JP2001032131A - 感温変色性アクリル系合成繊維及びその製造方法 - Google Patents

感温変色性アクリル系合成繊維及びその製造方法

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JP2001032131A JP20358199A JP20358199A JP2001032131A JP 2001032131 A JP2001032131 A JP 2001032131A JP 20358199 A JP20358199 A JP 20358199A JP 20358199 A JP20358199 A JP 20358199A JP 2001032131 A JP2001032131 A JP 2001032131A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アクリル繊維本来の風合を損なうことなく、
熱変色性機能を持続して発現させる感温変色性アクリル
系合成繊維の提供、及びその効果的製造方法を案出す
る。 【解決手段】 アクリロニトリル系重合体に対し、平均
粒子径0.5〜30μmの熱変色性顔料の0.5〜40
重量%が分散状態に含有されて繊維形態に構成されてな
ることを特徴とする感温変色性アクリル系合成繊維、及
び前記構成の繊維をロダン塩濃厚水溶液からなる紡糸原
液を適用して湿式紡糸により得ることを特徴とする製造
方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は感温変色性アクリル
系合成繊維及びその製造方法に関する。詳細には、熱変
色性顔料をアクリロニトリル系重合体中に分散状態に含
有させ、繊維形態となした感温変色性アクリル系合成繊
維及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、繊維に熱変色機能を付与させ
る手段として、繊維の表面に熱変色性顔料をバインダー
樹脂に分散状態に固着させた熱変色層により被覆するも
の(特開昭61−179389号公報、特開昭62−1
56355号公報等)、ポリエステル、ポリアミド、ポ
リオレフィン等の熱可塑性の繊維形成性重合体中に熱変
色性顔料を溶融ブレンドして溶融紡糸により一体的に形
成させるもの(特開平3−227402号公報、特開平
3−161511号公報等)がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、アクリル系
合成繊維にあっては、アクリロニトリル系重合体の熱的
特性により、熱変色性顔料を一体的に溶融ブレンドして
溶融紡糸により繊維を形成することができないので、後
加工により繊維表面に前記した熱変色層を形成すること
により熱変色機能を付与することを余儀なくされてい
た。従って、アクリル繊維自体の風合が損なわれる上、
溶融ブレンドにより溶融紡糸された系に比べ、洗濯強
度、擦過強度、耐光堅牢性等の持久性の面で劣ることを
免れなかった。一方、溶融紡糸による系にあっては、熱
変色性顔料が繊維形成性ポリマーとの溶融ブレンド、或
いは溶融紡糸過程で高熱、高圧が負荷されるので、熱変
色性顔料の熱劣化を起こす場合があり、一般の繊維製品
に適用可能な高分子量の高融点の繊維形成性ポリマーの
適用が阻害され、繊維強度等の耐久性を実用的に満足さ
せることが困難であった。本発明者らは、前記した不具
合を解消するため、鋭意検討を進め、アクリル系繊維の
もつ風合や、繊維特性を損なうことなく、熱変色性機能
を持続して有効に発現させる感温変色性アクリル系合成
繊維及びその製造方法を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、(イ)電子供
与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び
(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体
を含む、平均粒子径0.5〜30μmの熱変色性顔料
が、アクリロニトリル系重合体に対し0.5〜40重量
%分散状態に含有されて繊維状に構成されてなることを
特徴とする感温変色性アクリル系合成繊維を要件とす
る。更には、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、
(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反
応の生起温度を決める反応媒体を含む、平均粒子径0.
5〜30μmの熱変色性顔料が、アクリロニトリル系重
合体を溶解させた無機塩濃厚水溶液中に、前記重合体に
対し0.5〜40重量%の割合で分散状態にブレンドさ
れてなる紡糸原液により湿式紡糸することを特徴とする
感温変色性アクリル系合成繊維の製造方法を要件とす
る。更には、無機塩濃厚水溶液は、ロダン塩又は塩化亜
鉛を主成分として含有する濃厚水溶液であること、更に
は、熱変色性顔料は、平均粒子径〔(長径+短径)/
2〕が0.5μm〜15.0μmの範囲にあること、更
には、熱変色性顔料は、(イ)電子供与性呈色性有機化
合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の
呈色反応の生起温度を決める反応媒体を含む可逆熱変色
性組成物をマイクロカプセルに内包させてなるマイクロ
カプセル形態の顔料であること、更には、熱変色性顔料
は、可逆熱変色性組成物/壁膜=7/1〜1/1(重量
比)であるマイクロカプセル形態の熱変色性顔料である
こと、更には、熱変色性顔料は、非円形断面形状である
こと、更には、熱変色性顔料は、外面の一部に窪みを有
する顔料であること、更には、熱変色性顔料は、発色状
態からの加熱により消色し、消色状態からの冷却により
発色する加熱消色型、発色状態又は消色状態を互変的に
特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、又は、消色
状態からの加熱により発色し、発色状態からの降温によ
り消色状態に復する加熱発色型の何れかより選ばれる顔
料であること、等を要件とする。
【0005】前記熱変色性顔料は、(イ)電子供与性呈
色性有機化合物、(ロ)前記化合物を呈色させる電子受
容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度
を決める反応媒体の必須三成分を含む、従来より公知の
ものが有効であり、具体的には、本出願人が提案した、
特公昭51−44706号公報、特公昭51−4470
7号公報、特公平1−29398号公報等に記載のもの
が利用できる。前記は所定の温度(変色点)を境として
その前後で変色し、変色点以上の温度域で消色状態、変
色点未満の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち
常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。即ち、
もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又
は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は
冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒ
ステリシス幅が比較的小さい特性(ΔHA =1〜7℃)
を有する加熱消色型(A)を挙げることができ、特にΔ
A が3℃以下の系〔特公平1−29398号公報に示
す、3℃以下のΔT値(融点−曇点)を示す脂肪酸エス
テルを(ハ)成分として適用〕によるものは、変色点を
境に温度変化に鋭敏に感応して高感度の加熱消色性を示
し、目的に応じて効果的に適用できる(図5参照)。
【0006】又、本出願人が提案した特公平4−171
54号公報、特開平7−179777号公報、特開平7
−33997号公報、特開平8−39936号公報等に
記載されている大きなヒステリシス特性(ΔHB =8〜
50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化
をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低
温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温
側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿っ
て変色し、t1 以下の低温域での発色状態、又はt4
上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t2 〜t3
間の温度域(実質的二相保持温度域〕で記憶保持できる
色彩記憶保持型熱変色性組成物(B)も適用できる(図
6参照)。尚、前記実質的二相保持温度域は、常温域
(例えば、15〜35℃)を含むものが汎用的である
が、前記温度範囲に特定されない。
【0007】又、加熱発色型(C)の組成物として、消
色状態からの加熱により発色する、本出願人の提案(特
開平11−129623号公報、特開平11−5973
号公報)による、(ロ)電子受容性化合物として、炭素
数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定の
アルコキシフェノール化合物を適用した系を挙げること
ができる。
【0008】前記した三つのタイプ(A、B、C)の熱
変色性組成物を含む顔料を目的に応じて選択して適用す
ることにより、多様な変色形態を有する感温変色性アク
リル系合成繊維を提供できる。
【0009】前記熱変色性顔料は、前記(イ)、
(ロ)、(ハ)の三成分を含む微粒子形態のものであれ
ばよく、バインダー樹脂と共にブレンドされた粒状物、
前記粒状物を別の樹脂で被覆したもの、(イ)、
(ロ)、(ハ)の三成分をマイクロカプセルに内包させ
たもの、等が有効である。なかでも、鮮明な発色性、高
発色濃度、、均質性、分散安定性、耐薬品性等の面でマ
イクロカプセル形態のものが好適である。熱変色性顔料
の平均粒子径〔(長径+短径)/2〕は、0.5μm〜
30μmの範囲、好ましくは、0.5〜15μm、更に
好ましくは、0.5〜10μmの範囲にあることが、変
色の鋭敏性、持久性、加工適性等の面で有効である。粒
子径が30μmを越える系にあっては、繊維形成過程に
おける均質な分散性に欠け、安定した品質の熱変色性を
示す繊維を形成し難い。0.5μm未満の系、なかで
も、マイクロカプセル形態の顔料の系にあっては、水性
媒体中に懸濁した状態でマイクロカプセル化した熱変色
性顔料が得られるとしても、濾別又は遠心分離等の手段
によるカプセル化顔料の単離に難がある上、強度的に不
充分である。
【0010】マイクロカプセル形態の顔料にあっては、
真円形断面のものの適用を拒まないが、非円形断面形状
を有するもの、更に具体的には外面の少なくとも一部に
窪みを有する非真円形状の熱変色性顔料(図1〜図4参
照)を効果的に適用することができる。前記熱変色性顔
料は、非真円形態の偏平状の顔料であるので圧力や熱の
負荷に対して、適宜に弾性変形して応力を緩和できるた
め、カプセル壁膜の破壊に対して抑制効果を果たす。即
ち、加熱過程にあってはカプセルの熱膨脹、収縮に応じ
て壁膜が弾性変形して、カプセル壁膜の破壊の抑制効果
を果たし、内包の可逆熱変色性組成物を保護して所期の
熱変色機能を保持させる強靱なカプセル形態の熱変色性
顔料として効果的に機能する。又、本発明のカプセル化
された熱変色性顔料にあっては、可逆熱変色性組成物/
壁膜=7/1〜1/1(重量比)の範囲にあることが望
ましい。熱変色性組成物の比率が前記範囲より大になる
と壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、内包した熱変色性組成
物の保護機能の低下がみられる。一方、壁膜の比率が前
記範囲より大になると発色濃度の低下を余儀なくされ、
好ましくない。
【0011】前記可逆熱変色性組成物をカプセルに内包
させる手段としては、界面重合法、界面重縮合法、イン
サイチュー法、コアセルベート法等、公知のカプセル化
方法が適用されるが、本発明の前記した要件を満たす粒
子径範囲及び外形状の熱変色性顔料を得るためには、凝
集、合一化が生じ難い界面重合法又は界面重縮合法が好
適に用いられる。更に、カプセル化終了後、カプセル懸
濁液を所望に応じて水で希釈し、夾雑物及び粗大粒子を
フィルター類を用いて濾別することにより、不要な粗大
粒子が除去される。
【0012】前記熱変色性顔料は、繊維を形成するアク
リロニトリル系重合体に対し、0.5〜40重量%の割
合でブレンドされる。0.5重量%未満では、鮮明な熱
変色性を示さない。一方、40重量%を越えると消色時
における色残りが発生しがちであり、好適には1〜20
重量%の範囲である。
【0013】次に、第2の発明である本発明感温変色性
アクリル系合成繊維の製造方法は、(イ)電子供与性呈
色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)
前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体を含
む、平均粒子径0.5〜30μmの熱変色性顔料が、ア
クリロニトリル系重合体を溶解させた無機塩濃厚水溶液
中に、前記重合体に対し0.5〜40重量%の割合で分
散状態にブレンドされてなる紡糸原液により湿式紡糸す
ることを要件とする。前記無機塩濃厚水溶液としては、
ロダンソーダ、ロダンカリウム、ロダンアンモン及びロ
ダンカルシウム等のロダン塩の濃厚水溶液、塩化亜鉛、
塩化リチウム等無機塩の濃厚水溶液を挙げることができ
る。これらの無機塩類は、熱変色性顔料の変色機能を劣
化させることなく、アクリロニトリル系重合体の良好な
溶媒として作用する。又、紡糸ノズルより吐出されたフ
ィラメント状物を凝固させる凝固浴としては、従来より
汎用の水もしくは濃度20%以下の上記無機塩の水溶液
が好適である。尚、前記紡糸原液は、前記重合体の重合
度に応じて配合量を適性な特性の紡糸液が得られるよう
調整されるが、通常、30℃で40〜200ポイズ程度
の粘性を有するものが有効である。アクリロニトリル系
重合体としては、ポリアクリロニトリル又はアクリロニ
トリルと共重合し得る化合物との共重合体及びポリ塩化
ビニル等の第2成分を含むものが挙げられ、アクリロニ
トリルを50重量%以上、好ましくは80重量%以上含
有するものが好ましい。アクリロニトリルと共重合して
本発明の実施に有効なアクリロニトリル共重合生成物を
生じる化合物としては、例えば、アクリル酸メチル、ア
クリル酸エチル、メタクリル酸メチルなどのアクリル酸
又はメタクリル酸のエステル類、アクリルアミド及びメ
タクリルアミド及びこれらのアルキル置換生成物及び窒
素置換生成物、2−ビニルピリジン、2−メチル−5−
ビニルピリジン等のビニルピリジン類、スチレン及びそ
れらのアルキル置換生成物或いはさらに塩化ビニル、塩
化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニデン、青化ビニリ
デン等の単量体を挙げることができるが、必ずしもこれ
らに限定されない。通常、単一重合体アクリロニトリル
又は共重合体アクリロニトリルの分子量(平均分子量)
は15000〜150000の範囲(汎用的には250
00〜80000)から適宜に選ばれる。本発明におけ
る紡糸原液の組成は、アクリロニトリル系重合体5〜3
0重量%(好適には約10〜20重量%)、ロダン塩又
は塩化亜鉛30〜60重量%の紡糸原液において熱変色
性顔料をポリマーに対して0.5〜40重量%(好適に
は1〜20重量%)を分散させることができる。さら
に、一般顔料や光輝性材料等を添加できる。前記紡糸原
液を45〜75℃で紡糸ノズルより、希薄ロダン塩水溶
液等の凝固液中に押出し、凝固させ、公知の水洗、延
伸、熱処理、乾燥、更に捲縮処理、油剤処理等の工程を
経て繊維となす。熱変色性顔料として、マイクロカプセ
ル形態の顔料を適用する系にあっては、紡糸原液の調製
時に耐性を有すると共に易分散性であり、なかでも、非
円形断面形状を有する顔料は、紡糸過程や延伸による繊
維形成過程にあって、圧力や高熱が負荷されるが、自ら
の弾性変形により応力が緩和され、加えて繊維化時に長
手方向に当該マイクロカプセル顔料自体が配向し易い特
性と相まってマイクロカプセルが破壊されることがな
く、所期の熱変色機能を満たす繊維を得ることができ
る。本発明における繊維径は100μm以下、好適には
30μm以下であり、汎用の非熱変色性アクリル繊維と
同様な処理により、トウ、ステープル、その他所望の繊
維形態となして実用に供することができる。尚、前記湿
式紡糸において、30μm以下の繊維径を得るために
は、d<D≦20d(但し、dは顔料の粒子径、Dは繊
維径を示す)の関係を満たすとき、連続的且つ安定的に
繊維形成ができることを見出した。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の感温変色性アクリル系合
成繊維は、特定粒子径の熱変色性顔料の特定量をアクリ
ロニトリル系重合体を含む無機塩濃厚水溶液中に分散さ
せた紡糸原液を用い、紡糸ノズルから凝固液中に吐出さ
せ、公知の手段により延伸等の後処理を施し、繊維形態
となすことによって得られる。尚、実施例では、マイク
ロカプセル形態の顔料のうち、図1〜図4に例示の形態
を適用しているが、これらの形態の混合或いは円形状断
面の形態のものであってもよく、本発明は実施例に限定
されない。
【0015】
【実施例】以下に実施例を示す。尚、実施例中の部は重
量部である。
【0016】実施例1 アクリロニトリル90部、アクリル酸メチル9.8部、
メタリルスルホン酸ソーダ0.2部のモノマー組成で重
合して得られたアクリロニトリル系共重合体10部を5
0重量%濃度のロダンソーダ水溶液89部に溶解した。
前記アクリロニトリル系共重合体溶液99部に、(イ)
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−
3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)
−4−アザフタリド1部、(ロ)1,1−ビス−(4−
ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン5部、
(ハ)セチルアルコール25部、カプリン酸ステアリル
25部からなる可逆熱変色性組成物をエポキシ樹脂皮膜
のマイクロカプセルに内包した可逆熱変色性顔料(消色
温度t4 :約33℃、発色温度t1 :約28℃、発色時
青色、消色時無色、平均粒子径:3μm、図1の断面形
状、可逆熱変色性組成物/壁膜=5.6/1.0)1部
を加え、均一に分散することにより、可逆熱変色性顔料
1重量%、アクリロニトリル系共重合体10重量%、ロ
ダンソーダ44.5重量%、水44.5重量%からなる
紡糸原液を調製した。前記紡糸原液を孔径0.04mm
の紡糸ノズルを用いて−2℃、15重量%濃度のロダン
ソーダ水溶液中に吐出し、湿式紡糸した後、さらに、従
来公知の条件で水洗、延伸、乾燥緻密化、捲縮処理、熱
処理及び油剤処理等を施して繊維直径20μmの感温変
色性アクリル系合成繊維を得た。この繊維は室温(25
℃)で青色を呈しており、約33℃以上の温度に加温す
ることにより無色となる、加熱消色型の熱変色特性(図
5参照)を有し、この状態で室温(25℃)に放置した
ところ約28℃で再び青色を呈した。この色変化は繰り
返し行うことができた。
【0017】実施例2 アクリロニトリル88部、メタクリル酸メチル12部の
モノマー組成で重合して得られたアクリロニトリル系共
重合体10部を60重量%濃度の塩化亜鉛水溶液89部
に溶解した。前記アクリロニトリル系共重合体溶液99
部に、(イ)1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフル
オラン3部、(ロ)2,2−ビス−(4−ヒドロキシフ
ェニル)プロパン5部、(ハ)ミリスチルアルコール2
5部、ミリスチン酸デシル25部からなる可逆熱変色性
組成物をエポキシ樹脂皮膜のマイクロカプセルに内包し
た可逆熱変色顔料(消色温度t4:約15℃、発色温度
t1:約10℃、発色時ピンク色、消色時無色、平均粒子
径:5μm、図2の断面形状、可逆熱変色性組成物/壁
膜=5.8/1.0)1部を加え、均一に分散すること
により、可逆熱変色性顔料1重量%、アクリロニトリル
系共重合体10重量%、塩化亜鉛53.4重量%、水3
5.6重量%からなる紡糸原液を調製した。前記紡糸原
液を孔径0.06mmの紡糸ノズルを用いて−2℃、1
5重量%濃度の塩化亜鉛水溶液中に吐出し、湿式紡糸し
た後、さらに、従来公知の条件で水洗、延伸、乾燥緻密
化、捲縮処理、熱処理及び油剤処理等を施して繊維直径
30μmの感温変色性アクリル系合成繊維を得た。この
繊維は室温(25℃)で無色であり、約10℃以下の温
度に冷却することによりピンク色となる、加熱消色型の
熱変色特性(図5参照)を有し、この状態で室温(25
℃)に放置したところ約15℃で再び無色となった。こ
の色変化は繰り返し行うことができた。
【0018】実施例3 アクリロニトリル91部、アクリル酸メチル6.5部、
N−メチロールアクリルアミド2.5部のモノマー組成
で重合して得られたアクリロニトリル系共重合体10部
を50重量%濃度のロダンソーダ水溶液89部に溶解し
た。前記アクリロニトリル系共重合体溶液99部に、
(イ)1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラ
ン3部、(ロ)1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニ
ル)−2−エチルヘキサン5部、(ハ)ステアリン酸ネ
オペンチル50部からなる可逆熱変色性組成物をエポキ
シ樹脂皮膜のマイクロカプセルに内包した可逆熱変色性
色彩記憶性顔料(消色温度t4 :約32℃、発色温度
t1:約15℃、着色時橙色、消色時無色、平均粒子径:
2μm、図3の断面形状、可逆熱変色性組成物/壁膜=
5.8/1.0)1部を加え、均一に分散することによ
り、可逆熱変色性色彩記憶性顔料1重量%、アクリロニ
トリル系共重合体10重量%、ロダンソーダ44.5重
量%、水44.5重量%からなる紡糸原液を調製した。
前記紡糸原液を孔径0.04mmの紡糸ノズルを用いて
−2℃、15重量%濃度のロダンソーダ水溶液中に吐出
し、湿式紡糸した後、さらに、従来公知の条件で水洗、
延伸、乾燥緻密化、捲縮処理、熱処理及び油剤処理等を
施して繊維直径15μmの感温変色性アクリル系合成繊
維を得た。室温(25℃)で消色状態にある前記繊維を
約15℃以下に冷却すると橙色に着色し、この着色状態
は再び室温(25℃)に加温しても保持することができ
た。さらに、橙色の着色状態からの加温により、約32
℃で消色し、この状態は、再び約15℃以下に冷却する
まで保持することができ、色彩記憶保持型の熱変色特性
(図6)を示した。このように、前記繊維は常温域で色
彩記憶性を有しており、この色変化は繰り返し行うこと
ができた。
【0019】実施例4 実施例1の紡糸原液100部に対して、非熱変色性着色
剤として、ピンク色顔料の水分散体〔商品名:SAND
YE SUPER PINK F5B、顔料分:約14
重量%、山陽色素株式会社製〕0.05部を加え、均一
に分散した紡糸原液を孔径0.04mmの紡糸ノズルを
用いて−2℃、15重量%濃度のチオシアン酸ナトリウ
ム水溶液中に吐出し、湿式紡糸した後、さらに、従来公
知の条件で水洗、延伸、乾燥緻密化、捲縮処理、熱処理
及び油剤処理等を施して繊維直径20μmの感温変色性
アクリル系合成繊維を得た。この繊維は室温(25℃)
で紫色を呈しており、約33℃以上の温度に加温するこ
とによりピンク色となり、この状態で室温(25℃)に
放置したところ約28℃で再び紫色を呈した。この色変
化は繰り返し行うことができた。
【0020】実施例5 (イ)3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリ
ノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインド
ール−3−イル)−4−アザフタリド1.5部、(ロ)
p−n−ノニルオキシフェノール6.0部、p−n−オ
クチルオキシフェノール4.0部、(ハ)n−ドコサン
30.0部を前記実施例1の(イ)、(ロ)、(ハ)の
各成分に替えて適用し、実施例1と同様にして熱変色性
顔料(平均粒子径:3μm、図4の断面形状、可逆熱変
色性組成物/壁膜=2.8/1.0)を得、実施例1と
同様にして感温変色性アクリル系合成繊維を得た。前記
熱変色性顔料は、25℃の室温では消色状態(無色)で
あり、加熱を始めると33℃(T1 )付近から発色し始
め、43℃(T2 )で青色の発色状態となり、次いで降
温過程で32℃(T3 )まで発色状態を維持し、更に温
度が降下すると少しずつ消色し、27℃(T4 )で完全
に消色状態となる、加熱発色型熱変色特性(図7参照)
を有し、前記繊維は前記変色特性を有していた。この色
変化は繰り返し行うことができた。
【0021】
【発明の効果】本発明の感温変色性アクリル系合成繊維
は、特定粒子径の熱変色性顔料の特定量を繊維中に分散
状態に含有させてなるものであるから、表面に熱変色性
顔料をバインダー樹脂により固着させた系に比べて、耐
洗濯性、耐擦過性、耐光性等の持久性を満たすと共にア
クリル系繊維の特性である、風合、嵩高性その他の繊維
特性が損なわれることもなく、実用性を満たす。汎用の
アクリル繊維と同様な繊維特性を有し、衣料分野、カー
ペット、毛布、カーテン等、ぬいぐるみ等の玩具分野等
に適用される。熱変色性顔料として、マイクロカプセル
形態の顔料を適用する系にあっては、紡糸原液の調製時
に耐性を有し、分散性もよく、更には、紡糸過程、熱処
理過程にあっても有効であり、なかでも、非円形断面形
状を有している系のものにあっては、外圧による弾性変
形性に富み、ブレンド工程での圧力や、繊維化工程にお
ける圧力の負荷に対して、自らの弾性変形により圧力が
緩和され、加えて繊維化時に長手方向に当該マイクロカ
プセル顔料自体が配向し易い特性と相まってマイクロカ
プセルが破壊される危険性がなく、所期の熱変色機能を
損なうことなく有効に発現させる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の感温変色性アクリル系合成繊維に適用
する熱変色性顔料の一例を示す、(イ)外観、及び
(ロ)断面の拡大説明図である。
【図2】本発明の感温変色性アクリル系合成繊維に適用
する熱変色性顔料の他の例を示す、(イ)外観、及び
(ロ)断面の拡大説明図である。
【図3】本発明の感温変色性アクリル系合成繊維に適用
する熱変色性顔料の他の例を示す、(イ)外観、及び
(ロ)断面の拡大説明図である。
【図4】本発明の感温変色性アクリル系合成繊維に適用
する熱変色性顔料の他の例を示す、(イ)外観、及び
(ロ)断面の拡大説明図である。
【図5】加熱消色型の熱変色性組成物の変色挙動を示す
グラフである。
【図6】色彩記憶保持型の熱変色性組成物の変色挙動を
示すグラフである。
【図7】加熱発色型の熱変色性組成物の変色挙動を示す
グラフである。
【符号の説明】
1 熱変色性顔料 11 熱変色性組成物 12 壁膜 13 窪み t1 加熱消色型可逆熱変色性組成物の完全発色温度 t2 加熱消色型可逆熱変色性組成物の発色開始温度 t3 加熱消色型可逆熱変色性組成物の消色開始温度 t4 加熱消色型可逆熱変色性組成物の完全消色温度 T1 加熱発色型可逆熱変色性組成物の発色開始温度 T2 加熱発色型可逆熱変色性組成物の完全発色温度 T3 加熱発色型可逆熱変色性組成物の消色開始温度 T4 加熱発色型可逆熱変色性組成物の完全消色温度 ΔHA 加熱消色型可逆熱変色性組成物のヒステリシス
幅 ΔHB 色彩記憶保持型可逆熱変色性組成物のヒステリ
シス幅 ΔHC 加熱発色型可逆熱変色性組成物のヒステリシス

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (イ)電子供与性呈色性有機化合物、
    (ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反
    応の生起温度を決める反応媒体を含む、平均粒子径0.
    5〜30μmの熱変色性顔料が、アクリロニトリル系重
    合体に対し0.5〜40重量%分散状態に含有されて繊
    維状に構成されてなることを特徴とする感温変色性アク
    リル系合成繊維。
  2. 【請求項2】 熱変色性顔料は、平均粒子径〔(長径+
    短径)/2〕が0.5μm〜15.0μmの範囲にある
    請求項1記載の感温変色性アクリル系合成繊維。
  3. 【請求項3】 熱変色性顔料は、(イ)電子供与性呈色
    性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前
    記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体を含む可
    逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させてなる
    マイクロカプセル形態の顔料である請求項1又は2記載
    の感温変色性アクリル系合成繊維。
  4. 【請求項4】 請求項2又は3記載の熱変色性顔料は、
    可逆熱変色性組成物/壁膜=7/1〜1/1(重量比)
    であるマイクロカプセル形態の熱変色性顔料である。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4記載の何れかの熱変色性
    顔料は、非円形断面形状である。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至5記載の何れかの熱変色性
    顔料は、外面の一部に窪みを有する顔料である。
  7. 【請求項7】 熱変色性顔料は、発色状態からの加熱に
    より消色し、消色状態からの冷却により発色する加熱消
    色型、発色状態又は消色状態を互変的に特定温度域で記
    憶保持する色彩記憶保持型、又は、消色状態からの加熱
    により発色し、発色状態からの降温により消色状態に復
    する加熱発色型の何れかより選ばれる請求項1記載の感
    温変色性アクリル系合成繊維。
  8. 【請求項8】 (イ)電子供与性呈色性有機化合物、
    (ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反
    応の生起温度を決める反応媒体を含む、平均粒子径0.
    5〜30μmの熱変色性顔料が、アクリロニトリル系重
    合体を溶解させた無機塩濃厚水溶液中に、前記重合体に
    対し0.5〜40重量%の割合で分散状態にブレンドさ
    れてなる紡糸原液により湿式紡糸することを特徴とする
    感温変色性アクリル系合成繊維の製造方法。
  9. 【請求項9】 無機塩濃厚水溶液は、ロダン塩又は塩化
    亜鉛を主成分として含有する濃厚水溶液である請求項8
    記載の感温変色性アクリル系合成繊維の製造方法。
  10. 【請求項10】 熱変色性顔料は、請求項2乃至7記載
    の何れかである請求項8記載の感温変色性アクリル系合
    成繊維の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP1446519A4 (en) * 2001-10-23 2005-09-14 Polymer Group Inc FUSION FILM THERMOCHROMIC FABRICS

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