JP2000345972A - 両歯式スクロール圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】空気圧縮や冷凍、空調用に用いられるスクロー
ル圧縮機を効果的に冷却する。 【解決手段】両歯式スクロール圧縮機本体１を形成する
旋回スクロール４１の鏡板３０に複数のヒートパイプ５
０を挿入する。ヒートパイプの他端側は、圧縮機本体１
から延在させており、この延在部にはフィン５１が取付
けられている。スクロール圧縮機本体を冷却する冷却フ
ァン４により吸引された冷却空気は、このフィン部を冷
却し、ヒートパイプの作用により、旋回スクロールが冷
却される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、空気圧縮や冷凍・
空調用に使用される両歯式スクロール圧縮機に係り、特
にオイルフリーで使用される両歯式スクロール圧縮機に
関する。

【０００２】

【従来の技術】空気圧縮や冷凍・空調に使用される圧縮
機として、作動ガスの流通する流路に潤滑油等の油を使
用しないオイルフリースクロール圧縮機が良く知られて
いる。このオイルフリースクロール圧縮機では、鏡板に
直立した渦巻き状のラップを備えた旋回スクロール及び
固定スクロールをラップの内側を互いに組合わせ、旋回
スクロールラップ外壁面側と固定スクロールラップ外壁
面との間に、各ラップと鏡板で２つの密閉空間を形成し
ている。この密閉空間は、両スクロールの相対運動によ
り中心方向に移動するが、それとともにその容積を減少
する。この運動において、両スクロールの外周側から吸
入したガスは圧縮され、固定スクロールの中央部に設け
た吐出口から吐出される。旋回スクロールと固定スクロ
ールの旋回運動により作動ガスが圧縮されると、スクロ
ール圧縮機は発熱し、吐出ガス温度で１９０度から２４
０度程度まで上昇する。

【０００３】ところで、圧縮機容量を大容量化するため
に、旋回スクロールの鏡板の両側にラップを形成した、
いわゆる両歯型またはダブルスクロールと呼ばれるスク
ロール圧縮機が提案されている。このダブルスクロール
圧縮機では、片歯型スクロール圧縮機では使用できた旋
回スクロールの鏡板裏面側を冷却に使用できない。その
ため、旋回スクロールの鏡板に冷却孔を設けて、旋回ス
クロールを冷却している。この例が、特開平８-２１９
０６７号公報や特開平８-２６１１８０号公報に記載さ
れている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記従来の技術に記載
のものは、冷却しにくい旋回スクロールを冷却するのに
適しており、かなりの程度の冷却効果が得られている。
しかしながら、ダブルスクロール圧縮機本体を採用した
スクロール圧縮機では、スクロール圧縮機本体の中心部
で発生する熱がこれまでのものに比べて飛躍的に増大し
ている。そのため、更なる冷却能力の向上が望まれてい
る。とくに、吐出ポート近傍でスクロール圧縮機本体に
作用する面圧が大きい場合や、小型化のために圧縮機の
回転速度を増加させた場合等には、密閉空間からの作動
ガスの漏れを防止するチップシールのｐＶ値が増加する
ので、このチップシール部での温度上昇を防止する必要
がある。これまでは、圧縮機本体に強制的に送付する風
量を増大させることで対処してきたが、上述したように
ダブルスクロール圧縮機本体を用いると、冷却に使用で
きる部分が著しく制限されるため、単に冷却風量を増大
したのみでは冷却効果を向上できない。

【０００５】また、冷却風量を増して冷却効果を増大さ
せようとすると、冷却風により騒音が増大するととも
に、パッケージの筐体外に排気される冷却後の暖められ
た空気により圧縮機周囲への悪影響が増大する。そのた
め、防音処置に多大の費用を要したり、排気をパッケー
ジから遠く離れた場所まで導く等の費用を必要としてい
る。

【０００６】本発明の目的は、上記従来技術の不具合を
解消し、両歯式スクロール圧縮機の冷却性能を向上させ
ることにある。本発明の他の目的は、両歯式スクロール
圧縮機を大容量化することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明の特徴は、鏡板の両面に旋回スクロールラップ
が形成された旋回スクロール及びこの旋回スクロールの
各ラップとともに圧縮室を形成するラップが形成された
２個の固定スクロールを有する両歯式スクロール圧縮機
本体と、この圧縮機本体を駆動する電動機と、圧縮機本
体で圧縮された作動ガスを冷却するクーラと、このクー
ラで作動ガスと熱交換する冷却空気を送風し電動機の一
端側に取付けられた冷却ファンと、クーラで冷却された
作動ガスを除湿するドライヤとを備え、旋回スクロール
の鏡板に複数のヒートパイプを設けたものである。

【０００８】そして好ましくは、ヒートパイプは、ほぼ
水平方向に配置されている；旋回スクロールを主クラン
ク軸及び補助クランク軸で駆動し、この主クランク軸が
下方に、補助クランク軸が上方になるように配置した；
旋回スクロールを主クランク軸及び補助クランク軸で駆
動し、この主クランク軸と補助クランク軸をほぼ垂直に
配置したものである。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例を図１〜
図４を用いて説明する。図１は本発明に係るオイルフリ
ースクロール圧縮機の一実施例における冷却空気の流れ
を説明する図である。図１において、１は圧縮機本体、
２は片側の軸に冷却ファン４を、他方の軸に圧縮機本体
駆動用のＭシーブ７を装着した両軸モータである。両軸
モータ２と圧縮機本体１は２段に形成されたモータベー
ス１２の各段上に設置されている。モータベース１２
は、コモンベース１４との振動を絶縁するために、防振
ゴム１３を介してコモンベース上に設置されている。

【００１０】圧縮機本体１にはＶプーリ８が取り付けら
れており、両軸モータ２の回転力はＶベルト９を介して
圧縮機本体ブロック１の回転軸に動力伝達される。冷却
ファン４の吐出側には排気ダクト１１がほぼ垂直状に形
成されており、この排気ダクト１１内であって冷却ファ
ン４の上方に、フィンチューブ式のクーラ３が設置され
ている。

【００１１】冷却ファン４は２方向から吸込みが可能で
あり、一方の吸込側には圧縮機本体１と両軸モータ２と
を冷却するためのダクト１０が両軸モータ軸にほぼ平行
に形成されている。筐体２０内部を冷却した冷却空気
は、ベルマウス状に形成された冷却ファン４の吸込口か
ら吸込まれ、冷却ファン４を通過した後、クーラ３を冷
却する。

【００１２】圧縮機本体１及びモータ２を冷却した冷却
空気と吸込口から吸込まれた外部空気とが混じり合わな
いように、冷却ファン４に近接してクーラ３まで延びる
区画手段が設けられている。これにより、筐体内部で外
気に対し僅かに温度上昇した冷却空気がクーラ３を冷却
できるので、クーラ３内部を流れる作動ガスとの温度差
を大にすることができ、クーラ３における熱交換効率を
高めることができる。

【００１３】圧縮機本体１は配管５によりクーラ３に接
続され、クーラ３と圧縮機本体１の上方に配置されたド
ライヤ１５とが配管６により接続されている。つまり、
オイルフリースクロール圧縮機で圧縮された高圧高温の
空気は、クーラ３で外部空気と熱交換して５５℃以下の
空気となる。ドライヤ１５は、圧縮機１５ａ、凝縮器１
５ｄ、キャピラリ１５ｃ、蒸発器１５ｂと凝縮器１５ｄ
に送風するファン１５ｅとを備えたヒートポンプ式の冷
凍サイクルである。このドライヤ１５に流入する空気の
温度は、５５℃以下に制限されている。そのため、クー
ラ３で圧縮機の吐出ガスを予冷却し、ドライヤ１５を適
正温度で運転できるようにしている。

【００１４】この様に構成した本発明に係る両歯式スク
ロール圧縮機における、圧縮機本体１とクーラ３を冷却
する空気の流れについて説明する。両軸モータ２に電源
を投入すると冷却ファン４が両軸モータ２と同時に回転
し、筐体２０の右側面に設けられた吸気口から筐体２０
内へ冷却空気が吸込まれる。筐体内に吸い込まれた外部
空気は、吸気口近傍に配置された圧縮機本体１および両
軸モータ２を冷却する。

【００１５】ここで、圧縮機本体１の両側面にはフィン
２１が形成されており、冷却空気の一部は、このフィン
２１をガイドにして圧縮機本体１の側部を流通する。冷
却空気の他の一部は、後述する旋回スクロールの鏡板に
固着され、鏡板外に延びたヒートパイプ５０のフィン部
５１を冷却する。その後圧縮機本体１の下部に形成され
た冷却空気出口を経て、両軸モータ２の周囲部を軸方向
に流通し、ダクト１０へと流入する。ダクト１０へ流入
した冷却空気は、冷却ファン４に吸引される。

【００１６】なお、吸気口から吸い込まれた外部空気の
さらに他の一部は、圧縮機本体１に取付けたプーリー近
傍を経て、両軸モータ２の吸込口からダクト１０内に流
入し、圧縮機本体１を冷却した空気と混じり合い冷却フ
ァン４に吸引される。したがって、筐体２０内へ吸込ま
れた冷却空気の一部は、圧縮機本体１を冷却した後ダク
ト１０を通過して冷却ファン４内へ流れ込み、他の一部
の冷却空気は両軸モータ２を冷却した後冷却ファン４に
流れ込む。冷却ファン４を通過した冷却空気は、そのま
ま排気口へと導かれる。

【００１７】冷却ファン４の前面位置には、パッケージ
型圧縮機を制御する図示しない制御装置が取付けられて
いる。この制御装置の裏面から冷却空気を取り入れ、高
発熱の半導体素子等を含む制御装置を冷却しているの
で、制御装置を安定して運転できる。なお、この制御装
置を冷却しても、冷却空気の温度上昇は僅かであるの
で、クーラ３を冷却するのに悪影響はない。

【００１８】ここで、両歯式スクロール圧縮機本体１の
詳細を図２および図３を用いて説明する。図２および図
３は、スクロール圧縮機本体の主要部の縦断面図と固定
スクロールの側面図である。スクロール圧縮機本体は、
主クランクシャフト３４が下部に、補助クランクシャフ
ト３５が上部になるように縦形に配置されている。旋回
スクロール４１の鏡板３０の表裏両面には渦巻状にラッ
プ３１が形成されている。この旋回スクロール４１を、
渦巻状のラップ３８ａ，３８ｂが形成された２つの固定
スクロール４２ａ，４２ｂで挟み込んでいる。両軸モー
タ２からプーリ８を介して主クランクシャフト３４に動
力が伝達され、補助クランクシャフト３５へはタイミン
グプーリ３２、３６及びそれら間を動力伝達するタイミ
ングベルト３３により両軸モータ２の動力が伝達され
る。この２つのクランクシャフトは、ラップが設けられ
ていない鏡板周辺部で軸受支持されるとともに、固定ス
クロール４２ａ，４２ｂの所定位置に回転自在に支持さ
れている。固定スクロール及び旋回スクロールの外周部
のラップに対応して、固定スクロールに流体吸入口が設
けられると共に、固定スクロールの中央部に吐出口が設
けられている。両軸モータからプーリに動力伝達される
ことにより、クランクシャフト３４が回転し、同期用の
タイミングプーリ３２、タイミングベルト３３によって
補助クランクシャフト３５も主クランクシャフト３４と
同期回転を行い、この回転にともない旋回スクロールは
自転することなく所定の半径で旋回運動する。これによ
り、流体は旋回スクロールと２つの固定スクロールとの
ラップで形成される圧縮室に吸入口から吸い込まれ、旋
回スクロールの回転が進み、圧縮室が鏡板周辺部から中
心部に向かうにつれ、流体は所定の圧力まで上昇した
後、吐出口より吐出される。

【００１９】この圧縮の過程において作動ガスの温度は
上昇し、特にその中心部において温度上昇が著しい。従
って、この中心部を冷却する必要がある。図２及び図３
に示したように、圧縮機本体の両端部近傍にはタイミン
グプーリーをクランク軸に取り付けるため、スペースは
ほとんど無いが、中央部は圧縮機の吐出口部を除き十分
なスペースを確保できるので、この部分に冷却用のフィ
ン２１を形成する。そして、動力伝達の便利さから、両
軸モータの回転軸とクランクシャフト軸は平行軸となっ
ているので、両軸モータの回転軸とクランクシャフト中
心間を結ぶ直線の双方に直交する方向にフィン２１の長
手方向を定める。また、フィン２１の圧縮機本体１のケ
ーシング外壁からの高さは、流体抵抗及び放熱能力の双
方を勘案して所定高さに定められる。フィン２１間のピ
ッチも同様にして定められる。

【００２０】上述したように、パッケージ型圧縮機で最
も高温となるのは、圧縮機本体１の中央部の吐出口部で
ある。そこで、できるだけ吐出口部に近接して、ヒート
パイプを複数本旋回スクロールの鏡板に固着する。図２
において、旋回スクロール４１の鏡板３０には、回転軸
３４、３５及び回転軸３４、３５中心を結ぶ線の双方に
直角な方向で、中心を結ぶ線にできるだけ一端を近接さ
せて複数のヒートパイプ５０が取付けられている。各ヒ
ートパイプ５０の他端側は、スクロール圧縮機本体ブロ
ック部から延在させ、延在させた部分にはフィン５１が
複数枚取付けられている。

【００２１】図４に、ヒートパイプの一例を示す。ヒー
トパイプ５０は、中空の密閉パイプ５２を備えており、
内面に溝が形成されている。さらに、ウイック５４と呼
ばれる微細な繊維状物質が管壁部分に配置されている。
そして、内容積の３ないし４％程度の熱伝達物質５３が
収納されている。この熱伝達物質としては、水等が用い
られる。ヒートパイプ５０の一端側は、上述したように
クランク軸の中心線を結ぶ線にできるだけ近づけて配置
し、他端側は圧縮機本体ブロックから延在させて筐体２
０内に導かれた冷却空気がフィン５１部を冷却するよう
になっている。なお、ヒートパイプには必ずしも溝やウ
イックが無くともよい。この場合、ヒートパイプの加工
が容易であり、安価となる。また、ウイック５４は軸方
向端部から端部まで充填することが望ましい。更に、パ
イプ５２の中心部は凝縮液が戻れるように、空間になっ
ていることが望ましい。そのため、ウイッグとは別に中
心部を確保する部材を設けることが望ましい。

【００２２】旋回スクロール４１は、旋回運動により図
の左右方向にも移動するので、冷却通路の左右方向の幅
はこの旋回運動による位置変動分をも考慮して定められ
る。なお図示しないが固定スクロールの上方にはフィル
ター手段が取付けられる。

【００２３】筐体２０内に導かれた冷却空気は、ヒート
パイプのフィン５１部または固定スクロールの冷却フィ
ン２１に導かれて上方から下方に流れる。そして、圧縮
機のベースに設けた冷却空気出口を通って、モータ２を
冷却する。これにより、圧縮機本体１を効果的に冷却で
き、吐出口での旋回スクロール温度を１２０°Ｃ程度ま
で低下させることができる。

【００２４】上記実施例においては、主クランク軸と補
助クランク軸を上下に配置したが、これを左右に配置し
てもよい。この場合、固定スクロールのフィンとヒート
パイプのフィンの方向がいずれも上下方向になり、冷却
空気の流通が円滑になる。なお、上記実施例で固定スク
ロールのフィン方向を上下方向にすれば、この場合も冷
却空気の流通方向が上下方向となり、冷却が円滑にな
る。さらに、ヒートパイプ野直径は１２.７ｍｍを想定
しているが、これより大径のものでもよい。はまた、本
明細書に記載したいくつかの実施例は例示的なものであ
り、限定的なものではない。本発明の真の精神を利用す
る変形例はこの発明に含まれるものである。

【００２５】

【発明の効果】本発明によれば、旋回スクロールの高温
部である鏡板にヒートパイプを挿入したので、旋回スク
ロールで発生した熱をスクロール圧縮機本体外に放熱で
きるので、旋回スクロールの冷却性能が向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るスクロール圧縮機の一実施例の冷
却空気の流れを説明する図である。

【図２】スクロール圧縮機本体の主要部の縦断面図であ
る。

【図３】スクロール圧縮機本体に用いられる固定スクロ
ールの側面図である。

【図４】本発明に用いるヒートパイプの一実施例の断面
図である。

【符号の説明】

１…圧縮機本体、２…両軸モータ、３…クーラ、４…冷
却ファン、１０…ダクト、１１…ダクト、１５…ドライ
ヤ、２０…筐体、２１…放熱フィン、３０…鏡板、４１
…旋回スクロール、４２ａ，４２ｂ…固定スクロール、
５０…ヒートパイプ、５１…フィン。

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】鏡板の両面に旋回スクロールラップが形成
   された旋回スクロール及びこの旋回スクロールの各ラッ
   プとともに圧縮室を形成するラップが形成された２個の
   固定スクロールを有する両歯式スクロール圧縮機本体
   と、この圧縮機本体を駆動する電動機と、前記圧縮機本
   体で圧縮された作動ガスを冷却するクーラと、このクー
   ラで作動ガスと熱交換する冷却空気を送風し前記電動機
   の一端側に取付けられた冷却ファンと、前記クーラで冷
   却された作動ガスを除湿するドライヤとを備え、前記旋
   回スクロールの鏡板に複数のヒートパイプを設けたこと
   を特徴とする両歯式スクロール圧縮機。
2. 【請求項２】前記ヒートパイプは、ほぼ水平方向に配置
   されていることを特徴とする請求項１に記載の両歯式ス
   クロール圧縮機。
3. 【請求項３】前記旋回スクロールを主クランク軸及び補
   助クランク軸で駆動し、この主クランク軸が下方に、補
   助クランク軸が上方になるように配置したことを特徴と
   する請求項１または２に記載の両歯式スクロール圧縮
   機。
4. 【請求項４】前記旋回スクロールを主クランク軸及び補
   助クランク軸で駆動し、この主クランク軸と補助クラン
   ク軸をほぼ垂直に配置したことを特徴とする請求項１ま
   たは２に記載の両歯式スクロール圧縮機。