JP2001041008A - 4サイクルエンジンの動弁装置 - Google Patents

4サイクルエンジンの動弁装置

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JP2001041008A
JP2001041008A JP11215903A JP21590399A JP2001041008A JP 2001041008 A JP2001041008 A JP 2001041008A JP 11215903 A JP11215903 A JP 11215903A JP 21590399 A JP21590399 A JP 21590399A JP 2001041008 A JP2001041008 A JP 2001041008A
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plating
plating layer
valve lifter
aluminum alloy
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JP11215903A
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English (en)
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Yutaka Yamagata
裕 山縣
Hirotaka Kurita
洋敬 栗田
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Yamaha Motor Co Ltd
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Yamaha Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 動力伝達用の部材の耐摩耗性を高く維持しな
がら、軽量化を図り、慣性重量を低減させて高速回転で
きるようにする。 【解決手段】 バルブリフター8をアルミニウム合金に
よって形成する。このバルブリフター8の摺接面(半球
状凹陥部10、弁押圧面14、外周面15)に耐摩耗性
が高い金属からなるめっき層を形成した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カム軸から駆動力
が動力伝達用の部材を介して吸気弁または排気弁に伝達
される4サイクルエンジンの動弁装置に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、4サイクルエンジンの動弁装置と
しては、カム軸をシリンダヘッドに設け、このカム軸と
吸気弁または排気弁との間にバルブリフターやロッカー
アームなどの動力伝達用の部材を介装したものがある。
【0003】前記バルブリフターやロッカーアームは、
高速で回転するカムが摺接し、しかも、摺接部分にはバ
ルブスプリングの弾発力が加えられるから、摺接部が摩
耗するのを阻止するために鋼材によって形成することが
多い。
【0004】このように構成された従来の動弁装置は、
エンジンの高回転・高出力化を図るために、高速で回転
または往復する部材の軽量化を図り、慣性重量を低減さ
せることが要請されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、バルブリフ
ターやロッカーアームを鋼材によって形成しているか
ら、これらの部材の軽量化を図るにも限界があった。こ
のような不具合を解消するためには、これらの部材を鋼
材より軽量な材料によって形成することが考えられる。
しかし、材料を変更することによって摺接面の耐摩耗性
が低下するようなことは避けなければならない。
【0006】本発明はこのような問題点を解消するため
になされたもので、動力伝達用の部材の耐摩耗性を高く
維持しながら、軽量化を図り、慣性重量を低減させて高
速回転が可能な4サイクルエンジンの動弁装置を提供す
ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に本発明に係る4サイクルエンジンの動弁装置は、動力
伝達用部材をアルミニウム合金によって形成し、この部
材の摺接面に耐摩耗性が高い金属からなるめっき層を形
成したものである。
【0008】本発明によれば、動力伝達用部材の重量
は、これを鋼材によって形成する場合に較べて低減し、
摺接面はめっき層によって耐摩耗性が向上する。
【0009】請求項2に記載した発明に係る4サイクル
エンジンの動弁装置は、請求項1に記載した発明に係る
4サイクルエンジンの動弁装置において、微細な網目状
のクラックをめっき層の全域に形成したものである。
【0010】この発明によれば、摺接面のめっき層がク
ラックによって互いに分離された無数の微細な金属片状
とされる。前記金属片は、動力伝達用の部材が熱膨張し
てもこれに追従することができる。
【0011】請求項3に記載した発明に係る4サイクル
エンジンの動弁装置は、請求項2に記載した発明に係る
4サイクルエンジンの動弁装置において、微細な網目状
のクラックは、クラックによる各編み目形状の内接円の
直径が1.5mm以下であるものである。
【0012】この発明による網目形状の内接円の直径が
1.5mm以下になる微細なクラックによる各網目形状の
金属片は、動力伝達用の部材が熱膨張してもこれに追従
することができる。
【0013】請求項4に記載した発明に係る4サイクル
エンジンの動弁装置は、請求項2に記載した発明に係る
4サイクルエンジンの動弁装置において、網目状のクラ
ックを有するめっき層とアルミニウム合金母材との間
に、耐腐食性が高い金属からなる中間めっき層を形成し
たものである。
【0014】この発明によれば、クラックに浸入した水
がアルミニウム合金に接触するのを耐腐食性が高い金属
からなる中間めっき層によって阻止することができる。
このため、動力伝達用の部材が腐食されることはなく、
腐食が原因でめっき層が剥離するのを阻止することがで
きる。
【0015】請求項5に記載した発明に係る4サイクル
エンジンの動弁装置は、請求項1ないし請求項4のうち
何れか一つの発明に係る4サイクルエンジンの動弁装置
において、めっき層を、窒素または窒素と硫黄を表面か
ら浸透させた鉄または鉄を含む合金によって形成したも
のである。
【0016】この発明によれば、めっき層に窒化処理が
施され、めっき層の硬度が増大するから、めっき層の耐
摩耗性がより一層向上する。
【0017】
【発明の実施の形態】第1の実施の形態 以下、本発明に係る4サイクルエンジンの動弁装置の一
実施の形態を図1ないし図6によって詳細に説明する。
ここでは、バルブリフターを有する動弁装置に本発明を
適用するときに採る形態について説明する。
【0018】図1は本発明に係る4サイクルエンジンの
動弁装置を示す断面図、図2はバルブリフタの要部を拡
大して示す断面図、図3はバルブリフタの斜視図で、同
図は軸心を通る破断面で破断した状態で描いてある。図
4はめっき層の構成を示す拡大断面図、図5はめっき層
のクラックを模式的に示す図、図6はバルブリフタにめ
っきを施している状態を示す断面図である。図7はバル
ブリフターの製造方法を説明するための工程図、図8は
めっきの前処理を説明するための工程図である。
【0019】これらの図において、符号1で示すものは
この実施の形態による4サイクルエンジン用動弁装置で
ある。この動弁装置1は、1気筒当たり2本の吸気弁2
を1本の吸気カム軸3で駆動する構造を採っている。な
お、ここでは吸気弁2を駆動する構造について説明する
が、排気弁も吸気弁2と同一の構造によって駆動する。
【0020】前記吸気弁2の弁軸2aにはスプリングリ
テーナー4を装着し、このスプリングリテーナー4とシ
リンダヘッド5との間にバルブスプリング6を弾装して
いる。また、吸気弁2と吸気カム軸3のカム7との間に
は、バルブリフター8を介装している。
【0021】バルブリフター8は、アルミニウム合金に
よって有底円筒状に形成し、図1および図2に示すよう
に、頂部外面に摺動子9を嵌合させるとともに、頂部内
面に吸気弁2の弁軸先端を当接させ、外周部をシリンダ
ヘッド5のリフター孔5aに摺動自在に嵌合させてい
る。前記摺動子9は、耐摩耗性が高い金属あるいはセラ
ミックによって半球状に形成し、バルブリフター8の頂
部外面に形成した半球状凹陥部10に摺動自在に嵌合さ
せている。この摺動子9を介して前記カム7からバルブ
リフター8に駆動力が伝達される。
【0022】吸気カム軸3は、カム7を有するカム軸本
体11と、このカム軸本体11の一方の軸端部に装着し
た支持軸12とを備えている。これら両部材の軸端部に
は、カム軸変位装置13を装着している。
【0023】カム軸本体11はシリンダヘッド5に回転
自在かつ軸線方向に移動自在に支持させ、支持軸12は
シリンダヘッド5に軸線方向への移動が阻止される状態
で回転自在に支持させている。また、カム7は、3次元
カムであり、カム面の位置がカム軸本体11の径方向に
変化するとともに、軸線方向に対して傾斜するように形
成している。このカム面に前記摺動子9の平坦面を摺接
させている。
【0024】前記カム軸変位装置13は、カム軸本体1
1を軸線方向に移動させてバルブタイミングあるいは及
びバルブリフト曲線を変化させる構造を採っており、動
弁装置1は可変動弁機構となっている。
【0025】このように構成した動弁装置1において
は、カム軸変位装置13でカム軸本体11を軸線方向に
移動させることによって、カム面の突出量が変化し、吸
気弁2の開度と開閉時期とを変化させることができる。
このとき、摺動子9がバルブリフター8の半球状凹陥部
10に嵌合した状態でカム面に追従するように傾斜する
から、カム7の位置が変化してもバルブリフター8に駆
動力を伝達することができる。
【0026】バルブリフター8は、各摺接面、すなわち
前記摺動子9が嵌合する半球状凹陥部10と、吸気弁2
の弁軸2aが当接する弁押圧面14と、リフター孔5a
に嵌合する外周面15とに耐摩耗性が高い金属からなる
めっき層を形成している。このめっき層を図4および図
5中に符号16で示す。
【0027】前記めっき層16は、Fe,Fe−Cr合
金,Cr,Niなどの耐摩耗性が高い金属からなり、バ
ルブリフター8に電解めっきを施すことによって形成し
ている。このめっき層16には、図4および図5に示す
ように、微細な網目状のクラック17をめっき形成範囲
の全域に形成している。このようにクラック17を形成
することにより、バルブリフター8の前記摩擦面に、ク
ラック17によって互いに分離された微細な金属片16
aが多数形成される。
【0028】次に、上述したように構成したバルブリフ
ター8を製造する方法を図7および図8によって詳細に
説明する。バルブリフター8は、アルミニウム合金から
なる母材を所定の形状に成形し、この母材に電解めっき
を施すことによって形成する。
【0029】すなわち、先ず、図7中にステップS1で
示すように、溶解したアルミニウム合金をノズル(図示
せず)から所定半径の標的に向けて噴霧状に噴射させ、
生成されるアルミニウム合金の噴霧滴を冷気あるいは常
温空気中を通過させることにより途中で冷却させて半凝
固状態とし、この半凝固状態のアルミニウム合金の噴霧
滴を所定半径の略円柱状に積み上げさせるスプレーフォ
ーミングにより、アルミニウム合金粒が固まった状態の
円柱を形成する。
【0030】ステップS2において、このアルミニウム
合金粒円柱を所定の長さに切断する。次に、ステップS
3でプリ鍛造によって前記円柱体を圧縮して有底円筒体
を作製する。この有底円筒体がビュレットである。
【0031】このビュレットをステップS4で示す鍛造
工程で前記有底円筒体をバルブリフター8の完成形状に
近い形状に成形する。このとき、表面硬度がHRE=55
〜88程度になるようにする。そして、ステップS5で
T6処理、すなわち溶体化温度の500℃に4時間保持
した後に水冷する溶体化処理と、続いて200〜300
℃に4時間保持した後に空冷する時硬化処理を行い、表
面および内部硬度がH RE=90〜100程度とする。
【0032】ステップS6の粗加工により、内外形加
工、半球状凹陥部10の加工を行う。このとき、摺接
面、すなわち半球状凹陥部10、弁押圧面14および外
周面15は研磨前の表面粗さとしてRa25μm程度に
下加工を施しておく。ステップS7の仕上げ加工におい
て前記摺接面を表面粗さがRa1〜3.5μm程度とな
るまで研磨する。仕上げ加工が終了した後、ステップS
8で示すようにめっき工程に移行する。
【0033】めっき工程S8では、先ず、図8に示すよ
うにバルブリフター8の母材にめっき前処理を施し、そ
の後、電解めっきを実施する。
【0034】めっき前処理は、一般的に実施されている
電解めっき時の前処理と同等の処理内容で、図8中にス
テップP1で示す脱脂工程と、ステップP2で示す酸洗
い工程と、ステップP3で示すアルカリエッチング工程
と、ステップP4で示す酸活性工程と、ステップP5で
示す亜鉛置換工程と、ステップP6で示す硝酸浸漬工程
と、ステップP7で示す亜鉛置換工程と、これらの各工
程間およびステップP7の亜鉛置換工程の後に実施する
水洗工程とによって実施する。
【0035】なお、ステップP1〜P7の各工程におい
ては、表2に示す通り、所定の組成を含有する処理液
(ベースは水)を収容し所定の浴温に保持される各浴槽
に、バルブリフター8を所定の処理時間浸漬して行う。
これらの前処理を施すことにより、次工程のめっき処理
におけるめっき層と母材であるアルミニウム合金層との
密着性を向上させている。
【0036】このめっき前処理を実施した後、ステップ
P8でバルブリフター8に電解めっきを施す。
【0037】バルブリフター8に電解めっきを施すため
には、図6に示すように、バルブリフター8をめっき液
槽21に浸漬し、頂面および外周面15を有底円筒状の
第1の陽極22で覆うとともに、頂部内面の弁押圧面1
4に第2の陽極23を対向させ、バルブリフター8を陰
極として実施する。電源は直流電源である。また、この
めっきは、バルブリフター8に生成されるめっき層16
の厚みが概略20μmあるいはそれ以上となるまで実施
する。
【0038】なお、このステップP8のめっき処理にお
いて、例えばFeめっき、あるいはFe−Cr合金めっ
きを施す場合には、表3に示すめっき処理条件により行
う。すなわち、表示するめっき液組成、液温に保持した
めっき液を満たした静止浴を使い、表3に示す電流密
度、めっき時間でめっきすると、概略表3に示すめっき
膜厚、硬さのめっき層が得られる。めっき膜厚を20μ
m以上とするためには、電流密度を表中の値より大きく
するか、あいるいは及びめっき時間を表中のものより長
くする。
【0039】バルブリフター8は、めっき液に浸漬させ
る以前に、バルブリフター8の摩擦面のみにめっき層1
6が形成されるように他の部位にマスク(図示せず)を
設けておいてもよいし、このようなマスクを使用するこ
となく、バルブリフター8の外表面の全域にめっき層1
6を形成してもよい。
【0040】なお、厚みが少なくとも10μmより厚く
なるようにめっき層16を形成することによって、特別
な処理を施すことなく、めっき層16に図4および図5
に示すようにクラック17が発生する。めっき層の膜厚
が10μm程度であると、図5に示すクラック17内側
のめっき層金属片16aに内接する円の直径dが大きな
ものでも約1.5mm程度となる。これは、めっき層16
に縮まろうとする内部応力が発生しているからであり、
膜厚が増加すると、この内部応力によりめっき面に網目
状のクラックが発生するからである。
【0041】めっき工程が終了したバルブリフター8
は、特別な後加工を施すことなくシリンダヘッド5に装
着する。エンジン始動後に燃焼室で発生する熱でめっき
層16の温度が高くなると、めっき層16に較べてアル
ミニウム合金製のバルブリフター8の方が熱膨張係数が
大きく、バルブリフター8の方が伸びようとするが、め
っき層16のクラック17の幅が拡がるから、バルブリ
フター8の伸びを阻害することはない。
【0042】したがって、上述したように構成した動弁
装置1は、バルブリフター8をアルミニウム合金によっ
て形成して軽量化を図ることができるとともに、バルブ
リフター8の摺接面にめっきによって形成した金属で耐
摩耗性を向上させることができるから、軽量化、すなわ
ち慣性重量の低減と、耐摩耗性の向上の両方を実現する
ことができる。
【0043】なお、クラック17内側のめっき層金属片
16aに内接する円の直径dが大きなものでも約1.5
mm程度の場合、仮にクラック17内側のめっき層金属片
16aがそれと接合するバルブリフター8の伸びを阻害
するとしても、めっき層金属片16aの大きさは小さ
く、めっき層金属片16aの部位に生じる反り、曲がり
等は小さく、局部的に大きな摩擦力が作用し、めっき層
16とアルミニウム合金母材との接合面に大きな剪断応
力が作用することにはならず、このクラック17内側の
めっき層金属片16aが剥がれることにはならない。ま
た、めっき膜厚が大きくなるにしたがい、めっき時めっ
き面にクラック17が入っても内部応力が残留し易く、
エンジンの熱によりこのクラック17内側のめっき層金
属片16aがバルブリフター8により拡げられようと
し、めっき層金属片16aにさらに微細なクラック17
が発生する。
【0044】めっき層16の膜厚が20μm程度以上あ
ると、このめっき層金属片16aへのさらなる微細なク
ラック17の発生が確実に起きるようになる。この微細
なクラック17により、より確実にめっき層16がバル
ブリフター8の伸びを阻害することがなくなり、めっき
層16の剥がれを無くすことができる。
【0045】すなわち、めっき層16の厚さを20μm
程度以上とすることによって、めっき工程で金属層にク
ラック17を形成し、バルブリフター8を実際に使用す
ることによってめっきによるクラック17をさらに微細
なクラック17に移行させる手法を採っているので、め
っきによって形成された金属層に専らクラック17を形
成するための装置や特別な処理も不要である。
【0046】また、耐摩耗性を高めるための金属を温度
変化の少ないめっきによって形成しており、めっき装置
は汎用の静止浴タイプのもの、あるいはめっき液を循環
させる高速めっきタイプのものを使用することができ
る。高速めっきを施す場合には、図9および図10に示
す高速めっき装置を使用する。
【0047】図9はバルブリフター用高速めっき装置の
断面図、図10はバルブリフター用高速めっき装置の要
部を拡大して示す断面図である。これらの図に示す高速
めっき装置31は、バルブリフター8の外側に第1のめ
っき液室32を形成するための第1の外筒33と、バル
ブリフター8の内周部側に第2のめっき液室34を形成
するための第2の外筒35とを備え、前記第1のめっき
液室32内に設けた第1の内筒36と、第2のめっき液
室34内に設けた第2の内筒37とからそれぞれめっき
液室32,34内にめっき液を供給する構造を採ってい
る。
【0048】第1の外筒33は、架台38に支持部材3
9を介して固定し、バルブリフター8側の端部をバルブ
リフター8に絶縁性を有するシール部材40を介して接
触させている。シール部材40は円環板状に形成し、前
記第2の外筒35に支持させている。第1の外筒33の
内方の第1のめっき液室32は、バルブリフター8の半
球状凹陥部10が室壁の一部をなすように形成してい
る。また、この第1のめっき液室32は、めっき液をめ
っき液槽41に戻すための戻り用配管42を接続してい
る。
【0049】前記第2の外筒35は、架台38に支持部
材43を介して軸線方向に移動可能に支持させ、バルブ
リフター8の内側底面に絶縁性を有するシール部材44
を介して接触させている。第2の外筒35の内方の第2
のめっき液室34は、バルブリフター8の内側の弁押圧
面14が室壁の一部をなすように形成している。また、
この第2のめっき液室34は、めっき液をめっき液槽4
1に戻すための戻り用配管45を接続している。
【0050】前記第1の内筒36は、絶縁部材46を介
して前記第1の外筒33に支持させ、一端をバルブリフ
ター8が収納されるように形成するとともに、他端をめ
っき液供給用配管47によってめっき液ポンプ48の吐
出口に接続している。第1の内筒36におけるバルブリ
フター8の頂面と対向する部分は、ストッパーゴム36
aを介してバルブリフター8に当接させている。ストッ
パーゴム36aは、第1の内筒36とバルブリフター8
との間に形成されるめっき液用の通路を閉塞することが
ないように、第1の内筒36の周方向に間隔をおいて複
数設けている。前記めっき液ポンプ48は、めっき液槽
41に貯留しためっき液を吸い上げて吐出する構造を採
っている。
【0051】前記第2の内筒37は、絶縁部材48と円
板状のキャップ49を介して前記支持部材43に支持さ
せ、一端をバルブリフター内側の弁押圧面14に対向さ
せるとともに、他端をめっき液供給用配管50によって
前記めっき液ポンプ48の吐出口に接続している。ま
た、第2の内筒37を支持する前記キャップ49には、
第2の外筒35および第2の内筒37をバルブリフター
8に対して進退させるための空気シリンダ51を接続し
ている。すなわち、この空気シリンダ51で第2の外筒
35を図9において左側へ移動させることによって、こ
の第2の外筒35と、前記第1の内筒36とでバルブリ
フター8を挾持する構造を採っている。
【0052】このように構成した高速めっき装置31に
おいては、第1および第2の内筒36,37を陽極とす
るとともにバルブリフター8を陰極とし、第1および第
2のめっき液室32,34にめっき液を常に循環させた
状態でめっきを行う。第1および第2の内筒36,37
とバルブリフター8は、図9中に符号52で示す制御回
路にそれぞれ接続している。制御回路52は、整流器5
3を介して交流電源54に接続している。
【0053】この高速めっき装置31を使用して耐摩耗
性が高い金属からなるめっき層16をバルブリフター8
に形成するためのめっき条件(めっき液組成、電流密
度、液温)は、静止浴めっきを実施するときと同一であ
る。
【0054】高速めっき装置31によってバルブリフタ
ー8にめっき層16を形成すると、めっき時間を著しく
短縮することができる。
【0055】第2の実施の形態 めっき層16のクラック17は、めっき後にめっき層1
6を加熱することによって、エンジンの熱を用いなくて
も微細な網目状に形成することができる。この実施の形
態によるバルブリフター8の製造方法を図11および図
12によって詳細に説明する。
【0056】図11は加熱によりクラックを形成するバ
ルブリフターの製造方法を説明するための工程図、図1
2はこの実施の形態による製造方法によって形成された
バルブリフターの要部を拡大して示す断面図である。こ
れらの図において、前記図1ないし図10によって説明
したものと同一もしくは同等の部材については、同一符
号を付し詳細な説明は省略する。
【0057】加熱によってめっき層16にクラック17
を発生させるためには、先ず、図11中にステップS1
〜ステップS7で示す工程を経てバルブリフター8を所
定形状に形成し、次いで、ステップS8でめっきを施
す。ここでは、耐摩耗性が高いめっき層金属としてFe
−Cr合金を採用する例を示す。このときの表面金属め
っき処理条件は表3による。なお、このめっき層金属と
しては、Fe−Cr合金の他に、Fe,Cr,Niなど
も使用することができる。
【0058】この実施の形態を採る場合には、めっき
は、めっき層16の厚みが10〜100μm程度の範囲
内に入るように行う。めっき方法は第1の実施の形態を
採るときと同様である。第1の実施の形態を採る場合に
はめっき層16を厚みが20μmより厚くなるように形
成しなければならないが、この実施の形態を採る場合に
は、第1の実施の形態を採るときよりめっき層16の厚
みを薄くしても確実にさらなる微細な網目状のクラック
17が形成される。
【0059】めっき工程が終了した後、図11中にステ
ップS9で示すように約500℃で5時間加熱する。こ
の加熱は、バルブリフター8を加熱炉(図示せず)など
に挿入して行う。この加熱工程でめっき層16が加熱さ
れることによって、めっき層16に微細な網目状のクラ
ック17が形成され、図12に示すように、バルブリフ
ター8の摺接面に微細なFe−Cr合金からなる金属片
16aがクラック17によって互いに分離された状態で
多数形成される。
【0060】この方法によれば、バルブリフター8の全
体を加熱するため、全体が均一に熱膨張し、めっき時の
内部応力によるクラックに加え、より微細かつ均一にク
ラックを発生させることができ、部分的に大きなめっき
層金属片となることがない。このため、めっき層金属片
16aの内接円の大きさが大きくばらつくことはない。
【0061】より微細な網目状のクラック17を形成す
るためには、母材(アルミニウム合金)とめっき層の熱
膨張率の差から加熱温度を約400℃以上に設定すれば
よい。この実施の形態で示したように加熱温度を500
℃に設定すると、めっき層16を形成するFeまたはC
rの原子が母材へ、バルブリフター8を形成するアルミ
ニウム合金の原子が、クラック17を有するめっき層へ
互いに拡散し合い、これら両者の間に図12中に符号6
1で示す拡散層が形成される。拡散層61は、加熱温度
が約500℃であれば処理時間5時間程度で形成するこ
とができる。
【0062】なお、拡散速度は処理温度に指数関数的に
比例して増加するので、500℃より下げて400℃以
下とすると、逆に拡散速度は低下し拡散層形成に非常な
長時間を要する。一方、処理温度を600℃以上とする
とアルミニウム合金製のバルブリフター8が部分的に溶
解するようになり、バルブリフター8が変形する不都合
が生じてしまう。また、クラック17のうちめっき時の
ものは拡散層61に残留し、加熱による新たなクラック
は主にめっき層に形成される。
【0063】上述したようにめっき後にめっき層16を
400℃以上に加熱することによってめっき層16に微
細な網目状のクラック17を形成しても、第1の実施の
形態を採るときと同等の効果を奏する。
【0064】この実施の形態で示したように、めっき層
16とバルブリフター8との間に拡散層17が形成され
るように加熱を行うことにより、めっき層16の密着強
度を増大させることができる。
【0065】第3の実施の形態 めっき層16のクラック17は、めっき層16を形成す
る金属に浸硫窒化処理を施すことによっても微細な網目
状に形成することができる。この実施の形態によるバル
ブリフタ8の製造方法を図13によって詳細に説明す
る。
【0066】図13は浸硫窒化処理によってクラックを
形成するバルブリフターの製造方法を説明するための工
程図である。同図において、前記図1ないし図12によ
って説明したものと同一もしくは同等の部材について
は、同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0067】この実施の形態によるバルブリフター8の
製造方法を実施するためには、先ず、図13中にステッ
プS1〜ステップS7で示す工程を経てバルブリフター
8を所定形状に形成し、次いで、ステップS8でめっき
を施す。ここでは、耐摩耗性が高い金属としてFe−C
r合金を採用する例を示す。なお、この金属としては、
Fe−Cr合金の他に、Fe,Cr,Niなども使用す
ることができる。
【0068】めっきは、めっき層16の厚みが10〜1
00μm程度の範囲内に入るように行う。めっき方法は
第1の実施の形態を採るときと同様である。第1の実施
の形態を採る場合にはめっき層16を厚みが20μmよ
り厚くなるように形成しなければならないが、この実施
の形態を採る場合には、第1の実施の形態を採るときよ
りめっき層16の厚みを薄くしてもよい。
【0069】めっき工程が終了した後、ステップS10
で示すようにガス浸硫窒化処理を実施する。このガス浸
硫窒化処理は、表4に示すガス浸硫窒化処理条件で行
う。すなわち、N2,H2S,NH3 混合ガスの雰囲気の
炉中でめっき後のバルブリフター8を加熱することによ
って行う。加熱温度は500℃±50℃、加熱時間は約
5時間である。
【0070】このようにガス浸硫窒化処理を実施するこ
とによって、めっき層16の金属の硬度を増大させるこ
とができるとともに、ガス浸硫窒化処理時にめっき層1
6が加熱されることによって、めっき層16に微細な網
目状のクラック17が形成される。すなわち、第2の実
施の形態を採る場合に較べて硬度が高い微細なFe−C
r合金製金属片13aがクラック17によって互いに分
離された状態でバルブリフター8に多数形成される。
【0071】上述したようにめっき後にガス浸硫窒化処
理を実施し、めっき層16に微細な網目状のクラック1
7を形成しても、第1の実施の形態を採るときと同様に
耐摩耗性が高いとともにめっき層が剥がれ難いという効
果を奏する。
【0072】また、ガス浸硫窒化処理を実施するときの
温度が第2の実施の形態を採る場合と同様に高温である
ため、めっき層16を形成するFeまたはCrの原子と
バルブリフター8を形成するアルミニウム合金の原子と
が互いに拡散し合い、これら両者の間に拡散層61(図
12参照)が形成される。このため、めっき層16の密
着強度を増大させることができる。
【0073】さらにまた、めっき層16の硬度を上げる
ことができるので、摩耗し難くなり、耐久時間を延ばす
ことができる。特に、弁押圧面14はガス浸硫窒化処理
によりめっき層の耐力が増しており、高面圧にもへたる
ことがない。
【0074】第4の実施の形態 めっき層16のクラック17は、めっき層16にバニッ
シングのような機械的な加工を施すことによっても微細
な網目状に形成することができる。バニッシングでバル
ブリフター8のめっき層16にクラック17を形成する
ときの製造方法を図14によって詳細に説明する。
【0075】図14はバニッシングによってクラックを
形成するバルブリフターの製造方法を説明するための工
程図である。同図において、前記図1ないし図13によ
って説明したものと同一もしくは同等の部材について
は、同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0076】バニッシングでクラック17を形成するめ
には、先ず、図14中にステップS1〜ステップS7で
示す工程を経てバルブリフター8を所定形状に形成し、
次いで、ステップS8でめっきを施す。ここでは、耐摩
耗性が高い金属としてFe−Cr合金を採用する例を示
す。なお、この金属としては、Fe−Cr合金の他に、
Fe,Ni,Crなども使用することができる。
【0077】めっきは、めっき層16の厚みが10〜1
00μm程度の範囲内に入るように行う。めっき方法は
第1の実施の形態を採るときと同様である。第1の実施
の形態を採る場合にはめっき層16を厚みが20μmよ
り厚くなるように形成しなければならないが、この実施
の形態を採る場合には、第1の実施の形態を採るときよ
りめっき層16の厚みを薄くしてもよい。
【0078】めっき工程が終了した後、ステップS11
で示すようにバニッシングを実施する。このバニッシン
グは、めっき層16にローラ(図示せず)を押付けて転
動させることによって行う。
【0079】このようにバニッシングを実施することに
よって、めっき層16に微細な網目状のクラック17が
形成される。
【0080】バニッシングが終了した後、Fe−Cr合
金からなるめっき層16の硬度を増大させるために、図
14中にステップS10で示すようにめっき層16にガ
ス浸硫窒化処理を施す。ガス浸硫窒化処理を施すことに
よって、めっき層16の硬度が増大するばかりか、前記
第3の実施の形態を採るときと同様にクラック17の微
細化を図ることができるとともに、めっき層16とアル
ミニウム合金母材との間に拡散層61(図12参照)が
形成されてめっき層16の密着強度が増大する。ガス浸
硫窒化処理の処理条件は第3の実施の形態を採るときと
同様である。
【0081】なお、バニッシング後は、ガス浸硫窒化処
理の代わりに第2の実施の形態を採るときと同様に加熱
処理を実施することもできる。加熱温度を400℃以上
に設定することによってクラック17の更なる微細化を
図ることができる。加熱温度が約500℃であれば、め
っき層16とアルミニウム合金母材との間に拡散層61
が約5時間程度で効率的に形成されてめっき層16の密
着強度を増大させることができる。
【0082】上述したようにバニッシングによってめっ
き層16に微細な網目状のクラック17を形成しても、
第1の実施の形態を採るときと同等の効果を奏する。
【0083】第5の実施の形態 めっき層16とバルブリフター8のアルミニウム合金母
材との間には、別の金属めっき層を形成することができ
る。この実施の形態を図15および図16によって詳細
に説明する。
【0084】図15はめっき層とバルブリフターのアル
ミニウム合金母材との間に中間めっき層を形成した他の
実施の形態を示す断面図、図16はめっき工程を説明す
るための工程図である。これらの図において、前記図1
ないし図13によって説明したものと同一もしくは同等
の部材については、同一符号を付し詳細な説明は省略す
る。
【0085】図15において、符号62で示すものは中
間めっき層である。この中間めっき層62は、この実施
の形態ではバルブリフター8にめっきによって形成して
いる。中間めっき層62を形成する金属材料は、耐腐食
性が高い金属、例えばNiである。この中間めっき層6
2とバルブリフター8のアルミニウム合金母材との間
と、中間めっき層62と外側のめっき層16との間には
拡散層61が形成されている。
【0086】このバルブリフター8を製造するために
は、第1の実施の形態を採るときと同様にバルブリフタ
ー8を所定の形状に形成し、図16中にステップP1〜
ステップP7で示すめっき前処理とその後の水洗を実施
した後に、ステップP9で示すようにNiめっきを実施
する。
【0087】このNiめっきは、バルブリフター8の外
表面にめっき層16を形成するために用いるめっき装置
を使用して実施する。めっき条件は、バルブリフター8
の外表面にめっき層16を形成するときと同様である。
【0088】Niめっき工程が終了した後、水洗を行
い、Niめっき層(中間めっき層62)とバルブリフタ
ー8との間に前記拡散層61を形成するために加熱処理
を実施する(ステップP10)。このときの加熱温度も
500℃以上に設定する。拡散層61が形成されること
によってNiめっき層の密着強度が増大する。
【0089】中間層としてのめっき膜厚は0.1〜5μ
m程度あれば耐食性上十分で、厚くする必要はない。薄
くすることで、めっき時の内部応力によるクラック発生
もなくまたエンジン運転時の熱による熱膨張に追従する
ことが可能となり、このNiめっき層にクラックが発生
してしまうのを阻止することができる。また、Niは熱
膨張係数がアルミニウム合金に近いため、発生する熱応
力も小さく、クラックはより生じ難い。
【0090】加熱後、ステップP8で示すようにめっき
を実施し、前記Niめっき層の外面に耐摩耗性が高い金
属からなる例えばFe,Fe−CrあるいはCr等のめ
っき層16を形成する。めっき条件は第1の実施の形態
を採るときと同様である。
【0091】このめっき工程が終了した後、前記第2、
第3の実施の形態を採るときと同様の手順で前記めっき
層16に微細な網目状のクラック17を形成するととも
に、このめっき層16と前記Niめっき層(中間めっき
層62)との間に拡散層61を形成する。
【0092】この実施の形態で示したように中間めっき
層62を内部に形成することにより、外表面のめっき層
16のクラック17から浸入した水がアルミニウム合金
母材に接触するのを耐腐食性が高い金属(Ni)からな
る中間めっき層62によって阻止することができる。
【0093】このため、バルブリフター8が腐食される
ことはなく、腐食が原因で外表面のめっき層16が剥離
するのを阻止することができる。しかも、外表面のめっ
き層16と中間めっき層62の両方をめっきによって形
成しているから、2種類の金属層を一つのめっき装置に
よって形成することができ、製造コストを低く抑えるこ
とができる。
【0094】中間めっき層62を形成するNiは、アル
ミニウム合金より熱膨張率が高いものの、鋳鉄などの鉄
系金属に較べて熱膨張率がアルミニウム合金に近いた
め、アルミニウム合金製バルブリフター8が熱膨張する
ときに発生する熱応力は相対的に小さい。このため、中
間めっき層62を形成したことが原因で表面のめっき層
16がバルブリフター8から剥離してしまうことはな
い。
【0095】第6の実施の形態 ロッカーアームを有する動弁装置に本発明を適用すると
きに採る一実施の形態を図17ないし図19によって詳
細に説明する。
【0096】図17はロッカーアームを有する動弁装置
の断面図、図18はロッカーアームの斜視図、図19は
ロッカーアームにめっきを施している状態を示す断面図
である。これらの図において、符号71はロッカーアー
ムを示し、72はロッカーシャフトを示し、73はカム
軸、74は吸・排気弁、75はスプリングリテーナ、7
6はバルブスプリングを示す。また、ロッカーアーム7
1の先端部には、ステンレス鋼製で外周にタッピング雄
ねじを形成した円筒状インサート部材77と、アジャス
トスクリュー78とを装着している。アジャストスクリ
ュー78にはロックナット79を螺着している。
【0097】この実施の形態によるロッカーアーム71
は、アルミニウム合金によって形成し、カム軸73のカ
ム80との間に摺動子81を介装している。この摺動子
81は、耐摩耗性が高い金属あるいはセラミックによっ
て半球状に形成し、球面をロッカーアーム71の半球状
凹陥部82に摺動自在に嵌合させている。前記カム軸7
3は、前記第6の実施の形態を採るときと同様にカム8
0を軸線方向に移動させるカム軸変位装置(図示せず)
を備えている。このため、カム80は三次元カムであ
る。すなわち、本実施の形態の動弁装置も可変動弁機構
を成している。
【0098】ロッカーアーム71の摺接面、すなわち前
記半球状凹陥部82の内壁面と、ロッカーシャフト72
が嵌合するロッカーシャフト孔83の孔壁面に、耐摩耗
性が高い金属からなるめっき層16を形成している。
【0099】このめっき層16をロッカーアーム71に
形成するためには、図19に示すように、めっき液槽8
4にロッカーアーム71を浸漬させ、半球状凹陥部83
に第1の陽極85を対向させるとともにロッカーシャフ
ト孔83内に棒状の第2の陽極86を臨ませ、ロッカー
アーム71を陰極としてめっき処理を実施する。電源は
直流電源である。
【0100】めっき条件は、第1の実施の形態を採ると
きと同一である。すなわち、表3で示した条件でFeめ
っきまたはFe−Crめっきを実施する。
【0101】このように耐摩耗性が高い金属からなるめ
っき層16をロッカーアーム71の前記摺接面に形成し
た後、第2の実施の形態を採るときのようにロッカーア
ーム71を加熱したり、第3の実施の形態を採るときの
ようにガス浸硫窒化処理を施す。この加熱処理またはガ
ス浸硫窒化処理を施すことによって、めっき層16の全
域に図4,5に示したように微細な網目状のクラック1
7が形成される。
【0102】したがって、この実施の形態によれば、ロ
ッカーアーム71をアルミニウム合金によって形成して
軽量化を図ることができるとともに、ロッカーアーム7
1の摺接面にめっきによって形成した金属で耐摩耗性を
向上させることができるから、軽量化、すなわち慣性重
量の低減と、耐摩耗性の向上の両方を実現することがで
きる。
【0103】
【実施例】バルブリフター8や、ロッカーアーム71を
形成するアルミニウム合金としては、例えば、下記の表
1中に合金1〜合金3として示したものを使用すること
ができる。
【0104】
【表1】
【0105】表1に示す合金1を使用することにより強
度が高くなり、合金2,3を使用することによって耐熱
性が高くなる。すなわち、一般的なアルミニウム合金で
上述した各部材を形成すると、エンジン運転時の温度上
昇により強度が低下して容易に変形が生じる。このた
め、Fe,Zrを添加し、強度、耐熱性を向上させた。
また、バルブリフター8やロッカーアーム71の母材の
製造は、スプレーフォーミングによるビュレット作製に
よる。これは、金属組成中の結晶粒径を微細化(1μm
以下)とし、強度向上を図っている。これら合金は、鋳
造による成形はできない。溶かすと粗大なAl−Feの
金属間化合物が晶出するため脆くなってしなう。そこ
で、鍛造により成形を行う。
【0106】各実施の形態を採るときに実施するめっき
前処理は、下記の表2に示した条件で実施した。
【0107】
【表2】
【0108】バルブリフターの摺接面、ロッカーアーム
の摺接面にFeめっきまたはFe−Cr合金めっきを施
す場合のめっき条件を下記の表3に示す。
【0109】
【表3】
【0110】表3中に示す各項目には、Feめっき、F
e−Crめっきとも膜厚が20μmになり、Feめっき
の硬度がHVで300〜400、Fe−Crめっきの硬
度がHVで600〜700になるようにめっきを実施す
る場合の値を記載している。
【0111】めっき層16に形成される微細な網目状の
クラック17は、幅が1〜10μmになり、クラック密
度が10〜30mm/mm2 である。このとき、クラッ
ク17による網目形状の内接円の直径dはほとんどのも
のが1.5mm以下となる。クラック密度とは、めっき表
面1mm2 当たりのクラック17の長さ(mm)を合計
したもののことである。拡散層61は、厚みが1〜50
μm程度である。中間めっき層62は、材料金属がNi
の場合には厚みが0.1〜5μm程度である。
【0112】ガス浸硫窒化処理は、下記の表4に示す条
件で実施した。
【0113】
【表4】
【0114】表4で示す条件によってガス浸硫窒化処理
を実施すると、Feめっきの場合には硬度がHVで75
0程度(700〜800)になり、Fe−Cr合金めっ
きの場合には硬度がHVで1250程度(1100〜1
350)になる。
【0115】なお、上述した各実施の形態では、カム軸
変位装置を有する動弁装置のバルブリフター8やロッカ
ーアーム71に本発明を適用する例を示したが、カム軸
変位装置を装備していない動弁装置のバルブリフターや
ロッカーアームにも本発明を適用できることはいうまで
もない。また、バルブリフター8やロッカーアーム71
とは別の動力伝達用の部材にも本発明を適用することが
できる。
【0116】また、上記の各実施の形態におけるバルブ
リフター8やロッカーアーム71を鍛造ではなくダイカ
ストで形成してもよい。すなわち、図7、図11、図1
3および図14のステップS1ないしステップS14の
代わりに、アルミニウム合金の溶湯を高圧で金型内に注
入した後冷却し、湯口の切断や湯バリ取りを行った後、
ステップS5のT6処理に進めるようにする。なおま
た、ガス浸硫窒化処理の代わりにN2,NH3の混合ガス
を使い、加熱温度500±50℃、加熱時間約5時間の
ガス窒化処理を実施するようにしてもよい。
【0117】
【発明の効果】以上説明説明したように本発明によれ
ば、動力伝達用部材の重量は、これを鋼材によって形成
する場合に較べて低減し、摺接面はめっき層によって耐
摩耗性が向上する。
【0118】したがって、動力伝達用の部材の耐摩耗性
を高く維持しながら、軽量化を図り、慣性重量を低減さ
せて高速回転が可能な4サイクルエンジンの動弁装置を
提供することができる。
【0119】請求項2記載の発明によれば、摺接面のめ
っき層がクラックによって互いに分離された無数の微細
な金属片状とされる。前記金属片は、動力伝達用の部材
が熱膨張してもこれに追従することができる。このた
め、めっき層を形成した動力伝達用の部材に熱応力が発
生することがないから、熱応力によって動力伝達用部材
が変形したり、めっき層が剥離することがなく、高精度
で信頼性が高い4サイクルエンジン用動弁装置を提供す
ることができる。
【0120】請求項3記載の発明によれば、網目形状の
金属片は、動力伝達用の部材が熱膨張してもこれに追従
することができるから、熱応力の発生を確実に阻止する
ことができ、より一層高精度で信頼性が高い4サイクル
エンジン用動弁装置を提供することができる。
【0121】請求項4記載の発明によれば、クラックに
浸入した水がアルミニウム合金に接触するのを耐腐食性
が高い金属からなる中間めっき層によって阻止すること
ができるから、腐食が原因でめっき層が剥離するのを阻
止することができる。
【0122】請求項5記載の発明によれば、めっき層に
窒化処理あるいは浸硫窒化処理が施され、めっき層の硬
度が増大するから、動力伝達用の部材の耐摩耗性が高い
4サイクルエンジンの動弁装置を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る4サイクルエンジンの動弁装置
を示す断面図である。
【図2】 バルブリフタの要部を拡大して示す断面図で
ある。
【図3】 バルブリフタの斜視図である。
【図4】 めっき層の構成を示す拡大断面図である。
【図5】 めっき層のクラックを模式的に示す図であ
る。
【図6】 バルブリフタにめっきを施している状態を示
す断面図である。
【図7】 バルブリフターの製造方法を説明するための
工程図である。
【図8】 めっきの前処理を説明するための工程図であ
る。
【図9】 バルブリフター用高速めっき装置の断面図で
ある。
【図10】 バルブリフター用高速めっき装置の要部を
拡大して示す断面図である。
【図11】 加熱によりクラックを形成するバルブリフ
ターの製造方法を説明するための工程図である。
【図12】 バルブリフターの要部を拡大して示す断面
図である。
【図13】 浸硫窒化処理によってクラックを形成する
バルブリフターの製造方法を説明するための工程図であ
る。
【図14】 バニッシングによってクラックを形成する
バルブリフターの製造方法を説明するための工程図であ
る。
【図15】 めっき層とバルブリフターのアルミニウム
合金母材との間に中間めっき層を形成した他の実施の形
態を示す断面図である。
【図16】 めっき工程を説明するための工程図であ
る。
【図17】 ロッカーアームを有する動弁装置の断面図
である。
【図18】 ロッカーアームの斜視図である。
【図19】 ロッカーアームにめっきを施している状態
を示す断面図である。
【符号の説明】
1…動弁装置、3…吸気カム軸、8…バルブリフター、
71…ロッカーアーム。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C25D 7/00 C25D 7/00 C F01L 1/18 F01L 1/18 M Fターム(参考) 3G016 AA02 AA06 AA19 BB04 BB09 EA02 EA08 FA22 GA01 GA02 4K023 AA11 AA12 AA14 AB18 BA06 CA09 CB03 CB13 4K024 AA02 AA03 AA04 AA15 AB01 AB02 BA06 BB04 BC10 CA01 CA02 CB01 CB02 CB13 CB15 DA03 DA04 DA05 DA06 DA07 DA08 DB01 DB10 4K028 AA02 AB02 AB06 AC08

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カム軸から駆動力が動力伝達用の部材を
    介して吸気弁または排気弁に伝達される4サイクルエン
    ジンの動弁装置において、前記動力伝達用部材をアルミ
    ニウム合金によって形成し、この部材の摺接面に耐摩耗
    性が高い金属からなるめっき層を形成したことを特徴と
    する4サイクルエンジンの動弁装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の4サイクルエンジンの動
    弁装置において、めっき層は、微細な網目状のクラック
    が全域に形成されていることを特徴とする4サイクルエ
    ンジンの動弁装置。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の4サイクルエンジンの動
    弁装置において、微細な網目状のクラックは、クラック
    による各編み目形状の内接円の直径が1.5mm以下であ
    ることを特徴とする4サイクルエンジンの動弁装置。
  4. 【請求項4】 請求項2記載の4サイクルエンジンの動
    弁装置において、網目状のクラックを有するめっき層と
    アルミニウム合金母材との間に、耐腐食性が高い金属か
    らなる中間めっき層を形成したことを特徴とする4サイ
    クルエンジンの動弁装置。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし請求項4のうち何れか一
    つの4サイクルエンジンの動弁装置において、めっき層
    を、窒素または窒素と硫黄を表面から浸透させた鉄また
    は鉄を含む合金によって形成したことを特徴とする4サ
    イクルエンジンの動弁装置。
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WO2023154505A1 (en) * 2022-02-14 2023-08-17 Awa Forged Composites, Llc Method of designing and producing fiber-reinforced polymer tappets

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