JP2001047121A - バフ研磨性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents

バフ研磨性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】バフ研磨性に優れたオーステナイト系ステンレ
ス鋼板の経済性に優れた製造方法を提供する。 【解決手段】オーステナイト系ステンレス鋼の鋼片を熱
間圧延し、800〜1050℃で焼鈍した後、機械的予
備脱スケール処理、硝酸:20〜100g/l、ふっ
酸:50〜200g/lの混合水溶液中での酸洗、冷間
圧延、仕上げ焼鈍・酸洗および調質圧延を施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バフ研磨性に優れ
たオーステナイト系ステンレス鋼板の経済性に優れた製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般のステンレス鋼板2B材の製造工程
は、スラブを熱間圧延→焼鈍・酸洗→冷間圧延→仕上げ
焼鈍・酸洗→調質圧延である。
【0003】ここで熱間圧延後の焼鈍工程は、熱間圧延
後に粒界に析出したCr炭化物を粒内に固溶すなわち溶
体化させること及び熱間圧延後に残留した歪みを除去す
ることを目的としており、その焼鈍はJIS G430
4に規定されるように、オーステナイト系ステンレス鋼
の代表鋼種のSUS304では一般に1010〜115
0℃の範囲で焼鈍後急冷処理でおこなわれている。その
理由は、上記温度範囲より低温域で焼鈍した場合は、熱
間圧延後に析出したCr炭化物の近傍にCr濃度の低下
部が存在し、いわゆる鋭敏化状態となり、これに続く仕
上げ焼鈍・酸洗でも残存した場合、製品での耐食性が劣
るからである。また、上記温度域より高温域で焼鈍した
場合は、結晶粒が粗大化し加工性が低下するためであ
る。
【0004】上記温度範囲で焼鈍した場合は、焼鈍時に
生成した酸化スケールの直下に脱Cr層が生成する。こ
のようなCr濃度が低下した部分を選択的に溶解する酸
組成を選択し、効率的に脱スケールを実施している。こ
のような酸組成としては、硝酸とふっ酸を混合した水溶
液(以下、「硝ふっ酸」という)で、硝酸濃度が100
〜200g/l、ふっ酸濃度が10〜40g/lの範囲
が一般的である。
【0005】しかし、このような従来の硝ふっ酸による
酸洗工程では、上記のCr濃度が低下した粒界近傍の脱
Cr層が選択的に浸食されて溝状となり、いわゆる粒界
浸食溝が生成する。また焼鈍温度が低く十分Cr炭化物
が溶体化されない場合には、上述したように粒界に沿っ
て鋭敏化しており、この状態で従来の組成の硝ふっ酸酸
洗液で酸洗を施すと、より深い粒界浸食溝が発生すると
いう問題があった。
【0006】このように発生した粒界浸食溝は、続く冷
間圧延および仕上げ焼鈍・酸洗工程を経ても残存し、こ
れを除去するためバフ研磨工程で、通板速度の低下やパ
ス回数の増加といった対策が採られていた。また、熱延
板の焼鈍・酸洗工程後に表面をベルト研削する工程を追
加して、酸洗後に生じた粒界浸食溝を研削除去する場合
もあり、コストの増加を招いていた。
【0007】最近、熱延板の焼鈍・酸洗後のベルト研削
工程を省略しても、このような酸洗後に粒界浸食溝が生
じにくいオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法の検
討が行われている。
【0008】例えば酸洗方法による改善としては、特公
平3−60920号公報に熱延板を機械的に予備脱スケ
ール処理した後に、硝酸100〜400g/lおよびふ
っ酸75〜400g/lを含む酸洗液で脱スケールし、
冷間圧延後に酸化スケールを生成させない光輝焼鈍(B
A)を行う製造方法が提案されている。
【0009】また特開平11−131271号公報には
硝酸20〜100g/lおよびふっ酸100〜300g
/lを含む酸洗液で脱スケールする方法も提案されてい
る。
【0010】しかし上記の特公平3−60920号公報
および特開平11−131271号公報に示された通常
の焼鈍条件で硝ふっ酸液中のふっ酸濃度を高める方法で
は、焼鈍・酸洗後に粒界浸食溝が一部残存する。また、
特公平3−60920号公報は仕上げ焼鈍を光輝焼でお
こなう製造方法、特開平11−131271号公報は光
沢ムラを発生させない製造方法についてであり、いずれ
もバフ研磨性改善を目的とするものではない。
【0011】さらに熱間圧延条件を加味した方法とし
て、特公平2−50810号公報にはオーステナイト系
ステンレス鋼鋼片を熱間圧延後650℃以下で巻き取
り、焼鈍を省略して、予熱後20〜200g/lの硝酸
と15〜100g/lのふっ酸、または硝酸20〜20
0g/lおよび塩酸20〜200g/l、塩化第二鉄3
0〜250g/lからなる水溶液中で酸洗することによ
り、熱延板焼鈍を省略しても、研磨性に優れる鋼板の製
造方法が開示されている。しかし鋼板の化学組成によっ
ては、熱間圧延後の巻き取り温度を低下させると、鋼帯
が硬質化し、コイル巻き取り後の形状が崩れる等の問題
がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、バフ
研磨性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板の経済
性に優れた製造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は以下のと
おりである。
【0014】「オーステナイト系ステンレス鋼の鋼片を
熱間圧延し、800〜1050℃で焼鈍した後、機械的
予備脱スケール処理、硝酸:20〜100g/l、ふっ
酸:50〜200g/lの混合水溶液中での酸洗、冷間
圧延、仕上げ焼鈍・酸洗および調質圧延を施すことを特
徴とするバフ研磨性に優れたオーステナイト系ステンレ
ス鋼板の製造方法。」表面光沢性に優れたオーステナイ
ト系ステンレス鋼板は、表面の平滑化と高光沢をはかる
ために製品板をさらにバフ研磨する方法で製造されてい
る。オーステナイト系ステンレス鋼板のバフ研磨性を悪
化させる主要因が、熱延板の焼鈍・酸洗後に生じる粒界
浸食溝の残存と冷間圧延時のオイルピットであって、そ
の防止対策として熱延板の焼鈍・酸洗条件の最適化が有
効であることを見いだした。具体的には、本発明の主た
る特徴は、800〜1050℃の温度範囲の低温焼鈍
と、高濃度ふっ酸(50〜200g/l)の硝弗酸水溶
液による酸洗の組み合わせである。
【0015】通常の熱延板焼鈍は、前述したとおり熱間
圧延工程で生じた炭化物の溶体化処理および歪み取りを
目的として、JIS G4304で規定されるように、
オーステナイト系ステンレス鋼では1010℃以上11
50℃以下で処理される。この溶体化処理時には、鋼板
表面にCr濃度の高いスケールが生成するが、スケール
直下では、Crの拡散速度の違いにより粒界に沿って母
材深さ方向にCr濃度の低下部が発生する。その後、通
常の酸組成で酸洗を行った場合には、粒界に沿って溝状
に粒界浸食溝が発生する。
【0016】また、焼鈍温度が上記温度域より低くなる
と、未溶体化部が一部残存し、Cr炭化物が析出してい
る粒界でCr濃度が低下する。従ってこの場合にも通常
の酸組成での酸洗では、深い粒界浸食溝が生成されてし
まう。
【0017】これらオーステナイト系ステンレス鋼で発
生する粒界浸食溝を低減させる酸洗条件については、ふ
っ酸濃度を高めた硝酸とふっ酸の混酸の酸組成が適して
いるが、これら酸組成について種々検討した結果、焼鈍
温度が通常用いられる1010℃〜1150℃の範囲で
は、ふっ酸濃度が高い硝ふっ酸で酸洗しても粒界浸食溝
は一部残存し、冷間圧延前の表面ベルト研削工程を省略
した場合には、バフ研磨性は不十分である。しかしなが
ら1050℃以下の低温で焼鈍した後に、ふっ酸濃度が
高い硝ふっ酸液で酸洗すると、その後の表面ベルト研削
工程を省略しても、製品板のバフ研磨性は著しく改善さ
れることを見い出した。
【0018】また、ふっ酸の濃度範囲としては50g/
l以上200g/l以下、硝酸濃度は30g/l以上1
00g/l以下が望ましいことがわかった。
【0019】以上のように1050℃以下の低温焼鈍と
ふっ酸濃度を高めた硝ふっ酸による酸洗とを組み合わせ
ることにより、冷間圧延前の表面ベルト研削工程を省略
しても、表面ベルト研削工程を含む従来工程と同等以上
のバフ研磨性を得ることが可能となった。
【0020】バフ研磨性が向上した理由は必ずしも明確
ではないが、以下のように推定される。
【0021】低温焼鈍により、焼鈍時のスケール生成
によるスケール直下の表面粒界近傍のCr濃度の低下を
軽減し、酸洗時の粒界浸食溝生成を抑制する。
【0022】一方低温焼鈍により未溶体化部が残存し
ても、高濃度ふっ酸の硝弗酸液の酸洗によれば、粒界浸
食溝が生じない。
【0023】低温焼鈍の第2の効果として、従来の焼
鈍条件材より硬質のため、続いて実施される冷間圧延時
に通常発生するオイルピット等の欠陥(凸部)を防止す
る。
【0024】このように、本発明の大きな特徴は、低温
焼鈍と高濃度ふっ酸の硝弗酸酸洗との組み合わせによる
粒界浸食溝と冷延オイルピットの抑制、および、それに
よるバフ研磨性の改善である。
【0025】以上のように、熱延板の焼鈍および酸洗条
件を規定することにより、バフ研磨性に優れるオーステ
ナイト系ステンレス鋼板の経済性に優れた製造方法を確
立した。
【0026】
【発明の実施の形態】熱延工程については一般の製造方
法でよい。
【0027】続く熱延板の焼鈍・酸洗工程について以下
に説明する。
【0028】(1)焼鈍工程 焼鈍温度の上限は、焼鈍時のスケール生成により表面粒
界近傍でのCr濃度の低下部を生成させないために10
50℃、望ましくは1010℃とする。一方、下限は、
Cr炭化物を適度に溶体化させる必要があるため800
℃、望ましくは900℃とする。
【0029】なお焼鈍温度が800℃未満の場合、Cr
の拡散が進行せずCr炭化物は残留し、炭化物の残留が
多すぎると、後工程での仕上げ焼鈍・酸洗においても十
分に溶体化ができず、表面性状のみならず機械特性値も
劣化するため望ましくない。
【0030】(2)酸洗工程 一部未溶体化部が残存していても粒界腐食を生じない酸
組成としては、ふっ酸濃度を50g/l以上に高める必
要がある。ふっ酸濃度は高いほどその効果は大きくなる
が、200g/lを超えると逆に効果は低下するばかり
か、コスト増を招くため、上限を200g/lとした。
ふっ酸濃度は、望ましくは100g/l以上、150g
/l以下である。
【0031】さらに本発明で規定する焼鈍条件の場合、
硝酸濃度は極力低いことが望ましい。硝酸濃度が100
g/lを超えると効果は急激に低下するため、その上限
は100g/lとした。但し、低すぎるとその効果が得
られないため下限を20g/lとした。望ましくは30
g/l以上、90g/l以下である。
【0032】酸洗液の温度としては、特に規定するもの
ではないが、温度が低すぎると反応が進行しにくく、そ
の効果が保てないが、高すぎると蒸発によるロスが大き
くまたNOxガスが発生しやすくなるので、50℃以上
90℃以下が望ましい。
【0033】この酸洗処理の前処理として、機械的な予
備脱スケール処理が必要であるが、この方法はショット
ブラスト、ベンダー、レベラー等一般に用いられている
方法の何れかを単独または組み合わせて用いる。
【0034】
【実施例】オーステナイト系ステンレス鋼の代表鋼種で
あるSUS304鋼を、通常の条件で板厚3.2mmの
熱延板とし、表1に示す条件で熱延板焼鈍・酸洗を実施
した。この時の酸洗前の予備脱スケールとしては、ベン
ダーとショットブラストを実施し、酸洗時の酸洗液の液
温は60℃とした。
【0035】
【表1】
【0036】続いて、この熱延板を表面ベルト研削する
ことなしに、板厚1.0mmまで冷間圧延した。なお比
較のため表面ベルト研削を実施したものもある。これら
の冷間圧延板を仕上げ焼鈍・酸洗した。焼鈍条件は11
50℃、30秒、その後通常の中性塩電解及び硝ふっ酸
浸漬酸洗を実施した。硝ふっ酸の酸組成は、硝酸120
g/l、ふっ酸15g/lである。その後1%の調質圧
延を行い製品とした。
【0037】バフ研磨は、上記製品板を円盤状のサイザ
ルバフを重ねた研磨装置を用いて、研磨剤:酸化クロム
と油脂の混合物、回転数:1200rpm、通板速度:
10mpm、研磨回数:1往復で行った。
【0038】焼鈍・酸洗後の熱延板の粒界腐食の発生有
無を、電子顕微鏡を使用し500倍で観察し、その程度
を評価した。×は明確に全ての粒界に粒界腐食が認めら
れるもの、△は粒界腐食が一部残存しているもの、○は
粒界腐食が認められないもの、◎は粒界腐食が認められ
ずかつ非常に平滑な表面が得られたものとし、◎と○を
合格とした。
【0039】また製品板の研磨性評価は、研磨後の表面
観察により5段階に分類した。値は大きいほど良好で、
3以上を合格とした。
【0040】製品板の機械特性値についても各焼鈍温度
毎に表2に示した。又参考までにJISで規定されてい
る機械的性質も付記した。
【0041】
【表2】
【0042】この結果より、焼鈍温度が800℃未満で
は、何れの酸組成でも粒界腐食が発生し、また製品板の
バフ研磨性が劣っていた。更に製品板の機械的性質は伸
びおよび硬度がJIS規格をはずれた。
【0043】また焼鈍温度が1050℃を超える場合
は、ふっ酸濃度を高めても一部粒界腐食が残留し、表面
ベルト研削を実施しない場合には製品板の研磨性が劣っ
ていた。また、この条件で表面ベルト研削を実施した場
合には製品板の研磨性は良好となるが、ベルト研削を必
要とするためコスト増となった。
【0044】焼鈍温度が本発明で規定する800〜10
50℃の範囲においても、ふっ酸および硝酸濃度が本発
明で規定する範囲をはずれた場合には、同様に製品板の
研磨性評価は低くなった。
【0045】一方、熱延板の焼鈍温度及び酸組成のいず
れもが本発明で規定する条件の場合には、研磨性および
機械的性質が良好であった。
【0046】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、熱延板の焼
鈍・酸洗後に表面ベルト研削工程を実施することなく、
バフ研磨性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板を
提供することが可能となった。これにより製品板製造コ
スト抑制、工程短縮さらにはバフ研磨時の研磨回数削減
等の効果が期待できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森田 有亮 茨城県鹿嶋市大字光3番地住友金属工業株 式会社鹿島製鉄所内 (72)発明者 山岸 昭仁 茨城県鹿嶋市大字光3番地住友金属工業株 式会社鹿島製鉄所内 (72)発明者 後藤 勇三 茨城県鹿嶋市大字光3番地住友金属工業株 式会社鹿島製鉄所内 Fターム(参考) 4K032 BA01 CF03 4K037 EB13 FF03 FH01 GA08 4K053 PA04 QA01 RA16 RA17 SA13 TA02 TA04 TA16

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】オーステナイト系ステンレス鋼の鋼片を熱
    間圧延し、800〜1050℃で焼鈍した後、機械的予
    備脱スケール処理、硝酸:20〜100g/l、ふっ
    酸:50〜200g/lの混合水溶液中での酸洗、冷間
    圧延、仕上げ焼鈍・酸洗および調質圧延を施すことを特
    徴とするバフ研磨性に優れたオーステナイト系ステンレ
    ス鋼板の製造方法。
JP21810599A 1999-07-30 1999-07-30 バフ研磨性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法 Expired - Lifetime JP4008159B2 (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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