JP2001003160A - 膜形成方法およびその装置 - Google Patents

膜形成方法およびその装置

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JP2001003160A
JP2001003160A JP11172644A JP17264499A JP2001003160A JP 2001003160 A JP2001003160 A JP 2001003160A JP 11172644 A JP11172644 A JP 11172644A JP 17264499 A JP17264499 A JP 17264499A JP 2001003160 A JP2001003160 A JP 2001003160A
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film
vacuum arc
substrate
film forming
cathode
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JP11172644A
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English (en)
Inventor
Koji Miyake
浩二 三宅
Toru Amamiya
亨 雨宮
Tsukasa Hayashi
司 林
Kimito Nishikawa
公人 西川
Koji Matsunaga
幸二 松永
Yasuo Suzuki
泰雄 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissin Electric Co Ltd
Original Assignee
Nissin Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 基体に対する密着性の高い膜を大きな成膜速
度で形成することができるようにする。 【解決手段】 この膜形成方法は、第1および第2の成
膜工程を備えている。第1の成膜工程では、真空アーク
放電によって陰極22を溶解させて陰極物質22aを含
むプラズマ32を生成する第1の真空アーク蒸発源20
によって生成したプラズマ32を、偏向磁場によって粗
大粒子を除去する磁気フィルタ40を通して、負のバイ
アス電圧VB を印加した基体6の近傍に導いて、基体6
の表面に第1の膜を形成する。第2の成膜工程では、真
空アーク放電によって陰極52を溶解させて陰極物質5
2aを含むプラズマ62を生成するものであって真空ア
ーク蒸発源20の陰極22と同一材質の陰極52を有す
る第2の真空アーク蒸発源50によって生成したプラズ
マ62を、負のバイアス電圧VB を印加した基体6の近
傍に導いて、前記第1の膜の表面に第2の膜を形成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、真空アーク蒸発
源を用いたいわゆるアーク式イオンプレーティング法に
よって、例えば自動車部品、工作機械部品、工具等の基
体の表面に、例えば潤滑性や硬度等に優れた膜を形成す
る膜形成方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】真空アーク放電によって陰極を溶解させ
て陰極物質を含むプラズマを生成する真空アーク蒸発源
を用いて、この真空アーク蒸発源で発生させたプラズマ
中のイオン(この明細書では正イオンを意味する)を負
バイアス電圧によって基体に引き込んで、基体の表面に
膜を形成する膜形成方法は、アーク式イオンプレーティ
ング法とも呼ばれており、この方法による装置が例えば
特開平9−157837号公報、特開平10−2518
45号公報に記載されている。
【0003】この膜形成方法は、成膜速度が大きい、膜
の密着性が高い等の利点を有している。成膜速度が大き
いのは、真空アーク放電を利用して陰極を溶解させて、
陰極物質を大量に蒸発させることができるからである。
膜の密着性が高いのは、上記プラズマ中のイオンを、負
バイアス電圧による電界によって基体に引き込んで衝突
させることができるからである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記真空アーク蒸発源
の陰極から蒸発させる陰極物質には、成膜に好ましい微
小粒子の他に、例えば直径が数μm程度またはそれ以上
という粗大粒子(これはドロップレットとも呼ばれる)
が含まれており、この粗大粒子が基体に飛来してその表
面に付着してしまい、この粗大粒子付近を起点として膜
が剥がれやすくなるので、粗大粒子が原因で基体に対す
る膜の密着性が低下するという大きな課題がある。
【0005】粗大粒子が基体に付着することを防止して
膜の密着性を高める手段は、上記公報にも幾つか提案さ
れているけれども、密着性向上の要求は年々厳しくなっ
て来ており、特に面圧の大きな摩擦摺動部品等に使用す
る場合には、更なる改善が求められている。
【0006】粗大粒子が基体に付着することを簡単に防
止するためには、例えば、真空アーク蒸発源の前方を避
けた所に基体を配置する方法が考えられるけれども、そ
のような方法では、基体に到達する微小粒子の量も極端
に減るため、成膜速度が極端に低下してしまう。
【0007】そこでこの発明は、基体に対する密着性の
高い膜を大きな成膜速度で形成することのできる膜形成
方法およびその装置を提供することを主たる目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明に係る膜形成方
法は、真空アーク放電によって陰極を溶解させて陰極物
質を含むプラズマを生成する第1の真空アーク蒸発源に
よって生成したプラズマを、偏向磁場によって粗大粒子
を除去する磁気フィルタを通して、負のバイアス電圧を
印加した基体の近傍に導いて、当該基体の表面に第1の
膜を形成する第1の成膜工程と、真空アーク放電によっ
て陰極を溶解させて陰極物質を含むプラズマを生成する
ものであって前記第1の真空アーク蒸発源の陰極と同一
材質の陰極を有する第2の真空アーク蒸発源によって生
成したプラズマを、負のバイアス電圧を印加した前記基
体の近傍に導いて、前記第1の膜の表面に第2の膜を形
成する第2の成膜工程とを備えることを特徴としてい
る。
【0009】上記膜形成方法によれば、第1の成膜工程
によって、磁気フィルタを通して粗大粒子の除去された
プラズマを用いて、基体の表面に、粗大粒子を殆ど含ま
ない密着性の高い第1の膜を形成することができる。但
しこの第1の成膜工程だけでは、磁気フィルタを通すこ
とによって基体に到達するプラズマの量が若干減少する
ため、磁気フィルタを用いない場合に比べて、成膜速度
が若干低下する。
【0010】そこでこの発明では、第2の成膜工程によ
って、上記密着性の高い第1の膜の表面に、第2の真空
アーク蒸発源を用いて第2の膜を形成する。この第2の
成膜工程では、第2の真空アーク蒸発源で生成したプラ
ズマをそのまま成膜に利用するので、高速成膜が可能で
ある。
【0011】しかも、仮に第2の成膜工程において形成
する第2の膜に粗大粒子が含まれていたとしても、その
下の第1の膜の基体に対する密着性が上記理由から高
く、この第1の膜と第2の膜とは互いに同一種類の膜で
あるので、密着性の高い第1の膜が第2の膜の密着性を
高める作用をし、膜全体として見れば、基体に対する密
着性は高くなる。
【0012】その結果、基体に対する密着性の高い膜を
大きな成膜速度で形成することができる。
【0013】この発明に係る膜形成装置は、基体を収納
して真空排気される成膜室と、前記基体に負のバイアス
電圧を印加するバイアス電源と、真空アーク放電によっ
て陰極を溶解させて陰極物質を含むプラズマを生成する
第1の真空アーク蒸発源と、この第1の真空アーク蒸発
源によって生成したプラズマを磁場によって湾曲させて
粗大粒子を除去して前記成膜室内の基体の近傍に導く磁
気フィルタと、真空アーク放電によって陰極を溶解させ
て陰極物質を含むプラズマを生成してそれを前記成膜室
内の基体の近傍に導くものであって前記第1の真空アー
ク蒸発源の陰極と同一材質の陰極を有する第2の真空ア
ーク蒸発源とを備えることを特徴としている。
【0014】上記膜形成装置によれば、第1の真空アー
ク蒸発源および磁気フィルタを用いて、粗大粒子の除去
されたプラズマを基体の近傍に導いて、基体の表面に、
粗大粒子を殆ど含まない密着性の高い第1の膜を形成す
ることができる。
【0015】更に、第2の真空アーク蒸発源で生成した
プラズマをそのまま基体の近傍に導いて、上記第1の膜
の表面に、第2の膜を高速で成膜することができる。
【0016】その結果、上記膜形成方法の場合と同様の
理由から、基体に対する密着性の高い膜を大きな成膜速
度で形成することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】図1は、この発明に係る膜形成方
法を実施する膜形成装置の一例を示す図である。この膜
形成装置は、図示しない真空排気装置によって真空排気
される成膜室(換言すれば真空容器)2を備えており、
その中に、成膜しようとする基体6を保持するホルダ1
4が設けられている。成膜室2ならびにそれに接続され
た後述する輸送管42および部屋34は、この例では電
気的に接地されている。
【0018】成膜室2内には、この例では、図示しない
ガス源から、不活性ガス、反応性ガス等のガス4が導入
される。不活性ガスは、例えばアルゴンガスである。反
応性ガスは、後述するプラズマ32、62中に含まれる
陰極物質22a、52aと反応して化合物を作るガスで
ある。
【0019】ホルダ14は、この例では、導体から成
り、同じく導体から成る軸15によって支持されてい
る。この軸15が成膜室2の壁面を貫通する部分は、絶
縁物16によって電気絶縁されている。このホルダ14
および軸15を、図示しない回転駆動装置によって、例
えば矢印B方向に回転させるようにしても良い。そのよ
うにすれば、基体6の全面により均一に膜を形成するこ
とが可能になる。
【0020】ホルダ14およびそれに保持される基体6
には、バイアス電源18から、負のバイアス電圧VB
印加される。バイアス電源18は、負の直流のバイアス
電圧VB を出力する直流電源でも良いし、負のパルス状
のバイアス電圧VB を繰り返して出力するパルス電源で
も良い。
【0021】基体6に印加可能なバイアス電圧VB の大
きさ(絶対値)は、動作ガス圧にもよるが、直流電圧の
場合は通常は数百V程度以下、高くても数kV程度以下
であり、パルス電圧の場合は数十kV〜数百kV程度ま
で印加可能である。これは、基体6等の近傍に後述する
プラズマ32、62が導かれることもあって、直流電圧
の場合は、基体6等と成膜室2の壁面との間でブレーク
ダウン(せん絡)が起こりやすいために電圧をあまり高
くすることができないのに対して、パルス電圧の場合
は、そのパルス幅を適宜選択することによって、ブレー
クダウンに至る前に電圧が0または0近くになるように
することができるので、大きな電圧を印加することがで
きるからである。
【0022】成膜室2の壁面には、後述する磁気フィル
タ40を構成する輸送管42の一方の端部が、ホルダ1
4上の基体6に向くように接続されている。この輸送管
42内も、成膜室2と共に真空排気される。例えば、成
膜室2および輸送管42内は、ガス4、30の導入前
に、10-5〜10-6Torr程度に真空排気される。こ
の輸送管42の他方の端部内に、第1の真空アーク蒸発
源20が設けられている。
【0023】真空アーク蒸発源20は、この例では金属
製の支持体24に取り付けられた陰極22を有してい
て、それと陽極兼用の輸送管42との間の真空アーク放
電によって、陰極22を局部的に溶解させて陰極物質2
2aを蒸発させるものである。このとき、陰極22の前
方近傍には、アーク放電によってプラズマが生成され、
陰極物質22aの一部はイオン化される。即ち、陰極2
2の前方近傍には、イオン化された陰極物質22aを含
むプラズマ32が生成される。
【0024】このとき、陰極22と輸送管42との間に
は、直流のアーク電源28から、前者を負極側にして、
直流のアーク放電電圧VA1が供給される。このアーク放
電電圧VA1の大きさは、例えば数十V〜数百V程度であ
る。なお、通常は、アーク放電起動用のトリガ電極が備
えられているが、ここではその図示を省略している。2
6は絶縁物である。
【0025】陰極22の材質は、形成しようとする膜の
種類に応じて選ばれる。例えば、金属、金属化合物、半
金属、半金属化合物等である。これらはいずれも、導電
性材料である。
【0026】陰極22の近傍には、この例のように、成
膜室2内に導入するガス4と同種類のガス30を導入す
るのが好ましい。そのようにすれば、陰極22の近傍の
ガス圧調整が容易になるので、プラズマ32の生成が容
易になる。
【0027】磁気フィルタ40は、湾曲した前記輸送管
42と、その外周に巻かれていて輸送管42に沿う磁束
(図1中にその磁力線48の一例を示す)を発生する磁
気コイル44と、この磁気コイル44を励磁する直流電
源46とを備えている。磁気コイル44は、一つでも良
いし、複数に分割されていても良い。この磁気コイル4
4によって、輸送管42の中心軸上で例えば10ガウス
〜数kガウス程度の磁束密度になるような偏向磁場を形
成する。但し、磁気コイル44および直流電源46の代
わりに、上記と同様の磁場を形成する複数の永久磁石を
用いても良い。
【0028】この磁気フィルタ40は、真空アーク蒸発
源20によって生成されたプラズマ32を、上記偏向磁
場によって湾曲させて当該プラズマ32中に含まれてい
る粗大粒子を除去した後に、成膜室2内の基体6の近傍
に導く働きをする。
【0029】これを詳述すると、陰極22から蒸発する
陰極物質22aには、数原子レベルの微小粒子だけでな
く、前述したように例えば直径が数μm程度またはそれ
以上という粗大粒子も含まれているが、この粗大粒子が
イオン化した場合、それは磁気フィルタ40内の磁場に
捕捉されてその磁力線48を中心軸として螺旋運動をす
る。この螺旋運動の半径(ラーマー半径)は質量に比例
して大きくなるため、粗大粒子の場合は極端に大きく、
結果的に輸送管42の内壁または図示しないフィン(防
着板)に衝突して消滅(付着)する。
【0030】上記粗大粒子がイオン化していない場合
は、陰極22から直線的に飛散するため、これも湾曲し
た輸送管42の内壁またはフィンに衝突して消滅する。
従っていずれにしても、粗大粒子は磁気フィルタ40内
においてプラズマ32中から除去され、成膜室2内に
は、イオン化した微小粒子および電子から成るプラズマ
32が輸送され、これが基体6の近傍に導かれる。
【0031】成膜室2の上記磁気フィルタ40接続面と
は別の壁面の部分に、ホルダ14上の基体6に向くよう
に、第2の真空アーク蒸発源50が設けられている。こ
の真空アーク蒸発源50は、例えば図示例のように成膜
室2に連通する部屋34内に設けても良いし、直接、成
膜室2の壁面の内側に設けても良い。
【0032】真空アーク蒸発源50は、上記真空アーク
蒸発源20とほぼ同様の構成を有している。即ち、この
真空アーク蒸発源50は、この例では金属製の支持体5
4に取り付けられた陰極52を有していて、それと陽極
を兼ねる部屋34(または成膜室2)の壁面との間の真
空アーク放電によって、陰極52を局部的に溶解させて
陰極物質52aを蒸発させるものである。このとき、陰
極52の前方近傍には、アーク放電によってプラズマが
生成され、陰極物質52aの一部はイオン化される。即
ち、陰極52の前方近傍には、イオン化された陰極物質
52aを含むプラズマ62が生成される。
【0033】このとき、陰極52と部屋34の壁面等と
の間には、アーク電源58から、前者を負極側にして、
直流またはパルス状のアーク放電電圧VA2が供給され
る。即ち、アーク電源58は、直流のアーク放電電圧V
A2を出力する直流電源でも良いし、パルス状のアーク放
電電圧VA2を繰り返して出力するパルス電源でも良い。
このアーク放電電圧VA2の大きさは、例えば数十V〜数
百V程度である。なお、通常は、アーク放電起動用のト
リガ電極が備えられているが、ここでもその図示を省略
している。56は絶縁物である。陰極52の材質は、第
1の真空アーク蒸発源20の陰極22と同一のものであ
る。
【0034】この真空アーク蒸発源50で生成したプラ
ズマ62は、そのまま(即ち真空アーク蒸発源20側の
ように磁気フィルタ40を通すことなく)ホルダ14上
の基体6の近傍に導かれる。
【0035】次に、上記のような膜形成装置を用いて、
基体6の表面に膜を形成する膜形成方法の例を幾つか説
明する。
【0036】まず、次のような第1の成膜工程を行う。
即ち、上記第1の真空アーク蒸発源20によって生成し
たプラズマ32を、磁気フィルタ40を通して粗大粒子
を除去して、成膜室2内の基体6の近傍に導く。このと
き、基体6にはバイアス電源18から上記のような負の
バイアス電圧VB を印加しておく。これによって、プラ
ズマ32中に含まれているイオン化した陰極物質22a
がバイアス電圧VB によって基体に向けて加速されて基
体6の表面に衝突し堆積して、図2に示すように、基体
6の表面に、陰極物質22aから成る第1の膜8が形成
される。このとき、成膜室2内等に導入するガス4およ
び30が前述した反応性ガスの場合は、当該反応性ガス
と陰極物質22aとが化合した化合物膜が、基体6の表
面に第1の膜8として形成される。
【0037】例えば、陰極22をTi 、ガス4および3
0をN2 とすれば、TiN膜を形成することができる。
陰極22をTi 、ガス4および30をCH4 とN2 の混
合ガスとすれば、TiCN膜を形成することができる。
陰極22をTiAl 合金、ガス4および30をN2 とす
れば、TiAlN膜を形成することができる。
【0038】次に、次のような第2の成膜工程を行う。
即ち、上記第2の真空アーク蒸発源50によって生成し
たプラズマ62を成膜室2内の基体6の近傍に導く。こ
のときも、基体6にはバイアス電源18から上記のよう
な負のバイアス電圧VB を印加しておく。これによっ
て、プラズマ62中に含まれているイオン化した陰極物
質52aがバイアス電圧VB によって基体6に向けて加
速されて基体6上の膜8に衝突し堆積して、図2に示す
ように、第1の膜8の表面に第2の膜10が形成され
る。このとき、成膜室2内に導入するガス4の種類は、
上記第1の成膜工程のときと同じにしておく。これによ
って、陰極22と52とは互いに同一材質であるので、
膜8と同一種類の膜10が形成される。
【0039】上記膜形成方法によれば、第1の成膜工程
によって、磁気フィルタ40を通して粗大粒子の除去さ
れたプラズマ32を用いて、基体6の表面に、粗大粒子
を殆ど含まない密着性の高い第1の膜8を形成すること
ができる。但しこの第1の成膜工程だけでは、磁気フィ
ルタ40を通すことによって基体6に到達するプラズマ
32の量が若干減少するため、磁気フィルタ40を用い
ない場合に比べて、成膜速度が若干低下する。
【0040】そこでこの膜形成方法では、第2の成膜工
程によって、上記密着性の高い第1の膜8の表面に、第
2の真空アーク蒸発源50を用いて第2の膜10を形成
する。この第2の成膜工程では、第2の真空アーク蒸発
源50で生成したプラズマ62をそのまま成膜に利用す
るので、高速成膜が可能である。
【0041】しかも、仮に第2の成膜工程において形成
する第2の膜10に粗大粒子が含まれていたとしても、
その下の第1の膜8の基体6に対する密着性が上記理由
から高く、この第1の膜8と第2の膜10とは互いに同
一種類の膜であるので、密着性の高い第1の膜8が第2
の膜10の密着性を高める作用をし、膜全体として見れ
ば、基体6に対する密着性は高くなる。
【0042】その結果、基体6に対する密着性の高い膜
を大きな成膜速度で形成することができる。
【0043】上記第2の成膜工程において、第1の真空
アーク蒸発源20および磁気フィルタ40をも動作させ
て、第2の真空アーク蒸発源50からのプラズマ62と
共に、磁気フィルタ40からのプラズマ32を成膜に用
いても良い。そのようにすれば、第2の膜10の成膜
に、プラズマ62および32の両方を用いることができ
るので、膜10の成膜速度をより高めることができる。
【0044】また、上記アーク電源58をパルス電源と
して、第2の成膜工程時に、第2の真空アーク蒸発源5
0において、直流放電ではなくパルス状のアーク放電を
繰り返して発生させても良い。そのようにすれば、陰極
52の表面の局部的な過熱を抑制することができるの
で、陰極物質52aに含まれる粗大粒子の数および粒子
サイズを低減することができる。その結果、第2の膜1
0に含まれる粗大粒子の数およびサイズを低減すること
ができるので、第2の膜10の密着性を、ひいては膜全
体の基体6に対する密着性を、より高めることができ
る。また、第2の膜10の表面の平滑性も高めることが
できる。
【0045】上記第2の成膜工程の後に、更に、次のよ
うな第3の成膜工程を行っても良い。即ち、第2の真空
アーク蒸発源50を停止し、第1の真空アーク蒸発源2
0および磁気フィルタ40を用いて第1の成膜工程のと
きと同様にして、即ち真空アーク蒸発源20によって生
成したプラズマ32を磁気フィルタ40を通して粗大粒
子を除去した後に基体6の近傍に導いて、図3に示すよ
うに、第2の膜10の表面に、粗大粒子を殆ど含まない
第3の膜12を形成する。このとき、基体6には、上記
各工程の場合と同様に、バイアス電源18から負のバイ
アス電圧VB を印加しておく。
【0046】これによって、第2の膜10の表面に、粗
大粒子を殆ど含まない超平滑な第3の膜12を形成する
ことができる。即ち、基体6上に形成された膜の表面を
極めて平滑性の高いものにすることができる。このよう
な平滑性の高い膜は、前述した自動車部品、工作機械部
品、工具等の分野に用いれば、その耐久性等の向上にお
いて、特に大きな効果を発揮することができる。
【0047】上記のようにして基体6の表面に形成する
膜8および10、または膜8、10および12の全体の
厚さは、目的に応じて適宜選定すれば良く、例えば、1
nm〜数十μm程度である。各膜8、10および12の
厚さは、互いに同一としても良いし異ならせても良い。
上述した各膜の性質に鑑みれば、第1の膜8および第3
の膜12は、第2の膜10に比べて薄くしても良い。
【0048】また、上記第1ないし第3の成膜工程にお
いて、基体6に、バイアス電源18から負のパルス状の
バイアス電圧VB を繰り返して印加しても良い。バイア
ス電圧VB がパルス電圧の場合は、前述したように、直
流電圧の場合に比べて、遙かに大きな電圧(例えば−数
十kV〜−数百kV程度)を基体6に印加することが可
能である。
【0049】従って、基体6の近傍に導かれたプラズマ
32、62中のイオンを、大きなエネルギーで基体6に
向けて加速して、基体6またはその表面の膜に入射堆積
させることができる。このとき、入射イオンは、蒸着
原子の基体6中への押し込み、基体原子および蒸着原
子の叩き出し、イオン自体の基体6中への侵入の作用
をし、これらの作用によって、図4に示すように、基体
6とその上の膜8との界面付近に両者の構成元素から成
る混合層(ミキシング層)7が形成され、この混合層7
があたかも楔のような作用をするので、基体6に対する
膜8の密着性が極めて高くなる。これらの作用効果は、
膜10と膜8との間、および膜12と膜10との間にお
いても同様に得られる。
【0050】アーク電源58およびバイアス電源18の
両方をパルス電源とする場合は、例えば同期制御回路6
4を設ける等して、これらの電源から出力するパルス状
のアーク放電電圧VA2およびバイアス電圧VB を互いに
同期させるのが好ましい。そのようにすれば、プラズマ
62の密度が高い状態のときにバイアス電圧VB によっ
てプラズマ62中のイオンを基体6に効率良く引き込む
ことができるので、成膜速度が向上する等の効果が得ら
れる。
【0051】
【発明の効果】この発明は、上記のとおり構成されてい
るので、次のような効果を奏する。
【0052】請求項1記載の発明によれば、第1の成膜
工程によって粗大粒子を殆ど含まない密着性の高い第1
の膜を形成した上に、第2の成膜工程によって第2の膜
を大きな成膜速度で形成することができ、この第1の膜
と第2の膜とは互いに同一種類の膜であるので、密着性
の高い第1の膜が第2の膜の密着性を高める作用をして
膜全体として見れば基体に対する密着性が高くなると共
に、第2の膜の成膜速度が大きいので、基体に対する密
着性の高い膜を大きな成膜速度で形成することができ
る。
【0053】請求項2記載の発明によれば、第2の膜の
表面に粗大粒子を殆ど含まない第3の膜を形成すること
ができるので、基体上に形成された膜の表面を極めて平
滑性の高いものにすることができる、という更なる効果
を奏する。
【0054】請求項3記載の発明によれば、第2の成膜
工程で形成する第2の膜に含まれる粗大粒子の数および
サイズを低減することができるので、第2の膜の密着性
を、ひいては膜全体の基体に対する密着性をより高める
ことができ、かつ第2の膜の表面の平滑性を高めること
ができる、という更なる効果を奏する。
【0055】請求項4記載の発明によれば、直流電圧の
場合よりも遙かに大きなバイアス電圧を基体に印加し
て、プラズマ中のイオンを大きなエネルギーで基体また
はその表面の膜に入射堆積させることができ、それによ
って基体と膜間または膜同士間に混合層を形成して、膜
の密着性をより一層高めることができる、という更なる
効果を奏する。
【0056】請求項5記載の発明によれば、第1の真空
アーク蒸発源および磁気フィルタを用いて粗大粒子を殆
ど含まない密着性の高い第1の膜を形成した上に、第2
の真空アーク蒸発源を用いて第2の膜を大きな成膜速度
で形成することができ、この第1の膜と第2の膜とは互
いに同一種類の膜であるので、密着性の高い第1の膜が
第2の膜の密着性を高める作用をして膜全体として見れ
ば基体に対する密着性が高くなると共に、第2の膜の成
膜速度が大きいので、基体に対する密着性の高い膜を大
きな成膜速度で形成することができる。
【0057】請求項6記載の発明によれば、第2の真空
アーク蒸発源を用いて形成する第2の膜に含まれる粗大
粒子の数およびサイズを低減することができるので、第
2の膜の密着性を、ひいては膜全体の基体に対する密着
性をより高めることができ、かつ第2の膜の表面の平滑
性を高めることができる、という更なる効果を奏する。
【0058】請求項7記載の発明によれば、直流電圧の
場合よりも遙かに大きなバイアス電圧を基体に印加し
て、プラズマ中のイオンを大きなエネルギーで基体また
はその表面の膜に入射堆積させることができ、それによ
って基体と膜間または膜同士間に混合層を形成して、膜
の密着性をより一層高めることができる、という更なる
効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る膜形成方法を実施する膜形成装
置の一例を示す図である。
【図2】基体上に第1および第2の膜を形成した状態の
一例を示す概略断面図である。
【図3】基体上に第1ないし第3の膜を形成した状態の
一例を示す概略断面図である。
【図4】混合層の概念を示す断面図である。
【符号の説明】
2 成膜室 6 基体 8 第1の膜 10 第2の膜 12 第3の膜 18 バイアス電源 20 第1の真空アーク蒸発源 22 陰極 22a 陰極物質 32 プラズマ 40 磁気フィルタ 50 第2の真空アーク蒸発源 52 陰極 52a 陰極物質 58 アーク電源 62 プラズマ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 林 司 京都府京都市右京区梅津高畝町47番地 日 新電機株式会社内 (72)発明者 西川 公人 京都府京都市右京区梅津高畝町47番地 日 新電機株式会社内 (72)発明者 松永 幸二 京都府京都市右京区梅津高畝町47番地 日 新電機株式会社内 (72)発明者 鈴木 泰雄 京都府京都市右京区梅津高畝町47番地 日 新電機株式会社内 Fターム(参考) 4K029 BA43 BB02 BC02 BD03 BD05 CA03 CA13 DD06 JA02

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空アーク放電によって陰極を溶解させ
    て陰極物質を含むプラズマを生成する第1の真空アーク
    蒸発源によって生成したプラズマを、偏向磁場によって
    粗大粒子を除去する磁気フィルタを通して、負のバイア
    ス電圧を印加した基体の近傍に導いて、当該基体の表面
    に第1の膜を形成する第1の成膜工程と、真空アーク放
    電によって陰極を溶解させて陰極物質を含むプラズマを
    生成するものであって前記第1の真空アーク蒸発源の陰
    極と同一材質の陰極を有する第2の真空アーク蒸発源に
    よって生成したプラズマを、負のバイアス電圧を印加し
    た前記基体の近傍に導いて、前記第1の膜の表面に第2
    の膜を形成する第2の成膜工程とを備えることを特徴と
    する膜形成方法。
  2. 【請求項2】 前記第2の成膜工程の後に、前記第1の
    真空アーク蒸発源によって生成したプラズマを前記磁気
    フィルタを通して、負のバイアス電圧を印加した前記基
    体の近傍に導いて、前記第2の膜の表面に第3の膜を形
    成する第3の成膜工程を更に備える請求項1記載の膜形
    成方法。
  3. 【請求項3】 前記第2の真空アーク蒸発源においてパ
    ルス状の真空アーク放電を繰り返して発生させる請求項
    1または2記載の膜形成方法。
  4. 【請求項4】 前記基体に負のパルス状のバイアス電圧
    を繰り返して印加する請求項1、2または3記載の膜形
    成方法。
  5. 【請求項5】 基体を収納して真空排気される成膜室
    と、前記基体に負のバイアス電圧を印加するバイアス電
    源と、真空アーク放電によって陰極を溶解させて陰極物
    質を含むプラズマを生成する第1の真空アーク蒸発源
    と、この第1の真空アーク蒸発源によって生成したプラ
    ズマを磁場によって湾曲させて粗大粒子を除去して前記
    成膜室内の基体の近傍に導く磁気フィルタと、真空アー
    ク放電によって陰極を溶解させて陰極物質を含むプラズ
    マを生成してそれを前記成膜室内の基体の近傍に導くも
    のであって前記第1の真空アーク蒸発源の陰極と同一材
    質の陰極を有する第2の真空アーク蒸発源とを備えるこ
    とを特徴とする膜形成装置。
  6. 【請求項6】 前記第2の真空アーク蒸発源が、パルス
    状の真空アーク放電を繰り返して発生させるものである
    請求項5記載の膜形成装置。
  7. 【請求項7】 前記バイアス電源が、前記基体に負のパ
    ルス状のバイアス電圧を繰り返して印加するものである
    請求項5または6記載の膜形成装置。
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