレーキ機能のインテリジェン
ト化や電気自動車等への対応のため、ブレーキ装置の電
動化が重要課題とされている。

【０００８】そして、ブレーキ装置の電動化では、例え
ば、従来の液圧式のホイールシリンダの代わりに、電動
モータ等を利用した電動式の操作力発生手段を採用す
る。その場合には、液圧式のホイールシリンダへの液圧
供給を液圧制御用のバルブによりアンカ反力に応じた値
に制御するという前述のシュー駆動機構を利用できなく
なり、新たに、電動式の操作力発生手段に適合するシュ
ー駆動機構の開発が必要となり、デュオサーボ式ドラム
ブレーキ装置における電動化の新たな課題とされてい
た。

【０００９】そのため、電動式の操作力発生手段に適合
するシュー駆動機構としては、操作力発生手段の出力を
一対のブレーキシューに伝達するリンク機構が提案され
ているが、従来のリンク機構によるものは、部品点数が
多く、更に、構成部品を一つ一つ一対のブレーキシュー
間に組み付けて行かねばならないために、組立作業性が
悪いという問題もあった。

【００１０】本発明は上記事情に鑑みて成されたもの
で、ブレーキシューのドラムへの押圧力をアンカ反力に
応じて制御して、ブレーキの高い効きと安定性を確保す
ることができ、しかも、組み合わせる操作力発生手段は
電動式あるいは液圧式のアクチュエータ、あるいは手動
式リンク機構の何れでも可能で汎用性が高く、更には、
構成する部品点数が比較的に少なくて済むと同時に、予
めユニットとして組み立てた後に、そのユニットを一対
のブレーキシュー間に組み付けることで、組立作業性の
向上を図ることができるドラムブレーキ装置のシュー駆
動機構を提供することを目的とする。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明に係るドラムブレーキ装置のシュー駆動機構
は、ドラム内空間に対向配置したプライマリ・シュー及
びセカンダリ・シューに操作力発生手段の発生するシュ
ー操作力を伝達して各ブレーキシューをドラムに押圧す
ると共に、アンカピンに作用するアンカ反力に応じて各
ブレーキシューのドラムへの押圧力を制御するドラムブ
レーキ装置のシュー駆動機構において、プライマリ・シ
ュー用のアンカピンに回動可能に嵌合装着される基板
と、この基板上のプライマリ・シュー用のアンカピンの
挿通位置からドラムの周方向に適宜距離離間した位置に
立設されたセカンダリ・シュー用のアンカピンと、基板
上のプライマリ・シュー用のアンカピンの挿通位置から
ドラムの径方向内側に離間した位置に立設された第１の
レバー支持ピンと、基板上の第１のレバー支持ピンとプ
ライマリ・シュー用のアンカピンの挿通位置との中間の
位置に立設された第２のレバー支持ピンと、基端が第１
のレバー支持ピンに回動自在に嵌合支持されると共に先
端側には第２のレバー支持ピンが挿通して第１のレバー
支持ピン周りの揺動範囲を規制する揺動規制孔が貫通形
成され、且つ、先端側外周がプライマリ・シューの一端
に当接させられるバランスレバーと、バランスレバー及
びセカンダリ・シューに当接され操作力発生手段から入
力したシュー操作力をバランスレバー及びセカンダリ・
シューに伝達する入力レバーとを具備し、制動時にセカ
ンダリ・シュー用のアンカピン及び入力レバーを介して
作用するアンカ反力に応じた基板及び各レバーの挙動に
よって、各ブレーキシューに働く押圧力を制限すること
を特徴とする。

【００１２】また、本発明に係るドラムブレーキ装置の
シュー駆動機構は、基板に、セカンダリ・シュー用のア
ンカピン、第１のレバー支持ピン、第２のレバー支持ピ
ン、バランスレバー、入力レバーを組み付けた組立体と
した後に、基板をプライマリ・シュー用のアンカピンに
嵌合装着してドラムブレーキのバッキングプレートへ組
み付けることを特徴とすることもできる。

【００１３】そして、上記構成によれば操作力発生手段
からシュー駆動機構の入力レバーにシュー操作力が入力
すると、入力レバーは、入力伝達部によってバランスレ
バーを押圧すると共に、シュー当接部によってセカンダ
リ・シューをドラムの内周面に向かって押圧するように
揺動する。入力レバーの揺動挙動によって入力レバーか
らバランスレバーに作用する押圧力は、バランスレバー
を第１のレバー支持ピンを回転支点としてプライマリ・
シュー側に揺動させ、プライマリ・シューをドラムの内
周面に向かって押し出す。そして、バランスレバーの第
１のレバー支持ピンを回転支点としたプライマリ・シュ
ー側への揺動は、第２のレバー支持ピンが揺動規制孔の
一端に当接することで終了し、その後は、バランスレバ
ーと基板とが一体にプライマリ・シュー用のアンカピン
を中心に揺動して、プライマリ・シューをドラムの内周
面に押圧する。

【００１４】入力レバーの揺動挙動によって入力レバー
からセカンダリ・シューに作用する押圧力は、セカンダ
リ・シューをドラムの内周面側に変位させ、セカンダリ
・シューをドラムの内周面に押圧する。以上のように、
操作力発生手段からシュー駆動機構の入力レバーにシュ
ー操作力が入力し、入力レバーの揺動により各ブレーキ
シューがドラムの内周面に押圧されることで制動力が発
生する。

【００１５】制動力が発生している状態では、セカンダ
リ・シューのアンカ反力が基板に立設されたセカンダリ
・シュー用のアンカピンに作用していて、このセカンダ
リ・シュー用のアンカピンに作用するアンカ反力が、シ
ュー操作力によって基板に作用している回転モーメント
とは逆向きの回転モーメントを基板に作用させる。その
ため、シュー操作力に対してアンカ反力が所定倍率に達
すると、シュー操作力によって基板に作用している回転
モーメントと、アンカ反力によって基板に作用している
回転モーメントがつり合い状態になる。そして、シュー
操作力に対してアンカ反力が所定倍率を越えると、アン
カ反力によって基板に作用している回転モーメントがシ
ュー操作力によって基板に作用している回転モーメント
に打ち勝ち、基板がプライマリ・シュー用のアンカピン
を回転支点としてセカンダリ・シュー側に揺動する。こ
の基板のセカンダリ・シュー側への揺動が、第１及び第
２のレバー支持ピンによって係止しているバランスレバ
ーを介して入力レバーを押し戻し、シュー操作力の作用
を減ずる方向の制動制限力を入力レバーに作用させる。

【００１６】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係るドラムブレー
キ装置のシュー駆動機構の好適な実施の形態を図面に基
づいて詳細に説明する。図１乃至図４は本発明に係るド
ラムブレーキ装置のシュー駆動機構の第１の実施の形態
を示したもので、図１は本発明に係るシュー駆動機構を
使用したドラムブレーキ装置の斜視図、図２はドラムブ
レーキ装置の正面図、図３はシュー駆動機構の上部基板
を取り除いた状態の拡大図、図４はシュー駆動機構の組
立状態の外観図で、（ａ）は正面図、（ｂ）は側面図、
（ｃ）は裏面図である。

【００１７】この実施形態のドラムブレーキ装置は、所
謂、デュオサーボ式ドラムブレーキ装置で、略円筒形の
図示せぬドラム内の空間に対向配備されるプライマリ・
シュー３及びセカンダリ・シュー４の一対のブレーキシ
ュー３、４と、これらブレーキシュー３、４の一方の対
向端側に配設されて各ブレーキシュー３、４をドラムに
押圧するシュー操作力を発生する操作力発生手段６と、
この操作力発生手段６の発生する操作力を各ブレーキシ
ュー３、４に伝達するシュー駆動機構７と、各ブレーキ
シュー３、４の他方の対向端間に配設されプライマリ・
シュー３の出力をセカンダリ・シュー４に入力するリン
ク機能を兼ねたアジャスタ８と、これらの構成部材を支
持するバッキングプレート９と、バッキングプレート９
上に立設されて各ブレーキシュー３、４からのアンカ反
力を受けるアンカピン１１、１２とを備えている。な
お、図示せぬドラムは、バッキングプレート９と同心
で、車両の前進時には図１の矢印Ｒ方向に回転する。

【００１８】以上のブレーキシュー３、４は、ドラムの
内周に向かって移動可能に、シュー支持軸１４によりバ
ッキングプレート９に取り付けられている。ブレーキシ
ュー３、４は操作力発生手段６側の端部が、シュースプ
リング１５、１６を介してアンカピン１１に連結され、
それぞれのシューの端部が互いに接近する方向（即ち、
ドラムから離間する方向）に付勢されている。また、各
ブレーキシュー３、４はアジャスタ８側の端部相互が、
アジャスタスプリング１３の付勢力によって、アジャス
タ８の端部に当接した状態が維持されるように付勢され
ている。

【００１９】本実施の形態の場合、操作力発生手段６
は、ブレーキ操作に応じて、基端が図１の矢印（イ）方
向に引かれると、それに伴う揺動により先端側が矢印
（ロ）方向に変位する揺動レバーである。アジャスタ８
は、本来は、各ブレーキシュー３、４のライニング３
ｃ、４ｃの摩耗の進行に応じて、これらのブレーキシュ
ー３、４の端部間の間隔を調整するもので、アジャスタ
スプリング１３の付勢力によって先端がアジャスタ８上
の調整用歯車８ａに当接されたアジャスタレバー１７の
回動動作で、ブレーキシュー３、４の端部間の間隔を自
動調整するように構成されている。

【００２０】アジャスタレバー１７には、後述するプラ
イマリ・シュー用のアンカピン１１からセカンダリ・シ
ュー４上に取り付けられたケーブルガイド１８を経由す
るアジャスタケーブル１９の端部が連結されている。こ
のアジャスタケーブル１９は、セカンダリ・シュー４の
拡開時の移動量に応じてアジャスタレバー１７に回動力
を作用させて、アジャスタレバー１７に所定の回動動作
をさせる。

【００２１】一対のアンカピン１１、１２相互は、図示
のように、ドラムの径方向外周寄りの位置に、互いに周
方向に離間して配置されている。一方のアンカピン１１
はプライマリ・シュー用であり、他方のアンカピン１２
はセカンダリ・シュー用である。

【００２２】この第１の実施の形態のシュー駆動機構７
は、図４に示すように、プライマリ・シュー用のアンカ
ピン１１に回動可能に嵌合装着される上下一対の基板２
５、２６と、この基板２５、２６上のプライマリ・シュ
ー用のアンカピン１１の挿通位置からドラムの周方向に
適宜距離離間した位置に立設されたセカンダリ・シュー
用のアンカピン１２と、基板２５、２６上のプライマリ
・シュー用のアンカピン１１の挿通位置からドラムの径
方向内側に離間した位置に立設された第１のレバー支持
ピン２８と、基板２５、２６上の第１のレバー支持ピン
２８とプライマリ・シュー用のアンカピン１１の挿通位
置との中間の位置に立設された第２のレバー支持ピン３
０と、一対の基板２５、２６間に組み込まれたバランス
レバー３２及び入力レバー３４とで構成されている。

【００２３】一対の基板２５、２６は、バランスレバー
３２及び入力レバー３４を挟んで対向した状態に、アン
カピン１２及び第１及び第２のレバー支持ピン２８、３
０により結合される。各基板２５、２６には、プライマ
リ・シュー用のアンカピン１１と回転自在に嵌合する嵌
合孔２５ａ、２６ａが貫通形成されている。セカンダリ
・シュー用のアンカピン１２、第１及び第２のレバー支
持ピン２８、３０は、何れも、上部基板２５に当接する
拡径した頭部１２ａ、２８ａ、３０ａと、上下基板２
５、２６を挿通する軸部１２ｂ、２８ｂ、３０ｂとを有
した構成で、軸部１２ｂ、２８ｂ、３０ｂには、下部基
板２６からの抜け止めをする止め輪３６がそれぞれ装着
されて組立状態とされる。

【００２４】バランスレバー３２は、基端が第１のレバ
ー支持ピン２８に回動自在に嵌合支持されると共に、先
端側には第２のレバー支持ピン３０が挿通して第１のレ
バー支持ピン２８周りの揺動範囲を規制する揺動規制孔
３２ａが貫通形成され、且つ、先端側外周がプライマリ
・シュー３の一端に当接されている。揺動規制孔３２ａ
は、図３に示すように、バランスレバー３２が第１のレ
バー支持ピン２８を中心に回動できるように、ドラムの
周方向に細長い長孔である。

【００２５】入力レバー３４は、図３に示すように、バ
ランスレバー３２の中間部に当接する入力伝達部３４ａ
と、操作力発生手段６からシュー操作力を受ける入力受
け部３４ｂと、セカンダリ・シュー４の一端に当接する
シュー当接部３４ｃとを備えて、操作力発生手段６から
入力したシュー操作力をバランスレバー３２及びセカン
ダリ・シュー４に伝達する。入力伝達部３４ａは、入力
レバー３４の揺動時に円滑にバランスレバー３２に操作
力を伝達できるように、バランスレバー３２の中間部に
滑らかな曲面で凹凸嵌合している。入力受け部３４ｂ
は、操作力発生手段６の端部が係合する凹部である。ま
た、シュー当接部３４ｃは、入力レバー３４の揺動時に
円滑にセカンダリ・シュー４に操作力を伝達できるよう
に、滑らかな突曲面とされている。

【００２６】以上のシュー駆動機構７は、基板２５、２
６間にバランスレバー３２と入力レバー３４を挟んだ状
態で、基板２５、２６にセカンダリ・シュー用のアンカ
ピン１２、第１及び第２のレバー支持ピン２８、３０を
組み付け、各ピンを止め輪３６により抜け止めして組立
体とした後に、基板２５、２６をプライマリ・シュー用
のアンカピン１１に嵌合装着することで、ドラムブレー
キのバッキングプレート９への組み付けがなされてい
る。

【００２７】以上のシュー駆動機構７では、非制動時に
は、バランスレバー３２は図３に示すように、揺動規制
孔３２ａと第２のレバー支持ピン３０との位置関係が、
入力レバー３４側に隙間を空けた状態で、第１のレバー
支持ピン２８を支点としてプライマリ・シュー３側に揺
動可能になっている。そして、操作力発生手段６からシ
ュー駆動機構７の入力レバー３４にシュー操作力が入力
すると、入力レバー３４は、シュー当接部３４ｃ又は入
力伝達部３４ａを回転支点とする揺動を開始しようとし
て、入力伝達部３４ａによってバランスレバー３２の中
間部を押圧すると共に、シュー当接部３４ｃによってセ
カンダリ・シュー４をドラムの内周面に向かって押圧す
る。入力レバー３４の揺動挙動によって入力レバー３４
からバランスレバー３２の中間部に作用する押圧力は、
バランスレバー３２を第１のレバー支持ピン２８を回転
支点としてプライマリ・シュー３側に揺動させ、プライ
マリ・シュー３をドラムの内周面に向かって押し出す。

【００２８】そして、バランスレバー３２の第１のレバ
ー支持ピン２８を回転支点としたプライマリ・シュー３
側への揺動は、第２のレバー支持ピン３０が揺動規制孔
３２ａの一端に当接すること（当初の隙間がなくなるこ
と）で終了し、その後は、バランスレバー３２と基板２
５、２６とが一体にプライマリ・シュー用のアンカピン
１１を中心に揺動して、プライマリ・シュー３をドラム
の内周面に押圧する。入力レバー３４の揺動挙動によっ
て入力レバー３４からセカンダリ・シュー４に作用する
押圧力は、セカンダリ・シュー４をドラムの内周面側に
変位させ、セカンダリ・シュー４をドラムの内周面に押
圧する。以上のように、操作力発生手段６からシュー駆
動機構７の入力レバー３４にシュー操作力が入力し、入
力レバー３４の揺動により各ブレーキシュー３、４がド
ラムの内周面に押圧されることで制動力が発生する。

【００２９】制動力が発生している状態では、セカンダ
リ・シュー４のアンカ反力が基板２５、２６に立設され
たセカンダリ・シュー用のアンカピン１２に作用してい
て、このアンカピン１２に作用するアンカ反力は、シュ
ー操作力によって基板２５、２６に作用している回転モ
ーメントＭ１とは逆向きの回転モーメントＭ２を基板２
５、２６に作用させる。そのため、シュー操作力に対し
てアンカ反力が所定倍率に達すると、シュー操作力によ
って基板２５、２６に作用している回転モーメントＭ１
と、アンカ反力によって基板２５、２６に作用している
回転モーメントＭ２がつり合い状態になる。

【００３０】そして、シュー操作力に対してアンカ反力
が所定倍率を越えると、アンカ反力によって基板２５、
２６に作用している回転モーメントＭ２がシュー操作力
によって基板２５、２６に作用している回転モーメント
Ｍ１に打ち勝ち、基板２５、２６がプライマリ・シュー
用のアンカピン１１を回転支点として反時計回りに回転
してセカンダリ・シュー４側に揺動する。この基板２
５、２６のセカンダリ・シュー４側への揺動が、第１及
び第２のレバー支持ピン２８、３０によって係止してい
るバランスレバー３２を介して入力レバー３４を押し戻
して、シュー操作力の作用を減ずる方向の制動制限力を
入力レバー３４に作用させるため、各ブレーキシュー
３、４のドラムへの押圧力をアンカ反力に応じて制御し
て、制動力の高い効きと安定性との双方を確保すること
ができる。

【００３１】また、シュー操作力とアンカ反力とのつり
合い位置は、アンカピン１１、１２相互の離間寸法Ｌ
１、アンカピン１１と第１のレバー支持ピン２８との離
間寸法Ｌ２、バランスレバー３２上の入力作用位置（入
力伝達部３４ａの当接位置）から回転支点までの離間距
離Ｌ３、入力レバー３４上の入力伝達部３４ａとシュー
当接部３４ｃとの離間距離Ｌ４などの寸法を適宜に変更
することで、所望の値に自由に設定変更することがで
き、アンカ反力の制御が容易にできる。

【００３２】しかも、本発明のシュー駆動機構７は、操
作力発生手段６と各ブレーキシュー３、４との間に配置
されて制動力の制御をメカ的に行うため、操作力発生手
段６としては、従来の油圧式ホイールシリンダ等の液圧
式のアクチュエータだけでなく、電動モータ等の電動式
のアクチュエータや、駐車ブレーキ等に利用される手動
式の操作力発生手段６にも適合するため汎用性が高く、
ブレーキ機能のインテリジェント化や車両のハイブリッ
ド化等のための電動化にも好適である。

【００３３】更には、シュー駆動機構７は、基板２５、
２６と、セカンダリ・シュー４用のアンカピン１２と、
第１及び第２のレバー支持ピン２８、３０と、バランス
レバー３２と、入力レバー３４とで構成されており、構
成する部品点数が比較的に少なくて済むと同時に、予め
図４に示したようにユニットとして組み立てた後に、そ
のユニットを一対のブレーキシュー間に組み付ける構成
のため、構成部材を一つ一つ順に一対のブレーキシュー
間に組み付ける従来のものと比較すると、組立作業性の
向上を図ることができる。従って、デュオサーボ式のド
ラムブレーキ装置等に利用することで、ブレーキの高い
効きと安定性を確保すると同時に、優れた汎用性により
電動化が容易で、また、組立作業性の向上により、ブレ
ーキ装置の製造コストの低減を図ることができる。

【００３４】図５乃至図７は本発明に係るドラムブレー
キ装置のシュー駆動機構の第２の実施の形態を示したも
ので、図５は本発明に係るシュー駆動機構を使用したド
ラムブレーキ装置の斜視図、図６はドラムブレーキ装置
の正面図、図７はシュー駆動機構の上部基板を取り除い
た状態の拡大図である。この第２の実施の形態のドラム
ブレーキ装置は、シュー操作力を発生する操作力発生手
段として、液圧式アクチュエータ４１を使用すると共
に、それに対応して液圧式アクチュエータ４１の出力を
各ブレーキシュー３、４に伝達するシュー駆動機構４３
に改良を施したもので、以上の点を除く構成は、第１の
実施の形態に示したものと共通である。共通な構成は、
同番号を付して説明を省略する。

【００３５】液圧式アクチュエータ４１は、ブレーキ操
作に応じて液圧がシリンダ４１ａ内の液室４１ｂに供給
されると、その液圧によって変位するピストン４１ｃか
らロッド４１ｄを介してシュー駆動機構４３の入力レバ
ー３４に、シュー操作力を出力する。

【００３６】本実施の形態のシュー駆動機構４３は、入
力レバー３４の入力受け部３４ｂを液圧式アクチュエー
タ４１のロッド４１ｄの端部が係合する切欠としてい
る。また、本実施の形態のシュー駆動機構４３におい
て、入力レバー３４の入力伝達部３４ａから入力するシ
ュー操作力をプライマリ・シュー３に伝達するバランス
レバー３２は、第１の実施の形態と同様に基板２５、２
６に立設した第１及び第２のレバー支持ピン２８、３０
によって支持するが、バランスレバー３２の組付けが容
易になるように、第２のレバー支持ピン３０に係合する
揺動規制孔３２ａを、切欠孔にしている。

【００３７】シュー駆動機構４３は、前述した入力伝達
部３４ａの形状と揺動規制孔３２ａの形状以外の構成
は、第１の実施の形態に示したシュー駆動機構７と共通
であり、共通な点は、同番号を付して説明を省略する。
なお、本実施の形態の場合、アンカ反力を制御するため
に設定される各アンカピン１１、１２等との間の離間寸
法Ｌ１、Ｌ２、Ｌ３、Ｌ４等は、第１の実施の形態と同
様である。このように、操作力発生手段として液圧式ア
クチュエータ４１を用いた構成の場合でも、シュー駆動
機構４３は、基本的には構成に変更が必要なく、第１の
実施の形態の場合と同様の作用・効果を得ることができ
る。

【００３８】図８及び図９は本発明に係るドラムブレー
キ装置のシュー駆動機構の第３の実施の形態を示したも
ので、図８は本発明に係るシュー駆動機構を使用したド
ラムブレーキ装置の正面図、図９はシュー駆動機構の上
部基板を取り除いた状態の拡大図である。

【００３９】この第３の実施の形態のドラムブレーキ装
置は、シュー操作力を発生する操作力発生手段として、
第２の実施の形態の場合と同様に、液圧式アクチュエー
タ４５を使用したものである。この液圧式アクチュエー
タ４５は、ブレーキ操作に応じて液圧がシリンダ４５ａ
内の液室４５ｂに供給されると、その液圧によって変位
するピストン４５ｃからロッド４５ｄを介してシュー駆
動機構４７の入力レバー３４に、シュー操作力を出力す
るもので、第２の実施の形態の液圧式アクチュエータ４
１と比較すると、ロッド４５ｄの端部形状を改良してい
る。このロッド４５ｄの端部形状は、第２の実施の形態
の場合と比較して、寸法の大きな平坦面に設定されてい
る。

【００４０】そして、この第３の実施の形態の場合、ロ
ッド４５ｄが当接するシュー駆動機構４７の入力レバー
３４は、第２の実施の形態のものと比較すると、入力受
け部３４ｂに、ロッド４５ｄの端部に滑らかに接触する
凸曲面を形成した構造となっている。ロッド４５ｄとの
接触性を向上させるために、入力受け部３４ｂに凸曲面
を形成した点を除くと、この第３の実施の形態のシュー
駆動機構４７は、第１の実施の形態におけるシュー駆動
機構７と略同一の構成である。この第３実施の形態の構
成でも、第１及び第２の実施の形態と同様の作用効果を
得ることができる。

【００４１】なお、以上の各実施の形態では、シュー駆
動機構は、上下一対の基板２５、２６間にバランスレバ
ー３２、入力レバー３４を収容した構成としたが、第１
及び第２のレバー支持ピン２８、３０と基板２５との結
合強度等、必要な機械的強度が得られるなら、基板はい
ずれか一方としてもよい。また、操作力発生手段６とし
ては、第１の実施の形態で示した機械的なレバー部材
や、第２及び第３実施の形態で示した液圧式のアクチュ
エータを利用でき、更には、電動モータ等の電動式のア
クチュエータを利用することもできる。

【００４２】

【発明の効果】本発明のドラムブレーキ装置のシュー駆
動機構によれば、操作力発生手段からシュー駆動機構の
入力レバーにシュー操作力が入力すると、入力レバー
は、シュー当接部又は入力伝達部を回転支点とする揺動
を開始しようとして、入力伝達部によってバランスレバ
ーの中間部を押圧すると共に、シュー当接部によってセ
カンダリ・シューをドラムの内周面に向かって押圧す
る。そして、この入力レバーのシュー操作力による揺動
によって、各ブレーキシューがドラムの内周面に押圧さ
れることで制動力が発生する。

【００４３】そして、制動力が発生している状態では、
セカンダリ・シューのアンカ反力が基板に立設されたセ
カンダリ・シュー用のアンカピンに作用していて、この
セカンダリ・シュー用のアンカピンに作用するアンカ反
力は、シュー操作力によって基板に作用している回転モ
ーメントとは逆向きの回転モーメントを基板に作用させ
る。そのため、シュー操作力に対してアンカ反力が所定
倍率に達すると、シュー操作力によって基板に作用して
いる回転モーメントと、アンカ反力によって基板に作用
している回転モーメントがつり合い状態になる。そし
て、シュー操作力に対してアンカ反力が所定倍率を越え
ると、アンカ反力によって基板に作用している回転モー
メントがシュー操作力によって基板に作用している回転
モーメントに打ち勝ち、基板がプライマリ・シュー用の
アンカピンを回転支点としてセカンダリ・シュー側に揺
動する。この基板のセカンダリ・シュー側への揺動が、
第１及び第２のレバー支持ピンによって係止しているバ
ランスレバーを介して入力レバーを押し戻して、シュー
操作力の作用を減ずる方向の制動制限力を入力レバーに
作用させるため、各ブレーキシューのドラムへの押圧力
をアンカ反力に応じて制御して、制動力の高い効きと安
定性との双方を確保することができる。

【００４４】しかも、本発明のシュー駆動機構は、操作
力発生手段と各ブレーキシューとの間に配置されて制動
力の制御をメカ的に行うため、操作力発生手段として
は、従来の油圧式ホイールシリンダ等の液圧式のアクチ
ュエータだけでなく、電動モータ等の電動式のアクチュ
エータや、駐車ブレーキ等に利用される手動式の操作力
発生手段にも適合するため汎用性が高く、ブレーキ機能
のインテリジェント化や車両のハイブリッド化等のため
の電動化にも好適である。

【００４５】更には、シュー駆動機構は、基板と、セカ
ンダリ・シュー用のアンカピンと、第１及び第２のレバ
ー支持ピンと、バランスレバーと、入力レバーとで構成
されており、構成する部品点数が比較的に少なくて済む
と同時に、予めユニットとして組み立てた後に、そのユ
ニットを一対のブレーキシュー間に組み付ける構成のた
め、構成部材を一つ一つ順に一対のブレーキシュー間に
組み付ける従来のものと比較すると、組立作業性の向上
を図ることができる。従って、デュオサーボ式のドラム
ブレーキ装置等に利用することで、ブレーキの高い効き
と安定性を確保すると同時に、優れた汎用性により電動
化が容易で、また、組立作業性の向上により、ブレーキ
装置の製造コストの低減を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るシュー駆動機構を使用したドラム
ブレーキ装置の第１の実施の形態の斜視図である。

【図２】図１に示したドラムブレーキ装置の正面図であ
る。

【図３】図２に示したシュー駆動機構の上部基板を取り
除いた状態の拡大図である。

【図４】図２に示したシュー駆動機構の組立状態の外観
図で、（ａ）は正面図、（ｂ）は側面図、（ｃ）は裏面
図である。

【図５】本発明に係るシュー駆動機構を使用したドラム
ブレーキ装置の第２の実施の形態の斜視図である。

【図６】図５に示したドラムブレーキ装置の正面図であ
る。

【図７】図６に示したシュー駆動機構の上部基板を取り
除いた状態の拡大図である。

【図８】本発明に係るシュー駆動機構を使用したドラム
ブレーキ装置の第３の実施の形態の正面図である。

【図９】図８に示したシュー駆動機構の上部基板を取り
除いた状態の拡大図である。

【符号の説明】

３ プライマリ・シュー（ブレーキシュー） ４ セカンダリ・シュー（ブレーキシュー） ６ 操作力発生手段 ７ シュー駆動機構 ９ バッキングプレート １１、１２ アンカピン ２５、２６ 基板 ２８ 第１のレバー支持ピン ３０ 第２のレバー支持ピン ３２ バランスレバー ３２ａ 揺動規制孔 ３４ 入力レバー ３４ａ 入力伝達部 ３４ｂ 入力受け部 ３４ｃ シュー当接部 ３６ 止め輪 ４１ 液圧式アクチュエータ ４３ シュー駆動機構 ４５ 液圧式アクチュエータ ４７ シュー駆動機構

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ドラム内空間に対向配置したプライマリ
   ・シュー及びセカンダリ・シューに操作力発生手段の発
   生するシュー操作力を伝達して各ブレーキシューをドラ
   ムに押圧すると共に、アンカピンに作用するアンカ反力
   に応じて各ブレーキシューのドラムへの押圧力を制御す
   るドラムブレーキ装置のシュー駆動機構において、 プライマリ・シュー用のアンカピンに回動可能に嵌合装
   着される基板と、この基板上の前記プライマリ・シュー
   用のアンカピンの挿通位置からドラムの周方向に適宜距
   離離間した位置に立設されたセカンダリ・シュー用のア
   ンカピンと、前記基板上の前記プライマリ・シュー用の
   アンカピンの挿通位置からドラムの径方向内側に離間し
   た位置に立設された第１のレバー支持ピンと、前記基板
   上の第１のレバー支持ピンと前記プライマリ・シュー用
   のアンカピンの挿通位置との中間の位置に立設された第
   ２のレバー支持ピンと、基端が前記第１のレバー支持ピ
   ンに回動自在に嵌合支持されると共に先端側には前記第
   ２のレバー支持ピンが挿通して前記第１のレバー支持ピ
   ン周りの揺動範囲を規制する揺動規制孔が貫通形成さ
   れ、且つ、先端側外周が前記プライマリ・シューの一端
   に当接させられるバランスレバーと、前記バランスレバ
   ー及び前記セカンダリ・シューに当接され前記操作力発
   生手段から入力したシュー操作力を前記バランスレバー
   及び前記セカンダリ・シューに伝達する入力レバーとを
   具備し、 制動時にセカンダリ・シュー用のアンカピン及び入力レ
   バーを介して作用するアンカ反力に応じた前記基板及び
   各レバーの挙動によって、各ブレーキシューに働く押圧
   力を制限することを特徴とするドラムブレーキ装置のシ
   ュー駆動機構。
2. 【請求項２】 前記基板に、前記セカンダリ・シュー
   用のアンカピン、第１のレバー支持ピン、第２のレバー
   支持ピン、バランスレバー、入力レバーを組み付けた組
   立体とした後に、前記基板を前記プライマリ・シュー用
   のアンカピンに嵌合装着してドラムブレーキのバッキン
   グプレートへ組み付けることを特徴とする請求項１記載
   のドラムブレーキ装置のシュー駆動機構。