JP2001011015A - 酒石酸低級アルキルジエステルの製造法 - Google Patents

酒石酸低級アルキルジエステルの製造法

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学哉 石川
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Abstract

(57)【要約】 【課題】酒石酸を原料に用いて酒石酸低級アルキルエス
テルを製造する方法において、経済的に有利で、且つ2
量体等の不純物の副生を抑制した高純度酒石酸低級アル
キルジエステルの製造法を提供する。 【解決手段】酒石酸と低級アルコールを酸触媒存在下に
て酒石酸をジエステルに変換した後、酸触媒を3級アミ
ンや無機アルカリで中和してから濃縮する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酒石酸低級アルキ
ルジエステルの効率的製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】酒石酸低級アルキルジエステルは農薬、
医薬の製造中間体や不斉触媒として有用である。酒石酸
低級アルキルジエステルは酒石酸と低級アルコールを酸
触媒存在下に反応させることで製造できる。反応は平衡
反応であるので、原理的には大量の脱水低級アルコール
を使用することで高収率で酒石酸低級アルキルジエステ
ルを製造できるが、過剰の低級アルコールを脱水処理し
てリサイクル使用するために煩雑な作業が必要となる。
大量の脱水低級アルキルアルコールを使用しない方法と
しては、オルト蟻酸エステルなどのエステル化剤を酸触
媒存在下で使用する(シンセティックコミニケーション
ズ(Synth.Comn.),14,1087,(1
984))記載の方法、低級アルキルアルコールを酸触
媒の存在下反応させ、水と共沸する有機溶媒,例えばク
ロロホルムを共存させて副生する水を共沸濃縮で系外に
除去するヘルベチカ.ケミカ.アクタ(Helv.Ch
im.Acta),62,1710(1979))記載
の方法等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】オルト蟻酸エステルを
使用する方法は反応収率も高く、高純度酒石酸低級アル
キルジエステルを得る方法として優れているが、オルト
蟻酸エステルが高価であり、工業生産に使用するには価
格的に不利である。また、クロロホルムを使用して共沸
濃縮する方法は、クロロホルムが環境汚染する恐れがあ
り好ましくない。加えて、共沸濃縮の過程で酒石酸低級
アルキルジエステルの2量体等の副生物が増加し、収率
が低下すると同時に品質も低下する。
【0004】本発明の目的は、経済的に有利で、かつ酒
石酸低級アルキルジエステルの2量体等の不純物の副生
を抑制した酒石酸低級アルキルジエステルの製造法を提
供することにある。更に、光学活性酒石酸を原料に使用
した場合には、光学純度を低下させること無く光学活性
酒石酸低級アルキルジエステルを製造する方法を提供す
ることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記目的を
達成するために鋭意研究を重ねた結果、穏和な条件で酒
石酸をエステル化反応した後、濃縮工程に先立って酸触
媒を不活性化させることで達成できることを見出し、本
発明を完成させた。
【0006】即ち、本発明は、「酒石酸および低級アル
コールを酸触媒存在下、エステル化させたのち、酸触媒
を不活性化してから濃縮することを特徴とする酒石酸低
級アルキルジエステルの製造法。」である。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の原料である酒石酸は、L
−酒石酸、D−酒石酸、DL−酒石酸、メソ−酒石酸の
何れでも使用することができる。
【0008】もう一方の原料である低級アルコールは炭
素数4以下のアルキルアルコールが好ましく、不活性溶
媒で変性されたものも使用できる。具体的にはメタノー
ル、エタノール、プロパノール、イソブタノール等で、
直鎖、或いは分岐状のアルキルアルコールである。エタ
ノールの場合には、トルエン等の酒石酸や低級アルコー
ルと反応しない不活性溶媒類を添加して変性されたもの
でも同様に使用できる。
【0009】低級アルコールの使用量は酒石酸に対して
2〜30倍モルが好ましく、さらに好ましくは2〜6倍
モルである。この範囲であれば経済効率も良好で、酒石
酸低級アルキルジエステルの収率も高い。
【0010】エステル化反応で使用される酸触媒は、塩
酸や硫酸等の鉱酸類、ベンゼンスルホン酸、トルエンス
ルホン酸等の芳香族スルホン酸類、メタンスルホン酸等
の脂肪族スルホン酸類、また、H型の陽イオン交換樹
脂、例えばナフィオン(デュポン(株)製)、ダイアイ
オンPK208(三菱化成(株)製)等が挙げられる。
酸触媒の使用量は酒石酸に対し0.001〜1倍モルが
好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.1倍モル
である。
【0011】反応は酒石酸と低級アルコールを酸触媒の
存在下にて好ましくは加熱して進行させる。ここで、経
済効果を高めるためには低級アルコールの使用量は少な
い方が有利であり、低級アルコールの使用量は酒石酸1
モルに対し、2〜6モルが好ましい。この範囲で反応を
行うことで、経済的に、高純度の酒石酸低級アルキルジ
エステルを得ることが出来る。しかし、低級アルコール
の使用量が少ないと、スラリー濃度が高くなり、攪拌な
どに問題が生ずる場合があるので、反応を円滑に進行さ
せるために希釈剤を添加するのが好ましい。ここで添加
する希釈剤は、酒石酸や低級アルコールと反応せず、か
つ水と共沸する有機溶媒が好ましく使用できる。具体的
にはヘキサン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン等
の脂環式炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭
化水素類、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類が挙
げられる。
【0012】希釈剤の添加量は反応混合物が攪拌できる
スラリー濃度になる量でよく、低級アルコールの使用量
によって異なるが、通常は酒石酸に対して1〜20倍重
量が好ましく、さらに好ましくは2〜10倍重量であ
る。この範囲であれば、経済効率も良好で、作業性もよ
い。また、希釈剤は濃縮工程で使用してもよい。エステ
ル化反応終了後に過剰の低級アルコール、および副生し
た水を濃縮除去するのが好ましいが、濃縮工程での体積
変化を小さくすることで、反応缶の熱効率が低下して濃
縮時間が延長される問題や、局部加熱で酒石酸低級アル
キルジエステルの品質が低下する問題を防ぐことが出来
る。
【0013】そこで、濃縮工程に於いて留出する低級ア
ルコール、水、および希釈剤の量に見合った希釈剤を系
中に添加すれば、共沸脱水効率を高めると同時に局部加
熱による品質低下を防止することができる。
【0014】エステル化の反応温度は30〜120℃が
好ましく、さらに好ましくは50〜90℃である。この
範囲であれば不純物の副生量も少ない。
【0015】反応時間は低級アルコール、酸触媒の種類
や使用量、反応温度によって異なるが、通常は0.5〜
20時間が好ましく、さらに好ましくは1〜6時間であ
る。この範囲で反応させることで、副生物の生成量を抑
えることが出来る。
【0016】エステル化反応後、酸触媒を不活性化して
から濃縮する。酸触媒を不活性化することなく濃縮を行
うと、濃縮の工程で、酒石酸低級アルキルジエステルの
2量体などの不純物が生成し、高純度の酒石酸低級アル
キルジエステルを得ることが出来ない。ここで、酸触媒
を不活性化するには3級アミンおよび/または無機アル
キルで中和するのが好ましい。3級アミンとしては、ト
リエチルアミン等のトリアルキルアミンが使用できる。
また、無機アルカリとしてアルカリ金属やアルカリ土類
金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩等が使用できる。例
えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カル
シウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げら
れる。反応系に添加する際には、固体でも、或いは使用
した低級アルコールや希釈剤、水に溶解させたものでも
使用できる。使用量は系中の酸触媒に対し0.9〜1.
5当量が好ましく、さらに好ましくは1.0〜1.2当
量である。この範囲で添加することで、酒石酸低級ジア
ルキルエステルの収率を高め、純度を向上させることが
出来る。
【0017】また、濃縮は、酒石酸とも低級アルコール
とも反応せず、かつ水と共沸する有機溶媒を用いて共沸
濃縮をするのが好ましい。共沸濃縮をすることで、不純
物の生成を低減することが出来る。
【0018】低級アルコール使用量を少なく、時間を短
く、収率を高く、かつ酒石酸低級アルキルジエステルの
2量体等の副生物を少なくするには、エステル化工程、
中和工程、共沸濃縮工程を繰り返す方法が好ましい。具
体的には、たとえば、酒石酸に対して低級アルコールを
2倍モル(カルボキシル基に対しては等モル)、希釈剤
を4倍重量、酸触媒0.03倍モルを混合し、70〜8
0℃で1〜2時間反応させると平衡組成(カルボキシル
基転化率 約60〜70%)に達する。ここで、酸触媒
を中和してから、副生水、未反応低級アルコール、希釈
剤を濃縮して系中の遊離水を除去するが、系内溶液量が
大きく変化しないよう希釈剤を添加しながら濃縮するの
が好ましい。次いで、低級アルコール、酸触媒を再度添
加し、同様に1〜2時間反応させて平衡組成としてか
ら、触媒中和、濃縮を繰り返すことで、合計のエステル
化反応時間が短縮できる。通常は、3〜4回繰り返すこ
とでほぼ定量的に酒石酸低級アルキルジエステルを合成
することができる。このような繰り返し反応方法を採用
すると、低級アルコール使用量が少なく、副生物生成を
抑制でき、かつ酒石酸低級アルキルジエステルの収率も
向上する。
【0019】本発明法において、反応、中和、濃縮操作
を数回繰り返して得た反応液から、酒石酸低級アルキル
ジエステルを単離するには、通常の方法が採用できる。
例えば濃縮液に水を加えて極僅かに残留した酒石酸や酒
石酸低級アルキルモノエステル、中和塩等を水層に移行
させ、希釈剤溶液を濃縮することにより、目的とする酒
石酸低級アルキルジエステルを単離することができる。
或いは、真空蒸留で精製することもできる。
【0020】
【実施例】次に、本発明を実施例等にて具体的に説明す
る。尚、酒石酸低級アルキルジエステルの純度分析は下
記のキャピラリーガスクロマトグラフィーで実施した。 使用機器:島津GC−14B カラム:TC−17(GLサイエンス(株)製)直径
0.53mm×15m カラム温度:50〜280℃(10℃/分の割合で昇温
した) 注入および検出温度:250℃ 検出法:FID キャリアーガスおよびカラム圧:ヘリウムガス、60k
Pa スプリット流量:100ml/min 実施例1 温度計、コンデンサー、滴下ロート、撹拌機を装着した
1L三ッ口フラスコに、D−酒石酸(東レ(株)製、光
学純度99.9%ee以上)120.1g(0.8モ
ル)、エタノール(片山化学(株)製、特級試薬)7
3.7g(1.6モル)、トルエン(片山化学(株)
製、1級試薬)432.3gを加え攪拌した。これに、
塩化水素ガスをエタノールに吹き込み調製した10%塩
化水素エタノール溶液8.8g(塩化水素0.024モ
ル)を加え、2時間80℃下で加熱した。次いで苛性ソ
ーダ(片山化学(株)製、1級試薬)を水に溶解させ調
整した48%苛性ソーダ水溶液2.0g(苛性ソーダ
0.024モル)を加えた後、単蒸留装置を装着し、滴
下ロートによりトルエン180.1gを加えながら、減
圧下でフラスコ中の水とエタノールをトルエンとともに
70℃下で留出させた。水、エタノール、トルエンの混
合物約240gを留出させた後、エタノール73.7g
(1.6モル)、10%塩化水素エタノール溶液4.4
g(塩化水素0.012モル)を加え、2時間80℃下
で加熱した。次いで48%苛性ソーダ水溶液1.0g
(苛性ソーダ0.012モル)を加えた後、滴下ロート
によりトルエン120.1gを加えながら、減圧下でフ
ラスコの中の水とエタノールをトルエンとともに70℃
下で蒸発させた。水、エタノール、トルエンの混合物約
145gを留出させた後、エタノール36.9g(0.
8モル)、10%塩化水素エタノール溶液4.4g(塩
化水素0.012モル)を加え、2時間80℃下で加熱
した。次いで48%苛性ソーダ水溶液1.0g(苛性ソ
ーダ0.012モル)を加えた後、滴下ロートによりト
ルエン72.0gを加えながら、減圧下でフラスコの中
の水とエタノールをトルエンとともに70℃下で蒸発さ
せ、水、エタノール、トルエンの混合物約108gを留
出させた。反応液を35℃以下まで放冷し、炭酸水素ナ
トリウム(片山化学(株)製、1級試薬)6.7g
(0.08モル)、塩化ナトリウム(片山化学(株)
製、1級試薬)を水に溶解させ調整した8%食塩水33
gを反応液に加え、良く撹拌した後、有機層を分取し
た。有機層は再度飽和食塩水33gで2回洗浄を行っ
た。分離した水層はトルエン350gで再度抽出を行
い、先の分取した有機層に加えた。ついで有機層を減圧
下、40℃下で濃縮乾固し、溶媒を留去した後、ろ過し
てD−酒石酸ジエチルエステル140.5gを得た。取
得したD−酒石酸ジエチルエステル中の2量体等の不純
物は0.4%で、仕込みD−酒石酸に対するD−酒石酸
ジエチルエステルの収率は85%であった。また、光学
純度は99.9%ee以上で光学純度は低下していなか
った。
【0021】実施例2 実施例1の方法においてエタノールの添加を、73.7
g(反応1回目)/36.9(反応2回目)/36.9
g(反応3回目)とし、D−酒石酸をL−酒石酸(片山
化学(株)製、特級試薬、光学純度99.5%ee以
上)とした以外は同様の操作を行い、L−酒石酸ジエチ
ルエステル139.4gを得た。取得したL−酒石酸ジ
エチルエステル中の2量体等の不純物は0.5%で、仕
込みL−酒石酸に対するL−酒石酸ジエチルエステルの
収率は83%であった。また、光学純度は99.5%e
e以上で光学純度は低下していなかった。
【0022】実施例3 実施例1の方法においてエタノールの添加を、73.7
g(反応1回目)/36.9(反応2回目)とし、3回
目の反応を行わなかった以外は同様の操作を行い、D−
酒石酸ジエチルエステル107.4gを得た。取得した
D−酒石酸ジエチルエステル中の2量体等の不純物は
0.2%で、仕込みD−酒石酸に対するD−酒石酸ジエ
チルエステルの収率は65%であった。また、光学純度
は99.9%ee以上で光学純度は低下していなかっ
た。
【0023】実施例4 実施例1の方法においてエタノールの代わりに2−プロ
パノール(片山化学(株)製、1級試薬)を使用し、添
加量を、96.0g(反応1回目)/48.0(反応2
回目)/96.0g(反応3回目)とした以外は同様の
操作を行い、D−酒石酸ジイソプロピルエステル15
7.8gを得た。取得したD−酒石酸ジイソプロピルエ
ステル中の2量体等の不純物は0.3%で仕込みD−酒
石酸に対するD−酒石酸ジイソプロピルエステルの収率
は84%であった。また、光学純度は99.9%ee以
上で光学純度は低下していなかった。
【0024】比較例 実施例1の方法において苛性ソーダ水溶液の添加をなく
した以外は同様の操作を行い、D−酒石酸ジエチルエス
テル139.5gを得た。取得したD−酒石酸ジエチル
エステル中の2量体等の不純物は1.6%と多く、仕込
みD−酒石酸に対するD−酒石酸ジエチルエステルの収
率は83%であった。また、光学純度は99.9%ee
以上で光学純度は低下していなかった。
【0025】
【発明の効果】酒石酸低級アルキルジエステルを製造す
るに際し、酒石酸と低級アルコールを酸触媒存在下にて
加熱してエステル化させたのち、酸触媒を不活性化して
から濃縮することで、2量体等の不純物の副生を抑制
し、かつ使用するアルコールを最小限に抑え、高収率で
高純度の酒石酸低級アルキルジエステルを製造できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300 C07M 7:00

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酒石酸および低級アルコールを酸触媒存在
    下、エステル化させたのち、酸触媒を不活性化してから
    濃縮することを特徴とする酒石酸低級アルキルジエステ
    ルの製造法。
  2. 【請求項2】酒石酸および低級アルコールを酸触媒存在
    下、エステル化する工程、酸触媒を不活性化する工程、
    系中の副生水を除去する濃縮工程を繰り返すことを特徴
    とする請求項1記載の酒石酸低級アルキルジエステルの
    製造法。
  3. 【請求項3】系内の副生水を除去する際に、酒石酸とも
    低級アルコールとも反応せず、かつ水と共沸する有機溶
    媒を用いることを特徴とする請求項1または2記載の酒
    石酸低級アルキルジエステルの製造法。
  4. 【請求項4】低級アルコールの使用量が酒石酸1モルに
    対し、2〜6モルであり、酒石酸とも低級アルコールと
    も反応せず、かつ水と共沸する有機溶媒を希釈剤として
    用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記
    載の酒石酸低級アルキルジエステルの製造法。
  5. 【請求項5】酸触媒を不活性化する手段が、3級アミン
    および/または無機アルカリの添加による酸触媒の中和
    であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記
    載の酒石酸低級アルキルジエステルの製造法。
  6. 【請求項6】酒石酸が光学活性体である請求項1〜5の
    いずれか1項記載の酒石酸低級アルキルジエステルの製
    造法。
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