JP2001019489A - ガラスセラミックス - Google Patents

ガラスセラミックス

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JP2001019489A JP2000179600A JP2000179600A JP2001019489A JP 2001019489 A JP2001019489 A JP 2001019489A JP 2000179600 A JP2000179600 A JP 2000179600A JP 2000179600 A JP2000179600 A JP 2000179600A JP 2001019489 A JP2001019489 A JP 2001019489A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高密度記録のためのランプロード方式(磁気
ヘッドのコンタクトレコーディング)にも十分対応し得
る良好な表面特性を兼ね備え、高速回転化に耐え得る高
ヤング率と比重の関係を改善し、各ドライブ部材に合致
する熱膨張特性をも兼ね備えた、情報記憶媒体用ガラス
セラミックス基板およびその製造方法ならびにこの基板
を用いた情報記憶媒体を提供する。 【解決手段】 ヤング率(GPa)/比重が37以上で
あり、Al23含有量(酸化物基準の重量百分率)が0
〜10%未満であることを特徴とする、情報記憶媒体用
ガラスセラミックス基板。主結晶相は二珪酸リチウム
(Li2O・2SiO2)およびα−クォーツ(α−Si
2)結晶であり、熱膨張係数が−50〜+70℃の範
囲において65〜130×10-7/℃の範囲であり、研
磨後の表面粗度Ra(算術平均粗さ)が9Å以下とする
ことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報記憶装置に用
いられる情報記憶媒体用基板、特に基板表面の改善され
た超平滑性と、高速回転対応の高ヤング率、低比重特性
およびドライブ構成部品に合致する熱膨張特性を有する
ガラスセラミックスからなる磁気ディスク基板等の情報
記憶媒体用基板およびその製造方法ならびにこれを用い
た情報記憶媒体に関する。本明細書において「情報記憶
媒体」とは、パーソナルコンピューターのハードディス
クやネットワーク用情報記録として使用される、固定型
ハードディスク・リムーバル型ハードディスク・カード
型ハードディスクやデジタルビデオカメラ・デジタルカ
メラにおいて使用可能な情報磁気記憶媒体等のディスク
状情報記憶媒体を意味する。
【0002】
【従来の技術】パーソナルコンピュータのマルチメディ
ア化や、デジタルビデオカメラ・デジタルカメラ等のよ
うに動画や音声等の大きなデータが扱われるようにな
り、大容量の情報磁気記憶装置が必要となっている。そ
の結果、情報磁気記憶媒体は面記録密度を大きくするた
めに、ビットおよびトラック密度を増加させ、ビットセ
ルのサイズを縮小化する傾向にある。これに対応すべ
く、磁気ヘッドはビットセルの縮小化に伴って、ディス
ク表面に、より近接して作動するようになる。このよう
に、磁気ヘッドが情報磁気記憶媒体基板に対し、低浮上
状態または接触状態(コンタクト)にて作動する場合、
磁気ヘッドの起動・停止技術として、情報磁気記憶媒体
基板の特定部分(ディスク内径側もしくは外径側の未記
憶部)において吸着防止処理(テクスチャ加工等)を行
い、そこで磁気ヘッドの起動・停止を行うランディング
ゾーン方式等の技術開発が重要となってくる。
【0003】現在の情報磁気記憶装置において、磁気ヘ
ッドは、装置始動前は情報磁気記憶媒体基板に接触して
おり、装置始動時には情報磁気記憶媒体基板より浮上す
るといった動作を繰り返すCSS(コンタクト・スター
ト・ストップ)方式を行っている。この時両者の接触面
が必要以上に鏡面であると吸着が発生し摩擦係数の増大
に伴う回転始動の不円滑、情報磁気記憶媒体表面の損傷
等の問題が発生する。この様に情報磁気記憶媒体基板
は、記憶容量の増大に伴う磁気ヘッドの低浮上化と、情
報磁気記憶媒体基板上での磁気ヘッド吸着防止という、
相反する要求が要望される。これらの相反する要望に対
しては、情報磁気記憶媒体基板の特定領域に磁気ヘッド
の始動・停止部を制作するランディングゾーン技術の開
発が進められている。更にこれらランディングゾーン技
術に対抗して、磁気ヘッドを完全に接触させ、ヘッドの
始動停止を情報磁気記憶媒体基板上から外す、ランプロ
ード技術も開発されており、情報磁気記憶媒体基板表面
への要求は、よりスムーズへという方向となっている。
【0004】また、今日磁気記憶装置の情報磁気記憶媒
体基板を高速回転化する事で情報の高速化を計る技術開
発が進んでいるが、基板の回転数が高速化する事で、た
わみや変形が発生するために、基板材には高ヤング率化
が要求されている。加えて、現在の固定型情報磁気記憶
装置に対し、リムーバブル方式やカード方式等の情報磁
気記憶装置が検討・実用化段階にあり、デジタルビデオ
カメラ,デジタルカメラ等への用途展開も始まりつつあ
る。
【0005】ところで、従来磁気ディスク基板材とし
て、アルミニウム合金が広く用いられているが、アルミ
ニウム合金基板では、種々の材料欠陥の影響により、研
磨工程における基板表面の突起またはスポット状の凹凸
を生じ平坦性、平滑性の点で前記の高密度記憶媒体用基
板として十分でなく、またアルミニウム合金は軟かい材
料で、ヤング率,表面硬度が低いため、ドライブの高速
回転において振動が激しく変形が生じやすいということ
や、薄形化に対応することが難しいという欠点を有して
いる。更にヘッドの接触による変形傷を生じ易く、メデ
ィアの損傷等という問題点も有しており、今日の高密度
記録化に十分対応できない。
【0006】一方、アルミニウム合金基板の問題点を解
消する材料として、化学強化ガラスであるソーダライム
ガラス(SiO2−CaO−Na2O)やアルミノシリケ
ートガラス(SiO2−Al23−Na2O)が知られて
いるが、この場合、(1)研磨は化学強化後に行なわれ
るため、ディスクの薄板化における強化層の不安定要素
が高い。(2)ガラス中にNa2O成分を必須成分とし
て含有するため、成膜特性が悪化し、Na2O溶出防止
のための全面バリアコート処理が必要となり、製品の低
コスト安定生産性が難しい欠点がある。
【0007】更に、アルミニウム合金基板や化学強化ガ
ラス基板に対して、いくつかの結晶化ガラスが知られて
いる。例えば、USP5,626,935号公報記載の
SiO2−Li2O−MgO−P25系結晶化ガラスは、
主結晶相として二珪酸リチウム(Li2O・2SiO2
およびα−クォーツ(α−SiO2)を有し、α−クォ
ーツ(α−SiO2)の球状粒子サイズをコントロール
する事で、従来のメカニカルテクスチャー、ケミカルテ
クスチャーを不用とし、研磨して成る表面粗度(Ra)
を15〜50Åの範囲で制御を可能とした、基板表面全
面テクスチャー材として非常に優れた材料であるが、本
願が目標とする表面粗度(Ra)が9Å以下、さらに好
ましくは6Å未満という様に、急速に進む記録容量向上
に合せたヘッドの低浮上化に対応するための表面粗度を
得ることができない。また、熱膨張係数に対する議論や
示唆がまったくなされていない。
【0008】特開平9−35234号公報には、SiO
2−Al23−Li2O系ガラスにおいて、主結晶相が二
珪酸リチウム(Li2O・2SiO2)とβ−スポジュウ
メン(Li2O・Al23・4SiO2)からなる磁気デ
ィスク用基板が開示されているが、この結晶化ガラス
は、比較的Al23成分の含有量が多い組成系であるの
と同時に、α−石英(α−SiO2)やα−クリストバ
ライト(α−SiO2)結晶等のSiO2系結晶の析出を
著しく規制したものである。この結晶化ガラスは、磁気
ディスクとしての研磨して成る中心線平均表面粗さは、
20Å以下であるが、実施例で開示される中心線平均表
面粗さは、12〜17Åと粗く、前記目標に至るもので
はないため、記憶容量向上に伴う、磁気ヘッドの低浮上
化に十分対応することができない。また、結晶化熱処理
温度についても820℃〜920℃と高温を必要とする
ため、低コスト化および量産性を妨げるものである。
【0009】国際公開番号WO97/01164は、上
記特開平9−35234号公報を含んだもので、Al2
3成分の範囲の下限を下げて、結晶化熱処理を低温化
(680℃〜770℃)した磁気ディスク用結晶化ガラ
スであるが、下限値を下げただけでは、その改善効果は
十分と言えず、更に実施例中で開示されるすべての結晶
化ガラスの結晶相は、β−ユークリプタイト(Li2
・Al23・2SiO2)を析出させるものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
従来技術に見られる諸欠点を解消しつつ、高密度記録の
ためのランプロード方式(磁気ヘッドのコンタクトレコ
ーディング)にも十分対応し得る良好な表面特性を兼ね
備え、高速回転化に耐え得る高ヤング率と比重の関係を
改善し、各ドライブ部材に合致する熱膨張特性をも兼ね
備えた、情報記憶媒体用ガラスセラミックス基板および
その製造方法ならびにこの基板を用いた情報記憶媒体を
提供することにある。
【0011】
【課題を解消するための手段】本発明者は、上記目的を
達成するために鋭意試験研究を重ねた結果、主結晶相は
二珪酸リチウム(Li2O・2SiO2)およびα−クォ
ーツ(α−SiO2)結晶であり、結晶粒子はいずれも
微細な球状粒子形状であるために加工性に優れ、研磨し
て成る表面はより平滑性に優れ、ドライブ構成部品に合
致する熱膨張特性を有し、更に情報記憶装置の高速回転
にも対応し得る高ヤング率と低比重を兼ね備えている点
で、従来の情報記憶媒体用ガラスセラミックス基板に比
べて、一段と有利な情報記憶媒体用ガラスセラミックス
が得られることを見い出し、本発明に至った。特に、本
発明の目的を達成する情報記憶媒体用ガラスセラミック
ス基板は、その表面平滑性からランプロード方式に用い
るのに好適である。
【0012】すなわち、請求項1に記載の発明は、ヤン
グ率=95〜120GPa,Al23含有量(酸化物基
準の重量百分率)が0〜10%未満であることを特徴と
するガラスセラミックスであり、請求項2に記載の発明
は、比重=2.4〜2.6の範囲にあることを特徴とす
る、請求項1に記載のガラスセラミックスであり、請求
項3に記載の発明は、熱膨張係数が−50〜+70℃の
範囲において65×10-7〜130×10-7/℃の範囲
であることを特徴とする、請求項1,2のいずれか一つ
に記載のガラスセラミックスであり、請求項4に記載の
発明は、主結晶相は、(a)ニ珪酸リチウム(Li2
・2SiO2)に加えて(b)α−クォーツ(α−Si
2)またはα−クォーツ固容体(α−SiO2固容体)
であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記
載のガラスセラミックスであり、請求項5に記載の発明
は、Na2O,PbOを実質上含有しないことを特徴と
する、請求項1,2,3,4のいずれか一つに記載のガ
ラスセラミックス基板であり、請求項6に記載の発明
は、MgO含有量(酸化物基準の重量百分率)が0.3
%以上であることをであることを特徴とする、請求項1
〜5のいずれかに記載のガラスセラミックスであり、請
求項7に記載の発明は、酸化物基準の重量百分率で、 SiO2 71 〜81% Li2O 8 〜11% K2O 0 〜 3% MgO 0.3〜 2% ZnO 0 〜 1% P25 1 〜 3% ZrO2 0.5〜 5% TiO2 0 〜 3% Al23 4 〜 8% Sb23 0.1〜 0.5% SnO2 0 〜 5% MoO3 0 〜 3% NiO 0 〜 2% CoO 0 〜 3% Cr23 0 〜 3% の範囲の各成分を含有し、主結晶相は、(a)ニ珪酸リ
チウム(Li2O・2SiO2)に加えて(b)α−クォ
ーツ(α−SiO2)またはα−クォーツ固容体(α−
SiO2固容体)であることを特徴とする、請求項1〜
6のいずれかに記載のガラスセラミックスであり、請求
項8に記載の発明は、結晶相の結晶粒子はいずれも微細
な球状粒子形状であることを特徴とする、請求項1〜7
のいずれかに記載のガラスセラミックスであり、請求項
9に記載の発明は、結晶相の結晶粒子径(平均)が0.
30μm以下であることを特徴とする、請求項1〜8の
いずれかに記載のガラスセラミックスであり、請求項1
0に記載の発明は、ガラス原料を溶融・成型および徐冷
後、結晶化熱処理条件として、核形成温度=550℃〜
650℃,核形成処理時間=1〜12時間、結晶成長温
度=680℃〜800℃,核成長処理時間=1〜12時
間の範囲で熱処理を行うことにより得られることを特徴
とする、請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9の
いずれか一つに記載のガラスセラミックスの製造方法で
ある。
【0013】本発明のガラスセラミックス基板の物理的
特性,表面特性,主結晶相と結晶粒径,組成を上記の範
囲に限定した理由を以下に述べる。尚、組成は原ガラス
と同様酸化物基準で表示する。
【0014】まずは、ヤング率および比重について述べ
る。前記のように、記録密度およびデータ転送速度を向
上するために、情報記憶媒体基板の高速回転化傾向が進
行しているが、この傾向に対応するには、基板材は高速
回転時のたわみによるディスク振動を防止すべく、高剛
性,低比重でなければならない。また、ヘッドの接触や
リムーバブル記憶装置のような携帯型の記憶装置に用い
た場合においては、それ十分耐え得る機械的強度,高ヤ
ング率,表面硬度を有する事が必要になる。
【0015】ところが、単に高剛性であっても比重が大
きければ、高速回転時にその重量が大きいことによって
たわみが生じ、振動を発生する。逆に低比重でも剛性が
小さければ、同様に振動が発生する。したがって、高剛
性でありながら低比重という一見相反する特性のバラン
スを取らなければならず、その好ましい範囲はヤング率
(GPa)/比重で37以上である。より好ましい範囲
は39以上であり、更に好ましい範囲は41以上であ
り、最も好ましい範囲は43以上である。尚、剛性につ
いても好ましい範囲があり、例え低比重で上記範囲を満
足しても、前記振動発生問題の点からすると、少なくと
も95GPa以上は必要であるが、基板の加工性や比重
の増加から勘案して上限は120GPa以下である必要
がある。比重についても同様で、前記振動発生問題の点
からすると、例え高剛性であっても2.6以下である必
要があるが、2.4を下回ると、この系のガラスセラミ
ックスでは所望の剛性を有する基板は実質上得難い。す
なわち、ヤング率(GPa)/比重は50以下が好まし
い。
【0016】次に熱膨張係数についてであるが、記録密
度の向上に伴って、磁気ヘッドと媒体のポジショニング
に高精度を要するため、媒体基板やディスクの各構成部
品には高い寸法精度が要求される。このためこれら構成
部品との熱膨脹係数の差の影響も無視できなくなるの
で、これらの熱膨張係数差を極力少なくしなければなら
ない。特に小型の磁気情報記憶媒体に使用される構成部
品の熱膨脹係数は、+90〜+100×10-7/℃程度
のものが良く用いられており、基板もこの程度の熱膨脹
係数が必要とされるが、ドライブメーカーによってはこ
の範囲からはずれた熱膨脹係数(+70前後〜+125
前後×10-7/℃)を有する材料を構成部品に用いる場
合がある。以上のような理由により、本発明の結晶系で
強度との兼ね合いを図りながら、用いる構成部品の材質
に広く対応しうるよう、熱膨張係数範囲を決めなければ
ならず、その範囲は−50〜+70℃の範囲において、
+65〜+130×10-7/℃であることが好ましい。
さらには、熱膨張係数は+95×10-7/℃以上がより
好ましく、+110×10-7/℃以下がより好ましい。
【0017】次に主結晶相の結晶粒径と基板の表面特性
についてであるが、先に述べたように、情報記憶媒体の
面記録密度向上に伴い、ヘッドの浮上高さが0.025
μm以下と著しく低下しており、ニアコンタクトレコー
ディング方式あるいは完全に接触するコンタクトレコー
ディング方式の方向に進みつつあり、これに対応するに
は、ディスク表面の平滑性は従来品よりも良好でなけれ
ばならない。従来レベルの平滑性で磁気記録媒体への高
密度な入出力を行おうとしても、ヘッドと媒体間の距離
が大きいため、磁気信号の入出力を行うことができな
い。またこの距離を小さくしようとすると、媒体の突起
とヘッドが衝突し、ヘッド破損や媒体破損を引き起こし
てしまう。この著しく低い浮上高さもしくは接触状態で
もヘッド破損や媒体破損を引き起こさない様にするため
は、表面粗度(Ra)は9Å以下であることが好まし
く、6Å未満であることがより好ましい。同じ理由で最
大表面粗さ(Rmax)は100Å以下であることが好
ましく、72Å未満あることがより好ましい。
【0018】上記のような平滑性を有するガラスセラミ
ックス基板を得るためには、その析出結晶粒子の形状と
粒径が重要な因子となる。すなわち、析出結晶粒子は加
工性・表面粗度の面から微細な球状粒子であることが好
ましい。具体的には、所望の表面粗度を得る為に結晶粒
子径(平均)は0.30μm以下であることが好まし
く、0.2μm以下であることがより好ましい。また、
所望のヤング率を得る為には結晶粒子径(平均)は0.
05μm以上であることが好ましい。
【0019】次に主結晶相についてであるが、上記の物
理的特性,熱膨張係数,表面粗度を実現するために各種
検討したところ、二珪酸リチウム(Li2O・2Si
2)およびα−クォーツ(α−SiO2)結晶相の組み
合わせが最適であった。
【0020】次にNa2O,PbO成分についてである
が、磁性膜の高精度化,微細化において、材料中のNa
2O成分を含有していると、これらのイオンが成膜工程
中に磁性膜中に拡散し、磁性膜粒子の粗大化や配向性の
低下を招くため、これらの成分を実質的に含有しないこ
とが重要である。また環境上好ましくないPbO成分も
含有すべきではない。
【0021】他にも、情報記憶媒体基板には、結晶異方
性、異物、不純物等の欠陥がなく組織が緻密で均質、微
細である事が要求されるが、上記のような結晶粒径,結
晶形状を有する主結晶相(二珪酸リチウムおよびα−ク
ォーツ)とすることによって、これらの要件を十分に満
足することができる。
【0022】次に原ガラスの組成範囲を上記の様に限定
した理由について以下に述べる。SiO2成分は、原ガ
ラスの熱処理により、主結晶相として析出する二珪酸リ
チウム(Li2O・2SiO2)およびα−クォーツ(α
−SiO2)結晶を生成するきわめて重要な成分である
が、その量が71%未満では、得られたガラスセラミッ
クスの析出結晶が不安定で組織が粗大化しやすく、また
81%を超えると原ガラスの溶融・成形性が困難にな
る。
【0023】Li2O成分は、原ガラスの熱処理により
主結晶相として析出する二珪酸リチウム(Li2O・2
SiO2)を生成するきわめて重要な成分であるが、そ
の量が8%未満では、上記結晶の析出が困難となると共
に、原ガラスの溶融が困難となり、また11%を超える
と得られる結晶が不安定で組織が粗大化しやすい上、化
学的耐久性も低下する。
【0024】K2O成分は、ガラスの溶融性を向上させ
ると共に、析出結晶の粗大化を防止する成分であるが、
その量は3%以内で十分である。
【0025】MgO、ZnO成分は、ガラスの溶融性を
向上させると同時に析出結晶の粗大化を防止する成分で
あると同時に、主結晶相として二珪酸リチウム(Li2
O・2SiO2)、α−クォーツ(α−SiO2)、α−
クォーツ固溶体(α−SiO 2固溶体)の各結晶粒子を
球状に析出させることに効果的である。そのためMgO
成分は0.3%以上であることが好ましい。同じくZn
O成分は0.1%以上であることがより好ましい。ま
た、MgO、ZnO成分が過剰に含まれると、得られる
結晶が不安定で組織が粗大化しやすく、そのためにMg
O成分は2%以下であることが好ましく、1%以下であ
ることがより好ましい。同じくZnO成分は2%以下で
あることが好ましく、1%以下であることがより好まし
い。MgOとZnOの成分の和は、2%以下であること
が好ましく、1%以下であることがより好ましい。
【0026】P25成分は本発明において、ガラスの結
晶核形成剤として不可欠であるが、その量が1%未満で
は結晶核形成が不十分で析出結晶相を異常成長させてし
まい、3%を超えると原ガラスの乳白失透を生じる。
【0027】ZrO2,TiO2成分はP25成分と同様
にガラスの結晶核形成剤として機能する上に、析出結晶
の微細化と材料の機械的強度の向上および化学的耐久性
の向上に顕著な効果を有する極めて重要な成分である
が、ZrO2成分が0.5%未満では上記効果が得られ
ず、またZrO2成分が5%あるいはTiO2成分が3%
を超えると原ガラスの溶融が困難となり、更にZrSi
4等の溶け残りが発生してしまう。
【0028】Al23成分は、ガラスセラミックスの化
学的耐久性および機械的硬度を向上させるのに好適であ
る。熱処理条件によって析出結晶の種類は異なってくる
が、各種熱処理条件を考慮にいれても、Li2O・2S
iO2+α−クォーツを析出させるためには、Al23
が10%未満でなければならない。好ましくは4〜8%
の範囲である。
【0029】Sb23成分はガラス溶融の際の清澄剤と
して添加するが、その量は0.1%未満では上記効果が
得られないが、0.5%以下で充分である。
【0030】SnO2,MoO3成分はガラスセラミック
スの着色剤として有効であり、特に、製品の表面欠陥の
検出に大きな効果があるのと同時に、ランディングゾー
ンテクスチャ等で用いられるLD励起レーザー(Nd:
YAG他)を吸収し易くするために添加する事が可能で
ある。またガラス状態での透光性に優れ、結晶化前の材
料検査が容易となる他、結晶化において着色化をもたら
す事を見いだした重要な成分であるが、それぞれSnO
2成分は5%以内、MoO3成分は3%以内で十分であ
る。
【0031】NiO,CoO,Cr23成分は、SnO
2,MoO3成分と同様にランディングゾーンテクスチャ
等で用いられるLD励起レーザー(Nd:YAG他)の
吸収を高めるのに効果的であるが、SnO2,MoO3
分のようにガラス状態での透光性はなく、それぞれNi
O成分は2%以内,CoO成分は3%以内,Cr23
分は3%以内で十分である。
【0032】次に本発明にかかる情報記憶媒体用ガラス
セラミックス基板を製造するには、上記の組成を有する
ガラスを溶解し、熱間成形および/または冷間加工を行
った後、550℃〜650℃の範囲の温度で1〜12時
間熱処理して結晶核を形成し、続いて680℃〜800
℃の範囲の温度で約1〜12時間熱処理して結晶化を行
う。
【0033】こうして熱処理により結晶化されたガラス
セラミックスの主結晶相は、二珪酸リチウム(α−Li
2O・2SiO2)およびα−クォーツ(α−SiO2
結晶であって、いずれの結晶相もその結晶粒子径(平
均)が0.05μm以上、0.30μm以下であり、そ
の結晶形状はほぼ球状粒子であった
【0034】次にこの熱処理結晶化したガラスセラミッ
クスを常法によりラッピングした後ポリシングすること
により、表面粗度(Ra)が3Å以上、9Å以下、(R
max)が100Å以内の情報記憶媒体用ディスク基板
材が得られた。
【0035】
【発明の実施の形態】次に本発明の好適な実施例につい
て説明する。表1〜表6は本発明の磁気ディスク用ガラ
スセラミックス基板の実施組成例(No.1〜30)で
あり、表7は比較組成例として、従来のSiO2−Li2
O−MgO−P25系ガラスセラミックス(比較1:U
SP5,626,935号公報記載のもの),SiO2
−Al23−Li2O系ガラスセラミックス(比較例
2:特開平9−35234号公報記載のもの)(比較例
3:国際特許公開番号WO97/01164号公報記載
のもの)の実施例で、これらのガラスセラミックスの組
成,核形成温度,結晶化温度,主結晶相,結晶粒子径
(平均),結晶粒子形状,研磨して成る表面粗度(R
a),(Rmax),ヤング率,比重,ヤング率(GP
a)/比重,熱膨張係数を示したものである。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】
【表7】
【0043】本発明の上記実施例のガラスは、いずれも
酸化物、炭酸塩、硝酸塩等の原料を混合し、これを通常
の溶解装置を用いて約1350〜1450℃の温度で溶
解し撹拌均質化した後、ディスク状に成形・冷却を経
て、ガラス成形体を得た。そしてこれを550〜650
℃で約1〜12時間熱処理して結晶核形成後、680〜
800℃で約1〜12時間熱処理して結晶化し、所望の
ガラスセラミックスを得た。ついで上記ガラスセラミッ
クスを平均粒径5〜30μmの砥粒にて約10分〜60
分ラッピングし、その後平均粒径0.5μm〜2μmの酸
化セリュームにて約30分〜60分間研磨し仕上げた。
【0044】表1〜7に示される通り、本発明と従来の
Li2O−SiO2系ガラスセラミックスの比較例とで
は、主結晶相または結晶粒子径(平均)が異なってお
り、本発明のガラスセラミックスは、二珪酸リチウム
(Li2Si25)およびα−クォーツ(α−SiO2
の結晶粒子がほぼ球状で微細であるのに対し、比較例
1,2,3のガラスセラミックスは結晶粒子径(平均)
が0.5μm以上と大きなものであった。この粒子径
(平均)では、より平滑性を求められる基板の現在の動
向において、研磨後の表面粗度や結晶粒子の脱落から発
生する欠陥に影響を及ぼすものである。更にヤング率,
比重,ヤング率(GPa)/比重に対しても、本発明は
ヤング率(GPa)/比重が39以上と良好であるのに
対し、比較例1,2,3のガラスセラミックスはヤング
率(GPa)/比重が37未満と高速回転ドライブ使用
に充分対応しうるものではない。更に熱膨張係数に対し
ても本発明のガラスセラミックスは95×10-7/℃以
上であるのに対し比較例1,2,3のガラスセラミック
スは64×10-7/℃以下と低く、特に比較例2,3の
ガラスセラミックは負の熱膨張特性を示す結晶相(β−
スポジュウメン,β−クリストバライト結晶)を含んで
いるので低膨張特性となり、ドライブ構成部品との熱膨
張係数の差が大きくなってしまい、情報記憶媒体用基板
材として情報記憶媒体用装置に不適合である。
【0045】また上記の実施例よって得られたガラスセ
ラミックス基板に、DCスパッタ法によりCr中間層
(80nm),Co−Cr磁性層(50nm),SiC
保護膜(10nm)を成膜した。次いでパーフルオロポ
リエーテル系潤滑剤(5nm)を塗布して情報記憶媒体
を得た。これによって得られた情報記憶媒体はその良好
な平滑度により、従来よりもヘッド浮上高を低減するこ
とができ、またランプロード方式によって、ヘッドと媒
体が接触状態での入出力を行っても、ヘッド破損・媒体
破損を生じることなく、磁気信号の入出力を行うことが
できた。
【0046】
【発明の効果】以上述べたように、本発明は、上記従来
技術に見られる諸欠点を解消しつつ、高記録密度化に対
応した表面平滑特性と高速回転化に対応した高ヤング率
−比重の良好なバランス、情報記憶媒体装置に合致した
熱膨張特性を兼ね備えた、情報記憶媒体用ガラスセラミ
ックス基板として好適なガラスセラミックス基板および
その製造方法ならびにこれを用いた情報記憶媒体を提供
することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願平11−41370 (32)優先日 平成11年2月19日(1999.2.19) (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 川嶋 康之 神奈川県相模原市小山1丁目15番30号 株 式会社オハラ内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヤング率=95〜120GPa,Al2
    3含有量(酸化物基準の重量百分率)が0〜10%未
    満であることを特徴とするガラスセラミックス。
  2. 【請求項2】 比重=2.4〜2.6の範囲にあること
    を特徴とする、請求項1に記載のガラスセラミックス。
  3. 【請求項3】 熱膨張係数が−50〜+70℃の範囲に
    おいて65×10-7〜130×10-7/℃の範囲である
    ことを特徴とする、請求項1,2のいずれか一つに記載
    のガラスセラミックス。
  4. 【請求項4】 主結晶相は、(a)ニ珪酸リチウム(L
    2O・2SiO2)に加えて(b)α−クォーツ(α−
    SiO2)またはα−クォーツ固容体(α−SiO2固容
    体)であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか
    に記載のガラスセラミックス。
  5. 【請求項5】 Na2O,PbOを実質上含有しないこ
    とを特徴とする、請求項1,2,3,4のいずれか一つ
    に記載のガラスセラミックス基板。
  6. 【請求項6】 MgO含有量(酸化物基準の重量百分
    率)が0.3%以上であることをであることを特徴とす
    る、請求項1〜5のいずれかに記載のガラスセラミック
    ス。
  7. 【請求項7】 酸化物基準の重量百分率で、 SiO2 71 〜81% Li2O 8 〜11% K2O 0 〜 3% MgO 0.3〜 2% ZnO 0 〜 1% P25 1 〜 3% ZrO2 0.5〜 5% TiO2 0 〜 3% Al23 4 〜 8% Sb23 0.1〜 0.5% SnO2 0 〜 5% MoO3 0 〜 3% NiO 0 〜 2% CoO 0 〜 3% Cr23 0 〜 3% の範囲の各成分を含有し、主結晶相は、(a)ニ珪酸リ
    チウム(Li2O・2SiO2)に加えて(b)α−クォ
    ーツまたはα−クォーツ固容体であることを特徴とす
    る、請求項1〜6のいずれかに記載のガラスセラミック
    ス。
  8. 【請求項8】 結晶相の結晶粒子はいずれも微細な球状
    粒子形状であることを特徴とする、請求項1〜7のいず
    れかに記載のガラスセラミックス。
  9. 【請求項9】 結晶相の結晶粒子径(平均)が0.30
    μm以下であることを特徴とする、請求項1〜8のいず
    れかに記載のガラスセラミックス。
  10. 【請求項10】 ガラス原料を溶融・成型および徐冷
    後、結晶化熱処理条件として、核形成温度=550℃〜
    650℃,核形成処理時間=1〜12時間、結晶成長温
    度=680℃〜800℃,核成長処理時間=1〜12時
    間の範囲で熱処理を行うことにより得られることを特徴
    とする、請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9の
    いずれか一つに記載のガラスセラミックスの製造方法。
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