JP2001011572A - 接触疲労寿命強度に優れた歯車 - Google Patents

接触疲労寿命強度に優れた歯車

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JP2001011572A
JP2001011572A JP18195899A JP18195899A JP2001011572A JP 2001011572 A JP2001011572 A JP 2001011572A JP 18195899 A JP18195899 A JP 18195899A JP 18195899 A JP18195899 A JP 18195899A JP 2001011572 A JP2001011572 A JP 2001011572A
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JP18195899A
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Masahiro Toda
正弘 戸田
Hideo Kanisawa
秀雄 蟹澤
Seiji Ito
誠司 伊藤
Shigeru Yasuda
茂 安田
Akihiko Shinohara
明彦 篠原
Masaaki Kondo
正顕 近藤
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Nippon Steel Corp
Toyota Motor Corp
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Nippon Steel Corp
Toyota Motor Corp
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    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 自動車部品の小型軽量化,高出力化にともな
い、歯車の負荷面圧が高くなった場合の、ピッチング疲
労寿命の向上。 【解決手段】 MnSの延伸制御を行った鋼材、或いは
MnS量を低減した鋼材を用いて浸炭処理後にショット
ピーニング等の表面硬化処理により、不完全焼入れ層が
15μm以下、表面において圧縮残留応力25kgf/mm2
以上、X線回折半価幅をその鋼材焼鈍後の半価幅で無次
元化した値β’で1.65以上、β’と表面粗さRmax (単
位μm)との関係がβ’≦2.32+0.856 ×ln (Rmax
)、残留オーステナイトが10%以下であることを特
徴とする接触疲労寿命強度に優れた歯車。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車および工作
機械などに用いられる歯車に係わり、特に自動車トラン
スミッション等の駆動伝達系に使用される鋼製の高強度
歯車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車では車両重量の軽量化のための部
品サイズの小型化、エンジンの高出力化等が要望され、
駆動系に用いられる歯車は使用時の負荷が大きくなると
ともに、歯元での曲げ疲労向上、及び歯車接触時に歯面
に生じるピッチング疲労寿命向上が要望されている。
【0003】歯元曲げ疲労に対しては、歯車にショット
ピーニング処理などにより付与される圧縮残留応力が疲
労寿命に対して著しく効果有ることが”日本機械学会論
文集C編,55巻520号3034頁(1989)”に
報告されている。しかし、ピッチング寿命はその発生メ
カニズムも不明であることから各種の対策が提案されて
いる。特開平1−264727号公報に開示されるよう
に熱処理後にショットピーニングを行い歯車に圧縮残留
応力を付与する方法が提案されている。しかし、特開平
3−107418号公報はショットピーニングにより歯
面のピッチング疲労はかえって低下するとの記載もあ
る。また、ショットピーニングは歯車表面を荒らすた
め、使用時の騒音問題も有している。
【0004】ピッチング疲労特性に優れた鋼材とし
て、”特殊鋼44巻3号39〜48頁(1995年)”
に各種鋼材が報告されている。いずれも浸炭時に生成さ
れる粒界酸化層や不完全焼入れ層の深さ、硬さ制御を目
的として合金元素の成分調整が行われている。しかし、
粒界酸化層、及び不完全焼入れ層はそもそも初期欠陥が
あり、軟質化した層であり成分調整を行っても特性が出
しにくい部分であり、また合金成分の添加はコストアッ
プを招くことになる。
【0005】この様に、高負荷荷重下におる歯車のピッ
チング疲労特性に関して、その疲労強度を向上させる工
業的に有益な技術は、未だ見出されていないのが実状で
ある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、自動車のト
ランスミッション等の駆動伝達系に使用される歯車にお
いて、歯車におけるピッチング疲労強度を向上せんとす
るものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述の課
題に対して研究を重ねた結果以下の新知見を見出した。
歯車はその大きさや形状が多種多様であることから、標
準的なピッチング性評価試験であるローラーピッチング
試験を行い、試験過程において不完全焼入れ層(軟化
部)で摩耗が発生することにより、ピッチング寿命が大
幅に向上することを見出した。摩耗の発生原因は、ショ
ットブラストやショットピーニングにより不完全焼入れ
層のベイナイト組織に強加工が施されて組織が脆化する
ためである。摩耗によりピッチング寿命が向上するの
は、不完全焼入れ層及びその中の粒界酸化部で発生する
初期亀裂が摩耗により除去されピッチング発生が抑制さ
れるため、また、摩耗することで接触面積が増加し実質
面圧が低下するためであった。そこで、浸炭後にショッ
トピーニング等の加工を付与し不完全焼入れ層が摩耗さ
れる条件について種々検討を行った。
【0008】しかし、摩耗量が多くなると歯車としての
形状が損なわれること。また、摩耗量を多くするため不
完全焼入れ層を深くすると、粒界酸化も深くなり歯元曲
げ疲労が低下する。従って、極端に摩耗させることも障
害となる。本発明者らは、不完全焼入れ層を研削により
除去した歯車で、MnS介在物が起点となってピッチン
グが発生することも見出した。熱間圧延時に延伸したM
nSは歯面の歯幅方向に延伸した形態で存在する。図1
は、歯車におけるMnSの延伸方向と接触荷重の移動方
向を示しているが、歯車では歯面上を荷重が接触しなが
ら移動し、その方向は歯幅とは直角方向に交差してい
る。そのため、延伸したMnSはそれと直角方向に引張
荷重を受けることになる。接触荷重が歯面を移動する
際、MnSは地鉄の界面密着性が低いこと、また硬質な
MnSは変形せず地鉄が変形するなどしてMnSと地鉄
の間に空孔ができピッチングに至っている。そして、M
nSの延伸を抑制することでMnSが引張応力を受けに
くくなり、ピッチング寿命が向上することが分かった。
【0009】歯車は一般的に熱間鍛造で粗成形した後に
切削より歯車形状に加工され、切削時の鋼材被削性を確
保するためS(硫黄)が添加されている。しかし冷間鍛
造で成形される場合はその成形精度から切削は省略さ
れ、冷間鍛造中の割れ発生を抑制するため冷間鍛造割れ
の起点となるMnSはむしろ少ない方がよい。そこで鋼
中のS量を低減してMnS量の少ない鋼材を用い、浸炭
後の不完全焼入れ層を研削により除去した試験片でピッ
チング寿命を検討したが、やはりが寿命向上することが
分かった。
【0010】これらの知見を基に、歯元曲げ疲労寿命等
への影響が少ない程度に摩耗層となる不完全焼入れ層を
設けてピッチング発生を抑制するとともに、使用中に摩
耗層が無くなってもMnSが延伸抑制された母層、ない
しMnS量が少ない母層が現れることによりピッチング
寿命の向上が可能なことが分かった。こうした知見を基
に、以下のような達成手段を明らかにし、本発明に至っ
た。
【0011】すなわち本発明は、下記(1)〜(4)を
提供する。 (1)重量%において、C:0.1〜0.3%、Si :
0.01〜0.5%、Mn:0.3〜1.5%、Cr:
0.3〜1.5%、S:0.01〜0.06%、Ca:
0.001〜0.01%、O:0.003%以下、但
し、Ca/O:0.5〜3.5 を含有し、残部Feお
よび不可避不純物からなり、浸炭焼入れおよび焼戻し後
に、表面に加工ひずみを付与する表面硬化処理により、
不完全焼入れ層が8μm以上、表面での圧縮残留応力2
5kgf/mm2 以上、X線回折半価幅をその鋼材焼鈍後の半
価幅で無次元化した値β’で1.65以上、β’と表面
粗さRmax (単位μm)との関係がβ’≦2.23+
0.856ln (Rmax )、残留オーステナイトが10
%以下であることを特徴とする接触疲労寿命強度に優れ
た歯車。 (2)重量%において、C:0.1〜0.3%、Si :
0.01〜0.5%、Mn:0.3〜1.5%、S:
0.01%未満、Cr:0.3〜1.5% を含有し、
残部Feおよび不可避不純物からなり、浸炭焼入れおよ
び焼戻し後に、表面に加工ひずみを付与する表面硬化処
理により、不完全焼入れ層が15μm以下、表面での圧
縮残留応力25kgf/mm2 以上、X線回折半価幅をその鋼
材焼鈍後の半価幅で無次元化した値β’で1.65以
上、β’と表面粗さRmax (単位μm)との関係がβ’
≦2.23+0.856ln (Rmax )、残留オーステ
ナイトが10%以下であることを特徴とする接触疲労寿
命強度に優れた歯車。 (3)鋼材組成として、Mo:0.1〜1.0%、N
i:1.0%以下の中から1種以上を更に含有すること
を特徴とする(1)または(2)記載の接触疲労寿命強
度に優れた歯車。 (4)前記表面硬化処理をショットブラストまたはショ
ットピーニングによって行なうことを特徴とする(1)
から(3)までのいずれか1項記載の接触疲労寿命強度
に優れた歯車。
【0012】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
Cは部品として必要な強度、特に芯部の強度を確保する
ために添加する元素であるが、0.1%未満ではこの様
な効果を十分に得ることができず、0.3%を越えると
靭性が低下するために0.1%〜0.3%とする。
【0013】Siは溶製時に脱酸材として用いており
0.01%以上必要である。しかし、浸炭時に粒界酸化
層を生成する元素であり多量添加は歯元曲げ疲労低下な
ど浸炭用鋼の特性が著しく劣化するため0.5%以下と
した。Mnは溶製時に脱酸材及び脱硫材として用いられ
る他、強度,靭性,焼入性を確保するために必要な元素
であり0.3%以上必要である。しかし、1.5%を越
えると熱間圧延後の冷却過程でベイナイトやマルテンサ
イトの硬質な組織になり、歯切り等の切削加工に適さな
くなる。
【0014】Crは焼入性、機械的性能を確保するため
に必要な元素であり0.3%以上必要である。しかし、
この元素も1.5%を越えると熱間圧延後の冷却過程で
ベイナイトやマルテンサイトの硬質な組織になり、歯切
り等の切削加工に適さなくなる。歯車使用時に不完全焼
入れ層が摩耗することでピッチング寿命を向上させるこ
とができるが、摩耗層が深すぎると歯車精度が低下して
騒音,振動問題となる可能性がある。また、不完全焼入
れ層が深すぎると粒界酸化層も深くなり歯元曲げ疲労を
低減させることから不完全焼入れ層を15μm以下とし
た。
【0015】不完全焼入れ層が摩耗するようにショット
ッブラストやショットピーニングで加工ひずみを加えそ
の層を脆化させる必要がある。不完全焼入れ層に圧縮残
留応力がないと、歯車接触時発生する引張応力により摩
耗する前に不完全焼入れ層で亀裂が発生,進展してピッ
チングに至る。そのため、圧縮残留応力が25kgf/mm 2
以上必要である。不完全焼入れ層を脆化させるため加工
ひずみを付与する必要がある。その尺度として、歯面に
損傷を与えない事を考慮してX線回折半価幅を用いるこ
ととし、測定器,標準試料による差異が生じない様に、
用いる鋼材の焼鈍後半価幅で無次元化した値β’を用い
た。β’が1.65以上でないと不完全焼入れ層が脆化
せず摩耗が生じない。ショットピーニングが厳しくなる
と表面粗さRmax 、もβ’も大きくなるが、加工ひずみ
が入りすぎると摩耗進展より粒界酸化部で発生する亀裂
進展が早くピッチング寿命が向上しない。従ってβ’に
上限があり、Rmax とβ’の関係でβ’≦2.23+
0.856ln(Rmax )であることが必要である。さ
らに、残留オーステナイトが多いと塑性変形をして摩耗
発が生じないため、10%以下とした。
【0016】不完全焼入れ層が摩耗により無くなっても
ピッチング発生を抑制する必要がある。そのために、発
明(1)では摩耗後にピッチングの起点となるMnSの
延伸が抑制された母層が現れるようし、発明(2)では
ピッチングの起点となるMnSが少ない母層が現れるに
する。(1)のMnS延伸を抑制するためには、Ca添
加によりMnS形態制御を行う必要がある。
【0017】歯車部品は熱間鍛造で粗成形された後に歯
形部はホブ切り等の歯切り加工が行われ、その後浸炭処
理が行われる。Sはその歯切り等切削加工における被削
性に有効であり、0.01%以上含有させる必要があ
る。しかし、0.06%を越えると鍛造時の加工限界を
著しく低下させるために上限を0.06%とする。Ca
はMnSの延伸抑制のために必要な元素であり、0.0
01%以上必要である。しかし、0.01%を越えて含
有させても、その効果は飽和して経済性を損なうため上
限を0.01%とする。
【0018】Oは鋼中の介在物量を増大し、回転曲げ疲
労等の疲労強度特性を劣化させるので0.003%以下
とする。MnSの延伸抑制としては、変形能を低下させ
ピッチングの起点となるような硬質介在物の生成を抑制
することが必要である。これに対してCa添加によりM
nSを(Mn,Ca)S及び(Mn,Ca)S+カルシ
ウム・アルミネートにすることが有効である。MnSを
(Mn,Ca)S及び(Mn,Ca)S+カルシウム・
アルミネートにするにはCa/O(カルシウム/酸素)
を所定の比に保ち、反応系を制御することが必要であ
る。
【0019】Ca/Oが0.5未満では硬質なCaO・
6Al2O3等が生成しピッチングの起点となり、また
Ca/Oが3.5を越えるとやはり硬質なCaSが生成
し、ピッチング疲労寿命を低下する。よってCa/Oを
0.5〜3.5とする。(2)のMnSを低減するため
に、Sは0.01%未満とした。歯車は、熱間鍛造で粗
成形された後歯切り加工されることが多いが、Sを0.
01%未満にすると被削性が低減して歯切り加工の生産
性が低下する。しかし、熱間鍛造に変わり冷間鍛造成形
される歯車では、鍛造精度が向上するため歯切り加工が
省略でき、Sにより被削性を確保する必要はない。むし
ろ、冷間鍛造では加工中MnSを起点として割れが発生
するため、Sは少ない方が割れ発生を抑制することがで
きる。
【0020】焼入れ性を確保するためにCrだけでは不
十分であり、Mo及びNiなどの元素を必要に応じて含
有させる。従来鋼と同等あるいはそれ以上の焼入れ性を
与えるために、Moは0.1%以上含有させる。しかし
1.0%を越えて含有させても、その効果は飽和して経
済性を損なうため1.0%以下とする。また、Niは
1.0%を越えて含有させても、その効果は飽和して経
済性を損なうため1.0%以下とする。
【0021】
【実施例】表1、表3に示す化学成分の鋼を溶製したの
ち造塊し、次に分塊圧延、棒鋼圧延して直径70mm
(圧延比50)を製造し、さらに直径32mmの丸棒へ
圧延した。続いて各圧延材を925℃で焼きならし処理
した。その後、直径32mmの丸棒から試験片の直径が
26mm、幅28mmの円筒部を有する小ローラー試験
片を作成した。また直径70mmの丸棒を直径130m
m、幅25mmへ鍛造した後、925℃で焼きならし処
理し、直径130mm、幅18mmの大ローラーを作成
した。
【0022】小ローラー試験片と大ローラーを浸炭ガス
雰囲気中で930℃×5時間加熱→130℃油焼入れ→
180℃×1時間焼戻しの条件で浸炭焼入れ・焼戻しの
浸炭処理を行った。その後ショットピーニングを施した
小ローラー試験片、及び大ローラーも作成した。ショッ
トピーニング条件は、直径0.3〜0.8mmの鋼球を
用い、アークハイト0.1〜1.5mmAの条件で行っ
た。
【0023】各小ローラー試験片の表面残留応力,半価
幅,残留オーステナイトを測定した。X線半価幅は測定
機械,標準試料により誤差がでやすいために各試験片の
焼鈍材での値で無次元化している。その焼鈍条件は、各
試料とも850℃×1時間保持後10℃/時間で600
℃まで徐冷した。ピッチング寿命評価として、小ローラ
ー試験片と大ローラーを組み合わせてローラーピッチン
グ疲労試験を行った。試験条件は、試験片の回転数10
00rpm,すべり率40%、潤滑剤にはオートマチッ
ク用オイルを用い、油温約80℃で行った。ローラーピ
ッチング試験での設定面圧は300kgf/mm2 で行い、小
ローラーに発生するピッチングの面積率が3%以上にな
った時点を疲労寿命としてそれまでの回転数で評価し
た。
【0024】歯元曲げ疲労として一歯曲げ疲労試験を行
った。一歯曲げ疲労試験は、前述の直径130mm,幅
25mm素材を925℃で焼きならし処理した後、切削
によりモジュール4,歯数27,ピッチ円直径108m
m,歯幅9mmの試験用平歯車を作成した。油圧サーボ
式引張試験機を用い、試験歯車の歯一枚に他方の歯車か
ら負荷されるように試験歯車を組み見合わせて歯元に曲
げ荷重を負荷する疲労試験を行った。
【0025】発明(1)による実施例として、表1に示
される鋼材A〜Jを用いローラピッチング試験、一歯曲
げ疲労試験を行った。表1には浸炭後の断面組織から不
完全焼入れ層深さの測定結果、及び延伸されたMnSの
長径方向の長さを示す。本発明例の方がMnS長さが短
くMnSの延伸が抑制されていることが分かる。
【0026】表2にローラーピッチング試験結果、一歯
曲げ疲労試験結果、圧縮残留応力、無次元化半価幅、残
留オーステナイト, 表面粗さ示す。No. 5,No. 6,N
o. 7,No. 9は浸炭後ショットピーニングを行ってお
り、No. 1,No. 2,No. 3,No. 4,No. 8,No. 1
0,No. 11,No. 12は、浸炭後研削により所定の不
完全焼入れ層深さにした後にショットピーニングを行っ
た。No. 13は浸炭後にショットピーニングし、その後
研削して不完全焼入れ層を所定の深さにした場合である
が、研削後の表面粗さが小さくなりすぎないように研削
条件の調整も行っている。
【0027】本発明例はいずれの場合もローラーピッチ
ング試験において107 回後もピッチングは発生しなか
った、そこで表2中には”>10000 ”と記述した。一歯
曲げ疲労試験は、107 回荷重を付与しても破損しない
強度を疲労強度として評価しているが、本発明例では9
7kgf/mm2 以上であった。比較例であるNo. 14,No.
15,No. 16,No. 17は用いた鋼種がMnS延伸抑
制を行っていないため不完全焼入れ層の摩耗が終了する
と直ぐにピッチングが発生してしまい5×106 回以前
にピッチング発生している。
【0028】No. 18,No. 19,No. 20は、不完全
焼入れ層が深くそれに比例して粒界酸化層も深いため一
歯曲げ疲労強度が70kgf/mm2 以下と本発明例に比べ低
くなっている。No. 21はショットピーニングで与える
加工ひずみが小さいため、ローラーピチング寿命が低
い。
【0029】No. 22は、ショットピーニング後の研削
代が大きく残留オーステナイトの高い層が現れローラー
ピッチング試験時には、摩耗より塑性変形が生じピッチ
ング寿命が低くなっている。発明(2)による実施例と
して、表3に示される鋼材K〜Sを用いローラピッチン
グ試験、一歯曲げ疲労試験を行った。
【0030】表3に浸炭後の断面組織から不完全焼入れ
層深さ測定した結果を示す。また、冷間鍛造性評価は前
述の直径32mmの丸棒材を焼鈍し、直径14mm×高
さ21mmの試験片を作成し、圧縮試験により加工限界
を評価した。圧縮条件は、同心円状溝付き工具を用いて
試験片上下方向から負荷し、加工速度は250mm/s
一定で行った。加工性は、割れが生じるまでの圧縮率を
限界圧縮率として測定した。比較例である鋼種Q,R,
Sは硫黄分が0.015%以上あり、限界圧縮率が70
%にも満たないのに対し、本発明例ではいずれも70%
以上の高い限界圧縮率となっており、比較例より高い加
工性を有している。
【0031】表4に圧縮残留応力、無次元化半価幅、残
留オーステナイト, 表面粗さ、及びローラーピッチング
試験結果と一歯曲げ疲労試験結果を示す。鋼種K,M,
N,Pは浸炭処理ままでの不完全焼入れ深さが15μm
以上ある。そこでこれらの鋼種を用いる場合、浸炭処理
後研削により所定の不完全焼入れ深さにした後ショット
ピーニングを行っている。No. 23〜No. 35の本発明
例では、いずれも107 回でピッチングが発生しなかっ
た。特にNo. 30,No. 33では不完全焼入れ層が4μ
m以下と摩耗層が少ないものの、その下の地鉄内MnS
が少ないためピッチングが発生しなかった。
【0032】No. 35は、浸炭処理→ショットピーニン
グ後研削を施した場合の本発明例であるが、これも10
7 回でピッチングが発生しなかった。一歯曲げ疲労試験
結果は強度は107 回の負荷を繰り返し与えても破損し
ない強度をもって評価しているが、本発明例ではいずれ
も98kgf/mm2 以上の疲労強度であった。
【0033】次に比較例であるが、No. 36,No. 3
7,No. 38はそれぞれ鋼種Q,R,Sを用いた場合で
あり、不完全焼入れ層の摩耗が終了すると直ぐにピッチ
ングが発生し、ピッチング寿命は低くなっている。No.
39,No. 40は不完全焼入れ層が15μmより深いた
め、粒界酸化層も深く一歯曲げ疲労強度は60kgf/mm2
より低くなっている。
【0034】No. 41はショットピーニングが弱く、圧
縮残留応力及び与えた加工ひずみが少なくβ’が小さ
い。そのため、ピッチング寿命が低くなっている。No.
42はショットピーニッグ後研削した場合であるが、研
削代が大きく内部の残留オーステナイトの高い面が現れ
ている。そのため、塑性変形が大きくて摩耗し難くピッ
チング寿命は107 回に達しなかった。
【0035】No. 43もショットピーニッグ後研削した
場合であるが、研削時の表面粗さを小さくしたためβ’
が上限値を超えている。表面の凸部が無いため摩耗の起
点が無く、摩耗より粒界酸化部での亀裂進展が早くピッ
チング寿命は107 回に達しなかった。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【発明の効果】本発明では、浸炭処理を行った後にショ
ットピーニング等により浸炭層に加工ひずみを施すこと
で使用時に歯車表面が摩耗してピッチング寿命が向上す
るとともに、摩耗終了後もピッチング発生起点となるM
nS形態制御を行った母層ないしMnS量が少ない母層
が現れることでピッチング寿命を飛躍的に向上すること
ができる。このことは歯車の受ける負荷荷重を増大でき
る、或いは歯車自体の小型軽量化が可能となり、歯車を
多く用いる自動車、建築用機械の小型軽量化を実現し、
燃費改善など多大の効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、歯車におけるMnSの延伸方向と接触
荷重の移動方向を示す斜視図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 蟹澤 秀雄 北海道室蘭市仲町12番地 新日本製鐵株式 会社室蘭製鐵所内 (72)発明者 伊藤 誠司 北海道室蘭市仲町12番地 新日本製鐵株式 会社室蘭製鐵所内 (72)発明者 安田 茂 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 篠原 明彦 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 近藤 正顕 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 Fターム(参考) 3J030 BC03 BC06 CA10

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%において、 C :0.1〜0.3% Si :0.01〜0.5% Mn:0.3〜1.5% Cr:0.3〜1.5% S :0.01〜0.06% Ca:0.001〜0.01% O :0.003%以下 但し、Ca/O:0.5〜3.5を含有し、残部Feお
    よび不可避不純物からなり、浸炭焼入れおよび焼戻し後
    に、表面に加工ひずみを付与する表面硬化処理により、
    不完全焼入れ層が15μm以下、表面での圧縮残留応力
    25kgf/mm2 以上、X線回折半価幅をその鋼材焼鈍後の
    半価幅で無次元化した値β’で1.65以上、β’と表
    面粗さRmax (単位μm)との関係がβ’≦2.23+
    0.856ln (Rmax )、残留オーステナイトが10
    %以下であることを特徴とする接触疲労寿命強度に優れ
    た歯車。
  2. 【請求項2】重量%において、 C :0.1〜0.3% Si :0.01〜0.5% Mn:0.3〜1.5% S :0.01%未満 Cr:0.3〜1.5% を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、浸炭
    焼入れおよび焼戻し後に、表面に加工ひずみを付与する
    表面硬化処理により、不完全焼入れ層が15μm以下、
    表面での圧縮残留応力25kgf/mm2 以上、X線回折半価
    幅をその鋼材焼鈍後の半価幅で無次元化した値β’で
    1.65以上、β’と表面粗さRmax (単位μm)との
    関係がβ’≦2.23+0.856ln (Rmax )、残
    留オーステナイトが10%以下であることを特徴とする
    接触疲労寿命強度に優れた歯車。
  3. 【請求項3】鋼材組成として、 Mo:0.1〜1.0% Ni:1.0%以下 の中から1種以上を更に含有することを特徴とする請求
    項1または2記載の接触疲労寿命強度に優れた歯車。
  4. 【請求項4】 前記表面硬化処理をショットブラストま
    たはショットピーニングによって行なうことを特徴とす
    る請求項1から3までのいずれか1項記載の接触疲労寿
    命強度に優れた歯車。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002322536A (ja) * 2001-04-23 2002-11-08 Aichi Steel Works Ltd 歯元曲げ強度と耐ピッチング性に優れる高強度歯車及びその製造方法
CN108318244A (zh) * 2018-01-23 2018-07-24 重庆大学 考虑残余应力的渗碳硬化齿轮接触疲劳风险评估方法
CN115572902A (zh) * 2022-09-30 2023-01-06 吉林建龙钢铁有限责任公司 一种一体化车轮毂用钢及其制备方法

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