JP2000354894A - 内分泌撹乱物質または発ガン性物質を含有する汚水の処理方法及び処理装置 - Google Patents

内分泌撹乱物質または発ガン性物質を含有する汚水の処理方法及び処理装置

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JP2000354894A JP11171365A JP17136599A JP2000354894A JP 2000354894 A JP2000354894 A JP 2000354894A JP 11171365 A JP11171365 A JP 11171365A JP 17136599 A JP17136599 A JP 17136599A JP 2000354894 A JP2000354894 A JP 2000354894A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 内分泌撹乱物質または発ガン性物質を含有す
る汚水を物理化学的に処理する技術において、高額な処
理コストを伴わず、効率良く分解除去を行うことが可能
である処理方法及び処理装置を提供する。 【解決手段】 内分泌撹乱物質または発ガン性物質を含
有する汚水を物理化学的に処理する方法及び装置におい
て、内分泌撹乱物質または発ガン性物質を含有する汚水
を、有機物を分離濃縮する分離工程に導入し、次いで分
離工程で得られた有機物濃縮水を活性酸素により酸化処
理する酸化処理工程に導入することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は内分泌撹乱物質また
は発ガン性物質を含有する汚水の処理にに関するもので
ある。特に最終処分場の浸出水、産業廃水等の汚水を処
理する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】内分泌撹乱化学物質は動物の体内に取り
込まれた場合に、本来その生体内で営まれている正常な
ホルモン作用に影響を与える化学物質をいい、それらの
曝露は人や野生動物の内分泌作用を撹乱し、生殖機能障
害、悪性腫瘍などを引き起こす可能性があると指摘され
ている。これら内分泌撹乱物質は極めて低濃度で作用
し、特に胎児期など発生段階で深刻な影響を与え、成長
後にその影響が発現するなどの可能性が指摘されている
ことから、生物存続に関わる重大な影響をもたらす可能
性も懸念されている。これまでに魚類、は虫類、鳥類な
どの野生生物において、生殖機能異常、生殖行動異常、
雄の雌性化、ふ化能力の低下などと内分泌撹乱物質との
関連が指摘されている。さらに人においても精子数の減
少、前立腺癌の増加、および子宮内膜症の増加の傾向性
と内分泌撹乱物質との関連も指摘されている。動物実験
の結果では、いくつかの化学物質によって精巣停留や精
子数の減少などの生殖機能障害や子宮内膜症などが引き
起こされることが確認されている。発ガン性物質は細胞
の癌化を促進することが知られている。
【0003】これまでの調査により内分泌撹乱物質およ
び発ガン性物質として疑われているものとしては、PC
B類、ダイオキシン類、ポリ臭化ビフェニル、ヘキサク
ロロベンゼン、ペンタクロロフェノール、2,4,5−
トリクロロフェノキシ酢酸、2,4−ジクロロフェノキ
シ酢酸、アミトロール、アトラジン、シマジン、ヘキサ
クロロシクロヘキサン、エチルパラチオン、カルバリ
ル、クロルデン類、1,2−ジブロモ−3−クロロプロ
パン、DDTおよびその代謝物(DDE、DDD)、ケ
ルセン、アルドリン、エンドリン、ディルドリン、エン
ドサルファン、ヘプタクロルおよびヘプタクロルエポキ
シド、マラチオン、メソミル、メトキシクロル、マイレ
ックス、ニトロフェン、トキサフェン、カンフェクロ
ル、有機スズ(トリブチルスズなど)、トリフルラリ
ン、アルキルフェノール類、ビスフェノールA、フタル
酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ブチルベンジ
ル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジシクロヘキシル、フ
タル酸ジエチル、ベンゾ(a)ピレン、カドミウム、
鉛、水銀、2,4−ジクロロフェノール、アジピン酸
(2−エチルヘキシル)、ベンゾフェノン、4−ニトロ
トルエン、ジオキサン等が挙げられている。
【0004】これらは、それぞれ、難燃剤、殺菌剤、殺
虫剤、防汚材、腐食防止剤、熱媒体、防腐剤、除草剤、
樹脂の硬化剤、樹脂原料、プラスチック可塑剤、溶媒な
どとして、または燃焼過程で生成され、物質によって異
なるが概ねμg/リットル〜pg/リットルオーダーの濃度で環
境水中で検出されている。このような濃度レベルはCO
D、TOC等から推測される水中有機物濃度のmg/リッ
トルオーダーに比べて非常に低いものであるが、これらの
内分泌撹乱化学物質が、非常に微量な量で上記のような
作用を引き起こすことが知られていることから、環境水
中あるいは環境に放出される以前の水に含まれる微量の
内分泌撹乱化学物質を除去する技術の開発が望まれてい
る。特に埋立地浸出水は、様々な種類の内分泌撹乱物質
および発ガン性物質が含まれており、濃度も高い(ダイ
オキシン類が100〜5000pg/リットル、ビスフェノ
ールAが100〜10000ng/リットル、1,4−ジオ
キサンが1000〜100000ng/リットル)ことから
埋立地浸出水中の内分泌撹乱物質および発ガン性物質の
処理は急務である。
【0005】生物難分解性有機物を処理する従来技術と
しては、紫外線、オゾン、過酸化水素、二酸化チタンな
どを組み合わせた光化学的反応あるいは化学反応によっ
て、ヒドロキシラジカルのような活性酸素を発生させる
方法が知られている。しかし、内分泌撹乱物質または発
ガン性物質を含有する汚水にはカルシウムイオン、ナト
リウムイオン、鉄イオン、塩素イオン、アンモニウムイ
オン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、リン酸イオン、重金
属等の無機塩類が多量に含まれている場合が有り、無機
塩類の多くがヒドロキシラジカルと反応することから、
内分泌撹乱物質または発ガン性物質の分解効率が低いと
いう欠点があった。よってこの方法で確実な処理を行う
場合に必要な紫外線照射量、紫外線ランプ本数及び酸化
剤投入量が膨大なものとなってしまうという欠点があっ
た。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、上記の問題点を解決し、ダイオキシン、ビスフェノ
ールA、ジオキサン、フタル酸ジ(2−エチルヘキシ
ル)などの水中に存在する、内分泌撹乱物質または発ガ
ン性物質を含有する汚水を物理化学的に処理する技術に
おいて、高額な処理コストを伴わず、効率良く分解除去
を行うことが可能である処理方法及び処理装置を提供す
ることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来の技
術において確実な処理を行う場合に必要な紫外線照射
量、紫外線ランプ本数及び酸化剤投入量が膨大なものと
なった原因として、(1)内分泌撹乱物質または発ガン
性物質を含有する汚水中で生成するヒドロキシラジカル
等の活性酸素の寿命がnsec〜μsecのオーダーで
あり非常に短く、ヒドロキシラジカル等の活性酸素と有
機物との反応効率は汚水中の有機物濃度に依存するこ
と、(2)内分泌撹乱物質または発ガン性物質を含有す
る汚水にはヒドロキシラジカル等の活性酸素と容易に反
応する無機塩類の濃度が導電率で1000〜10000
0μS/cmと極めて高いことに着目し、本発明に到達
した。即ち、本発明は、下記の手段により前記の目的を
達成することができる。
【0008】(1)内分泌撹乱物質または発ガン性物質
を含有する汚水を物理化学的に処理する方法において、
内分泌撹乱物質または発ガン性物質を含有する汚水を、
有機物を分離濃縮する分離工程に導入し、次いで分離工
程で得られた有機物濃縮水を活性酸素により酸化処理す
る酸化処理工程に導入することを特徴とする内分泌撹乱
物質または発ガン性物質を含有する汚水の処理方法。 (2)前記分離工程において、膜を用いて有機物を分離
濃縮し有機物濃縮水とすることを特徴とする前記(1)
に記載の内分泌撹乱物質または発ガン性物質を含有する
汚水の処理方法。 (3)前記分離工程で使用する膜が、NaCl排除率が
60%以下の逆浸透膜であることを特徴とする前記
(2)に記載の内分泌撹乱物質または発ガン性物質を含
有する汚水の処理方法。
【0009】(4)前記活性酸素の生成が、オゾン、過
酸化水素、紫外線、触媒のうちいずれか2つ以上の組み
合わせによることを特徴とする前記(1)〜(3)のい
ずれかに記載の内分泌撹乱物質または発ガン性物質を含
有する汚水の処理方法。 (5)前記酸化処理工程流出水、または前記分離工程の
膜透過水及び酸化処理工程流出水を処理水とすることを
特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の内分
泌撹乱物質または発ガン性物質を含有する汚水の処理方
法。 (6)前記酸化処理工程流出水の少なくとも一部を分離
工程に導入することを特徴とする前記(1)〜(5)の
いずれかに記載の内分泌撹乱物質または発ガン性物質を
含有する汚水の処理方法。
【0010】(7)内分泌撹乱物質または発ガン性物質
を含有する汚水を物理化学的に処理する装置において、
内分泌撹乱物質または発ガン性物質を含有する汚水中の
有機物を分離濃縮する分離工程を行う手段と、該分離工
程手段からの有機物濃縮水を活性酸素により酸化処理す
る酸化処理工程を行う手段とを有することを特徴とする
内分泌撹乱物質または発ガン性物質を含有する汚水の処
理装置。 (8)前記分離工程手段が、膜を用いて有機物を濃縮
し、有機物濃縮水とする手段であることを特徴とする前
記(1)に記載の内分泌撹乱物質または発ガン性物質を
含有する汚水の処理装置。 (9)前記分離工程手段で使用する膜が、NaCl排除
率が60%以下の逆浸透膜であることを特徴とする請求
項8に記載の内分泌撹乱物質または発ガン性物質を含有
する汚水の処理装置。
【0011】(10)前記酸化処理工程手段における活
性酸素の生成が、オゾン、過酸化水素、紫外線、触媒の
うちいずれか2つ以上の組み合わせによることを特徴と
する前記(7)〜(9)のいずれかに記載の内分泌撹乱
物質または発ガン性物質を含有する汚水の処理装置。 (11)前記酸化処理工程流出水、または前記分離工程
の膜透過水及び酸化処理工程流出水を処理水とする手段
を有することを特徴とする前記(7)〜(10)のいず
れかに記載の内分泌撹乱物質または発ガン性物質を含有
する汚水の処理装置。 (12)前記酸化処理工程流出水の少なくとも一部を分
離工程に導入する手段を有することを特徴とする前記
(7)〜(11)のいずれかに記載の内分泌撹乱物質ま
たは発ガン性物質を含有する汚水の処理装置。
【0012】本発明では以上の工程を行う手段により、
以下に示す作用により内分泌撹乱物質または発ガン性物
質の分解が効率よく行われる。まず、分離工程では原水
中の有機物が分離濃縮された有機物濃縮水が得られる。
次に酸化処理工程では有機物濃縮水に対してオゾンガ
ス、紫外線、過酸化水素、均一触媒、及び不均一触媒の
うちいずれか2つ以上の組合せの反応によって生じたヒ
ドロキシラジカル等の活性酸素による内分泌撹乱物質ま
たは発ガン性物質の酸化分解反応が行われる。ここで、
酸化処理工程で行われる反応には、ヒドロキシラジカル
が極めて重要な役割を果たしているが、分離工程で原水
中の有機物が濃縮されているために、ヒドロキシラジカ
ル等の活性酸素と有機物との反応が促進され、生成した
ヒドロキシラジカル等の活性酸素による有機物の酸化分
解効率が向上する。更に、分離工程でNaCl排除率が
60%以下の逆浸透膜を使用した場合では、無機塩類の
濃縮倍率が有機物の濃縮倍率に比べて有意に低くなり、
ヒドロキシラジカル等の活性酸素と無機物の反応が抑制
される。以上のような効果により、本発明による内分泌
撹乱物質または発ガン性物質を含有する汚水の処理方法
および処理装置を用いることにより汚水中の内分泌撹乱
物質または発ガン性物質が低コストかつ高度に処理さ
れ、安全な処理水を得ることができる。
【0013】まず、分離工程での処理方法の実施形態に
ついて以下に示す。有機物の濃縮手段としては、セルロ
ース系、芳香族ポリアミド系の有機物などを膜材料とし
た逆浸透膜(以下、RO膜ともいう)、またはルーズR
O膜、NF膜等の塩排除率が低い逆浸透膜を用いる方
法、蒸発濃縮法、晶析法、などが挙げられる。特にルー
ズRO膜、NF膜等の逆浸透膜のうち、NaCl排除率
が60%以下と低いものを利用した場合は、無機物と有
機物が共に溶解した原水から有機物を選択的に分離濃縮
した有機物濃縮水を得ることが容易となる。膜モジュー
ルの大きさ、膜モジュール数、膜モジュールの接続方法
は、処理する水量、塩類濃度、有機物濃度、濃縮倍率、
膜面流速に応じて種々選定することができる。
【0014】次に、酸化処理工程での処理方法の実施形
態について以下に示す。紫外線を供給する光源として
は、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ラン
プ、エキシマレーザー等、170〜380nmの範囲の
比較的低波長の紫外線を照射可能なもの、或いは自然
光、蛍光灯等を挙げることができるがこれに限るもので
はない。紫外線の強度、処理コストを考慮した場合、低
圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等の水
銀ランプが望ましい。紫外線ランプの破損防止のために
保護管を使用する場合、材質は170〜380nmの紫
外線透過率が高い石英、又は合成石英が望ましい。
【0015】紫外線の設置方法としては、水またはオゾ
ンガスの流れに対して紫外線ランプのなかで方向を垂直
または水平として並べる方法があるが、水及びオゾンガ
スと紫外線との接触効率を考慮した場合、水及びオゾン
ガスの流れに対して垂直方向に並べる方法が接触効率の
むらが少なくなり好適である。オゾンガスの注入方法と
しては、ディフューザー方式、イジェクター方式、Uチ
ューブ方式、オゾンガスを0.5〜10kg/cm2
加圧状態で溶解させる方式、水中撹拌式散気装置等を挙
げることができるがこれに限るものではない。まだ、反
応槽内に注入した酸素含有気体に対して電気的なエネル
ギーを加えてオゾンガスを発生させる方法も可能であ
る。
【0016】過酸化水素の注入方法としては、酸化処理
工程流入水の流入配管に注入する方法、酸化処理工程の
反応槽に直接注入する方法、オゾンガスを注入するイジ
ェクターの水の流入配管或いはイジェクターの内部に注
入する方法、水中撹拌式散気装置の内部に注入する方法
等を挙げることができる。また、これらの場合は複数の
箇所から過酸化水素を注入することも可能である。
【0017】触媒としては、酸化剤から活性種の発生を
促進させる触媒例えば、二酸化マンガン、活性炭、貴金
属含有固体、金属含有固体、金属イオン等、紫外線を照
射することによって活性種が発生する触媒例えば二酸化
チタン含有固体等、均一系、不均一系触媒を問わず効果
的なものを使用することができる。
【0018】酸化処理工程の反応槽内の撹拌方法として
は、オゾン気泡、或いは撹拌翼による撹拌の他、反応槽
の上下端または左右端または前後端を配管で結びポンプ
で循環させる方法も可能である。特に反応槽に紫外線ラ
ンプを複数設置し、ランプ同上の間隔が広くなる場合に
は、処理の安定のために強い撹拌を行うことが有効であ
る。酸化処理工程それぞれの反応槽が複数の反応槽より
構成されていても良い。この場合は複数の反応槽を直列
に連結する構成が水の流れがプラグフローとなり、処理
がより確実に行われる。また、酸化処理工程それぞれの
反応槽が異なる活性種発生方法であっても良い。特に、
前段の反応槽がオゾンまたはオゾンと過酸化水素を組み
合わせた活性種発生方法であり、後段が紫外線とオゾ
ン、または紫外線とオゾンと過酸化水素を組み合わせた
活性種発生方法である場合では、前段の反応槽において
オゾン又は活性種の作用により被処理水の紫外線透過率
を向上させることができ、後段の反応槽における紫外線
の照射効率を向上させることができる。
【0019】本発明による処理水の少なくとも一部を分
離工程に循環することによって処理水質を一層向上させ
ることも可能である。この場合は分離工程で有機物の濃
縮が行われるため、酸化処理工程流入水の有機物濃度の
極端な低下が避けられ、酸化処理工程の処理効率の低下
は殆どない。本発明による処理水を脱酸化剤工程に導入
し、後段の処理の安定性、処理水の安全性を高めること
も可能である。また、酸化処理工程流出水を生物処理、
凝集沈殿処理、活性炭処理などの工程に導入することも
可能である。脱酸化剤工程において酸化処理工程流出水
中のオゾン、活性酸素を分解することで、分離工程で膜
を使用した場合における膜の劣化を抑えることも可能で
ある。脱酸化剤工程は、曝気処理、触媒処理、活性炭処
理、紫外線処理或いはこれらの組合せを挙げることがで
きる。触媒には二酸化マンガン、貴金属含有固体、金属
含有固体、金属イオン等、二酸化チタン含有固体等を使
用することができる。本発明による処理方法の原水は、
汚水より生物学的に分解可能な有機物を生物学的に除去
する前或いは除去した後の水、汚水より物理化学的に分
離可能な有機物を物理化学的に除去する前或いは除去し
た後の水、汚水より物理化学的、生物学的に分離可能な
有機物を物理化学的、生物学的に除去する前或いは除去
した後の水を用いることができる。
【0020】生物学的に除去する方法としては、活性汚
泥処理、接触酸化処理、生物膜ろ過処理、嫌気処理等が
挙げられ、物理化学的に除去する方法としては、沈殿分
離処理、浮上分離処理、膜分離処理、ろ過処理、凝集沈
殿処理、活性炭処理、電気透析等が挙げられる。汚水よ
り生物学的、また物理化学的に分離可能な有機物が除去
された水を原水とする場合には、これらの有機物による
ヒドロキシラジカルと内分泌撹乱物質または発ガン性物
質の反応の阻害が少なくなり、生成したヒドロキシラジ
カルが内分泌撹乱物質または発ガン性物質の分解に有効
に利用される。汚水より生物学的、また物理化学的に分
離可能な有機物が除去される前の水を原水とする場合に
は、本発明による処理水を生物学的または物理化学的に
分離する方法の原水として用いてもこれらの処理で生じ
る汚泥中に有害な内分泌撹乱物質または発ガン性物質が
含まれることがなく、汚泥も安全なものとなる。また、
本発明による処理では、有機物の生物分解性、凝集分離
性が良くなるので、生物処理、凝集沈殿処理の処理性能
が向上する。
【0021】本発明における処理条件は、処理対象原水
の性状、例えば内分泌撹乱物質または発ガン性物質濃
度、COD濃度等によって種々選定することができる。
例えば、原水のCODMhが約30[mg/リットル]、総内
分泌撹乱物質または発ガン性物質量が100〜1000
0[pg/リットル]の場合を以下に記載する。酸化処理工
程におけるオゾン注入率は通常10〜300[mg/リッ
トル]、好ましくは20〜200[mg/リットル]、酸化水
素注入率は1〜90、好ましくは2〜60[mg/リット
ル]、オゾン注入率と過酸化水素注入率の比は3:1〜
10:1の範囲から選定される。紫外線を併用する場合
の紫外線照射量は中圧水銀ランプを用いる場合は通常
0.1〜5.0[Whr/リットル]、好ましくは0.1〜
3.0[Whr/リットル]の範囲から選定される。紫外線
が透過する水層厚は通常1〜5[cm]、好ましくは2
〜4[cm]の範囲から選定される。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明の処理装置の具体的構成の
一例を図1に基づいて説明する。図1は、内分泌撹乱物
質または発ガン性物質を含有する汚水(原水1)をNa
Cl排除率が60%以下のRO膜12により処理する分
離工程3に導入し、ついで分離工程3の膜濃縮水8をオ
ゾン含有気体5、過酸化水素6及び紫外線7により処理
する酸化処理工程4からなり、分離工程3の膜透過水9
及び酸化処理工程流出水11を処理水2とするものであ
る。分離工程3は、3本のRO膜12モジュールをクリ
スマスツリー状に接続する構成としている。酸化処理工
程4は、活性酸素を生成させるためオゾンガス5及び過
酸化水素6がそれぞれ槽内及び酸化処理工程流入水8に
供給され、活性酸素の生成及び有機塩素化合物の脱塩素
化反応に必要な紫外線ランプ7が槽内に設置されてい
る。過酸化水素6の流入管は酸化処理工程流入水8の流
入管に接続されているが、この様にすることで原水中の
内分泌撹乱物質または発ガン性物質と過酸化水素6を予
め混合した状態で酸化処理工程4に導入することがで
き、酸化処理工程4でオゾンガス5と過酸化水素6が反
応して生成したヒドロキシラジカルと内分泌撹乱物質ま
たは発ガン性物質の反応効率が向上する。紫外線ランプ
7は水及びオゾンガス5の流れに対して紫外線ランプ7
のなかで方向が垂直になるように設置されているが、こ
の様にすることで反応槽下部から浮上してきたオゾンガ
ス5及び被処理水が紫外線ランプ5近傍を通過する確率
をより高くすることができ、オゾン5の利用効率がより
高くなり、廃オゾンガスがより減少する。また有機塩素
化合物が紫外線ランプ7近傍を通過する確率をより高く
することができ、脱塩素反応をより確実に行うことがで
きる。
【0023】次に本発明の処理装置の具体的構成の別の
一例を図2に基づいて説明する。図2は、内分泌撹乱物
質または発ガン性物質を含有する汚水をNaCl排除率
が60%以下のRO膜12により処理する分離工程3に
導入し、ついで分離工程3の膜濃縮水8を紫外線7、オ
ゾン5含有気体、過酸化水素6により処理する酸化処理
工程4からなり、酸化処理工程流出水11の一部を分離
工程3に導入し、分離工程3の膜透過水9及び酸化処理
工程流出水11の一部を処理水2とするものである。酸
化処理工程処理水11の一部が分離工程3に導入される
ことで、酸化処理工程4で残留した有機物を分離工程3
で再濃縮し、濃度を高くした状態で再び酸化処理するこ
とができる。
【0024】
【実施例】以下に本発明を実施例によって更に具体的に
説明するが、勿論本発明の範囲は、これらによって限定
されるものではない。 〔実施例1〕総ダイオキシン類量が3000[pg/リッ
トル]のゴミ埋立て地浸出水を原水とし、下記条件で図1
に示すフローに従って処理した。
【0025】(分離工程) ・濃縮倍率:10倍 ・RO膜のNaCl排除率:60[%]
【0026】(酸化処理工程) ・オゾン注入率:160[mg/リットル](原水基準の注
入率) ・過酸化水素注入率:20[mg/リットル](原水基準の
注入率) ・紫外線照射量:3.0[Whr/リットル] ・紫外線ランプ:中圧水銀ランプ ・滞留時間:30[min] ・原水流量:5.0[リットル/min] 以上のような条件で処理した結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】〔比較例1〕 (分離工程処理を行わない場合)実施例1と同じ酸化処
理条件で操作を行った。但し、原水の分離工程処理を行
わず濃縮をしなかった。下記条件(実施例1と同じ酸化
処理工程)で図3に示すフローに従って処理した。
【0029】(酸化処理工程) ・オゾン注入率:160[mg/リットル] ・過酸化水素注入率:20[mg/リットル] ・紫外線照射量:3.0[Whr/リットル] ・紫外線ランプ:中圧水銀ランプ ・滞留時間:30[min] ・原水流量:5.0[リットル/min] 以上のような条件で処理した結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】表1と表2の比較より明らかなように、比
較例1の処理水の総ダイオキシン類量は300[pg/
リットル]であり、本発明の処理水の場合の30[pg/リッ
トル]に比較して高い値を示した。これは、有機物濃度が
低いことによるヒドロキシラジカルの有機物への反応効
率の低下及び、有機物濃度に対する塩類濃度の割合が実
施例1の場合に比べて高く、ヒドロキシラジカルが無機
塩類との反応に無効に消費されているためと考えられ
る。
【0032】〔実施例2〕実施例1と同じフロー及び処
理条件で操作を行った。但し、NaCl排除率が97%
の逆浸透膜(RO膜)を使用した。処理結果を表3に示
す。
【0033】
【表3】
【0034】表3より明らかなように、本実施例2にお
いても処理水の総ダイオキシン類量は280[pg/リッ
トル]であり、比較例1の300[pg/リットル]に比べて
低い結果であった。これより、NaCl排除率が97%
のRO膜を使用した場合においても、本発明の汚水の処
理方法は効果があることが認められた。但し、本実施例
2の処理水総ダイオキシン類量は実施例1に比べて高か
った。原因は、RO膜のNaCl排除率が高いことによ
り、酸化処理工程流入水の塩類濃度が上昇し、酸化処理
工程で発生したヒドロキシラジカルの一部が塩類との反
応で無効消費された為と考えられる。以上の結果より、
NaCl排除率が60%のRO膜を使用した場合の処理
性能は、NaCl排除率が97%のRO膜を使用した場
合の処理性能に比べて高いことが認められた。
【0035】〔実施例3〕実施例1と同様のフロー及び
処理条件で操作を行った。但し、分離工程での濃縮倍率
及び酸化処理工程での滞留時間を変え、酸化処理工程処
理水の一部を分離工程に返送した。下記条件で図2に示
すフローに従って処理した。
【0036】(分離工程) ・濃縮倍率:7倍 ・RO膜のNaCl排除率:60[%]
【0037】(酸化処理工程) ・オゾン注入率:160[mg/リットル](原水基準の注
入率) ・過酸化水素注入率:20[mg/リットル](原水基準の
注入率) ・紫外線照射量:3.0[Whr/リットル] ・紫外線ランプ:中圧水銀ランプ ・滞留時間:20[min] ・原水流量:5.0[リットル/min] ・酸化処理工程処理水の分離工程への返送率:33
[%](酸化処理工程流入水基準) 以上のような条件で処理した結果を表4に示す。
【0038】
【表4】
【0039】表4より明らかなように、本実施例3で得
られた処理水の総ダイオキシン類量は25[pg/リット
ル]であり、比較例より総ダイオキシン類量が低い処理
水が得られた。これより、酸化処理工程処理水の一部を
分離工程に返送した場合においても、本発明の汚水の処
理方法は効果があることが確認された。また、本実施例
の処理水は実施例1に比べて総ダイオキシン類量が低
く、処理性能が高かった。これは、酸化処理工程処理水
の一部が分離工程に導入されることで、酸化処理工程で
残留した有機物が分離工程で再濃縮された状態で酸化処
理工程に再導入されることにより、酸化処理工程で残留
した有機物とヒドロキシラジカルなどの活性酸素の反応
性が向上したためである。
【0040】
【発明の効果】本発明による内分泌撹乱物質または発ガ
ン性物質を含有する汚水の処理方法及び処理装置を用い
ることにより、汚水中の内分泌撹乱物質または発ガン性
物質が低コストかつ高度に処理される。つまり、分離工
程では原水中の有機物が分離濃縮され有機物濃度が高く
なった有機物濃縮水が得られる。次に酸化処理工程では
有機物濃縮水に対してヒドロキシラジカル等の活性酸素
による内分泌撹乱物質または発ガン性物質の酸化分解反
応が行われるが、分離工程で原水中の有機物が濃縮され
ているために、ヒドロキシラジカル等の活性酸素と有機
物との反応が促進され、生成したヒドロキシラジカル等
の活性酸素による有機物の酸化分解効率が向上する効果
が生まれる。更に、分離工程でNaCl排除率が60%
以下の逆浸透膜を使用した場合では、無機塩類の濃縮倍
率が有機物との濃縮倍率に比べて有意に低くなり、ヒド
ロキシラジカル等の活性酸素と無機物の反応が抑制され
る。また、酸化処理工程流出水の一部を分離工程に導入
し、分離工程の膜透過水及び酸化処理工程流出水の一部
を処理水とすることで、酸化処理工程で残留した有機物
を分離工程で再濃縮し、濃度を高くした状態で再び酸化
処理することができる。これにより、酸化処理工程流出
水及び処理水の水質を更に向上させることが可能とな
る。以上のような効果により、本発明による内分泌撹乱
物質または発ガン性物質を含有する汚水の処理方法及び
処理装置を用いることにより、汚水中の内分泌撹乱物質
または発ガン性物質が低コストかつ高度に処理され、安
全な処理水を得ることができ、世の中に貢献すること極
めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の内分泌撹乱物質または発ガン性物質を
含有する汚水の処理方法及び処理装置の実施形態を示す
フロー図
【図2】本発明の内分泌撹乱物質または発ガン性物質を
含有する汚水の処理方法及び処理装置の別の実施形態を
示すフロー図
【図3】汚水の処理方法及び処理装置の比較例の実施形
態を示すフロー図
【符号の説明】
1 原水 2 処理水 3 分離工程 4 酸化処理工程 5 オゾンガス 6 過酸化水素 7 紫外線ランプ 8 膜濃縮水 9 膜透過水 10 循環水 11 酸化処理工程流出水 12 逆浸透膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C02F 9/00 504 C02F 9/00 504B 504E 1/32 1/32 1/44 1/44 F 1/58 1/58 A 1/72 1/72 Z 101 101 1/78 1/78 (72)発明者 田中 俊博 神奈川県藤沢市藤沢4丁目2番1号 株式 会社荏原総合研究所内 (72)発明者 勝倉 昇 東京都大田区羽田旭町11番1号 株式会社 荏原製作所内 Fターム(参考) 4D006 GA03 KA72 KB04 KB30 KD21 KD22 MB06 PA02 PB08 PB70 4D037 AA11 AB01 AB08 AB11 AB12 AB14 AB18 BA18 BB09 CA03 CA11 CA12 4D038 AA08 AB07 AB09 AB12 AB14 AB63 BA04 BB07 BB16 BB20 4D050 AA12 AB11 AB13 AB17 AB19 AB52 BB02 BB09 BC04 BC09 BD06 CA09

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内分泌撹乱物質または発ガン性物質を含
    有する汚水を物理化学的に処理する方法において、内分
    泌撹乱物質または発ガン性物質を含有する汚水を、有機
    物を分離濃縮する分離工程に導入し、次いで分離工程で
    得られた有機物濃縮水を活性酸素により酸化処理する酸
    化処理工程に導入することを特徴とする内分泌撹乱物質
    または発ガン性物質を含有する汚水の処理方法。
  2. 【請求項2】 前記分離工程において、膜を用いて有機
    物を分離濃縮し有機物濃縮水とすることを特徴とする請
    求項1に記載の内分泌撹乱物質または発ガン性物質を含
    有する汚水の処理方法。
  3. 【請求項3】 前記活性酸素の生成が、オゾン、過酸化
    水素、紫外線、触媒のうちいずれか2つ以上の組み合わ
    せによることを特徴とする請求項1または2に記載の内
    分泌撹乱物質または発ガン性物質を含有する汚水の処理
    方法。
  4. 【請求項4】 前記酸化処理工程流出水の少なくとも一
    部を分離工程に導入することを特徴とする請求項1〜3
    のいずれか1項に記載の内分泌撹乱物質または発ガン性
    物質を含有する汚水の処理方法。
  5. 【請求項5】 内分泌撹乱物質または発ガン性物質を含
    有する汚水を物理化学的に処理する装置において、内分
    泌撹乱物質または発ガン性物質を含有する汚水中の有機
    物を分離濃縮する分離工程を行う手段と、該分離工程手
    段からの有機物濃縮水を活性酸素により酸化処理する酸
    化処理工程を行う手段とを有することを特徴とする内分
    泌撹乱物質または発ガン性物質を含有する汚水の処理装
    置。
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JP2001047090A (ja) * 1999-08-17 2001-02-20 Ataka Construction & Engineering Co Ltd 有機塩素化合物含有汚水の処理方法およびその装置
WO2007007569A1 (ja) 2005-07-14 2007-01-18 Idemitsu Kosan Co., Ltd. 難分解性物質含有水の処理方法
WO2007013285A1 (ja) 2005-07-28 2007-02-01 Idemitsu Kosan Co., Ltd. 難分解性物質が付着したフィルターの無害化処理方法

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