JP2001053392A - 偏波無依存型半導体光増幅器 - Google Patents
偏波無依存型半導体光増幅器Info
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Abstract
の利得差をなくすことと、飽和光出力を増大させること
を両立する。 【解決手段】 偏波無依存型半導体光増幅器を構成する
伸張歪を導入したバルク結晶からなる歪バルク活性層3
の層厚を20nm〜90nmとし、歪量を−0.10%
〜−0.60%とする。
Description
体光増幅器に関するものであり、特に、波長多重(WD
M:Wavelength Division Multiplexing)通信方式に用
いる小型且つ低消費電力でファイバ結合飽和光出力の大
きな偏波無依存型半導体光増幅器に関する。
波長の異なる複数の信号光を多重化して一本の光ファイ
バで同時に伝達させる波長多重通信システムの開発が進
んでいる。この波長多重通信システムにおいては、合
波、分波のために数多くの光部品が使用されるため、各
光部品の損失によって光信号が減衰することになる。
が使用されるが、従来の光ファイバシステムの場合と比
較して非常に数多くの光増幅器が必要とされるため、光
増幅器には小型で低消費電力動作が可能であることが要
求される。
光増幅器には、入力信号光の偏波状態がランダムなため
利得の偏波依存性が小さいこと、入力信号光のパワーレ
ベルの変動が大きいため広い入力ダイナミックレンジを
もつようにファイバ結合飽和光出力が大きいこと、等が
要求される。
光増幅器(SOA:SemiconductorOptical Amplifier)
は、小型且つ低消費電力であり、また、偏波無依存とな
るように設計できるので、波長多重通信システムに用い
る損失補償用光増幅器として期待されている。
いられる波長帯の1.55μm帯に対応した偏波無依存
型半導体光増幅器が開発されているので、以下において
説明する。
あり、ファイバ間利得とは、入力側光ファイバと出力側
光ファイバとの間にレンズ等の光結合用光学系を介して
光増幅器を設けたシステムにおける、入力側光ファイバ
の出射端面と出力側光ファイバの入射端面間における光
学系による損失を考慮したシステム全体としての利得で
ある。
が3dB低下するときの素子端面光出力であり、また、
ファイバ結合飽和光出力とは、ファイバ間利得が3dB
低下するときのファイバ結合光出力である。
ては、AlcatelのP.Dussiere等によって、厚さ430n
m、幅500nmのバルク活性層を用い、素子長800
μm、注入電流200mAで、偏波間利得差0.5dB
以下、ファイバ間利得29dB、ファイバ結合飽和光出
力+9dBmの素子を実現している(例えば、P.Doussie
re et al., IEEE Photon. Technol. Lett., vol.6, pp.
170-172, 1994、及び、P.Doussiere et al., OAA'95, p
p.119-122を参照)。
る歪多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)
活性層を用いたものとしては、NTTの曲等によって、
厚さが5nmで歪量が0%の10層の井戸層と、厚さが
5nmで歪量が−1.7%の11層の障壁層とからなる
歪MQW層を、厚さ50nm及び100nmの光閉じ込
め(SCH:Separate Confinement Heterostructure)
層で挟んだものを用い、素子長660μm、注入電流2
00mAで、偏波間利得差1.0dB以下、内部利得2
7dB(ファイバ間利得13dB)、素子端面飽和光出
力+14.0dBm(ファイバ結合飽和光出力+7.0
dBm)の素子を実現している(例えば、K.Magari et a
l., IEEE Photon. Technol. Lett., vol.2, pp.556-55
8, 1990、K.Magari et al., IEEE Photon. Technol. Le
tt., vol 3, pp.998-1000, 1991、及び、K.Magari et a
l., IEEE J. Quantum Electron., vol.30, pp.695-702,
1994を参照)。
からなる歪MQW活性層を用いたものとしては、BTの
A.E.Kelly等によって、歪量が0%の10層の井戸層
と、歪量が−0.67%の11層の障壁層とからなる歪
MQW層を、厚さ25nmの光閉じ込め層で挟んだもの
を用い、素子長2000μm、注入電流200mAで、
偏波間利得差0.5dB以下、ファイバ間利得27d
B、ファイバ結合飽和光出力+7.5dBmの素子を実
現している(例えば、A.E.Kelly et al., ElectronLet
t., vol.32, pp.1835-1836, 1996、及び、A.E.Kelly et
al., Electron Lett., vol.33, pp.536-538, 1997を参
照)。
歪障壁層とからなる歪MQW活性層を用いたものとして
は、ATTのM.A.Newkirk等によって、厚さが3.5n
mで歪量が+1.0%の3層の圧縮歪井戸層、厚さが1
6.0nmで歪量が−1.0%の3層の伸張歪井戸層
と、厚さが10nmで歪量が0%の7層の障壁層とから
なる歪MQW層を用い、素子長625μm、注入電流1
50mAで、偏波間利得差1.0dB以下、内部利得1
3dB(ファイバ間利得4.4dB)、素子端面飽和光
出力+11.1dBm(ファイバ結合飽和光出力+6.
8dBm)の素子を実現している(例えば、M.A.Newkirk
et al., IEEE Photon. Technol. Lett., vol.4, pp.40
6-408, 1993を参照)。
なる歪MQW活性層を用いたものとしては、CNETの
D.Sigogne等によって、厚さが8nmで歪量が+1.1
%の16層の圧縮歪井戸層、厚さが7nmで、歪量が−
0.9%の16層の伸張歪障壁層とからなる歪MQW層
を用い、素子長940μm、注入電流150mAで、偏
波間利得差1.0dB以下、ファイバ間利得23dB、
素子端面飽和光出力+7.0dBm(ファイバ結合飽和
光出力+3.5dBm)の素子を実現している(例え
ば、A.Ougazzaden et al., Electron. Lett., vol.31,
pp.1242-1244, 1995、D.Sigogne et al., ECOC95, pp.2
67-270、及び、D.Sigogne et al., Electron. Lett., v
ol.32, pp.1403-1405, 1996を参照)。
としては、AlcatelのJ.Y.Emery等によって、厚さ200
nmのバルク活性層の両端を厚さ100nmの光閉じ込
め層で挟み、活性層幅1.2μmのときに、−0.15
%の伸張歪を活性層に導入したものを用い、素子長10
00μm、注入電流200mAで、偏波間利得差0.3
dB以下、ファイバ間利得29dB、ファイバ結合飽和
光出力+9.5dBmの素子を実現している(例えば、
J.Y.Emery et al., ECOC96, vol.3. pp.165-168、及
び、J.Y.Emery et al., Electron. Lett., vol.33, pp.
1083-1084, 1997を参照)。
偏波無依存型半導体光増幅器が研究されているが、この
ような半導体光増幅器において大きな入力ダイナミック
レンジを得るためには、そのレンジの上限を与えるファ
イバ結合飽和光出力をできるだけ大きくする必要があ
り、例えば、1.55μm帯の偏波依存性を有する半導
体光増幅器の場合には、多重量子井戸(MQW)活性層
構造によって素子端面飽和光出力として+19.5dB
mが得られている。
導体光増幅器の場合には、ファイバ結合飽和光出力は最
大でも上記のAlcatelのJ.Y.Emery等による伸張歪バルク
活性層を用いた場合の+9.5dBmに止まっており、
ファイバとの結合損失の2.5dBを考慮すると、偏波
依存型に比べて7.5dBも劣っている。
において、ファイバ結合飽和光出力が小さかった原因
は、偏波無依存とするために課せられている活性層の構
造上の制約が、大きな飽和光出力を得ることを阻んでい
るためである。
無歪バルク活性層を用いた場合には、活性層における光
閉じ込めの偏波無依存化のために活性層断面を矩形とし
ているが、活性層断面のサイズは、下限は作成技術の限
界により300nm角となり、一方、上限は基本モード
を維持する条件から600nm角に限られ、素子の設計
自由度が小さいものとなる。
には、活性層におけるTE偏光に対する材料利得の増大
と扁平活性層によるTE偏光に対する光閉じ込めの増大
を打ち消すために、大きな伸張歪を用いてTM偏光に対
する材料利得を増大させなければならない。
場合には、量子効果と伸張歪効果が共に利得ピーク波長
を短波長化し、さらに、注入電流の増加によるバンドフ
ィリング効果により利得ピーク波長が短波長化するため
に、波長1.55μm付近で必要な利得を得るために
は、障壁層に伸張歪を加えて障壁層での電子−ライトホ
ール遷移を利用したり、井戸層の層厚を厚くして量子効
果による短波長化を抑える等の制限が加わるため、大き
なファイバ結合飽和光出力を得るための構造設計に対し
て自由度がずっと小さくなるという問題がある。
ルカテール)による従来の伸張歪バルク活性層を用いた
偏波無依存型半導体光増幅器を説明する。
概略的斜視図であり、前半分においては活性層の状態を
表すように、p型InP埋込層37、プロトン注入領域
38,39、p型InGaAsコンタクト層40、及
び、p型電極42の図示を省略している。また、この図
では、スポットサイズ変換領域や窓領域などを省略した
概略図として表している。
は、厚さ200nmのInGaAsP歪バルク活性層3
4の上下に厚さ100nmのInGaAsP光閉じ込め
層(SCH層)33,35を設けた構造にするととも
に、ストライプ幅を1.2μmとした構造になってい
る。
ルク活性層34の光軸は光入出力端面の法線と7°の傾
き角で交わっている。
て、TE偏光とTM偏光の光閉じ込め係数比を小さくす
ることで、必要な伸張歪を−0.15%と小さく抑える
ように意図して設計されており、それによって、偏波間
利得差が低減されるので、一方の端面から出射した信号
入力光46は偏波に依存することなく増幅されて増幅出
力光47として出力される。
R膜)44,45が設けられているので、信号入力光4
6の共振は抑制される。
に、この伸張歪バルク活性層を用いた偏波無依存型半導
体光増幅器の場合にも、ファイバ結合飽和光出力は+
9.5dBmであり、偏波依存型の場合の素子端面飽和
光出力の+19.5dBmと比べて、ファイバとの結合
損失2.5dBを考慮してもいまだ大幅に小さな値であ
った。
存型半導体光増幅器の場合には、まだ臨界膜厚に達して
いないためより大きな歪を加えることが可能であり、し
たがって、活性層構造を変えることによって素子端面の
飽和光出力を増大し、その結果、ファイバ結合飽和光出
力を増大することが可能である。
ことと、飽和光出力を増大させることを両立して、構造
設計に対する自由度を小さくすることなくファイバ結合
飽和光出力を増大することにある。
本発明における課題を解決するための手段を説明する。
図1(b)は光軸の垂直方向に沿った概略的断面図であ
る。
層であり、符号4はストライプ状メサであり、符号5は
埋込層である。
らなる歪バルク活性層3を有し、光入射端面7と光出射
端面8との間における反射による光の共振を抑制し、歪
バルク活性層3のバンド・ギャップ波長とほぼ等しい波
長の信号光9を光入射端面7から入射し、歪バルク活性
層3に電流注入して誘導放出効果により信号光9を増幅
し、光出射端面8から増幅した信号光10を出射し、そ
の単一透過利得が入射信号光9の偏波状態によらずほぼ
一定である偏波無依存型半導体光増幅器であって、歪バ
ルク活性層3の層厚が20nm〜100nmであり、歪
量が−0.09%〜−0.60%であることを特徴とす
る。
を構成する歪バルク活性層3の層厚dを20nm〜10
0nmとし、歪量を−0.09%〜−0.60%とする
ことによって、偏波無依存性を保ちながら、飽和光出力
を大きくすることができる。
光出力Psは、活性層3の幅をw、活性層3の層厚を
d、光閉じ込め係数をΓ、光子エネルギーをhν、キャ
リア寿命をτ、及び、微分利得をaとした場合、 Ps=(w・d/Γ)×hν/(τ・a) で表されるので、歪バルク活性層3の層厚dを薄くする
ことによって光閉じ込め係数Γを小さくし、それによっ
てモード断面積(w・d/Γ)を増大させるとともに、
キャリア密度の増大によるキャリア寿命τの減少効果が
加わり、飽和光出力が増大する。
面形状の扁平度が高くなると、偏波間の光閉じ込め比が
大きくなり、必要な歪量が増大するが、20nm〜10
0nmの場合には、歪量を−0.09%〜−0.60%
とすることによって、偏波無依存性を保つことができ
る。
き、偏波間の光閉じ込め比が小さくなり、偏波無依存化
のために要する歪量が小さくなる。厚さ100nmの歪
バルク活性層3の場合、ストライプ幅を1μm以上とし
た場合の基本モード導波条件を考慮すると、厚さ300
nm、組成1.2μmの光閉じ込め層で挟むことが可能
であり、偏波無依存化のために要する歪量−0.09%
となる。
いとき、偏波間の光閉じ込め比が大きくなり、偏波無依
存化のために要する歪量が大きくなる。厚さ20nmの
歪バルク活性層3の場合、光閉じ込め層がないと偏波無
依存化のために要する歪量は−0.60%となる。
層厚の上限を約90nm或いは約80nmとすることに
より、より良好な飽和光出力を得ることができる。な
お、活性層厚が90nmのとき歪量の下限は約−0.1
0%となり、活性層厚が80nmのとき歪量の下限は約
−0.11%となる。
量子効果が顕在化すると、TE偏光に対する材料利得が
大きくなり、より大きな歪量が必要になるので、活性層
厚20nmが下限の目安であると考えられる。また、後
述のように、活性層厚が25nm或いは30nmとする
ことにより、量子効果を抑制できる。なお、活性層厚2
5nmのとき歪量の上限は−0.45%となり、活性層
厚が30nmのとき歪量の上限は−0.44%となる。
体光増幅器において、歪バルク活性層3が、歪バルク活
性層3の層厚方向に歪バルク活性層3に接するように設
けた光閉じ込め層2によって挟まれていることを特徴と
する。
め層(SCH層)2で挟むことによって、偏波間の光閉
じ込め比を小さくし、モード断面積(w・d/Γ)をよ
り大きくすることができる。
向を光出射端面8の法線に対して7〜10°傾けること
によって、光入射端面7と光出射端面8との間における
反射による光の共振を抑制することができ、出力にリッ
プルが発生しない半導体光増幅器を構成することができ
る。
を、素子中央から光出射端面8の方向に向かって、平均
で単位長さ当たり1/1000以上の割合で徐々に狭く
なるようにテーパ状にすることによって、光ファイバ等
の光学系との光結合効率を高めることが望ましい。
0μmから幅0.6μmに低減した場合には、(1.0
−0.6)/400=1/1000となる。
中央から光出射端面8の方向に向かって、光出射端面8
側の端部における層厚が素子中央における層厚の1/2
以下になる割合で徐々に薄くなるようにテーパ状にして
もよく、光ファイバ等の光学系との光結合効率を高める
ことができる。
端面8から20〜50μmの領域が活性層3の存在しな
いクラッド層からなるいわゆる窓構造にすることが望ま
しく、それによって、光出射端面8における信号光9の
反射を防止することができるので、増幅された信号光1
0におけるリップルの発生をより確実に防止することが
できる。
依存型半導体光増幅器を図2乃至図13を用いて説明す
る。
増幅器における活性層厚と飽和光出力の相関、及び、活
性層厚と偏波無依存性を保持するための歪量の相関を説
明する。
は、活性層幅をw、活性層厚をd、光閉じ込め係数を
Γ、光子エネルギーをhν、キャリア寿命をτ、及び、
微分利得をaとした場合、 Ps=(w・d/Γ)×hν/(τ・a) で表される。
しては、(1) モード断面積(w・d/Γ)を増大させ
る、(2) キャリア寿命τを減少させる、(3) 微分利得a
を減少させる、の3つの方法が考えられる。そこで、活
性層の厚さを薄くしたときに、飽和光出力に影響を与え
る上記3つのパラメータがどのように変化するかについ
て考察する。
依存性を考える。モード断面積は(w・d/Γ)で表さ
れるが、分母にある光閉じ込め係数Γは活性層の層厚d
によって変化することから、d/Γの活性層厚依存性を
考える必要がある。活性層が薄くなると光のフィールド
の広がり方が大きくなり、活性層の層厚dの減少よりも
光閉じ込め係数Γの減少の割合が顕著になる。その結
果、層厚dの減少に伴い、d/Γが増大し、モード断面
積は増大する。
の光閉じ込め層を用い、活性層幅wが1.0μmで一定
の場合の結果を示すものである。図から明らかなよう
に、活性層厚をできるだけ薄くすることによってモード
断面積を大きくすることが理解される。特に、活性層厚
dが100nm以下の場合に、モード断面積の増大が顕
著になる。
依存性を考える。キャリア寿命τは、Nをキャリア密
度、Aを非発光再結合係数、Bを発光再結合係数、Cを
オージェ再結合係数として、 τ=1/(A+BN+CN2) で表される。したがって、キャリア密度Nを増大するほ
どにキャリア寿命τが減少することが判る。
合、活性層が薄くなるほどキャリア密度Nは増大するた
め、キャリア寿命τが減少する。活性層厚が1.0μ
m、素子長が900μm、注入電流が400mAで一定
の場合の、キャリア寿命の逆数の活性層厚依存性の計算
結果を図3に示す。図から明らかなように、活性層を薄
くすることでキャリア寿命τを小さくできることが判
る。
性を考える。半導体光増幅器では、飽和光出力の増大と
雑音指数の低減のために、信号光波長λsは利得ピーク
波長λpよりも長波側になるように使用される。一般
に、微分利得aはλs−λpが大きいほど小さくなる。こ
のため、微分利得aを低減するには所望の利得が取れる
範囲においてλpはできるだけ短波化することが望まし
い。上述のように活性層の層厚厚dが薄くなるほどにキ
ャリア密度Nが増大するが、キャリア密度Nが増大する
とバンドフィリング効果によって利得ピーク波長λpが
短波側へシフトする。この結果、λs−λpが大きくな
り、微分利得aを低減することができる。したがって、
活性層を薄くすることで微分利得を小さくできることが
判る。
り、モード断面積の増大、キャリア寿命の減少、微分利
得の減少が相乗的に作用し、飽和光出力の大幅な増大が
期待できる。そこで、以上の結果をすべて考慮し、素子
端飽和光出力Psの活性層厚依存性を計算した結果を図
4に示す。図から明らかなように、活性層厚dが約10
0nm以下の場合に、飽和光出力Psの増大が顕著にな
り、従来の活性層厚dが200nmの場合の飽和光出力
Psの2倍以上を得るためには、活性層厚dを90nm
以下にすることが望ましい。
10dBm(約10mW)以上の光出力が好ましい。未
飽和の状態で約10dBmの光出力を得るには、約13
dB m(約20mW)程度の飽和光出力が要求される。
ファイバとの結合損失3dBを考慮すると、素子端飽和
光出力としては約16dBm(約40mW)を確保する
ことが必要である。約16dBm以上の素子端飽和光出
力を得るためには、図4に示すように、活性層を約80
nm以上とすることが望ましい。
面形状の扁平度が強くなると、偏波間の光閉じ込め比が
大きくなり、偏波無依存に必要な歪量が増大する。そこ
で、偏波間の光閉じ込め比の活性層厚依存性と、この比
を相殺するために必要な伸張歪量を計算した。その結果
を図5に示す。なお、光閉じ込め層は組成1.2μm、
層厚100nmを仮定した。
薄くなるにしたがって偏波間の光閉じ込め比が増大し、
その結果、この比を相殺するために必要な伸張歪量も増
大することが理解される。また、活性層厚dが10nm
付近までは、歪量−0.3%程度で偏波間の光閉じ込め
比を相殺することができると考えられる。
顕在化する領域では、TE偏光に対する材料利得が大き
くなり、より大きな歪量が必要になる。そこで、量子効
果が強くならない範囲で薄層化する活性層の厚さの下限
をとどめる必要がある。一般的には、量子効果は活性層
厚dが約20nm程度以下で顕在化すると考えられるの
で、活性層厚dは20nm以上に設定することが望まし
い。
て、伝導帯側の量子井戸の基底準位のエネルギーEc0と
第一準位のエネルギーEc1との間のエネルギー準位差Δ
Ec01を考えれば、これが熱励起エネルギーkTと同程
度以下になれば量子効果が弱まりバルク的であると判断
できる。
ネルギー準位差ΔEc01の活性層厚依存性を計算した結
果を図6に示す。図示するように、活性層が薄くなるに
つれてエネルギー準位差ΔEc01は小さくなり、やがて
kT以下となる。エネルギー準位差ΔEc01がkTと同
程度となる活性層の厚さは障壁層の組成に依存するが、
活性層がInGaAsで障壁層が1.2μm組成のIn
GaAsPの場合には、図示するように約25nmであ
る。
差と活性層厚との関係に基づき、材料系や層構造に応じ
て適宜求めることができる。量子効果による影響を確実
に防止して、伸張歪量に関する条件を緩和するために
は、活性層厚dを30nm以上にすることが望ましい。
活性層厚dが25nmの場合には歪量の上限は約−0.
45%となり、活性層厚dが30nmの場合には歪量の
上限は約−0.44%となる。
な前提を基に作製した本発明の実施の形態の偏波無依存
型半導体光増幅器の概略的構成を説明する。
体光増幅器の概略的斜視図であり、前半分においては活
性層の状態を表すように、p型InP電流ブロック層1
7、n型InP電流ブロック層18、p型InPクラッ
ド層16,19、p型InGaAsコンタクト層20、
SiO2膜21、及び、p型電極22の図示を省略して
いる。
D(有機金属気相成長)法を用いて、厚さが、例えば、
300nmのn型InPバッファ層12、厚さが、例え
ば、100nmで、1.2μm組成のInGaAsP光
閉じ込め層13、歪量が−0.19〜−0.30%で、
厚さdが20〜100nmで、PL波長組成が1.60
μmのInGaAsP歪バルク活性層14、厚さが、例
えば、100nmで、1.2μm組成のInGaAsP
光閉じ込め層15、及び、p型InPクラッド層16を
順次堆積させる。
活性層14の具体的な厚さとしては、100nm、75
nm、及び、50nmの素子を作製し、その場合の歪量
は、それぞれ、−0.19%、−0.21%、及び、−
0.24%の伸張歪とした。
ち、ダイレクトコンタクト露光方式を用いて、劈開面と
なる面に対して長軸が7〜10°、例えば、7°傾き、
且つ、幅が0.6〜1.4μm、例えば、1.0μmの
ストライプ状の形状にパターニングし、このストライプ
状のSiO2マスク(図示せず)を用いて、C2H6+H2
+O2を用いた反応性イオンエッチング(RIE)によ
って、n型InPバッファ層12に達するまでメサエッ
チングを行い、活性層幅wが0.6〜1.4μm、例え
ば、1.0μmのストライプ状メサを形成する。
構造において光出射端面側の200μmにおける活性層
幅wが光出射端面側に向かって1.0μmから0.4μ
mに徐々に狭くなるテーパ状にして、光結合効率の増大
を図った。
長マスクとして用い、ストライプ状メサの側壁にp型I
nP電流ブロック層17及びn型InP電流ブロック層
18を選択成長させる。
全面にp型InPクラッド層19及びp型InGaAs
コンタクト層20を順次堆積させる。
たのち、ストライプ状メサに投影的に重なる開口部を形
成したのち、p型電極22を形成するとともに、n型I
nP基板11の裏面にはn型電極23を形成する。
開面に無反射コート膜24,25を堆積することによっ
て、偏波無依存型半導体光増幅器の基本構成が完成す
る。
は、劈開面、すなわち、光入射端面と光出射端面には無
反射コート膜24,25が設けられているので、光入射
端面と光出射端面との間における反射による光の共振は
抑制され、1.55μm近傍の信号入力光26をInG
aAsP歪バルク活性層14において誘導放出効果によ
り増幅し、光出射端面から増幅した増幅出力光27とし
て出射する。
の実施の形態の作用効果を説明する。
性層厚を変えた3種類の素子について、各素子でのファ
イバ間利得がそれぞれ19〜21dBとなるように素子
長を調整し、電流密度をほぼ一定としている。すなわ
ち、活性層厚100nmの場合には、素子長を600μ
m、電流を250mAとし、活性層厚75nmの場合に
は、素子長を900μm、電流を400mAとし、活性
層厚50nmの場合には、素子長を1200μm、電流
を500mAとした。また、活性層幅は1.1〜1.4
μmとした。
4の層厚dを100nmとした場合の、ファイバ間利得
対ファイバ結合光出力特性を示す図である。図中、○印
はTM偏光に対するファイバ結合光出力を表し、Ps TM
はTM偏光に対するファイバ結合飽和光出力である。ま
た、●印はTE偏光に対するファイバ結合光出力を表
し、Ps TEはTE偏光に対するファイバ結合飽和光出力
である。なお、ファイバ間利得が3dB低下するときの
ファイバ結合光出力を、ファイバ結合飽和光出力とす
る。
力の増大とともにファイバ間利得は低下し、ファイバ間
利得の最大値である約21dBに対し、3dB低下した
ファイバ結合飽和光出力は、TE偏光に対して+12.
5dBm、TM偏光に対して+12.7dBmであった。
B以内である。
14の層厚dを75nmとした場合の、ファイバ間利得
対ファイバ結合光出力特性を示す図である。図中、○印
はTM偏光に対するファイバ結合光出力を表し、Ps TM
はTM偏光に対するファイバ結合飽和光出力である。ま
た、●印はTE偏光に対するファイバ結合光出力を表
し、Ps TEはTE偏光に対するファイバ結合飽和光出力
である。
力の増大とともにファイバ間利得は低下し、ファイバ間
利得の最大値である約20dBに対し、3dB低下した
ファイバ結合飽和光出力は、TE偏光に対して+14.
5dBm、TM偏光に対して+14.6dBmであった。
dB以内である。
14の層厚dを50nmとした場合の、ファイバ間利得
対ファイバ結合光出力特性を示す図である。図中、○印
はTM偏光に対するファイバ結合光出力を表し、Ps TM
はTM偏光に対するファイバ結合飽和光出力である。ま
た、●印はTE偏光に対するファイバ結合光出力を表
し、Ps TEはTE偏光に対するファイバ結合飽和光出力
である。
力の増大とともにファイバ間利得は低下し、ファイバ間
利得の最大値である約19dBに対し、3dB低下した
ファイバ結合飽和光出力は、TE偏光に対して+17.
4dBm、TM偏光に対して+17.0dBmであった。
dB以内である。
飽和光出力として従来のベスト記録をもつ、活性層厚2
00nmの伸張歪バルク活性層を用いたAlcatelの素子
との、素子端面飽和光出力の活性層厚依存性を示す図で
ある。なお、素子端面飽和光出力は、測定したファイバ
結合飽和光出力を基にしてファイバ結合効率を考慮して
見積もった値である。
ることによって素子端面飽和光出力を従来より増大でき
ることが確認された。
半導体光増幅器の特性とともに纏めたのが以下に示す表
1、表2であり、また、そのうちのファイバ結合飽和光
出力とファイバ間利得についてプロットしたのが図13
である。
1つの表を分割して表したものである。
によって従来のベスト記録をもつAlcatel2の素子のファ
イバ結合飽和光出力を3(+12.5[dBm])〜
7.5dB(+17.0[dBm])だけ上回ってお
り、ベストレコードを達成することができた。
が、飽和光出力に対して非常に大きな効果を有すること
が理解される。
l等の値が勝っているが、このファイバ間利得は、半導
体光増幅器の素子長に依存し、素子長を大きくすること
によって高ファイバ結合飽和光出力を保ったままファイ
バ間利得を任意に増大することができるものであり、今
回の結果は使用した素子の素子長の差によるものであ
る。
活性層の層厚を20〜100nmにすることによって、
素子端面飽和光出力、したがって、ファイバ結合飽和光
出力を従来の最高値より3〜7.5dB増大することが
でき、また、活性層の薄層化に伴う偏波間の光閉じ込め
比の増大による偏波無依存性を保つために必要な伸張歪
量も十分実用レベルの値に抑えることができ、従来、困
難であると考えられていた飽和光出力の増大と偏波無依
存性の両立を実現することができた。
が、本発明は実施の形態に記載した構成・条件に限られ
るものではなく、各種の変更が可能である。
性層の幅wを光出射端面側においては、光出射端面に向
かってテーパ状に狭めているが、活性層の幅wを素子中
央部と同じ幅に保ってもよいものである。
層の層厚dを一定にしているが、活性層の層厚dを光出
射端面側においては、光出射端面に向かって端面におけ
る層厚が素子中央部の層厚の1/2以下、例えば、1/
3になるようにテーパ状に薄層化してもよいものであ
り、また、このような薄層化を上記の活性層幅wのテー
パ状狭幅化と合わせて用いてもよいものである。
層を光出射端面に達するように設けているが、光出射端
面側の20〜50μmの範囲において活性層及び光閉じ
込め層を除去してクラッド層のみとして窓構造を構成し
てもよいものであり、それによって、光出射端面におけ
る光の反射をより低減することができるので、出力にお
けるリップルの発生をより確実に防止することができ
る。
要求される場合、端面における残留反射率は10-5程度
以下にしなければ、出力にリップルが発生するので、こ
のような窓構造の採用が効果的になる。
InPバッファ層をn型クラッド層としているが、n型
InPバッファ層を設けずに、n型InP基板上にIn
GaAsP光閉じ込め層及びInGaAsP歪活性層を
直接成長させ、n型InP基板をn側クラッド層として
もよいものである。
ライプ状メサの側部にp型及びn型の電流ブロック層を
設けて電流狭窄を行っているが、他の公知の電流狭窄手
段、例えば、FeドープInP高抵抗層等を用いてもよ
いものである。
層厚を20〜90nmにすることによって、偏波無依存
性を保ったままでファイバ結合飽和光出力を大幅に増大
することができ、それによって、入力ダイナミックレン
ジを広くすることができるので、入力信号光のパワーレ
ベルの大きな変動に対応できる高性能の偏波無依存型半
導体光増幅器を実現することができ、ひいては、波長多
重光通信システムの実用化に寄与するところが大きい。
る。
る。
である。
必要な歪量の活性層厚依存性の説明図である。
準位差ΔEc01の活性層厚依存性の説明図である。
幅器の概略的斜視図(その1)である。
幅器の概略的斜視図(その2)である。
0nmの場合のファイバ間利得対ファイバ結合光出力特
性図である。
5nmの場合のファイバ間利得対ファイバ結合光出力特
性図である。
0nmの場合のファイバ間利得対ファイバ結合光出力特
性図である。
出力の活性層厚依存性の説明図である。
のファイバ結合飽和光出力とファイバ間利得の説明図で
ある。
斜視図である。
Claims (7)
- 【請求項1】 膜厚が20nm〜90nmであり、伸張
歪が導入された歪バルク活性層と、 前記歪バルク活性層を挟むように設けられたクラッド層
と、 前記歪バルク活性層の光入射端面及び光出射端面での反
射による光の共振を抑制する共振抑制手段とを有し、 前記入射端面から入射した入射信号光を増幅して前記光
出射端面から出射信号光として出射し、前記出射信号光
が受ける利得が前記入射信号光の偏波状態によらずにほ
ぼ一定であることを特徴とする偏波無依存型半導体光増
幅器。 - 【請求項2】 請求項1記載の偏波無依存型半導体光増
幅器において、 前記歪バルク活性層は、歪量が−0.10%〜−0.6
0%であることを特徴とする偏波無依存型半導体光増幅
器。 - 【請求項3】 請求項1又は2記載の偏波無依存型半導
体光増幅器において、 前記歪バルク活性層と前記クラッド層との間に形成され
た光閉じ込め層を更に有することを特徴とする偏波無依
存型半導体光増幅器。 - 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の
偏波無依存型半導体光増幅器において、 前記歪バルク活性層の幅が、前記光入射端面及び/又は
前記光出射端面の方向に向けて徐々に狭まっていること
を特徴とする偏波無依存型半導体光増幅器。 - 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の
偏波無依存型半導体光増幅器において、 前記歪バルク活性層の厚さが、前記光入射端面及び/又
は前記光出射端面の方向に向けて徐々に薄くなっている
ことを特徴とする偏波無依存型半導体光増幅器。 - 【請求項6】 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の
偏波無依存型半導体光増幅器において、 前記歪バルク活性層の軸方向が、前記光出射端面の法線
方向に対して傾いていることを特徴とする偏波無依存型
半導体光増幅器。 - 【請求項7】 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の
偏波無依存型半導体光増幅器において、 前記歪バルク活性層は、前記前記光入射端面及び/又は
前記光出射端面の近傍には形成されておらず、前記歪バ
ルク活性層の端面が前記クラッド層により覆われている
ことを特徴とする偏波無依存型半導体光増幅器。
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