JP2001048535A - 低次金属酸化物の製造方法および低次金属酸化物 - Google Patents

低次金属酸化物の製造方法および低次金属酸化物

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JP2001048535A
JP2001048535A JP11227498A JP22749899A JP2001048535A JP 2001048535 A JP2001048535 A JP 2001048535A JP 11227498 A JP11227498 A JP 11227498A JP 22749899 A JP22749899 A JP 22749899A JP 2001048535 A JP2001048535 A JP 2001048535A
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Toshio Ono
寿男 小野
Makoto Mihara
誠 三原
Koji Kawahara
弘二 河原
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 黒色系の低次金属酸化物が効率的かつ簡易に
得られる低次金属酸化物の製造方法等を提供する。 【解決手段】 アミノアルコール、カルボン酸化合物、
ヒドロキシカルボン酸、β−ジケトン化合物、およびβ
ージケト酸エステル化合物からなる群から選択される少
なくとも一つの化合物と、金属アルコキシドとの反応物
である金属酸化物前駆体を含む金属酸化物前駆体溶液を
調製する工程と、当該金属酸化物前駆体溶液を400〜
700℃の範囲内の温度で加熱する工程とを含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低次金属酸化物の
製造方法およびその製造方法により得られる低次金属酸
化物に関する。より詳しくは、黒色系の低次金属酸化物
が効率的かつ簡易に得られる低次金属酸化物の製造方法
およびその製造方法により得られる黒色系の低次金属酸
化物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、黒色系の低次酸化チタン粉末が、
黒色顔料、記録紙の導電層材料、あるいは静電気防止材
料等の用途に用いられている。そして、このような黒色
系の低次酸化チタン粉末の製造方法として、例えば、特
公昭59−50604号公報には、二酸化チタン粉末
を、アンモニアガス雰囲気中、約500〜950℃の温
度で加熱する製造方法が開示されている。また、特公昭
61−56170号公報には、水素と四塩化チタンとか
らなる燃焼生成物を、800〜1100℃の温度範囲の
水素を含む還元ガス雰囲気中に、10〜1000分間置
き、その雰囲気のまま450℃以下の温度まで冷却する
黒色低次酸化チタン微粉末の製造方法が開示されてい
る。
【0003】また、特開昭59−199530号公報に
は、二酸化チタンと金属チタンとのモル比が2.4:1
〜12:1の範囲内の値になるように混合した後、不活
性気体中、温度800〜1000℃、時間2〜5時間の
条件で加熱処理し、比抵抗が100Ω・cm以下であっ
て、平均粒径が0.1〜1μmである導電性酸化チタン
粉末を製造する方法が開示されている。さらに、特開昭
62−260865号公報には、オルトチタン酸粉末を
アンモニアガス雰囲気中で、600〜900℃の温度で
加熱した後、黒色度の指標であるL値が13未満になる
まで還元する黒色顔料の製造方法が開示されている。
【0004】一方、特開平4−193940号公報に
は、ステンレス等の金属材表面に、アルコキシチタンや
チタンキレート等の酸素含有チタン有機化合物を含むア
ルコール溶液を塗布した後、水素ガス雰囲気中、温度5
00〜1000℃、時間10〜30分の条件で加熱し、
低次酸化チタン膜としてのTiOx(0<x<2)層を
形成する金属材のカラーコーティング方法が開示されて
いる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公昭
59−50604号公報、特公昭61−56170号公
報、特開昭59−199530号公報、および特開昭6
2−260865号公報に開示されたいずれの製造方法
も、低次酸化チタンからなる粉末を得ることのみを主眼
としており、基材上に、均一な厚さを有する黒色系の低
次酸化チタン膜を形成することは困難であった。また、
いずれの製造方法もアンモニアガス、水素ガス、あるい
は不活性気体の使用が不可欠であり、製造装置や製造工
程が複雑化したり、製造コストが上昇しやすい等の問題
も見られた。
【0006】また、特開平4−193940号公報に開
示された金属材のカラーコーティング方法は、アルコキ
シチタン等の保存安定性に乏しく、ゲル化しやすい酸素
含有チタン有機化合物を使用しているため、製造管理が
容易でなく、また、基材上に均一な厚さを有するフィル
ム状の低次酸化チタン膜を形成することが困難であっ
た。また、アルコキシチタン等の酸素含有チタン有機化
合物は、上述した加熱条件では、白色あるいは褐色の酸
化チタン等の膜しか得られず、黒色度が不十分であると
いう問題も見られた。さらに、開示されたカラーコーテ
ィング方法は、引火性の高い水素ガスを用いて高温加熱
する必要があるため、安全性の点でも問題も見られた。
【0007】このような状況下、本発明の発明者は従来
の問題を鋭意検討した結果、出発原料として、保存安定
性に優れた金属酸化物前駆体溶液を用いるとともに、焼
成温度を所定範囲内に制限することにより、大気中であ
っても、黒褐色の低次金属酸化物の薄膜が効率的に得ら
れることを見出し、本発明を完成したものである。すな
わち、本発明は、水素ガス等の還元ガスを用いることな
く、均一な厚さの黒色系の薄膜フィルム等を効率的かつ
簡易に形成することが可能な低次金属酸化物の製造方
法、およびその製造方法から得られる低次金属酸化物を
提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、アミノアルコ
ール、カルボン酸化合物、ヒドロキシカルボン酸、β−
ジケトン化合物、およびβージケト酸エステルからなる
群から選択される少なくとも一つの化合物と、金属アル
コキシドとの反応物である金属酸化物前駆体を含む金属
酸化物前駆体溶液を調製する工程(第1の工程と称する
場合がある。)と、当該金属酸化物前駆体溶液を400
〜700℃の範囲内の温度で加熱する工程(第2の工程
と称する場合がある。)と、を含む低次金属酸化物の製
造方法である。このように保存安定性に優れた金属酸化
物前駆体溶液を特定温度で加熱して低次金属酸化物を製
造することにより、水素ガス等を用いることなく、均一
な厚さの黒色系の薄膜フィルム等を効率的かつ簡易に形
成することが可能である。
【0009】また、本発明の別の態様は、上述した第1
および第2の工程を含む低次金属酸化物の製造方法で得
られる低次金属酸化物、例えば、シリコン、チタン、ア
ルミニウム、亜鉛、鉄、マンガン、銅、ジルコニウム、
スズ、ストロンチウム、およびバリウムのすくなくとも
1つの金属を含む低次酸化物である。このような低次金
属酸化物は、黒色度が高く、しかも均一な厚さや所定の
導電性を有していることから、塗膜や黒色導電層等の用
途に最適である。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明における低次金属酸化物の
製造方法、および低次金属酸化物に関する実施の形態を
具体的に説明する。
【0011】[第1の実施の形態]第1の実施の形態は
低次金属酸化物の製造方法であって、以下の第1および
第2の工程をそれぞれ含んでいる。 第1の工程 アミノアルコール、カルボン酸化合物、ヒドロキシカル
ボン酸、β−ジケトン化合物、およびβージケト酸エス
テルからなる群から選択される少なくとも一つの化合物
と、金属アルコキシドとの反応物である金属酸化物前駆
体および溶媒を含む金属酸化物前駆体溶液を調製する工
程である。 第2の工程 第1の工程で得られた金属酸化物前駆体溶液を基材上に
塗布した後、400〜700℃の範囲内の温度で加熱す
る工程である。
【0012】(1)金属酸化物前駆体 第1の工程で、金属酸化物前駆体を調製する際に使用す
る金属アルコキシド、アミノアルコール(アルカノール
アミンと称する場合がある。)、カルボン酸化合物、ヒ
ドロキシカルボン酸、β−ジケトン化合物、およびβー
ジケト酸エステルあるいはこれらの化合物を反応させて
得られる金属酸化物前駆体自身について詳細に説明す
る。なお、本発明の製造方法においては、金属酸化物前
駆体から低次金属酸化物を作製するのが主目的である
が、便宜上、低次金属酸化物前駆体と呼ばずに、金属酸
化物前駆体と呼ぶことにする。
【0013】金属アルコキシド 金属アルコキシドは、金属原子に少なくとも一つのアル
コキシ基が結合した化合物であり、好ましくは、下記一
般式(1)で表される化合物である。 M(OR1m (1) [一般式(1)中、Mは、チタン、シリコン、アルミニ
ウム、亜鉛、鉄、マンガン、銅、ジルコニウム、スズ、
ストロンチウム、およびバリウムの少なくとも一つの金
属であり、R1は、アルキル基、アリール基、アシル基
であり、mは、金属Mの原子価を表す。]
【0014】一般式(1)中における記号R1で表され
るアルキル基、アリール基またはアシル基の種類として
は、具体的に、メチル基、エチル基、プロピル基、i−
プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチ
ル基、s−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ベン
ジル基、ナフチル基等、ホルミル基、アセチル基、プロ
ピオニル基等が挙げられる。また、より保存安定性に優
れた金属酸化物前駆体、例えばチタンアミノアルコール
錯体等が得られることより、R1は直鎖または分岐を有
するアルキル基であることがより好ましく、特に、分岐
を有するアルキル基、例えばi−プロピル基であること
がさらに好ましい。
【0015】また、一般式(1)における記号Mで表さ
れる金属は、上述したようにチタンやシリコン等の少な
くとも一つの金属である。したがって、酸化することに
より低次の酸化チタン、酸化シリコン、酸化アルミニウ
ム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化スズ、
酸化ストロンチウム、および酸化バリウムからなる群か
ら選択される少なくとも一つの低次金属酸化物が生成さ
れることになる。ただし、記号Mで表される金属は、よ
り好ましくはチタン単独、あるいはチタンとシリコンと
の組み合わせである。低次酸化チタンは、非酸素下の焼
成により得られ、黒色度が高くて半導体としての性質を
示す。また、シリコン−チタン低次酸化物は、酸素下の
焼成によって得られ、低次酸化チタンと同様の黒色度を
有することが可能であり、絶縁体を得ることができる。
また両者とも酸素雰囲気下で再加熱することにより黒色
を消失させることができる。なお、一般式(1)におけ
る金属Mがチタンの場合には、原子価mは4となり、シ
リコンの場合には、原子価mは3となる。
【0016】具体的に、一般式(1)で表される好まし
い金属アルコキシドとしては、テトラメトシキシチタ
ン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、
テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、
テトラメトシキシシラン、テトラエトキシシラン、テト
ラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テ
トラブトキシシラン、テトラメトシキシアルミニウム、
テトラエトキシアルミニウム、テトラプロポキシアルミ
ニウム、テトライソプロポキシアルミニウム、テトラブ
トキシアルミニウム等の一種単独または二種以上の組み
合わせが挙げられる。これらのうち、特に、テトライソ
プロポキシチタンや、このテトライソプロポキシチタン
とテトライソプロポキシシランとの組合わせが好まし
い。
【0017】アミノアルコール 第1の工程において使用されるアミノアルコールは、金
属酸化物前駆体の保存安定性を向上させるために金属ア
ルコキシドと反応させられる。このようなアミノアルコ
ールは、1分子中に、アミノ基とアルコール性水酸基と
を有する化合物と定義されるが、好ましくは、一般式
(2)で表される化合物である。 (HOR2sN(R3t (2) [一般式(2)中、R2は、アルキレン基またはアリー
レン基であり、sは、1、2または3であり、R3は、
水素、アルキル基またはアリール基であり、tは(3−
s)である。]
【0018】ここで、一般式(2)におけるR2のアル
キレン基またはアリーレン基の種類としては、特に制限
されるものではないが、より保存安定性に優れた金属酸
化物前駆体が得られることから、メチレン基、エチレン
基、i−プロピレン基、n−プロピレン基、i−ブチレ
ン基、n−ブチレン基、s−ブチレン基、t−ブチレン
基、フェニレン基、ベンジレン基、ナフチレン基が挙げ
られる。また、さらに安定した金属酸化物前駆体が得ら
れることより、一般式(2)におけるR2は直鎖または
分岐を有するアルキレン基であることがより好ましく、
特に、分岐を有するアルキレン基であることが好まし
い。
【0019】したがって、好ましいアミノアルコールの
具体例として、トリエタノールアミン、ジエタノールア
ミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノー
ルアミン、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノ
ールアミン等の一種単独または二種以上の組合わせが挙
げられる。また、こらのアミノアルコールのうち、特に
トリエタノールアミンとジエタノールアミンとの混合物
が好ましい。この理由は、これらの混合物からなるアミ
ノアルコールを使用することにより、金属酸化物前駆体
の保存安定性をより高めることができるためである。な
お、トリエタノールアミンとジエタノールアミンと混合
比率につき、当該トリエタノールアミン1モルに対し
て、ジエタノールアミンの混合量を0.2〜1.5モル
の範囲内の値とすることが好ましい。
【0020】カルボン酸化合物 第1の工程において使用されるカルボン酸、およびヒド
ロキシカルボン酸化合物は、金属酸化物前駆体の保存安
定性を向上させるために金属アルコキシドと反応させら
れる。このようなカルボン酸およびヒドロキシカルボン
酸化合物は、1分子中に、少なくとも一つのカルボキシ
ル基を有する化合物と定義されるが、好ましくは、一般
式(3)で表されるカルボン酸化合物が好ましい。 X−(COOH)n (3) [一般式(3)中、Xは置換可能なn価の炭化水素基で
あり、nは1〜10の整数である。]
【0021】また、このようなカルボン酸化合物として
は、具体的に、酪酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、
クエン酸アルキルエステル、酒石酸、シュウ酸、オキシ
二酢酸、フタル酸、マレイン酸、無水フタル酸、無水マ
レイン酸、ピロリット酸等の一種単独あるいは二種以上
の組み合わせが挙げられる。なお、これらの化合物は、
特公昭50−5177号公報、および特開平1−106
892号公報の実施例の記載に準拠して製造することが
できる。
【0022】β−ジケトン化合物及びβ−ジケト酸エ
ステル類 第1の工程において使用されるβ−ジケトン化合物及び
β−ジケト酸エステル類は、金属酸化物前駆体の保存安
定性を向上させるために金属アルコキシドと反応させら
れるものである。このようなβ−ジケトン化合物は、1
分子中に、ケト基を2個有し、これらのケト基が1個の
炭素原子を隔てて結合された化合物と定義されるが、具
体的に、アセチルアセトン等が挙げられる。
【0023】反応比率 金属酸化物前駆体を形成する際の、金属アルコキシドと
アミノアルコールとの反応比率、金属アルコキシドとカ
ルボン酸、あるいはヒドロキシカルボン酸化合物との反
応比率および金属アルコキシドとβ−ジケトンあるいは
β−ジケト酸エステル類との反応比率は、それぞれ特に
制限されるものではなく、金属アルコキシドと反応させ
る化合物の種類に応じて変更することが好ましい。例え
ば、金属アルコキシドとアミノアルコールとの反応比率
については、金属酸化物前駆体中の金属(M)とアミノ
アルコール中のチッソ元素(N)とのモル比(M:N)
において、2:1〜1:4の範囲内の値とすることが好
ましい。この理由は、金属(M)とチッソ元素(N)と
のモル比が2:1よりも大きくなると、反応生成物の保
存安定性が低下する場合があるためであり、一方、かか
るモル比が1:4よりも小さくなると、酸化時に不要な
ガスが多量に発生するとともに、生成した金属酸化物の
透明性や平滑性を損なう場合があるためである。したが
って、金属(M)とチッソ元素(N)とのモル比が、
2:1〜1:3の範囲内の値となるように、金属アルコ
キシドとアミノアルコールとの反応比率を設定すること
がより好ましい。また、金属アルコキシドとカルボン酸
あるいはヒドロキシカルボン酸化合物との反応比率、お
よび金属アルコキシドとβ−ジケトンあるいはβ−ジケ
ト酸エステル類との反応比率についてもそれぞれ制限さ
れるものではないが、例えば、モル比で、3:1〜1:
5の範囲内の値とすることが好ましい。
【0024】アルコールの含有量 金属アルコキシドにおけるアルコキシ基の加水分解によ
り生成する下記一般式(4)で表されるアルコール(以
下、副成アルコールと称する場合がある。)の理論生成
量を100重量%としたときに、金属酸化物前駆体中に
含まれる副成アルコール量を80重量%以下の値とする
ことが好ましく、より好ましくは50重量%以下の値、
さらに好ましくは20重量%以下の値とすることであ
る。この理由は、副成アルコールの含有量をこのように
制限することにより、金属酸化物前駆体の安定性をより
向上させることができるためである。 R1(OH) (4) [一般式(4)中、R1は、一般式(1)における内容
と同様である。] なお、副成アルコールの含有量の調整方法としては、特
に制限されるものではないが、例えば、副成アルコール
の沸点以上の温度、または沸点の近傍温度で加熱した
り、あるいは減圧状態にして蒸発させることが好まし
い。
【0025】(2)金属酸化物前駆体溶液 金属酸化物前駆体溶液を、上述した金属酸化物前駆体お
よび溶媒から構成することができる。このように金属酸
化物前駆体溶液(溶媒として水を用いた場合には、特に
金属酸化物前駆体水溶液と称する場合がある。)とする
と、基材等に均一に塗布した後、所定温度で加熱するこ
とにより、フィルム状の低次金属酸化物を容易に作製で
き、しかも、金属酸化物前駆体溶液の保存安定性も良好
となるためである。
【0026】溶媒 金属酸化物前駆体溶液を調製する際に使用する溶媒とし
ては、水、あるいはモノアルコール、ジオールまたはト
リオールのアルコール化合物等が挙げられる。これらの
溶媒のうち、好ましいモノアルコールとしては、下記一
般式(5)で示されるアルコール化合物が挙げられる。 R4OH (5)
【0027】ここで、一般式(5)中のR4は、炭素数
6〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基、もしくは
炭素数5〜10の直鎖状または分岐状の酸素結合を有す
るアルキル基である。したがって、好ましいモノアルコ
ールとして、2−エチルヘキサノール、3,3,5−トリ
メチル−1−ヘキサノール、オクタノール、メトキシエ
トキシエタノール等が挙げられる。
【0028】また、ジオールとしては、下記一般式
(6)で示されるアルコール化合物が挙げられる。 HO(R5)OH (6) ここで、一般式(6)中のR5は、炭素数2〜12の直
鎖状または分岐状のアルキレン基である。したがって、
好ましいジオールとして、エチレングリコール、プロピ
レングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタ
ンジオール、ヘキサメチレンジオール、ヘキサエチレン
グリコール等の一種単独、または二種以上の組み合わせ
を挙げることができる。さらに、好ましいトリオールと
しては、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール
などを挙げることができる。なお、上述したアルコール
化合物のなかでエチレングリコールおよびグリセリンが
最も好ましい。
【0029】また、上述したアルコール化合物と、トル
エン、クロロホルムなどの非アルコール性溶媒との混合
物を使用することも好ましく、界面活性剤や増粘剤等を
溶媒とともに添加することも好ましい。
【0030】粘度 金属酸化物前駆体を金属酸化物前駆体溶液とする場合、
粘度を0.1〜1000cps(温度25℃)の範囲内
の値とするのが好ましく、より好ましくは、1〜100
cps(温度25℃)の範囲内の値とすることである。
このような値の粘度であれば、金属酸化物前駆体溶液の
使い勝手や保存安定性がさらに良好となるためである。
なお、このような粘度に調整するためには、溶媒の種
類、溶媒の添加量、金属酸化物前駆体の濃度、粘度調整
剤の種類、粘度調整剤の添加量等を適宜変更すれば良
い。
【0031】濃度 また、金属酸化物前駆体を金属酸化物前駆体溶液とする
場合、具体的に金属酸化物前駆体の濃度を、金属濃度に
換算して、0.1〜2.0モル/リットルの範囲内の値
とするのが好ましく、より好ましくは0.4〜1.5モ
ル/リットルの範囲内の値とすることである。さらに、
溶媒として水を使用する場合には、金属酸化物前駆体の
濃度を、金属酸化物濃度換算で3〜12モル/リットル
の範囲内の値とすることが好ましい。
【0032】添加剤 金属酸化物前駆体溶液に、各種用途に応じて、安定化
剤、界面活性剤、ドーパント等の各種化合物等を添加す
ることも好ましい。このような安定化剤としては、乳
酸、グリセロール、グリコール酸等が挙げられる。ま
た、これら安定化剤の添加量を、金属錯体の金属1モル
に対して、0.2〜4モルの範囲内の値とすることが好
ましく、0.2〜2モルの範囲内の値とすることがより
好ましく、0.5〜1モルの範囲内の値とすることがさ
らに好ましい。また、安定化剤の添加時期を、金属アル
コキシドとアミノアルコール等との反応後とするか、あ
るいは金属アルコキシドの加水分解中や加水分解後とす
るのが好ましい。
【0033】また、界面活性剤(消泡剤)としては、陰
イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面
活性剤等を挙げることができる。なお、界面活性剤の添
加量を、全体量の0.001〜10重量%の範囲内の値
とするのが好ましく、0.01〜5重量%の範囲内の値
とするのがより好ましい。
【0034】(3)塗布 塗布方法 第2の工程において金属酸化物前駆体溶液を基材上に塗
布する方法は、特に制限されるものでなく、デイップコ
ート、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコー
ト法、スプレーコート法、グラビア印刷法、スクリーン
印刷法、凸版印刷法、インクジェット法等を採用するこ
とができる。また、金属酸化物前駆体溶液を基材上に全
面的に塗布することもできるし、あるいは、パターン化
して塗布することも好ましい。このようにパターン化す
ることにより、最終的に黒色系の低次金属酸化物を基材
の任意の位置に形成したり、あるいは、黒色系の低次金
属酸化物からなる文字、図形、記号、線等を表示するこ
とができる。
【0035】ここで、金属酸化物前駆体溶液をパターン
化して塗布する方法としては、例えば、グラビア印刷
法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、インクジェツト法
等が挙げられる。これらの塗布方法によれば、金属酸化
物前駆体溶液を基材上に直接的にパターン塗布すること
ができ、工程数が少ないことから好ましい。またマスク
とスプレーコートなどとの組み合わせにより、不要部分
を基材に塗布しないことでパターン化することも可能で
ある。また、上述したロールコート法等の塗布方法によ
り金属酸化物前駆体溶液を基材上に全面的に塗布する
際、あるいは塗布した後、何らかのパターン法を用い
て、不要な部分を除去し、パターン化することが可能で
ある。この際のパターン法としては、レジストを用いる
方法、レーザー焼成により所定部分を金属酸化物にする
方法などを採ることが可能である。なお、不要部分の金
属酸化物前駆体は、水現像することが可能であるという
利点がある。
【0036】基材 金属酸化物前駆体溶液を塗布する基材についても特に制
限されるものでなく、例えば、ソーダガラスおよび石英
ガラスなどのガラス、ジルコニアおよびアルミナなどの
セラミックス、鉄およびステンレススチールなどの金属
等を挙げることができる。低次金属酸化物として、例え
ば、黒色系の低次酸化チタン(膜)をガラス上に形成し
た場合、自動車などの車輌用ガラス、住宅用ガラス、ビ
ル用ガラスなどの建築物用ガラス、蛍光灯、水銀灯等の
照明器具用ガラス、LCD(Liquid Crystal Display),
ブラウン管、プラズマディスプレイ、FED(Field Em
ission Display), 蛍光管、EL(Electro Luminesche
nce)等のディスプレーブ用ガラス、太陽電池用表面ガラ
ス、さらにはビン等のガラス製品の用途に幅広く使用す
ることができる。なお、ビン等のガラス製品に使用した
場合、ガラスをリサイクルするために1000℃以上の
高温で溶解させることがしばしば行われる。したがっ
て、黒色系の低次酸化チタンはさらに酸化され、白色化
してガラス成分の一つとなるので、リサイクル後のガラ
スの透明性を損なう心配がない。
【0037】特に、自動車用窓ガラスの周辺部のセラミ
ックスプリント、あるいはブラウン管、PDP、FE
D、ELなどのディスプレーのコントラスト改善用のブ
ラックマトリックス(ブラックストライプ、ブラックベ
ルトとも称する場合がある。)においては、現在、Cu
−Cr、Cu−Cr−Mn、Cu−Cr−Co、Cu−
Cr−Mn−Feなどの無機含顔料粉体にホウケイ酸ガ
ラスフリットなどの低融点ガラスをバインダ−としたも
のが使用されている。したがって、これらの配合物に
は、有害なCrを含むため環境上問題があった。またこ
れらはリサイクルの溶融時に黒色が消えないため、透明
ガラスとしてリサイクルする際の障害となっている。そ
れに対して、本発明の低次酸化チタン前駆体を使用する
ことにより、Crなどの環境上問題のある物質の使用を
避けることができるとともに、透明ガラスへとリサイク
ルすることが可能となる。なお、本発明の低次酸化チタ
ン前駆体は、バインダーと黒色顔料を同時に兼ねるもの
であり、同一フィルム厚さの場合には、黒色度が既存の
黒色フィルム層に比例して、より黒くすることができ
る。したがって、一定の黒色度を要求される用途では、
フィルム層の厚さをより減らすことができる。そのた
め、PDPなどのブラックベルト形成に際して、その厚
さをより低減することができ、通常、ITO電極よりも
ブラックベルト層の厚さが厚くなっているが、ブラック
ベルト層の厚さをITO電極層の厚さに可能な限り近づ
けることができる。よって、ITO層とブラックベルト
層との平坦性が増すため、その上層に誘電体層を塗布形
成した場合に、ITO膜とブラツクベルト層との角の隙
間がより減少する効果も得られる。
【0038】(4)加熱条件 加熱温度 第2の工程において低次金属酸化物を作成するには、金
属酸化物前駆体を基材上に塗布、乾燥した後、所定の焼
成温度で焼成することになる。第1の実施形態では、こ
の焼成温度を400℃〜700℃の範囲内の値とするの
が好ましく、480℃〜650℃の範囲内の値とするの
がより好ましく、550℃〜600℃の範囲内の値とす
るのがさらに好ましい。この理由は、金属酸化物前駆体
の加熱温度が400℃未満となると、有機物が残り、低
次金属酸化物の純度が著しく低下したり、基材に対する
密着力が低下する場合があるためでり、一方、金属酸化
物前駆体の加熱温度が700℃を超えると、過度に酸化
されて、黒色度が低下したり、基材の軟化や熱損傷が生
じる場合があるためである。
【0039】加熱方法 金属酸化物前駆体の加熱方法も特に制限されるものでは
ないが、より具体的には、金属酸化物前駆体(金属酸化
物前駆体溶液、あるいはこれから得られるゲルも含
む。)を基体上に塗布、乾燥し、金属酸化物前駆体から
なる薄層を形成した後、通常、加熱炉や赤外線ヒータ、
ハロゲンランプあるいは電熱炉、さらには誘導加熱等の
手法を用いることが好ましい。またあらかじめ金属酸化
物前駆体を塗布された基材を加熱された金型などに密着
させ、基材を金型に沿って曲げ加工させながら加熱する
ことも可能である。
【0040】加熱時間 また、金属酸化物前駆体の加熱時間についても特に制限
されるものではなく、加熱温度や加熱方法にもよるが、
例えば、2分〜30分の範囲内であることが好ましい。
この理由は、加熱時間が2分未満となると、有機物が残
り、低次金属酸化物の純度が著しく低下したり、基材に
対する密着力が低下する場合があるためである。一方、
金属酸化物前駆体の加熱時間が30分を超えると、基材
が軟化変形や酸化などのダメージを受ける、あるいは過
度に酸化されて、黒色度が低下する場合があるためであ
る。したがって、金属酸化物前駆体の加熱時間を2分〜
20分の範囲内とするのが好ましく、3分〜10分の範
囲内とするのがさらに好ましい。
【0041】加熱雰囲気 第1の実施形態の製造方法によれば、低次金属酸化物の
加熱はアルゴン、窒素ガスなどの非酸素下雰囲気で行
い、黒色性の低次金属酸化物を効率的に得ることができ
る。例えば、金属酸化物前駆体としてチタントリエタノ
ールアミン錯体を600℃、5分の条件で加熱すること
により、体積対抗率を1×109Ω・cm以下の値、O
D値を2以上の値にそれぞれ容易に制御することができ
る。ここでOD値とは、Optical Densit
yのことであり、log10(I0/I)で表される値で
ある。ここでI0は入射光強度であり、Iは透過光強度
である。
【0042】(5)低次金属酸化物 第1の実施形態によれば、低次金属酸化物の形状を粒子
状とすることもできるが、均一な厚さを有するフィルム
状とすることも容易である。低次金属酸化物が粒子状の
場合、平均粒径を0.01〜1000μmの範囲内の値
とするのが好ましい。この理由は、低次金属酸化物膜の
平均粒径が0.01μm未満となると、取り扱い性が低
下する場合があり、一方、平均粒径が1000μmを超
えると、粒度分布が広くなったり、あるいは分散性が低
下する場合があるためである。したがって、低次金属酸
化物膜のの平均粒径を0.1〜500μmの範囲内の値
とするのがより好ましく、0.5〜50μmの範囲内の
値とするのがさらに好ましい。さらに何らかの粒子の上
に低次金属酸化物前駆体溶液を塗布し、これを加熱する
ことで、粒子と低次金属酸化物の複合体が可能である。
ここに使用可能な粒子は、フェノールやジビニルベンゼ
ンなどの有機架橋粒子、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化
錫、ゼオライトなどの無機粒子が使用可能である。
【0043】一方、低次金属酸化物がフィルム状の場
合、低次金属酸化物膜の厚さを0.05〜50μmの範
囲内の値とするのが好ましい。この理由は、低次金属酸
化物膜の厚さが0.05μm未満となると、黒色度が低
下する場合があり、一方、厚さが50μmを超えると、
均一な厚さに形成するのが困難となり黒色がまだらにな
ったり、粉吹きが生じる場合があるためである。したが
って、低次金属酸化物膜の厚さを0.06〜35μmの
範囲内の値とするのがより好ましく、1〜25μmの範
囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0044】[第2の実施の形態]第2の実施の形態
は、第1の工程において、一般式(1)で表される金属
アルコキシドとして、酸化チタン前駆体と、チタン以外
の金属原子を含む金属酸化物前駆体(非酸化チタン前駆
体と称する場合がある。)とを併用するほかは、第1の
実施の形態と同様の低次金属酸化物の製造方法である。
このように酸化チタン前駆体と、非酸化チタン前駆体と
を併用することにより、黒色性を維持したままで、非酸
素雰囲気下でも、大気中で加熱することもいずれも可能
である。また黒色性を維持したままで、従来の低次酸化
チタンの体積抵抗値よりもより体積積抵抗の大きい複合
金属酸化物フィルムを得ることができる。
【0045】非酸化チタン前駆体における金属の種類と
しては、シリコン、アルミニウム、ゲルマニウム、ジル
コニウム、マグネシウム等が挙げられる。特に好ましい
のはシリコンおよびアルミニウムである。したがって、
非酸化チタン前駆体として、酸化シリコン前駆体および
酸化アルミニウム前駆体を使用することが好ましい。
【0046】また、非酸化チタン前駆体の添加量に関
し、酸化チタン前駆体におけるチタン100重量部に対
して、非酸化チタン前駆体における金属重量が1000
重量部以下の値となるような添加量とするのが好まし
い。この理由は、非酸化チタン前駆体の添加量が、非酸
化チタン前駆体における金属重量として、1000重量
部を超える場合には、黒色性が低下する場合があるため
である。また、酸素下で加熱する場合には、非酸化チタ
ン前駆体の金属重量を、50〜1000重量部、より好
ましくは100〜700重量部、最も好ましくは200
〜500重量部の範囲内の値とすることである。また、
非酸素下で加熱する場合は、0〜1000重量部、好ま
しくは0〜700重量部、0〜500重量部の範囲内の
値とすることである。
【0047】[第3の実施の形態]第3の実施の形態
は、第1の工程において、金属酸化物前駆体溶液中に導
電性材料を添加して調製するほかは、第1および第2の
実施の形態と同様の低次金属酸化物の製造方法である。
金属酸化物前駆体以外に、このように導電性材料を添加
することにより、黒色度と導電率の両方が高い金属酸化
物を得ることができる。この場合、大気中で加熱する場
合は、非酸化チタン金属酸化物前駆体は酸化チタン金属
前駆体金属重量100に対して、150〜500の範囲
に有ることが好ましい。150以下の場合は、黒色度と
基材密着性が低下し、500以上の場合は導電率が低下
する。またより好ましくは、酸化チタン前駆体と非酸化
チタン前駆体と導電性材料を非酸素下で加熱することが
好ましい。それにより、より黒色度と導電性の高い導電
性フィルム層を作ることができる。この場合は金属チタ
ン重量100に対して、非金属酸化チタンの金属重量は
200重量部以下、特に好ましくは100重量部以下の
値とすることである。これ以上の値となると、導電率が
低下する場合があるためである。また非酸化チタン前駆
体を加えることにより、基材との接着性がより向上する
ので、用途によりこれ以下の範囲で非酸化チタン前駆体
を添加することが好ましい場合がある。
【0048】(1)導電性材料の種類 導電性材料の種類としては、金、銀、銅、ニッケル、ア
ルミニウム、鉛、スズ、半田、酸化スズ、酸化インジウ
ム、酸化インジムスズ、酸化亜鉛、カーボン、カーブン
ブラック等の一種単独または二種以上の組み合わせが使
用可能である。また、これらの導電性材料の形状につい
ても特に制限されるものではなく、球状、扁平状、板
状、ウイスカー状、棒状、繊維状等とすることができ
る。例えば、導電性材料が球状である場合、分散性が良
好であり、しかも導電度の制御も容易となることから、
導電性材料の平均粒径を0.01〜500μmの範囲内
の値とするのが好ましい。ただし、低次金属酸化物を薄
膜とする場合には、使用する導電性材料の平均粒径を
0.05〜1μmの範囲内の値とするのが好ましい。
【0049】(2)導電性材料の添加量 導電性材料の添加量を、低次金属酸化物における金属原
子100重量部に対して、10〜1000重量部の範囲
内の値とするのが好ましい。この理由は、導電性材料の
添加量が、低次金属酸化物における金属原子に対して、
10重量部未満となると、導電性の向上が乏しい場合が
あるためであり、一方、1000重量部を超えると、導
電性材料の混合分散が困難となる場合があるためであ
る。したがって、導電性材料の添加量を、低次金属酸化
物における金属原子100重量部に対して、30〜50
0重量部の範囲内の値とするのがより好ましく、50〜
100重量部の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
従来、PDPのバス電極などの黒色導電体層には、現在
のブラックベルト用のクロム系無機顔料と低融点ガラス
フリットにさらに銀、ニッケルなどの導電体を添加した
ものが使用されている。それに対して、低次酸化チタン
と導電材料との複合導電性フィルム層は、同じ厚さであ
れば、導電度と黒色度の値をそれぞれより高くすること
ができる。また一定の導電度と黒色度にするためにより
薄いフィルム層とすることができる。その結果、ブラツ
クベルトと同様に導電セル層の厚みを薄くすることが可
能となり、ITO膜、ブラックベルト、導電セル厚さを
より同一レベルに近づけ、平坦性を向上させることがで
きる。
【0050】
【実施例】以下実施例を基に、さらに本発明を詳細に説
明する。ただし、言うまでもなく、本発明の範囲は実施
例の記載に制限されるものではない。
【0051】[実施例1] (金属酸化物前駆体の作成)500mlの丸底フラスコ
内に、アミルアルコールとしてのトリエタノールアミン
(200mmol、29.8g)、および金属アルコキ
シドとしてのテトライソプロポキシドチタン(100m
mol、28.4g)をそれぞれ収容した後、温度25
℃、常圧の条件で、撹拌機を用いて均一に撹拌しながら
反応させて、金属酸化物前駆体を含む反応液とした。こ
の反応液をエバポレーターポンプが連結された真空槽に
収容し、室温(25℃)条件で、常圧から開始し、40
Torrになるまで30分かけて徐々に減圧し、揮発成
分(副成アルコールであるイソプロパノール)を吸引除
去した。次いで、ヒーターを用いて、丸底フラスコの周
囲温度を50℃に昇温させた状態で1時間放置した後、
さらなる泡立ちがなくなるまで温度を80℃に昇温させ
るとともに、圧力を10Torrとして黄色のシロップ
状物を得た。この時点で、シロップ状物(金属酸化物前
駆体)中のイソプロパノールの含有量を測定したとこ
ろ、7重量%であった。
【0052】(金属酸化物前駆体および低次金属酸化物
の評価) (1)溶液の安定性得られたシロップ状の金属酸化物前
駆体に対して15mlの水を添加した後、溶液が均一と
なるまで撹拌し、さらに合計量が50mlになるまで水
を添加して、約2mol/lのチタンアミノアルコール
錯体溶液を得た。得られたチタンアミノアルコール錯体
溶液の初期粘度(測定温度25℃)を、B型粘度計で測
定するとともに、この錯体溶液を、温度40℃の条件
で、10日放置させた後の保存粘度を同様の条件で測定
し、下記式から粘度変化比を求め、溶液の安定性を評価
した。その結果、粘度変化比は1.2であり、小さいこ
とが確認された。 粘度変化比=保存粘度/初期粘度
【0053】(2)製膜性 得られたシロップ状物に対して15mlの水を添加した
後、溶液が均一となるまで撹拌し、さらに合計量が50
mlになるまで水を添加して、約2mol/lのチタン
アミノアルコール錯体溶液を得た。このチタンアミノア
ルコール錯体溶液25mlに対して、フッ素系界面活性
剤FC−170(住友スリーエム(株)製)を18.7
5gと、所定量の水とを加えて、濃度1mol/lの界
面活性剤入りチタンアミノアルコール錯体溶液を調製し
た。この界面活性剤入りチタンアミノアルコール錯体溶
液を、スピンコータを用いてガラス板(厚さ2mm、5
0mm角)上に、回転数1000rpm、時間60秒の
条件で塗工した。次いで、換気された炉内に収容した
後、温度150℃、2時間の条件で加熱乾燥し、さら
に、温度580℃、5分間の条件でアルゴンガス雰囲気
下で加熱することにより、厚さ1.3μmの黒色低次二
酸化チタンフィルムを得た。得られたフィルムは平滑で
あり、優れた製膜性を有していることが確認された。
【0054】(3)吸光度等の測定 次いで、得られた得られた黒色低次二酸化チタンフィル
ムの吸光度を測定した。このフィルムにおける波長と透
過度との関係を図1に示す。また、このフィルムのOD
値は2.9であった。さらに、このフィルムについての
ESCAのスペクトルは図2に示す通りであり、このE
SCAのスペクトルから、得られた黒色低次二酸化チタ
ンフィルムには、2価(約19重量%)、3価(約38
重量%)、4価のチタン(約43重量%)がそれぞれ含
まれていることが確認された。
【0055】[実施例2]500mlの丸底フラスコ内
に、アミ7ノアルコールとしてのトリエタノールアミン
(200mmol、29.8g)を収容した。次いで、
テトラエトキシシラン(60mmol、12.5g)を
入れ、室温で1時間撹拌させた。次にテトライソプロ゜
ポキシドチタン(40mmol、11.4g)を入れ、
室温で1時間反応させた後グリセリン(20mmol、
18.4g)を加え、室温で1時間反応させた。以下実
施例1と同様な操作を行い、濃度1mol/リッターの
界面活性剤入り酸化チタン酸化珪素前駆体溶液を得た。
以下、実施例1と加熱雰囲気が空気下であることだけを
例外として、他は同様の方法によりガラス板上に厚さ
1.8μmの膜厚の黒色酸化チタン酸化珪素フィルムを
得た。そして、得られたフィルムは平滑であり、優れた
製膜性を有していることが確認された。また、黒色酸化
チタン酸化珪素フィルムの吸光度を測定し、図3に、波
長と透過度との関係を示す。さらに得られたフィルムの
OD値は、2.9であった。
【0056】なお、表1に示すように、実施例2と同様
な方法でチタンとシリコーンの組成比を変えて、シリコ
ーンチタン酸化物ガラス基板塗布物をそれぞれ作成し、
焼成するとともに、これら塗布物の外観を評価した。
【0057】
【表1】
【0058】[実施例3]実施例1で得られた酸化チタ
ン前駆体を導電性の砒素ドープシリコンウェハーにスピ
ンコートで塗布、120℃、60分間乾燥の後、580
℃、5分、アルゴンガス雰囲気中の条件で、焼成炉を用
いて焼成し、膜厚が0.07μの酸化チタン層付着シリ
コンウェハーを得た。この酸化チタン層の上から金を真
空蒸着し、キースレー(Keithley)社製のエレクトロメ
ーターにて電流値を測定し、酸化チタン層の体積抵抗値
として9x104Ω・cmという値を得た。また、実施
例2で得られたシリコーンチタン酸化物前駆体溶液を、
砒素ドープシリコンウェハーに塗布し、それぞれアルゴ
ン、空気下で焼成した以外は上記と同様にして、膜厚が
0.13μの酸化シリコーンチタン酸化物膜層付着シリ
コンウェハーを得た。上記と同様にして電流値を測定し
たところ、体積抵抗値として、1x107Ω・cm、1
x1013Ω・cmという値がそれぞれ得られた。
【0059】[実施例4]実施例2で得られた低次酸化
チタンを、100μmのライン&スペース、溝の深さ5
0μmパターンを持つグラビア印刷ロールにて、寸法3
0cm角のガラス基板に印刷した。これを120℃、6
0分間の条件で加熱乾燥した後、ウシオ電機(株)製ハ
ロゲンヒーターQIR100v1000W/Bにて、1
分間の予備点灯の後、空気存在下で5分間照射した。そ
の結果、100μmのライン&スペースで膜厚1.7μ
mの黒色パターンが得られた。
【0060】[実施例5]実施例2で得られた黒色系の
シリコン−チタン低次酸化物のガラス板塗布物をハンマ
ーとボールミルを用いて粉砕し、粒状のガラス粒子とし
た。これをアスベスト繊維シートの上に敷き詰め、空気
中、650℃、10分間の条件で加熱したところ、低次
金属酸化物の黒色が消え、無色透明なガラス多孔質体フ
ィルムが得られた。したがって、実施例1および,2で
得られた黒色系チタン酸化物及び黒色系のシリコン−チ
タン低次酸化物は、加熱すると無色透明となるため、ガ
ラス板をリサイクル際の着色の問題が回避できることが
確認された。なお、実施例1で得られた黒色系のチタン
低次酸化物ガラス板塗布物を粉砕し、同条件で加熱して
も、全く同様に無色透明なガラス多孔質体フィルムが得
られた。
【0061】
【発明の効果】本発明の金属酸化物前駆体の製造方法に
よれば、出発原料として、保存安定性に優れた金属酸化
物前駆体溶液を用いるとともに、加熱温度を所定範囲内
に制限することにより、黒褐色の高い低次金属酸化物の
薄膜等が効率的に得られるようになった。さらに、導電
性材料を添加した低次金属酸化物によれば、より高い導
電率と黒色度を兼ね備えた金属酸化物フィルムが得られ
ることが確認された。よって、本発明の低次金属酸化
物、例えば低次二酸化チタンを含む製品は、建築、車両
部品などの塗料、あるいはエレクトロニクス導電回路、
各種ディスプレーにおける導電性材料等に用いることが
期待できる。
【0062】なお、2種類以上の金属酸化物前駆体を含
み、かつ、少なくとも一つがチタン酸化物前駆体から得
られた低次金属酸化物は、酸素存在下でも黒色フィルム
層を形成することができる。これらのフィルムは建築、
車両などの塗料や、エレクトロニクス、特にディスプレ
ー用黒色絶縁材料として用いることができる。本発明の
低次金属酸化物をガラス等の黒色塗料として使用した場
合、ガラス等をリサイクルする際の着色問題を回避でき
るようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の黒色酸化チタン酸化珪素フィルムに
おける波長と透過度との関係を示す図である。
【図2】実施例1の黒色酸化チタン酸化珪素フィルムに
おけるESCAのスペクトルを示す図である。
【図3】実施例2の黒色酸化チタン酸化珪素フィルムに
おける波長と透過度との関係を示す図である。
フロントページの続き (72)発明者 河原 弘二 東京都中央区築地二丁目11番24号 ジェイ エスアール株式会社内 Fターム(参考) 4G047 CA02 CB06 CC03 CD02 4J037 AA08 AA22 CB04 CB05 CB08 CB09 CB10 CB16 DD12 DD23 DD24 EE25 EE26 EE28 EE43 FF05 FF11

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アミノアルコール、カルボン酸化合物、
    ヒドロキシカルボン酸、β−ジケトン化合物、およびβ
    ージケト酸エステル化合物からなる群から選択される少
    なくとも一つの化合物と、金属アルコキシドとの反応物
    である金属酸化物前駆体を含む金属酸化物前駆体溶液を
    調製する工程と、 当該金属酸化物前駆体溶液を400〜700℃の範囲内
    の温度で加熱する工程と、 を含むことを特徴とする低次金属酸化物の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記金属酸化物前駆体溶液が、2種類以
    上の金属酸化物前駆体を含み、かつ、少なくとも一つが
    チタン酸化物前駆体であることを特徴とする請求項1に
    記載の低次金属酸化物の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記金属酸化物前駆体溶液を、大気中ま
    たは非酸素雰囲気中で加熱することを特徴とする請求項
    1または2に記載の低次金属酸化物の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記金属酸化物前駆体溶液を、基板上に
    パターン化して塗布した後、加熱することを特徴とする
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の低次金属酸化物の
    製造方法。
  5. 【請求項5】 前記金属酸化物前駆体溶液が、導電性材
    料を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか
    一項に記載の低次金属酸化物の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか一項に記載の低
    次金属酸化物の製造方法により形成してなる低次金属酸
    化物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022039111A1 (ja) * 2020-08-21 2022-02-24 デンカ株式会社 特定の低次酸化チタンの結晶組成を有する粒子、並びにその製造方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2022039111A1 (ja) * 2020-08-21 2022-02-24 デンカ株式会社 特定の低次酸化チタンの結晶組成を有する粒子、並びにその製造方法

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