JP2000303119A - 高周波焼入装置及び高周波焼入方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 機械加工していない部分を有するワークであ
っても、高周波焼入時に前工程の割り出しがそのまま有
効となる高周波焼入装置とする。 【構成】 ワークとしての等速ジョイントに用いられる
カップＷの機械加工された部分であるシャフト部ＷＳを
支持するワーク支持部１００と、このワーク支持部１０
０でのみ支持された状態にあるカップＷのカップ部ＷＣ
の内面を加熱する加熱手段としての高周波加熱コイル２
００と、この高周波加熱コイル２００によって加熱され
た部分であるカップ部ＷＣの内面を冷却する冷却手段と
しての冷却ジャケット（図示省略）とを有している。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、例えば等速ジョイ
ントのカップを高周波焼入する装置及び方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】等速ジョイントに用いられるカップＷ
は、図３等に示すように、カップ部ＷＣとこのカップ部
ＷＣから突出したシャフト部ＷＳとが一体に設けられた
ものである。このカップＷは、カップ部ＷＣの内面に形
成された溝部にベアリング等が当たるので、溝部に高周
波焼入が施される。

【０００３】このカップＷのカップ部ＷＣの内面の溝部
に高周波焼入を施す高周波焼入装置は、以下のように構
成されている。溝部の割り出しを行った後にカップ部Ｗ
Ｃの開放側が下向きになるように、カップＷが載置され
るベース５００（図４参照）と、このベース５００に開
設された開口５１０を介して前記カップ部ＷＣの内部に
挿入される加熱手段としての高周波加熱コイル２００
と、この高周波加熱コイル２００による加熱が完了した
ならば加熱された部分に冷却液を噴射する冷却手段とし
ての冷却液ジャケット（図示省略）とを有している。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来の高周波焼入装置では対応できないカップＷが出
現してきた。すなわち、カップ部ＷＣの開放側の端面Ｗ
Ｃ１は、機械加工せずともそのままでも、等速ジョイン
トとしての性能には有意の差をもたらさない。このた
め、前記端面ＷＣ１を機械加工せずに、すなわち凹凸の
ある荒いまま用いることがある。この場合、従来の高周
波焼入装置では、カップＷをベース５００に載置するの
で、前記端面ＷＣ１に存在する凹凸のために高周波加熱
コイル２００に対して正確な位置にカップＷを載置でき
ないことになる。つまり、前工程における割り出しがま
ったく無意味になるのである。このため、場合によって
は高周波加熱コイル２００がカップ部ＷＣの内面に接触
することもある。

【０００５】かかる問題は、等速ジョイントのカップの
みならず、高周波焼入時の位置決めをしていた面が機械
加工されなくなったすべてのワークに発生している。

【０００６】本発明は上記事情に鑑みて創案されたもの
で、機械加工していない部分を有するワークであって
も、高周波焼入時に前工程の割り出しがそのまま有効と
なる高周波焼入装置及び方法を提供することを目的とし
ている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明に係る高周波焼入
装置は、ワークの機械加工された部分を支持するワーク
支持部と、このワーク支持部でのみ支持された状態にあ
るワークを加熱する加熱手段と、この加熱手段によって
加熱された部分を冷却する冷却手段とを備えている。

【０００８】また、本発明に係る高周波焼入方法は、機
械加工された部分をワーク支持部で支持する工程と、前
記ワーク支持部でのみ支持された状態にあるワークを加
熱手段で加熱する工程と、加熱手段で加熱された部分を
冷却手段で冷却する工程とを備えている。

【０００９】

【発明の実施の形態】図１は本発明の実施の形態に係る
高周波焼入装置の動作を示す概略的構成図、図２は本発
明の実施の形態に係る高周波焼入装置に用いられる高周
波加熱コイルとワークであるカップとの関係を示す概略
的断面図、図３は本発明の実施の形態に係る高周波焼入
装置によって高周波焼入が施されるワークとしてのカッ
プの概略的正面図である。

【００１０】本発明の実施の形態に係る高周波焼入装置
は、ワークとしての等速ジョイントに用いられるカップ
Ｗの機械加工された部分であるシャフト部ＷＳを支持す
るワーク支持部１００と、このワーク支持部１００での
み支持された状態にあるカップＷのカップ部ＷＣの内面
を加熱する加熱手段としての高周波加熱コイル２００
と、この高周波加熱コイル２００によって加熱された部
分であるカップ部ＷＣの内面を冷却する冷却手段として
の冷却ジャケット（図示省略）とを有している。

【００１１】等速ジョイントに用いられるカップＷは、
精度が要求される部分、すなわちカップ部ＷＣの内面と
シャフト部ＷＳとは機械加工が施されている。しかし、
精度が要求されない部分、すなわちカップ部ＷＣの開放
側の端面ＷＣ１は機械加工が施されていないため、凸凹
になっている。なお、この実施の形態の説明におけるカ
ップ部ＷＣは、内面に３つの溝部ＷＣ２〜４が等間隔に
形成されたいわゆるトリポートタイプのものであるとす
る。

【００１２】この高周波焼入装置は、前記ワーク支持部
１００、高周波加熱コイル２００及び冷却ジャケットの
他に、高周波焼入が施されるカップＷの溝部ＷＣ２〜４
の割り出しを行う割り出し手段（図示省略）と、この割
り出し手段によって割り出されたカップＷを割り出し位
置を変更することなく焼入位置の上方まで搬送するとと
もに、高周波焼入が施されたカップＷを焼入位置から搬
出位置まで搬送する搬送手段３００とを有している。

【００１３】前記割り出し手段は、カップ部ＷＣの溝部
ＷＣ２〜４の位置が高周波焼入が施される際の位置と同
じになるようにするものである。また、搬送手段３００
は、カップＷのシャフト部ＷＳを把持して割り出し手段
から焼入位置の上方までカップＷを移動させる役目と、
カップＷのシャフト部ＷＳを把持して焼入位置の上方か
ら搬出位置まで搬送する役目とを有している。

【００１４】前記搬送手段３００は、第１のチャック部
３１０と、第２のチャック部３２０と、これらの２つの
チャック部３１０、３２０を同時に移動させる図示しな
い移動機構とを有している。前記２つののチャック部３
１０、３２０は、図１に示すように、第２のチャック部
３２０が焼入位置の上方に位置する場合には、第１のチ
ャック部３１０が次の高周波焼入が施されるべきカップ
Ｗを受け取る搬入位置の上方に位置している。また、第
２のチャック部３２０が搬出位置の上方に位置する場合
には、第１のチャック部３１０は焼入位置の上方に位置
している。

【００１５】前記高周波加熱コイル２００は、例えば図
２に示すように、カップ部ＷＣの溝部ＷＣ２〜４に挿入
される３つの加熱導体部２１０と、この加熱導体部２１
０を連結する連結導体部２２０と、一対の給電導体部２
３０とを有している。この高周波加熱コイル２００は、
高周波電流が供給された際の自身の過熱を防止するため
に内部に冷却液が循環するようになっている。

【００１６】また、この高周波加熱コイル２００の加熱
導体部２１０の下方には、加熱導体部２１０によって加
熱された部分を冷却するために冷却液を噴射する冷却ジ
ャケット（図示省略）が設けられている。なお、図示は
省略してあるが、溝部ＷＣ２〜４の過熱を防止するため
に、カップ部ＷＣの外側から冷却液を噴射する外側冷却
ジャケットも設けられている。

【００１７】前記ワーク支持部１００は、カップＷのシ
ャフト部ＷＳを把持するものであり、チャック部１１０
と、このチャック部１１０を上下動させる図示しない駆
動部とを有している。前記チャック部１１０は、高周波
加熱コイル２００の上方に設けられている。このワーク
支持部１００は、前記搬送手段３００で加熱位置の上方
まで搬送されたカップＷ、すなわち前記割り出し手段に
よって割り出し済みのカップＷを加熱位置の上方におい
て、前記搬送手段３００から受け取るのである。

【００１８】このように構成された高周波焼入装置は、
次のようにしてワークであるカップＷの高周波焼入を行
う。

【００１９】まず、搬送手段３００の第１のチャック部
３１０が高周波焼入が施されるべきカップＷのシャフト
部ＷＳを把持する（図１（Ａ）参照）。このカップＷ
は、前記割り出し手段によって割り出しが行われたもの
である。この場合、第２のチャック部３２０は、ワーク
支持部１００のチャック部１１０と対向する位置、すな
わち焼入位置の上方に位置している。

【００２０】そして、前記カップＷを焼入位置の上方ま
で移動させる（図１（Ｂ）参照）。そして、焼入位置の
上方においてカップＷをワーク支持部１００のチャック
部１１０に受け渡す（図１（Ｃ）参照）。この場合、第
２のチャック部３２０は、搬出位置に位置している。ま
た、同時に次に高周波焼入が施されるカップＷの割り出
しが行われている。

【００２１】前記ワーク支持部１００は、機械加工が施
された部分であるシャフト部ＷＳを支持するので、搬送
手段３００からワーク支持部１００に受け渡されたカッ
プＷの溝部ＷＣ２〜４の割り出しはまったく変化してい
ない。

【００２２】次に、ワーク支持部１００が焼入位置まで
下降することで、カップ部ＷＣの内側に高周波加熱コイ
ル２００が入り込み、移動焼入が行われる。従って、こ
の焼入の際には、カップＷはワーク支持部１００のチャ
ック部１１０でのみ支持された状態にある。従って、移
動焼入の際にも、カップＷの溝部ＷＣ２〜４の割り出し
はまったく変化していない。この高周波焼入の最中に、
第１のチャック部３１０は、次に高周波焼入が施される
べきカップＷを把持できる位置に、第２のチャック部３
２０は高周波焼入が現在施されているカップＷを把持で
きる位置にそれぞれ移動する（図１（Ｄ）参照）。

【００２３】溝部ＷＣ２〜４の高周波焼入が完了したな
らば、ワーク支持部１００がカップＷを把持したまま上
昇する。そして、この高周波焼入が完了したカップＷ
は、搬送手段３００の第２のチャック部３２０に受け渡
される。この後、第２のチャック部３２０は、搬出位置
まで移動して高周波焼入が完了したカップＷを搬出する

【００２４】以降は上述した動作を繰り返すことでカッ
プ部ＷＣの高周波焼入を順々に行うのである。

【００２５】このように構成された高周波焼入装置であ
ると、カップ部ＷＣの開放側の端面ＷＣ１に機械加工が
施されていないものであっても、高周波加熱コイル２０
０より上流に位置する割り出し手段による割り出しを損
なうことなく高周波焼入を施すことができる。すなわ
ち、カップ部ＷＣの内部に高周波焼入を施している間
は、いわばカップ部ＷＣは宙に浮いた状態にあるので、
機械加工が施されていないカップ部ＷＣの開放側の端面
ＷＣ１がカップ部ＷＣの位置に影響を及ぼすことはない
ためである。

【００２６】なお、上述した実施の形態では、焼入位置
においては、ワーク支持部１００のチャック部１１０の
みが上下動することで移動焼入が施されるとしたが、逆
に高周波加熱コイル２００のみを移動させてもよいし、
高周波加熱コイル２００とワーク支持部１００のチャッ
ク部１１０とを同時に移動させるようにしてもよい。

【００２７】

【発明の効果】本発明に係る高周波焼入装置は、ワーク
の機械加工された部分を支持するワーク支持部と、この
ワーク支持部でのみ支持された状態にあるワークを加熱
する加熱手段と、この加熱手段によって加熱された部分
を冷却する冷却手段とを備えている。

【００２８】従って、ワーク支持部で支持されるワーク
を加熱する場合、従来のようにワークをベースの上に載
置する必要がないため、たとえカップ部の端面が機械加
工が施されていないものであっても、高周波加熱コイル
とカップとの位置関係を正しいものとすることが可能に
なる。従って、従来のように、高周波加熱コイルがカッ
プ部の内面に接触というような問題は発生しない。

【００２９】また、本発明に係る高周波焼入方法は、機
械加工された部分をワーク支持部で支持する工程と、前
記ワーク支持部でのみ支持された状態にあるワークを加
熱手段で加熱する工程と、加熱手段で加熱された部分を
冷却手段で冷却する工程とを有している。

【００３０】従って、この方法によると、高周波加熱時
にワークは機械加工された部分をワーク支持部で支持さ
れているで、たとえカップ部の端面が機械加工が施され
ていないものであっても、高周波加熱コイルとカップと
の位置関係を正しいものとすることが可能になる。従っ
て、従来のように、高周波加熱コイルがカップ部の内面
に接触というような問題は発生しない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態に係る高周波焼入装置の動
作を示す概略的構成図である。

【図２】本発明の実施の形態に係る高周波焼入装置に用
いられる高周波加熱コイルとワークであるカップとの関
係を示す概略的断面図である。

【図３】本発明の実施の形態に係る高周波焼入装置によ
って高周波焼入が施されるワークとしてのカップの概略
的正面図である。

【図４】従来のこの種の高周波焼入装置を示す概略的構
成図である。

【符号の説明】

１００ ワーク支持部 １１０ チャック部 ２００ 高周波加熱コイル ３００ 搬送手段 Ｗ カップ（ワーク）

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ワークの機械加工された部分を支持する
   ワーク支持部と、このワーク支持部でのみ支持された状
   態にあるワークを加熱する加熱手段と、この加熱手段に
   よって加熱された部分を冷却する冷却手段とを具備した
   ことを特徴とする高周波焼入装置。
2. 【請求項２】 機械加工された部分をワーク支持部で支
   持する工程と、前記ワーク支持部でのみ支持された状態
   にあるワークを加熱手段で加熱する工程と、加熱手段で
   加熱された部分を冷却手段で冷却する工程とを具備した
   ことを特徴とする高周波焼入方法。