JP2001033374A - 走査型プローブ顕微鏡とその走査方法 - Google Patents

走査型プローブ顕微鏡とその走査方法

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JP2001033374A JP21141999A JP21141999A JP2001033374A JP 2001033374 A JP2001033374 A JP 2001033374A JP 21141999 A JP21141999 A JP 21141999A JP 21141999 A JP21141999 A JP 21141999A JP 2001033374 A JP2001033374 A JP 2001033374A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 μm級の微小対象物の観察を行える走査型プ
ローブ顕微鏡で、探針に加わる好ましくない試料表面に
平行な力を除き、mm級の広域走査の測定を探針摩耗等
の問題を起こすことなく高い再現性、測定精度で行える
ようにする。 【解決手段】 探針14による試料表面の走査を広域的
に行わせるXYスキャナ12と、サンプリング位置で探
針を試料表面に接近させ、サンプリング位置の間の移動
では探針を試料表面から退避させる圧電素子18と、サ
ンプリング位置での測定動作でサーボ制御系に基づき探
針と試料表面との間の距離を設定された基準距離に保
ち、かつサンプリング位置で探針を試料の表面に接近さ
せ測定動作を行うとき、XYスキャナによる走査移動と
同等速度で同方向に伴走用の走査移動を生じさせる圧電
素子17を備える。測定箇所が一定間隔で離散的な複数
のサンプリング位置として定められ、サンプリング位置
で接近・退避動作と伴走動作が行われる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走査型プローブ顕
微鏡およびその走査方法に関し、特に、例えば半導体製
造工程の分野で必要性が高いCMP(化学機械研磨)の
工程での研磨評価のため観察視野をミリメートル級に拡
大するのに適した走査型プローブ顕微鏡およびその走査
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】走査型プローブ顕微鏡は、原子間力顕微
鏡に代表されるように、例えば半導体基板の表面凹凸を
測定するごとく、探針と試料表面の間に作用する原子間
力を利用して微細な凹凸形状を測定・観察するのに利用
されている。試料表面における走査範囲は、走査用アク
チュエータとして圧電素子が一般的に使用され、圧電素
子によって得られる変位量は例えばμm(ミクロンメー
トル)級のストローク、大きくても100μm程度であ
り、極めて微小なものである。他方、近年では、走査型
プローブ顕微鏡において広域に走査して広域領域を観察
できることが望まれている。具体的に述べると、半導体
製造工程での製造対象物の微小化に伴って、半導体基板
の表面の平坦性、あるいは各種半導体デバイスの製造工
程により基板表面上に堆積された膜の表面の平坦性の評
価に対する必要性が高くなっている。特にCMPによる
平坦化工程の評価では、数mm(ミリメートル)から数
十mmの広い範囲の凹凸形状をnm(ナノメートル)の
分解能で測定することが求められる。
【0003】上記のごとき微小測定であって大視野の観
察が可能な装置として、従来では、走査型プローブ顕微
鏡の代わりに、例えば特開平10−62158号公報に
開示される装置が提案されていた。この公開公報に開示
される装置は表面粗さ計であり、その従来技術の欄では
触針式と光学式の表面粗さ計について記述されている。
触針式の表面粗さ計は、試料の表面に針部材を接触さ
せ、試料表面を針部材で走査して試料表面の凹凸形状を
測定する。針部材の動きは差動トランス式の検出器によ
り検出される。他方、光学式の表面粗さ計は、試料表面
の凹凸形状が光学的変位検出系で検出される。表面粗さ
計は本来的に機械的な構造で試料表面を広域的に観察で
きるように構成されたものである。針部材は試料表面に
接触し、機械的な構造によって試料表面が変形・破壊さ
れること、および分解能が低いこと等の理由から、上記
公開公報では針部材として原子間力顕微鏡で使用される
カンチレバーを使用することを提案し、表面粗さ計に原
子間力顕微鏡の特徴を利用することを提案している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本来ミクロンメートル
(μm)級の測定を行う従来の走査型プローブ顕微鏡の
測定・観察において、その走査範囲をミリメートル(m
m)の範囲に拡大した場合、試料表面における探針の移
動距離は長くなる。従来の通常の測定方法によれば、そ
の移動の間、探針はその先端が試料表面に極めて接近し
た状態で移動することになり、後述するごとき摩擦力や
吸着力等の諸問題が提起され、測定に再現性が得られな
い場合が生じる。また前述の特開平10−62158号
公報に開示される装置では、表面粗さ計において原子間
力顕微鏡のカンチレバーの探針を利用することにより、
従来の表面粗さ計に比較して、試料表面に加えられる接
触圧力を低減できたことを効果として主張しているが、
この装置であっても単に原子間力顕微鏡のカンチレバー
を使用するだけでは、走査ストロークを大きくすること
ができるものの、測定再現性は低下する可能性が高く、
上記問題の解決は困難である。
【0005】原子間力顕微鏡等で走査範囲がmm級の広
域の測定を行う場合、迅速な測定を行うためには、一般
的に、測定データを得るためのサンプリング位置のみで
探針を試料表面に接近させ、サーボ制御系に基づいて試
料表面に対する探針の高さ位置を設定された基準位置に
保持し、サンプリング位置の間は移動のための区間と
し、移動の区間中は探針を試料表面から退避させ、離し
た状態で移動を行うようにする構成が容易に考えられる
(特開平2−5340号公報等)。このような構成の場
合にも、探針が試料表面に接近して表面追従の測定動作
を行うときに前述の諸問題に起因して測定の再現性低下
の問題を考慮することが必要となる。
【0006】次に図8〜図10を参照して前述の測定の
再現性低下の問題を詳述する。図8と図9では、101
はカンチレバー、102はカンチレバー101の先端に
設けられた探針である。カンチレバー101は細い実線
と、太い実線の2種類が描かれている。細い実線のカン
チレバーは力を受ける前の状態、太い実線のカンチレバ
ーは力を受けた後の状態を示している。探針102の先
端は、図示しない試料の表面に向いている。探針と試料
の間の距離は互いに原子間力の影響を及ぼし合う程度の
距離に接近させられている。カンチレバーの背面には光
てこ式光学検出系のレーザ光源(図示せず)から出射さ
れたレーザ光103が照射され、反射されたレーザ光1
03は例えば4分割光検出器(図示せず)に入射され
る。カンチレバー101では、探針・試料間が所定の距
離になるように設定されたとき、所定のたわみ変形が生
じている。探針102が試料の表面からさらに力を受け
ると、カンチレバー101は太い実線で示すごとくさら
にたわみ変形が生じる。その変形の仕方は受ける力に依
存して決まる。
【0007】図8に示された状態では、望ましい正常な
測定状態を示し、原子間力顕微鏡で探針に対して試料表
面に垂直な方向の力のみが働いていることを想定してい
る。この状態では、試料表面に対する垂直方向(Z方
向)104の力によるカンチレバー101の変位のみを
サーボ制御系の信号源として用いている。探針による試
料表面の走査が停止しているとき、摩擦による試料表面
の平行方向の力が働かないので、上記の垂直方向104
の力のみによってカンチレバー101はたわむ。その結
果、光検出器の受光面における照射スポットは、105
で示される通り、垂直方向のみに変位する。105によ
る表記は、たわみ成分とねじれ成分の合成で形成される
照射スポットの位置を表示している。
【0008】他方、探針102による試料表面の走査が
行われると、探針と試料の間で摩擦力が発生する。この
摩擦力に起因して探針102に対して試料表面に平行な
方向(Y方向)106の力が作用するので、図9に示さ
れる通り、カンチレバー101にねじれが発生する。こ
のため、たわみ変形とねじれ変形の各々の成分が合成さ
れ、本来の垂直方向の力が変化していないにも拘らず、
反射による照射スポットが、たわみ変形による変化があ
ったかのごとく、その位置を変位させるということが起
きる。このような場合には、測定動作のためのサーボ制
御系は、4分割光検出器の受光面における照射スポット
をもとの位置に戻そうとして、探針102が試料へ押し
付けられる方向へ駆動する。その結果、探針102の押
付け力が一定でなくなるという問題が起きる。
【0009】さらに、探針の先端に作用する試料表面に
平行な力の原因として表面吸着力を挙げることができ
る。図10に示すごとく、通常の大気中では、試料10
7の表面は吸着水108で覆われている。この表面吸着
水108の層の厚みは一定ではない。例えば、試料表面
に凹凸構造が形成されている場合に、凸部109の上側
縁部は吸着水の厚みは薄くなっている。この厚みの違い
は、試料表面の平行方向110の力の違いとなって作用
する。従って、本来的にサーボ制御系にとって負荷が大
きな凹凸部分で、このような外乱が加わることになり、
測定の再現性が低下することになる。なお説明を分かり
やすくするため、カンチレバーの長手方向と直交する方
向に走査し、摩擦力等がねじれ変形を引き起こす場合に
ついて説明したが、カンチレバーの長手方向に一致する
方向に走査する場合をはじめ、どのような方向であって
も摩擦力等の外乱が測定の再現性を低下させるのは同様
である。
【0010】本発明の目的は、上記の問題を解決するこ
とにあり、探針が試料表面に接近して試料表面を走査す
るとき、摩擦力や、表面吸着層の厚みの違い等が原因で
探針に対する試料表面に平行な方向の力の影響による測
定誤差を除去し、測定再現性を良好にし、特に広域測定
に適した走査型プローブ顕微鏡およびその走査方法を提
供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係る走査型プロ
ーブ顕微鏡およびその走査方法は、上記目的を達成する
ために、次のように構成される。
【0012】本発明に係る走査型プローブ顕微鏡は、試
料の表面に臨む探針と、サンプリング位置での測定動作
でサーボ制御系に基づき探針と試料の表面との間の距離
を設定された基準距離に保つサーボ制御手段とを備え、
探針と試料の間を所定距離に保持しながら試料表面を探
針で走査して表面の凹凸形状等を測定する走査型プロー
ブ顕微鏡である。探針は、通常、カンチレバーの先端に
形成され、測定動作の際にはカンチレバー全体として試
料表面に接近(接触または非接触で)させられている。
原子間力顕微鏡等では、探針は試料表面から原子間力等
を受け、カンチレバーは基準のたわみ変形量で変位を生
じている。かかる変位は、通常、光てこ式光学検出系で
検出される。上記走査型プローブ顕微鏡は、さらに、上
記探針による試料の表面の走査を広域的に行わせる移動
機構(XYスキャナ)と、サンプリング位置で探針を試
料の表面に接近させ、サンプリング位置の間の移動では
探針を試料の表面から退避させる接近・退避手段(例え
ば接近・退避用圧電素子18)と、サンプリング位置で
探針を試料の表面に接近させ測定動作を行うとき、移動
機構による走査移動とほぼ同等の速度で同方向に伴走用
の走査移動を生じさせる補助移動機構(例えば圧電素子
17のXY方向微動部)とから構成される。上記の移動
機構は、測定の際に、大きなストロークで走査移動を生
じさせる主走査装置であり、上記の補助移動機構は、走
査移動の際に、探針と試料の表面との間において、測定
上好ましくない試料表面に平行な方向の力が探針に加わ
ることを避けるために、相対的な速度が生じないように
伴走動作を生じさせる従走査装置である。
【0013】本発明の走査型プローブ顕微鏡では、広域
範囲の測定を行う際に、測定箇所をサンプリング位置と
して離散的に選択して設定し、サンプリング位置間の移
動のときには探針は試料表面から退避した状態で移動
し、測定を行うサンプリング位置のみで探針が試料表面
に接近して測定を行うように構成され、試料表面に垂直
な探針の高さ方向の移動に関しては、接近・退避動作
と、測定のための試料表面追従動作とがある。測定領域
を走査するときサンプリング位置に到達するたびに、探
針は試料に接近し、試料表面に追従する測定動作を行う
が、そのときに、移動機構による主の走査移動に対し
て、探針側も伴走するように従の走査移動を生じさせる
べく補助的移動機構を設けている。このような構成によ
って、摩擦力や表面吸着層等による試料表面に平行な力
(水平方向等)が探針に影響を与えるのを防止し、再現
性の良い測定を可能する。
【0014】上記の構成において、好ましくは、上記移
動機構は試料を搭載しかつ試料を例えば水平方向等の走
査方向にmmの長さ単位で移動させる試料ステージであ
る。さらに上記移動機構による移動動作は等速度で行わ
れることが好ましい。
【0015】本発明に係る走査型プローブ顕微鏡の走査
方法は、試料の表面に臨む探針を備え、サーボ制御系の
制御に基づき探針と試料の間を所定距離に保持しながら
試料表面を探針で走査してこの表面の凹凸形状等を測定
する方法であり、試料表面における測定領域は相対的に
広く、この広域の測定領域で離散的に複数のサンプリン
グ位置を設定し、移動機構による走査移動を行うとき、
サンプリング位置の間の移動では探針を試料表面から退
避させて移動させると共に、サンプリング位置の各々で
は探針を試料表面に接近させて測定動作を行い、さら
に、探針が試料表面に接近して測定動作を行うとき、補
助移動機構によって、移動機構による走査移動とほぼ同
等の速度で同方向に伴走用の走査移動を生じさせる走査
方法である。この走査方法では、探針を試料表面に所定
の距離で接近させ、試料表面に探針を追従させて試料表
面の凹凸等を測定するとき、試料の移動による走査移動
と実質的に同じ速度で探針も移動させることにより、試
料表面に沿う方向の力が探針に働かないようにするもの
である。
【0016】上記の走査方法において、上記の伴走用走
査移動はサンプリング位置ごとに間欠的に行われる。測
定個所であるサンプリング位置では、探針は、原子間力
等が生じる程度に試料表面に接近させられるので、その
たびに上記の伴走用走査移動を行うようにしている。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の好適な実施形態
を添付図面に基づいて説明する。
【0018】図1は本発明に係る走査型プローブ顕微鏡
の一例を示し、原子間力顕微鏡の全体を示すシステム構
成を示している。図2は上記原子間力顕微鏡において試
料の表面を探針で走査しながら特定の領域を観察する場
合に広域の走査に基づいて広い範囲を測定するときの探
針の位置変化の仕方(接近・退避、および表面追従)に
関する制御方法、タイミングチャート、X方向およびZ
方向の探針移動の際の各部の電圧信号の波形チャートと
高さ方向の探針位置を示し、図3は、探針が試料表面に
接近したときの探針のX方向の伴走用の移動動作を説明
するための速度関係を示すタイミングチャートである。
探針の位置の変化は、試料表面に沿うXY方向の探針の
走査動作と、試料・探針間の距離を調整する高さ方向
(Z方向)の移動動作とによって生じさせられる。
【0019】全体的なシステム構成は、図1に示すごと
く、水平に保持されたテーブル11の上にXYスキャナ
12が配置され、その上に観察対象である試料13が配
置されている。図1においてテーブル11の表面に平行
な面は例えば水平面であり、ここでは直交の2軸X,Y
によりXY平面と定義される。試料13は例えば半導体
ウェハのごとき薄板の基板状部材であり、観察しようと
する面を上面として配置されている。XYスキャナ12
は試料13をX方向あるいはY方向へ相対的に大きな距
離で移動させる移動機構であり、主走査装置(主スキャ
ナ)として機能する。XYスキャナ12は、例えばパル
スモータ等を利用して構成される移動用試料ステージと
して構成されている。XYスキャナ12によるXY方向
の移動ストロークはmm(ミリメートル)の長さ単位で
行われ、例えば数十mmのストロークが設定される。ま
たXYスキャナ12の上に搭載された試料13に対して
は、その上面を観察すべく、その上側に、先端に探針1
4が形成されたカンチレバー15が配置される。探針1
4の先端は試料13の表面に臨んでいる。上記の構成の
結果、試料13をXYスキャナ12で移動させることに
より、試料13に臨む探針14が相対的な位置関係とし
て試料表面を広い範囲で走査し、広域走査に基づく広域
領域の測定を行うことが可能となる。
【0020】上記カンチレバー15はその基端が固定さ
れ、探針14が設けられた先端は自由端となっている。
カンチレバー15は小さいバネ定数を有する弾性レバー
部材であり、先端の探針14と試料13の間で原子間力
が生じると、受ける力に応じてたわみ変形が生じる。1
6は、その下端に上記カンチレバー15を取付け、カン
チレバー15を図1中の水平面に垂直な方向(Z方向)
に移動させるZ方向駆動装置である。Z方向駆動装置1
6は、好ましくは、上下の位置に配置された2つの圧電
素子17,18で構成されている。圧電素子17は通常
の測定・観察を行う際に使用される圧電素子である。圧
電素子17はX,Y,Zの3軸方向に変位を生じする3
軸圧電素子として構成され、従来のチューブ型圧電微動
素子あるいはトライポッド圧電微動素子が使用される。
圧電素子17のZ方向の微動に関係する部分(Z方向微
動部)は、試料表面に対する探針14の高さ位置を設定
された基準の一定位置に保持するためのサーボ用圧電素
子を構成し、測定の際にはサーボ制御系の下でその動作
が制御される。さらに圧電素子17によるXY方向の微
動に関係する部分(XY方向微動部)は、後述する伴走
用の走査移動を行う従走査装置(従スキャナ)を構成す
る。また圧電素子18は、探針14すなわちカンチレバ
ー15の全体を、試料13の表面に接近させたり、当該
表面から退避させたりするための接近・退避用圧電素子
である。このようにカンチレバー15(探針14)をZ
方向に移動させるためのZ方向駆動装置16は2つの圧
電素子による2段構成によって形成されている。好まし
くは、Z方向駆動装置16を1つの圧電素子で形成し、
これを2分割することにより上記圧電素子17,18を
形成する。なおZ方向駆動装置16は、実際には、図示
しない顕微鏡フレームに固定されている。
【0021】なお上記のZ方向駆動装置16では、圧電
素子17の下側に接近・退避用圧電素子18を設けた構
造となっているが、取付け構造を反対にし、接近・退避
用圧電素子18の下側に圧電素子17を設けるように構
成することもできる。
【0022】上記の構成によれば、XYスキャナ12上
に搭載された試料13の表面に対して探針14を間隔を
あけて臨ませた状態において、XYスキャナ12で試料
13をXY方向へ相対的に大きなストロークで移動させ
つつ、カンチレバー15すなわち探針14の試料表面に
対する高さ位置をZ方向駆動装置16の圧電素子17,
18で調整することにより、試料表面においてミリメー
トル級の走査範囲に基づく広域観察を行うことが可能と
なる。探針14の試料表面に対する高さ位置を調整する
Z方向駆動装置16について、圧電素子18は試料表面
の広域測定領域で一定間隔で設定された多数のサンプリ
ング位置の各々で探針14(カンチレバー15)を試料
表面に所定間隔で接近させまたは試料表面から退避させ
るためのアクチュエータであり、圧電素子17は上記の
各サンプリング位置での接近状態で通常の測定・観察の
ためのサーボ制御および伴走動作に基づき試料表面の凹
凸形状に沿って試料表面の測定データを得るためのアク
チュエータである。従って、試料13の表面を広域走査
で測定するときに、探針14は、圧電素子18によりサ
ンプリング位置のみにおいて接近させられ、圧電素子1
7を利用して伴走動作を行いながら表面追従を行って試
料表面の凹凸形状に関する測定データを取得し、或るサ
ンプリング位置から他のサンプリング位置への探針14
の移動は、圧電素子18による退避動作により探針は試
料表面から離れた状態で行われる。
【0023】上記において、XYスキャナ12のX,Y
の各ストロークは例えば最大200mmであり、圧電素
子17のストロークは、例えば、X,Yでは10μm、
Zについては5μmである。また圧電素子18のストロ
ークは上記の接近・退避を行えるように適宜に設定され
る。接近・退避用のアクチュエータは上記のごとく長い
ストロークで伸縮する圧電素子18が好ましいが、これ
に限定されるものではない。また探針側のZ方向駆動装
置16を2段構成とするのではなく、接近・退避用の圧
電素子18を設けず、その代わりに接近・退避用の駆動
装置の構成を試料側のステージに組み込むようにするこ
とも可能である。この場合には、上記のXYスキャナ
は、Z方向の移動も可能な3軸スキャナとして構成され
ることになる。
【0024】試料13の上方に配置されるカンチレバー
15に対して、試料表面に対する探針14の高さ位置
(Z方向の変位)を検出するための検出系が設けられ
る。この検出系はカンチレバー15のたわみ変形とレー
ザ光とを利用して構成される光てこ式光学検出系であ
る。光てこ式光学検出系は、カンチレバーの背面に形成
された反射面に対してレーザ光21を照射するレーザ光
源22と、当該背面で反射されたレーザ光21を受ける
例えば4分割型光検出器23から構成される。レーザ光
源22と光検出器23は、例えば、下側の圧電素子18
の下面に設けられ、圧電素子17,18の伸縮動作に伴
って一緒に上下動を行うようになっている。カンチレバ
ー15の背面で反射されたレーザ光21による反射スポ
ットが光検出器23の4分割された受光面に入射され
る。探針14が試料表面から原子間力を受けた状態で探
針・試料間の距離が変化すると探針が受ける原子間力が
変化し、探針14の高さ位置が変位し、カンチレバー1
5のたわみ変形量が変化する。カンチレバー15のたわ
み変形量の変化量に応じて光検出器23の受光面におけ
るレーザ光21の反射スポットはその中心位置から変位
するので、探針・試料間の距離が設定された基準の一定
距離に保持されるように、後述するサーボ制御系によっ
て、試料表面に対する探針14(カンチレバー15)の
高さ位置が調整される。これにより光検出器23の受光
面におけるレーザ光21の反射スポットの位置も探針・
試料間の設定された一定間隔に応じた位置に保持され
る。
【0025】次に制御系について説明する。24は圧電
素子17のZ方向の伸縮動作を制御するサーボ制御装置
である。サーボ制御装置24は、上記の光検出器23か
ら出力される探針・試料間距離を表す検出信号s1を入
力する。サーボ制御装置24は、入力された検出信号s
1と設定された基準の一定距離を表す信号との差を求め
出力する減算器と、この減算器から出力された差信号が
0となるように圧電素子17のZ方向微動部を動作させ
る制御用電圧信号Vzを作成して出力する制御回路とか
ら構成される。試料表面の各サンプリング位置におい
て、試料13に対して探針・試料間で原子間力が作用す
る程度に探針が接近するように圧電素子18によりカン
チレバー15を移動させた状態で、上記の光てこ式光学
検出系、サーボ制御装置24、圧電素子17のZ方向微
動部によってサーボ制御のフィードバックループが形成
され、このサーボ制御ループによってカンチレバー15
のたわみ変形量が一定になるように保持され、探針・試
料間の距離が設定された基準距離に保持される。
【0026】25は上位の制御装置であり、制御装置2
5は信号処理装置と記憶部と表示装置と入力部などから
なる例えばパーソナルコンピュータで構成されている。
制御装置25は、電圧信号V0 によってサーボ制御装置
24内に設定される上記基準距離の情報を与えると共
に、サーボ制御装置24から圧電素子17のZ方向微動
部に与えられる制御用電圧信号Vzを入力するように構
成される。また制御装置25は、主走査を行うためのX
Y走査回路を内蔵し、試料13を搭載しこれをXY方向
に走査移動させるためのXYスキャナ12に対してその
動作を制御する走査制御信号s2を与える。試料13を
移動させるための走査データは制御装置25内のXY走
査回路で生成され、走査制御信号s2としてXYスキャ
ナ12に出力されると共に制御装置25の記憶部に保存
される。従って、制御装置25の記憶部には試料13の
表面における測定領域が走査範囲データとして記憶され
ている。特に本実施形態の場合、上記XYスキャナ12
を動作させることによりmm(ミリメートル)級の広域
走査による広域測定が行える。制御装置25は、測定領
域に関する上記の走査データ(サンプリング位置の位置
データ)と、各サンプリング位置でのサーボ用圧電素子
17に印加される電圧信号Vz(試料13の表面に対す
る高さデータ)とを組み合わせることにより、試料13
の観察表面についての凹凸形状に関する画像データが作
成され、表示部の画面に観察画像が表示される。
【0027】さらに制御装置25は、或るサンプリング
位置での測定が終了した後、次のサンプリング位置へ移
動するときに、上記測定が終了した時点の圧電素子17
への印加電圧Vzをホールドすべくホールド信号s3を
圧電素子17へ与える。ホールド信号s3は電圧素子1
7に印加される電圧Vzの値のホールド状態をオンまた
はオフする。加えて制御装置25は、伴走を行う従走査
のためのXY走査回路を内蔵し、このXY走査回路から
圧電素子17のXY方向微動部に対して走査信号s4が
与えられる。
【0028】さらに制御装置25は、Z方向駆動装置1
6の接近・退避用圧電素子18に対して接近動作のため
の伸張、および退避動作のための収縮を行わせるための
制御用電圧信号Vrを出力する。電圧信号Vrは試料表
面の測定領域でサンプリング位置のみで圧電素子18に
与えられ、各サンプリング位置で圧電素子18は探針1
4の接近・退避ための伸縮動作を行う。サンプリング位
置の間を探針14が移動するときには、探針14(カン
チレバー15全体)は退避させられ、試料13の表面か
ら離れた状態で移動を行う。試料13の測定表面におけ
るサンプリング位置の位置情報は予め制御装置25側に
用意される。また接近・退避用圧電素子18の接近のた
めの伸張動作量および退避のための収縮動作量は予め制
御装置25側で設定されている。
【0029】図2を参照して上記構成を有する原子間力
顕微鏡の探針の接近・退避および測定の動作を説明す
る。図2では構成図(A)とタイミングチャート(B)
が示される。
【0030】この原子間力顕微鏡によれば前述の通り試
料13の表面で広域測定を行うことが可能となる。広域
測定のために広域走査を行う必要があるが、XYスキャ
ナ12によって試料13を移動することにより広域走査
が行われる。また試料13の表面に対する探針14の高
さ位置HはZ方向駆動装置16の圧電素子17,18の
伸縮動作で調整される。図2の上側の構成図(A)に示
されるように、前述のごとくサンプリング位置での探針
の接近・退避動作は電圧信号Vrで制御される圧電素子
18の伸縮動作で行われ、サンプリング位置での測定・
観察のための動作は電圧信号Vzで制御される圧電素子
17の伸縮動作で行われる。なお広域走査範囲は一辺が
例えば20mmの正方形範囲であり、この広域走査範囲
で例えば500点のサンプリング位置が設定される。ス
テージの走査方向とカンチレバーの設置方向はこれに限
定されるものではない。
【0031】さらに図2のタイミングチャート(B)で
は、一例としてサンプリング位置P1で測定を行い、そ
の後サンプリング位置P2へ移動して測定を行う動作例
が示されている。タイミングチャート(B)では、上段
から、XYスキャナ12に含まれるXスキャナによるX
方向の速度、電圧Vzのホールド状態、サーボのオン・
オフ(ON/OFF)状態、電圧Vzの変化状態、電圧
Vrの印加状態(ON/OFF状態)、試料表面からの
探針の高さHの変化状態のそれぞれを示している。また
タイミングチャートで横軸は時間の経過を示すが、図2
では移動方向であるX方向に対応させて示している。X
スキャナによる速度は一定値に保持されるので、試料表
面に対して探針は停止することなく等速度で走査を継続
する。最初の状態ではサンプリング位置P1に到達す
る手前の状態であるので、探針14は試料13の表面か
ら離れ退避状態にて移動の状態にある。従って、電圧V
rはオフされており、圧電素子18の変位は最少であ
る。また電圧Vzのホールド状態はオンであって前回の
測定で決まった値に保持され、サーボ制御はオフの状態
になっている。状態ではサンプリング位置P1に到達
したので、サーボの状態がオンになり、電圧Vzのホー
ルド状態が解除される。また電圧Vrもオンになるの
で、圧電素子18も伸張し、探針14は試料の表面に接
近する。サーボ状態がオンになっているので、探針14
が試料表面に接近して設定された基準距離になると、上
記サーボ制御系によりサーボが働く。実際に、探針14
が予め設定された押し付け力で試料13の表面に押し付
けられるように、圧電素子17のZ方向微動部は電圧V
zによって駆動される。圧電素子17のZ方向微動部が
作動し、サーボ制御系が働くことによって電圧Vzが変
化する。サンプリング位置P1である状態に達したと
き、電圧Vzが記録される。こうしてサンプリング位置
P1で試料表面の凹凸形状が測定される。その後の状態
では、次のサンプリング位置P2に移動するための準
備がなされる。すなわち電圧Vrがオフになって圧電素
子18を収縮させ、探針14を試料表面から退避させ
る。さらに電圧Vzのホールド状態をオンにし、サーボ
の状態をオフにする。この結果、探針14は試料13の
表面から離れた状態で次のサンプリング位置P2に向か
って移動する。次のサンプリング位置P2の状態で
も、前述と同様な動作が繰り返され、測定電圧Vzが記
録される。
【0032】上記の動作において、試料表面からの探針
の高さHの変化によって、探針の接近動作、退避動作が
明らかにされる。サンプリング位置P1,P2のみで接
近動作が行われ、このとき電圧Vrのホールド状態が解
除されかつサーボがオンになって圧電素子17のZ方向
微動部を駆動することによって駆動用電圧Vzを求め、
本来の試料表面測定が行われる。サンプリング位置での
測定を行った後に次のサンプリング位置へ移動するとき
には、圧電素子17のZ方向微動部を駆動する印加電圧
Vzをホールドする。これにより、広域の走査範囲によ
る測定であっても、設定されたサンプリング位置のみで
試料表面に接近してサーボ制御系の作用により測定を行
って電圧Vzを取得し、サンプリング位置の間の移動で
は電圧Vzをホールドすることにより、接近・退避動作
を行わない従来の通常の原子間力顕微鏡による狭域測定
と同等の精度の測定を行うことができる。またサンプリ
ング位置の間の移動は試料表面から探針を退避させた状
態で移動するので、移動中に探針が資料表面に接触する
のを防止し、探針の摩耗を防止でき、大視野観察を高速
に行うことができる。
【0033】次に図3を参照して、原子間力顕微鏡の探
針の接近・退避および測定の動作を図解した図2に関連
させて、測定動作の際の伴走動作について説明する。図
3においても、構成図(A)と、XYスキャナ12によ
る走査移動と圧電素子17のXY方向微動部による走査
移動のタイミングチャート(B)が示されている。図3
のタイミングチャート(B)では、圧電素子17のXY
方向微動部(従スキャナ)の従走査用の速度、XYスキ
ャナ(主スキャナ)12の主走査用の速度、それらの速
度に基づく探針と試料の間の相対速度、試料表面からの
探針高さHがそれぞれ示されている。図3において、構
成図(A)、(B)におけるサンプリング位置P1,P
2、状態〜は、図2で説明されたものと同じであ
る。
【0034】前述の通り、サンプリング位置P1では、
制御装置25の制御の下でXYスキャナ12が例えばX
方向に試料13を一定速度(等速度)で移動させ、主走
査用の移動を行っている。サンプリング位置P1で、前
述のごとく探針14が試料13の表面に接近を開始する
と、同時に、制御装置25は走査信号s4によって圧電
素子17のXY方向微動部の動作を制御し、特にこの場
合にはX方向の微動に関して、XYスキャナ12による
X方向の移動速度と同等の速度で移動を開始する。その
結果、測定動作(高さデータサンプリング)のために探
針14が試料表面に接近する区間31において、試料1
3の移動に対して探針14が伴走することになり、試料
13に対する探針14の相対速度が実質的に0になる。
この区間31において、前述のごとく試料表面の追従動
作が行われ、状態で圧電素子17のサーボ制御信号で
ある電圧Vzを利用してZ方向の高さ情報が読み出され
る。区間31を定める従走査のためのストロークは例え
ば10μm程度である。測定動作が終了し、区間31が
終了する時点(状態)になると、前述のごとく探針1
4は試料の表面から退避させられるが、このとき制御装
置25は同時に圧電素子17のXY方向微動部を逆走動
作させる。区間32は逆走の区間を示している。逆走が
完了(状態)した後、区間33では圧電素子17のX
Y方向微動部は停止状態に保持される。次のサンプリン
グ位置P2が到来すると、以上の伴走動作および逆走動
作を繰り返す。こうして多数のサンプリング位置が到来
するたびに上記相対速度が0になるような伴走動作が間
欠的に繰り返される。上記のごとく、サンプリングの際
に伴走動作が行われるため、探針が試料表面に接近し、
離れるまでの間、探針に試料表面に平行な力が働くこと
を防止することができる。このため、探針(カンチレバ
ー)のZ方向の変位のみでサーボ制御を行うことがで
き、測定の再現性が向上し、測定の信頼性が向上する。
また探針で試料表面を測定する際に、試料ステージであ
るXYスキャナ12の等速の移動を止めることなく測定
を行うことができるので、測定のスループットを向上す
ることができる。
【0035】上記の実施形態では、各サンプリング位置
で探針14を試料表面に接近させたとき、探針を伴走を
行った後に逆走するようにしたが、サンプリング位置ご
とでの逆走は必ず必須のものではない。例えば、図3に
示されるようなX方向の或る走査ラインでの+側への走
査における測定で各サンプリング位置で接近時に伴走を
行って退避時は補助移動機構を停止して次のサンプリン
グ位置で接近したときのみ伴走を繰り返しX方向の走査
ラインの最終まで測定を行い、その後、走査ラインを次
の走査ラインに変更して(Y方向に所定量送り)X方向
の−側への走査で各サンプリング位置での接近時にX方
向の−側(先ほどとは反対側)へ伴走を行うように構成
すれば、探針位置をもとの所定位置に戻すための前述の
サンプリング位置での逆走動作は不要となる。
【0036】上記の実施形態では、サンプリング位置で
探針を試料表面に接近させ測定動作を行うとき、XYス
キャナによる走査移動と同等速度で同方向に伴走用の走
査移動を生じさせる補助移動機構として圧電素子17の
XY方向微動部を利用したが、圧電素子17とは別途の
構成で補助移動機構を設けることができるのは勿論であ
る。
【0037】図1と図2に示された前述の実施形態で
は、広域で設定された領域で測定を行うときに、走査範
囲で設定された多数のサンプリング位置の各々で探針1
4(カンチレバー15)を接近させ、退避させるため
に、圧電素子17,18の2段構成でZ方向駆動装置1
6を構成したが、接近・退避のためのZ方向駆動装置に
は前述の構成に限定されない。
【0038】図4と図5に2段の圧電素子で構成される
他のZ方向駆動装置の構成例と動作例を示す。前述した
実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には同一
の符号を付し、その説明を省略する。
【0039】この例ではZ方向駆動装置16は圧電素子
51,52の2段構成となっている。下側の圧電素子5
1はZ方向の探針移動に関してサーボ用圧電素子であ
る。圧電素子51は測定の際の表面追従のサーボ用圧電
素子としてのみ使用される。上側の圧電素子52は接近
・退避動作専用の圧電素子として使用される。
【0040】図4では前述のサーボ制御装置24と制御
装置25の内部構造の一例が示されている。サーボ制御
装置24は、基準距離を設定するための信号s0を出力
する基準距離設定器31と、信号s1と信号s0の偏差
Δsを算出する減算器32と、偏差Δsに基づき制御信
号Vzを出力する制御回路33とから構成されている。
また制御装置25は、信号処理装置41と表示装置42
とXY走査回路43を内蔵する。サンプリング位置にお
ける探針の接近・退避の動作は、接近・退避用信号s5
に基づき圧電素子52の伸縮動作によって行われる。こ
の接近・退避用信号s5は周期的に発生するパルス信号
であり、前述の電圧信号Vrと実質的に同じものであ
る。接近・退避用信号s5は、別途に設けた前述の接近
・退避信号供給器から与えられるように構成することが
できるし、あるいは上位の制御装置25の信号処理装置
41から与えられるように構成することもできる。
【0041】図5は前述の図2に対応する図である。図
5で、(A)で試料13に対する圧電素子52の接近・
退避の動作状態(a,b)を示し、(B)でタイミング
チャートを示し、このタイミングチャート(B)では前
述の実施形態と同様なサンプリング位置P1,P2での
測定動作例が示されている。図5のタイミングチャート
(B)では、上段から、XYスキャナ12に含まれるX
スキャナによるX方向の速度、基準距離を設定する信号
s0、接近・退避用の信号s5、探針・試料間距離、電
圧Vzの変化状態のそれぞれを示している。またタイミ
ングチャートで横軸は移動方向であるX方向に対応させ
ている。探針・試料間距離は、信号s5で正パルス電圧
53が発生するときには0になり(区間)、正パルス
電圧53が発生していないときには退避状態の一定距離
で離れた状態にある(区間)。またサーボ用圧電素子
51に印加される電圧Vzに関しては、サンプリング位
置(P1,P2)に対応する区間では探針が試料表面
に接近して試料表面に追従するので、Vzのサーボ値と
なり、移動のための区間では探針は試料表面から退避
し離れた状態で移動しているので、探針・試料間距離を
基準距離にすべく圧電素子51は最大ストロークで伸
び、Vzの最大値となっている。サンプリング位置P
1,P2の区間内の1点のVzのサーボ値を測定デー
タとして取得する。接近・退避動作のための圧電素子5
2の伸縮動作について、圧電素子52の駆動範囲におけ
る最大位置と最小位置の両端で行うこともできるし、あ
るいは、駆動範囲における一定位置と他の一定位置の間
の2点間で行うこともできる。以上の構成によれば、測
定動作用のサーボ用圧電素子51に対して独立させて別
個に設けた接近・退避用の圧電素子52によって、サン
プリング位置で探針14を試料13の表面に対して接近
・退避させることが可能となる。この構成によって、前
述の実施形態で説明した効果を発揮しつつ広域走査によ
って広域測定を行うことができる。第3の実施形態にお
いても、測定のための制御動作では、サーボ制御系が常
に能動状態に保持され、圧電素子51の動作に関してサ
ーボ制御が継続される。
【0042】上記のごとく広域測定での各サンプリング
位置で探針が接近・退避するときに、前述したように、
探針に伴走および逆走の各動作を行わせる。この場合に
は、伴走・逆走用の補助移動機構は、例えばZ方向駆動
装置16の全体を動かす機構として別途に設けられる。
補助移動機構としては任意の装置を使用することができ
る。また本実施形態の場合にも前述のごとく逆走は必須
の要件ではない。
【0043】図6と図7に単一の圧電素子で構成される
他のZ方向駆動装置の構成例と動作例を示す。前述した
各実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には同
一の符号を付し、その説明を省略する。この構成例では
Z方向駆動装置16は単一の圧電素子61で構成されて
いる点に特徴がある。単一の圧電素子61によって、前
述のごとくサンプリング位置での接近・退避動作と、表
面追従の測定動作を行うようにしている。試料ステージ
であるXYスキャナ12、試料13、探針14、カンチ
レバー15、レーザ光源22、光検出器23の構成は前
述したもの同じである。
【0044】サーボ制御装置24は、図4で示した構成
と比較すると、Z方向駆動装置16を単一の圧電素子6
1で構成した観点から、加算器34と接近・退避信号供
給器35とが付設されたという点が異なる。このサーボ
制御装置30では、加算器34で、基準距離設定器31
から出力される基準距離に関する電圧信号s0と、接近
・退避信号供給器35から出力される接近・退避用の電
圧信号s01とが加算(合成)される。そして減算器3
2で、加算器34から出力される電圧信号s02と、入
力された検出信号s1と加算器34から出力される電圧
信号s02との差を求めれる。制御回路33は、減算器
32から出力された差信号Δsが0となるように、圧電
素子61を動作させる制御用電圧信号Vzを出力する。
上記の接近・退避用の電圧信号s01は周期的に出力さ
れるパルス信号である。加算器34から出力される電圧
信号s02は、電圧信号s0と接近・退避動作を行わせ
るための電圧信号s01とを加えたものである。制御回
路33から出力された制御用電圧信号Vzは圧電素子6
1に印加される。また制御装置25の構成は前述したも
のと同じである。上記の構成によれば、測定が開始され
ると、サーボ制御系は常に能動状態に維持され、サンプ
リング位置の間の移動時およびサンプリング位置での測
定時のそれぞれで圧電素子61の伸縮動作に関してサー
ボ制御が継続される。
【0045】図7を参照して、図6に示した構成に基づ
く測定動作を説明する。図7において(A)で試料13
に対する圧電素子61の接近・退避の動作を示し、
(B)でタイミングチャートを示している。この原子間
力顕微鏡によれば、圧電素子61は、印加電圧Vzで伸
縮動作を行い、サンプリング位置では、接近・退避信号
s01によって圧電素子61は破線で示すごとく大きく
伸び、探針14(カンチレバー15)を試料13の表面
に接近させて押し付ける(状態a)と共に、この状態で
サーボ制御系に基づき試料表面を追従して表面の凹凸を
測定し、その後、接近・退避信号s01によって圧電素
子61は実線で示すごとく大きく縮み、探針14を試料
13の表面から退避させ(状態b)、次のサンプリング
位置への移動を行う。
【0046】図7のタイミングチャート(B)では、上
段から、XYスキャナ12に含まれるXスキャナによる
X方向の速度、基準距離を設定する信号s0、接近・退
避用の信号s01、信号s0と信号s01の和、電圧V
zの変化状態のそれぞれを示す。探針14が試料13の
表面に接近させられる場合において探針・試料間の距離
を設定する信号s0は、常に、予め設定された値(電圧
値V0 >0)に常に保たれている。原子間力顕微鏡によ
る測定という意味で、本実施形態による測定の構成によ
れば、サーボ制御が常にかかった状態に保持され、サー
ボ制御が継続されている。信号s0は正の一定電圧に設
定されているので、実際に探針が試料表面に接近させら
れると、探針は試料表面に押し付けられる。探針を試料
表面に押し付ける押付け力は、信号s0の電圧値V0
よって決められる。測定を行うサンプリング位置P1,
P2では、接近・退避信号供給器35から出力される接
近・退避用の電圧信号s01は0になっており、加算器
34から出力される電圧信号s02はs0である。従っ
て、各サンプリング位置では、従来の原子間力顕微鏡に
おける場合と同様に、試料表面の追従に基づく表面測定
が行われる。サンプリング位置P1で測定が終了した
後、次のサンプリング位置P2に移動するが、このとき
には接近・退避信号供給器35から−V1 が出力され
る。この電圧値はその絶対値が上記電圧V0 よりも大き
く、負の電圧である。従って加算器34から出力される
電圧信号s02(=s0+s01)は−V2 (=V0
1 )となる。その結果、試料表面に対する探針の押付
け力は、負の押付け力すなわち引力に設定される。サー
ボ制御系は前述の通り常に効いているので、押付け力が
負になると、探針14は試料表面から退避させられる。
実際には、表面張力を越える負の力には制御できないの
で、探針は完全に退避し、この状態においてサーボ制御
系は保持される。従って、探針は試料表面から離れた状
態で、サンプリング位置P1から次のサンプリング位置
P2へ移動する。サンプリング位置P2に来ると、接近
・退避信号供給器35の出力が一定期間0になり、その
間、加算器34から出力される電圧信号s02がV0
なり、圧電素子61は大きく伸びて探針14が試料13
の表面に押し付けられ、表面追従に基づく測定が行われ
る。なお圧電素子61に印加される制御用の電圧Vz
は、探針14が試料13の表面に接近した状態では、前
述した通りサーボ制御系の継続的な働きにより試料表面
に追従するように圧電素子61の伸縮動作を制御するの
で、図7(B)に示されるように、パルス状の電圧44
の上に試料表面の凹凸分の信号45が重畳されていると
いう特性を有する。
【0047】上記のごとく広域測定での各サンプリング
位置で探針が接近・退避するときに、前述したように、
探針に伴走および逆走の各動作を行わせる。この場合に
は、伴走・逆走用の補助移動機構は、例えばZ方向駆動
装置16の全体を動かす機構として別途に設けられる。
補助移動機構としては任意の装置を使用することができ
る。また本実施形態の場合にも前述のごとく逆走は必須
の要件ではない。
【0048】また上記の接近・退避用圧電素子の代わり
に、一般的な接近・駆動用の駆動装置、例えばモータを
利用した駆動装置、空圧や油圧を利用した駆動装置を用
いることもできる。このような構成では、接近・退避用
駆動装置に前述のサーボ用圧電素子を付設した構成が好
ましい。
【0049】上記実施形態では、広域走査を行える移動
機構として試料側を移動させるXYスキャナを設けた
が、探針側に移動機構を設けることもできる。また走査
型プローブ顕微鏡の例として原子間力顕微鏡について説
明したが、他の方式の走査型プローブ顕微鏡に対しても
本発明を適用できるのは勿論である。
【0050】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように本発明によ
れば、試料表面を探針で広域走査できる移動機構を設
け、測定の際に試料表面を追従する探針の変位を生じさ
せる圧電素子と、試料表面に対する探針の接近、試料表
面からの探針の退避を行う駆動装置を設け、広域の測定
領域における各サンプリング位置での接近・退避動作お
よび測定動作を行えるようにしたため、mm級の広い走
査範囲に対する試料表面の凹凸情報をnm以下の分解能
で測定することができ、さらに、かかる広域測定におい
て、測定動作を行うべくサンプリング位置で探針が試料
表面に接近するとき、試料に対する探針の相対速度が0
になるように伴走動作を行わせるように構成したため、
試料表面に平行力の成分を0にでき、測定の再現性が向
上し、測定の信頼性を向上することができる。さらに摩
擦力の影響をなくすことができるため、探針の摩耗をな
くすことができ、超広域の測定を可能にし、探針の交換
頻度を低減し、スループットを向上することができる。
また走査において試料を等速度で移動させ、止める必要
がないので、スループットをさらに向上させることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る走査型プローブ顕微鏡の全体シス
テムを示す構成図である。
【図2】本発明に係る走査型プローブ顕微鏡の測定の際
の接近・退避の動作を説明する図である。
【図3】本発明に係る走査型プローブ顕微鏡の測定の際
の伴走の走査動作を説明する図である。
【図4】本発明に係る走査型プローブ顕微鏡の全体シス
テムの他の例を示す構成図である。
【図5】図4に示した走査型プローブ顕微鏡の測定の際
の接近・退避の動作を説明する図である。
【図6】本発明に係る走査型プローブ顕微鏡の全体シス
テムの他の例を示す構成図である。
【図7】図6に示した走査型プローブ顕微鏡の測定の際
の接近・退避の動作を説明する図である。
【図8】カンチレバーの本来のたわみ変形を説明する図
である。
【図9】探針に試料表面に平行な力が加わったときのカ
ンチレバーのたわみ変形の問題を説明する図である。
【図10】探針に表面吸着層の影響が加わったときの問
題を説明する図である。
【符号の説明】
12 XYスキャナ 13 試料 14 探針 15 カンチレバー 16 Z方向駆動装置 17 圧電素子 18 接近・退避用圧電素子 24 サーボ制御装置 25 制御装置 51 圧電素子 52 接近・退避用圧電素子 61 圧電素子

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 試料の表面に臨む探針と、サンプリング
    位置での測定動作でサーボ制御系に基づき前記探針と前
    記試料の表面との間の距離を設定された基準距離に保つ
    サーボ制御手段を備え、前記探針と前記試料の間を前記
    基準距離に保持しながら前記表面を前記探針で走査して
    前記表面を測定する走査型プローブ顕微鏡において、 前記探針による前記試料の表面の走査を広域的に行わせ
    る移動機構と、 前記サンプリング位置で前記探針を前記試料の表面に接
    近させ、前記サンプリング位置の間の移動では前記探針
    を前記試料の表面から退避させる接近・退避手段と、 前記サンプリング位置で前記探針を前記試料の表面に接
    近させ測定動作を行うとき、前記探針を前記移動機構に
    よる走査移動と同等速度で同方向に伴走させる補助移動
    機構と、 からなることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
  2. 【請求項2】 前記移動機構は、前記試料を搭載し、前
    記試料を走査方向にmmの長さ単位で移動させる試料ス
    テージであることを特徴とする請求項1記載の走査型プ
    ローブ顕微鏡。
  3. 【請求項3】 前記移動機構による移動動作は等速度で
    行われることを特徴とする請求項1または2記載の走査
    型プローブ顕微鏡。
  4. 【請求項4】 試料の表面に臨む探針を備え、前記探針
    と前記試料の間を所定距離に保持しながら前記表面を前
    記探針で走査して前記表面を測定する走査型プローブ顕
    微鏡の走査方法であり、 前記表面における測定領域は相対的に広く、この測定領
    域で離散的に複数のサンプリング位置を設定し、移動機
    構による走査移動を行うとき、前記サンプリング位置の
    間の移動では前記探針を前記試料の表面から退避させて
    移動させる共に、前記サンプリング位置の各々では前記
    探針を前記試料の表面に接近させて測定動作を行い、 前記探針が前記試料の表面に接近して測定動作を行うと
    き、補助移動機構によって、前記移動機構による走査移
    動と同等速度で同方向に伴走用の走査移動を生じさせ
    る、 ことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡の走査方法。
  5. 【請求項5】 前記伴走用走査移動は前記サンプリング
    位置ごとに間欠的に行われることを特徴とする請求項4
    記載の走査型プローブ顕微鏡の走査方法。
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