JP2000504114A - 膀胱癌の検出及び評価方法 - Google Patents
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Abstract
(57)【要約】
本発明は、膀胱癌を検出し、評価するための新規な方法に関する。本発明の方法は、ヒアルロン酸(HA)とヒアルロニダーゼ(HAアーゼ)の標準化量が膀胱癌の検出、そのグレードの評価、その治療効力と腫瘍再発とのモニターリングのための診断マーカーであるという発見に基づく。
Description
【発明の詳細な説明】
膀胱癌の検出及び評価方法
発明の背景
1.発明の分野
本発明はヒアルロン酸(HA)とヒアルロニダーゼ(HAアーゼ)とを用いて
、膀胱癌を検出し、評価するための新規な方法に関する。
2.関連技術の説明
膀胱癌腫は、合衆国において毎年新たな症例51,000件と死亡11,00
0件の原因である、尿路の最も一般的な癌である。転移細胞癌腫(TCC)は膀
胱腫瘍の〜90%の割合を占める。これらの腫瘍はそれらの進行能力において不
均一である。例えば、ある種のTCCは良性に挙動するが(低グレード、G1腫
瘍)、他の腫瘍は中程度(G2腫瘍)から高度侵襲性(G3腫瘍と上皮内癌(C
IS))である。高グレード腫瘍は一般に迅速に転移し;実際に、臨床発現(例
えば、血尿、排尿時剌激症候群(irritative voiding symptom))時に、高グレー
ド膀胱腫瘍を有する多くの患者では、侵襲性疾患が既に存在する。
TCCの2つの最も重要な予後ファクターはグレードとステージ(侵襲の深さ
を意味する)である(American Joint Committeeon
Cancer:「尿生殖器部位における癌のステージング」,Manual
for Staging Cancer,第3版,194〜195頁,J.B.
Lippincott Co.,フィラデルフィア,1988)。低グレード(
G1)腫瘍は殆ど粘膜に限定され(ステージTa)、<2%の進行見込み(chanc
e of progression)を有する(Heney,「表在性膀胱癌の自然病歴」,Ur
ol.Clin.North Am.,19:429〜435頁,1992;H
eneyとFlanagan,「表在性膀胱癌の進行と再発」,J.Urol.
,130:1083〜1086,1983)。中程度グレード(G2)腫瘍は非
侵襲性(Ta)から侵襲性(ステージT1〜T4)までの範囲である。G2,T
a腫瘍は〜11%の進行見込みを有する(Heney,「表在性膀胱癌
の自然病歴」,Urol.Clin.North Am.,19:429〜43
5頁,1992)。上皮内癌(CIS)を例外として、大抵の高グレード腫瘍は
少なくともT1ステージ(固有層を侵襲する)で最初に検出されるので、侵襲性
である。腫瘍による筋肉侵襲(ステージT2)は、これらの患者の50%が根治
的な手術にも拘わらず診断から2年間以内に遠位転移を発現し、これらの患者の
60%が治療されたにも拘わらず5年間以内に死亡するので、高危険性である(
HeneyとFlanagan,「表在性膀胱癌の進行と再発」,J.Urol
.,130:1083〜1086,1983;Friedell等,「膀胱の上
皮内癌腫に関する研究会の要約」,J.Urol.,136:1047〜104
8,1986;Soloway,「侵襲性膀胱癌:主要療法の選択」,Semi
n.Oncol.,17:551〜554,1990)。高グレードTCCの悪
性の特質のために、筋肉侵襲の前に、それらを初期検出することは有利な予後の
ために重要である。
したがって、腫瘍の存在を早期に検出することのみが重要であるのではなく、
このような厳しい予後を伴って現れる高グレード腫瘍を同定することも重要であ
る。腫瘍再発も膀胱癌の特徴である。それ故、原発腫瘍の根治にも拘わらず、治
療効力と再発をモニターするために患者を厳密にフォローすべきである(Hen
ey,「表在性膀胱癌の自然病歴」,Urol.Clin.North Am.
,19:429〜435頁,1992)。
膀胱癌検出のための現在の方法は、膀胱鏡検査法、膀胱洗浄及びバイオプシー
を含む。これらの方法は侵襲性であり、何らかの形の麻酔を必要とする。尿細胞
学の適用も可能であるが、その主観的性質のためにその特異性は低い。例えばD
NA倍数性(DNA ploidy)、p53突然変異、マイクロサテライトDNA、β−グ
ルクロニダーゼ、塩基性FGFレベル、自己分泌運動性因子(autocrine motilit
y factor)受容体等のような、若干の他のマーカーが膀胱癌に結合することが判
明している(SidranskyとMessing,「膀胱癌における分子遺伝
学と生化学的機構」,Urol.Clin.North.Am.,19:629
〜639,1992;Mao等,「マイクロサテライトDNAによる原発膀胱癌
の分子検出」,Science,271:659〜662,1996;
Nguyen等,「膀胱癌患者の尿中の血管新生ペプチド塩基性繊維芽細胞増殖
因子のレベル上昇」,J.Natl.Cancer Inst.,85:241
〜242,1993;Esrig等,「膀胱癌における核p53の蓄積と腫瘍進
行」,N.Engl.J.Med.,331:1259〜1264,1994;
Ho,「原発性尿路悪性疾患のスクリーニングとフォローアップとにおける尿β
−グルクロニダーゼ」,J.Urol.,154:1335〜1338,199
5;Korman等.,「膀胱の転移細胞癌腫のための可能な尿マーカーとして
の自己分泌運動性因子受容体」,J.Urol.,154:347〜349,1
995)。しかし、これらの大部分は診断マーカーとして臨床的にまだ用いられ
ていない。
現在、膀胱癌に関する3種類の非侵襲性診断試験が合衆国において研究中であ
る。血尿家庭スクリーニング試験は高い感度を有するが、疑陽性を誘発する、良
性の尿生殖器(GU)状態(腎臓結石、良性前立腺肥大等)のために特異性は低
い(Britton等,「微量に存在する尿出血の検出による膀胱癌スクリーニ
ングについての共同体研究」,J.Urol.,148:788〜790,19
92;Messing等,「血尿家庭スクリーニング:反復試験結果」,J.U
rol.,154:57〜61,1995)。第2試験はBard BTA L
atex凝集反応分析である。膀胱腫瘍再発をモニターするために、合衆国にお
いて、この試験法に関するマルチセンター試験がおこなわれた。結果は、膀胱腫
瘍、さらに重要には高グレードTCCを検出するためのこの試験の感度が僅か〜
40〜50%であることを示す(Sarosdy等,「再発性膀胱癌をモニター
し、診断するためのBTA試験法を用いたマルチセンター試験の結果」,J.U
rol.,154:379〜384,1995;米国特許第5,264,370
号)。90人の患者と第3試験とを含む他のマルチセンター研究において、So
loway等は、NMP22試験が膀胱腫瘍再発の検出に70%の総合感度を有
することを示している(Soloway等,「手術後の尿路潜在的(occult)又は
迅速に再発する転移細胞癌腫の検出における新しい腫瘍マーカーNMP22の使
用」,J.Urol.,156:363〜367,1996)。したがって、現
在まで、高い感度と特異性とによって膀胱腫瘍を検出し、及び/又はそのグレ
ードを評価することができる非侵襲性試験は存在しない。
当該技術分野における上記問題に留意して、本発明者は、膀胱癌患者の生物学
的流体(例えば、尿標本)中に特異的に発現されるある種の“分子決定因子”の
レベルを測定することによる、膀胱癌を検出するための非侵襲性方法を開発した
。より詳しくは、本発明の方法は、生物学的流体(特に尿)のサンプル中のヒア
ルロン酸及びヒアルロニダーゼのレベルが膀胱癌の存在とグレードとに関係する
という発明者の発見に基づく。
ヒアルロン酸(当該技術分野ではヒアルロネート及びヒアルロナンとしても知
られ、HAと略記される)は、N−アセチル−D−グルコサミンとD−グルクロ
ン酸との交互単位を有する直鎖非分枝多糖鎖を含むグリコサミノグリカンである
。HAは、細菌と動物の両方を含めた、種々なタイプの生物学的物質中に偏在す
る。ヒトにおいて、HAは臍帯、眼の硝子体液、軟骨及び滑膜流体中に高濃度で
存在する。少量のHAはCSF、リンパ、血液、血清及び尿中に存在する。HA
のレベルは例えば慢性関節リウマチ、肝硬変及びWilms腫瘍のような疾患に
関係する。HAは一般に非特異的腫瘍に関係するが、その使用は今までは、特定
の臨床的腫瘍の発見、治療及び管理に適用されていない。
HAは癌を含めた幾つかの病態生理学的状態に関係することが知られている。
例えば、HAレベルはある種の動物腫瘍モデルで上昇することが判明している[
例えば、ウサギV2癌腫、Knudson等,「腫瘍関連ヒアルロナンの役割と
調節」,The Biology of Hyaluronan(J.Whel
an編集),150〜169頁,New York,WileyChichis
ter(Ciba Foundation Symposium,143),1
989)並びにヒト癌(例えば、肺、Wilms腫瘍、胸部等),Knudso
n等,上記文献]。
腫瘍組織中で、HAは水和時に膨張して、腫瘍細胞移動のための間隙を開ける
(Knudson等,「腫瘍関連ヒアルロナンの役割と調節」,TheBiol
ogy of Hyaluronan(J.Whelan編集),150〜16
9頁,New York,Wiley Chichister(Ciba Fo
undation Symposium,143),1989)。
さらに、腫瘍細胞はある種の細胞表面受容体を介して相互作用することによって
、HAマトリックス上を移動する(例えば、CD44:Thomas等,「ヒア
ルロネート上のヒト黒色腫細胞の移動はCD44発現に関係する」,J.Inv
est.Dermatol.,100:115〜120,1993)。HAはま
た、免疫監視機構から腫瘍細胞を保護する、腫瘍細胞周囲にハロ(halo)を形成す
る(Hobarth等,「マイトマイシンCとアジュバント ヒアルロニダーゼ
とによる表在性膀胱癌の局所化学的予防法」,Europ.Urol.,21:
206〜210,1992)。さらに最近では、HAの小フラグメント(〜3−
25二糖単位)が血管新生を促進することが判明している(West等,「ヒア
ルロン酸の分解生成物によって誘導される血管新生」,Science,228
:1324〜1326,1985;WestとKumar,「内皮細胞増殖と単
層完全性とに対するヒアルロネートとそのオリゴ糖との効果」,Exp.Cel
l Res.,183:179〜196,1989)。本発明者の1人による以
前の研究は、10〜15二糖単位のHAフラグメント(F1フラグメント)がウ
シ大動脈内皮細胞の増殖を剌激することを示している。同様な大きさのフラグメ
ントが内皮細胞移動(endothelial cell migration)と小管(tubule)形成とを促進
することも判明している(BanarjeeとToole,「内皮細胞形態形成
においてタンパク質と結合するヒアルロナン」,J.Cell Biol.,1
19:643〜652,1992)。
本出願において、本発明者は、正常個人と膀胱癌患者との尿中のHAレベルと
、正常な膀胱組織と腫瘍組織とから調製した抽出物中のHAレベルとを以下で考
察するように測定する。同様に、以下で考察するように、本発明者は正常な個人
、膀胱癌患者、及び他の尿生殖器(GU)状態を有する患者の尿中に存在するH
A種のプロフィルを検査する。さらに、かれらは、尿中に存在するHA又はHA
フラグメントがヒト内皮細胞の増殖に影響を与えるかどうかを評価する。
本発明者は本出願において、G1、G2及びG3腫瘍を有する膀胱癌患者の尿
中HAレベルが、正常な個人及び他の尿生殖器(GU)状態を有する患者の尿中
HAレベルに比べて、有意に上昇する(例えば、4〜9倍)(P<0.001)
ことを開示する。以下で考察するように、本発明者は、治療前と治療後の尿中H
Aレベルの比較を用いて、治療効力をモニターすることができることも発見した
。例えば、治療後の尿中HAレベルの上昇は持続的な膀胱癌と、後の時点におけ
る可能な再発(relapse)とを示唆する。尿中HAレベルは、最初の治療後のフォ
ローアップ通院中の膀胱癌再発をモニターするためにも有用である。HAレベル
は膀胱腫瘍組織中でも上昇する(例えば、3〜5倍)ので(P<0.001)、
尿中HA濃度の上昇は腫瘍関連HAレベルの上昇に直接相関する。正常な個人と
膀胱癌患者との尿中HA種のプロフィルは異なる。中程度サイズのHA種のみが
正常及び低グレード膀胱腫瘍患者の尿中に存在するが、高グレード膀胱癌患者の
尿は高分子量の血管新生HAフラグメントと小さい血管新生HAフラグメントの
両方を含有する。
本発明者は本出願において、これらの尿中HAフラグメントが原発性ヒト微細
血管(microvessel)内皮細胞においてマイトジェン反応(mitogenic reaction)を
剌激する(例えば、2〜4倍)ことをも開示し、小さいHAフラグメントが内皮
細胞機能を調節することによって、腫瘍血管新生を調整しうることを示唆する。
本発明者は、高グレード膀胱癌患者の尿中の小さいHAフラグメントがこれらの
患者の尿中にヒアルロニダーゼ活性が存在することを意味しうることを仮定した
。
ヒアルロニダーゼ(HAアーゼ)は、HA中のN−アセチルグルコサミン結合
を加水分解することによってHAを分解するエンドグリコシド酵素(endoglycosi
dic enzyme)である。ヒアルロニダーゼによるHAの制限された分解は、血管新
生性である特定長さ(〜3−25二糖単位)のHAフラグメントを発生させる(
West等,「ヒアルロン酸の分解生成物によって誘導される血管新生」,Sc
ience,228:1324〜1326,1985)。脊椎動物では、ヒアル
ロニダーゼを2クラスに、即ち、中性pHにおいて活性であるヒアルロニダーゼ
(最適pH5.0)と酸性pH(pH3.5〜4.0)において活性であるヒア
ルロニダーゼとに類別することができる(Roden等,「ヒアルロナン異化作
用の酵素による経路」,The Biology of hyaluronan
,(J.Whelan編集),60〜86頁,New York,Wiley
Chichister(Ciba Foundation Symposium
143),1989;West等,
上記文献;Gold,「ヒト肝臓からのヒアルロニダーゼの精製と性質」,Bi
ochem.J.,205:69〜74,1982;FraserとLaure
nt,「ヒアルロナンのターンオーバーと代謝」,Biology of Hy
aluronan,(J.Whelan編集),41〜59頁,New Yor
k,Wi1ey Chichister(Ciba Foundation S
ymposium 143),1989;Zhu等,「哺乳動物ヒアルロニダー
ゼの分子クローニングはヘモペキシン、血清ヘム結合タンパク質によるアイデン
ティティを明らかにする」,J.Biol.Chem.,269:32092〜
32097,1994;Lin等,「精子原形質膜タンパク質PH−20のヒア
ルロニダーゼ活性は、卵子を囲む卵丘層(cumulus layer)を精子が透過するのを
可能にする」,J.Cell Biol.,125:1157〜1163,19
95)。例えば、睾丸ヒアルロニダーゼは中性型であるが、肝臓ヒアルロニダー
ゼは酸性の最適pHを有する。HAとヒアルロニダーゼの両方の協同作用(conce
rted actions)は胚発達、脈管形成、脈管再構築、免疫監視機構及び腫瘍進行中
に重要な役割を果たすことが知られる(McCormickとZetter,「
血管新生と転移における接着性相互作用」,Pharmacol.Ther.,
53:239〜260,1992;Hobarth等,「マイトマイシンCとア
ジュバント ヒアルロニダーゼとによる表在性膀胱癌の局所化学的予防法」,E
ur.Urol.,21:206〜210,1992;Knudson等,「腫
瘍関連ヒアルロナンの役割と調節」,The Biology of Hyal
uronan(J.Whelan編集),150〜169頁,New York
,Wiley Chichester(Ciba Foundation Sy
mposium 143),1989;Lin等,「尿中ヒアルロン酸はWil
ms腫瘍マーカーである」,J.Ped.Surg.,30:304〜308,
1995;Stern等,「Wilms腫瘍患者からの尿中のヒアルロニダーゼ
レベル」,J.Natl.Canc.Inst.,83:1569〜1574,
1991)。本発明者は、前立腺癌においてヒアルロニダーゼレベルが上昇し、
この上昇が前立腺癌の攻撃性(aggressiveness)と相関することを示している(L
okeshwar等,「ヒア
ルロニダーゼ、マトリックス分解酵素と前立腺癌進行との関連」,Cancer
Res.,56:651〜657,1996)。
本発明者は本出願において、G2及びG3腫瘍を有する膀胱癌患者の尿中HA
アーゼレベルが、正常個人、G1腫瘍を有する患者及び他のGU状態を有する患
者の尿中HAアーゼレベルに比べて、有意に上昇する(例えば、5〜8倍)(P
<0.001)ことを開示する。以下で考察するように、本発明者は、治療前と
治療後との尿中ヒアルロニダーゼレベルの比較を用いて、治療効力をモニターす
ることができることも発見した。例えば、治療後に上昇した尿中ヒアルロニダー
ゼレベルは持続性G2又はG3膀胱腫瘍と後の時点での可能な再発とを示す。尿
中ヒアルロニダーゼレベルは、最初の治療後のフォローアップ通院中のG2又は
G3膀胱癌再発をモニターするためにも有用である。G2/G3腫瘍組織中のヒ
アルロニダーゼレベルは正常膀胱及びG1腫瘍組織中のヒアルロニダーゼレベル
よりも高い(例えば、約6〜7倍)(P<0.001)ので、尿中ヒアルロニダ
ーゼレベルの上昇は尿中への腫瘍関連(tumor-associated)ヒアルロニダーゼの分
泌のためである。膀胱腫瘍関連ヒアルロニダーゼ活性は他のヒアルロニダーゼと
は異なり、この活性は4.3の最適pHを有し、Mr65kD(p65)と55
kD(p55)の2種類のタンパク質に帰せられる。
本発明の前に、HAもHAアーゼも膀胱癌に関連づけられていず、これらは膀
胱癌の検出又は評価に用いられていない。しかし、本発明の分析方法を利用する
と、HAとHAアーゼとを膀胱癌を検出し、その特定のグレードを評価するため
の非侵襲性試験に用いることができる。
HA濃度を測定するためのELISA様分析は既に開示されている。例えば、
Goldberg等(米国特許第5,378,637号)は、固体サポートをH
Aで被覆して、軟骨プロテオグリカン(任意の生物学的物質中でHAを結合する
ことが知られる)と共にサンプルをインキュベートし、次に、サンプルを被覆固
体サポートに暴露させることによって、生物学的サンプル中のHAを測定するこ
とができることを述べている。固体HAサポートに結合した軟骨プロテオグリカ
ン量を抗ケラチン硫酸反応性抗体によって測定する。
同様な方法がFosang等によってブタの喉頭軟骨プロテオグリカンを用い
て述べられている(Matrix,10:306〜313,1990)。この論
文はビオチニル化プロテオグリカンG1ドメイン(HA結合領域)を用いるヒア
ルロナンのELISAプレートに基づく分析法を述べている。
ELISA様分析法はSternとSternによって述べられている(Ma
trix,12:397〜403,1992)。この参考文献は、ビオチニル化
HA結合タンパク質、マウス抗ケラチン硫酸抗体、ビオチニル化ヤギ抗マウスI
gG及びアビジン−ビオチン検出系を用いるヒアルロニダーゼ測定を述ベている
。同じ分析法を用いて、Stern等はWilms腫瘍患者の尿中ヒアルロニダ
ーゼレベルを測定している(Stern等,「Wilms腫瘍患者の尿中ヒアル
ロニダーゼレベル」,J.Natl.Canc.Inst.,83:1569〜
1574,1991)。
他のヒアルロン酸測定方法はChichibuによって(米国特許第5,01
9,498号)及びBrandt等によって(米国特許第4,826,776号
)述べられている。
発明の概要
本発明の方法は、尿中のHAとHAアーゼのレベルが膀胱癌を検出し、そのグ
レードを評価し、その治療の効力をモニターするための診断マーカーであるとい
う発見に基づく。
本発明によると、HA及びHAアーゼのレベルの測定はELISA様分析法で
あるので、技術的に簡単である。両方の分析は、充分に確立された方法を用いて
多量に精製されることができるHA結合性タンパク質のみを必要とするにすぎな
い(Tengblad,「固定化ヒアルロネートに対するアフィニティクロマト
グラフィーと、軟骨からのヒアルロネート結合タンパク質の単離へのその適用」
,Biochim.Biophys.Acta,578:281〜289,19
79)。両方の分析は簡単、非侵襲性で、しかも高感度かつ高特異的な試験法で
あり、膀胱癌の検出のために臨床的に適用可能である。HA測定(HA試験)の
ためのELISA様分析法は、腫瘍のグレードに関係なく、膀胱癌を検出する。
HAアーゼ測定(HAアーゼ試験)のためのELISA様分析法は中グレード(
G2)から高グレード(G3)までの膀胱腫瘍を選択的に検出する。
尿中ヒアルロニダーゼ測定はCIS(転移前(pre-invasive)G3膀胱腫瘍)並
びにG2,Ta腫瘍を検出するので、本発明は患者にとって不良な予後で存在す
るG2及びG3膀胱腫瘍を早期に検出するための良好な非侵襲性方法である。
したがって、本発明の1実施態様では、膀胱癌を有すると疑われる患者から回
収された生物学的流体のサンプル(例えば、尿標本)中のHAを定量的に測定す
ることによって膀胱癌を検査する。HAの存在を検出し、測定するために、ラジ
オアッセイ、サンドイッチアッセイ、阻害分析等を含めた、任意の慣用的な分析
方法論を用いることができる。しかし、競合的結合分析によってHAを測定する
ことが好ましい。より好ましくは、本発明の分析はELISA試験法と同じやり
方で機能するが、抗体錯体形成機構(antibody complexing mechanism)を利用し
ない。
例えば、下記工程:
(a)固体サポート(好ましくは、マイクロタイター孔)をHAで被覆する工
程と;
(b)HA結合タンパク質(HABP)を被覆固体サポートと、膀胱癌を有す
ると疑われる患者から回収された生物学的流体のサンプル(例えば、尿サンプル
)の存在下で、HABPが固体サポート上を被覆するHA及びサンプル中のHA
(存在する場合には)と結合することが許されるような条件下で、接触させ、同
サポートと共にインキュベートする工程と;
(c)固体サポート上を被覆するHAと結合したHABP量を測定し、それか
らサンプル中に存在するHA量を算出する工程と
を含む分析方法で膀胱癌を検出することができる。
この実施態様では、被覆HAとサンプル中に含有されるHAとがHABPとの
結合を“完成する”。HAがサンプル中に存在する場合には、例えば基準との比
較によって判定して、少ないHABPが被覆HAと結合する。換言すると、被覆
HAと結合するHABPが殆ど無いことは、サンプル中にHAが存在することを
意味し、これは膀胱癌を暗示する。
固体サポート上を被覆するHAと結合したHABP量を測定し、それからサン
プル中に存在するHA量を算出するための好ましい方法は、結合HABPに関連
した又は結合HABPによって生じるシグナルを検出することである。
例えば、マイクロタイタープレート読み取り機(reader)を用いて、固体サポー
トに結合したビオチニル化HABPの間接的尺度として着色生成物(アビジン−
酵素コンジュゲートと標識基質(labeled substrate)とを用いて、着色生成物を
形成する)の吸光度を測定することができる。HA被覆孔を緩衝剤のみと、HA
又はHA含有サンプルの不存在下でインキュベートすることによって最大吸光度
を得ることができる。次に、HAのng/mlに対して吸光度をプロットするこ
とによって、標準グラフを作成することができる。この標準グラフを用いて、サ
ンプルの各希釈物中のHA濃度(ng/ml)を算出することができる。幾つか
のこのような測定から各サンプル中の平均HA濃度を算出することができる。例
えば、自動化分析又はタンパク質分析キット(BioRad,Richmond
,CA)によってサンプルのタンパク質濃度(mg/ml)を測定することがで
きる。HA濃度をタンパク質含量に標準化して、ng/mgタンパク質として表
現することができる。
例えば、尿中HAレベルを算出するための計算は次のようにおこなうことがで
きる:A x 希釈係数 ÷ mg/ml尿中タンパク質、式中、Aは標準グラ
フから補外されたHA濃度のng/mlである。HAレベルは最終的にng/m
gタンパク質として表現される。低い吸光度読み取り値(reading)は尿サンプル
中のHAの有意な量を暗示し、これ自体は患者の膀胱癌を示唆する。
一般に、サンプル中の約100ng/mgより多いHAの算出は患者における
膀胱癌を示唆する。
HAを用いて膀胱癌を検出するためのこの方法の感度は約88%以上であるこ
とができ(及び100%程度に高いことも可能である)、特異性は約87%以上
であることができる(及び100%程度に高いことも可能である)。本発明のた
めに、特異性は偽陽性(false positive)の測定であると理解され、この場合に1
00%の特異性は偽陽性が存在しないことを意味する(即ち、患者が膀胱癌を実
際に有さない場合には、膀胱癌の存在を示唆しない)。本発明のために、感度は
偽陰性(false negative)の測定であると理解され、この場合に100%の感度は
偽陰性が存在しないことを意味する(即ち、患者が膀胱癌を実際に有する場合に
、
膀胱癌が存在しないことを示唆しない)。
本発明の他の実施態様では、膀胱癌を有すると疑われる患者から回収された生
物学的流体のサンプル(例えば、尿標本)中のHAアーゼを定量的に測定するこ
とによって、膀胱癌を検査し、そのグレードを評価する。HAに関すると同様に
、ラジオアッセイ、サンドイッチアッセイ、阻害分析等を含めた、慣用的な分析
方法論を用いて、HAアーゼの存在を検出して、測定することができる。しかし
、競合的結合分析によってHAアーゼを測定することが好ましい。より好ましく
は、本発明の分析はELISA試験法と同じやり方で機能するが、抗体錯体形成
機構を利用しない。
例えば、下記工程:
(a)固体サポート(好ましくは、マイクロタイター孔)をHAで被覆する工
程と;
(b)膀胱癌を有すると疑われる人から回収された生物学的流体のサンプルを
被覆固体サポートと、サンプル中に存在するHAアーゼ(存在する場合に)が固
体サポートを被覆するHAを分解することを許されるような条件下で接触させ、
同サポートと共にインキュベートする工程と;
(c)HA結合タンパク質(HABP)を被覆固体サポートと、HABPが固
体サポート上を被覆する非分解HAと結合することが許されるような条件下で、
接触させ、同サポートと共にインキュベートする工程と;
(d)固体サポート上を被覆するHAと結合したHABP量を測定し、それか
らサンプル中に存在するHA量を算出する工程と
を含む分析方法で膀胱癌を検出することができる。
この実施態様では、HAアーゼがサンプル中に存在する場合に、HAアーゼは
被覆HAを分解し、例えば基準との比較によって判定して、少ないHABPを被
覆HAと結合させる。この場合に、被覆HAに結合したHABPの低い測定値は
、中グレード又は高グレードの膀胱癌を示唆する。
固体サポート上を被覆するHAと結合したHABP量を測定し、それからサン
プル中に存在するHAアーゼ量を算出するための好ましい方法は、結合HABP
に関連した又は結合HABPによって生じるシグナルを検出することである。
例えば、マイクロタイタープレート読み取り機を用いて、固体サポートに結合
したビオチニル化HABPの間接的尺度として着色生成物(アビジン−酵素コン
ジュゲートと標識基質とを用いて、着色生成物を形成する)の吸光度を測定する
ことができる。HA被覆孔を緩衝剤のみと、HAアーゼ又はHAアーゼ含有サン
プルの不存在下でインキュベートすることによって最大吸光度を得ることができ
る。次に、Streptomyces HAアーゼのmU/mlに対して吸光度
をプロットすることによって、標準グラフを作成することができる。この標準グ
ラフを用いて、サンプルの各希釈物中のHAアーゼ濃度(mU/ml)を算出す
ることができる。幾つかのこのような測定から各サンプル中の平均HAアーゼ濃
度を算出することができる。例えば、自動化分析又はタンパク質分析キット(B
ioRad,Richmond,CA)によってサンプルのタンパク質濃度(m
g/ml)を測定することができる。HAアーゼ濃度をタンパク質含量に標準化
して、mU/mgタンパク質として表現することができる。
尿中HAアーゼレベルを算出するための計算は次のようにおこなうことができ
る:A x 希釈係数 ÷ mg/ml尿中タンパク質、式中、Aは標準グラフ
から補外されたHAアーゼ濃度のmU/mlである。HAアーゼレベルは最終的
にmU/mg総タンパク質として表現される。低い吸光度読み取り値は尿サンプ
ル中に存在する多量のHAアーゼを暗示し、これ自体は患者の中グレード又は高
グレード膀胱癌を示唆する。
一般に、約10mU/mgより多いHAアーゼの算出は患者における中グレー
ド又は高グレード膀胱癌を示唆する。
中グレードから高グレードまでの膀胱癌を検出するためのこの方法の感度は約
85%以上であることができ(及び100%程度に高いことも可能である)、特
異性は約88%以上であることができる(及び100%程度に高いことも可能で
ある)。
低グレード膀胱癌を検出するためには、HA試験とHAアーゼ試験の組合せを
用いることができる。約10mU/mg未満のHAアーゼの算出(被覆HAに結
合した多量のHABPに対応)は低グレード膀胱癌又は膀胱癌が全く存在しない
ことを示唆する。HAアーゼ分析を用いる、本発明のこの実施態様は、低グレー
ド膀胱癌の存在と膀胱癌が全く存在しないこととを区別しない。したがって、H
A分析は低グレード膀胱腫瘍の存在さえも検出することができるが、特定のグレ
ードを区別しないので、HAアーゼ分析と共にHA分析を用いて、患者を検査す
ることが好ましい。したがって、低グレード膀胱腫瘍を検出し、診断するために
は、HA分析とHAアーゼ分析の両方を実施するべきである。HA分析は陽性結
果(即ち、約100mg/mgを越えるHAレベル、腫瘍の存在を示す)を与え
ると考えられるが、HAアーゼ分析は陰性の結果(即ち、約10mU/mg未満
のHAアーゼレベルは、中グレード腫瘍も高グレード腫瘍も存在しないことを示
す)を生じると考えられる。
他の実施態様では、本発明は膀胱癌を検査し、評価するための診断キットに関
する。このキットはHA及び/又はHAアーゼ、HABPとマーカー、又はマー
カーにコンジュゲートしたHABP、並びに生物学的サンプル中のHA及び/又
はHAアーゼの存在の検出に用いるために適した補助試薬を含む。本発明によっ
て考えられる診断キットの例は慣用的なディップスティック試験デバイスである
。
本発明の上記及び他の実施態様は以下でさらに詳細に説明する。
図面の簡単な説明
図1:手術前と手術後の尿中HAレベルを測定することによる、膀胱癌の治療
効力の評価。尿中HAレベルはng/mgタンパク質(平均値±SEM)として
表現する。RC:根治的膀胱切除;PC:膀胱部分切除;TURBT:膀胱腫瘍
の経尿道的切除;IC:膀胱内化学療法。RC後に、患者No.2とNo.9は
、それぞれ、新しい膀胱と回腸導管を受容した。回腸導管と新しい膀胱とを作製
するために用いた腸粘膜が、腸粘膜はHAを含むグリコサミノグリカンを多く含
有するので、この増加を生じたと考えられる。しかし、これらの2患者のHAア
ーゼレベルは〜5分の1の低下を示した(図2:患者No.1と7を参照)。そ
れ故、2方法の組合せが治療効力をモニターするためにより大きく有用である。
図2:手術前と手術後の尿中HAアーゼレベルを測定することによる、高グレ
ード膀胱癌の治療効力の評価。尿中HAアーゼレベルはmU/mgタンパク質(
平均値±SEM)として表現する。用いる略号は図1の記号一覧に記載したもの
と同じである。
図3:HA ELISA様分析の典型的な標準グラフの例。グラフの直線状範
囲の吸光度の読み取り値を生じる尿標本の希釈度を計算のために選択する。標準
グラフの作成に用いたHAはヒト臍帯からのものである。
図4:HAアーゼ ELISA様分析の典型的な標準グラフの例。グラフの直
線状範囲の吸光度の読み取り値を生じる尿標本の希釈度を計算のために選択する
。標準グラフの作成に用いたHAアーゼはStreptomyces種からのも
のである。
図5AとB:ELISA様分析による尿中HAレベルの測定。異なる個人群か
らの尿中HAレベルを以下の実施例2に述べるように測定した。
A:個人のHAレベルの散布図。各カテゴリーにおいて、小点は各個人の尿中
HAレベルを表し、“n”は試験した個人数を表し、GUは例えばBPH(n=
8)、前立腺癌(n=7)、腎結石(n=5)、膀胱炎(n=12)、尿路感染
症(n=8)、前立腺炎(n=2)、副睾丸炎(n=1)及び腎臓外傷(n=2
のような尿生殖器症状を有する患者のカテゴリーを表す。G3カテゴリーはG3
腫瘍(ステージT1〜T4)を有する34人の患者と、9人のCIS患者とを含
む。ダッシュ線は100ng/mgのHA濃度の最低カットオフ限界を表す。
B:種々なカテゴリー間の平均尿中HAレベルの比較。これらの平均レベルは
“A”に表示した個人のHAレベルから算出したものである。結果は平均HAレ
ベルng/mgタンパク質±SEMを表す。
図6AとB:膀胱組織抽出物中のHAレベルの測定。組織抽出物中のHA濃度
は以下の実施例2に述べるようにELISA様分析によって測定した。
A:個人のHAレベルの散布図。本明細書において、G1腫瘍とG2+G3腫
瘍は、それぞれ、低グレードTCCと高グレードTCCと呼ばれる。
B:正常膀胱とTCC組織抽出物のHA濃度(平均値±SEM)。
図7:正常個人と膀胱癌患者の尿中HAプロフィルの検査。正常個人(n=4
)と低グレードTCC(G1腫瘍、n=4)又は高グレードTCC(n=5、G
2、n=2とG3、n=5)を有する患者の尿中に存在するHA種のサイズを、
以下の実施例2で述べるように、Sepharose 6CL−Bカラム上での
ゲル濾過クロマトグラフィーによって測定した。カラムを高分子量HA(Mr2
x1
06 ダルトン)とHAフラグメント、F1(10〜15二糖単位)、F2(2〜
3二糖単位)及びF3(〜2二糖単位)を用いて標準化した。I〜Vは高グレー
ドTCC患者の尿中に存在するHAピークを表す。
図8AとB:HMVEC−L有糸分裂誘発反応(mitogenic response)に対する
HA及びHAフラグメントの影響。HMVEC−L細胞をHA及びHAフラグメ
ントと共に“内皮細胞基礎培地”中で37℃において18時間インキュベートし
た後に、以下の実施例2に述べるように、[3 H]−チミジンと共に2時間イン
キュベートした。
A:HMVEC−L有糸分裂誘発反応に対するin vitroで生じたHA
又はHAフラグメントの影響。対照は添加HA又はHAフラグメントの不存在下
でのDNA中の[3 H]−チミジンの取り込みを表す。対照サンプル中に取り込
まれた[3 H]−チミジン(dpm 1031±87)を100%と指定する。
結果は3通りの測定の平均値である。
B:HMVEC−L細胞の有糸分裂誘発反応に対する高グレードTCC患者の
尿(図7)から単離されたHA及びHAフラグメントの影響(ピークI〜V)。
種々なピーク中に存在するHAの単一濃度(2μg/ml)を用いて、有糸分裂
誘発反応を検査した。対照は添加HAの不存在下での[3 H]−チミジンの取り
込みを表す。対照サンプル中に取り込まれた、dpm 838±49を100%
と指定する。結果は3通りの測定の平均値±s.d.である。
図9:基質(HA)−ゲル分析による尿中ヒアルロニダーゼ活性の検出。尿標
本(〜20μgタンパク質)を非変性条件下で7.5%SDS−PAGE基質(
HA)−ゲル上で電気泳動させた。電気泳動後に、以下の実施例3に述べるよう
に、ゲルを分析緩衝剤(assay buffer)中でインキュベートさせ、HA消化させ、
染色し、脱色させた。レーン1と2:別々の正常対象;レーン3と4:G1腫瘍
を有する個別の患者;レーン5と6:G3腫瘍を有する個別の患者。
図10AとB:ELISA様分析による尿中ヒアルロニダーゼ活性の定量測定
。ヒアルロニダーゼ活性は以下の実施例3に述べるように測定した。
A:個人のヒアルロニダーゼ活性の散布図。各カテゴリーにおいて、小点は各
個人の尿中ヒアルロニダーゼ活性を表し、“n”は試験した個人数を表す。GU
:
このカテゴリーは例えば進行した前立腺癌(n=10)、BPH(n=8)、腎
結石(n=5)、膀胱炎(n=12)、尿路感染症(n=8)、前立腺炎(n=
2)、副睾丸炎(n=1)及び腎臓外傷(n=2)のような尿生殖器症状を有す
る患者を包含する。G3:このカテゴリーはG3腫瘍(n=34、ステージT1
〜T4)及びCIS(n=6)を有する患者を含む。
B:種々なカテゴリー間の平均ヒアルロニダーゼ活性の比較。この平均活性は
“A”に表示した個人のヒアルロニダーゼ活性から算出した。結果は平均ヒアル
ロニダーゼ活性mU/mgタンパク質±SEMを表す。
図11AとB:膀胱組織抽出物中のヒアルロニダーゼ活性の測定。組織抽出物
中のヒアルロニダーゼ活性を以下の実施例3に述べるようなELISA様分析に
よって測定した。
A:個人のヒアルロニダーゼ活性の散布図。
B:正常組織抽出物と膀胱TCC組織抽出物とのヒアルロニダーゼ活性(平均
値±SEM)。
図12:膀胱腫瘍関連ヒアルロニダーゼのpH活性プロフィルの測定。高グレ
ード膀胱腫瘍を有する患者から得られた、尿標本と腫瘍組織抽出物とを異なるp
HにおいてHA被覆孔上でインキュベートした。インキュベーション後に、孔上
に残留するHAを以下の実施例3に述べるように見積もった。結果は以下の実施
例3に述べるように算出する。
図13A、B及びC:膀胱腫瘍誘導ヒアルロニダーゼの、基質(HA)SDS
−PAGEによる分子量算出。
A:尿標本の基質(HA)SDS−PAGE分析。尿標本(〜40μgタンパ
ク質)を、9%SDS−PAGEミニゲル上で、BioRad広範囲予備染色済
み(prestained)分子量マーカーと共に分離させた。電気泳動後に、ゲルを以下の
実施例3に述べるように処理した。レーン1:G1腫瘍を有する患者からの尿標
本;レーン2:G2腫瘍を有する患者からの尿標本;レーン3:G3腫瘍を有す
る患者からの尿標本;レーン4:正常な個人からの尿標本。
B:総尿タンパク質のSDS−PAGE分析。G3腫瘍を有する患者からの尿
標本(〜20μgタンパク質)を12%SDS−PAGEによって、
BioRad予備染色済み広範囲分子量マーカーと共に分離させた。電気泳動後
に、ゲルを銀染色した。
C:組織抽出物の基質(HA)SDS−PAGE分析。G3腫瘍膀胱組織標本
と正常膀胱組織標本とから調製した抽出物(40μgタンパク質)を、12%基
質(HA)SDS−PAGE上で、BioRad予備染色済み広範囲分子量マー
カーと共に分離させた。電気泳動後に、ゲルを以下の実施例3に述べるように処
理した。左レーン:G3腫瘍組織抽出物;右レーン:正常膀胱組織抽出物。
本発明の詳細な説明
本発明の前に、膀胱癌を検出し、そのグレードを評価するための非侵襲性、高
選択性かつ高特異性の方法は知られていない。尿中HAレベルを膀胱癌検出をお
こなうためのマーカーとして用いることができること、及び尿中ヒアルロニダー
ゼレベルが膀胱腫瘍のグレードの診断インジケーターであることは、今までに知
られていない。尿中のHAレベルとヒアルロニダーゼレベルとが共に侵潤性(inv
asive)癌腫の検出の診断に役立ちうることは今までに示唆されていない。さらに
、ビオチニル化HA結合タンパク質の使用(但し、抗体を用いない)と以下に述
べるような特異的方法とを述べるELISA様分析は、尿中HAレベルとヒアル
ロニダーゼレベルとを測定するために今までに用いられていない。
ヒアルロン酸(HA)測定(HA試験)
以下の実施例に示すように、本発明のHA分析は、約100ng/mgにおい
て、膀胱腫瘍を検出するために約88%以上(100%程度に高い可能性もある
が)の感度と、約87%以上の特異性(100%程度に高い可能性もあるが)を
示す。これは、膀胱癌を検出するための現在公知の方法を越えた利点と改良を表
す。
当然、当業者によって理解されるように、HA濃度のカットオフ限界は変化す
る可能性があり、集団の広がり(population spread)を考慮しなければならない
。膀胱癌状態の適当な判定に到達するためのHA濃度のカットオフ限界を設定す
ることは、例えば年齢、飲食物(diet)、サンプル中のタンパク質の濃度、環境影
響、遺伝的背景、水分補給状態(hydration status)、病歴(medical history)、
身体的状態、性別、体重等のようなファクターを考慮することを含む。
HA分析を用いて低グレード及び低ステージ膀胱腫瘍(即ち、G1及びTa腫
瘍)をも検出する能力は、本発明のこの実施態様のもう一つの重要な特徴を表す
。上述した3種類の公知の非侵襲性尿試験−−即ち、血尿家庭スクリーニング試
験、Bard BTA試験及びNMP22試験−−は、これらの腫瘍を高感度で
検出しない。このような腫瘍はまた、臨床発現が無いために長期間検出されない
で進行する。しかし、以下で考察するように、尿中HAレベルは低グレードで低
ステージの腫瘍(88〜90%)をも、高グレードで高ステージ腫瘍(88〜9
6%)と同様に、同じ高い感度で検出する。
上述したように、生物学的流体サンプル中のHAレベルを測定することができ
るかぎり、任意の慣用的分析系を本発明によって膀胱癌の検出に用いることがで
きる。HAとHAアーゼの両方の本発明の分析は、尿に限定されず、例えば血液
、血清、血漿、腹水(ascitic fluid)、腹腔浸出液(peritoneal fluid)、胆汁、
精液及び脳脊髄液のような生物学的流体の試験にも適用することができる。
HA分析の好ましい実施態様では、本発明の方法は固相の表面にHAを吸着さ
せることによって開始する。HAは例えばヒトの臍帯のような便利な供給源から
得ることができる。固相はニトロセルロース等を含めた、任意の慣用的な固相で
あることができるが、好ましくはマイクロタイター孔である。HAを固相に吸着
させた後に、固相の表面を好ましくは慣用的な緩衝剤(単数又は複数種類)を用
いて洗浄する。
固相はその表面上に、HA又は他の分子と結合する(coupling)ことができる部
位をまだ残しているので、サンプルを添加する前に、HAがまだ吸着されていな
い固相の部分をカバーするようにブロッキング物質(blocking substance)を加え
ることが好ましい。適当なブロッキング物質の例はウシ又は他の動物から得られ
るγ−グロブリン及びアルブミンを包含する。ウシの血清アルブミンが好ましい
。固相の遊離部位をブロックした後に、固相の表面を慣用的な緩衝剤(単数又は
複数種類)を用いて洗浄することが好ましい。
次に、HAが問題の分析物であるので、膀胱癌を有すると疑われるヒトから回
収された生物学的流体のサンプルの存在下で、HA結合タンパク質(HABP)
を被覆固体サポートに加えて、HABPが固体サポートを被覆するHAと尿中H
A(存在する場合に)に結合することが許されるような条件下でインキュベート
する。インキュベーション時間と条件は広い範囲内で変化することができるが、
約4時間〜約16時間のインキュベーション時間と約4℃〜約37℃のインキュ
ベーション温度とで充分である。これより長い又は短いインキュベーション時間
とこれより高い又は低いインキュベーション温度も、当業者によって理解される
ように、可能である。
本発明の分析に用いるために適したHABPは、例えばウシの鼻軟骨(Ten
gblad,Biochim.Biophys.Acta,578:281〜2
89,1979)、ブタ喉頭軟骨(Fosang等,Matrix,10:30
6〜313,1990)のような、多くの供給源から容易に精製することができ
る。
HABPが被覆HA及び/又はサンプルHAに結合した後に、固相表面を慣用
的な緩衝剤(単数又は複数種類)を用いて洗浄することが好ましい。
次に、固体サポートを被覆するHAに結合したHABP量を測定する。好まし
くは、HABPをビオチニル化し、結合したHABPをアビジン−酵素コンジュ
ゲート及び、着色生成物を形成する酵素の基質とのインキュベーション後に可視
化する。このような検出系はラベルとして放射能を用いず、多重マーカー(即ち
、酵素分子)を固体サポートに結合したHABP毎に固定して、シグナル(即ち
、着色生成物)を酵素のターンオーバー(turnover)を介して増幅させる。しかし
、慣用的なマーカー系をHABPと共に用いることができる。適当なマーカー系
の例は酵素、蛍光、化学発光、酵素−基質、アイソトープマーカー、放射性ラベ
ル等を包含する。好ましくは、固体サポートを被覆するHAに結合したHABP
量の測定をアビジン−ビオチン検出系を介しておこなう。他の有用なマーカー系
はケラチン硫酸とケラチン硫酸−反応性抗体とを用いる。尿中HAレベルをマイ
クロタイタープレ−ト読み取り機を用いて有効に測定して、標準グラフから補外
することができる。次に、被覆HAと結合したHABP量を、生物学的流体のサ
ンプルを回収された患者の膀胱癌の存在と相関させることができる。
HA分析に関して、精製ヒアルロン酸を基準として用いることが好ましい。
ヒアルロニダーゼ(HAアーゼ)測定(HAアーゼ試験)
本発明では、HAアーゼが問題の分析である場合に、HA分析に関して上述し
たやり方と同じやり方で、HAを固相の表面に吸着させる。生物学的流体サンプ
ル中のHAアーゼレベルを測定することができるかぎり、任意の慣用的分析系を
本発明によって膀胱癌の検出に用いることができる。
固相上にHAを吸着させた後に、固相の表面を好ましくは慣用的な緩衝剤(単
数又は複数種類)を用いて洗浄する。
次に、膀胱癌を有すると疑われる人から回収した生物学的流体(例えば、尿)
のサンプルを被覆固体サポートに加えて、サンプル中に存在するHAアーゼ(存
在する場合に)が固体サポートを被覆するHAを分解することが許されるような
条件下でインキュベートする。
インキュベーション後に、分解したHAを慣用的緩衝剤(単数又は複数種類)
を用いて洗浄することによって除去することが好ましい。
次に、HABPを添加する前に、HA分析に関して上述したように、HAが吸
着されていない固相の部分をカバーするように、ブロッキング物質(例えば、血
清アルブミン)を加えることが好ましい。固相の遊離部位をブロッキングした後
に、固相の表面を慣用的緩衝剤(単数又は複数種類)を用いて洗浄することが好
ましい。
次に、HABPが固相上を被覆する非分解HAと結合することが許されるよう
な条件下で、固相をHABPに暴露させる。HA分析に関すると同様に、インキ
ュベーション時間と条件は広い範囲内で変化することができるが、約30分間〜
約1時間のインキュベーション時間と約37℃のインキュベーション温度とで充
分である。これより長い又は短いインキュベーション時間とこれより高い又は低
いインキュベーション温度も、当業者によって理解されるように、可能である。
HABPが被覆HAと結合した後に、固相の表面を慣用的緩衝剤(単数又は複
数種類)を用いて洗浄することが好ましい。
次に、固体サポート上を被覆するHAに結合したHABP量を測定する。好ま
しくは、HABPをビオチニル化し、結合したHABPをアビジン−酵素コンジ
ュゲート及び、着色生成物を形成する酵素の基質とのインキュベーション後に可
視化する。このような検出系はラベルとして放射能を用いず、多重マーカー(即
ち、酵素分子)を固体サポートに結合したHABP毎に固定して、シグナル(即
ち、着色生成物)を酵素のターンオーバー(turnover)を介して増幅させる。しか
し、慣用的なマーカー系をHABPと共に用いることができる。適当なマーカー
系の例は酵素、蛍光、化学発光、酵素−基質、アイソトープマーカー、放射性ラ
ベル等を包含する。好ましくは、固体サポート上を被覆するHAに結合したHA
BP量の測定をアビジン−ビオチン検出系を介しておこなう。他の有用なマーカ
ー系はケラチン硫酸とケラチン硫酸−反応性抗体とを用いる。尿中HAレベルを
マイクロタイタープレート読み取り機を用いて有効に測定して、標準グラフから
補外することができる。次に、被覆HAと結合したHABP量を、生物学的流体
のサンプルを回収された患者の膀胱癌の存在及び癌のグレードと相関させること
ができる。約10mU/mgより多い算出は中グレード又は高グレード膀胱癌を
示唆する。
当然、当業者によって理解されるように、HAアーゼ濃度のカットオフ限界は
変化する可能性があり、集団の広がりを考慮しなければならない。膀胱癌状態の
適当な判定に達するためのHAアーゼ濃度のカットオフ限界の設定は、例えば年
齢、飲食物、環境影響、水分補給、身体的状態、性別、体重等のようなファクタ
ーを考慮することを含みうる。
HAアーゼ分析に関して、精製ヒアルロニダーゼが基準として好ましく用いら
れる。
以下で実施例において述べるように、中グレード〜高グレードTCCを検出す
るためのHAアーゼ法の感度は約85%以上(100%程度に高い可能性もある
が)であり、特異性は約88%以上(100%程度に高い可能性もあるが)であ
る。したがって、本発明のHAアーゼ分析は中グレード及び高グレード膀胱腫瘍
の検出とそれらのグレードの評価との両方に有用である。
本発明のHA分析とHAアーゼ分析は別々に、又は好ましくは相互と組み合わ
せて用いることができる。HAアーゼのみでは低グレード膀胱癌(即ち、約10
mU/mg未満の算出)を有効に検出及び/又は評価しない。しかし、上述した
ように、患者の生物学的流体サンプルを試験するためにHA分析とHAアーゼ分
析の両方を用いる場合には、低グレード膀胱癌を検出することができる。
予備の安定性研究は、HAとHAアーゼの両方が室温におけるインキュベーシ
ョン後に>8時間(約16時間まで)安定であることを示す。発明者はスポット
尿標本を分析して、その結果、例えば最初の朝の排尿(void)のような特定の条件
が必要でないことが確認されている。本発明の試験はサンプル中のHA(ng/
ml)レベル及びHAアーゼ(mU/ml)レベルのタンパク質濃度(mg/m
l)に対する標準化を含むので、患者の水分補給状態は結果に影響を与えない。
総クレアチニンに対するのではなく総タンパク質に対する標準化は、血尿、膀胱
癌患者に一般に見られる症状によってあまり影響されないので、好ましい。
上記使用の他に、本発明のHA及びHAアーゼの分析は無数の用途を有する。
例えば、上述したように、本発明は膀胱癌を検出して、そのグレードを評価する
ための個人のスクリーニング方法をカバーする。これはとりわけ高い危険状態に
ある人々(例えば、喫煙者と、ペイント、染料及び皮革工業の労働者)の膀胱癌
の発現を早期に検出するために特に有用である。
本発明はまた、膀胱癌に対する治療効力を評価する方法(即ち、治療前と治療
後の患者を検査することによって)をも考慮する。同様に、本発明は、腫瘍再発
をモニターするための膀胱癌患者の長期間フォローアップ方法として有用である
。
さらに、本発明の分析は、腫瘍が尿と接触する、あらゆる他の泌尿器悪性腫瘍
(即ち、Wilms腫瘍、前立腺腫瘍、腎臓癌、尿管癌、尿道癌、腎臓−骨盤(r
enal-pelvic)癌等)をスクリーニングし、治療効力を評価し、フォローアップす
るために有用である。
これらの分析は、腫瘍中に注入されて(squirted)HA及びHAアーゼを可溶化
することができる、任意の体液又は通常の生理的食塩水と腫瘍が接触する場合に
、他の腫瘍をスクリーニングするのに有用である。この場合に、HA及び/又は
HAアーゼを分析することができる。
本発明は、膀胱癌及び/又は他の泌尿器癌を検出し、それらのグレードを評価
するためにHA及び/又はHAアーゼを用いるディップスティック検査用途を考
慮する。例えば、慣用的な方法論を利用して、ディップスティック形状の固相を
用いて、上述したように、HA又はHAアーゼを分析することができる。例えば
、当業者が気づくであろうように、ディックスティックをHAで被覆するか又は
デ
ィップスティックにHAを含浸させることができる。当然、このディックスティ
ックを用いて、非限定的に尿を含めた、任意の生物学的流体を検査することがで
きる。
本明細書に引用された全ての本、論文及び特許はそれらの全体において本明細
書に援用される。特に、本発明は1996年2月1日出願の米国仮出願第60/
010,976号に開示されたものであり、この仮出願の全内容は本明細書に援
用される。
下記実施例と比較例によって本発明をさらに詳述する。しかし、これらは本明
細書の範囲と請求の範囲とを限定することを意図しない。
実施例
実施例1.HA及びHAアーゼの初期研究
TCC患者、他のGU症状(conditions)を有する患者及び正常な個人の間で、
尿中HAレベルとHAアーゼレベルを比較した。治療効力を判定するためのHA
レベルとHAアーゼレベル測定の有用性をも評価した。ビオチニル化ウシ鼻軟骨
のHA結合タンパク質(HABP)の使用を含む2種類の非常に類似したELI
SA様分析を用いて、尿中HAレベルとHAアーゼレベルを測定した。尿中HA
レベルとHAアーゼレベルを尿中タンパク質レベルに標準化して、それぞれ、n
g/mgタンパク質及びmU/mgタンパク質として表現する。
既知分析(例えば、Stern等)とは異なって、この分析では、尿中HAレ
ベルとHAアーゼレベルが尿中タンパク質濃度に標準化されて、尿中HA/HA
アーゼレベルと膀胱癌/中グレード〜高グレード膀胱癌との間の相関関係に影響
を与える重要なファクターである、患者の水分補給状態に関して修正される。こ
の理由は、水分補給状態が尿中の化学物質レベル(chemical level)に影響を与え
ることが知られているからである。したがって、クレアチニンにではなくタンパ
ク質に尿中HA/HAアーゼを標準化することは、膀胱癌の一般的な所見(findi
ng)である血尿(尿中の血液)によってタンパク質の方が影響されることが少な
いので、好ましいと考えられた。
標本回収:
排尿された尿サンプル(清浄−キャッチ)を全ての対象(subject)から採取し
て、分析するまで−20℃に保存した。分析時に、サンプルを解凍して、4℃に
おいて10分間2,000rpmで遠心分離して、沈降物を除去した。
尿中HA測定のための分析:
96孔マイクロタイターの孔(Corning,Corning,NY)を、
0.1M炭酸水素ナトリウム溶液(pH9.2)中に溶解したヒト臍帯HA(S
igma Chemical Co.,St.Louis,MO;25μg/m
l)で被覆した。この被覆は4℃において〜16時間(一晩)おこなった。(こ
の反応は37℃における4時間でも全く上首尾におこなわれた)。
HA被覆孔をリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)中で3回洗浄した。これ
らの孔を0.05%Tween20含有PBS(PBS+Tween)中に調製
された1%ウシ血清アルブミン(BSA)溶液中で37℃において1時間インキ
ュベートすることによって、孔の非特異的部位をブロックした。
インキュベーション後に、孔をPBS+Tween中で3回洗浄してから、ビ
オチニル化ウシ鼻軟骨HA結合タンパク質(HABP;1μg/ml)と数種類
の濃度の尿標本(0.5〜10μl)又はヒト臍帯HA(0.1〜60ng/m
l)とを含有するPBS+Tween 200μl(最終量)(当業者によって
理解されるように、異なる量も使用可能であるが)と共に室温において16時間
(一晩)インキュベートした。HABPをTengbladによって述べられた
方法(Tengblad,「固定ヒアルロネート上でのアフィニティクロマトグ
ラフィーと、軟骨からヒアルロネート結合タンパク質を単離するためのその応用
」,Biochim.Biophys.Acta,578:281〜289,1
979)に従って精製した。
HABPと共にインキュベーションした後に、孔をPBS+Tween中で5
回洗浄してから、PBS+0.1%Tween20と、Elite Vecta
stain ABC kitTM(Vector Laboratories,B
urlingame,CA)からの試薬AとBと共に(PBS+0.1%Twe
en20溶液 10mlにつき4滴の試薬AとB)、製造者の指示に従って、室
温(〜23℃)において30分間インキュベートした。
インキュベーション後に、孔をPBS+Tween中で3回洗浄し、PBS中
で2回洗浄し、製造者の指示にしたがって、10mlの蒸留水中で各4滴の緩衝
剤(pH5.3)とABTSと過酸化水素溶液とを混合することによって調製さ
れた、ABTS(2,2’アジノ−ビス(3−エチル−ベンズチアゾリン−6−
スルホン酸)基質(Vector Laboratories,Burling
ame,CA)溶液と共にインキュベートした。マイクロタイタープレートを室
温において暗所で色(緑色)が発色するまでインキュベートした。
着色生成物の吸光度を405nmにおいてマイクロタイタープレート読み取り
機を用いて測定した。各分析において、HA被覆孔をHA又はHA含有尿標本の
不存在下で緩衝剤のみと共にインキュベートすることによって、最大吸光度(Amax
)405nm を得た。非被覆孔上でHAをインキュベートすることによって(Amin
)405nm を得た。分析に用いたHA(ng/ml)の既知濃度に対して吸光
度(405nm)をプロットすることによって、標準グラフを作成した。このE
LISA様分析の標準グラフの例を図3に示す。この標準グラフを用いて、尿標
本の各希釈度のHA濃度(ng/ml)を算出した。幾つかのこのような測定か
ら、各標本の平均HA濃度を測定した。自動化分析又はタンパク質分析キット(
BioRad,Richmond,CA)によって、尿中タンパク質濃度(mg
/ml)を測定した。HA濃度をタンパク質含量に標準化して、ng/mgタン
パク質として表現した。尿中HAレベルを測定するための計算は次のようにおこ
なった:Ax希釈係数÷mg/ml尿中タンパク質、式中、Aは標準グラフから
補外されたHA濃度(ng/ml)である。ヒト臍帯HAを用いて得られた標準
グラフの例を図3に示す。
尿中HA測定:
全体で139人の患者において尿中HAレベルを測定した。これらは正常個人
(n=25)、GU症状(例えば、膀胱炎、腎結石、良性前立腺肥大(BPH)
、尿路感染症、前立腺炎、腎臓外傷;n=40)を有する患者、及び膀胱TCC
患者(n=74;G1,n=17;G2,n=14;G3+CIS,n=43)
を包含した。表1に示すように、全てのTCC患者の平均尿中HAレベルは正常
個人及び種々なGU症状を有する患者における平均尿中HAレベルよりも4〜7
倍高い(P<0.001)。
低グレード及び低ステージ(G1、Ta)膀胱腫瘍を有する患者においても尿
中HAレベルが統計的に有意に上昇することに注目することは重要である。
治療効力をモニターするための尿中HAレベル測定の有用性を評価するために
、14人の患者において治療前と治療後の尿中HAレベルを測定した。治療後レ
ベルは治療後1〜3週間に測定した。図1に示すように、手術前に上昇したHA
レベルは治療後の患者の大部分において低下を示し、このことは尿中HAレベル
測定が治療効力のモニターにおいても有用であることを示唆する。
表1:ELISA様分析による種々な個人群における尿中HAレベルの測定。
結果は平均値±SEMとして表現され、“n”は各カテゴリーにおける個人数
を表す。
尿中HAアーゼ測定のための分析:
96孔マイクロタイターの孔(Corning,Corning,NY)を、
0.1M炭酸水素ナトリウム溶液(pH9.2)中に溶解したヒト臍帯HA(S
igma Chemical Co.,St.Louis,MO;200μg/
ml)で被覆した。この被覆は4℃において〜16時間(一晩)おこなった。(
この反応は37℃における4時間でも全く上首尾におこなわれた)。
HA被覆孔をリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)中で3回洗浄し、数種類
の濃度の尿標本(0.5〜10μl)又は、HAアーゼ−ELISA緩衝剤(0
.1M ギ酸ナトリウム、0.1〜0.15M NaCl及び0.2mg/ml
ウシ血清アルブミン(BSA)、pH4.3)100μl(当業者によって理解
されるように、異なる量を用いることもできるが)中の精製
Streptomycesヒアルロニダーゼ(0.02〜40mU/ml)(C
albiochem,San Diego,CA)と共に、37℃において〜1
6時間(一晩)インキュベートした。
インキュベーション後に、孔をPBSと0.05%Tween20とを含有す
る溶液(PBS+Tween)中で洗浄することによって、孔上の分解したHA
を除去した。孔をPBS+Tween中に調製された1%BSA溶液中で37℃
において1時間インキュベートすることによって、孔上の非特異的部位をブロッ
クした。
インキュベーション後に、孔をPBS+Tween中で3回洗浄し、PBS+
Tweenと、0.1%BSAと、5μg/mlのビオチニル化ウシ鼻軟骨HA
結合タンパク質(HABP)とを含有する溶液中で、37℃において1時間イン
キュベートした。HABPを、Tengbladによって述べられた方法(Te
ngblad,「固定ヒアルロネート上でのアフィニティクロマトグラフィーと
、軟骨からヒアルロネート結合タンパク質を単離するためのその応用」,Bio
chim.Biophys.Acta,578:281〜289,1979)に
従って精製した。
HABPと共にインキュベーションした後に、孔をPBS+Tween中で5
回洗浄してから、PBS+0.1%Tween20と、Elite Vecta
stain ABC kitTM(Vector Laboratories,B
urlingame,CA)からの試薬AとBと共に(PBS+0.1%Twe
en20溶液 10mlにつき4滴の試薬AとB)、製造者の指示に従って、室
温(〜23℃)において30分間インキュベートした。
インキュベーション後に、孔をPBS+Twenn中で3回洗浄し、PBS中
で2回洗浄し、製造者の指示にしたがって、10mlの蒸留水中で各4滴の緩衝
剤(pH5.3)とABTSと過酸化水素溶液とを混合することによって調製さ
れた、ABTS(2,2’アジノ−ビス(3−エチル−ベンズチアゾリン−6−
スルホン酸)基質(Vector Laboratories,Burling
ame,CA)溶液と共にインキュベートした。マイクロタイタープレートを室
温において暗所で色(緑色)が発色するまでインキュベートした。
着色生成物の吸光度を405nmにおいてマイクロタイタープレート読み取り機
で測定した。
各分析において、HA被覆孔をHAアーゼ又はHAアーゼ含有尿標本の不存在
下で緩衝剤のみと共にインキュベートすることによって、最大吸光度(Amax )405nm
を得た。非被覆孔上でHAアーゼをインキュベートすることによって(Amin
)405nm を得た。Streptomyces HAアーゼ(mU/ml)の
既知濃度に対して吸光度(405nm)をプロットすることによって、標準グラ
フを作成した。このELISA様分析の標準グラフの例を図4に示す。この標準
グラフを用いて、尿標本の各希釈度のHAアーゼ濃度(mU/ml)を算出した
。幾つかのこのような測定から、各尿標本の平均HAアーゼ濃度を測定した。自
動化分析又はタンパク質分析キット(BioRad,Richmond,CA)
によって、尿中タンパク質濃度(mg/ml)を測定した。HAアーゼ濃度をタ
ンパク質含量に標準化して、mU/mgタンパク質として表現した。
尿中HAアーゼレベルを測定するための計算は次のようにおこなった:Ax希
釈係数÷mg/ml尿中タンパク質、式中、Aは標準グラフから補外されたHA
アーゼ濃度(mU/ml)である。Streptomyces HAアーゼを用
いて得られた標準グラフの例を図4に示す。
尿中HAアーゼ測定:
全体で131人の患者において尿中HAレベルを検査した。これらは正常個人
(n=16)、GU症状(n=45;上記良性症状を有する患者(n=35)、
進行した前立腺癌を有する患者,n=10)を有する患者、及び膀胱TCC患者
(n=70;G1,22;G2,9;及びG3+CIS,39)を包含した。
表2に示すように、G2又はG3+CIS腫瘍を有する患者の尿中HAアーゼ
レベルはG1腫瘍を有する患者、GU症状を有する患者及び正常個人における平
均尿中HAアーゼレベルよりも5〜8倍高い(P<0.001)。10mU/m
gカットオフ限界におけるELISA様分析は、中グレード〜高グレードTCC
を検出するために100%の感度と88%の特異性を有する。
治療効力をモニターするためのHAアーゼレベルの有用性を評価するために、
高グレードTCC(G3腫瘍又はCIS)を有する17人の患者において治療前
と治療後のHAアーゼレベルを測定した。図2に示すように、手術前の尿中ヒア
ルロニダーゼレベルは治療後の患者の大部分において低下を示し、このことは尿
中HAアーゼレベル測定が治療効力のモニターにおいて有用であることを示唆す
る。
表2:ELISA様分析による種々な患者群における尿中HAアーゼレベルの
測定。結果は平均値±SEMとして表現され、“n”は各カテゴリーにおける個
人数を表す。
実施例2.実施例1の更新研究(updated studies)とデータ:
ヒアルロン酸測定
尿標本:
Miami大学のInstitutional Review Boardに
よって認可されたプロトコール下で、144人の個人から排尿された(清浄−キ
ャッチ)尿標本を回収した。サンプルを3グループに分割した。グループ1:正
常(健康)年齢が似通った(30〜70歳)個人(n=25)。グループ2:他
の尿生殖器症状を有する患者(n=45)、例えば良性前立腺肥大(BPH;n
=8)、前立腺癌(n=7)、腎結石(n=5)、膀胱炎(n=12)、尿路感
染症(n=8)、前立腺炎(n=2)、副睾丸炎(n=1)及び腎臓外傷(n=
2)。グループ3:G1(n=17、ステージTa)、G2(n=14、ステー
ジTa〜T2)又はG3(n=43)腫瘍を有する膀胱癌患者。膀胱癌患者のG
3サブカテゴリーは34人のG3腫瘍(ステージT1〜T4)を有する個人と、
9人の上皮内癌腫(CIS)を有する個人を包含した。CISは偏平で表在的で
ある高グレード膀胱腫瘍(尿路上皮に限定)のサブクラスである。全ての標本は
回収してから、分析するまで−20℃に保存した。
腫瘍標本:
関連する州と連邦の規定に従って器官ドナーから、成人(21〜50歳)から
の正常な膀胱組織を入手した。膀胱腫瘍の膀胱切除又は経尿道摘出を受けた患者
(41〜72歳)から腫瘍性(neoplastic)膀胱組織を入手した。グループ1:正
常な成人膀胱組織(n=6)。グループ2:低グレードTCC(G1腫瘍;n=
6)。グループ3:高グレードTCC(G2 n=2と、G3,n=6、腫瘍)
。グレードを評価するために、各腫瘍標本を分割して、鏡像セグメントをホルマ
リン中に固定し、パラフィン中に包埋し、切片化し、組織学的に分析した。
組織抽出物:
組織標本(〜0.5−1g)を1mMベンズアミジン−HClを含有する5m
M HEPES緩衝剤(pH7.2)中でホモジナイズした。ホモジネートを4
0,000xgで30分間遠心分離することによって清澄化し、透明な抽出物を
分析した。
HAレベル測定のためのELISA様分析:
尿標本及び組織抽出物中のHA濃度をFosang等が述べているELISA
様分析(「ビオチニル化プロテオグリカンG1ドメイン(HA結合)領域を用い
たヒアルロナンのELISAプレートに基づく分析」,Matrix,10:3
06−313,1990)に下記修正を加えて測定した:
ヒト臍帯HA(25μg/ml)によって被覆した96孔マイクロタイタープ
レートを、リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)+0.05%Tween20
(PBS+Tween)中の、尿標本、組織抽出物又はヒト臍帯HA(Sigm
a Chemical Co.,St.Louis,MO)の連続希釈物及びビ
オチニル化ウシ鼻軟骨HA結合タンパク質(1μg/ml)と共にインキュベー
トした。室温における16時間のインキュベーション後に、孔をPBS+Twe
en中で洗浄した。これらの孔に結合したHA結合タンパク質をアビジン−ビオ
チン検出系とABTS(2,2’アジノ−ビス(3−エチル−ベンズ
チアゾリン−6−スルホン酸)基質(Vector Laboratories
,Burlingame,CA)とを用いて定量した。ヒト臍帯HA濃度(ng
/ml)に対して吸光度(405nm)をプロットすることによって、標準グラ
フを作成した。このグラフを用いて、尿標本又は組織抽出物の各希釈物中のHA
濃度を算出した。幾つかのこのような測定から、サンプルが尿又は組織抽出物で
ありうる場合に、各サンプル中の平均HA濃度を算出し、サンプル中のタンパク
質濃度(mg/ml)に標準化した。各臨床サンプル中の総タンパク質濃度をタ
ンパク質検出キット(BioRad,Richmond,CA)を用いて測定し
た。
HAフラグメントの調製:
ヒト臍帯HA(〜500mg)を20,000単位の睾丸ヒアルロニダーゼ(
Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)によって3
7℃において種々な時間間隔にわたって消化させた。生じたHAフラグメントを
Sephadex G−50カラム(1.5x120cm)上で分離させた。1
0ml画分を回収し、ウロン酸含量に関して分析した(BitterとMuei
r,「修正ウロン酸カルバゾール反応」,Anal.Biochem.,4:3
30〜334,1962)。画分を組み合わせて、3調製物(F1、F2及びF
3)を得た。各画分中の還元性端部(reducing ends)数をDygert分析(D
ygert等,「改良された正確さでの還元糖の測定」,Anal.Bioch
em.,13:367〜374,1965)によって測定した。HA又はそのフ
ラグメントの各線状多糖は単一の還元性端部を含有するので、各フラグメントの
鎖長をウロン酸の1モル当たりの還元性端部数から算出した。各画分中のオリゴ
糖のサイズ範囲を、HA消化中に3 H−標識HA
(Lokeshwar等,「ヒアルロン酸仲介接着機能の発現のためには、CD
44(GP85)のアンキリン結合ドメインが必要である」,J.Cell.B
iol.,126:1099〜1109,1994)を組み入れて、このフラグ
メントをゲル電気泳動とフルログラフィー(flurography)によって分析すること
によっても測定した。
患者の尿からのHA及びHAフラグメントの単離:
正常対象(n=4)と低グレードTCC(G1腫瘍、n=4)又は高グレード
TCC(G2,n=2と、G3,n=3、腫瘍)を有する患者からの尿標本を1
0倍に濃縮し、PBSに対して大規模に(extensively)透析した。約2mlの各
透析済み標本(〜20mgタンパク質)を、PBSと平衡させた
Sepharose6CL−Bカラム(1.5x20cm)
(Pharmacia,Piscataway,NJ)に供給した。このカラム
を7ml/時でPBS中でランして、3.5ml画分を回収した。これらの画分
を上述したようなELISA様分析によってHAに関して分析した。標準球状タ
ンパク質マーカーと、例えばHAとHAフラグメントのような線状多糖とは異な
る形状を有するので、カラムをヒト臍静脈HA(Mr〜2x106 D)とHAフ
ラグメント、F1,F2及びF3を用いてキャリブレートした。或いは、内皮細
胞増殖に対する尿から単離したHA及びHAフラグメントの効果を検査するため
に、標本をトリクロロ酢酸(5%v/v)によって4℃において4時間沈降させ
た。尿中に存在するタンパク質増殖因子(例えば、塩基性−FGF)を変性させ
、除去するために、この沈降工程を含めた。トリクロロ酢酸処理済み尿標本を遠
心分離した;上澄み液を水に対して透析し、凍結乾燥させ、PBS中に再懸濁さ
せ、Sepharose 6CL−Bカラム上でクロマトグラフィーした。
分裂誘発分析:
ヒト肺微細血管内皮細胞(HMVEC−L)の増殖性初代培養物をそれらの第
2回又は第3回継代においてClonetics Corp.(San Die
go,CA)から得て、48孔培養プレート上の“内皮細胞増殖培地”(Clo
netics Corp.,San Diego,CA)中で増殖させた。80
%集密において、培養物を無血清で、添加剤(ウシ下垂体抽出物、EGFとヒド
ロコルチゾン)を含まない基本培地(EBM)中で37℃において12時間プレ
インキュベートした。プレインキュベーション後に、細胞をHA又は既知長さの
HAフラグメント又は患者尿から単離したピークHA画分(I〜V)を含有する
新鮮なEBM中で18時間インキュベートした。インキュベーション後に、[3
H]−チミジン(1μCi/ml)をこれらの培養物に加えて、前述したように
2時間のインキュベーション後に分析を終了した(Lokeshwar等,「プ
ロタミンは細胞表面EGF受容体数を増加させることによってEGF刺
激性分裂誘発を誘導する:潜在的EGF受容体の存在の暗示」,J.Biol.
Chem.,264:19318〜19326,1989)。表示した結果は3
通りの測定からの平均値±s.d.である。
統計分析:
データは、個々の患者の平均HA濃度又は各患者グループの平均値±SEMと
して表示した。種々なグループ間の平均HA濃度の差は、グループ間の平均HA
濃度はノン−パラメトリック分布(non-parametric distribution)を示したので
、Dunn多重比較(multiple comparison)試験によって評価した。
尿標本中のHA濃度の測定:
ビオチニル化HA結合タンパク質の使用を含むELISA様分析を用いて、尿
標本中のHA濃度を測定した。尿中HAレベル(ng)は水分補給状態及び尿排
出量によって影響されることが判明しているので、これらのレベルを尿中タンパ
ク質含量(mg)に標準化した。タンパク質への標準化は膀胱癌患者に通常認め
られる症状である血尿によってあまり影響されないことが判明したので、尿中H
Aレベルをクレアチニンにではなく総タンパク質に標準化した(Soloway
,「表在的膀胱癌の治療」,Cancer,45:1856〜1865,198
0)。本発明者は正常個人(n=25)と膀胱癌を有する個人(例えば,G1、
G2及びG3(CISを含む)、n=74)との尿中HAレベルを比較した。対
照として、膀胱癌以外のGU症状(例えば、BPH、前立腺癌、腎結石、細菌感
染症、膀胱炎、前立腺炎、腎臓外傷及び副睾丸炎、(n=45))を有する患者
の酵素レベルもこの試験では測定した。図5Aに示すように、正常個人と他のG
U症状を有する患者との間の尿中HAレベルの分布は非常に類似しており、これ
らの2グループに含まれる個人の大部分のHAレベルは、<100ng/mgで
ある。しかし、尿中HAレベルは膀胱癌患者では、腫瘍のグレード(例えば、G
1、G2及びG3)に関係なく、一様に高く、大抵の患者では、これらのレベル
は>100ng/mgである(図5A)。
種々なグループ間の平均尿中HAレベルの比較を図5Bに示す。正常個人(4
4.7±6.2ng/mg)と他のGU症状を有する個人(69.5±6.8n
g/mg)との間の平均尿中HAレベルは有意に異ならない。Dunn多重比
較試験によるこれらのデータの統計分析は、正常個人と他のGU症状を有する患
者との間の平均尿中HAレベルに認められる差が統計的に有意でない(P>0.
05、表3)ことを示す。しかし、G1(255±41.7ng/mg)、G2
(291.8±68.3ng/mg)又はG3(428.4±67ng/mg)
膀胱癌を有する患者間では尿中HAレベルが有意に高かった(4〜9倍)。
Dunn多重比較試験は、膀胱癌患者の平均尿中HAレベルと正常個人又は他の
GU患者の平均尿中HAレベルとの差が統計的に有意である(P<0.001、
表3)ことを示す。それにも拘わらず、膀胱腫瘍の種々なグレード(例えば、G
1、G2及びG3)を有する患者の平均尿中HA濃度に認められる差は統計的に
有意ではない(P>0.05、表3)。これらの結果は、尿中HAレベルの増加
が膀胱腫瘍を示唆することを実証する:しかし、これは腫瘍グレードのプレディ
クター(predictor)ではない。
表3:正常個人、他のGU症状を有する患者又は膀胱癌を有する患者の間の平
均尿中HAレベルを比較するためのDunn多重比較試験。図5に示したデータ
はDunn多重比較試験を用いて分析した。 尿中HAレベルに関するデータをさらに分析して、膀胱癌の検出に関するEL
ISA様分析の特異性と感度とを判定した。表4に示すように、最低カットオフ
限界として100ng/mgを用いたこの分析の総特異性は92.8%であった
。同じカットオフ限界において、膀胱癌を検出するためのこの分析の感度は91
.9%であった。分析は、この分析からの偽陽性結果と偽陰性結果とがそれぞれ
7.2%と8.1%であったことを示す。
表4:膀胱癌の検出に関するELISA様分析の特異性と感度の判定。図5A
に示した個人の尿中HAレベルに関するデータを最低カットオフ限界として10
0ng/mgHA濃度を用いた感度と特異性算出に関して分析した。サンプルは
74人の膀胱癌患者と、疾患を有さない個人(n=25)又は他のGU症状(例
えば、膀胱炎、BPH、前立腺癌、細菌感染症、腎結石等、n=45)を有する
個人とを包含した。感度=実際の陽性結果/膀胱癌患者の総数。特異性=実際の
陰性結果/膀胱癌を有さない患者の総数。偽陽性率=偽陽性結果/膀胱癌を有さ
ない個人の総数。偽陰性率=偽陰性結果/疾患を有する個人の総数。
a:例えば、正常者と他のGU症状を有する患者のような、各個人グループの特
異性は、それぞれ、96%と91.1%である。
b.低グレード(G1)及び低ステージ(Ta)腫瘍を検出するためのELIS
A様分析の感度は88.7%であった。高グレード(≧G2)及び高ステージ(
≧T1)腫瘍を検出するためのこの分析の感度は92.7%であった。
膀胱組織中のHA濃度の比較:
尿中HAレベルの上昇が腫瘍関連HAの尿中への分泌によるのかどうかを知る
ために、発明者は正常膀胱、低グレードTCC(G1腫瘍)及び高グレードTC
C(G2+G3腫瘍)から調製した組織抽出物中のHAレベルをELISA様分
析を用いて検査した。図6Aに示すように、正常膀胱組織中のHAレベルに比ベ
て、膀胱腫瘍組織中のHAレベルは腫瘍グレードに関係なく高い。低グレードT
CC組織(5.8±2.1μg/mg)と高グレードTCC組織(9.3±3.
3μg/mg)とは、正常膀胱組織中に存在するHAレベル(1.8±0.4μ
g/mg)よりも、それぞれ、3倍と5倍高い。表5に示すように、正常膀胱標
本と膀胱腫瘍(低グレード又は高グレードTCC)間の組織HAレベルの差は統
計的に有意である(P<0.001)。しかし、低グレードTCC組織と高グレ
ードTCC組織中の存在するHAレベルの差は、統計的に有意ではない(P>0
.05、表5)。これらの結果は、尿中HAレベル上昇と腫瘍関連HA増加との
間に直接の相関関係が存在することを示す。
表5:正常組織と膀胱腫瘍組織との間の平均HAレベルを比較するためのDu
nn多重比較試験。図6に示したデータはDunn多重比較試験を用いて分析し
た。低グレードTCCと高グレードTCCとは、それぞれ、G1又はG2+G3
腫瘍を有する個人グループを意味する。尿中HAプロフィルの測定:
HAのヒアルロニダーゼ消化によって生じたHAの小フラグメント(3〜25
二糖単位)はin vivoで血管形成性であることが判明している
(West等,「ヒアルロン酸の分解生成物によって誘導される血管形成」,S
cience,228:1324〜1326,1985)。このようなHAフラ
グメントが尿中に存在するかどうか知るために、発明者は、正常個人と低グレー
ド又は高グレードTCCを有する患者との尿中に存在するHA種のプロフィルを
ゲル−濾過クロマトグラフィーを用いて検査した。尿中HA種のサイズを、高分
子量HA(Mr〜2x106 ダルトン)と既知長さのHAフラグメント(F1
(10〜15二糖単位)、F2(2〜3二糖単位)及びF3(〜2二糖単位))
とを用いてカラムをキャリブレートすることによって測定した。F1フラグメン
トはウシ大動脈内皮細胞の種々な機能を調節することが判明している
(BanarjeeとToole,「内皮細胞形態形成におけるヒアルロナン結
合タンパク質」,J.Cell.Biol.,119:643〜652,199
2)。図7に示すように、正常個人の尿は少量のHAを含有し、その大きさは高
分子量HAとF1フラグメントとの中間であった。低グレードTCC患者の尿は
少量の高分子量HAと中サイズHAの幅広い第2ピークとを含有する(図7)。
第2ピークは若干量のF1フラグメントを含有するように思われる(図7)。高
グレードTCC患者の尿のHAプロフィルは複雑なパターンを示す。このプロフ
ィルは、高分子量HAとF1フラグメントとに相当する、2つの大きいピークか
ら成る。これらの2ピークは中サイズHAのピークによって分離されている(図
7)。さらに、高グレードTCC患者の尿は、F2とF3HAフラグメントにほ
ぼ相当する、2つの小HAピークを含有する(図7)。これらの結果は、全ての
膀胱癌患者ではHA濃度が上昇したが、HAプロフィルは低グレードTCC患者
と高グレードTCC患者とでは異なったことを示す。
ヒト微細血管内皮細胞の増殖に対するHA及びHAフラグメントの効果:
[3 H]−チミジン組み入れ分析を用いて、発明者は、in vitroで発
生された、又は高グレードTCC患者の尿から単離された、高分子量HAとHA
フラグメント(F1,F2及びF3)の、ヒト肺微細血管内皮細胞(HMVEC
−L)の初代培養物の増殖に対する効果を検査した。図8Aに示すように、高分
子量HAとF1フラグメントとはHMVEC−L細胞の分裂誘発反応を用量依存
的に誘導し、2μg/ml濃度において、それぞれ、1.5倍と2.3倍の最大
増加を生じる。F2とF3フラグメントはこれらの細胞に対して分裂誘発性では
ない(図8A)。高グレードTCC患者の尿から単離されたHA種の中では、ピ
ークI(高分子量HA)とピークII(中サイズHA)はHMVEC−L細胞に
おいて軽度の分裂誘発反応(1.2〜1.3倍)を誘導する。しかし、F1フラ
グメントに相当する、ピークIII中に存在するHA種はHMVEC−L細胞に
おいて〜2.4倍の分裂誘発反応を誘導する(図8)。F2とF3フラグメント
に相当する、非常に小さいHAフラグメント(ピークIVとV)は分裂誘発性で
はない。これらの結果は、内皮細胞機能(例えば、増殖)を剌激するHAフラグ
メントが高グレードTCC患者の尿中に存在することを示唆する。
要約すると、尿中HAレベルは全ての膀胱癌患者において有意に上昇し(4〜
9倍;図5)、尿中HAレベルが膀胱癌のマーカーとして有用であることを実証
する。膀胱癌患者の尿中HAレベルの上昇は腫瘍関連HAの尿中への直接の分泌
によると考えられる(図6)。
正常者、低グレードTCC患者及び高グレードTCC患者の尿プロフィルの差
異は、尿中HAのサイズ測定が膀胱癌の予後の別のインジケーターになりうるこ
とを意味する。膀胱癌におけるHA種のプロフィルが腎臓癌を有する小児の尿又
は血清中に存在するものとは異なることも注目すべきである(Lin等,「尿中
ヒアルロン酸はWilm腫瘍のマーカーである」,J.Ped.Surg.,3
0:304〜308,1995;Kumar等,「腎臓腫瘍を有する小児の血清
は低分子量ヒアルロン酸を含有する」,J.Cancer,44:445〜44
8,1989)。それ故、HA種のサイズとそれらの分布のパターンは異なる起
源並びにグレードの腫瘍においては異なる。
実施例3.実施例1の更新研究とデータ:
ヒアルロニダーゼ測定
尿標本:
Miami大学のInstitional Review Boardによっ
て認可されたプロトコール下で、139人の個人から排尿された(清浄−キャッ
チ)尿標本を回収した。これらの個人を3グループに分割した。グループ1:正
常(健康)年齢が似通った(30〜70歳)個人(n=20)。グループ2:他
の尿生殖器(GU)症状を有する患者(n=48)、例えば進行した前立腺癌(
n=10)、良性前立腺肥大(BPH;n=8)、腎結石(n=5)、膀胱炎(
n=12)、尿路感染症(n=8)、前立腺炎(n=2)、副睾丸炎(n=1)
及び腎臓外傷(n=2)。グループ3:G1(n=22、ステージTa)、G2
(n=9、ステージTa〜T2)又はG3(n=40)膀胱腫瘍を有する患者。
G3サブカテゴリーは、34人のG3腫瘍(ステージT1〜T4)を有する個人
と、6人の上皮内癌腫(CIS)を有する個人を包含した。CISは偏平で表在
的である高グレード腫瘍(尿路上皮に限定)のサブクラスである。全ての標本は
回収してから、分析するまで−20℃に保存した。
組織標本:
成人(21〜50歳)からの正常な膀胱組織を器官ドナーから入手した。組織
調達は関連する州と連邦の規定に従っておこなった。膀胱腫瘍組織は、腫瘍の膀
胱切除又は経尿道摘出を受けた患者(41〜72歳)から入手した。3グループ
の患者において、組織ヒアルロニダーゼレベルを分析した。グループ1:正常な
膀胱(n=6)。グループ2:低グレードTCC(G1,n=6)。グループ3
:高グレードTCC(G2 n=2と、G3,n=6)。グレードを評価するた
めに、各腫瘍標本を分割して、鏡像セグメントをホルマリン中に固定し、パラフ
ィン中に包埋して、組織学的に分析した。
組織抽出物:
組織標本(〜0.5−1g)を、5mM HEPES(pH7.2)と1mM
ベンズアミジン−HClとを含有する緩衝剤中でホモジナイズした。ホモジネー
トを40,000xgで30分間遠心分離することによって清澄化し、透明な抽
出物を分析した。
基質(HA)−ゲル分析:
尿サンプル(〜20μgタンパク質)を7.5%ポリアクリルアミドゲル上で
の非変性条件下又は0.17mg/mlヒト臍帯HA(Sigma
Chemical Co.,St.Louis,MO)を含有する12%SDS
ポリアクリルアミドゲル上での変性条件下で電気泳動した。電気泳動後に、ゲル
をヒアルロニダーゼ分析緩衝剤(0.1M ギ酸ナトリウム、0.15M
NaCl、pH4.3)中で酵素消化のために37℃において16〜18時間イ
ンキュベートした。変性ゲル上で電気泳動したタンパク質をヒアルロニダーゼ分
析緩衝剤中でのインキュベーション前に3%TritonX−100溶液中でゲ
ルをインキュベートすることによって、再生した。インキュベーション後に、ゲ
ルを0.5%Alcianブルーと0.15%Coomassieブルー溶液に
よって連続的に染色し、10%メタノール/10%酢酸溶液によって脱色した。
ヒアルロニダーゼの存在はゲル中の非染色(透明な)部分(単数又は複数)から
記述されているように推測された(Lokeshwar,V.B.,
Lokeshwar,B.L.,Pham.H.T.及びBlock,N.L.
,「ヒアルロニダーゼ、マトリックス分解酵素と前立腺癌進行との関係」,
Cancer Res.,56:651〜657,1996;
Guetenhoner等,「ヒアルロニダーゼ活性の基質ゲル分析」,
Matrix,12:388〜396,1992)。
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)と銀染色:
尿標本(〜20pgタンパク質)を12%SDS−PAGEによって分析し、
次に銀染色して、総尿中タンパク質プロフィルを明らかにした。
ヒアルロニダーゼ活性測定のためのELISA様分析:
200pg/mlのHAによって被覆した96孔マイクロタイタープレートを
、0.2mg/mlのBSAを含有するヒアルロニダーゼ分析緩衝剤中の、尿標
本、組織抽出物又はStreptomycesヒアルロニダーゼ
(CalBiochem,San Diego,CA)の連続希釈物と共に、3
7℃において16〜18時間インキュベートした。インキュベーション後に、分
解したHAを洗い流し、これらの孔に残留するHAをビオチニル化軟骨HA結合
タンパク質(Tengblad,「固定ヒアルロネート上でのアフィニティクロ
マトグラフィーと、軟骨からヒアルロネート結合タンパク質を単離するためのそ
の用途」,Biochim.Biophys.Acta,578:281〜28
9,1979)と、アビジン−ビオチン検出系と、ABTS基質キット
(Vector Laboratories,Burlingame,CA)と
を用いて、既述したように定量した(Lokeshwar等,「ヒアルロニダー
ゼ、マトリックス分解酵素と前立腺癌進行との関係」,Cancer Res.
,56:651〜657,1996;SternとStern,「ヒアルロニダ
ーゼとヒアルロニダーゼ阻害剤とに関するELISA様分析」,Matrix,
12:397〜403,1992)。マイクロタイタープレート読み取り機にお
いて405nmで吸光度を読み取った。各分析において、最大吸光度
(Amax )405nm はHA被覆孔を緩衝剤のみと、ヒアルロニダーゼの不存在下で
インキュベートすることによって得た。(Amin )405nm は非被覆孔中でヒアル
ロニダーゼをインキュベートすることによって得た。Streptomyces
ヒアルロニダーゼ活性(mU/ml)に対して吸光度(405nm)をプロット
することによって、標準グラフを作成した。このグラフを用いて、尿又は組織抽
出物の各希釈物中のヒアルロニダーゼ濃度を算出した。7種類の別々の希釈物中
の活性を測定することによって、各サンプル中の平均ヒアルロニダーゼ活性を算
出した。全ての活性測定(mU/ml)はタンパク質濃度(mg/ml)に標準
化した。膀胱腫瘍由来ヒアルロニダーゼのpH活性プロフィルを測定するために
、HA被覆孔を種々なpH(2.0〜7.0)におけるホルメート−NaCl緩
衝剤中の尿又は組織抽出物のアリコートと共にインキュベートした。結果は
(Amax −Asample)405nm x100として表現する。最大差を100%と指定
し、データを最大値の%として表す。
統計分析:
データを個々の患者の平均ヒアルロニダーゼ活性又は各患者グループの平均値
±SEMとして表示する。種々なグループ間の差は、平均ヒアルロニダーゼレベ
ルがパラメトリック分布(parametric distribution)を示したので、Tukey
−Kramer多重比較試験によって評価した。
尿中ヒアルロニダーゼ活性の検出:
(a)基質ゲル分析:
尿サンプル中のヒアルロニダーゼ活性を感受性基質(HA)−ゲル方法を用い
て検出した(Lokeshwar等,「ヒアルロニダーゼ、マトリックス分解酵
素と前立腺癌進行との関係」,Cancer Res.,56:651〜657
,1996;Guetenhoner等,「ヒアルロニダーゼ活性の基質ゲル分
析」,Matrix,12:388〜396,1992)。図9に示すように、
正常個人(レーン1と2)及び低グレードTCC患者(レーン3と4)の尿標本
を含むレーンでは、HA消化が殆ど又は全く観察されなかった。しかし、高グレ
ードTCC患者(レーン5と6)からの標本では、HA消化の幅広い帯が観察さ
れ、これはこれらのサンプルが有意な量のヒアルロニダーゼ活性を含有すること
を示唆する。
(b)ELISA様分析による尿中ヒアルロニダーゼ活性の定量測定:
尿サンプル(n=139)中のヒアルロニダーゼレベルの正確な定量が、EL
ISA様分析によって達成された(Lokeshwar等,「ヒアルロニダーゼ
、マトリックス分解酵素と前立腺癌進行との関係」,Cancer Res.,
56:651〜657,1996)。個人の水分補給状態と尿排出量の変化は、
ヒアルロニダーゼレベル(mU)を尿中タンパク質濃度(mg)に標準化するこ
とによって修正した。タンパク質への標準化は膀胱癌患者に通常認められる症状
である血尿によってあまり影響されないことが判明したので、ヒアルロニダーゼ
レベルをクレアチニンにではなく尿中タンパク質濃度に標準化した
(Soloway,「表在的膀胱癌の治療」,Cancer,45:1856〜
1865,1980)。本発明者は正常個人(n=20)と膀胱癌を有する個人
(例えば,G1、G2及びG3腫瘍とCIS、n=71)との尿中ヒアルロニダ
ーゼレベルを比較した。対照として、TCC以外のGU症状(例えば、BPH、
前立腺癌、腎結石、細菌感染症と膀胱炎、腎臓外傷、前立腺炎及び副皐丸炎、n
=48)を有する患者の酵素レベルもこの研究に含めた。図10Aに示すように
、正常個人と、低グレード(G1)膀胱腫瘍又は他のGU症状を有する患者との
間の尿中ヒアルロニダーゼレベルの分布は非常に類似している。これらの3グル
ープに含まれる個人の大部分のヒアルロニダーゼレベルは、<10mU/mgで
ある。しかし、ヒアルロニダーゼレベルは中グレード(G2)〜高グレード(G
3)膀胱腫瘍を有する全ての患者間では高く、>10mU/mgである(図10
A)。
種々なグループ間の平均尿中ヒアルロニダーゼレベルの比較を図10Bに示す
。正常な個人(4.2±1.2mU/mg)、他のGU症状を有する個人(7.
4±1.4mU/mg)、又はG1腫瘍を有する個人(6.5±1.7mU/m
g)の間の平均尿中ヒアルロニダーゼレベルは有意に変化しない。しかし、この
レベルはG2腫瘍(32±6.1mU/mg)又はG3腫瘍(34.3±3.1
mU/mg)を有する患者では有意に上昇する。G2又はG3腫瘍を有する患者
を一緒にした全ての患者の平均尿中ヒアルロニダーゼレベル(33.4±4.5
mU/mg)は正常個人と他のGU症状又はG1膀胱腫瘍を有する患者における
平均尿中ヒアルロニダーゼレベルよりも5〜9倍高い。CIS(表在的で偏平で
ある
高グレード膀胱TCCのサブクラス)を有する全ての患者では尿中ヒアルロニダ
ーゼレベルが6〜11倍上昇する(46±5.9mU/mg)ことに注目するこ
とは重要である。これらの結果は、ここで検査した全ての高グレード膀胱癌患者
が侵潤性疾患の発生の前に高い尿中ヒアルロニダーゼレベルを有することを示す
。
患者の種々なカテゴリー間の平均ヒアルロニダーゼレベルに観察された差の統
計的有意性をTukey−Kramer多重比較試験を用いて評価した。表6に
示すように、正常個人と、G1膀胱腫瘍又は他のGU症状を有する個人との間の
平均尿中ヒアルロニダーゼレベルの差は統計的に有意ではない(P>0.05;
表6)。しかし、正常個人/他のGU患者とG2又はG3腫瘍を有する患者との
間のこのような差は統計的に有意である(P<0.001,表6)。G1腫瘍を
有する患者とG2又はG3腫瘍を有する患者との間の平均ヒアルロニダーゼレべ
ルの差も統計的に有意である(P<0.001、表6)。それにも拘わらず、G
2又はG3腫瘍を有する患者間の平均酵素レベルの差は統計的に有意ではない(
P>0.05)。それ故、これらの結果は、全ての中グレード〜高グレード癌患
者では尿中ヒアルロニダーゼレベルが上昇することを示す。
表6:正常個人と膀胱癌患者との平均尿中ヒアルロニダーゼレベルを比較する
Tukey−Kramer多重比較試験。図10に示したデータはTukey−
Kramer多重比較試験を用いて統計的に分析した。q値が3.916より大
きい場合には、P値は0.05未満である。
尿中ヒアルロニダーゼレベルに関するデータをさらに分析して、高グレードT
CCの検出に関するELISA様分析の特異性と感度とを判定した。表7に示す
ように、最低カットオフ限界として10mU/mgを用いた、このELISA様
分析の総特異性は88.8%であった。同じカットオフ限界において、高グレー
ドTCCを検出するためのこの分析の感度は100%であった(すなわち、単一
の高グレード腫瘍も見のがさなかった)。分析は、この分析からの偽陽性結果と
偽陰性結果とがそれぞれ11.2%と0%であったことを示す。
表7:高グレード膀胱癌の検出に関するELISA様分析の特異性と感度の判
定。図10に示した尿中ヒアルロニダーゼレベルに関するデータを酵素レベルの
最低カットオフ限界として10mU/mgを用いた感度と特異性算出に関して分
析した。サンプルは49人の高グレードTCC(G2とG3腫瘍)患者と、90
人の、疾患を有さない(n=20)又は他のGU症状(例えば、膀胱炎、細菌感
染症、BPH、腎結石、前立腺癌等、n=48)又は低グレードTCC(G1腫
瘍、n=22)を有する個人とを包含した。感度=実際の陽性結果/高グレード
TCC患者の総数。特異性=実際の陰性結果/高グレードTCCを有さない患者
の総数。偽陰性率=偽陰性結果/高グレードTCCを有する患者の総数。偽陽性
率=偽陽性結果/高グレードTCCを有さない患者の総数。
a:例えば、正常者、他のGU症状を有する患者及び低グレードTCC患者のよ
うな、各個人グループの特異性は、それぞれ、93.7%、84.5%及び90
.9%である。
膀胱組織抽出物中のヒアルロニダーゼ活性の検査:
これらの研究は尿中ヒアルロニダーゼレベルが高グレード膀胱癌患者では上昇
することを示したので、発明者は、この上昇が腫瘍由来ヒアルロニダーゼ(単数
又は複数種類)の尿中への分泌の結果であると仮定した。したがって、発明者は
、正常膀胱、低グレードTCC(G1腫瘍)及び高グレードTCC(G2+G3
腫瘍)から調製した組織抽出物中のヒアルロニダーゼ活性の存在をELISA様
分析を用いて検査した。図11Aに示すように、正常膀胱中とG1腫瘍組織中と
のヒアルロニダーゼレベルは非常に類似する。しかし、G2とG3腫瘍組織抽出
物は有意に高いヒアルロニダーゼレベルを示す(図11A)。G2とG3腫瘍組
織中に存在する平均ヒアルロニダーゼレベル(13.2±1.2mU/mg)は
、正常膀胱組織に存在するヒアルロニダーゼレベル(1.9±0.35mU/m
g)及びG1腫瘍組織に存在するヒアルロニダーゼレベル(2.7±0.61m
U/mg)よりも実際に6〜7倍高い(図11B)。これらのデータのTuke
y−Kramer多重比較試験による統計分析は、正常組織とG2とG3腫瘍組
織との間の平均ヒアルロニダーゼ活性に認められた差が統計的に有意であるが(
p<0.001)、正常膀胱組織とG1腫瘍組織との間のこのような差は統計的
に有意ではない(P>0.05)ことを示す(表8)。さらに、G1腫瘍とG2
又はG3腫瘍との間の平均酵素レベルの差は統計的に有意である(P<0.00
1、
表8)。したがって、尿中ヒアルロニダーゼレベルと組織中ヒアルロニダーゼレ
ベルの両方の上昇は、膀胱の中グレード〜高グレードTCCに関連する。
表8:正常個人と膀胱癌患者とにおける平均組織ヒアルロニダーゼレベルを比
較するためのTukey−Kramer多重比較試験。図11に表示したデータ
をTukey−Kramer多重比較試験を用いて統計的に分析した。q値が2
.655より大きい場合には、P値は0.05未満である。膀胱腫瘍関連ヒアルロニダーゼ活性の特徴付け:
膀胱腫瘍関連ヒアルロニダーゼ活性のpH活性プロフィルをELISA様分析
を用いて測定した。図12に示すように、高グレードTCC患者の尿及び腫瘍(
G3)組織中に存在するヒアルロニダーゼ活性はHA分解に関して明確なpH最
適値(4.3)を有する。膀胱腫瘍関連ヒアルロニダーゼ活性のpH最適値は、
例えば血清、肝臓、腎臓、睾丸及び前立腺のような、他の供給源からのヒアルロ
ニダーゼに関して報告されたものとは異なる(Gold,「ヒト肝臓からのヒア
ルロニダーゼの精製と特性」,Biochem.J.,205:69〜74,1
982;Stern等,「Wilms腫瘍患者からの尿中のヒアルロニダーゼレ
ベル」,J.Natl.Canc.Inst.,83:1569〜1574,1
991;Lokeshwar等,「ヒアルロニダーゼ、マトリックス分解酵素と
前立腺癌進行との関係」,Cancer Res.,56:651〜657,1
996;Afify等,「ヒト血清ヒアルロニダーゼの精製と特徴付け」,
Arch.Biochem.Biophys.,305:434〜441,19
93;Salequi等,「血清と睾丸のヒアルロニダーゼの比較」,Arch
.Biochem.Biophys.,121:548〜554,1967)。
次に、基質(HA)SDS−PAGE方法を用いて、膀胱腫瘍由来ヒアルロニ
ダーゼの相対的分子量を測定した(Lokeshwar等,「ヒアルロニダーゼ
、マトリックス分解酵素と前立腺癌進行との関係」,Cancer Res.,
56:651〜657,1996;Guetenhoner等,「ヒアルロニダ
ーゼ活性の基質ゲル分析」,Matrix,12:388〜396,1992)
。正常個人と膀胱癌患者の両方からの尿標本(40μgタンパク質)を基質(H
A)SDS−PAGEによって分析した。図13Aに示すように、G2(レーン
2)、G3(レーン3)腫瘍を有する患者の尿中には、相対的Mr65kD(p
65)と55kD(p55)の2種類のヒアルロニダーゼタンパク質が存在する
。しかし、G1腫瘍患者(レーン1)又は正常個人(レーン4)の尿中には、同
じ総尿中タンパク質濃度において、ヒアルロニダーゼ帯が検出されない。p65
とp55とが高グレード膀胱癌患者の尿中の主要なタンパク質種であるかどうか
を検査するために、G3膀胱癌患者からの尿標本をSDS−PAGEと銀染色と
によって分析して、総タンパク質プロフィルを明らかにした。図13Bに示すよ
うに、高グレード膀胱癌患者の尿は数種類のタンパク質を含有する。しかし、p
65とp55は尿中の主要タンパク質ではなく、他のタンパク質中で同定される
ことができない。ELISA様分析と基質ゲル分析の両方はタンパク質ではなく
活性を検出するのであり、両分析とも高度に敏感であるので、このことは意外で
はない。さらに、高グレード膀胱癌患者と正常個人との尿中タンパク質プロフィ
ルには差異が認められない(データ示さず)。p55とp65とがG3腫瘍及び
正常膀胱に発現されるかどうかを検査するために、これらの供給源から調製した
組織抽出物(〜40μgタンパク質)を基質(HA)SDS−PAGEによって
分析した。図13に示すように、p65とp55の両方がG3腫瘍組織抽出物中
に存在するが(左レーン)、正常な膀胱組織中には、予想通りに存在しない(右
レーン)。他の組織では単独のヒアルロニダーゼタンパク質のみが発現すること
が認められることは興味深い(Stern等,「Wilm腫瘍患者からの尿中の
ヒアルロニダーゼレベル」,J.Natl.Canc.Inst.,83:15
69〜1574,1991;Lokeshwar等,「ヒアルロニダーゼ、マト
リックス分解酵素と前立腺癌進行との関係」,Cancer Res.,56:
651〜657,1996;Afify等,「ヒト血清ヒアルロニダーゼの精製
と特徴付け」,
Arch.Biochem.Biophys.,305:434〜441,19
93;Salequi等,「血清と睾丸のヒアルロニダーゼの比較」,Arch
.Biochem.Biophys.,121:548〜554,1967)。
これらのデータは、高グレード(G2とG3腫瘍)膀胱TCC患者では尿中ヒ
アルロニダーゼレベルが有意に高い(例えば、約5〜9倍)ことを示し、ヒアル
ロニダーゼが高グレード膀胱腫瘍を検出するための有用な尿マーカーであること
ができることを実証する。
尿中と組織中の両方のヒアルロニダーゼレベルの上昇は、腫瘍由来ヒアルロニ
ダーゼ(単数又は複数種類)が尿中へ分泌されることを示唆する。初期のデータ
は、ヒアルロニダーゼ(単数又は複数種類)が膀胱腫瘍上皮細胞によって分泌さ
れることを示す(未発表結果)(Lokeshwar等,「ヒアルロニダーゼ、
マトリックス分解酵素と前立腺癌進行との関係」,Cancer Res.,5
6:651〜657,1996をも参照のこと)。他のヒアルロニダーゼとは異
なるpH最適値を有する2種類のヒアルロニダーゼタンパク質(p65とp55
)の同定は、膀胱腫瘍由来ヒアルロニダーゼがこの成長するファミリー(growing
family)の新しいメンバーでありうることを示唆する。
実施例4.実施例1の更新研究とデータ:
さらなるヒアルロン酸とヒアルロニダーゼ測定
2つの別々の研究(研究Aと研究B)において、発明者は実施例1、2及び3
に述べた方法と実質的に同じ方法を用いて、356人の尿中HAとHAアーゼと
を検査した。
研究A:
191人を含む研究Aでは、ng/mgタンパク質として表現した尿中HAレ
ベル(HA試験)が腫瘍のグレードに拘わらず、全ての膀胱癌患者(297.7
±44.2,n=121)では、正常者(44.7±3.1)n=25)と他の
尿生殖器(GU)患者(74.2±7.8、n=45)の尿中HAレベルに比ベ
て、4〜7倍に上昇することが判明した(P<0.001)。GU患者は良性前
立腺肥大(BPH)、腎結石、尿路感染症、膀胱炎、前立腺癌、前立腺炎、副睾
丸炎又は性交不能を有する患者を包含した。膀胱癌患者を検出するためのこの試
験の感度と特異性は、最低カットオフ限界として100ngHA/mgタンパク
質を用いて算出した(表9)。同じ研究において、mU/mgタンパク質として
表現した尿中HAアーゼレベル(HAアーゼ試験)はG2とG3膀胱癌患者(3
1.4±3.6)では、G1膀胱癌患者(6.3±1.1)、他のGU患者(7
.4±1.4)及び正常者(4.4±0.8)の尿中HAアーゼレベルに比べて
4〜7倍に上昇することが判明した(P<0.001)。HAアーゼ試験の感度
と特異性は、最低カットオフ限界として10mU/mgタンパク質を用いて算出
した(表9)。
表9:研究AにおけるHA−HAアーゼ試験の感度、特異性、偽陽性率、偽陰
性率及び精度の測定。データは全体で191人を検査した研究Aから得た。HA
試験は全ての膀胱癌患者を検出するが、HAアーゼ試験は高グレード(グレード
G2、G3及び上皮内癌腫(CIS))膀胱癌患者を検出する。
研究B:
HA−HAアーゼ尿試験の感度と特異性とを評価するために、発明者は165
人を含む盲検(blinded study)をおこなった。対象は51人の膀胱癌患者と、1
0人の正常者と、114人の他のGU症状患者とを包含した。患者の膀胱癌カテ
ゴリーは、この疾患を有する患者41人と、膀胱癌の病歴を有するが試験の時点
では疾患を有さない個人10人とを包含した。データは表10に示す。
表10:研究BにおけるHA−HAアーゼ試験の感度、特異性、偽陽性率、偽
陰性率及び精度の測定。これは165人を含む盲検であった。両方の試験は一緒
にしたときに、95.1%の総感度で41人の膀胱癌患者のうちの2人のみを当
てそこなったことが認められる。 結果は、HA−HAアーゼ試験の組合せ感度がいずれかの試験単独よりも高い
ことを示した。この理由は、場合によっては、高グレード、高ステージ膀胱癌患
者がHA試験では偽陰性結果を与えたが、HAアーゼ試験は実際の陽性であるか
らであり;恐らく、高いヒアルロニダーゼ活性が尿中に存在するヒアルロン酸を
分解して、カットオフ限界より低い見かけのHAレベルを生じたからと思われる
。
これらの研究は、HA−HAアーゼ尿試験が膀胱癌を検出し、そのグレードを
評価するための簡単な、非侵襲性の高感度かつ高特異性方法であることを示す。
腫瘍グレードとステージによる、HA試験とHAアーゼ試験の感度の分析。
(a)HA試験:
感度測定のために、HAレベルに関して100ng/mgタンパク質を最低カ
ットオフ限界として設定した。膀胱癌患者はそれぞれ研究Aと研究Bとからの1
21人と36人のTCC患者を包含する。
表11:腫瘍グレードによるHA試験の感度。膀胱癌患者(BCa)のG1カ
テゴリーはG1〜2を有する6人の患者を包含する。G3カテゴリーは25人の
CIS患者を包含する。
表12:腫瘍ステージによるHA試験の感度。種々な病理学的ステージにおけ
る腫瘍のグレードは次のようであった:G1Ta(n=41)、G2Ta(n=
15)、G3Ta(n=5)、G1T1(n=1)、G2/G3T1(n=16
)、G2/G3T2+(n=55)及びG3CIS(n=25)。 表11と12に示すように、HA試験は同じような感度でG1、G2及びG3
膀胱腫瘍を検出した、即ち、90%(G1)、96%(G2)及び88%(G3
)。種々なステージの膀胱腫瘍を検出するためのHA試験の感度値も非常に類似
している。例えば、HA試験はステージTa、T1、T2+及びCISの腫瘍を
それぞれ90%、88%、92%及び96%の感度値で検出した。これらの結果
は、HA試験が膀胱癌患者を腫瘍のグレード又はステージに拘わらず、検出する
ことを実証する。
(b)HAアーゼ試験:
感度測定のために、HAアーゼレベルに関して10mU/mgタンパク質を最
低カットオフ限界として設定した。膀胱癌患者はそれぞれ研究Aと研究Bとから
の121人と36人のTCC患者を包含する。
表13:腫瘍グレードによるHAアーゼ試験の感度。5人のG1膀胱癌(BC
a)患者はHAアーゼレベル>10mU/mgを有した。これらの患者は偽陽性
と考えられ、特異性測定に含めた。さらに、2人のG1Ta患者はカットオフ限
界(10mU/mgタンパク質)と同じ尿中HAアーゼ値を有した。患者のG1
カテゴリーは40人のG1Ta患者と、1人のG1T1患者とを包含した。
表14:腫瘍ステージによるHAアーゼ試験の感度。G3腫瘍のサブクラスで
あるCISを除いた高グレード腫瘍(G2+G3)に関して、感度値を算出する
。
表13に示すように、HAアーゼ試験はG1、G2及びG3膀胱腫瘍を12.
1%、88%及び91.3%の感度値で検出した。これは、HAアーゼ試験が選
択的に中グレード〜高グレード膀胱腫瘍(≧G2)を検出したことを示唆した。
しかし、表14に示した結果は、HAアーゼ試験が全てのステージの高グレード
膀胱腫瘍を非常に類似した感度で検出することを示す。例えば、HAアーゼ試験
はステージTa、T1、T2+及びCISの高グレード膀胱腫瘍をそれぞれ85
%、87.6%、91%及び88%の感度で検出した。このことは、HAアーゼ
試験が高グレード腫瘍を侵潤(ステージTa又はT1)の前に高い感度で検出す
ることができ、HAアーゼ試験をこれらのクラスの膀胱腫瘍の早期検出に用いる
ことができることを示唆する。
これらの結果は、HA−HAアーゼ試験をスクリーニング試験として用いて、
膀胱癌患者を検出して、そのグレードを評価することができることを実証する。
HA試験は膀胱癌患者を腫瘍のグレードに拘わらず、検出する;HAアーゼ試験
は高グレード膀胱癌患者を選択的に検出する。膀胱癌患者の生残率(survival)を
改良するためのキーは、高グレード膀胱癌患者を侵潤の前に早期に検出すること
である。現在の検出形式によると、低ステージ(Ta)であるG3腫瘍を検出す
る確率は非常に低い。しかし、HAアーゼ試験は高グレード、低ステージ腫瘍と
高グレード、高ステージ腫瘍の両方を検出するために同じように敏感である。さ
らに、HAアーゼ試験はCIS(前侵潤性(pre-invasive)であるが、高度に攻撃
的である、G3腫瘍のサブクラス)をも高感度で検出する。したがって、スクリ
ーニング試験としてHAアーゼ試験を用いると、侵潤性疾患の発生の前に、高グ
レード膀胱癌患者を早期に検出することができる。それ故、HA−HAアーゼ試
験を組合せて用いることは、膀胱癌患者のスクリーニングと、高グレード腫瘍の
早期検出とを簡単で、安価な、非侵襲性方法で可能にする。それ故、このような
スクリーニングは一般に膀胱癌患者、特に高グレード膀胱癌患者の予後を改良す
ることができる。
この研究に含まれる膀胱癌患者の大部分が膀胱のTCCを有するが、HA−H
Aアーゼ試験が盲検(研究B)に含まれた腺癌(n=3)と偏平上皮癌(n=1
)患者の全てをも検出したことに注目することが重要である。したがって、HA
−HAアーゼ試験は膀胱の他の稀な悪性腫瘍を検出することにも有用でありうる
。
特異性試験:
HA−HAアーゼ試験の特異性を評価するために、発明者は正常で健康な被験
者(volunteer)と、他のGU症状を有する患者の両方を検査した。研究Aでは、
特異性試験に70人を含めた。これらの70人は22人の正常者と、48人の膀
胱癌以外のGU症状を有する患者とを包含した。GUカテゴリーは前立腺癌(n
=10)、良性前立腺肥大(BPH、n=8)、腎結石(n=5)、膀胱炎(n
=12)、尿路感染症(n=8)、前立腺炎(n=2)、副睾丸炎(n=1)及
び腎臓外傷(n=2)を有する患者を包含した。上述したように、HA試験とH
Aアーゼ試験の特異性はそれぞれ88.6%と88.7%とであった。HAアー
ゼ試験の特異性を評価するためには、G1疾患を有する患者(n=35)を計算
に含めた。
盲検であった研究Bでは、特異性試験は124人(正常者15人、膀胱癌以外
のGU症状を有する患者99人、膀胱癌の病歴を有するが試験の時点ではこの疾
患の膀胱鏡検査による証拠を有さない患者10人)を包含した。GUカテゴリー
は前立腺癌(n=37)、根治的前立腺切除後(n=12)、腎臓/尿管/尿道
癌(n=6)、BPH(n=17)、尿管/腎臓/膀胱結石(n=5)、睾丸癌
(n=2)、尿路感染症(n=5)、血尿(n=2)、膀胱炎(n=3)、性交
不能(n=2)、尿閉症(n=1)、失禁(n=1)、腎痛痛(n=1)、尿道
狭窄(n=1)、精のう炎(seminal vesiculitis)/前立腺炎/副睾丸炎(n=
3)、膀胱頚部攣縮(bladder neck contraction)(n=1)、陰のう血腫(n=
1)及び精管切除(n=1)を有する患者を包含した。上述したように、研究B
では、HA試験とHAアーゼ試験との特異性は、それぞれ、91.1%と91.
2%であった。HAアーゼ試験の特異性を評価するために、G1疾患を有する患
者(n=6)を計算に含めた。
要約すると、HA試験は膀胱癌を腫瘍のグレードに関係なく検出する。しかし
、HAアーゼ試験は高グレード膀胱癌を選択的に検出する。したがって、両分析
を同時におこなうことによって、膀胱癌をスクリーニングして、そのグレードを
判断することができる。さらに、盲検(即ち、研究B)では、HA試験とHAア
ーゼ試験の両方は、一緒にしたときに、41人の膀胱癌患者のうちの2人のみを
当てそこなっただけであった。したがって、一緒にしたHA−HAアーゼ試験の
総感度(95%)は個々のHA試験(92.5%)とHAアーゼ試験(92.5
%)それぞれよりもやや良好であった。
HA−HAアーゼ試験とBARD BTA及びNMP22TMとの比較:
同じような複数の評論科学ジャーナルに発表されたレポートによると、BTA
試験とNMP22TM試験の両方は、膀胱癌の再発を検出するための膀胱癌患者の
フォローアップに用いられている。これらの試験はスクリーニング試験としては
用いられていない。上述したように、マルチセンター試験(multi-center trial)
において、Sarosdy等は、腫瘍のグレードに拘わらず、膀胱癌を検出する
ためのBTA試験の総感度は〜40%であったと報告している。
膀胱癌の病歴を有する90人の患者の研究では、NMP22TMは33件の膀胱
癌再発のうち23件を検出した(総感度70%)。さらに、NMP22TMは侵潤
性疾患を有する全ての膀胱癌患者を検出した。
BTA及びNMP22TMとのHA−HAアーゼ試験の比較を表15と16に示
す。表15と16に示すように、HA−HAアーゼ試験は膀胱癌の検出における
感度、特異性及び罹患率関連パラメーター(prevalence related parameter)に関
してBTA又はNMP22TM試験のいずれよりも良好である。
表15:感度と特異性とに関する、BTA、NMP22TM及びHA−HAアー
ゼ試験の比較。BTA研究“a”は499人の患者を含み、研究“b”は60人
の患者を包含した。NMP22TM研究は90人の患者を含み、HA−HAアーゼ
研究は356人の患者を包含した。a
Sarosdy等,「再発膀胱癌をモニターし、診断するためにBTA試験を
用いたマルチセンター試験の結果」,J.Urol.,154:379〜384
,1995。b
D’HallewinとBaert,「表在的膀胱癌における膀胱腫瘍抗原試
験の初期評価」,J.Urol.,155:475〜476,1995。c
Soloway等,「手術治療後の尿路の潜在性又は迅速再発性移行上皮癌の
検出における新規な腫瘍マーカーNMP22の使用」,J.Urol.,156
:363〜367,1996。
表16:罹患率関連パラメーターに関する、BTA、NMP22TM及びHA−
HAアーゼ試験の比較。BTA研究は499人の患者を含み、NMP22TM研究
は90人の患者を含み、HA−HAアーゼ研究は356人の患者を包含した。P
PV:陽性予測値(positive predictive value);NPV:陰性予測値
(negative predictive value)。a
Sarosdy等,「再発膀胱癌をモニターし、診断するためにBTA試験を
用いたマルチセンター試験の結果」,J.Urol.,154:379〜384
,1995。b
Soloway等,「手術治療後の尿路の潜在性又は迅速再発性移行上皮癌の
検出における新規な腫瘍マーカーNMP22の使用」,J.Urol.,156
:363〜367,1996。
発明者が膀胱癌の病歴を有する10人の患者を再発をモニターするために1年
間フォローした研究において、HA−HAアーゼ試験はこの研究における6件の
再発を全て検出した(総感度100%)。実際に、HA−HAアーゼ試験は、腫
瘍の膀胱鏡検出の3〜6か月前に4件の再発を検出した。したがって、HA−H
Aアーゼ試験は、スクリーニング試験であるばかりでなく、腫瘍再発をモニター
するために用いることができる。
TCC以外の膀胱癌の分析:
周知であるように、TCCは膀胱腫瘍の大部分(90〜95%)を成す。偏平
上皮癌と腺癌とが残りの膀胱腫瘍を占める。発明者は腺癌からの3サンプルと偏
平上皮癌患者からの1サンプルとを分析した。これらの腫瘍の全てはHA−HA
アーゼ試験によって検出された。これは、本発明のHA−HAアーゼ試験があら
ゆるタイプの膀胱腫瘍を検出することができることを意味する。
実施例5.HA−HAアーゼ尿試験による、膀胱癌の治療効力と再発とのモニタ
ーリング
研究#1では、発明者は、25人の膀胱癌患者の治療前と治療後との尿中HA
レベル及びHAアーゼレベルを比較した。これらの結果を膀胱鏡検査及び細胞学
と比較した。根治的膀胱切除を受けた患者(n=13)に関して、HA(395
.6±106)とHAアーゼ(33±5.4)の両方の手術前の高いレベルは、
8人では正常値に戻った(P<0.0025)。残りの5人の患者のうちの4人
では、高い尿中HAレベル及びHAアーゼレベルは1/2〜1/5に低下した。
膀胱スペアリング療法(bladder sparing treatment)を受けた患者(n=12)
では、高い治療前HAレベルとHAアーゼレベルは、それぞれ、281±100
と33.5±4.5であった。これらのレベルは、部分的膀胱切除を受けた3人
の患者のうちの2人では正常値に戻り、そのレベルが低下しなかった1人の患者
は6か月目に再発を示した。TURBT+膀胱内治療を受けた7人の患者では、
尿中HAレベル及びHAアーゼレベルが3人の患者において正常値に戻り、これ
らの患者のうちの2人は1年目に腫瘍を有さない。7人の患者のうちの4人では
、尿中HAレベル及びHAアーゼレベルが正常値に戻らず、これらのうちの3人
は3〜9か月目に再発を示し、4人目の患者は固執的な腫瘍を有した。2人の患
者はTURBTのみを受けた;1人の患者の高いHAレベル及びHAアーゼレベ
ルは低下せず、腫瘍が6か月目に再発した。他方の患者は正常化し、1年目には
腫瘍を有さない。発明者は膀胱癌の病歴を有する10人の患者をもモニターして
、再発のモニターリングにおけるHA−HAアーゼ試験の有用性を評価した。H
A−HAアーゼ試験は、膀胱癌再発を有した6人の患者の全てを同定した。HA
−HAアーゼ試験は、腫瘍の膀胱鏡検査による検出の3〜6か月前に4人の患者
における癌の再発を検出した。
研究#2では、膀胱癌再発を検出するためのHA−HAアーゼ試験の効力を二
重盲検方法で評価した。膀胱癌の既知病歴を有する60人の患者から回収された
71連続尿サンプルをHA−HAアーゼ試験によって検査し、結果を膀胱鏡検査
、膀胱腫瘍の経尿道切除(TURBT)又は膀胱切除からの同時所見(concurren
t findings)と比較した。再発の臨床証拠を示した50人の患者のうち、44人
はHA−HAアーゼ試験によって、88%の総感度(偽陰性率12%)と84.
5%の精度で検出された。初期膀胱スペアリング療法後の3か月間〜1年間18
人の膀胱癌患者をモニターすることによって、HA−HAアーゼ試験の精度をさ
らに評価した。この患者グループでは、HA−HAアーゼ試験は42件の再発エ
ピ
ソードのうちの39件を92.9%の総感度(偽陰性率7.1%)で検出した。
5人の偽陽性者のうち、結局、再発は3例において3〜6か月後に確認された。
これらの研究は、HA−HAアーゼ試験が治療効力と腫瘍再発とをモニターす
るために有用であることを示す。結論として、HA−HAアーゼ試験は膀胱癌発
生と再発の両方をモニターするために高感度で、高特異性の非侵襲性方法である
。
本発明をその実施態様に関して、詳細に説明したが、上述し、特許請求した本
発明の要旨及び範囲から逸脱せずに種々な変化及び変更がなされうることは、当
業者に明らかであろう。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 ブロック,ノーマン,エル.
アメリカ合衆国33156 フロリダ州マイア
ミ,エス.ダブリュ.セブンティセカンド
アベニュー 11900
(72)発明者 ファム,ヘンリー,ティ.
アメリカ合衆国33180 フロリダ州マイア
ミ,エヌ.イー.ワンハンドレッド アン
ド ナインテイス ストリート 3060
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.膀胱癌をスクリーニングする方法であって、次の工程: (a)膀胱癌を有すると疑われるヒトからサンプルを得る工程と; (b)サンプル中のヒアルロン酸量を定量し、標準化する工程と; (c)ヒアルロン酸の標準化量を、膀胱癌の存在に関するヒアルロン酸のカット オフ限界と比較することによって、ヒアルロン酸の標準化量がヒアルロン酸のカ ットオフ限界よりも大きいときに、前記ヒトを膀胱癌の大きい危険性を有すると 同定する工程と を含む上記方法。 2.サンプルが胆汁、血液、血漿、血清、組織抽出物、尿及び組織洗浄流体か ら成る群から選択される、請求項1記載の方法。 3.膀胱癌を治療されたヒトからサンプルが得られ、ヒアルロン酸の標準化量 がヒアルロン酸のカットオフ限界より大きいことが、該ヒトが膀胱癌の再発の大 きな危険状態にあることを示す、請求項1記載の方法。 4.サンプル中のヒアルロン酸が酵素分析、イムノアッセイ、ラジオアッセイ 、及び競合的結合分析から成る群から選択される分析によって定量される、請求 項1記載の方法。 5.サンプル中のヒアルロン酸が次の工程: (1)ヒアルロン酸によってサポートを被覆する工程と; (2)ヒアルロン酸結合性タンパク質をサンプルの存在下でサポートと接触させ て、サポートを被覆するヒアルロン酸とサンプル中のヒアルロン酸とをヒアルロ ン酸結合性タンパク質への結合に関して競合させる工程と; (3)サポートに結合したヒアルロン酸結合性タンパク質の量の測定に基づいて 、サンプル中のヒアルロン酸量を算出する工程と を含む分析によって定量される、請求項1記載の方法。 6.結合したヒアルロン酸結合性タンパク質の量が酵素結合分析によって測定 される、請求項5記載の方法。 7.ヒアルロン酸量がヒトの水分補給状態に基づいて標準化される、請求項1 記載の方法。 8.ヒアルロン酸量がサンプルのタンパク質濃度に基づいて標準化される、請 求項1記載の方法。 9.ヒアルロン酸のカットオフ限界がサンプル中のタンパク質1mgにつきヒ アルロン酸約100ngである、請求項8記載の方法。 10.膀胱癌が移行上皮癌、偏平癌及び腺癌から成る群から選択される、請求 項1記載の方法。 11.次の工程: (d)サンプル中のヒアルロニダーゼ量を定量し、標準化する工程と; (e)ヒアルロニダーゼの標準化量を、膀胱癌の存在に関するヒアルロニダーゼ のカットオフ限界と比較することによって、ヒアルロン酸の標準化量がヒアルロ ン酸のカットオフ限界よりも大きく、かつヒアルロニダーゼの標準化量がヒアル ロニダーゼのカットオフ限界よりも小さいときに、ヒトを低グレード膀胱癌を有 すると同定する工程と をさらに含む、請求項1記載の方法。 12.ヒアルロニダーゼ量がヒトの水分補給状態に基づいて標準化される、請 求項11記載の方法。 13.ヒアルロニダーゼ量がサンプルのタンパク質濃度に基づいて標準化され る、請求項11記載の方法。 14.ヒアルロニダーゼのカットオフ限界がサンプル中のタンパク質1mgに つきヒアルロニダーゼ約10mUである、請求項13記載の方法。 15.次の工程: (d)サンプル中のヒアルロニダーゼ量を定量し、標準化する工程と; (e)ヒアルロニダーゼの標準化量を、膀胱癌の存在に関するヒアルロニダーゼ のカットオフ限界と比較することによって、ヒアルロン酸の標準化量がヒアルロ ン酸のカットオフ限界よりも大きく、かつヒアルロニダーゼの標準化量がヒアル ロニダーゼのカットオフ限界よりも大きいときに、ヒトを中グレード又は高グレ ード膀胱癌を有すると同定する工程と をさらに含む、請求項1記載の方法。 16.ヒアルロニダーゼ量がヒトの水分補給状態に基づいて標準化される、請 求項15記載の方法。 17.ヒアルロニダーゼ量がサンプルのタンパク質濃度に基づいて標準化され る、請求項15記載の方法。 18.ヒアルロニダーゼのカットオフ限界がサンプル中のタンパク質1mgに つきヒアルロニダーゼ約10mUである、請求項15記載の方法。 19.膀胱癌のスクリーニング方法であって、次の工程: (a)膀胱癌を有すると疑われるヒトからサンプルを得る工程と; (b)サンプル中のヒアルロニダーゼ量を定量し、標準化する工程と; (c)ヒアルロニダーゼの標準化量を、膀胱癌の存在に関するヒアルロニダーゼ のカットオフ限界と比較することによって、ヒアルロニダーゼの標準化量がヒア ルロニダーゼのカットオフ限界よりも大きいときに、前記ヒトを膀胱癌の大きい 危険性を有すると同定する工程と を含む上記方法。 20.サンプルが胆汁、血液、血漿、血清、組織抽出物、尿及び組織洗浄流体 から成る群から選択される、請求項19記載の方法。 21.膀胱癌を治療されたヒトからサンプルが得られ、ヒアルロニダーゼの標 準化量がヒアルロニダーゼのカットオフ限界より大きいことが、該ヒトが膀胱癌 の再発の大きな危険状態にあることを示す、請求項19記載の方法。 22.サンプル中のヒアルロニダーゼが酵素分析、イムノアッセイ、ラジオア ッセイ、及び競合的結合分析から成る群から選択される分析によって定量される 、請求項19記載の方法。 23.サンプル中のヒアルロニダーゼが次の工程: (1)ヒアルロン酸によってサポートを被覆する工程と; (2)サンプル中のヒアルロニダーゼがサポートを被覆するヒアルロン酸の少な くとも一部を分解する条件下で、サンプルをサポートと接触させる工程と; (3)ヒアルロン酸結合性タンパク質をサポート上の残留ヒアルロン酸に結合さ せる工程と; (4)固体サポートに結合したヒアルロン酸結合性タンパク質の量の測定に基づ いて、サンプル中のヒアルロニダーゼ量を算出する工程と、 を含む分析によって定量される、請求項19記載の方法。 24.結合したヒアルロン酸結合性タンパク質の量が酵素結合分析によって測 定される、請求項23記載の方法。 25.ヒアルロニダーゼ量がヒトの水分補給状態に基づいて標準化される、請 求項19記載の方法。 26.ヒアルロニダーゼ量がサンプルのタンパク質濃度に基づいて標準化され る、請求項19記載の方法。 27.ヒアルロニダーゼのカットオフ限界がサンプル中のタンパク質1mgに つきヒアルロニダーゼ約10mUである、請求項26記載の方法。 28.膀胱癌が移行上皮癌、偏平癌及び腺癌から成る群から選択される、請求 項19記載の方法。 29.次の工程: (d)サンプル中のヒアルロン酸量を定量し、標準化する工程と; (e)ヒアルロン酸の標準化量を、膀胱癌の存在に関するヒアルロン酸のカット オフ限界と比較することによって、ヒアルロン酸の標準化量がヒアルロン酸のカ ットオフ限界よりも小さいときに、ヒトを中グレード又は高グレード膀胱癌を有 すると同定する工程と をさらに含む、請求項19記載の方法。 30.ヒアルロン酸量がヒトの水分補給状態に基づいて標準化される、請求項 29記載の方法。 31.ヒアルロン酸量がサンプルのタンパク質濃度に基づいて標準化される、 請求項29記載の方法。 32.ヒアルロン酸のカットオフ限界がサンプル中のタンパク質1mgにつき ヒアルロン酸約100ngである、請求項31記載の方法。 33.膀胱癌をグレードによって識別する方法であって、次の工程: (a)膀胱癌を有すると疑われるヒトからサンプルを得る工程と; (b)サンプル中のヒアルロン酸量を定量し、標準化する工程と; (c)サンプル中のヒアルロニダーゼ量を定量し、標準化する工程と; (d)ヒアルロン酸の標準化量を膀胱癌の存在に関するヒアルロン酸のカットオ フ限界と比較する工程と; (e)ヒアルロニダーゼの標準化量を膀胱癌の存在に関するヒアルロニダーゼの カットオフ限界と比較する工程と; (f)ヒアルロン酸の標準化量がヒアルロン酸のカットオフ限界よりも大きく、 かつヒアルロニダーゼの標準化量がヒアルロニダーゼのカットオフ限界よりも小 さいときに、該ヒトを低グレード膀胱癌を有すると同定する、又はヒアルロニダ ーゼの標準化量がヒアルロニダーゼのカットオフ限界よりも大きいときに、該ヒ トを中グレード又は高グレード膀胱癌を有すると同定する工程と を含む上記方法。 34.膀胱癌を治療されたヒトからサンプルが得られ、サンプル中のヒアルロ ン酸の標準化量がヒアルロン酸のカットオフ限界より大きいことが、該ヒトが膀 胱癌の再発の大きな危険状態にあることを示す、請求項33記載の方法。 35.膀胱癌を治療されたヒトからサンプルが得られ、サンプル中のヒアルロ ニダーゼの標準化量がヒアルロニダーゼのカットオフ限界より大きいことが、該 ヒトが膀胱癌の再発の大きな危険状態にあることを示す、請求項33記載の方法 。 36.標準化がヒトの水分補給状態又はサンプルのタンパク質濃度に基づいて おこなわれる、請求項33記載の方法。 37.ヒアルロン酸のカットオフ限界がサンプル中のタンパク質1mgにつき ヒアルロン酸約100ngである、請求項33記載の方法。 38.ヒアルロニダーゼのカットオフ限界がサンプル中のタンパク質1mgに つきヒアルロニダーゼ約10mUである、請求項33記載の方法。 39.ヒアルロン酸又はヒアルロニダーゼの量を標準化する方法であって、下 記工程: (a)サンプルを得る工程と; (b)サンプル中のヒアルロン酸又はヒアルロニダーゼの量を定量する工程と; (c)サンプル中のヒアルロン酸又はヒアルロニダーゼの量を標準化する工程と を含む上記方法。 40.流体サンプルが腹水、胆汁、血液、脳脊髄液、リンパ液、腹腔浸出液、 血漿、精液、血清、滑液、組織抽出物、尿、硝子体液、及び組織洗浄流体から成 る群から選択される、請求項39記載の方法。 41.ヒアルロン酸又はヒアルロニダーゼの量がサンプルのタンパク質濃度に 基づいて標準化される、請求項39記載の方法。 42.膀胱癌を検出するための診断キットであって、 (a)ヒアルロン酸、 (b)ヒアルロン酸結合性タンパク質、及び (c)生物学的流体のサンプル中のヒアルロン酸及び/又はヒアルロニダーゼを 定量するために適した補助試薬 を含み、構成要素(a)、(b)及び(c)が別々の容器に入って備えられる上 記キット。 43.ディップスティック試験デバイスの形状である、請求項42記載の診断 キット。 44.ELISA様試験デバイスの形状である、請求項42記載の診断キット 。 45.ヒアルロニダーゼp65又はp55の富化画分を含む組成物。 46.請求項45記載のヒアルロニダーゼp65又はp55によって生じたヒ アルロン酸フラグメントを含む組成物。 47.請求項45記載のヒアルロニダーゼp65又はp55に対する抗体を含 む組成物。 48.膀胱癌のスクリーニング方法であって、次の工程: (a)膀胱癌を有すると疑われるヒトからサンプルを得る工程と、 (b)サンプル中のヒアルロン酸及び/又はヒアルロニダーゼを分離して、サイ ズプロフィルを得る工程と、 (c)サイズプロフィルに基づいて該ヒトを膀胱癌の大きい危険性を有すると同 定する工程と を含む上記方法。 49.膀胱癌を有するヒトの尿から得られたヒアルロン酸の富化画分を含む組 成物。 50.次の工程: (a)細胞培養物を得る工程と、 (b)細胞の増殖を誘導する条件下で該培養物に請求項49記載のヒアルロン酸 を加える工程と を含む細胞増殖分析。 51.請求項50記載の細胞増殖を薬物によって阻害する工程を含む薬物スク リーニング分析。 52.膀胱癌のスクリーニング方法であって、次の工程: (a)膀胱癌を有すると疑われるヒトからサンプルを得る工程と、 (b)細胞培養物に該サンプルを加える工程と、 (c)細胞培養物の増殖によって、該ヒトを膀胱癌の大きい危険性を有すると同 定する工程と を有する上記方法。
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