JP2001047644A - 印刷装置および印刷方法 - Google Patents

印刷装置および印刷方法

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JP2001047644A
JP2001047644A JP22810799A JP22810799A JP2001047644A JP 2001047644 A JP2001047644 A JP 2001047644A JP 22810799 A JP22810799 A JP 22810799A JP 22810799 A JP22810799 A JP 22810799A JP 2001047644 A JP2001047644 A JP 2001047644A
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Yukimitsu Fujimori
幸光 藤森
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 インクジェットプリンタによる低湿度環境下
での印刷の画質を向上する。 【解決手段】 膨潤媒体など、比較的湿度が低い環境時
に画質が損なわれる性質を有する所定の印刷媒体では、
ドットが完全に乾燥していない状態で近接したドットを
形成することで画質が向上することが実験的に確認され
た。かかる効果を得るため、このような媒体に印刷する
際には、画像領域(図中ハッチング領域に相当)の周辺
に透明ドットを記録する(図中「1」の画素に相当)こ
とで、湿度を保持し、ドットの乾燥を抑制する。シア
ン、マゼンタ、イエロなどのインクを淡いグレーに相当
する記録率で記録してもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクによりドッ
トを形成して印刷媒体上に画像を印刷する印刷装置に関
し、詳しくは比較的湿度が低い環境下での印刷に適した
印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】コンピュータで処理された画像やディジ
タルカメラで撮影した画像の出力装置として、インクジ
ェットプリンタがある。インクジェットプリンタはイン
クを吐出して印刷媒体上にドットを形成することにより
画像を印刷する。近年では、ドットが視認されにくく高
画質な印刷を実現するために、インクジェットプリンタ
での印刷に適した種々の印刷媒体が提供されている。こ
れらの印刷媒体には、媒体の表面に発色層を設けたもの
がある。
【0003】発色層を設けた印刷媒体は、いわゆる吸収
タイプと膨潤タイプの2種類に大きく分けられる。吸収
タイプの媒体とは、インク内の色素が発色層に含まれる
シリカやアルミナなどの顔料に吸着することで発色する
媒体をいう。膨潤タイプの媒体とは、ゼラチンなどのポ
リマーが発色層に含まれており、このポリマーがインク
の吸収によって膨潤して内部にインクを閉じこめること
で発色するものである。吸収タイプの媒体に用いられる
シリカなどの顔料は色素と化学的に結合しやすいものが
多いのに対し、ゼラチンなどのポリマーは色素と化学反
応しにくいものが多いため、光が当たっても化学的に変
化が起こらず、耐光性に優れる特徴がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】発色層を設けた印刷媒
体はドットが比較的密に形成される自然画に対しては非
常に画質が向上するものの、罫線などドットの記録率が
低い画像では、にじみに似た現象が生じることが見いだ
された。図15は膨潤媒体に印刷された罫線の拡大図で
ある。図示する通り、領域Aなどでにじみに似た現象が
生じ、ドットの形成位置が左右に不安定にずれ、罫線の
ガタツキが生じていることが分かる。いわゆる普通紙な
どの媒体では、ドットの記録率が高い領域でにじみが生
じるのが通常であった。これに対し、図15に示した現
象は、印刷媒体が吸収可能なインク量に十分余裕がある
領域で生じている点で、通常のにじみとは異なる現象で
ある。かかる現象は画質を大きく損ねるものであり、高
画質を指向した媒体への印刷では特に看過し得ない。こ
こでは、膨潤タイプの媒体の例を示したが、この媒体に
限らず、印刷時の湿度環境が低くなると程度の差はある
ものの色素の吸着・脱着のプロセスに少なからず影響を
受けることが見いだされた。本発明は、この課題を解決
するためになされたものであり、比較的湿度が低い環境
下での印刷時の画質の向上を図った印刷装置を提供する
ことを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上
記課題を解決するために本発明では、次の構成を採っ
た。なお、以下の説明において、印刷媒体上に印刷装置
がドットを形成できる画素全体を「印刷領域」と総称す
る。また、原画像データに対応して0%よりも高い記録
率でドットを形成する領域を「画像領域」と呼ぶ。印刷
領域から画像領域を除いた領域、即ち、原画像データに
よればドットの記録率が0%となる領域を総称して「余
白領域」と呼ぶ。
【0006】本発明は、印刷媒体上の各画素にインクを
吐出してドットを形成することで画像を印刷する印刷装
置において、原画像データをハーフトーン処理するハー
フトーン処理手段と、少なくとも前記原画像においてド
ットが形成される画素の周辺領域で、前記印刷媒体に応
じて定まる所定値以上の記録率でドットが形成されるよ
うドットの記録率を補償する記録率補償手段とを備える
ことを要旨とする。
【0007】かかる印刷装置によれば、通常ならば空白
画素となる周辺領域に所定の記録率でドットを形成する
ことができる。この周辺画素に記録されるドットの作用
によって以下に示す通り、画質を向上することができ
る。図1は周辺領域に記録されるドットの作用について
示す説明図である。先に図15に示した罫線の周囲にベ
タ領域Fを印刷した場合の拡大図である。共に膨潤媒体
に印刷したものであり、解像度などの印刷条件は図15
と同じである。図1と図15の比較から明らかな通り、
ベタ領域Fで囲むことにより、ドットの形成位置が不安
定にずれるガタツキ現象が抑制されていることが分か
る。つまり、膨潤媒体への印刷時には、周辺領域へのド
ットの記録率が高い場合に画質がよくなることが確認さ
れる。
【0008】かかる現象が生じる理由は完全に明らかで
はないが、次の通り考えることができる。図2は膨潤媒
体でのドット形成の様子を示す説明図である。図2
(a)は膨潤媒体Pについて、既にドットDTが形成さ
れている画素に対し、さらにインク滴IPが吐出された
状態を示している。ドットDTが完全に乾燥する前にイ
ンク滴IPが吐出された場合には、ドットDTの画素が
膨潤可能な状態にあるから、図2(b)に示す通り、ド
ットDTとインク滴IPとが合わさり、一つの大きなド
ットDT1を形成する。これに対し、ドットDTが完全
に乾燥・定着が完了すると、その部分は更に多くのイン
ク滴を吸収することができなくなるから、その後に吐出
されたインク滴IPは、図2(c)に示す通り、ドット
DTの周囲でインクを吸収可能な箇所にずれてドットD
T2を形成する。罫線の場合はこれがガタつきとなって
視認される。同じ画素に重ねてインクを吐出する場合の
みならず、近接した画素にインクを吐出した場合も同様
の現象が生じる。これらの実験および考察から明らかな
通り、膨潤媒体では、ドットの乾燥を抑制することによ
り画質が向上することが分かる。
【0009】ここでは、膨潤媒体を例にとって説明した
が、吸収タイプの媒体でも記録率を補償することにより
画質が改善する。吸収タイプの媒体の場合には、既に述
べた通り、発色層にインクが浸透・吸着することで発色
するが、低湿度下での印刷時は、浸透・吸着を適切に行
うことができず、画質が損なわれる場合がある。このよ
うな場合にも、吸収タイプの媒体でも記録率を補償して
印刷時の湿度を保持すれば適正なインクの浸透・吸着を
保証することができ画質を向上することができる。
【0010】一般に膨潤タイプであるか吸着タイプであ
るか、また、表面に発色層が設けられているか否かに関
わらず、各印刷媒体では、印刷に適した環境条件が存在
するのが通常である。環境条件の一つに、印刷時の湿度
条件があり、十分な画質で印刷を行うための湿度には下
限値が存在するのが通常である。印刷時の湿度条件がこ
の下限値に満たない場合には、記録率を補償して湿度を
保持することにより、画質を向上することができる。
【0011】本発明はかかる着眼に基づいてなされたも
のであり、画像領域の周辺に、本来ならばほぼ0%とな
る記録率を補償して、所定以上の記録率でドットを形成
することにより、記録時の湿度を保持して画像を構成す
るドットの乾燥を抑制し、画質を向上する。なお、図1
では、効果を顕著に現すためにベタ領域Fで画像を取り
囲んだ場合を例示したが、現実には周辺領域の記録率を
これほど高くする必要はなく、印刷媒体の種類や近接し
て形成されるドット同士の時間間隔などに応じて記録率
および周辺領域の範囲を設定すればよい。もちろん、周
辺領域のみに限らず、印刷領域全体で所定以上の記録率
を確保するものとしてもよい。
【0012】周辺領域におけるドットの記録率の確保は
種々の態様で実現することができる。例えば、透明イン
クと有色インクとを備え、前記ハーフトーン手段は、前
記原画像データに基づいて該有色インクによるドットの
オン・オフを判定する手段であり、前記記録率補償手段
は、少なくとも前記周辺領域において、前記所定値以上
の記録率を確保するよう、前記透明インクによるドット
のオン・オフを判定するものとすることができる。透明
インクによるドットを形成しても画像の色表現には何ら
影響を与えないから、乾燥の抑制効果のみを考慮して、
比較的容易に十分な記録率を確保することができる。特
に、湿度保持のために高い記録率が要求される場合、即
ち短時間で乾燥する印刷条件下での印刷に有効性が高
い。例えば、乾燥性に優れる媒体に印刷する場合、いわ
ゆるオーバラップ方式の印刷で近接したドットを時間間
隔を開けて印刷する場合などに特に有効性が高い。
【0013】一方、前記記録率補償手段は、前記ハーフ
トーン処理に先立ち、少なくとも前記周辺領域における
原画像データの階調値を、前記所定値に応じて予め定め
られた一定の階調値に補正する手段を備えるものとする
こともできる。周辺領域の画像データを淡いグレーなど
に変更した上でハーフトーン処理すれば、周辺領域にも
ドットが形成されるため、透明インクを用いることなく
乾燥を抑制することができる。階調値は、視認性の低い
値に補正することが望ましいが、必ずしもかかる値に限
定されるものではない。
【0014】また、透明インクを使うか否かに関わら
ず、前記記録率補償手段は、前記ハーフトーン処理結果
を補正して、少なくとも前記周辺領域において、前記所
定値以上の一様な記録率でドットをオンとする手段とす
ることもできる。原画像データの階調値を補正する態様
に対し、ハーフトーン処理した後に、各画素の多値化デ
ータを補正する態様に相当する。こうすれば周辺領域に
より確実に適切な記録率でドットを形成できる利点があ
る。なお、周辺領域に記録するドットは有色のドットで
も透明ドットでもよい。
【0015】本発明は、ドットの乾燥を抑制することで
画質を向上させるものであるから、印刷時の湿度が低い
ことによる影響を受けやすい所定の媒体である場合に前
記記録率補償手段を適用することが望ましい。所定の媒
体としては、例えば膨潤媒体が挙げられる。印刷媒体が
膨潤媒体であるか否かの判断は、ユーザが指定するもの
としてもよいし、印刷媒体表面の反射率など膨潤媒体特
有の物理的性質に基づいて検出する手段、バーコードな
ど膨潤媒体であることを認識可能な識別子を媒体自身に
付け、これを検出する手段を別途設けるものとしてもよ
い。
【0016】また、印刷環境が印刷媒体に応じた所定の
湿度よりも低い場合に前記記録率補償手段を適用するこ
とも好適である。所定の湿度は印刷媒体に応じて決ま
る。湿度の影響を受けやすい膨潤媒体の場合には、所定
の湿度は数十%という値となる。所定の湿度よりも低い
か否かは、内部に湿度センサを備えて判断するものとし
てもよいし、ユーザが指定するものとしてもよい。ユー
ザが指定する場合には、厳密に湿度を入力等する態様の
他、高・中・低など段階的に指定する態様を取ることが
できる。
【0017】また、既に説明した通り、ドットの乾燥を
抑制するために必要となる記録率は、解像度やドットの
記録方法など種々の印刷条件によって変動するから、印
刷モードとして、印刷媒体上に吐出されたインクの乾燥
に関与する所定のパラメータを入力する入力手段と、該
パラメータとの対応で前記所定値を記憶する記憶手段と
を備え、前記記録率補償手段は入力された前記パラメー
タに応じて前記所定値を設定して記録率を補償する手段
であるものとしてもよい。こうすれば、それぞれの印刷
条件に応じて適切にドットの乾燥を抑制することができ
る。インクの乾燥に関与するパラメータとしては、前述
の通り、印刷の解像度や、いわゆるオーバラップ印刷を
行うか否か、即ち、各ラスタを何回の主走査で形成する
か、ドットを形成するインク重量、湿度や温度など印刷
装置を用いる環境条件を適用することができる。
【0018】また、前記原画像データが文字画像である
か否かを判定する判定手段と、文字画像であると判定さ
れた場合に、前記記録率補償手段を適用する制御手段と
を備えるものとしてもよい。つまり、文字画像であるか
否かによって記録率補償手段を適用するか否かを切り替
える態様である。図15に例示したガタつきによる画質
の劣化は文字画像の場合に顕著に現れる。一方、いわゆ
る自然画の場合には比較的密にドットが形成されるた
め、記録率の補償を行わなくても十分な画質を維持する
ことができる。従って、文字画像に対してのみ記録率の
補償を行うものとすれば、自然画を印刷する際の処理負
担の軽減、インク消費量の抑制を図りつつ、十分な画質
向上効果を得ることができる。なお、文字画像とは、い
わゆる文字の印刷の他、罫線やグラフなどコンピュータ
で人工的に生成される種々の幾何学画像一般を指すもの
とする。
【0019】本発明は、印刷装置の他、以下に示す通
り、印刷方法、コンピュータプログラムを記録した記録
媒体など種々の態様で構成することができる。例えば、
印刷媒体上の各画素にインクを吐出してドットを形成す
ることで画像を印刷する印刷方法であって、(a) 原
画像データをハーフトーン処理する工程と、(b) 少
なくとも前記原画像においてドットが形成される画素の
周辺領域で、前記印刷媒体に応じて定まる所定値以上の
記録率でドットが形成されるようドットの記録率を補償
する工程と、(c) 前記工程(a)および(b)の結
果に応じて印刷媒体上にドットを形成する工程とを備え
る印刷方法とすることができる。
【0020】また、印刷媒体上の各画素にインクを吐出
してドットを形成することで画像を印刷する印刷装置に
供給するデータを生成するためのプログラムをコンピュ
ータ読みとり可能に記録した記録媒体であって、原画像
データをハーフトーン処理する機能と、少なくとも前記
原画像においてドットが形成される画素の周辺領域で、
前記印刷媒体に応じて定まる所定値以上の記録率でドッ
トが形成されるようドットの記録率を補償する機能とを
実現するプログラムを記録した記録媒体とすることもで
きる。
【0021】これらの印刷方法等によれば、先に印刷装
置で説明したのと同様の作用により低い湿度下での印刷
画質を向上することができる。なお、上記印刷方法等に
おいても印刷装置と同様、種々の付加的要素を適用でき
ることはいうまでもない。本発明は、これらの態様に限
らず、コンピュータプログラム自体またはこれと同視し
得る種々の信号として構成することも可能である。
【0022】ここで、記録媒体としては、フレキシブル
ディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカー
ド、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードな
どの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶
装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装
置、通信経路を介して他のコンピュータに供給するプロ
グラム供給装置の内部記憶装置などコンピュータが読取
り可能な種々の媒体が含まれる。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について、以
下に示す順序で実施例に基づき説明する。第1実施例
は、透明インクを用いてドットの乾燥を抑制する場合を
例示し、第2実施例は、有色インクを用いてドットの乾
燥を抑制する場合を例示する。 A.第1実施例: A−1.装置の構成: A−2.印刷データ生成処理: A−3.第1の変形例: A−4.第2の変形例: B.第2実施例: B−1.印刷データ生成処理: B−2.第3の変形例:
【0024】A.第1実施例: A−1.装置の構成:図3は実施例としての印刷装置の
概略構成を示す説明図である。この印刷装置は、プリン
タPRTとコンピュータPCとをケーブルCBにより接
続して構成される。コンピュータPCがプリンタドライ
バと呼ばれるプログラムを実行することにより、原画像
データを2値化して印刷データを生成し、プリンタPR
Tに出力する。プリンタPRTはカラーインクジェット
プリンタであり、印刷データに従って各画素ごとにドッ
トを形成して画像を印刷する。本実施例のプリンタPR
Tは、シアン、マゼンタ、イエロ、ブラックなどの有色
インクに加え、透明インクも備えている。
【0025】コンピュータPCは、フレキシブルディス
クドライブFDDやCD−ROMドライブCDDを介し
て、それぞれフレキシブルディスクやCD−ROMとい
った記録媒体からプログラムをロードし実行することが
できる。また、コンピュータPCは外部のネットワーク
TNに接続されており、特定のサーバーSVにアクセス
して、プログラムをダウンロードすることも可能であ
る。当然、これらのプログラムは、印刷に必要なプログ
ラム全体をまとめてロードする態様を採ることもできる
し、一部のモジュールのみをロードする態様を採ること
もできる。
【0026】図4は印刷装置の機能ブロックを示す説明
図である。コンピュータPCのオペレーティングシステ
ムには、プリンタドライバ10が組み込まれている。プ
リンタドライバ10は、同じくコンピュータPC上で起
動するアプリケーションプログラムAPなどから、レッ
ド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の階調値で表
されるカラー画像データを入力し、各画素ごとのドット
のオン・オフを特定する印刷データFNLを生成すると
ともに、プリンタPRTでの印刷を制御する。
【0027】プリンタドライバ10の内部には種々の機
能ブロックが含まれるが、図4では印刷データFNLの
生成に関与する部分を図示した。図示する通り、アプリ
ケーションプログラムAPからR,G,Bの階調値から
なる原画像データを受け取ると、プリンタドライバ10
の解像度変換モジュール11が必要に応じて原画像デー
タの解像度を印刷解像度に変換する。次に、色補正モジ
ュール12が、R,G,Bの各色相をプリンタPRTで
表現可能な色相に補正する。この補正は、R,G,Bの
色空間における階調値と、プリンタPRTで使用するシ
アン、マゼンタ、イエロ、ブラックという4のインクに
対応した色空間における階調値との対応関係を記憶した
色補正テーブルLUTを用いて行われる。この処理によ
り、原画像データは、各インクごとに8ビット、即ち2
56階調のデータに変換される。
【0028】この画像データをハーフトーンモジュール
20がハーフトーン処理し、ドットのオン・オフを各画
素について特定する2値化データを生成する。本実施例
では、有色インクおよび透明インクを使い分けて、印刷
媒体に応じた所定の記録率でドットを形成するように各
画素へのドットのオン・オフを決定する。かかる処理を
実行するため、ハーフトーンモジュール20には、有色
ドットのオン・オフを判定する有色ドット形成判定部2
3と、透明ドットのオン・オフを判定する透明ドット形
成判定部24とを備える。これらの判定部の動作を制御
するのがハーフトーン制御部21であり、記録率テーブ
ル22を参照して印刷媒体などの印刷条件に応じた適切
な記録率を設定した上で、各判定部を用いて2値化デー
タを生成する。
【0029】ハーフトーンモジュール20で処理された
画像データは、インタレースデータ生成部13によりプ
リンタPRTに転送すべきデータ順に並べ替えられて、
最終的な印刷データFNLとして出力される。プリンタ
PRTは、印刷データFNLに応じてヘッドを主走査お
よび副走査しつつ、印刷用紙上にドットを形成して画像
を印刷する。
【0030】なお、ここでは出力装置としてプリンタP
RTを用いた場合を例示したが、出力装置はドットを用
いて画像を表現する装置であれば、プリンタPRTに限
らず種々の装置が適用可能である。また、ここでは、コ
ンピュータPC内で印刷データを生成する場合を例示し
たが、例えばプリンタPRT内部にハーフトーンモジュ
ールを組み込む態様としてもよい。また、原画像データ
をディジタルカメラやスキャナなどから取得する場合に
は、これらの入力機器内で印刷データを生成する態様を
採ることもできる。
【0031】図5はカラーインクジェットプリンタPR
Tの主要な構成を示す概略斜視図である。このプリンタ
PRTは、図示しないステップモータで駆動される紙送
りローラ124と、プラテン126と、キャリッジ12
8と、ステップモータ130と、ステップモータ130
によって駆動される牽引ベルト132と、キャリッジ1
28のためのガイドレール134とを備えている。キャ
リッジ128には、多数のノズルを備えた印刷ヘッド1
36が搭載されている。印刷ヘッド136には、シア
ン、マゼンタ、イエロ、ブラックの有色インクおよび透
明インクを蓄えたインクカートリッジが備えられてい
る。透明インクとは、有色インクから染料を除去した溶
剤のみのインクである。
【0032】キャリッジ128は、ステップモータ13
0により駆動される牽引ベルト132に牽引されて、ガ
イドレール134に沿って主走査方向に移動する。印刷
用紙Pは、紙送りローラ124によって、プラテン12
6の表面上を副走査方向へ送られる。キャリッジ128
を主走査方向に往復動しつつ、印刷用紙Pを副走査方向
に搬送することによって、プリンタPRTは印刷用紙P
上に2次元的に配列された各画素にドットを形成して画
像を印刷する。
【0033】A−2.印刷データ生成処理:プリンタP
RTはコンピュータPCで生成される印刷データに基づ
いて各画素にドットを形成する。この印刷データを生成
する処理について以下に説明する。図6は印刷データ生
成処理ルーチンのフローチャートである。プリンタドラ
イバに組み込まれている処理であり、コンピュータPC
側のCPUにより実行される処理である。
【0034】この処理が開始されると、CPUは画像デ
ータ、印刷条件を入力する(ステップS10)。画像デ
ータはアプリケーションプログラム等から受け渡される
データであり、各画素ごとにR,G,Bの階調値が与え
られたデータである。印刷条件としては、印刷時の解像
度やオーバラップ印刷を行うか否かなどの印刷モード、
印刷媒体が膨潤媒体であるか否かなどの条件が含まれ
る。
【0035】次に、CPUは必要に応じて解像度変換処
理を行い、画像データの解像度を印刷解像度に適合させ
る(ステップS20)。その後、色補正処理によって、
R,G,Bの階調値をシアン(C)、マゼンタ(M)、
イエロ(Y)、ブラック(K)の各色の階調値に変換す
る。この処理は、R,G,Bの色空間における各色と、
C,M,Y,Kの色空間における各色との対応関係を記
憶した色補正テーブルを補間する等の方法で行われる。
色補正されたデータは、多値化処理により、各画素ごと
にドットのオン・オフを特定するデータに変換される。
多値化処理の方法としては、ディザ法や誤差拡散法など
周知の方法を適用すればよい。
【0036】膨潤媒体に印刷を行う際には、画像の周辺
領域でも所定の記録率でドットを形成することが画質向
上の面から好ましい。第1実施例では、透明ドットを形
成することで、周辺領域の記録率を確保する。かかる制
御を実行するために、CPUはステップS10で入力し
た印刷条件に基づいて、印刷媒体が膨潤媒体であるか否
かを判定し、膨潤媒体である場合には、透明ドット形成
判定処理を行う(ステップS45,S50)。この処理
の詳細は、後述する。膨潤媒体でない場合には、透明ド
ットは全領域でオフとなる。こうして印刷データの設定
を完了すると、CPUはデータを出力して(ステップS
100)、印刷データ生成処理ルーチンを終了する。
【0037】図7は透明ドット形成判定処理のフローチ
ャートである。ここでは、余白領域全般に一様な記録率
で透明ドットを記録する場合の処理を例示した。初期設
定として、印刷領域全般に一様な記録率で透明ドットを
記録する状態を設定しておき、画像領域と重複する画素
の透明ドットをオフに修正することで、余白部分にのみ
透明ドットを形成する。図8は透明ドットのオン・オフ
判定の様子を示す説明図である。各マスが画素に対応
し、「0」は透明ドットがオフの画素、「1」は透明ド
ットがオンの画素を意味する。ハッチングを付した領域
は有色ドットが形成される画像領域を意味している。以
下、図7、図8の両者を併用して処理の内容を説明す
る。
【0038】透明ドット形成判定処理では、CPUは画
像を構成する各画素について順に透明ドットのオン・オ
フを判定する。フローチャートは、一つの画素について
の処理内容を示している。CPUは、まず、処理対象と
なっている画素が透明ドット対象画素であるか否かを判
定する(ステップS51)。上述の通り、初期設定とし
て、印刷領域全体で予め一様な記録率で透明ドットを形
成するように透明ドットのオン・オフが特定されてい
る。図8には約25%の記録率で透明ドットを記録する
場合の設定を示した。画素p1など値0の画素が処理対
象となっている場合には、透明ドットの対象画素ではな
いと判断される。画素p2など値1の画素が処理対象と
なっている場合には、透明ドットの対象画素と判断され
る。透明ドットの対象画素でない場合には、何も処理を
行わずに、次の画素の処理に移行する。
【0039】透明ドットの記録率は、印刷条件に応じて
設定される。透明ドットは、印刷時の湿度を保持し、画
像を印刷する際にドットの乾燥を抑制する目的で形成す
る。従って、その目的に適した記録率は印刷条件に応じ
て変動する。例えば、印刷解像度が荒くなれば、その分
使用されるドットのインク重量が多くなり、乾燥しづら
くなるから、透明ドットの記録率は低めでよい。また、
1回目の主走査では奇数番目の画素にドットを形成し、
2回目の主走査では偶数番目の画素にドットを形成する
など、いわゆるオーバラップ方式で各ラスタを形成する
場合には、各主走査でドットがまばらに形成され、乾燥
しやすくなるから、透明ドットの記録率を高める必要が
ある。本実施例では、印刷条件と記録率とを対応づけた
テーブルを予め用意しておき、それを参照することで印
刷条件に応じて透明ドットの記録率を設定する。
【0040】透明ドットの対象画素である場合、透明ド
ットを有色ドットと重ねて形成することを回避すること
が望ましい。従って、その画素に有色ドットがオンとな
っている場合には(ステップS52)、透明ドットをオ
フとする(ステップS53)。図8に示す通り、ハッチ
ングを付した領域は、有色ドットが形成される画素であ
る。25%の記録率で透明ドットを記録する初期の設定
では、画素p3〜p5でも透明ドットが形成される設定
となっている。これらの画素については、ステップS5
3の処理により、透明ドット・オフに変更される。
【0041】以上で説明した第1実施例の印刷装置によ
れば、図8に示す通り、余白領域全般において、透明ド
ットを形成することにより、湿度を保持し、画像領域内
の有色ドットの乾燥を抑制することができる。この結
果、先に図1に例示した通り、膨潤媒体においてドット
の形成位置が不安定にずれるガタツキ現象を抑制でき、
画質を向上することができる。
【0042】A−3.第1の変形例:第1実施例では、
図8中の画素p2など、画像領域に隣接する画素にも透
明ドットを形成する可能性がある。有色ドットが形成さ
れている場合には、透明ドットがなくても乾燥を抑制可
能な湿度を保持することができるから、上述の画素p2
への透明ドットの形成は省略しても構わない。かかる処
理を行う例を第1の変形例として説明する。これは画像
領域内のみならず、その近傍でも透明ドットをオフにす
る態様に相当する。
【0043】図9は第1の変形例における透明ドット形
成判定処理のフローチャートである。図10は第1の変
形例における透明ドットのオン・オフ判定の様子を示す
説明図である。この処理が開始されると、CPUは印刷
領域全体に一様な記録率で透明ドットをオンにする初期
設定データを入力する(ステップS55)。図9には、
約25%の記録率で透明ドットをオンにする初期設定デ
ータを示した。
【0044】次に、CPUは各画素について有色ドット
がオンとなっているか否かを順次判定する(ステップS
56)。有色ドットがオフとなっている場合には第1実
施例と同様、何も処理を行うことなく次の画素の判断に
移行する。有色ドットがオンとなっている場合には、そ
の周辺の所定範囲で透明ドットをオフとする(ステップ
S57)。第1実施例では、有色ドットがオンとなって
いる画素についてのみ透明ドットをオフにしていたのに
対し、第1の変形例では所定の範囲でオフにする点で相
違する。
【0045】図10において画素pp1が処理対象とな
っている場合を考える。ここでは所定の領域として、3
×3画素分の領域を設定した場合を例示した。画素pp
1は有色ドットがオンとなっている画素であるから、所
定の領域は図中の領域ARである。従って、この領域内
で透明ドットがオンに設定されている画素p6等は、透
明ドット・オフに変更される。同様にして、画素pp1
の右隣りの画素を処理する際には、画素p7等が透明ド
ット・オフに変更される。所定の領域の大きさは、印刷
条件、透明ドットの記録率などに応じてドットの乾燥を
抑制する効果を維持可能な範囲で任意に設定することが
できる。第1の変形例の処理によれば、透明インクの消
費量を抑制しつつ、湿度を保持可能な記録率で透明ドッ
トを形成することができる。
【0046】A−4.第2の変形例:第1実施例および
第1の変形例では、余白領域全般に透明ドットを記録す
る場合を例示した。記録時の湿度を保持し、ドットの乾
燥を抑制したいのは、画像領域であるから、透明ドット
はこれらの領域の周辺部にのみ形成するものとしても構
わない。かかる場合における透明ドットの形成判定処理
を第2の変形例として説明する。
【0047】図11は第2の変形例における透明ドット
形成判定処理のフローチャートである。図12は第2の
変形例における透明ドットのオン・オフ判定の様子を示
す説明図である。第2の変形例の処理は、透明ドットは
全ての画素でオフに設定されている状態を初期状態とし
て行われる。
【0048】処理が開始されると、CPUは処理対象と
なっている画素に有色ドットが形成されているか否かを
判定する(ステップS58)。有色ドットが形成されて
いない画素では、その周辺に透明ドットを形成する必要
はないから、何も処理を行わずに、次の画素の処理に移
行する。有色ドットが形成される画素の場合は、記録時
の湿度を保持するため、その周辺領域で透明ドットをオ
ンに設定する(ステップS59)。この処理は次の手順
で行われる。
【0049】図12において画素pp2が処理対象画素
となっている場合を考える。この画素は有色ドットが形
成される画素である。第2の変形例では、湿度を保持す
るために有色ドットが形成される画素の周辺に位置する
いずれの画素で透明ドットをオンにするかという設定を
マトリックスで記憶してある。図12(b)にかかるマ
トリックスの例を示す。有色ドットが形成される画素p
p2を中心にして5×5の画素で約50%の記録率で透
明ドットを形成する場合の設定を例示した。「1」が記
憶された画素が透明ドットを形成する画素である。この
マトリックスは、印刷条件に応じて用意すればよい。
【0050】図12(a)に示す通り、画素pp2につ
いての処理を行う場合には、図12(b)のマトリック
スを適用し、値1が記憶されている画素で透明ドットを
オンに設定する。図12(a)中の領域MTがマトリッ
クスを適用する範囲に相当する。この結果、画素p8,
p9などが透明ドット・オンに変更される。なお、この
処理は各画素について透明ドットのオン・オフを記憶す
るテーブル(図12(a)中の「0」「1」を記憶する
テーブル)と、図12(b)に示したマトリックスとの
論理和をとればよいため、比較的容易に実現できる。
【0051】上記処理において、透明ドットの記録率が
極端に高くなることを回避するため、排他的論理和をと
るものとしてもよい。画素pp2、pp3など異なる画
素についての処理で重複して透明ドット・オンに設定さ
れる画素では、排他的論理和をとれば透明ドット・オフ
に変更されるため、透明ドットの記録率が不必要に高く
なることを回避できる。また、有色ドットを形成する画
素に透明ドットを重複して形成することを回避するた
め、図12(b)のマトリックスを適用した後、さらに
有色ドットのオン・オフを記憶するテーブルとの排他的
論理和をとることも好ましい。
【0052】第2の変形例によれば、有色ドットが形成
される画素の周辺領域でのみ透明ドットを形成すること
ができる。従って、ドットの乾燥を抑制するのに必要最
小限の透明ドットを適切に形成することができ、透明イ
ンクの消費を抑制することができる。また、余白領域の
うち、画像領域から遠く離れた画素には一切ドットを形
成する必要がなくなるから、印刷速度を向上することも
できる。
【0053】B.第2実施例:次に、第2実施例として
の印刷装置について説明する。第1実施例では、透明ド
ットを用いて有色ドットの乾燥を抑制する場合を例示し
た。第2実施例では画像の再現性を損ねない範囲の低い
記録率で有色ドットを形成することにより、透明ドット
を用いずに、ドットの乾燥を抑制する場合を例示する。
従って、第2実施例で使用するプリンタPRTは透明イ
ンクを備えていない。また、透明ドット形成判定部24
を機能ブロック(図4参照)として備えない。その他の
ハードウェア構成および機能ブロックは第1実施例と同
じである。
【0054】B−1.印刷データ生成処理:図13は第
2実施例における印刷データ生成処理のフローチャート
である。第1実施例と同様、コンピュータPCのCPU
が実行する処理である。処理が開始されると、第1実施
例と同様、画像データ、印刷条件を入力し(ステップS
10)、必要に応じて解像度変換を行う(ステップS2
0)。
【0055】次に、第1実施例と異なり、色補正処理
(ステップS30)に先だって、淡グレー化処理を行う
(ステップS25)。この処理は、原画像データのR,
G,Bの階調値が全て「0」の画素について、各色の階
調値を一律に値tnに変更する処理である。R,G,B
が全て値0の画素は、ドットが形成されない空白画素と
なるが、階調値を値tnに変更すれば、その階調値に応
じた記録率で有色ドットが形成される。第2実施例で
は、このように本来ならばドットが非形成となる余白領
域の階調値を補正して、有色ドットを形成させることに
より、湿度を保持してドットの乾燥を抑制するのであ
る。従って、ここで用いられる階調値tnは、湿度を保
持するのに適した記録率でドットが形成される程度の階
調値に設定すればよい。ここではR,G,Bで同じ値を
用いているが、異なる値に設定してもよい。但し、階調
値tnに変換することで、本来、白色となるべき領域が
グレーなどに着色した状態で印刷されるため、階調値t
nは原画像の再現性を損ねない範囲に抑制することが好
ましい。
【0056】こうして淡グレー化処理を行った後、CP
Uは色補正処理(ステップS30)、多値化処理(ステ
ップS40)を行う。これらの処理内容は第1実施例と
同様である。第2実施例では透明インクを用いないた
め、多値化処理後に透明ドットの形成判定は行う必要が
ない。CPUは、こうして、生成された印刷データを出
力して(ステップS100)、印刷データ生成処理を終
了する。
【0057】第2実施例の印刷装置によれば、淡グレー
化処理を行うことにより、印刷領域全般に所定の記録率
で有色ドットを形成することができ、ドットの乾燥を抑
制することができる。第1実施例と異なり、透明インク
を新たに備える必要がない利点がある。また、かかる印
刷を階調値の補正により比較的容易に実現できる利点も
ある。
【0058】図13のフローチャートでは、説明の便宜
上、淡グレー化処理を色補正処理と別個の処理として説
明したが、色補正処理中に各画素の階調値を入力するの
と同時に階調値を補正するものとしてもよい。また、
「R、G、B=0」に対して、「R、G、B=tn」に
相当する色補正データを与えるように修正された色補正
テーブルを用いて色補正処理を行うものとしてもよい。
第2実施例の処理は、必ずしも原画像データR,G,B
に対して行う必要はなく、色補正処理後に「C,M,
Y,K=0」となる画素の階調値を、「C,M,Y,K
=tn’」に変換する態様で行ってもよい。また、第2
実施例では、「R,G,B=0」の全画素について淡グ
レー化処理を行う場合を例示したが、第2の変形例と同
様、画像領域の周辺でのみ淡グレー化処理を行うものと
してもよい。この処理は、例えば第2の変形例におい
て、図12(b)に示すマトリックスの「0」「1」に
変えて、R,G,Bの階調値tnを与えるものとするこ
とにより容易に実現できる。
【0059】B−2.第3の変形例:第2実施例では、
空白画素の階調値を補正した後に多値化することで、画
像領域全般に有色ドットを形成する場合を例示した。こ
れに対し、階調値の補正を行うことなく多値化した後、
画像領域の周辺に所定の記録率で有色ドットが形成され
るよう多値化データを補正するものとしてもよい。かか
る場合における処理を第3の変形例として説明する。
【0060】図14は第3の変形例における多値化デー
タの処理の様子を示す説明図である。図中のマスが画素
を意味し、ハッチングを付した領域が画像領域を意味す
る。図14(a)は多値化結果に基づいて生成されたデ
ータを表しており、有色ドットが形成される画素を
「0」、空白画素を「1」で表している。図14(b)
はドットの乾燥を抑制するために印刷領域全般に所定の
記録率で有色ドットを形成する場合の設定を示してい
る。図中の「C」「M」「Y」はそれぞれシアン、マゼ
ンタ、イエロのドットをオンにする画素を意味してい
る。ここでは、C、M、Yを合計50%の記録率で一様
に記録する場合の設定を示した。C、M、Yの記録率は
印刷条件に応じて任意に設定すればよい。
【0061】第3の変形例では、各画素について、図1
4(a)、図14(b)の論理積を取った後、多値化デ
ータとの論理和を取ることにより、空白画素をグレー化
した印刷データを生成する。図14(c)は論理積の演
算結果を示している。図示する通り、この演算により、
余白領域にのみ所定の記録率でC、M、Yを形成するデ
ータが設定される。こうして設定されたデータと画像領
域(ハッチングの部分)でC、M、Yのオン・オフが設
定された多値化データとの論理和を取れば、画像領域で
は画像データの階調値に応じたドットを形成しつつ、そ
の他の領域をグレー化した印刷データを生成することが
できる。もちろん、画像の色再現性が若干損なわれるこ
とを許容するのであれば、印刷領域全般をクレー化した
データ(図14(b))と画像の多値化データとの論理
和を取って印刷データを生成しても構わない。
【0062】第3の変形例によれば、多値化後にグレー
化したデータを生成するため、画像領域の周辺でより確
実に所望の記録率でドットを形成することができる利点
がある。また、図14で例示した通り、論理演算で比較
的容易に処理することができるため、処理負担の極端な
増加も招かない。第3の変形例において、画像領域の周
辺のみをグレー化するものとしてもよい。かかる処理
は、例えば図14(a)のデータにおいて、画像の周辺
領域にのみ値1を設定することにより、容易に実現する
ことができる。
【0063】以上で示した種々の実施例および変形例で
は、各画素ごとにドットのオン・オフの2値しか表現し
得ないプリンタを例にとって説明した。本発明は、かか
る場合に限られず、インク重量を変更して各画素ごとに
多値の濃度を表現可能なプリンタを用いる場合にも適用
可能である。このような多値プリンタに適用する場合で
も、第1実施例における透明ドットの形成判定処理、第
2実施例における淡グレー化処理などはそのまま適用す
ることができる。また、本発明は同一色相で濃度の異な
るインクを備える場合にも適用できることはいうまでも
ない。第2実施例の態様を濃度の異なるインクを備える
プリンタに適用する場合、グレー化した余白部分へのド
ットの記録には淡インクを用いることが、記録率の確
保、画像の再現性への影響の観点から望ましい。
【0064】以上の実施例等では、膨潤媒体の場合に記
録率の補償を行う場合を例示したが、常に記録率の補償
をするものとしてもよい。また、膨潤媒体に限らず、所
定の媒体について記録率の補償を行うものとしてもよ
い。この場合、補償する記録率は媒体に応じて変更する
ことができる。
【0065】さらに、媒体の種類に限らず、印刷時の環
境条件に応じて記録率の補償を行うか否かを判定するも
のとしてもよい。つまり、プリンタ周辺の湿度、より厳
密にはヘッド周辺の湿度が所定以上であるか否かに応じ
て記録率の補償を行うか否かを判定するものとしてもよ
い。かかる判定は、例えば印刷データ生成処理ルーチン
(図6)のステップS45の処理を湿度による判定に置
換することにより容易に実現できる。
【0066】環境で判定する場合、例えば、プリンタに
湿度センサを設け、そこから入力された湿度が所定値に
満たない場合に記録率を補償するものとすることができ
る。所定値は印刷媒体に応じて変えてもよいし、一定値
としてもよい。膨潤媒体など湿度の影響を顕著に受ける
媒体に合わせて一定値を設定しておけば、印刷時に媒体
の種類を検出する必要がなくなり、処理を簡素化できる
利点がある。また、湿度条件をユーザが入力するように
してもよい。ユーザは別途湿度計などを用いて湿度を観
測し、入力するのである。この場合、厳密な湿度を入力
するものとしてもよいし、高・中・低など段階的に入力
するものとしてもよい。また、湿度に関連の大きい簡易
な判断基準として天候・季節を選択するものとしてもよ
い。
【0067】以上、本発明の種々の実施例について説明
したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣
旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができるこ
とはいうまでもない。例えば、以上の制御処理はソフト
ウェアで実現する他、ハードウェア的に実現するものと
してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】周辺領域に記録されるドットの作用について示
す説明図である。
【図2】膨潤媒体でのドット形成の様子を示す説明図で
ある。
【図3】実施例としての印刷装置の概略構成を示す説明
図である。
【図4】印刷装置の機能ブロックを示す説明図である。
【図5】カラーインクジェットプリンタPRTの主要な
構成を示す概略斜視図である。
【図6】印刷データ生成処理ルーチンのフローチャート
である。
【図7】透明ドット形成判定処理のフローチャートであ
る。
【図8】透明ドットのオン・オフ判定の様子を示す説明
図である。
【図9】第1の変形例における透明ドット形成判定処理
のフローチャートである。
【図10】第1の変形例における透明ドットのオン・オ
フ判定の様子を示す説明図である。
【図11】第2の変形例における透明ドット形成判定処
理のフローチャートである。
【図12】第2の変形例における透明ドットのオン・オ
フ判定の様子を示す説明図である。
【図13】第2実施例における印刷データ生成処理のフ
ローチャートである。
【図14】第3の変形例における多値化データの処理の
様子を示す説明図である。
【図15】膨潤媒体に印刷された罫線の拡大図である。
【符号の説明】
10…プリンタドライバ 11…解像度変換モジュール 12…色補正モジュール 13…インタレースデータ生成部 20…ハーフトーンモジュール 21…ハーフトーン制御部 22…記録率テーブル 23…有色ドット形成判定部 24…透明ドット形成判定部 124…紙送りローラ 126…プラテン 128…キャリッジ 130…モータ 132…牽引ベルト 134…ガイドレール 136…印刷ヘッド

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 印刷媒体上の各画素にインクを吐出して
    ドットを形成することで画像を印刷する印刷装置であっ
    て、 原画像データをハーフトーン処理するハーフトーン処理
    手段と、 少なくとも前記原画像においてドットが形成される画素
    の周辺領域で、前記印刷媒体に応じて定まる所定値以上
    の記録率でドットが形成されるようドットの記録率を補
    償する記録率補償手段とを備える印刷装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の印刷装置であって、 前記インクとして、透明インクと有色インクとを備え、 前記ハーフトーン手段は、前記原画像データに基づいて
    該有色インクによるドットのオン・オフを判定する手段
    であり、 前記記録率補償手段は、少なくとも前記周辺領域におい
    て、前記所定値以上の記録率を確保するよう、前記透明
    インクによるドットのオン・オフを判定する手段である
    印刷装置。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の印刷装置であって、 前記記録率補償手段は、前記ハーフトーン処理に先立
    ち、少なくとも前記周辺領域における原画像データの階
    調値を、前記所定値に応じて予め定められた一定の階調
    値に補正する手段を備える印刷装置。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の印刷装置であって、 前記記録率補償手段は、前記ハーフトーン処理結果を補
    正して、少なくとも前記周辺領域において、前記所定値
    以上の一様な記録率でドットをオンとする手段を備える
    印刷装置。
  5. 【請求項5】 印刷時の湿度が低いことによる影響を受
    けやすい所定の媒体である場合に前記記録率補償手段を
    適用する制御手段を備える請求項1記載の印刷装置。
  6. 【請求項6】 印刷環境が印刷媒体に応じた所定の湿度
    よりも低い場合に前記記録率補償手段を適用する制御手
    段を備える請求項1記載の印刷装置。
  7. 【請求項7】 請求項1記載の印刷装置であって、 印刷モードとして、印刷媒体上に吐出されたインクの乾
    燥に関与する所定のパラメータを入力する入力手段と、 該パラメータとの対応で前記所定値を記憶する記憶手段
    とを備え、 前記記録率補償手段は入力された前記パラメータに応じ
    て前記所定値を設定して記録率を補償する手段である印
    刷装置。
  8. 【請求項8】 請求項1記載の印刷装置であって、 前記原画像データが文字画像であるか否かを判定する判
    定手段と、 文字画像であると判定された場合に、前記記録率補償手
    段を適用する制御手段とを備える印刷装置。
  9. 【請求項9】 印刷媒体上の各画素にインクを吐出して
    ドットを形成することで画像を印刷する印刷方法であっ
    て、(a) 原画像データをハーフトーン処理する工程
    と、(b) 少なくとも前記原画像においてドットが形
    成される画素の周辺領域で、前記印刷媒体に応じて定ま
    る所定値以上の記録率でドットが形成されるようドット
    の記録率を補償する工程と、(c) 前記工程(a)お
    よび(b)の結果に応じて印刷媒体上にドットを形成す
    る工程とを備える印刷方法。
  10. 【請求項10】 印刷媒体上の各画素にインクを吐出し
    てドットを形成することで画像を印刷する印刷装置に供
    給するデータを生成するためのプログラムをコンピュー
    タ読みとり可能に記録した記録媒体であって、 原画像データをハーフトーン処理する機能と、 少なくとも前記原画像においてドットが形成される画素
    の周辺領域で、前記印刷媒体に応じて定まる所定値以上
    の記録率でドットが形成されるようドットの記録率を補
    償する機能とを実現するプログラムを記録した記録媒
    体。
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