JP2001011521A - 転炉吹錬時の溶鋼温度および炭素濃度の推定法、および転炉吹錬法 - Google Patents
転炉吹錬時の溶鋼温度および炭素濃度の推定法、および転炉吹錬法Info
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Abstract
度を簡便かつ高精度に推定することができない。 【解決手段】 吹錬時の溶鋼温度および炭素濃度の測定
値と、操業条件から推定される脱炭速度定数k1、脱炭速
度遷移炭素濃度Cbおよび脱炭限界炭素濃度Crを用いて任
意の目標温度−炭素濃度領域における溶鋼温度および炭
素濃度を推定し、この推定値に基づいて、転炉出鋼時の
温度降下量を考慮し、吹錬終了時の出鋼目標温度Taimお
よび炭素濃度Caimを自動的に補正し、吹錬終了までの送
酸量、冷材投入量または出鋼時に添加する合金銘柄と投
入量がコストミニマムとなるように指示する。
Description
吹錬終了時の溶鋼温度および炭素濃度の推定法と、それ
を用いた転炉吹錬法とに関するものである。
静的制御と吹錬時の動的制御とが行われてきた。静的制
御とは、吹錬開始前に、溶銑状況および吹錬終了目標値
から吹込酸素量、投入媒溶剤量および吹錬パターン等を
設定し、これらの設定値に基づいて吹錬制御を行うこと
である。一方、動的制御とは、吹錬時に、例えばサブラ
ンスによって溶鋼温度および炭素濃度を測定し、終点目
標温度および炭素濃度に到達するまでの酸素量および媒
溶剤量を制御することである。近年、転炉耐火物の溶損
防止や後工程との時間的制約等により、転炉出鋼の迅速
化に対する必要性が非常に高まっている。このため、動
的制御の精度向上が強く要請されている。
および炭素濃度の推定式、すなわち脱炭反応式が多数知
られている。例えば特許第2621613 号には、吹錬末期に
おける鋼中炭素濃度計測時点から吹錬終点までに吹き込
むべき酸素量と実測鋼中炭素濃度とを対応づける数式に
基づいて終点炭素濃度を制御する際に、溶鋼温度と炭素
含有量との計測データに基づいて酸素供給量および冷却
材投入量を同時に制御することにより、出鋼した溶鋼の
的中精度を向上する発明が提案されている。この技術で
は、酸素消費速度式中に定数を用いる。このため、吹錬
時に、溶鋼温度が目標値を下回ると推定された場合に
は、終点目標炭素濃度以下に吹き下げることにより溶鋼
温度を目標温度まで上昇させる。
炭素濃度を推定しようとすると、操業条件の変動によっ
て酸素消費速度式中に用いる定数が適正な範囲から逸脱
したまま、溶鋼温度および炭素濃度の推定計算を行って
しまうことがあった。このため、溶鋼温度および炭素濃
度の推定値の誤差が大きくなってしまい、取鍋におい
て、安定した溶鋼温度および炭素濃度を得ることができ
なかった。また、酸素消費速度式中に用いる定数が適正
な範囲から逸脱しなくとも適正な範囲の境界付近にある
場合には、やはり推定精度の低下は免れないという問題
もあった。
目標値を下回ると推定された場合に、出鋼目標温度およ
び炭素濃度に応じて決定された合金鉄銘柄を決定された
量だけ取鍋に投入しても、溶鋼温度および炭素濃度の推
定値の誤差が大きいために、取鍋に収容された溶鋼の温
度および炭素濃度をいずれも目標値にすることができ
ず、低炭素Fe−Mnや低炭素Fe−Crといった高価な低炭素
含有合金鉄を使用する必要が生じてしまう。
を用いても、式中の係数調整が煩雑であるとともに、得
られる溶鋼温度および炭素濃度の推定精度が芳しくない
という問題があった。そこで、取鍋への抜熱や後工程ま
でのキリング、さらには出鋼時の合金添加による温度降
下等を考慮して、終点目標温度および炭素濃度を補正し
て推定する方法が提案されている。例えば特開平6−41
626 号公報には、転炉吹錬の動的制御に、出鋼中に取鍋
に添加する合金鉄の温度降下量を加味した終点温度補正
を行うことにより、出鋼した溶鋼の的中精度を向上する
発明が開示されている。
626 号公報により開示された発明では、コストの抑制を
勘案せずに、合金銘柄選択およびその投入量、さらには
吹錬終了までの酸素量を決定してしまうため、出鋼時に
投入する合金鉄の銘柄や投入量を、コスト上昇を抑制で
きるように再設定することができない。このため、安定
的かつ安価に、取鍋に収容された溶鋼の温度および炭
素、マンガン、その他の合金成分の濃度を、目標値に制
御することができない。
よび炭素濃度のバラツキを抑制することにより、安定か
つ安価に取鍋に収容された溶鋼の温度および炭素、マン
ガン、その他の合金成分の濃度を、目標値に制御するこ
とである。
溶鋼温度および炭素濃度を測定し、これらの測定値と、
転炉吹錬時の操業条件に基づいて推定される脱炭速度定
数、脱炭速度遷移炭素濃度および脱炭限界炭素濃度とを
用いて、目標の溶鋼温度および炭素濃度領域における溶
鋼温度および炭素濃度を推定することを特徴とする転炉
吹錬時の溶鋼温度および炭素濃度の推定法である。
錬時の溶鋼温度および炭素濃度を測定し、これらの測定
値と、転炉吹錬時の操業条件に基づいて推定される脱炭
速度定数、脱炭速度遷移炭素濃度および脱炭限界炭素濃
度とを用いて、目標の溶鋼温度および炭素濃度領域にお
ける溶鋼温度および炭素濃度を推定し、推定した溶鋼温
度および炭素濃度と転炉出鋼時における温度降下量とに
基づいて、吹錬終了時の出鋼目標温度および目標炭素濃
度を補正することを特徴とする転炉吹錬法である。
材の投入、および出鋼時に添加する合金の投入のそれぞ
れに要するコストの総和を抑制することができる。
の溶鋼温度および炭素濃度の推定法、および転炉吹錬法
の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明す
る。
的に示す説明図である。同図に示すように、転炉10の内
部には溶湯12が収容され、吹錬が行われている。転炉10
の内部の底部には、管16に接続された底吹きノズル14が
配置される。管16の途中には流量計18が設けられてお
り、底吹きノズル14から溶湯12に吹き込まれる不活性ガ
スの流量が制御される。流量計18は、後述するプロセス
コンピュータ30からの制御信号により、配管16内を流れ
る不活性ガスの流量を制御する。
22とが転炉10の内部に垂下される。ランス20には流量計
24が接続される。流量計24は、後述するプロセスコンピ
ュータ30からの制御信号により、ランス20から溶湯12に
吹き込まれる酸素ガスの流量を制御する。また、サブラ
ンス22には溶鋼温度計および炭素濃度計が取り付けられ
ており、プロセスコンピュータ30からの制御信号によ
り、吹錬時の溶湯12の温度および炭素濃度を測定する。
また、測定後には、測定値をプロセスコンピュータ30に
入力する。
クトを示し、符号28は秤量器およびシュータを示し、符
号30はプロセスコンピュータを示す。さらに、符号32は
合金鉄秤量器およびシュータを示し、符号34は溶湯12が
注がれる取鍋を示す。この図1を参照しながら、本実施
形態の転炉吹錬時の溶鋼温度および炭素濃度の推定法
を、経時的に説明する。
示すように、転炉10の吹錬末期において、転炉10に収容
された溶湯12の脱炭が進行すると、プロセスコンピュー
タ30からの制御信号によりサブランス22は転炉10の内部
に降下し、転炉吹錬時の溶鋼温度および炭素濃度をそれ
ぞれ測定する。これらの測定値は、プロセスコンピュー
タ30に入力される。このようにして、転炉吹錬時の溶鋼
温度および炭素濃度がいずれも測定される。
らプロセスコンピュータ30へ測定された炭素濃度および
溶鋼温度が入力された段階で、ランス20からの上吹き酸
素量、ランス20の高さ (ランス湯面間距離) 、底吹きノ
ズル14の使用本数、各底吹きノズル14の底吹きガス流
量、秤量器およびシュータ28からの副原料の成分および
投入量それぞれの検出値が、プロセスコンピュータ30へ
入力される。
回数、取鍋目標成分および目標温度が、プロセスコンピ
ュータ30へ入力される。このように、プロセスコンピュ
ータ30には、転炉吹錬時のこれらの各種操業条件が入力
される。
よび脱炭限界炭素濃度の推定〕プロセスコンピュータ30
では、吹錬時に測定した溶鋼温度および炭素濃度それぞ
れの入力値と転炉吹錬時の操業条件の入力値とに基づい
て、脱炭速度定数K1 (%/Nm3/ トン) 、脱炭速度遷移炭
素濃度 (臨界炭素) 濃度Cb( %) および脱炭限界炭素濃
度 (脱炭限界炭素濃度)Cr(%) を求める。なお、本明細
書においては、特にことわりがない限り「%」は「重量
%」を示す。
(%) との関係を示すグラフである。同図に示すよう
に、溶鋼中の炭素濃度が、脱炭速度遷移炭素濃度Cbから
脱炭限界炭素濃度Crまで低下する間、脱炭速度定数K1は
線形の関係を維持したまま低下する。そこで、プロセス
コンピュータ30では、転炉吹錬時の溶鋼温度および炭素
濃度それぞれの測定値と転炉吹錬時の操業条件とに基づ
いて、下記式、式および式より、脱炭速度定数K1
(%/Nm3/ トン) 、脱炭速度遷移炭素濃度 (臨界炭素濃
度)Cb(%) および脱炭限界炭素濃度 (脱炭限界炭素濃
度)Cr(%) を推定する。
(例えばスラグボリューム、上底吹きガス流量、ランス
湯面間距離等) を示し、符号αi,βi,γi は操業因子係
数を示し、符号FBc はフィードバック補正項 (例えば、
モデル誤差の指数平滑した値) を示す。〔目標の溶鋼温
度および炭素濃度領域における溶鋼温度および炭素濃度
の推定〕。
遷移炭素濃度Cbおよび脱炭限界炭素濃度Crを用い、式
(酸素バランス式) および式 (温度バランス式) か
ら、目標の溶鋼温度および炭素濃度領域における溶鋼温
度および炭素濃度を、簡便かつ高精度で推定する。
炭素濃度(%) を示し、符号F02 は動浴計測時から目標炭
素濃度となるまでの酸素消費量(Nm3/ トン) を示し、符
号ηは副原料持ち込み酸素効率を示し、符号Wsub,jは副
原料jの投入量を示し、符号02,jは副原料jの酸素含有
量(Nm3/min/ トン) を示す。
示し、符号Tsl は動浴測定時の溶鋼温度を示し、符号γ
は冷却材の冷却効率を示し、符号kiは操業要因係数を示
し、符号Tsub,jは副原料jの冷却量 (℃/kg/トン) を示
し、符号FBt はフィードバック補正項 (例えば、モデル
誤差の指数平滑した値) を示す。〔吹錬終了時の出鋼目
標温度および炭素濃度の補正と、吹錬終了までの送酸
量、冷材投入量、出鋼時に添加する合金銘柄およびその
投入量の決定〕。
溶鋼温度−溶鋼炭素濃度の推定軌道を決定する。図3
は、決定された溶鋼温度−溶鋼炭素濃度の推定軌道R の
一例を示すグラフである。
て溶鋼温度、炭素濃度が Cslのときに溶鋼温度および炭
素濃度を測定された溶鋼は、吹錬の進行すなわち炭素濃
度の低下に伴って、温度が上昇する。そして、B点であ
る目標溶鋼温度および炭素濃度領域 (溶鋼炭素濃度 C
aim ) に到達する。
温度−溶鋼炭素濃度の推定軌道R に対して、目標炭素濃
度Caimでの推定温度が目標温度Taimを下回っている場合
には、転炉出鋼時の温度降下量を考慮した式により目
標温度Bに対する補正量および出鋼時の温度降下に対す
る補正量を推定し、B' 点である新たな目標溶鋼温度Ta
im' および炭素濃度Caim' に、自動的にそれぞれ補正し
て、吹錬終了までの送酸量および冷材投入量および合金
添加量を指示する。
炭素濃度 (%) を示し、符号Tiは熱ロス因子 (出鋼時に
投入するMn、Cr系合金鉄、取鍋への抜熱、後工程までの
キリング等) を示す。
金計算では、併せて、式による成分計算、式による
コスト計算および式による制約条件を勘案し、最適な
合金鉄銘柄とその投入量計算とを行う。
値を示し、符号Wst は出鋼量を示し、符号Eaimは出鋼成
分値を示し、符号Wgj はj番目の銘柄の合金投入量を示
し、符号Egi,j はj番目の銘柄のi番目の成分の含有量
を示し、符号Ygi はi番目の成分の歩留りを示す。
符号Wgj はj番目の銘柄の合金投入量を示し、符号Cjは
j番目の銘柄の合金投入コストを示す。
分値を示し、符号Emaxi はi番目の銘柄の成分上限規格
を示す。
びコストミニマムとなる合金銘柄およびその投入量を加
味して、吹錬終了までの送酸量および出鋼時に添加する
合金鉄に要するコストが最小となる合金鉄銘柄およびそ
の投入量が指示される。
な操作でもって行えばよい。このように、本発明によれ
ば取鍋溶鋼の目標値が補正されて設定されることから、
それを実現するための操業を最も効果的に行うことがで
きる。
温度および炭素濃度の推定法、および転炉吹錬法によれ
ば、脱炭速度定数K1、脱炭速度遷移炭素濃度Cbおよび脱
炭限界炭素濃度Crといった、操業因子 (例えばスラグボ
リューム、上底吹きガス流量、ランス湯面間距離等) に
左右され易い係数を定式化することにより、吹錬終点に
おける溶鋼温度および炭素濃度の推定精度を向上するこ
とができる。
吹錬終了時の出鋼目標温度および炭素濃度を自動的に補
正し、吹錬終了までの送酸量、冷材投入量、合金銘柄お
よびその投入量を指示することにより、コストの上昇を
できるだけ抑制することもできる。
時の温度および炭素濃度のバラツキを抑制し、安定かつ
安価に取鍋に収容された溶鋼の温度および炭素、マンガ
ン、その他の合金成分の濃度を目標値に効果的に制御す
ることができる。
を用いて、溶銑予備処理された炭素濃度が3.5 〜4.5 重
量%の溶銑12に対して、スラグボリューム=25〜35kg/
トン、底吹きガス流量=0.09〜0.14Nm3/min/トン、上吹
き酸素ジェットによる凹み深さと浴深の比(L/Lo)=0.18
〜0.20、送酸速度=1.80〜2.50Nm3/min/ton の条件によ
り、転炉吹錬を行った。
素濃度の測定値と転炉吹錬時の操業条件に基づいて推定
される脱炭速度定数、脱炭速度遷移炭素濃度および脱炭
限界炭素濃度とを用いて、溶鋼温度および炭素濃度を推
定する本発明法を満足する条件で吹錬を行ったものを本
発明例1〜本発明例3として示し、脱炭速度定数、脱炭
速度遷移炭素濃度および脱炭限界炭素濃度を用いずに、
これらを定数化することにより吹錬を行ったものを従来
法1〜従来法3として示した。なお、表1における推定
[C] レンジとは、出鋼時の炭素の目標範囲を示す。
10%未満の場合、従来の方法による炭素濃度推定精度の
偏差σが0.017 %であったのに対し、本発明によれば偏
差σを0.005 %にまで大幅に向上することができた。さ
らに、本発明によれば、操業の変化に対しても再現性が
あることが判明した。また、表1から、吹止目標炭素濃
度が0.20%未満の場合、0.20%以上の場合にも、同様に
推定精度が大幅に向上したことがわかる。このように、
本発明によれば、取鍋目標成分および温度のバラツキが
ともに抑制され、成分調整に必要な合金鉄の使用コスト
を、約10%低減することができた。
れば、吹錬時の溶鋼温度および炭素濃度測定値と操業条
件とから推定される脱炭速度定数、脱炭速度遷移炭素濃
度および脱炭限界炭素濃度を用いて、任意の目標温度−
炭素濃度領域における溶鋼温度および炭素濃度の推定値
を、簡便に精度よく推定することができた。
めた溶鋼温度および炭素濃度の推定値に基づいて、転炉
出鋼時の温度降下量を考慮し、吹錬終了時の出鋼目標温
度および炭素、マンガン、その他の濃度を自動的に補正
し、吹錬終了までの送酸量、冷材投入量およびコストミ
ニマムとなる合金銘柄選択および投入量を指示するた
め、安定かつ安価に吹錬を制御することができる。
である。
ラフである。
の一例を示すグラフである。
Claims (2)
- 【請求項1】 転炉吹錬時の溶鋼温度および炭素濃度を
測定し、これらの測定値と、前記転炉吹錬時の操業条件
に基づいて推定される脱炭速度定数、脱炭速度遷移炭素
濃度および脱炭限界炭素濃度とを用いて、目標の溶鋼温
度および炭素濃度領域における溶鋼温度および炭素濃度
を推定することを特徴とする転炉吹錬時の溶鋼温度およ
び炭素濃度の推定法。 - 【請求項2】 転炉吹錬時の溶鋼温度および炭素濃度を
測定し、これらの測定値と、前記転炉吹錬時の操業条件
に基づいて推定される脱炭速度定数、脱炭速度遷移炭素
濃度および脱炭限界炭素濃度とを用いて、目標の溶鋼温
度および炭素濃度領域における溶鋼温度および炭素濃度
を推定し、推定した前記溶鋼温度および炭素濃度と転炉
出鋼時における温度降下量とに基づいて、吹錬終了時の
出鋼目標温度および目標炭素濃度を補正することを特徴
とする転炉吹錬法。
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