JP2001051610A

JP2001051610A - ディスプレイ用フィルター

Info

Publication number: JP2001051610A
Application number: JP11230097A
Authority: JP
Inventors: Tomomi Nakano; 智美中野; Satoru Imamura; 悟今村
Original assignee: Mitsubishi Chemical Corp
Current assignee: Mitsubishi Chemical Corp
Priority date: 1999-08-16
Filing date: 1999-08-16
Publication date: 2001-02-23

Abstract

(57)【要約】【課題】電磁波遮蔽層の透明性低下を防止して、透明
性の確保を長期間に亘って保障するディスプレイ用フィ
ルターを提供すること。【解決手段】ディスプレイの前面に取り付けられるフ
ィルターであって、銀の蒸着膜からなる電磁波遮蔽層１
４の両面に、紫外線硬化性樹脂からなる保護層１３ａ、
１３ｂを積層配置してこれを挟み込み、これにより電磁
波遮蔽層１４の酸素や水分による白化を防いでその透明
性を維持し、以ってディスプレ用フィルターの品質を長
期間に亘って保障することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はディスプレイ用フィ
ルターに関し、更に詳細には例えばブラウン管型ディス
プレイ、フィールドエミッションディスプレイ、プラズ
マディスプレイ等のディスプレイの前面に取り付けて使
用するフィルターに関する。

【０００２】

【従来の技術】軽量且つ薄型でありながら輝度が高く、
しかも大画面が得られるプラズマディスプレイ（以下、
ＰＤＰと称する）や他のディスプレイは、すでによく知
られている。以下、ＰＤＰを代表に説明する。この種の
ＰＤＰにおいては、蛍光体を発光させるため、紫外線と
共に近赤外線及び電磁波が発生し、その一部が管外へ放
出する。そのため、従来のＰＤＰの前面には近赤外線カ
ット性能、電磁波遮蔽性能、傷付き防止性能、反射防止
性能などを備えたフィルターが取り付けられている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】一般に、プラズマディ
スプレイパネル等から放出される電磁波を遮蔽する電磁
波遮蔽層は、銀の蒸着層で構成されている。このような
銀の蒸着層からなる電磁波遮蔽層は、酸素や水分の存在
下で酸化白化し、透明性が低下する。

【０００４】電磁波遮蔽層に白化現象が発生しはじめる
と、ＰＤＰの画像の鮮明度をフィルターが低下させる結
果となり、そのためフィルターの構成要素である電磁波
遮蔽層の白化現象を防止する技術の開発が望まれてい
た。

【０００５】本発明の目的は、かかる従来の問題点を解
決するためになされたもので、電磁波遮蔽層の透明性低
下を防止して、透明性の確保を長期間に亘って保障する
ディスプレイ用フィルターを提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明はディスプレイ用
フィルターであり、前述の技術的課題を解決するために
以下のような構成とされている。すなわち、本発明は、
ディスプレイの前面に取り付けられるフィルターであっ
て、銀を含む電磁波遮蔽層と、紫外線硬化性樹脂からな
る保護層とを少なくとも備え、前記保護層が前記電磁波
遮蔽層を挟み込むようにその両面に積層配置されている
ことを特徴とする。

【０００７】＜本発明における付加的構成＞本発明のデ
ィスプレイ用フィルターは、前述した必須の構成要素か
らなるが、その構成要素に更に以下のような構成を加え
た場合であっても成立する。その付加的構成要素とは、
前記ディスプレイ用フィルターが、更に前記電磁波遮蔽
層に近接して配置された近赤外線吸収層を備えることを
特徴する。

【０００８】＜本発明における具体的構成＞本発明のデ
ィスプレイ用フィルターは、前述した必須の構成要素か
らなるが、その構成要素が具体的に以下のような場合で
あっても成立する。その具体的構成要素とは、電磁波遮
蔽層を銀の蒸着膜から構成することが好ましく、また保
護層を構成する紫外線硬化性樹脂の硬化収縮率を１０％
以下に制御することが好ましい。

【０００９】また、本発明のディスプレイ用フィルター
では、電磁波遮蔽層と、この電磁波遮蔽層の表面上にお
いて周囲領域を除いて形成された保護層と、前記電磁波
遮蔽層の表面における前記周囲領域の保護層非形成領域
に、前記保護層との間に空間部を設けて形成された導電
性粘着剤層とを含み、前記保護層の表面とその周囲に形
成された前記導電性粘着剤層の表面とが基板に貼り合わ
され、前記導電性粘着剤層が位置する前記基板表面の周
囲領域において前記基板と前記導電性粘着剤層との間に
配置され、外部アース用端子に前記導電性粘着剤層を電
気的に導通させる導電材を少なくとも備え、前記電磁波
遮蔽層が前記導電性粘着剤層及び前記導電材を介して前
記外部アース用端子に電気的に接続される構造とされて
いることを特徴とする。

【００１０】更に、本発明のディスプレイ用フィルター
では、前記導電材が少なくとも前記基板の側面にまで及
んで設けられていることを特徴とする。更にまた、本発
明のディスプレイ用フィルターでは、前記支持フィルム
の表面に形成された前記電磁波遮蔽層上に前記保護層及
びその周囲に存する前記導電性粘着剤層が配置され、更
にこれら保護層及び前記導電性粘着剤層の表面に、外周
に導電材が設けられた基板が順次に積層されてなるフィ
ルター本体の周囲縁部を包囲するように電極が設けら
れ、この電極が前記導電材と積層して電気的に導通し、
この電極が前記外部アース用端子に電気的に接続される
構造とされていることを特徴とする。

【００１１】本発明のディスプレイ用フィルターによる
と、銀の蒸着膜で形成される電磁波遮蔽層は、酸素や水
分により白化して透明性が低下するが、紫外線硬化性樹
脂からなる保護層をこの電磁波遮蔽層の両面に積層配置
してこれを挟み込むことにより、白化を防ぐことがで
き、これにより電磁波遮蔽層の透明性、言い換えればデ
ィスプレイそれ自体の透明性を維持することができる。

【００１２】また、本発明のディスプレイ用フィルター
によると、電磁波遮蔽層のための保護層に加えて近赤外
線吸収層を配置することにより、電磁波遮蔽層の白化に
よる透明性の低下を防ぐことができると共に、家庭電化
製品や家庭用設備を誤動作させるような近赤外線の放出
も防止することができる。

【００１３】

【発明の実施の形態】以下、本発明のディスプレイ用フ
ィルターをその実施形態について更に詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係るディスプレイ用フィルター
は、プラズマディスプレイパネル即ちＰＤＰの前面に取
り付けて使用される。従って、以下説明する実施形態の
フィルターについては、プラズマディスプレイ用フィル
ター（ＰＤＰ用フィルター）と称する。

【００１４】このＰＤＰ用フィルターは、基本的には、
少なくとも電磁波遮蔽層を備え、更に好ましくは近赤外
線吸収層をも備える。最初に前者の実施形態に係るＰＤ
Ｐ用フィルター１０の層構成について説明する。この実
施形態のＰＤＰ用フィルター１０は図１に示されてい
る。

【００１５】図１に示されるＰＤＰ用フィルター１０で
は、透明な基板１１の一方の表面（ＰＤＰ側）に粘着剤
層１２を介して紫外線硬化性樹脂からなる保護層１３ａ
が設けられ、その表面に銀の蒸着膜からなる電磁波遮蔽
層１４、更にその表面に紫外線硬化性樹脂からなる保護
層１３ｂ、支持フィルム１５及び反射防止層１６が順次
積層して設けられ、透明な基板１１の他方の表面には反
射防止層１７が設けられている。

【００１６】図１はＰＤＰ用フィルター１０の端部を部
分的に示しており、その端部構造としては以下のように
構成されている。すなわち、基板１１の端部にはその両
表面と端面に亘って断面コ字形に包囲するように粘着剤
層１８により銅箔等の金属箔１９が設けられている。基
板１１の端部における一方の表面に貼り付けられた金属
箔１９の粘着剤層１８を含む厚みは粘着剤層１２とほぼ
等しくされている。

【００１７】そして、基板１１の端部において、一方の
表面に粘着剤層１８で接着された金属箔１９上には導電
性粘着剤２０が保護層１３ａに対して間隔（空間部２
１）をあけ且つほぼ同じ厚みで設けられている。前述し
た電磁波遮蔽層１４は、保護層１３ａとこれに空間部２
１を介在させて連接して配置されている導電性粘着剤２
０との上に設けられている。

【００１８】このように、基板１１と支持フィルム１５
との間に粘着剤層１２、保護層１３ａ、電磁波遮蔽層１
４及び保護層１３ｂが設けられたフィルター本体の端部
には、その両表面と端面に亘って断面コ字形に包囲する
ように導電性粘着剤２０により銅箔等からなる金属箔２
２が設けられている。導電性粘着剤２０によりフィルタ
ー本体に設けられた金属箔２２は、基板１１の端部にお
ける他方の表面については前述したように基板１１のみ
の端部を包囲するように設けられた金属箔１９上に重な
ることになる。

【００１９】従って、基板１１の端部では、その他方の
表面に粘着剤層１８、金属箔１９、導電性粘着剤層２０
及び金属箔２２が積層されていることになる。基板１１
の端部において表面上に設けられたこれら４層の全厚み
は、基板１１の表面に設けられた反射防止層１７の厚み
とほぼ同じにされている。また、支持フィルム１５の端
部における表面に設けられた導電性粘着剤層２０を含む
金属箔２１の厚みは支持フィルム１５の表面に設けられ
た反射防止層１６の厚みとほぼ同じにされている。

【００２０】このようなＰＤＰ用フィルター１０は、実
際的には次のようにして形成することができる。すなわ
ち、支持フィルム１５である透明樹脂フィルムに紫外線
硬化性樹脂からなる保護層１３ｂを形成した後、銀やそ
の合金を蒸着させて電磁波遮蔽層１４を形成する。その
後、この電磁波遮蔽層１４の表面上に、周囲領域を除い
て紫外線硬化性樹脂からなる保護層１３ａを形成する。

【００２１】次いで、電磁遮蔽層１４の表面において、
保護層１３ａの周囲には当該保護層１３ａと間隔（空間
部２１）をあけて導電性粘着剤２０が設けられる。そし
て、保護層１３ａの表面に更に粘着剤１２を設けて、透
明な機能性フィルＦが製造される。その後、この機能性
フィルムＦをその粘着剤面（層）１２を用いて、端部に
粘着剤１８を介して金属箔１９が設けられた透明樹脂基
板１１に貼り合わせる。

【００２２】これにより得られた機能性フィルム付き基
板即ちフィルター本体の周囲縁部には、その両表面及び
端面に亘って断面コ字形状に導電性粘着剤２０によって
銅箔等からなる金属箔２２が設けられる。この金属箔２
２は、後でアース用通電部となる。この金属箔２２とし
ては銅、アルミニウム等又はその合金等が用途に応じ適
宜用いられる。

【００２３】機能性フィルム付き基板（フィルター本
体）の両表面において、前述したように外周囲の領域に
設けられた金属箔２２の内側には反射防止層１６、１７
がそれぞれ設けられ、これによりＰＤＰ用フィルター１
０が形成される。

【００２４】ここで各層を構成する材料について簡単に
説明すると、支持フィルム１５である透明樹脂フィルム
は、実質的に透明であって、吸収、散乱が大きくない樹
脂フィルムであればよく、特に制限はない。透明樹脂フ
ィルムに使用される樹脂の具体的な例としては、ポリオ
レフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネー
ト系樹脂、ポリ（メタ）アクリル酸エステル系樹脂、ポ
リスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリア
リレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂等をあげるこ
とができる。

【００２５】これらの中では、特に非晶質のポリオレフ
ィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹
脂、ポリ（メタ）アクリル酸エステル樹脂、ポリアリレ
ート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂が好ましく、非晶
質ポリオレフィン系樹脂の中では環状ポリオレフィン
が、ポリエステル系樹脂の中ではポリエチレンテレフタ
レートが特に好ましい。

【００２６】上記樹脂には、一般的に公知である添加
剤、例えばフェノール系、燐系などの酸化防止剤、ハロ
ゲン系、燐酸系等の難燃剤、耐熱老化防止剤、紫外線吸
収剤、滑剤、帯電防止剤等を配合することができる。透
明樹脂フィルムは、上記樹脂を公知のＴダイ成形、カレ
ンダー成形、圧縮成形などの方法や、有機溶剤に溶解さ
せてキャスティングする方法等を用いて成形される。

【００２７】フィルムの厚みとしては、目的に応じて、
１０μｍ〜１ｍｍの範囲が望ましい。該透明樹脂フィル
ムは、未延伸でも延伸されていても良い。また、他のプ
ラスチック基材と積層されていても良い。更に該透明樹
脂フィルムは、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処
理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理等の従来公
知の方法による表面処理や、プライマー等のコーティン
グを片面あるいは両面に施しても良い。

【００２８】支持フィルム１５の一表面に設けられる保
護層１３ｂは、紫外線硬化型のアクリル樹脂をコーティ
ングして硬化させる（硬化後の厚みは約１０μｍ程度）
ことにより形成することができる。この紫外線硬化性樹
脂として具体的には、ポリウレタンアクリレート、エポ
キシアクリレート等のアクリレート、或いは、多官能ア
クリレート、光重合開始剤、及び有機溶剤を主成分とす
るものである。エポキシアクリレートとしては、エポキ
シ樹脂のエポキシ基をアクリル酸でエステル化し、官能
基をアクリロイル基としたものであり、ビスフェノール
Ａ型エポキシ樹脂へのアクリル酸付加物、ノボラック型
エポキシ樹脂へのアクリル酸付加物等がある。

【００２９】ウレタンアクリレートは、ポリオールとジ
イソシアネー卜とを反応させたウレタンプレポリマーを
水酸基を持つアクリレートでアクリル変性して得られ
る。ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピ
レングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリ
コール、１，６−へキサンジオール、ネオペンチルグリ
コール、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパ
ン、ポリテトラメチレングリコール、アジピン酸とエチ
レングリコールとの縮重合体等が挙げられる。

【００３０】ジイソシアネー卜としては、トリレンジイ
ソシアネート、イソホロンジイソシネート、ヘキサメチ
レンジイソシアネート等が挙げられる。水酸基を持つア
クリレートとしては、２−ヒドロキシエチルアクリレー
ト、２−ヒドロキシプロピルアクリレート、ペンタエリ
スリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトール
ペンタアクリレート等を挙げることができる。

【００３１】多官能アクリレートとしては、分子内に３
個以上のアクリロイル基を有するものであり、具体的に
は、トリメチロールプロパントリアクリレート、ＥＯ変
性トリメチロールプロパントリアクリレート、ＰＯ変性
トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス（ア
クリロキシエチル）イソシアヌレート、カプロラクトン
変性トリス（アクリロキシエチル）イソシアヌレート、
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリス
リトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトール
テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタア
クリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレー
ト、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレ
ート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアク
リレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ
アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリト
ールヘキサアクリレート、及び、これら２種以上の混合
物を挙げることができる。

【００３２】光重合開始剤としては、ベンゾインメチル
エーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソ
プロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ジエト
キシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、２−
ヒドロキシ−２−メチルプロピオフェノン、１−ヒドロ
キシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、
２，４，６−トリメチルベンゾインジフェニルホスフイ
ンオキサイド、２−メチル−［４−（メチルチオ）フェ
ニル］−２−モルフォリノ−１−プロパノン、２−ベン
ジル−２−ジメチルアミノ−１−（４−モルフォリノフ
ェニル）−ブタン−１−オン、ミヒラーズケトン、Ｎ，
Ｎ−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、２−クロロチ
オキサントン、２，４−ジエチルチオキサントン等を挙
げることができ、これらの光重合開始剤は２種以上を適
宜に併用することもできる。

【００３３】有機溶済としては、トルエン、キシレン等
の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸
ブチル等のエステル類、メチルアルコール、エチルアル
コール、ｎ−プロピルアルコール、ｉｓｏ−プロピルア
ルコール、ｎ−ブチルアルコール等のアルコール類、ア
セトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケト
ン、シクロヘキサノン等のケトン類、２−メトキシエタ
ノール、２−エトキシエタノール、２−ブトキシエタノ
ール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレン
グリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ
メチルエーテル等のエーテル類、２−メトキシエチルア
セタート、２−エトキシエチルアセタート、２−ブトキ
シエチルアセタート等のエーテルエステル類を挙げるこ
とができ、又これらを混含して使用することもできる。

【００３４】この保護層として用いられる紫外線硬化性
樹脂は、その硬化収縮率が６％より大きく且つ１０％よ
り小さくなるように制御されていることが本発明のＰＤ
Ｐ用フィルターにとって好ましい。電磁波遮蔽層の保護
層を構成している紫外線硬化性樹脂の硬化収縮率が１０
％を越えると、保護層の体積収縮率が大きくなり、これ
によりフィルターの変形が生じる。電磁波遮蔽層と保護
層が剥離するような不都合を生じる。また、硬化収縮率
が６％未満ということは、保護層の硬化が十分でないこ
とを意味し、保護機能を発揮できず、電磁波遮蔽層の白
化現象を十分に防止できないという不都合を生じる。

【００３５】ここで、上記硬化収縮率は、硬化前の樹脂
の比重をＪＩＳＫ−６８３５で測定し、その測定値を
Ｍとすると共に硬化後の樹脂の比重をＪＩＳＫ−６９
１１で測定し、その測定値をＮとした時、式

【００３６】

【数１】硬化収縮率（％）＝（Ｎ−Ｍ）×１００÷Ｎ ……（１）で求めることができる。このような硬化収縮率は、保護
層１３ｂに照射される紫外線の積算光量を制御すること
により上記特定範囲とすることが可能である。

【００３７】次に、保護層１３ｂの表面上に設けられる
電磁波遮蔽層１４は、銀を含有する薄膜、例えば銀単
独、或いは銀−パラジウム合金等を含む層構成とされ
る。すなわち、銀をスパッタリング、蒸着等により薄膜
としないものであって、全面を覆うものや、メッシュ状
の薄膜としたものがある。

【００３８】また、銀の層と多の酸化金属、例えば酸化
インジウム、酸化亜鉛等の層との積層構造としてもよ
い。保護層１３ｂに蒸着される導電性物質は、４００〜
７００ｎｍの可視光線領域を７０％以上透過し、表面固
有抵抗値が５０Ω／口以下の銀又は他の金属酸化物等と
の積層物であることが望ましい。

【００３９】銀を含有する電磁波遮蔽層と積層される金
属酸化物としては、酸化スズ、酸化インジウムスズ（以
下、ＩＴＯという）、酸化アンチモンスズ（以下ＡＴＯ
という）酸化亜鉛、アルミニウム酸化亜鉛等の金属酸化
物等が挙げられる。金属酸化物と金属の積層は、表面固
有抵抗を低くできるので好ましい。通常、金属酸化物層
より始まり３乃至１１層程度積層する。トータルの厚み
は、透明性の点から１０〜５００ｎｍ、好ましくは５０
〜３００ｎｍが好ましい。膜厚は膜の各部分が均一であ
ることが望ましい。

【００４０】次いで、電磁遮蔽層１４の表面には、再
度、保護層１３ａが形成され、これにより電磁波遮蔽層
１４は２層の保護層１３ａ、１３ｂで挟まれていること
になる。この保護層１３ａの材料及びその形成方法は、
前述した保護層１３ｂと同じであるのでその説明を省略
する。

【００４１】このようにして形成された機能性フィルム
Ｆは粘着剤層１２を介して基板１１に貼り付けられる。
基板１１は、実質的に透明であって、吸収、散乱が大き
くない樹脂基板であればよく、特に制限はない。用いる
樹脂の具体的な例としては、ポリオレフィン系樹脂、ポ
リエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ（メ
タ）アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩
化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリレート樹脂、ボ
リエーテルサルホン樹脂等をあげることができる。

【００４２】これらの中では、特に非晶質のポリオレフ
ィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹
脂、ポリ（メタ）アクリル酸エステル樹脂、ポリアリレ
ート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂が好ましい。上記
透明樹脂基板用樹脂には、一般的に公知である添加剤、
例えばフエノール系、燐系などの酸化防止剤、ハロゲン
系、燐酸系等の難燃剤、耐熱老化防止剤、滑剤、帯電防
止剤等を配合することができる。

【００４３】透明樹脂基板は、公知の射出成形、Ｔダイ
成形、カレンダー成形、圧縮成形などの方法を用い、シ
ート（板）状に成形される。シート状の厚みとしては、
目的に応じて、１ｍｍ〜８ｍｍの範囲が望ましい。かか
る透明な基板１１は、他のプラスチック基材と積層され
ていても良い。この透明樹脂基板の一方の面には、傷付
き防止のため傷付き防止層即ちハードコート層を形成す
ることも好ましい。この場合、傷付き防止層を形成した
面とは反対側の他方の面に機能性フィルムＦをその粘着
剤層１２を用いて貼り合わせる。

【００４４】傷付き防止層は、例えば、ウレタンアクリ
レート、エポキシアクリレートなどの単官能あるいは多
官能アクリレートと、光重合開始剤、及び有機溶剤を主
成分とするハードコート剤より形成される。また、耐摩
耗性向上のため、コロイド状金属酸化物、有機溶剤を分
散媒としたシリカゾルを加えることもでき、或いは紫外
線吸収剤を加えることもできる。

【００４５】最後に、前述したようにして得られた機能
性フィルム付き基板即ちフィルター本体の両面に反射防
止層１６、１７を形成する。この機能性フィルム付き基
板の両面に反射防止層１６、１７を設けることにより、
ＰＤＰ前面に本発明のＰＤＰ用フィルター１０を設置し
た場合、ＰＤＰ側の反射防止層１６は、ＰＤＰからの光
の透過率を上げ、逆側（人の目の近い方）の反射防止層
１７は、蛍光灯などの外光の写り込みを防ぐ効果があ
り、画像の視認性が向上する。

【００４６】反射防止層１６、１７は、比較的低屈折率
である酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、フ
ッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、酸化アルミニウ
ム、あるいは特開平２ー１９８０１号公報に開示されて
いるような非晶性含フッ素重合体から構成される。

【００４７】形成方法としては、金属アルコキシドを塗
布後焼成する方法、真空蒸着法、スパツタリング法、イ
オンプレーティング法、ＣＶＤ法、あるいはロールコー
ト法、浸漬塗装法等が挙げられる。経済性、ハンドリン
グの点より、非晶性含フッ素重合体をフッ素系溶剤に溶
解させた溶液を、浸漬塗装によりコーティングすること
が好ましい。コーティングの膜厚は、１０〜１０００ｎ
ｍ、好ましくは２０〜５００ｎｍである。

【００４８】前述したＰＤＰ用フィルター１０の層構成
は、単なる一例であって、本発明はこのような層構成に
限定されるものではなく、図２に示されるような構成と
することができる。図２に示される他の実施形態のＰＤ
Ｐ用フィルター３０では、電磁波遮蔽層１４を挟み込ん
で配置されている保護層１３ａ、１３ｂの内、保護層１
３ｂのＰＤＰ側には隣接して近赤外線吸収層３１が設け
られている。

【００４９】この近赤外線吸収層３１を除いた他の構成
要素は、図１に示されるＰＤＰ用フィルター１０と同じ
である。すなわち、このＰＤＰ用フィルター３０では、
電磁波遮蔽層１４及びこれを挟むように紫外線硬化性樹
脂からなる保護層１３ａ、１３ｂが配置され、この保護
層１３ｂのＰＤＰ側に近赤外線吸収層３１が積層配置さ
れていることになる。

【００５０】このように電磁波遮蔽層のための保護層に
加えて近赤外線吸収層３１を配置することにより、銀を
含有する電磁波遮蔽層の白化による透明性の低下を防ぐ
ことができると共に、家庭電化製品や家庭用設備を誤動
作させるような近赤外線の放出も防止することができ
る。

【００５１】すなわち、ディスプレイから放出される近
赤外線の波長は、約２００〜１４００ｎｍであるが、そ
の相対強度としては、特に８００〜１１００ｎｍの波長
が最も高い。ところで、テレビや空気調和装置などの家
庭電化製品をはじめとして、近年では多くの家庭用設備
などは、赤外線式リモートコントロール装置で操作でき
るようになってきている。

【００５２】このような家庭電化製品や家庭用設備を操
作する赤外線式リモートコントロール装置に使用されて
いる近赤外線の波長は、ＰＤＰの駆動時に放出される前
述した相対強度の高い近赤外線領域に近いことから、こ
れらの家庭電化製品や家庭用設備が誤動作する恐れがあ
る。また、このような誤動作は光通信などにも起こる恐
れがある。しかし、前述したように相対強度の高い近赤
外線を吸収してその放出を防止する近赤外線カット（吸
収）層を設けることにより、家庭電化製品、家庭用設
備、又は光通信などに対する誤動作の発生を避けること
ができる。

【００５３】用いられる近赤外線吸収剤としては、有機
物質であるニトロソ化合物及びその金属錯塩、シアニン
系化合物、スクワリリウム系化合物、チオールニッケル
錯塩系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシア
ニン系化合物、トリアリルメタン系化合物、イモニウム
系化合物、ジイモニウム系化合物、ナフトキノン系化合
物、アントラキノン系化合物、又はアミノ化合物、アミ
ニウム塩系化合物、あるいは無機物であるカーボンブラ
ックや、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、周
期表４Ａ、５Ａ又は６Ａ族に属する金属の酸化物、もし
くは炭化物、又はホウ化物などが挙げられる。これらの
うち少なくとも２種類を用いる。

【００５４】更に、少なくとも１種は、イモニウム系化
合物、ジイモニウム系化合物、あるいはアミニウム塩系
化合物から選ばれる近赤外線吸収剤を用いることが好ま
しい。より好ましくは、イモニウム系化合物、ジイモニ
ウム系化合物及びアミニウム塩系化合物以外の、上記近
赤外線吸収剤より選ばれる少なくとも１種を併用する。

【００５５】本発明のＰＤＰ用フィルターでは、４００
〜７００ｎｍの可視光線透過率が５０％以上、好ましく
は６５％以上、また８５０〜１０００ｎｍの近赤外線透
過率が１５％以下、好ましくは１０％以下であり、更に
３０〜１００ＭＨｚの電磁波遮蔽性能が３０ｄＢ以上の
性能を有し、ＰＤＰ用フィルターとして好適なものであ
る。

【００５６】前述した各実施形態に係るＰＤＰ用フィル
ターでは、電磁波遮蔽層１４の両面側に保護層１３ａ、
１３ｂを配置した例、及び保護層１３ｂのＰＤＰ側に更
に近赤外線吸収層３１を積層配置した例について説明し
たが、本発明はこのような層構成に限定されるものでは
ない。本発明のＰＤＰ用フィルターでは、例えば、酸素
バリア層を近赤外線吸収層３１の片面側に形成してもよ
い。

【００５７】更に、本発明のＰＤＰ用フィルターでは、
支持フィルム１５を形成する際に酸素透過率の低い樹脂
を混合して当該支持フィルム１５に酸素バリア性能を持
たせるようにしてもよい。また、本発明のＰＤＰ用フィ
ルターでは、透明基板１１に機能性フィルムＦを貼り付
けて構成されているが、この機能性フィルムＦを直接Ｐ
ＤＰの表面に貼り付けて使用することもできる。

【００５８】

【実施例】次に、本発明におけるディスプレイ用フィル
ターの実施例について説明する。（実施例１）５０μｍのポリエチレンテレフタレート
（ＰＥＴ）フィルムにジペンタエリスリトールヘキサア
クリレートとジペンタエリスリトールとの混合物の４０
％メチルエチルケトン溶液をバーユーターにて、乾燥時
の厚みが３μｍとなるようにコーティングし、乾燥後、
高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させ、保護層とした。そ
の上に、銀を２００μｍの厚みで蒸着し、電磁波遮蔽層
とした。その上に、電磁波遮蔽層の周縁部分を除いた表
面上に上記と同じ紫外線硬化樹脂を塗布し、硬化させて
保護層とした。同様に周縁部分を除いてアクリル系接着
剤を塗布して乾燥した。

【００５９】一方、３ｍｍの厚さのアクリル板の周囲に
粘着剤付きの銅箔でその表面縁部と側面部を覆うように
コ字形に被覆した。上記のＰＥＴフィルムとアクリル板
とを重ね合わせ、周囲の銀層と銅箔との間を導電性の接
着剤により導通状態に接着し、その他の部分は上記した
アクリル系接着剤で接着した。更に、全体の外縁部を導
電性粘着剤付きの銅箔で覆い且つ両表面にフッ素系樹脂
からなる反射防止層をコーティングした。得られたフィ
ルターの断面図を図１に示した。

【００６０】フィルムの保護層側と３ｍｍのアクリル板
を粘着剤で貼り合わせた後、両面に反射防止層をコーテ
ィングした。このフィルターを７０℃、９０％の雰囲気
に１００ｈｒ放置する環境テストを行った。環境テスト
前後の可視光線透過率を測定した。

【００６１】（実施例２）実施例１において、２層目の
保護層を設けた後にアクリル樹脂バインダー溶液（固形
分量１０％）にジイモニウム系色素（固形分に対し６
％）を溶解した色素液を塗布し、３μｍ厚（乾燥後）の
近赤外線吸収層を形成した以外は実施例１と同様にして
フィルターを得た。得られたフィルターの断面図を図２
に示す。実施例１と同じ条件下に可視光線透過率の低下
を測定した。環境テスト前の透過率は６５％、テスト後
は６４％であった。

【００６２】（比較例１）保護層を設けない（２層と
も）以外は実施例１と同様にしてフィルターを製造し
た。実施例１と同様に７０℃、９０％の雰囲気下に１０
０時間放置した後、可視光線透過率を測定した。

【００６３】

【表１】

【００６４】

【発明の効果】以上説明したように、本発明のディスプ
レイ用フィルターによれば、紫外線硬化性樹脂からなる
保護層を電磁波遮蔽層の少なくとも片面に積層配置した
ことから、電磁波遮蔽層の酸素や水分による白化を防い
でその透明性を維持することができ、その結果プラズマ
ディスプレパネルの品質を長期間に亘って保障すること
ができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態に係るプラズマディスプレ
イパネル用フィルターの端部を部分的に示す断面図であ
る。

【図２】本発明の他の実施形態に係るプラズマディスプ
レイパネル用フィルターの端部を部分的に示す断面図で
ある。

【符号の説明】

１０プラズマディスプレイパネル用フィルター１１基板１２粘着剤層１３ａ保護層１３ｂ保護層１４電磁波遮蔽層１５支持フィルム１６反射防止層１７反射防止層１８粘着剤層１９金属箔２０導電性接着剤層２１空間部２２金属箔３０プラズマディスプレイパネル用フィルター３１近赤外線吸収層Ｆ機能性フィルム

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続きＦターム(参考） 2K009 AA00 AA02 AA15 BB11 CC03 CC14 CC24 DD01 DD02 DD03 DD04 EE03 5E321 AA04 AA14 BB23 BB25 BB41 BB53 CC16 GG01 GG05 GH01 5G435 AA03 AA13 AA14 BB02 BB06 EE49 GG11 GG33 GG34 HH02 KK07

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】ディスプレイの前面に取り付けられるフ
ィルターであって、銀を含む電磁波遮蔽層と、紫外線硬化性樹脂からなる保
護層とを少なくとも備え、前記保護層が前記電磁波遮蔽
層を挟み込むようにその両面に積層配置されていること
を特徴とするディスプレイ用フィルター。
【請求項２】前記電磁波遮蔽層に隣接して近赤外線吸
収層が更に配置されていることを特徴とする請求項１に
記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項３】前記電磁遮蔽層が銀の蒸着膜から構成さ
れていることを特徴とする請求項１又は２に記載のディ
スプレイ用フィルター。
【請求項４】前記保護層を構成する紫外線硬化性樹脂
の硬化収縮率が１０％以下に制御されていることを特徴
とする請求項１〜３のいずれかに記載のディスプレイ用
フィルター。
【請求項５】前記ディスプレイ用フィルターは、電磁
波遮蔽層と、この電磁波遮蔽層の表面上において周囲領
域を除いて形成された保護層と、前記電磁波遮蔽層の表
面における前記周囲領域の保護層非形成領域に、前記保
護層との間に空間部を設けて形成された導電性粘着剤層
とを含み、前記保護層の表面とその周囲に形成された前
記導電性粘着剤層の表面とが基板に貼り合わされ、前記
導電性粘着剤層が位置する前記基板表面の周囲領域にお
いて前記基板と前記導電性粘着剤層との間に配置され、
外部アース用端子に前記導電性粘着剤層を電気的に導通
させる導電材を少なくとも備え、前記電磁波遮蔽層が前
記導電性粘着剤層及び前記導電材を介して前記外部アー
ス用端子に電気的に接続される構造とされていることを
特徴とする請求項１に記載のディスプレイ用フィルタ
ー。
【請求項６】前記導電材が少なくとも前記基板の端面
にまで及んで設けられていることを特徴とする請求項２
に記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項７】前記支持フィルムの表面に形成された前
記電磁波遮蔽層上に前記保護層及びその周囲に存する前
記導電性粘着剤層が配置され、更にこれら保護層及び前
記導電性粘着剤層の表面に、外周に導電材が設けられた
基板が順次に積層されてなるフィルター本体の周囲縁部
を包囲するように電極が設けられ、この電極が前記導電
材と積層して電気的に導通し、この電極が前記外部アー
ス用端子に電気的に接続される構造とされていることを
特徴とする請求項２又は３に記載のディスプレイ用フィ
ルター。