JP2000514412A - 神経毒性損傷の処置のためのバックミンスターフラーレンの使用 - Google Patents

神経毒性損傷の処置のためのバックミンスターフラーレンの使用

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デューガン,ローラ
リン,ティエン―サン・トム
ルー,ティエン―ヤー
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エフ・ホフマン―ラ ロシュ アーゲー
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、神経毒性損傷の制御または処置におけるカルボキシル化バックミンスターフラーレンの使用に関する。

Description

【発明の詳細な説明】 神経毒性損傷の処置のためのバックミンスターフラーレンの使用 本発明は、次式 C60(C(COOH)2)n I [式中、C60はバックミンスターフラーレンであり、nは1〜4である]のカル ボキシル化誘導体に関する。 バックミンスターフラーレン、C60は、交互に並ぶ5員環および6員環を有す る球状炭素である;30個の炭素二重結合は、酸素ラジカルと容易に反応するた め(Science 259,1183-1185,1991)、フリーラジカル捕捉剤として作用しうる。 しかし、天然のC60は、トルエンまたはベンゼンのような限られた数の溶媒にし か溶解しない。本発明において有用な化合物は、水溶性のカルボキシフラーレン 、すなわちマロン酸または薬学的に許容されるマロン酸の塩、エステル、および アミドで一ヶ所または数ヶ所を誘導体化されたバックミンスターフラーレンであ り、ここで、マロン酸のメチレン基が、フラーレン球の2個の炭素に結合する。 したがって、本発明において有用な化合物は、C60(C(COOH)2)n、および対 応する塩、エステル、およびアミドであり、nは1〜4までの整数である。n= 3の場合のC60(C(COOH)2)nの2つの異性体の例を、図1に示す。これらの 化合物は、「O−3a」および「R−3b」と表記され、Angew.Chem.Int.Ed.En gl.33,437-438,1994に化合物3aおよび3bとして開示されているエチルエ ステルに対応する酸である。本発明において有用な好ましい化合物は、C60(C( COOH)2)3ならびに薬学的に許容されるその塩、エステル、およびアミドであ る。最も好ましい化合物は、酸そのものであるC60(C(COOH)2)3、特にO− 3a異性体である。 驚くべきことに、それらは、生物学的なフリーラジカル捕捉剤かつ神経防御因 子であり、したがって、グルタミン酸レセプター介在性神経損傷、および血清の 欠乏により誘導されるアポトーシス性ニューロン死を阻害する。 中枢神経系における主要な興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸は、学習お よび記憶を含む、多くの正常な神経学的機能にとって必要である。しかし、グル タミン酸レセプターの過剰の活性化、およびその結果の興奮毒性による神経損傷 は、低酸素症/虚血(Science 226,850-852,1984;Trends Pharmacol.Sci.,11 ,379-387;Ann.Neurol.19,105-111,1986;Science 247,571-574,1990)、外 傷(Ann.Neurol.23,623-626,1988)、てんかん(Neurosci.,12,557-567,198 4)を含む、いくつかの急性発作の後に起こる中枢神経系(CNS)におけるニュ ーロン損失、およびある種の神経変性疾患(Science 227,1496-1498,1985;Neu ron 1,623-634,1988;Trends Pharmac.Sci.11,379-387,1990;Neurol.40, 32-37,1990;Ann.Neurol.31,119-130,1992)の病原に関与している。 活性酸素(reactive oxygen)により引き起こされる酸化ストレスは、同じ急性 疾患および慢性疾患の多くに関与しているもう一つの損傷メカニズムである(Str oke 9,445-447,1978;Proq.Brain Res.63,227-235,1985;J.Neurosurq.64 ,803-807,1986;Cerebrovas.Brain Mezab.Rev.1,165-211,1989;Free.Rad ic.Biol.Med.6,289-301,1989;J.Neurochem.59,1609-1623,1992)。活性 酸素(例えば、スーパーオキシドラジカル)は、細胞膜脂質の過酸化、輸送タン パク質の不活化、およびミトコンドリアによるエネルギー産生の阻害のような、 細胞成分に対する酸化損傷を引き起こす。 これらの2つの事象、グルタミン酸興奮毒性および酸化ストレスは、相互に関 連している可能性がある。活性酸素形成は、グルタミン酸レセプターの過剰刺激 の直接的な結果として起こり(Soc.Neurosci.Abs.18,756,1992;Nature 364 ,535-537,1993)、したがってグルタミン酸神経毒性の成分を媒介する(Neuron .1,623-634,1988;Science 262,689-694,1993)。次に、興奮毒性は、活性酸 素の量を減少させる、Cu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼおよびカタラ ーゼ(J.Neurochem.49,1222-1228,1987;Acta Neurochirurgica 51,245-247 ,1990)、21−アミノステロイド「ラザロイド(lazaroids)」(Neuron 5,121-1 26,1990)、ビタミン(J.Neurochem.49,1222-1228,1987)、21−アミノステ ロイド「ラザロイド(lazaroids)」、ビタミンEアナログ、トロロックス(trolox)( Brain Res.639,102-108,1994)、フェニルブチル−N−ニトロンのようなスピ ントラッピング剤(Brain Res.574,193-197,1992)、ならびにユビキノンアナ ログ、イデベノン(idebenone)(Neurosci.Lett.178,193-196,1994)を含む 、フリーラジカル捕捉剤により減弱させられうる。 フリーラジカル捕捉剤は、外傷または低酸素症/虚血CNS損傷のin vitroモ デルにおいてもin vivoモデルにおいても、神経防御的である。N−メチル−D −アスパラギン酸およびAMPA/カイニン酸レセプターアンタゴニストは、in vitroで酸素−グルコース欠乏損傷において神経防御的であり(Neuron 1,623-6 34,1988;J.Neurosci.13,3510-3524,1993)、虚血の動物モデルにおいて脳組 織の損失を減少させる(Science 226,850-852,1984;Science 247,571-574,19 90)。フリーラジカル捕捉剤も、in vitroで興奮毒性によるニューロン死を防御 し(J.Neurochem.49,1222-1228,1987;Neuron 5,121-126,1990)、in vivoで 虚血性損傷を減少させる(Amer.J.Physiol.256,H589-593;Stroke 21,1312-1 317,1990;Stroke 22,896-901,1991;Free Rad.Biol.Med.12,29-33,1992) 。フリーラジカル捕捉剤酵素、Cu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼ(S OD)を過剰発現するトランスジェニック動物は、グルタミン酸毒性(Acta Neur ochirurgia 51,245-247,1990)および虚血性脳損傷(Ann.Neurol.29,482-48 6;Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88,11158-62,1991)に対して抵抗性である。 プログラム細胞死またはアポトーシスも、ある種の神経学的疾患状態において 細胞死の原因となる。例えば、アポトーシスは、虚血再還流の数日後の遅延型ニ ューロン変性を媒介し(J.Neurochem.61,1973-1976,1994;Neuroreport 5,49 3-496,1994)、ある種の神経変性疾患においてニューロン細胞死の要因となる(N eurosci.Lett.170,191-194,1994)。フリーラジカル酸素種による酸化ストレ スは、アポトーシスの引き金となりうる発作の一つであるため(Nature 356,397 -400,1992;Neurotoxicol.15,81-91,1994;J.Natl.Cancer Inst.86,1286- 1295,1994)、フリーラジカル捕捉剤は、プログラム細胞死をも制限することが できる(J.Neurochem.62,376-379,1994;Neurosci.Abs.20,432,1994)。B cl−2は、フリーラジカル捕捉経路に作用し、アポトーシスに対する細胞防御 効果を媒介すると考えられている(Cell.75,241-251,1993)。 本発明の主要な目的は、C60(C(COOH)2)n(C60はバックミンスターフラ ーレンであり、nは1〜4までの整数である)のカルボキシル化誘導体の、フリ ーラジカルにより引き起こされる疾患の処置または予防における使用、特 に、フリーラジカルがグルタミン酸神経毒性の結果として放出される場合の、対 応する薬剤の製造のためのこれらの化合物の使用、およびそれらを含む薬剤であ る。本発明の意味における神経毒性損傷の処置とは、神経毒性事象により損傷を 受けたことによりグルタミン酸を放出した中枢ニューロンの周囲の中枢ニューロ ンに対する損傷の程度を減少させることを意味する。神経毒性事象には、発作、 低血糖症、てんかん、または外傷などの間に起こる低酸素症/虚血のような急性 の神経学的傷害が含まれる。ハンチントン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索 硬化症(「ALS」)、およびAIDSの神経変性効果のような神経変性疾患によ り引き起こされる慢性ニューロン損傷も神経毒性事象である。したがって、本発 明は、該神経毒性損傷が起こる疾患を処置する方法も含む。 本発明のさらなる目的は、ニューロンのNMDAレセプターのグルタミン酸に よる刺激のためにニューロンから放出されたアラキドン酸の代謝により損傷神経 毒性が引き起こされた患者における、神経毒性損傷を阻害するためのバックミン スターフラーレンの使用、および該神経毒性損傷を阻害するのに充分な量の前記 カルボキシフラーレンおよび薬学的に許容される担体を含む医薬である。 アラキドン酸(「AA」)は、グルタミン酸(神経毒性事象そのものにより損傷 を受けたニューロンにより放出されたグルタミン酸)によるNMDAレセプター の刺激により引き起こされる、過剰のCa2+のニューロン細胞への流入によりニ ューロンに放出される。過剰のCa2+流入は、細胞膜を破壊しAAを遊離させる カルシウム依存性酵素、ホスフォリパーゼA2を活性化する。内因性のリポギシ ゲナーゼおよびシクロオキシゲナーゼによるAAの代謝は、酸素フリーラジカル の生成を導き、それがニューロン脂質膜の過酸化分解のきっかけとなり(Acta Ph ysiol.Scand.492,121-128,1980;Proq.Brain Res.63,227-232,1985)、そ の結果神経の損傷または死が起こる。したがって、本発明に従い、本明細書に開 示されたフリーラジカル捕捉カルボキシフラーレンを含む組成物を投与すること により、酸素由来のフリーラジカルを減少させることは、グルタミン酸が誘導す る神経毒性を阻害するという別のメカニズムを提供する。 本発明の好ましい目的は、発作を処置するための前記化合物の使用を含む。本 発明において、発作とは、患者の脳における、急性の神経毒性事象と定義され、 ここで、この神経毒性事象は脳のニューロンへの血流の欠乏により起きる。 本明細書中に記載されるカルボキシフラーレン化合物は、活性化合物および該 化合物と適合性の薬学的に許容される担体を含む薬剤として全身投与される。こ のような薬剤の調製においては、従来のいかなる薬学的に許容される担体も用い ることができる。薬物を経口投与する場合には、一般的に規則的な間隔をおいて 投与する。 処置のための使用において、本発明において有用な化合物は、それにより薬物 が従来投与されていた任意の経路により投与してもよい。このような経路には、 静脈内、筋肉内、皮下、髄腔内、腹腔内、局所、および経口が含まれる。好まし くは、本発明の方法は、経口または静脈内の投与により実施される。 薬剤は、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤などのような、経口投与のた めの固形型を含む、任意の従来の形態で作製することができる。薬剤は、無菌で あり、および/または保存剤、安定化剤、湿潤化剤、乳化剤、浸透圧を変化させ るための塩、および/または緩衝剤などの補助剤を含んでいてもよい。 静脈内投与用の典型的な調製物は、水/緩衝溶液を含む無菌水性溶液である。 静脈内賦形剤には、液体、栄養剤、および電解質補給剤が含まれる。抗生物質お よび抗酸化剤のような、保存剤およびその他の添加剤が含まれていてもよい。ボ ーラス静脈内投与用の薬剤は、最大10mg/ml(10,000mg/リットル)の本 明細書中に記載のカルボキシフラーレンを含むことができる。点滴静脈内投与用 の薬剤は、好ましくは、約50mg/リットル〜約500mg/リットルの本明細書中 に記載のカルボキシフラーレンを含んでもよい。 本発明によると、本明細書中に記載のカルボキシフラーレンは、薬学的に許容 される経口形態において有用である。これらの薬剤は、適合性のある薬学的に許 容される担体物質と共に該化合物を含む。任意の従来の担体物質を用いることが できる。錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤などのような、任意の従来の経 口用剤形を用いることができる。担体物質は、経口投与に適した、有機または無 機の不活性な担体物質である。適当な担体には、水、ゼラチン、アラビアゴム、 ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物油、ポリアル キレン−グリコール、ペトロラタムなどが含まれる。さらに、薬剤は、他の薬学 的に活性な薬物を含んでいてもよい。芳香剤、保存剤、安定化剤、乳化剤、緩衝 剤などのような付加的な添加剤は、医薬組成物調製の許容された慣習に従い添加 することができる。 好ましい経口投与用剤形には、錠剤、硬ゼラチンまたは軟ゼラチン、メチルセ ルロース、または消化管で容易に溶解するその他の適当な物質のカプセル剤が含 まれる。本発明に従い考慮される経口投与用剤形は、処方を行う医師により決定 される、個々の患者の必要性に応じて変化する。好ましい経口投与用剤形は、本 発明において有用なカルボキシフラーレンを50〜500mg含むカプセル剤また は錠剤である。 本発明の方法の実施において、本発明において有用な化合物は、一般的に、一 回または数回に分割して、1日当たり約1.5mg/kg〜約1,500mg/kgの量で 、好ましくは1日当たり約10mg/kg〜約60mg/kgの量で、毎日、好ましくは経 口投与または静脈内投与により成人に投与されるが、正確な投与量は患者の必要 性に応じて変化する。一般に、この処置は約3ヶ月間実施される。あるいは、本 発明の方法は、発作のような急性神経毒性事象を経験する危険が高い患者におい て、不確定の期間、予防的に実施することもできる。急性神経毒性事象の処置の ためには、患者は、急性神経毒性事象の診断後可能な限り早期に、好ましくは神 経毒性事象の開始から12時間以内、最も好ましくは6時間以内に、本発明の方 法に従い処置されなければならない。 図1〜11は、本発明をより詳細に示す。 図1 ヘキサカルボキシフラーレン、C60(C(COOH)2)3、異性体O−3a およびR−3bの構造。 図2 精製されたC60(C(COOH)2)3マロン酸エステル(O−3a鏡像異性 体)のプロトンNMR分光法によるスペクトル。 図3 精製されたC60(C(COOH)2)3マロン酸エステル(O−3a鏡像異性 体)の高速分子衝撃質量分析によるスペクトル。 図4 H22(A:未処理、B:O−3a鏡像異性体で処理)およびスーパー オキシドラジカルO2 ・-(C:未処理、D:O−3a鏡像異性体で処理、E:R −3b鏡像異性体で処理)に対するC60(C(COOH)2)3のフリーラ ジカル捕捉活性を示す、電子常磁性共鳴スペクトル。矢印は、EPR空洞共振器 内の夾雑物により生じた人工的なシグナルである。 図5 処理を行わない場合、および3種の濃度のC60(C(COOH)2)3で処理 をした場合の、培養ニューロンのNMDA曝露により生じた神経毒性。 図6 処理を行わない場合、および4種の濃度のC60(C(COOH)2)3で処理 をした場合の、培養ニューロンのAMPA曝露により生じた神経毒性。 図7 C60(C(COOH)2)3を同時適用した場合およびしない場合の、培養ニ ューロンにおけるNMDAにより刺激されたトレーサー45Ca2+蓄積。 図8 処理を行わない場合および2種の濃度のC60(C(COOH)2)3で処理を した場合の、血清欠乏によりグリア欠損培養物において生じたアポトーシス性ニ ューロン細胞死。 図9 2つのC60(C(COOH)2)3異性体のフリーラジカル捕捉活性を比較し たEPRスペクトル。 図10 NMDAの適用により生じる損傷(A)およびAMPAにより誘導さ れるニューロン死(B)に対するニューロンの防御における、2つのC60(C(C OOH)2)3異性体の比較。マウス脳由来の脂質へ、2つのC60(C(COOH)2)3 異性体のいずれかと共に取り込まれたスピン標識脂質(5−または16−ドキシ ルケトステアリン酸)のEPRスペクトル(C)。 図11 生理食塩水または15mg/kg/日のカルボキシフラーレンを含む腹腔内 ミニ浸透圧ポンプで処理されたFALSマウスに関する生存曲線。 本明細書中のデータは、開示されたカルボキシフラーレンが、多数の酸素由来 フリーラジカルを捕捉する能力を有する新規なクラスの抗酸化剤であること、そ してこれらの化合物が、極めて広域の強力な神経防御能を有し、グルタミン酸興 奮毒性によるニューロン死およびアポトーシスを軽減させることを示している。 実施例 溶液 培地ストック(MS)は、25mMグルコースを含み、L−グルタミンを含まな いイーグル最少必須培地からなる。 プレーティング用培地は、L−グルタミン(2mM)、5%ウシ胎児血清、およ び5%ウマ血清を補充したMSからなる。 増殖培地は、MS、10%ウマ血清、および2mM L−グルタミンを含む。 NMDAへの短時間曝露は、116mM NaCl、5.4mM KCl、0.8mM MgSO4、1.8mM NaPO4、12mM HEPES、25mM NaHCO3、 5.5mM D−グルコース、10M L−グリシンを含む、HEPES緩衝平衡塩 溶液、pH7.40(HBBSS)で行った。 平衡塩溶液(BSS)は、116mM NaCl、5.4mM KCl、0.8mM MgSO4、1.8mM NaPO4、26.2mM NaHCO3、および5.5mM D −グルコースであった。 もとの異性体であるC60(C(COOH)2)3は、合成の主要生成物である、O− 3a異性体であった。この化合物のストックは、25mM水溶液として調製された 。ストックは、調製から72時間以内に使用され、暗所に−20℃で保存された 。 未修飾C60はトルエンに溶解し、50mMストックを調製した。皮質細胞培養物 マウス新皮質培養物は、ニューロンと星状膠細胞の共培養物(約50%星状膠 細胞)(Rose et al.,1992)として、またはニューロン培養物(<2%星状膠細 胞)として調製した。麻酔をかけられた妊娠スイスウェブスター(Swiss-Webster )マウスから、マウス胎児(妊娠15日目)を取り出し、新皮質を他の脳組織か ら切り取る。トリプシン中で短時間インキュベートした後、摩砕により細胞を解 離させ、細胞懸濁液をプレーティング用培地で希釈し、予め調製されたポリ−D −リジン/ラミニンでコーティングされた24穴プラステック(Plastek)培養 プレート(ニューロン培養物用)または既に存在する星状膠細胞層へと播く(共 培養用)。in vitroで1〜2日の後、「純粋な」ニューロン培養物のために、グ リア馴化培地を部分的に交換し、グリアの増殖を阻害するため、培地交換後直ち にシトシンアラビノシド(3μM)を添加する。混合培養物には、in vitroで1 1〜12日目まで週2回増殖培地を与え、次いで、2mM L−グルタミンを含む 無血清MSを与える。特に別記しない限り、細胞はin vitroで14〜16日目の ものを使用した。実施例1 カルボキシフラーレン(2,2−フラーロマロン酸)の合成および性質 ジエチル2,2−フラ−ロマロン酸エステル 新しく蒸留したトルエン(1, 000ml)に、C60(1g、1.39mmol)を添加し、透明で紫色の溶液が得ら れるまで数分間撹拌した。ジエチル臭化マロン酸(0.474ml、2.78mmol )を、撹拌中の溶液に滴下した。0.526ml(3.475mmol)のDBU(1 ,8−ジアゾビシクロ[5,4,0]−ウンデカ−7−エン)をフラーレン溶液 に添加すると、色が紫色から暗赤色に変化した。室温で曝気しながら一晩撹拌し た後、アンモニウム塩を除去するため溶液を濾過し、溶媒を真空蒸発させた。残 渣を少量のクロロホルムに溶解し、シリカゲルカラム(充填物質は、メルク(Me rck)の70−230メッシュまたは230−400メッシュのフラッシュクロ マトグラフィーゲルであった)の最上部に添加した。トルエン/ヘキサン(1: 1)からトルエン(100%)までの勾配を用いて、フラーレン生成物を溶出さ せた。最初の溶出で、未反応のフラーレン、一価付加物、二価付加物、三価付加 物、多価付加物という5つの画分が得られた。各画分の溶媒を真空除去し、固体 の残渣を、純粋になるまで繰り返しクロマトグラフィーにかけた。再分離により 、二価付加物および三価付加物を含有する画分から、2つの主要生成物が得られ た。 2,2−フラーロマロン酸 単一のエステル付加物異性体(100mg)を含む 試料を、窒素下、トルエン(50ml)に溶解した。次に、20:1モル過剰のN aHを添加した。100℃で2〜3時間撹拌した後、熱い溶液に1mlのメタノー ルを滴下し、気体を激しく発生させた。同時に、ナトリウム塩の定量的な沈殿が 起こった。遠心分離により塩を収集し、真空下で乾燥させた。乾燥した化合物を 2M H2SO4で洗浄し、次に水で洗浄した。対応するエステルのマロン酸誘導体 である生成物を、一晩真空下で乾燥させ、微細な茶色の粉末を得た。 三価付加フラーレンエステルのO−3a鏡像異性体を含む試料について、質量 分析を行った。次に、このエステルを加水分解し、酸性化し、最終的にカルボキ シフラーレン化合物、C60(C(COOH)2)3を形成した。精製されたC60エステ ルのプロトンNMRおよび質量スペクトル(それぞれ、図2および3)は、 試料が、2,2−フラーロマロン酸エステルの単一の異性体(質量=1194/ 1195のO−鏡像異性体)を、付加物の分解により生じた少量のC60(質量= 720)と共に含むことを示している。本明細書には、O−3a鏡像異性体であ るもとの化合物の結果を記載した。他の鏡像異性体R−3bを用いたより最近の 研究で、それも有効な神経防御剤であることが示されている。 カルボキシフラーレンの溶液は、半透明の茶色であった。しかし、0.45( mナイロンフィルターで濾過した濃縮溶液(50mM)は、フィルター上に全く残 渣が残らず、真の溶液であることが示された。対照実験で、化合物は比色LDH アッセイを妨害しないことが確認された。25mMまでのカルボキシフラーレン溶 液は、実験溶液のpHを変化させなかった。 実施例2 興奮性アミノ酸の毒性およびフラーレノールの適用 電子常磁性共鳴分光法により、C60(C(COOH)2)n化合物が、ヒドロキシル ラジカルもスーパーオキシドラジカルもどちらも除去することができる、強力な フリーラジカル捕捉剤であることが証明された。図4は、C60(C(COOH)2)3 のフリーラジカル捕捉活性を示す、EPRスペクトルA〜Eを示す。スペクトル AおよびBは、それぞれ、15分間にH22により生じたヒドロキシルラジカル (スピンアダクト:DMPO−OH()、およびH22と共に150(MのO−3 a異性体が含まれている場合の、このOHシグナルの除去を示す。スーパーオキ シドラジカル(O2 (-)も、C60(C(COOH)2)n化合物により効率的に捕捉さ れた。DMPO−OOHというスピンアダクトを形成するO2 (-は、キサンチン オキシダーゼをキサンチンと共にインキュベーションすることにより生成させた (スペクトルC)。40(MのO−3a異性体または40(MのR−3b異性体の いずれかと共にインキュベーションすることにより、スーパーオキシドラジカル が除去された(それぞれ、スペクトルDおよびE)。n=1または2のその他の水 溶性C60(C(COOH)2)n化合物のEPR解析で、それらもまた効率的なフリー ラジカル捕捉剤であることが確認された(データは示していない)。 少なくとも50mMまで水に溶解するヘキサカルボキシル化された化合物 C60(C(COOH)2)3は、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)および (−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソオキサゾールプロピオン酸 (AMPA)への曝露により生じた興奮毒性損傷から、皮質ニューロンを防御し た。ジカルボキシフラーレン誘導体およびテトラカルボキシフラーレン誘導体は 、水溶液への溶解性が低く、神経防御活性を有してはいたが、ヘキサカルボキシ 誘導体よりは神経防御剤としての有効性が低かった。 神経防御の評価のため、カルボキシフラーレン(3〜300(M)を、上記の ニューロンと星状膠細胞との共培養物へNMDAと共に適用した。カルボキシフ ラーレンの存在下での、NMDAへの短時間曝露は、培地をHBBSSで3回交 換し、その後50μM〜500μM NMDAおよびカルボキシフラーレンを1 0分間添加することにより行った。培地をMSで4回交換することにより、NM DAおよびカルボキシフラーレンを除去し、培養物を湿度の高いCO2(5%)、 37℃のインキュベーターに24時間放置し、その後傷害の程度を調べた。 皮質ニューロン損傷を生じさせるために、通常、5〜100(M AMPAへ の長時間(24時間)の曝露を用いる。他の実験系列で、神経防御の評価のため 、カルボキシフラーレン(3−300(M)を、上記のニューロンと星状膠細胞 との共培養物へAMPAと共に適用した。培地をMSで2回交換した後、AMP Aおよびカルボキシフラーレンを添加し、培養物を37℃のインキュベーターに 戻した。内因性のグルタミン酸放出によるNMDAレセプターの二次的な活性化 を防ぐため、AMPAおよびカルボキシフラーレンと共に、NMDAレセプター アンタゴニスト、MK−801 (10(M)を含ませた。 NMDAまたはAMPAの投与から24時間後に、200〜400xの位相差 顕微鏡、および染色細胞から培養培地への乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)流出 の測定により、ニューロン死を調べた(Koh and Choi,1987)。細胞死の定量は、 トリパンブルーまたはプロピジウムイオダイド染色、および細胞計数により、い くつかの実験で確認した。 C60(C(COOH)2)3についての結果を図5および6に示す。C60(C(COO H)2)3は、NMDA(図5)およびAMPA(図6)により誘導された興奮毒性 ニューロン損傷に対する強力な神経防御を示した。 C60(C(COOH)2)3(300(M)は、現在までに行われた全ての実験で少な くとも60%、NMDAによるニューロン死を減少させ、いくつかの実験ではほ ぼ完全に防御した。洗浄された対照に存在するLDHの量を差し引き、NMDA 毒性に特異的なシグナルを得た。NMDAのみの場合に生じた細胞死の百分率と してデータをグラフにした。この曝露により、各培養で全ニューロンの51(9 、44(6、および88(14%が死亡した。平均値(S.D.。*=NMDAに 対してp<0.05(多重比較のため、ANOVAの後、スチューデントニュー マンクールズ検定を行うことにより決定)。3回の実験からのプールされたデー タ(図5)は、ニューロン細胞死が75%減少したことを示している。 C60(C(COOH)2)3は、100(Mで、AMPAによるニューロン細胞死を >80%減少させた(図6)。放出された内因性のグルタミン酸によるNMDAレ セプターの二次的活性化を防ぐため、AMPAと共に、MK−801(10(M )を含ませた。値は、平均値(SEMである。1回の実験当たりn=3〜4)で あり、4回の実験からのデータをプールした。全ニューロン/培養物の40〜7 0%であった、AMPA/MK−801のみの場合に生じた細胞死に対する百分 率としてデータをグラフにした。*=AMPAに対してp<0.05(多重比較の ため、ANOVAの後、スチューデントニューマンクールズ検定を行うことによ り決定)。 本明細書に記載の実験は、本発明者らの知る限り、細胞防御剤または抗酸化剤 としての、これらの化合物の最初の使用である。 実施例3 45 Ca2+トレーサー実験 NMDAにより誘導されるニューロン細胞損傷に対する防御が、NMDAによ り誘導されるカルシウム流入の減少によるのではないことを確認するため、45C a2+トレーサー実験を実施した。培養物をHBBSSで2回洗浄し、その後、45 Ca2+トレーサー(0.5Ci/培養ウェル;NEN,Boston,MA)を含むHBB SS中、単独で、またはC60(C(COOH)2)3と共に、NMDA(300(M) に曝露した。10分後に、培地を未標識HBBSSで4回交換す ることにより曝露を中止した後、0.2%硫酸ドデシルナトリウム(SDS)の 添加により細胞を溶解させた。細胞を2時間SDS中に放置した後、溶解物をシ ンチレーションバイアルに移した。各培養ウェルをさらにSDSで洗浄し、その 洗浄液をバイアルに添加し、(−計数を行った。 図7の結果は、カルボキシフラーレンがNMDAレセプターアンタゴニストで はないことを示している。NMDAと共に最大300(MのC60(C(COOH)2 )3を同時適用しても、45Ca2+の蓄積は影響を受けなかった。基底45Ca2+を全 ての条件から差し引き、NMDAレセプター活性化に特異的な45Ca2+増加を得 た。平均値(SEM,n=4) 実施例4 血清欠乏によるアポトーシス性ニューロン死 グリア欠損培養物中の皮質ニューロンは、血清を除去してから24〜48時間 後にアポトーシス性細胞死を受けるが、これは、細胞体萎縮、ニューロン突起の 断片化、およびヘキスト(Hoechst)33258染色によるクロマチン縮合のよ うな形態学的な変化により特徴付けられる(Dugan et al,1995)。血清欠乏によ るアポトーシス性ニューロン死も、ヘキサカルボキシフラーレンの同時適用によ り軽減された。この損傷は、DNAのラダー形成、クロマチンの凝縮、細胞の萎 縮、アポトーシス小体の形成、および巨大分子合成阻害剤による防御を含む、ア ポトーシスの典型的な特徴を有することが示されている。血清含有増殖培地をア ミノ酸(グルタミンを除く)を添加した平衡塩溶液で交換することにより、1% 未満の星状膠細胞を含む培養物中の皮質ニューロンから血清を除去した。洗浄さ れた対照を、BSS中に2%ウシ胎児血清、2%ウマ血清を含む培地に戻した。 24および48時間後、ニコン(Nikon)倒位顕微鏡を用いて、100〜400 xで位相差光学を用いて細胞の写真を撮影した。 さらに、血清除去の48時間後、もはやトリパンブルーを排除することができ ない細胞を計数することにより、ニューロン細胞死を決定した。図8に示されて いるように、血清除去の開始から48時間後に、もはやトリパンブルーを排除す ることができない細胞を計数することにより決定されたニューロン細胞死は、ニ ューロン死の著しい減少を示した。10(M C60(C(COOH)2)3で処理 された細胞は、ニューロン死の50%の減少を示した。血清含有培地で維持され た洗浄された対照培養物には、ほとんど死亡が見られなかった。値は平均値(S EM。1回の実験当たりn=3〜4)である。この実験は、3回の実験のうちの 代表的なものである。*=血清欠乏に対してp<0.05(多重比較のため、AN OVAの後、スチューデントニューマンクールズ検定を行うことにより決定)。 実施例5 60上のカルボキシル基の極性位置が神経防御効力を改善する60(C(COOH)2)3の2つの位置異性体、O−3aおよびR−3bを、ラン パースおよびヒルシュの方法(Lamparth and Hirsch(1990))に従い、合成し、 精製した。これらの化合物の純度をNMRおよびUV/可視スペクトル分析によ り確認した。O−3a化合物においては、全てのメタノ架橋(methano bridge) がお互いに関してe(エクアトリアル)位にあり(e,e,e)、分子はC3対 称を有することが、1Hおよび13CNMR分光法で示された。化合物R−3bは 、C60骨格の3回軸に関してエクアトル方向の帯上にトランス3位で存在するメ タノ架橋を有しており(トランス−3,トランス−3,トランス−3)、D3対称 を有する。図1に示された3D構造は、O−3a上のカルボキシル基の極性分布 、およびR−3b上のカルボキシル基のエクアトリアル分布を図示している。 図9は、スピントラップ/EPRスペクトルから判断されるように、これら2 つの異性体が化学的には同様のOHフリーラジカルおよびO2 ・-フリーラジカル の捕捉能を示すことを示している。図9は、スピントラッピング剤として100 mM 5,5−ジメチル−1−ピロリン−N−オキシド(DMPO)を用いた、O Hラジカル(フェントン(Fenton)反応によりFe2+存在下100μMH22か ら合成)およびO2 ・-ラジカル(キサンチン+キサンチンオキシダーゼから合成 )のEPRスペクトルを示している。ヒドロキシルラジカル(左のスペクトル) :DMPOのみ(上)、4μM O−3a(中央)、4μMR−3b(下)の存在 下のOH。スーパーオキシドラジカル(右):DMPOのみ(上)、400μM O−3a(中央)、400μM R−3b(下)の存在下のO2 ・-。矢 印は、空洞共振器内の未知のラジカルによる偽シグナルである。試料は、ブルー カー(Bruker)200、X−バンドEPRスペクトロメーターで、石英フラット セル(60×10×0.25mM)で分析した。設定は、電力=1.6mW、モジュ レーション(modulation)=1G、フィールドモジュレーション(field modulat ion)=100Hz、R.G.=3.2×105。 EPRの結果は、O−3a異性体およびR−3b異性体両方が、ほとんどの他 のフリーラジカル捕捉剤に関して報告されている濃度よりも100から1000 倍低い濃度で、OHの極めて強力な捕捉剤であることを示している。OHに対 するカルボキシフラーレンの捕捉能は、O2 ・-ラジカルに対する効力よりも10 倍強い。 O−3a異性体およびR−3b異性体は、EPR解析では同等の抗酸化剤であ るが、O−3a化合物は、生物学的には、R−3bよりも、NMDAレセプター およびAMPAレセプターにより媒介される損傷に対する効果が高い。これらの 結果は、図10に示されている。図10は、O−3aは、NMDAの適用により 生じる損傷からのわずかに良好な防御を与えるが(A)、AMPAにより誘導され るニューロン死に対して実質的により良好な防御を与える(B)ことを示してい る。値は、平均値±SEM。各条件でn=8〜12。*=未処理損傷条件に対し てp<0.05(多重比較のため、ANOVAの後、スチューデントニューマン クールズ検定を行うことにより決定)。**=p<0.05で、O−3aとR−3 bに有為差あり。図10は、マウス脳由来の脂質へO−3aまたはR−3bのい ずれかと共に取り込まれたスピン標識脂質(5−または16−ドキシルケトステ アリン酸)のEPRスペクトル(C)も示している。スピン標識は、成体マウス 脳から抽出された脂質へ、1:100の割合で添加した。EPRの設定は、図9 に関する説明に記載したものと同一である。いずれの異性体も、5−ドキシル基 のオーダーパラメーター(S)にシフトを生じたが、O−3aはより大きなSの 変化を生じた(表1)。O−3aはまた、16−ドキシルケトステアリン酸からの 脂質状態シグナルも、R−3bより大きく変化させ、このことから、O−3aが 、脂質の不規則度または流動性を増大させることが示された(表1)。いずれの結 果も、O−3aがR−3bよりも大幅に脂質二重層に侵入しやすいこ とを示唆している。 NMDAレセプターおよびAMPAレセプターにより媒介される損傷からニュ ーロンを防御する活性が高いのに加え、O−3aは、内皮細胞培養物および肝細 胞におけるこのような損傷から、R−3bより強化された防御を提供した。この 違いは、明らかに、O−3a異性体の方が、R−3bよりも膜に侵入する能力が 高いためである。O−3aの極性が、細胞膜への侵入を容易にしている。このよ うな膜へ侵入する能力は、O−3aが、R−3bよりも良好な脂質過酸化からの 細胞膜の防御を与えることを示唆している。したがって、C60誘導体の防御効率 にとって、官能基の位置(極性vs周囲性(circumferential))は重要である。 実施例6 筋萎縮性側索硬化症のトランスジェニックモデルにおける生存に対するカルボキ シフラーレンの効果 運動ニューロン疾患による死亡の最も一般的な死因である、ALSは、10, 000人に1人という割合で発症する。家族性型の疾患(FALS)は、通常、 常染色体優性であって、症例の10〜15%を占めている。1993年に、重要 な進展があり、FALSを有するいくつかの家族で、Cu,Zn−SOD(so dl)遺伝子の変異が同定され(Rosen et al.,1993)、その後の研究で、いくつ かの型のFALSでは、変異SOD1により活性酸素(ROS)生成が増加する ことが、ALSの原因であるという仮説が立てられた。 ガーニー(Gurney)とその共同研究者らは、FALS家族に見出されるG93A 点突然変異を有するマウスを開発し(Gurney et al,1994)、G93Aトランスジェ ニックマウスのGI系統は、ヒトFALSの特徴の多くを示す。18コピーを有 し、野生型動物の4倍のSOD活性を有するGI系統は、3〜4ヶ月齢で、後肢 の虚弱、グルーミング損傷、および側腹に沿った痩せと共に、運動ニューロン死 を発症する。罹患したマウスは、5ヶ月齢までに死亡した(Gurney et al,1994) 。 FALSを処置する能力を決定するため、FALSマウス(Gurney GI系統) の処置にC60(C(COOH)2)3を使用した。10週齢で、C60(C(COOH)2)3 (>90%O−3aからなる異性体の混合物)または生理食塩水を含有するアル ゼット(Alzet)ミニ浸透圧ポンプ(28日、6(l/日、15mg/kg/日)を腹 腔内に埋め込んだ。14週齢の時点で、ポンプを交換した。広い場所での歩行の ビデオテープによる評価を行い、ブレスナハン(Bresnahan)スケールを用いて 脊髄損傷スコアを決定した(Basso et al.,1995)。ガーニーとその共同研究者ら により報告されたように、これらの動物は、約90日齢までに運動に関係した症 状を表し、125日齢〜145日齢の間に瀕死の状態となる。 図11は、生理食塩水または15mg/kg/日のカルボキシフラーレンを含む腹腔 内ミニ浸透圧ポンプで処置されたFALSマウスの生存曲線である。これらの結 果は、C60(C(COOH)2)3で処置された群では、死亡が8±2.2日遅延され たことを示している(t検定によりp=0.041)。C60(C(COOH)2)3処置 されたFALSマウスでは、症状の出現も遅く なった。8日という生存の延長は、t検定で統計的有意に達していた(p=0. 041)。ポンプを埋め込まれなかったFALSマウス(123日、n=4)ま たは生理食塩水を含むポンプで処置されたFALSマウス(125日、n=6)に ついては、生存に違いはなかった。さらに、カルボキシフラーレン(15mg/kg/ 日)で2ヶ月間処置を受けた野生型動物(n=6)には、健康または行動に関す る有害な効果は見られず、未処置の同腹子と同程度に活発で、体重も類似してい た(同性内)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07C 61/125 C07C 61/125 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S D,SZ,UG),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ ,MD,RU,TJ,TM),AL,AU,BA,BB ,BG,BR,CA,CN,CZ,EE,GE,HU, IL,IS,JP,KP,KR,LK,LR,LT,L V,MG,MK,MN,MX,NO,NZ,PL,RO ,SG,SI,SK,TR,TT,UA,UZ,VN, YU (72)発明者 リン,ティエン―サン・トム アメリカ合衆国、ミズーリ 63017、チェ スターフィールド、セイルズヴィル・ドラ イブ 180 (72)発明者 ルー,ティエン―ヤー 台湾 117、タイペイ、セクション 4、 シン・ハイ・ロード、レーン 101 143

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.グルタミン酸NMDAレセプターによる刺激によりニューロンから放出され るフリーラジカル酸素種により引き起こされる疾患の制御または処置のための医 薬を製造するための、次式 C60(C(COOH)2)n I [式中、C60はバックミンスターフラーレンであり、nは1〜4である]のカル ボキシル化誘導体および薬学的に許容されるその塩、エステル、およびアミドの 使用。 2.疾患が、発作、低血糖症、てんかんの間に起こるような低酸素症/虚血など の急性神経学的発作、またはハンチントン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索 硬化症(ALS)およびAIDSの神経変性効果などの神経変性疾患のような神 経毒性損傷を含む、請求項1に記載の式Iの化合物の使用。 3.式Iにおいてnが3である、請求項1または2に記載の使用。 4.一つまたは複数の請求項1で定義した式Iの化合物または薬学的に許容され るその塩、エステル、およびアミドと、処置に不活性な担体物質とを含む医薬。 5.発作、低血糖症、てんかん、もしくは外傷の間に起こるような低酸素症/虚 血などの急性神経学的発作、またはハンチントン病、アルツハイマー病、筋萎縮 性側索硬化症(ALS)およびAIDSの神経変性効果のような神経変性疾患に より引き起こされる慢性ニューロン損傷の制御または処置のための、請求項4に 記載の医薬。 6.式C60(C(COOH)2)n[式中nは1〜4の整数である]の化合物、薬学的 に許容されるその塩、および薬学的に許容されるそのエステルと、薬学的に許容 される担体とを含む組成物を患者に投与することにより、神経毒性損傷に罹患し た患者において、神経毒性損傷を処置する方法であって、該組成物中に該化合物 が該神経毒性損傷を処置するのに有効な量で含まれている、方法。
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