【発明の詳細な説明】
粉末塗料、およびパッケージング容器の内部コーティングのためのその使用
発明の分野
本発明は、ポリヒドロキシ官能性樹脂およびポリイソシアネート硬化剤をベー
スとする、特に、パッケージング容器の内部コーティング用の粉末コーティング
に関する。本発明は、さらに、パッケージング容器を内部コーティングするため
の方法、および該粉末コーティングの使用に関する。
従来の技術
パッケージング容器の内部には、一方では、溶出する金属板の成分の不利な影
響から内容物を保護するために、そして他方では、侵食性の内容物による金属板
の腐蝕を防ぐために、通常、コーティングが提供される。
通常は、パッケージング容器のこのコーティングは、主に、有機系に不溶のコ
ーティング材料により達成される。しかしながら、この結果、コーティングフィ
ルムが乾燥される際、環境への溶媒汚染がひどくなる。従って、これらのコーテ
ィング材料を少量溶媒または無溶媒の代替品に置き換えるために多くの試みがな
されている。缶の溶接継ぎ目を被覆する多くの場合に、例えば、熱可塑性の粉末
コーティングが既に使用されている。これらのコーティング生成物は、対応する
熱可塑性物質から、高価な低温ミル加工(milling)により製造されている。
EP-B-119164は、食品または飲料を保存するために使用される金属容器の溶接
継ぎ目を被覆するための熱硬化性の粉末コーティングを開示する。これらの熱硬
化性粉末コーティング中のバインダーは、1分子あたり平均2個を超えないエポ
キシド基を有する芳香族エポキシ樹脂と、1分子あたり平均2個より多いエポキ
シド基を有する芳香族エポキシ樹脂との混合物である。用いられる硬化剤は、フ
ェノール性ヒドロキシル基に基づいて220〜280当量を有する、ビスフェノールA
のジグリシジルエーテルとビスフェノールAとの縮合生成物であるか、または酸
性ポリエステル、またはそれらの混合物である。
これらの粉末コーティングは、パッケージング容器の溶接継ぎ目を被覆するた
めのみに使用されている。EP-B-119164は、これらの粉末コーティングをパッケ
ージング容器の内部コーティングのために同様に使用することの記載も、内部保
護コーティングとしての使用のためにこれらの粉末コーティングを改変する方法
に関する記載も含まない。特に、EP-B-119164には、粉末コーティングの粒子サ
イズおよび粒子サイズ分布に関する記載は無い。しかし、これらのEP-B-119164
の粉末コーティング(従来の内部コーティングの粒子サイズ分布を有する)の使
用は、内部コーティングに関して従来の、薄いコート厚み(≦15μm)に対して
多孔性が高すぎるコーティングとなる。
さらに、DE-C2312409は、自動車の車体、機械、プラントおよび容器のコーテ
ィング用の、熱硬化可能な、溶媒含有コーティング組成物および無溶媒コーティ
ング組成物を開示する。これらの組成物は、1分子あたり1個より多い1,2-エポ
キシ基を有するエポキシ樹脂および1分子あたり1個より多いフェノール性OH
基を有するポリオール、そしてさらに、通常の助剤および添加剤からなる。
自動車のトップコートの調製のために、DE-C2312409に従い、25μmの乾燥フィ
ルムコート厚みにおいて、0.044mmを超えない粒子サイズの粉末コーティングが
適用されている。
この粉末コーティング粒子の粒子サイズについても粒子サイズ分布についても
、パッケージング容器の内部コーティングの製造に適切な粉末コーティングの記
載をしていない。さらに、DE-C2312409は、意図される粉末コーティングの使用
に依存する、粒子サイズおよび粒子サイズ分布に特定の調整をする必要があるこ
との記載はない。しかし、44μmの最大粒子サイズと通常の粒子サイズ分布とを
有する粉末コーティングは、通常の薄いコート厚み(≦15μm)でのパッケージ
ング容器の内部コーティングの製造には適していない。なぜなら、得られるコー
ティングの多孔性が高すぎるからである。
さらに、US-A3,962,486は、エポキシ樹脂と硬化剤とを含む、缶の内部コーテ
ィング用の粉末コーティングを開示する。US-A3,962,486で特定されている典型
的な硬化剤は、触媒性硬化剤、芳香族アミン、エポキシアミン付加物および酸無
水物である。プラズマスプレーコーティング技術の使用によって、一般に食品用
パッケージングの内部コーティングに定められる要求を満足する13μm未満の薄
いコート厚みのコーティングでさえ製造可能である。プラズマスプレー技術によ
る適用の可能性を保障するために、≦100μmの最大粒子サイズおよび十分低い溶
融粘度を有する粉末コーティングのみ、使用が認められる。
US-A3,962,486に記載の粉末コーティングの不利な点は、アミン系硬化剤の使
用により生じる脆化への傾向、および得られたコーティングの非常に乏しい弾性
である。酸無水物硬化剤は、高い刺激性であり、そしてそれによる粉末コーティ
ングの処方の過程で特別の防護手段を必要とする不利な点を有する。
さらに、US-A4,183,974も同様に、エポキシ樹脂およびアミン硬化剤を含む、
缶の内部コーティング用の粉末コーティングを開示している。これらの粉末コー
ティングは、1〜100μmの間、好ましくは1〜10μmの間の平均粒子サイズを有す
る。得られるコーティングは実際に、≦13μmのコート厚みでさえも要求される
低多孔性を有するが、得られるコーティングの脆化への傾向および非常に乏しい
弾性は、さらに改良が必要な点である。
最後に、DE-A-4038681は、粉末コーティング粒子の粒子サイズ分布に適切に調
整がなされた、パッケージング容器の内部コーティング用および溶接継ぎ目の被
覆用の両方に適する、エポキシ樹脂ベースの粉末コーティングを開示する。これ
らの粉末コーティング中に存在する硬化剤は、カルボキシル含有ポリエステルで
ある。
DE-A-4204266は、エポキシ樹脂およびフェノール系硬化剤をベースとする粉末
コーティングを記載し、そして、この中には、DE-A-4038681より知られる粉末コ
ーティングのように、粉末コーティング粒子の粒子サイズ分布に特定の調整がな
されている。
DE-A-4038681およびDE-A-4204266の粉末コーティングにより全ての利点を有す
るが、このような粉末コーティングは、パッケージング容器の内部コーティング
材料として使用される際には、酸、溶媒および洗剤に対する不十分な耐性という
特定の不利な点を有する。
課題および解決手段
従って、本発明の課題は、酸、溶媒および洗剤に耐性である粉末コーティング
を提供すること、そしてパッケージング容器の内部コーティングに使用される際
、薄いコート厚み≦15μmで付与される場合でさえも、一般に容器の内部コーテ
ィングに定められる要求を満足する粉末コーティングを提供することである。特
に、これらの内部コーティングは、多孔性(いわゆるエナメル評価試験(enamel
rater test)を用いて決定される)であるべきでなく、基材への良好な接着性
を示すべきであり、そして高い弾性を有するべきである。同時に、この粉末コー
ティングは、容器コーティングについて通常の短い乾燥時間内で硬化され得るべ
きである。
驚くべきことに、この課題は、特にパッケージング容器の内部コーティング用
において、以下を特徴とする、ポリヒドロキシ官能性樹脂およびポリイソシアネ
ート硬化剤をベースとする粉末コーティングによって解決される。
1)以下を含む、粉末コーティング:
A)1グラムあたり、KOH 5〜200mgのヒドロキシル数を有する、少なくとも
1種のポリヒドロキシ官能性樹脂、および
B)1分子あたり1個より多いイソシアネート基を有する少なくとも1種の
ポリイソシアネート硬化剤、
ならびに
2)該粉末コーティングは、以下のような粒子サイズ分布を有する:
a)該粉末コーティング粒子の少なくとも90重量%が、1〜60μmの粒子サイ
ズを有し、
b)該粉末コーティング粒子の少なくとも99重量%の最大粒子サイズが、≦
100μmであり、
c)該粉末コーティング粒子の平均粒子サイズが、5〜20μmであり、そして
d)粒子分布曲線の変曲点での傾きが、≧100である。
さらに本発明は、これらの粉末コーティングが付与される過程における、パッ
ケージング容器の内部コーティングの方法に関する。
本発明の別の最終的な主題は、パッケージング容器の内部コーティングのため
の粉末コーティングの使用である。
特性のプロフィール、従って、ポリヒドロキシ官能性樹脂およびイソシアネー
ト硬化剤をベースとする粉末コーティングの使用の目的が、特定の粒子サイズ分
布の確立により目標の様式で制御され得ることは、驚くべきことであり、そして
予見されなかったことである。同時に、新規な粉末コーティングは、迅速に硬化
可能であり、取り扱いが簡単であり、かつ容易に付与される。
さらに、新規な粉末コーティングは、わずか≦15μmの非常に薄いコート厚み
を有するコーティングは、容器製造者が内部コーティングに要求する特性を有す
るという事実により特色付けられる。特に、≦15μmの薄いコート厚みでさえ、
これらのコーティングは、要求される低い多孔性を有する。さらに、これらのコ
ーティングは、良好な接着性、高いフレキシビリティー、ならびに酸、溶媒およ
び洗剤に対する優れた耐性により特色付けられる。
発明の手段
粉末コーティングの成分
本明細書の以下では、まず最初に、新規な粉末コーティングの個々の成分をよ
り詳細に記載する。
新規な粉末コーティングに使われるポリヒドロキシ官能性樹脂(成分A)は、
1gあたり、KOH 5〜200mgのヒドロキシル数を有する固体のポリマー樹脂である
。
ポリヒドロキシ官能性樹脂Aとしては、例えば、500〜200,000ダルトンの間、
好ましくは1,000〜100,000ダルトンの間の重量平均分子量Mwを有するポリエス
テル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアクリレートおよび/またはポリシロ
キサン樹脂を使用することができる。適切なポリヒドロキシ官能性ポリエステル
A(ポリエステルポリオール)は、例えば、有機ジカルボン酸またはそれらの誘
導体と有機ジ−および/またはポリオールとをエステル化することによって調製
され、そしてポリエステル中の遊離ヒドロキシル基を消費して分岐する場所を生
成することを抑制することが必要である。
使用されるジカルボン酸は、好ましくは脂肪族、脂環式の、飽和または不飽和
カルボン酸、および/または芳香族性二塩基カルボン酸、ならびにそれらの無水
物および/またはそれらのエステルである。挙げられ得る例は、以下である:フ
タル酸(無水物)、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ−またはヘキサ
ヒドロフタル酸(無水物)、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、コハク酸、
グルタル酸、セバシン酸、アゼライン酸、フマル酸、およびマレイン酸である。
最も一般的なものは、イソフタル酸およびフタル酸(無水物)である。
ポリオール単位として、非芳香族炭素原子に結合した、1〜6個、好ましくは1
〜4個のヒドロキシル基を有する、脂肪族、脂環式および/または芳香族性脂肪
族(araliphatic)アルコールを使用するのが好ましい。挙げられ得る例[lacuna]
は、以下である:エチレングリコール(ethylene gglycol[sic])、プロパン-1,
2-および-1,3-ジオール、ブタン-1,2-、-1,3-および1,4-ジオール[sic]、2-エチ
ルプロパン-1,3-ジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、1,3-ネオペンチル
グリコール、2,2-ジメチルペンタン-1,3-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、シ
クロヘキサン-1,2-および-1,4-ジオール、1,2-および1,4-ビス(ヒドロキシメチ
ル)シクロヘキサン、ビス(エチレングリコール)アジペート、エーテルアルコ
ール(例えば、ジ−およびトリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、
過水素化ビスフェノール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオー
ル、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールヘキサン
、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニトー
ル、およびソルビトール)、ならびに1〜8個の炭素原子を有する鎖末端モノアル
コール(例えば、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、ベンジルア
ルコール、およびヒドロキシピバル酸)。好ましく用いられるアルコールは、グ
リセロール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールおよびペンタエ
リスリトールである。
ポリエーテルポリオールAとして、例えば、アルキレン単位あたり、2〜6個の
炭素原子および少なくとも1個の遊離ヒドロキシル基を有し、ポリマ−1分子あ
たりの繰り返しアルキレン単位数が2〜100個の間、好ましくは5〜50個の間であ
るポリアルキレンエーテルを使用することができる。例は、ポリ-2-ヒドロキシ-
1,3-プロピレンオキシド、ポリ-2-またはポリ-3-ヒドロキシ-1,4-ブチレンオキ
シドである。
ポリヒドロキシ官能性ポリウレタンA(ポリウレタンポリオール)の単位は、
例えば、すでに上記のように、非芳香族炭素原子に結合した1〜6個、好ましくは
1〜4個のヒドロキシル基を有する、脂肪族、脂環式および/または芳香族性脂肪
族アルコールであり得る。さらにまた、ポリウレタン単位として上記のポリエス
テルポリオール自身を使用することもでき、この場合例えば架橋の結果として、
ポリウレタンポリオールの合成時における、最初の特定の分子量制限(Mw500
〜200,000ダルトン、好ましくは1,000〜100,000ダルトン)を超えないことが保
障されねばならない。ポリウレタンポリオールAの合成時のポリイソシアネート
成分として、脂肪族および/または脂環式および/または芳香族ジイソシアネー
トを使用することができる。好ましく使用される芳香族ジイソシアネートの例は
、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソ
シアネート、ビフェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、お
よびジフェニルメタンジイソシアネートである。脂環式ポリイソシアネートの例
は、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、および
芳香族ジイソシアネートの水素化生成物(例えばシクロヘキシレンジイソシアネ
ート、メチルシクロヘキシレン(methycyclohexylene)ジイソシアネート、およ
びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)である。脂肪族ジイソシアネート
の例は、トリメレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペン
タメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレンジ
イソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、ジメチルエチル[sic]ジ
イソシアネート、メチルトリメチレンジイソシアネート、およびトリメチルヘキ
サンジイソシアネートである。
ポリヒドロキシ官能性ポリアクリレートA(ポリアクリレートポリオール)の
例として挙げられるものは、コモノマー単位として、好ましくはアクリル酸、メ
タクリル酸または別のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキ
ルエステルを含むものから製造され得る。これらのエステルは、酸でエステル化
されるアルキレングリコールから誘導され得るか、または酸とアルキレンオキシ
ドとを反応させることによって得られ得る。
ヒドロキシアルキルエステルとして、ヒドロキシアルキル基が4個までの炭素
原子を有する(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルか、またはこれ
らのヒドロキシアルキルエステルの混合物を使用するのが好ましい。挙げられる
例は、以下である:2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-または3-ヒド
ロキシプロピル(メタ)アクリレート、または4-ヒドロキシブチル(メタ)アク
リレートである。
他のコモノマー単位として、ポリアクリレートポリオールは、例えば、エステ
ル基中に20個までの炭素原子を有する、脂肪族、脂環式および/または芳香族性
脂肪族(メタ)アクリレート、例えば、以下を含み得る:メチル(メタ)アクリ
レート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル
(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ
)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)ア
クリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート
、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート
、シクロオクチル(メタ)アクリレートフェニル(メタ)アクリレート2-フェニ
ルエチル(メタ)アクリレート、または3-フェニルプロピル(メタ)アクリレー
ト。さらにポリアクリレートポリオールA中のコモノマー単位として、スチレン
、α-アルキルスチレンおよびビニルトルエン、ならびに(メタ)アクリルアミ
ドおよび/または(メタ)アクリロニトリルのようなビニル芳香族炭化水素を使
用し得る。
ポリヒドロキシ官能性ポリシロキサンA(ポリシロキサンポリオール)として
ヒドロキシ官能性置換基を含むオルガノポリシロキサンを使用するのが好ましい
。挙げられ得る例は、メチルヒドロキシエチルポリシロキサン、メチル-3-ヒド
ロキシプロピルポリシロキサンまたはエチル-3-ヒドロシポリシロキサンである
。このようなオルガノポリシロキサンはまた、上記のポリヒドロキシ官能性樹脂
A中でオリゴマー単位および/またはポリマー単位としても存在し得る。これら
のいわゆるオルガノポリシロキサンに関しては、例えば、Ullmanns Enzyklopidi
eder technischen Chemie,4版,21巻,520〜510ページ[sic],Verlag Chemie,W
einheim,Deerfield Beach,Basel,1982を参照のこと。
硬化剤成分Bとして適切なポリイソシアネートは、好ましくは適用温度で固体
の集合体(aggregate)状態の、脂肪族および/または脂環式および/または芳香
族のポリイソシアネートである。好ましく用いられる芳香族ポリイソシアネート
の例は、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレン
ジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネー
ト、およびジフェニルメタンジイソシアネートである。
脂環式ポリイソシアネートの例は、イソホロンジイソシアネート、シクロペン
チレンジイソシアネート、ならびに芳香族ジイソシアネートの水素化生成物(例
えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシア
ネート、およびジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)である。脂肪族ジイ
ソシアネートは、以下の式の化合物である:
OCN−(CR3 2)r−NCO [sic]
ここでrは、2〜20、特に6〜8の整数であり、そしてR3は、同じであっても異っ
てもよく、水素、または1〜8個の炭素原子、好ましくは1個または2個の炭素原子
を有する低級アルキル基を示す。その例は、トリメチレンジイソシアネート、テ
トラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチ
レンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシ
アネート、ジメチルエチル[sic]ジイソシアネート、メチルトリメチレンジイ
ソシアネート、およびトリメチルヘキサンジイソシアネートである。脂肪族ジイ
ソシアネートの別の例は、テトラメチルキシレンジイソシアネートである。
硬化剤成分Bはまた、ジイソシアネートに加えて、2個以上の官能性を有する
ポリイソシアネート部分(例えばトリイソシアネート)も含む。適切と解ってい
るトリイソシアネートは、ジイソシアネートのトリマー化もしくはオリゴマー化
によるか、またはジイソシアネートと、OHまたはNH基を含む多官能性化合物
との反応によって形成される生成物である。これらは、例えば、ヘキサメチレン
ジイソシアネートと水のビウレット(biuret)、ヘキサメチレンジイソシアネー
トのイソシアヌレート、または、イソホロンジイソシアネートのトリメチロール
プロパンによる付加物を含む。必要ならば、平均の官能性は、モノイソシアネー
トを添加することにより減らすことができる。そのような鎖末端モノイソシアネ
ートの例は、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネートおよびス
テアリルイソシアネートである。
分岐剤で改変された硬化剤および/または柔軟性硬化剤もまたもちろん適して
いる。さらに記載された種々の硬化剤の混合物が使用できる。
ポリヒドロキシ官能性樹脂Aは、新規な粉末コーティングにおいて、通常、10
〜90重量%、好ましくは29〜80重量%の量(どちらの場合も粉末コーティングの
全重量に基づく)で使用される。
硬化剤成分Bは、新規な粉末コーティングにおいて、通常、10〜80重量%好ま
しくは10〜50重量%の量(どちらの場合も粉末コーティングの全重量に基づいて
)で使用される。
本発明の新規な粉末コーティングは、さらなる成分Cとして、通常、0.01〜5.
0重量%、好ましくは0.05〜2.0重量%の量(どちらの場合も粉末コーティングの
全重量に基づく)の少なくとも1種の硬化触媒を含む。この触媒は、イソシアネ
ート基とヒドロキシル基との反応を触媒してウレタン基を与える化合物の群から
有利に選択され、その例は、ジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズマレー
ト、または記載された種々の触媒の混合物である。
新規な粉末コーティングは、さらに0〜40重量%、好ましくは15〜25重量%の
フィラー(成分D)を含み得る。
使用されるフィラーは、一般に、無機物(例えば二酸化チタン(例えばKronos
Titan製Kronos2160、Du Pont製Rutil8902、およびSachtleben製RC566)、硫酸
バリウム、およびケイ酸塩ベースのフィラー(例えば、タルク、カオリン、ケイ
酸マグネシウムアルミニウム、マイカなど))である。二酸化チタンおよび石英
砂タイプのフィラーを使用するのが好ましい。
新規な粉末コーティングは、必要ならばさらにまた、0.01〜10重量%、好まし
くは0.1〜2重量%(粉末コーティングの全重量に基づいて)の、他の助剤および
添加剤を含み得る。
粉末コーティングの製造
粉末コーティングは、例えば、押出し機、スクリュー混合機などによる、均質
化および分散化による公知の方法(例えば、BASF Lacke+FarbenAGの製品情報、
「Pulverlacke」、1990を参照のこと)に従って製造される。粉末コーティング
が、それらの製造に従ってミル(milling)によって、もし適切ならば、分級化
するおよびふるいにかけることによって、意図する用途に適応した粒子サイズ分
割に調整されることは、本発明にとって重要なことである。
パッケージング容器の内部コーティングのための使用のために、粒子サイズ分
布は、粉末コーティング粒子の少なくとも90重量%が、1〜60μmの間、すなわち
d(90)=1〜60μmの粒子サイズを有するように調整される。粉末コーティング粒
子の90重量%は、好ましくは、1〜40μmの間(d(90)=1〜40μm)、特に好まし
くは、5〜25μmの間(d(90)=5〜25μm)の粒子サイズを有する。粉末コーティ
ング粒子の少なくとも99重量%の最大粒子サイズは、≦100μm、好ましくは≦60
μm、特に好ましくは<40μmである。粉末コーティング粒子の平均粒子サイズは
、5〜20μmの間、特に好ましくは5〜12μmの間である。さらに、粉末コーティン
グがパッケージング容器の内部コーティングに使用される場合、粒子サイズ分布
は、粒子分布曲線の変曲点での傾きSが、≧100、好ましくは≧150、特に好まし
くは≧200であるように調整されることが、本発明に必須である。特に良好な性
質を有するコーティングを得るために、粉末コーティングの使用にさらに特に好
ましくは、粒子サイズ分布曲線の変曲点での傾きSは、≧300である。
この文脈では、傾斜Sは、粒子分布曲線の変曲点における、f(x2)-f(x1)がゼ
ロに近づくときの、(f(x2)-f(x1))/1g((x2/x1))の極限値として定義される。こ
こで粒子分布曲線は、粒子の絶対直径(x)に対する累積重量%(f(x))のプロッ
トであり、粒子直径は、対数スケール上にプロットされ、累積重量%は比例スケ
ール上にプロットされる。従って、パッケージング容器の内部コーティングとし
て使用するために、ほんの少ない比率の、非常に微細な粒子(粒子サイズ<5μ
m)および同時にまた、ほんの非常に少ない比率の粗い粉末コーティング粒子(
粒子サイズ>25μm)の両方を有する粉末コーティング(すなわち、できるだけ
狭い粒子サイズ分布)が、特に適切である。
粉末コーティングの特定の粒子サイズ分布は、適切であれば、適切な選別機(
sifting)およびふるい(sieving device)とを組み合わせた適切なミルユニッ
ト、例えば、Alpine、AugsburgからのTurboplex超微細選別機と組み合わせたA
lpine、Augsburgからの流動化床向流ミル(AFG)で調節される。
新規粉末コーティング材料によるコーティング
新規な粉末コーティングでコーティングされるパッケージング容器は、最も多
様な材料で作製され得、最も多様な形状およびサイズを有し得、そして様々なプ
ロセスにより生産され得る。しかし、特に、金属容器が新規な粉末コーティング
でコーティングされる。これらの金属容器は、例えば、まずシート金属を丸め、
次いで溶接によってつなぎ合わせることにより生産され得る。次いで、例えば、
端部ピースが、得られた円柱に取り付けられ得る。新規な粉末コーティングは、
缶本体の内部コーティングに用いられる。さらに、深く成形された(deep-drawn
)金属容器も、新規な粉末コーティングで内部をコーティングされ得る。しかし
、粉末コーティングは、もちろん、缶の蓋および缶の底のコーティングにもまた
適切である。
パッケージング容器は、非常に多様な材料(例えば、アルミニウム、黒板(bl
ack sheet)、スズシートおよび様々な鉄アロイなど)からなる。これらには、
ニッケル化合物、クロム化合物、およびスズ化合物をベースとした不動態化層が
提供され得る。
適用は、例えばUS-A4,183,974に記載の公知の方法によって行われる。この文
脈では、粉末コーティング粒子の静電荷電は、摩擦(摩擦電気)または静電荷電
(コロナ技術)によって達成される。
パッケージング容器の内部コーティングのために、粉末コーティングは通常、
コート厚み≦15μm、好ましくは10〜14μmで付与される。これらの薄いコート厚
みでさえ、そのコーティングは、そのようなフィルムに通常定められる要求を満
足する。
内部に新規な粉末コーティングが提供されるパッケージング容器は、粉末コー
ティングを硬化するために続いて熱処理に供される。この熱処理は、種々の方法
で実行され得る。実際は、容器は、しばしばこの目的のために、通過型(throug
h-type)オーブンを通して搬送される。このようなオーブン中で、粉末コーティ
ングは、一般に、180〜350℃の容器温度で5〜300秒間で完全に硬化される。この
場合、通過型オーブンは、一定の温度で操作され得るか、または特定の状況に合
わせて確立した温度プロフィールを持つことができる。
次いで、本明細書の以下では、本発明をより詳細に実施例に関して説明する。
これらの実施例において、全ての部およびパーセントは、もし特に他に言及され
なければ、重量基準である。各々の場合において、粉末コーティングは、缶の中
の全ての構成成分の重量を量り、これらの構成成分を予備混合機で予備混合し、
この混合物を押出し機によって60〜80℃で均質化し、この均質化された混合物を
できるだけ速やかに冷却し、そしてこの冷却混合物をミル装置を用いて所望の粒
子サイズ分布に調整することによって製造した。実施例 実施例1
以下の成分を加工し、粉末コーティング1を得た:
市販のアクリレートオリゴマーベースのレベリング(leveling)剤5部、
細かく粉砕した石英砂タイプのケイ酸塩フィラ−143部、および焼成(pyrogenic
)ケイ酸またはアルミナベースの流動化(fluidizing)助剤2部。
ミル装置を用いて、粒子サイズ分布を、粉末コーティング粒子の少なくとも90
重量%が1〜25μmの間の粒子サイズ(d90=1〜25μm)を有するように調整した。
粒子の少なくとも99重量%の最大粒子サイズは≦100μmであり、平均粒子サイズ
は9μmである。粒子分布曲線の変曲点での傾きSは250である。
この粉末コーティング1を、適切な装置を用いて、容器本体(口径73mm、本体
長さ=110mm)に付与した、缶温度280℃で30秒間ベークし、次いでエナメル評価
試験に供した:コーティングした缶をCu/Cd標準溶液S475(電導度2.2±0.2mS/cm
)に浸し、そしてカソードとしてつないだ。電圧6.3Vを4秒間印加し、そして電
流強度を測定した。コート厚み10μmでさえ電流強度I=1mAを越えなかった。さら
に、
この粉末コーティング1をスズメッキ容器本体にコート厚み15μmで付与し(1m2
あたり2.8mg付与)、そして缶温度280℃で30秒間ベークした。このように得ら
れたコーティングを、種々の試験媒体中で応力試験を行った(室温で試験媒体中
に4週間保存)。応力をかけた後、直接、試験媒体によるコーティングの分離お
よび/または膨潤(目視(visual))、接着性、ならびにコーティングの弾性を試
験した。結果を表1にまとめた。
表1の注釈(Key):
1)接着試験はクロスハッチ(crosshatch)法による(DIN53151)
2)試験はECCA(European Coil Coating Association)規定による
3)保存の前の応力試験前のコーティングの評価
4)試験媒体=1%濃度(strength)ラウリル硫酸ナトリウム水溶液
5)試験媒体=3%濃度酢酸水溶液
6)n-BuOH=n-ブタノール
7)BuAc=酢酸ブチル比較例1
(DE-A-4204266による)
以下の成分を加工し粉末コーティング2を得た:
市販のヒドロキシル等量250を有する、ビスフェノールAベースのOH含有硬化
市販のアクリレートオリゴマーベースのレベリング剤5部、細かく粉砕した石英
砂タイプのケイ酸塩フィラ−143部、および焼成ケイ酸またはアルミナベースの
流動化助剤2部。
粒子サイズ分布を実施例1のように調整した。
粉末コーティング2を実施例1のように適切な装置によって缶本体に付与し、
ベークし、次いで、エナメル評価試験に供した。
このように得られたコーティングを、種々の試験媒体中で応力試験(室温で試
験媒体中で4週間保存)に供した。応力試験後、直接、試験媒体によるコーティ
ングの分離および/または膨潤(目視)、接着性、ならびにコーティングの弾性
を試験した。結果を表2にまとめた。
表2の注釈は、表1の注釈を参照のこと。比較例2
実施例1で示した成分を用いて、粉末コーティングを実施例1の手順と同様に
行って調製した。次に、実施例1と変えて、粉末コーティングの通常の粒子サイ
ズ分布を分級ミルで確立した;この粉末コーティング3の最大粒子サイズは、実
際に、粒子の少なくとも99重量%が≦100μmである。粉末コーティング粒子の少
なくとも90重量%は、1〜70μmの間の粒子サイズ(d(90)=1〜70μm)を有する。
平均粒子サイズは、35μmである。粒子分布曲線の変曲点での傾きSは、135であ
った。
この粉末コーティング3を、適切な装置により、種々のコート厚みで、容器本
体(口径73mm、本体長さ110mm)に付与し、缶温度280℃で30秒間ベークし、次い
で実施例1に記載のエナメル評価機試験に供した。以下の結果を得た:
コート厚み (μm) 15 30 40 50
電流強度 I(mA) >100 >100 22 <1
従って、粉末コーティング3は、パッケージング産業で要求される薄いコーテ
ィングにおいて無孔を提供し得ない。さらに、折り目付けプロセスにおいて、こ
れらの大きい粉末コーティングは、容器の金属板から非常に早くはがれ落ちる。比較例3
実施例1で示した成分を用いて、粉末コーティングを実施例1の手順と同様に
行って調製した。次に、実施例1と変えて、粉末コーティングをこの粉末コーテ
ィング3 [sic]の粒子の少なくとも99重量%の最大粒子サイズが≦50μmであ
るように分級ミルでミル加工(milling)した(通常の細かいミル加工)。粉末コ
ーティング粒子の少なくとも90重量%が、1〜30μmの間の粒子サイズ(d(90)=1
〜30μm)を有する。平均粒子サイズは、15μmである。粒子分布曲線の変曲点で
の傾きSは、92である。
この粉末コーティング4は、流動性および通常の市販の付与装置での付与性が
非常に劣っていることを示した。缶本体のコーティングを可能とするには、非常
に大きな困難を伴った。粉末コーティングを搬送する装置に閉塞が生じた。粉末
コーティング4は、ひどい塊になる傾向があり、そのためにコーティングは明ら
かに不規則なコート厚みとなった。これらの難点があるが、この粉末コーティン
グ4を、種々のコート厚みで容器本体(口径73mm、本体長さ110mm)に付与し、
缶温度280℃で30秒間ベークし、次いで実施例1に記載のエナメル評価機試験に
供した。以下の結果を得た。
コート厚み (μm) 15 20 25 35 45
電流強度 I(mA) >100 78 34 7 <1
従って、この粉末コーティング4は、粉末コーティング3と比較してかなり薄
いコート厚みでさえも無孔のフィルムを形成する;しかし、これらのコート厚み
でさえ、パッケージング容器の製造者によって要求される薄いコート厚み≦15μ
mを、まだ明らかに超えている。さらに、実施例1の粉末コーティングと対照的
に、この粉末コーティング4は、適用性がかなり劣る。比較例4
比較例3に従って得られた粉末コーティング4を、32μmカーボンファイバー
シーブを通してふるいにかけた。得られた粉末コーティング5は、粒子の少なく
とも99重量%の最大粒子サイズが≦32μmである。粉末コーティング粒子の少な
くとも90重量%が、1〜25μmの間の粒子サイズ(d(90):1〜20[sic]μm)を有
する。平均粒子サイズは8μmである。粒子分布の変曲点での傾きSは、80である
。得られた粉末コーティング5は、貯蔵容器中において、非常に短い時間で塊を
形成し、そして再流動不可能であった。従って、コーティングを全く製造するこ
とができなかった。
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(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C09D 175/04 C09D 175/04