JP2000302724A - α,ω−ジカルボン酸及びその精製方法、並びに、これを用いた熱硬化性粉体塗料組成物 - Google Patents

α,ω−ジカルボン酸及びその精製方法、並びに、これを用いた熱硬化性粉体塗料組成物

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JP2000302724A
JP2000302724A JP11217099A JP11217099A JP2000302724A JP 2000302724 A JP2000302724 A JP 2000302724A JP 11217099 A JP11217099 A JP 11217099A JP 11217099 A JP11217099 A JP 11217099A JP 2000302724 A JP2000302724 A JP 2000302724A
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Yoshinori Torii
芳典 鳥居
Takakuni Goto
任邦 後藤
Takahisa Miyawaki
孝久 宮脇
Yoshio Kikuta
佳男 菊田
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KAWAGUCHI YAKUHIN KK
Mitsui Chemicals Inc
Kawaguchi Chemical Co Ltd
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KAWAGUCHI YAKUHIN KK
Mitsui Chemicals Inc
Kawaguchi Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 発酵法により得られるα,ω−ジカルボン酸
であって着色、耐候性、耐湿性等の問題が発生せず、塗
料組成物中の架橋剤成分(硬化剤成分)等へ応用可能な
ω−ジカルボン酸を提供する。 【解決手段】 ノルマルパラフィンを原料に発酵法によ
り製造されたα,ω−ジカルボン酸であって、窒素含有
量が0〜100ppmになるまで精製されたことを特徴
とするα,ω−ジカルボン酸;その精製方法;並びに、
このα,ω−ジカルボン酸を架橋剤成分として用いた熱
硬化性粉体塗料組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗料組成物中の架
橋剤等として有用なα,ω−ジカルボン酸及びその精製
方法に関し、さらに、優れた外観特性(平滑性等)、機
械的特性(耐チッピング性等)、耐候性、及び、耐黄変
性を有する硬化塗膜を形成できる熱硬化性粉体塗料組成
物に関する。
【0002】
【従来の技術】[アクリル系粉体塗料の技術背景]粉体
塗料は、溶剤塗料に比べ、火災、毒性の危険性が少な
く、作業性が高い等多くの利点を有しており、近年、そ
の利用分野は拡大されている。その中でも、光沢性、耐
候性、耐薬品性、機械的強度の面から、熱硬化性アクリ
ル系樹脂が有望視されており、粉体塗料用の熱硬化性ア
クリル系樹脂の開発が種々試みられている。
【0003】例えば、特公昭53−12531号に開示
されているように、熱硬化性アクリル系樹脂含有粉体塗
料組成物としては、ガラス転移温度(Tg)40〜70
℃の(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと(メタ)
アクリル酸のグリシジルエステルとの共重合体を含んで
なるアクリル系樹脂に、熱架橋剤としてドデカン2酸を
配合したものが一般的に広く使用されている。
【0004】[環境(エコロジー)保全と熱硬化性粉体
塗料]最近、大気汚染、地球温暖化、酸性雨、オゾン層
破壊による有害紫外線量の増大等の環境問題が大きな問
題となっている。特に、塗料の技術分野においては、生
産者の立場からみると、塗装工程又は焼付け工程におい
て大量に発生する有機溶剤が環境に放出される場合に、
大気汚染が問題となる。
【0005】溶剤塗料を使用する場合には、有機溶剤を
大気中へ漏洩するのを防止する閉鎖系の設備が必要なの
で、このような大がかりな設備を必要としない粉体塗料
と比較して経済的に不利である。したがって、環境保護
及び省資源化の観点からは、溶剤塗料よりも、粉体塗料
を使用することが非常に有効であり、溶剤塗料から粉体
塗料への移行が時代の趨勢である。
【0006】[α,ω−ジカルボン酸製造の技術背景]
ギリシャ文字アルファベットにおいて、『α(アルフ
ァ)』は最初の文字であり、『ω(オメガ)』は最後の
文字であることから、両末端にカルボキシル基を有する
直鎖脂肪族ジカルボン酸は、『α,ω−ジカルボン酸』
と呼ばれる。
【0007】α,ω−ジカルボン酸は、ナイロンやポリ
エステル等の合成繊維や合成樹脂、粉体塗料用の架橋
剤、耐寒性可塑剤など様々の化学製品の原料として、古
くから使用されてきた有用な化合物である。
【0008】炭素原子数12個以下の短鎖α,ω−ジカ
ルボン酸の製造方法の具体例としては、アジピン酸をコ
ルベ法で電解2量化してセバシン酸を合成する方法(特
公昭47−51327号、特公昭49−75518号
等)、ブタジエンを出発原料として、ドデカン2酸を合
成する方法(特公昭37−14070号)等が挙げられ
る。
【0009】[長鎖α,ω−ジカルボン酸製造の技術背
景]このように、炭素原子数12個以下の短鎖α,ω−
ジカルボン酸の多くについては、合成による工業的製法
が確立されている。
【0010】しかしながら、炭素原子数13〜18の長
鎖α,ω−ジカルボン酸は、実質的に、合成による工業
的製法が確立されていないのが実状であった。すなわ
ち、例えば、炭素原子数13のブラシル酸の合成法とし
ては、特殊な菜種油に含まれるエルカ酸をオゾン酸化す
る方法により合成する方法(J.A.C.O.S.,48
巻,723頁〜(1971年))が知られているが、オ
ゾン酸化法は、爆発の危険性を孕むのみならず、製品の
ブラシル酸の収率も70%程度と低いので、工業的製造
法としては、満足できるものではなかった。
【0011】[長鎖α,ω−ジカルボン酸のバイオテク
ノロジーによる製造技術]このように、長鎖α,ω−ジ
カルボン酸の工業的製法の確立には、合成法によったの
では多くの困難が待ち受けている。
【0012】そこで、合成法によるのではなく、発酵法
等のバイオテクノロジーによるアプローチが試みられて
きた。例えば、石油留分中に含まれている炭素原子数1
3以上(通常は13〜18)のノルマルパラフィンを基
質とし、酵母等の微生物により発酵し、α,ω−両末端
を酸化して、炭素原子数13以上(通常は13〜18)
の長鎖α,ω−ジカルボン酸を製造するというような、
発酵法による研究が数多く行われている。
【0013】ここで生成する長鎖α,ω−ジカルボン酸
は、酵母菌の菌体内に蓄積されるので、発酵終了後、酵
母菌を回収し、酵母菌の細胞膜を機械的に破壊して長鎖
α,ω−ジカルボン酸を取り出している。
【0014】こうして得られた長鎖α,ω−ジカルボン
酸は、通常、菌体由来の蛋白質成分等が不純物として混
入している。そこで、例えば、特公昭52−21594
号、特公昭57−55398号等に記載の公知の精製方
法により、発酵生産後の長鎖α,ω−ジカルボン酸の精
製が行われている。このように精製された長鎖α,ω−
ジカルボン酸は、『工業用精製長鎖α,ω−ジカルボン
酸』として認識され、使用されている。
【0015】実際に、この工業用精製長鎖α,ω−ジカ
ルボン酸を、検出感度0.1重量%程度の一般的な元素
分析で分析しても、微生物菌体蛋白質由来の窒素分(N
分)は検出されない。そのような意味においても、公知
の精製方法により精製された発酵法由来長鎖α,ω−ジ
カルボン酸は、工業用精製長鎖α,ω−ジカルボン酸と
して認識されているのである。
【0016】[耐衝撃性と耐チッピング性の相関関係]
従来、粉体塗料の技術分野においては、塗膜の耐衝撃性
と耐チッピング性の概念の違いが必ずしも充分に認識さ
れておらず、また、塗膜の耐衝撃性が重視されることは
あったが、塗膜の耐チッピング性の重要性については、
必ずしも注意されていたわけではなかった。
【0017】すなわち、塗膜について耐衝撃性について
評価しても、塗膜について耐チッピング性について評価
することはほとんどなく、耐衝撃性と耐チッピング性の
相関関係については検討されておらず、耐衝撃性に優れ
ることが、必ずしも耐チッピング性に優れるとはいえな
かった。
【0018】例えば、特開平3−221567号におい
ては、粉体塗料の硬化形式として酸/イソシアネート反
応により粉体塗料塗膜を硬化せしめ、それにより塗膜の
耐衝撃性を改善する技術が開示されている。しかし、こ
こでは塗膜の耐チッピング性の概念が全く想到されず、
また、塗膜の耐衝撃性のみ重視し、塗膜の耐チッピング
性の重要性について全く注意されていなかった。
【0019】このような背景から、本発明者らは、粉体
塗料により形成した塗膜の、耐衝撃性と耐チッピング性
との間の相関関係について着目した。
【0020】例えば、米国特許3,845,016号
(Santokh S.Labana等)、米国特許3,919,347
号(Themistoklis Katsimbas等)、特開平5−1127
43号等には、グリシジル基/酸無水物基反応により硬
化せしめた粉体塗料塗膜は、耐衝撃性に劣ることが記載
されている。本発明者らは、これらに開示されている塗
膜について耐衝撃性について追試したところ、確かに耐
衝撃性に劣っていることが確認された。また同時に、耐
チッピング性についても独自に試験したが、耐衝撃性に
劣っているにもかかわらず、耐チッピング性については
逆に優れていることが確認された。すなわち、少なくと
もこれら事例に関する限り、耐衝撃性と耐チッピング性
との間には相関関係が無いことが確認された。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、長鎖
α,ω−ジカルボン酸を、熱硬化性粉体塗料用の架橋剤
成分(硬化剤成分)として応用するという、新たな検討
を鋭意進めてきた。
【0022】しかしながら、本発明者らは、工業用精製
長鎖α,ω−ジカルボン酸(すなわち、従来技術により
精製された長鎖α,ω−ジカルボン酸)を、架橋剤成分
として応用した場合、硬化塗膜に優れた物理的特性(耐
衝撃性、耐チッピング性等)を付与できるという優れた
作用効果を見い出したが、一方において、加熱硬化時
(例えば130〜180℃・10〜60分、または、1
50℃・30分)に、硬化塗膜が黄色〜褐色に激しく着
色し、耐候性、耐湿性も極めて劣るという問題点も見い
出した。
【0023】そこで、本発明者らは、このような硬化時
の着色や、耐候性、耐湿性の低下という問題点を解消す
ることを、本発明が解決しようとする課題とした。この
ような問題点は、従来、当業者に認識されていなかった
ことであり、本発明の構成の新規性・進歩性とは独立し
て、本発明の『発明が解決しようとする課題』もまた新
規であり、本発明者独自の知見に基づくものである。
【0024】すなわち本発明の目的は、発酵法により得
られるα,ω−ジカルボン酸であって、着色、耐候性、
耐湿性等の問題が発生せず、塗料組成物中の架橋剤成分
(硬化剤成分)等へ応用可能なα,ω−ジカルボン酸を
提供することにある。
【0025】本発明の他の目的は、このような長鎖α,
ω−ジカルボン酸を簡易かつ良好に得ることができる
α,ω−ジカルボン酸の精製方法を提供することにあ
る。
【0026】本発明の更に他の目的は、長鎖α,ω−ジ
カルボン酸を架橋剤成分(硬化剤成分)として用いるこ
とにより、硬化塗膜に優れた塗膜特性[外観特性、耐黄
変性、耐候性、物理的特性(耐衝撃性、耐チッピング性
等)]を有する熱硬化性粉体塗料組成物を提供すること
にある。
【0027】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来、精
製された長鎖α,ω−ジカルボン酸として認識され使用
されてきた工業用精製長鎖α,ω−ジカルボン酸中に、
今まで問題視されていなかった微量不純物が残存してお
り、その不純物が上記問題点を惹起するという仮説を立
てた。そして、鋭意研究の結果、この工業用精製長鎖
α,ω−ジカルボン酸中には、公知の精製方法では除去
しきれなかった微量不純物(蛋白質等の含窒素化合物)
が存在するという事実を見い出したのである。
【0028】具体的には、工業用精製長鎖α,ω−ジカ
ルボン酸は、検出感度0.1重量%程度の一般的な元素
分析で分析しても、微生物菌体蛋白質由来の窒素分(N
分)は検出されないが、本発明者らは、検出限界5pp
m程度の高性能微量窒素分析を採用することにより、5
00〜2000ppm程度の極微量の菌体蛋白質由来の
窒素が存在することを見い出した。
【0029】また本発明者らは、さらに鋭意研究を進め
た結果、窒素分を基準として、この極微量不純物をある
特定レベルまで除去することにより、臨界的に、着色、
耐候性、耐湿性等の問題が解消されることを見出し、本
発明を完成するに至った。
【0030】すなわち本発明は、ノルマルパラフィンを
原料に発酵法により製造されたα,ω−ジカルボン酸で
あって、窒素含有量が0〜100ppmになるまで精製
されたことを特徴とするα,ω−ジカルボン酸である。
【0031】さらに本発明は、塗料組成物中で架橋剤と
して機能する塗料組成物用の上記α,ω−ジカルボン酸
である。
【0032】さらに本発明は、樹脂成分(A)と架橋剤
成分(B)とを含んでなる熱硬化性粉体塗料組成物であ
って、架橋剤成分(B)が、上記塗料組成物用α,ω−
ジカルボン酸を含んでなることを特徴とする熱硬化性粉
体塗料組成物である。
【0033】さらに本発明は、ノルマルパラフィンを原
料に発酵法により製造され、その窒素含有量が500p
pm以上のα,ω−ジカルボン酸を精製する為の方法で
あって、α,ω−ジカルボン酸の少なくとも一部を溶解
する機能を有する溶媒とα,ω−ジカルボン酸を混合し
て、該溶媒に不溶性の不純物を析出除去し、かつ該溶媒
に可溶性の不純物を活性炭に吸着除去した後、該溶媒に
溶解しているα,ω−ジカルボン酸を回収することによ
り、窒素含有量が0〜100ppmになるまで精製され
たα,ω−ジカルボン酸を得ることを特徴とするα,ω
−ジカルボン酸の精製方法である。
【0034】
【発明の実施の形態】[語『α,ω−ジカルボン酸』の
概念]本発明において、『α,ω−ジカルボン酸』なる
語の概念は、既述のとおり、直鎖の両末端がカルボキシ
ル基により置換された直鎖脂肪族ジカルボン酸を包含す
る。
【0035】[語『短鎖α,ω−ジカルボン酸』の概
念]本発明において、『短鎖α,ω−ジカルボン酸』な
る語の概念は、炭素原子数12以下のα,ω−ジカルボ
ン酸を包含する。また、1種類の炭素原子数12以下の
α,ω−ジカルボン酸のみならず、2種類以上の炭素原
子数12以下のα,ω−ジカルボン酸の混合物をも包含
する。
【0036】工業的には、短鎖α,ω−ジカルボン酸の
多くは合成法で製造される。
【0037】[語『長鎖α,ω−ジカルボン酸』の概
念]本発明において、『長鎖α,ω−ジカルボン酸』な
る語の概念は、炭素原子数13以上(通常は13〜1
8)のα,ω−ジカルボン酸を包含する。
【0038】長鎖α,ω−ジカルボン酸は、直鎖の両末
端にカルボキシル基を有し、この二つのカルボキシル基
の間の炭素原子数が、11以上(通常は11〜16)で
あれば特に制限されるものではなく、飽和炭化水素であ
っても、不飽和炭化水素であってもよい。一般的には、
飽和炭化水素が好適である。
【0039】長鎖α,ω−ジカルボン酸としては、通
常、80〜130℃の融点を有するものが特に好適であ
る。長鎖α,ω−ジカルボン酸の炭素原子数は、偶数で
あっても奇数であってもよいが、一般的には、奇数のも
のは融点が80〜130℃であることが多いので、奇数
のものが好ましい場合が多い。
【0040】本発明において、『長鎖α,ω−ジカルボ
ン酸』なる語の概念は、1種類の炭素原子数13〜18
のα,ω−ジカルボン酸のみならず、2種類以上の炭素
原子数13〜18のα,ω−ジカルボン酸の混合物をも
包含する。
【0041】工業的には、長鎖α,ω−ジカルボン酸の
多くは発酵法で製造される。
【0042】[アクリル系共重合体(A’)]本発明に
おいて、アクリル系共重合体(A’)は、1分子中に少
なくとも1個のラジカル重合性不飽和結合と、少なくと
も1個のエポキシ基とを有する単量体(a1)、及び、
1分子中に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和結合
を有し、かつ、エポキシ基を有さない単量体(a2)を
含む反応系でラジカル重合して得られる共重合体であ
る。
【0043】[単量体(a1)]単量体(a1)は、1
分子中に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和結合と
少なくとも1個のエポキシ基とを有する単量体(a1)
であれば、特に制限されない。
【0044】単量体(a1)のエポキシ基は、アクリル
系共重合体(A’)形成後も分子中に残存し、架橋剤成
分(B)であるα,ω−ジカルボン酸のカルボキシル基
と架橋反応して、塗膜の硬化に寄与する。
【0045】単量体(a1)の具体例としては、グリシ
ジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メ
タ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、3,4
−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−
ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエー
テル等を挙げることができる。これらの中では、グリシ
ジルメタクリレートが好ましい。これらは、単独で又は
2種類以上を併用できる。なお、本発明において(メ
タ)アクリレートとは、「アクリレート及び/又はメタ
クリレート」を意味する。
【0046】[単量体(a2)]単量体(a2)は、1
分子中に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和結合を
有し、かつ、エポキシ基を有さない単量体であれば、特
に制限されない。一般的には、架橋剤成分(B)である
α,ω−ジカルボン酸のカルボキシル基と架橋反応して
塗膜の硬化に寄与する様な種類の反応性官能基を有さな
いものであることが好ましい。
【0047】単量体(a2)の具体例としては、不飽和
二重結合を有する、カルボン酸類、酸無水物類、カルボ
ン酸エステル類、不飽和炭化水素類、芳香族ビニル炭化
水素類等が挙げられる。これらの中では、ラジカル重合
性不飽和二重結合を有するカルボン酸エステル類が好ま
しい。
【0048】このような単量体(a2)のより詳細な具
体例を、以下の〜に列挙する。これらは、単独で又
は2種類以上を併用できる。
【0049】 (メタ)アクリル酸誘導体 (メタ)アクリル酸誘導体の具体例としては、メチル
(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、
n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メ
タ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、
イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)ア
クリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2
−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メ
タ)アクリレート、2−エチルオクチル(メタ)アクリ
レート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル
(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレー
ト、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メ
タ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリ
レート等を挙げることができる。
【0050】 ジカルボン酸のエステル類 ジカルボン酸のエステル類の具体例としては、マレイン
酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸のア
ルキルエステルを挙げることができる。
【0051】 α,β−不飽和カルボン酸又はその無
水物類 α,β−不飽和カルボン酸又はその無水物類の具体例と
しては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイ
ン酸等のα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物類等
を挙げることができる。
【0052】 その他 その他の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレ
ン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル炭化水素類;塩化
ビニル、塩化ビニリデン、ふっ化ビニル、モノクロロト
リフルオロエチレン等のハロゲン化エチレン系不飽和単
量体;酢酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル;エチレ
ン、プロピレン、炭素原子数4〜20のα−オレフィン
等のα−オレフィン;ラウリルビニルエーテル等のアル
キルビニルエーテル;等の不飽和単量体を挙げることが
できる。
【0053】[単量体(a1)及び(a2)の使用量]
単量体(a1)及び(a2)の使用量は、単量体(a
1)及び単量体(a2)の合計100重量部を基準とし
て、単量体(a1)15〜60重量部、単量体(a2)
40〜85重量部が好ましく、単量体(a1)20〜5
5重量部、単量体(a2)45〜80重量部がより好ま
しい。
【0054】単量体(a1)を上述の特定量(好ましく
は15重量部、より好ましくは20重量部)以上の量で
使用することは、特に、得られた塗膜の耐衝撃性、耐擦
傷性及び耐溶剤性等においてより優れた結果をもたら
す。一方、単量体(a1)を上述の特定量(好ましくは
60重量部、より好ましくは55重量部)以下の量で使
用することは、得られた塗膜の平滑性等においてより優
れた結果をもたらす。
【0055】単量体(a2)40〜85重量部のうち、
39〜55重量部が炭素原子数1〜12のアルキル基及
び/又はシクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸
エステルであることが好ましい。このような(メタ)ア
クリル酸エステルを上記範囲の量で使用することは、塗
膜の硬度や耐候性の点でより優れた結果をもたらす。
【0056】単量体(a2)の一部としてスチレンを使
用する場合、その使用量は、単量体(a1)及び単量体
(a2)の合計100重量部に対して、1〜30重量部
が好ましく、5〜20重量部がさらに好ましい。この場
合、単量体(a2)全体の量は40〜85重量部が好ま
しく、50〜80重量部がさらに好ましい。単量体(a
2)の一部としてスチレンを使用する利点は、塗膜へさ
らに優れた光沢性を付与できることにある。さらに、ス
チレンを上述の特定量(望ましくは30重量部、好まし
くは20重量部)以下の量で使用することは、得られる
塗膜の黄変の防止、耐候性等においてより優れた結果を
もたらす。
【0057】一般的には、単量体(a2)として、分子
内にカルボキシル基、酸無水物基等のエポキシ基と反応
可能な基を有する単量体を少なくした方が、アクリル系
共重合体(A’)成分の製造時にゲル化の点で問題を生
じない傾向にある。したがって、これらの単量体を使用
する場合は、少量(例えば、単量体(a1)と単量体
(a2)の合計重量を基準として3重量部以下)使用
し、それ以外の単量体(a2)と併用することが好まし
い。
【0058】[アクリル系共重合体(A’)]アクリル
系共重合体(A’)は、通常、そのガラス転移点(T
g)が30〜100℃の範囲となるように調整すること
が好ましい。30℃以上のTgを有するアクリル系共重
合体(A’)を使用することは、通常、塗料組成物の貯
蔵安定性等においてより優れた結果をもたらす。一方、
100℃以下のTgを有するアクリル系共重合体
(A’)を使用することは、通常、加熱流動性の低下を
防止し、それに起因して、得られる塗膜の平滑性等の外
観特性などにおいてより優れた結果をもたらす。このア
クリル系共重合体(A’)のTgは、DSC(示差走査
型熱量計)により測定できる。
【0059】アクリル系共重合体(A’)の数平均分子
量(Mn)は、1,000〜10,000が好ましく、
1,500〜4,000がさらに好ましい。上述の特定
値(好ましくは1,000、さらに好ましくは1,50
0)以上のMnを有するアクリル系共重合体(A’)を
使用することは、塗料組成物の貯蔵安定性等においてよ
り優れた結果をもたらす。一方、上述の特定値(好まし
くは10,000、さらに好ましくは4,000)以下
のMnを有するアクリル系共重合体(A’)を使用する
ことは、得られる塗膜の平滑性等の外観特性などにおい
て、より優れた結果をもたらす。このアクリル系共重合
体(A’)のMnは、例えば、ポリスチレンを標準とし
て、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ
ィー)により測定することができる。
【0060】[アクリル系共重合体(A’)の製造方
法]アクリル系共重合体(A’)は、例えば、溶液重合
法、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法などのラジカ
ル重合法により調製できる。特に、溶液重合法が好適で
ある。
【0061】使用するラジカル重合開始剤としては、公
知の有機過酸化物、アゾニトリル等を挙げることができ
る。有機過酸化物には、アルキルパーオキシド、アリー
ルパーオキシド、アシルパーオキシド、アロイルパーオ
キシド、ケトンパーオキシド、パーオキシカーボネー
ト、パーオキシカーボキシレート等が含まれる。アゾニ
トリルとしては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビ
スイソプロピルニトリル等を挙げることができる。これ
らは1種又は2種以上を併用しても良い。
【0062】アクリル系共重合体(A’)の分子量を調
整する方法としては、ドデシルメルカプタンなどのメル
カプタン類、ジベンゾイルスルフィドなどのジスルフィ
ド類、チオグリコール酸2−エチルヘキシルなどのチオ
グリコール酸の炭素原子数1〜18のアルキルエステル
類、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素類の連鎖移動
剤;イソプロピルアルコール、イソプロピルベンゼン、
トルエン等の連鎖移動効果の大なる有機溶剤;などの存
在下に重合する等の手段を使用することができる。
【0063】[塗料組成物用α,ω−ジカルボン酸]本
発明の塗料組成物用α,ω−ジカルボン酸は、架橋剤成
分(B)として用いられる。この塗料組成物用α,ω−
ジカルボン酸は、例えば、発酵法によって得られ、かつ
公知の方法により精製された市販の工業用精製長鎖α,
ω−ジカルボン酸(窒素含有量500ppm以上)を、
以下に記述する所定の方法により更に追加的に精製して
得られた、窒素分低減α,ω−ジカルボン酸(窒素含有
量0〜100ppm)である。
【0064】[工業用精製α,ω−ジカルボン酸の追加
精製方法]既に述べてきたように、長鎖α,ω−ジカル
ボン酸は、工業的には、発酵法等のバイオテクノロジー
により生産され、こうして得られた発酵法による長鎖
α,ω−ジカルボン酸は、通常、酵母菌由来の蛋白質成
分等が不純物として混入している。これを公知の精製方
法により精製して、工業用精製長鎖α,ω−ジカルボン
酸が得られる。
【0065】本発明者らの知見によれば、市販されてい
る工業用精製長鎖α,ω−ジカルボン酸について微量窒
素分析を行うと、500〜2000ppm程度の窒素の
存在が確認される。このような工業用精製長鎖α,ω−
ジカルボン酸をそのまま使用するのではなく、さらに追
加的な精製を行うことにより、窒素含有量が0〜100
ppmになるまで精製された塗料組成物用α,ω−ジカ
ルボン酸を得ることができる。
【0066】また、発酵法の原料であるノルマルパラフ
ィンの純度によっては、2種類以上の炭素原子数13以
上のα,ω−ジカルボン酸や、炭素原子数12以下の
α,ω−ジカルボン酸が、発酵工程において、酵母菌に
より、同時に生産される場合もある。すなわち、工業用
精製長鎖α,ω−ジカルボン酸は、少なくとも1種類の
炭素原子数13〜18のα,ω−ジカルボン酸を含有し
ているが、炭素原子数12以下のα,ω−ジカルボン酸
を含有した混合物である場合もある。
【0067】[高性能微量窒素分析]既に述べてきたよ
うに、市販されている工業用精製長鎖α,ω−ジカルボ
ン酸の窒素含有量は、一般的な元素分析(検出限界0.
1重量%程度)では検出できない。高性能微量窒素分析
(検出限界5ppm程度、場合により0.01ppm程
度)により、500〜2000ppm程度の極微量の菌
体蛋白質由来の窒素を初めて検出できる。したがって、
本発明において、窒素含有量の分析は、そのような微量
窒素分析により行う必要がある。
【0068】ここで、一般的な元素分析に使用する分析
装置の具体例としては、パーキンエルマー製2400型
CHN分析装置(検出限界0.1重量%)を挙げること
ができる。また、本発明において使用する高性能微量窒
素分析装置の具体例としては三菱化成工業製TN−10
型微量窒素分析装置(検出限界5ppm)を挙げること
ができる。この三菱化成工業製TN−10型微量窒素分
析装置を用い、化学発光法により分析すればよい。
【0069】[工業用精製α,ω−ジカルボン酸の追加
精製方法の好ましい態様]本発明において、追加精製の
方法としては、市販の工業用精製長鎖α,ω−ジカルボ
ン酸のおいて除去しきれなかった微量不純物(蛋白質等
の含窒素化合物、通常は窒素含有量が500ppm以
上)を、窒素含有量が0〜100ppmになるまで低減
できる精製方法であれば、特に制限されない。ただし、
好ましい態様は、以下の通りである。
【0070】 操作方法 本発明において、追加精製方法の好ましい態様として
は、例えば、〈工程A〉α,ω−ジカルボン酸の少なく
とも一部を溶解する機能を有する溶媒とα,ω−ジカル
ボン酸を混合して、〈工程B〉該溶媒に不溶性の不純物
を析出除去し、かつ〈工程C〉該溶媒に可溶性の不純物
を活性炭に吸着除去した後、〈工程D〉該溶媒に溶解し
ているα,ω−ジカルボン酸を回収する精製方法が挙げ
られる。以下、工程毎の具体例に説明する。
【0071】〈工程A〉 混合・溶解工程 この工程は、発酵法によって得られた市販の工業用精製
長鎖α,ω−ジカルボン酸を、溶媒(α,ω−ジカルボ
ン酸の良溶媒、すなわち、α,ω−ジカルボン酸の少な
くとも一部を溶解する機能を有する溶媒)と混合して、
α,ω−ジカルボン酸を選択的に溶媒相に溶解せしめる
工程である。
【0072】この工程の操作は、通常、60〜140℃
において行なわれる。また、α,ω−ジカルボン酸は極
力少量用いて良好に溶解させることが好ましい。
【0073】〈工程B〉 不純物析出工程 この工程は、α,ω−ジカルボン酸が溶媒に溶解した溶
媒相と、溶媒に不溶性の不純物を含む固相に分別する工
程である。
【0074】この工程の操作は、通常、溶媒に不溶の蛋
白質成分等の不純物を分別(濾過、遠心分離、デカンテ
ーション等)することにより行なわれる。また、この工
程の操作は、通常40〜140℃において行なわれる。
【0075】〈工程C〉 活性炭吸着工程 この工程は、α,ω−ジカルボン酸が溶解した溶媒相中
に含まれる、溶媒に可溶性の不純物を活性炭により吸着
除去する工程である。
【0076】この工程の操作は、通常、40〜140℃
において行なわれる。また、不純物を吸着した活性炭の
除去は、通常、分別(濾過、遠心分離、デカンテーショ
ン等)により行われる。
【0077】〈工程D〉 窒素分低減製品回収工程 この工程は、溶媒に溶解しているα,ω−ジカルボン酸
を、追加精製(窒素分低減)α,ω−ジカルボン酸とし
て回収する工程である。
【0078】この工程の操作は、通常、最後に冷却する
ことによりα,ω−ジカルボン酸を再結晶化して、析出
結晶を分別(濾過、遠心分離、デカンテーション等)
し、回収することにより行なわれる。この再結晶化は、
通常、0〜30℃において行なわれる。
【0079】 溶媒の種類 使用する溶媒は、α,ω−ジカルボン酸に対しては良溶
媒であり、蛋白質成分等の不純物に対しては、貧溶媒で
ある特性を有するものが好ましい。また、α,ω−ジカ
ルボン酸と付加体を作らず、再結晶後、析出結晶を分別
操作が容易な結晶型を与えるものであることが好まし
い。
【0080】このような溶媒は、特に限定されるもので
はないが、その具体例として、酢酸イソプロピル、酢酸
n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル等のエ
ステル系溶媒、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶
媒等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
【0081】 溶媒の使用量 溶媒の使用量は特に限定されないが、一般的には、追加
精製前のα,ω−ジカルボン酸100g当たり、100
〜2,000mlが好ましい。
【0082】溶媒の使用量が上記範囲であれば、α,ω
−ジカルボン酸の溶解性が良好で、精製操作終了後の
α,ω−ジカルボン酸の回収が容易になり好ましい。
【0083】 溶解温度 α,ω−ジカルボン酸を溶媒に溶解する工程における溶
解温度は、α,ω−ジカルボン酸の種類や溶媒の種類に
左右されるが、60〜140℃が好ましい。例えば、酢
酸イソブチルの場合、100〜118℃が好ましく、こ
の範囲内だと追加精製に用いるα,ω−ジカルボン酸の
溶解速度が大きい。
【0084】 活性炭 溶剤に可溶性の着色物質を除去するためには、活性炭を
用い、吸着脱色や溶剤に可溶性の不純物の除去を行うこ
とが好ましい。活性炭の使用量は特に限定されないが、
追加精製前の工業用精製長鎖α,ω−ジカルボン酸10
0gに対して、0.5〜10.0重量%が好ましい。
【0085】 追加精製(窒素分低減)されたα,ω
−ジカルボン酸の回収方法 混合溶液からの追加精製(窒素分低減)α,ω−ジカル
ボン酸の回収方法は、溶媒の種類によって左右される
が、一般的には、α,ω−ジカルボン酸が溶媒に溶解し
た状態で、熱時(例えば40〜140℃)濾過すること
により蛋白質成分、及び、活性炭を除去し、ろ液から晶
析等により長鎖α,ω−ジカルボン酸を取り出す方法が
好ましい。
【0086】追加精製(窒素分低減)されたα,ω−ジ
カルボン酸は、最終乾燥を行うことが好ましい。この乾
燥方法は、特に限定されないが、溶剤が残存すると、粉
体塗料中に溶剤特有の臭気を持ち、塗装作業環境上好ま
しくない。一般的には、30〜70℃の温度範囲で、2
時間〜48時間真空乾燥処理することが好ましい。
【0087】最終的に得られた、追加精製(窒素分低
減)α,ω−ジカルボン酸から、蛋白質成分等が除去さ
れていることは、微量窒素分析装置により確認できる。
【0088】[長鎖α,ω−ジカルボン酸の具体例]長
鎖α,ω−ジカルボン酸の好ましい具体例として、ブラ
シル酸、テトラデカン2酸、ペンタデカン2酸、ヘキサ
デカン2酸、オクタデカン2酸等が挙げられる。これら
の中では、ブラシル酸が、特に好ましい。これら長鎖
α,ω−ジカルボン酸は、1種又は2種類以上組み合わ
せて使用することができる。
【0089】[長鎖α,ω−ジカルボン酸の融点]長鎖
α,ω−ジカルボン酸の融点は、80℃〜130℃であ
ることが好ましく、90℃〜120℃であることがより
好ましい。融点が80℃以上の長鎖α,ω−ジカルボン
酸を使用することは、粉体塗料の耐ブロッキング性にお
いて、より優れた結果をもたらす。一方、融点が130
℃以下の長鎖α,ω−ジカルボン酸を使用することは、
塗料焼付け時の加熱流動性、得られる塗膜の平滑性等に
おいて、より優れた結果をもたらす。
【0090】また、所望の特性が得られるのであれば、
長鎖α,ω−ジカルボン酸に対して、通常のアクリル系
粉体塗料の硬化剤として使用されている、ドデカン2
酸、セバシン酸等の炭素原子数12個以下の脂肪族多価
カルボン酸を混合して使用することもできる。
【0091】また、さらには、エイコサン2酸等の炭素
原子数19個以上の脂肪族多価カルボン酸類、1,3−
シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸
類、イソフタル酸等の芳香族多価カルボン酸類、ポリド
デカン2酸、ポリセバシン酸等のポリ酸無水物類等、の
アクリル系共重合体(A’)中のエポキシ基と架橋可能
な公知の硬化剤成分を混合して使用することも可能であ
る。
【0092】ただし、この場合、混合によって融点降下
又は融点上昇を起こす場合があるので、混合物の融点は
上記範囲となるように調整して使用することが望まし
い。
【0093】長鎖α,ω−ジカルボン酸のように、硬化
剤成分のアルキレン直鎖がより長くなると、粉体塗料加
熱硬化時の昇華、揮散によるエポキシ基とカルボキシル
基の配合比のずれ、硬化時の発煙、異臭が軽減される傾
向にある。
【0094】また、特筆すべき効果として、α,ω−ジ
カルボン酸が長鎖であれば、架橋点間距離の延長によ
り、硬化塗膜の収縮が抑えられ、塗膜の平滑性、硬化塗
膜の耐衝撃性(可撓性)、及び、耐チッピング性が向上
する点が挙げられる。
【0095】[耐チッピング性]本発明においては、
『耐チッピング性』とは、自動車車体のような塗膜に、
小石が衝突した場合に、衝突箇所において、塗膜が下地
から剥離しにくい性質をいう。特に、冬季に、路面凍結
防止材として、岩塩や小石を路面に散布する、北欧、西
欧、東欧、北米等の高緯度の地域で、この特性の意義は
大きくなる。『耐チッピング性』の評価には、米国の自
動車塗膜の試験法SAE−J400及びASTM D−
370に従ったグラベロメーター(スガ試験機株式会社
製)が使用できる。
【0096】[α,ω−ジカルボン酸の使用量]α,ω
−ジカルボン酸の使用量は、アクリル系共重合体
(A’)及びα,ω−ジカルボン酸の合計100重量部
を基準として、5〜50重量部が好ましく、15〜40
重量部がより好ましい。
【0097】また、当量比としては、アクリル系共重合
体(A’)のエポキシ基1当量に対して、長鎖α,ω−
ジカルボン酸を含めた硬化剤成分全体の架橋反応可能な
官能基(カルボキシル基及び/又は酸無水物基等)が、
0.5〜1.5当量であることが好ましく、0.7〜1.2
当量であることがより好ましい。
【0098】長鎖α,ω−ジカルボン酸の使用量や、全
硬化剤成分中官能基の当量比をこれら範囲内にすること
により、塗膜の外観、耐溶剤性、耐湿性などの特性を向
上できる。
【0099】[添加剤]本発明の粉体塗料組成物には、
通常、塗料に添加される種々の添加剤を添加することが
できる。
【0100】すなわち、本発明の粉体塗料組成物には、
目的に応じて、適宜、エポキシ樹脂、ポリエステル樹
脂、ポリアミドなどを包含する合成樹脂組成物、繊維素
又は繊維素誘導体などを包含する天然樹脂又は半合成樹
脂組成物を配合して、塗膜外観又は塗膜物性を向上させ
ることもできる。
【0101】さらに、本発明の粉体塗料組成物には、目
的に応じて、適宜、硬化触媒、顔料、流動調整剤、帯電
調整剤、表面調整剤、光沢付与剤、ブロッキング防止
剤、可塑剤、紫外線吸収剤、ワキ防止剤(脱ガス剤)、
着色防止剤、酸化防止剤等の添加剤を配合してもよい。
また、クリアコートとして使用する場合に、少量の顔料
を配合し、完全な隠ぺい性の発現しない程度に着色して
いてもよい。
【0102】[粉体塗料組成物の製造方法]本発明の粉
体塗料組成物を製造するための方法の具体例としては、
ロール機、ニーダー機、ミキサー(バンバリー型、トラ
ンスファー型等)、カレンダー設備、押出機等の混練機
を適宜組み合わせ、各工程の条件(温度、溶融若しくは
非溶融、回転数、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気等)を
適宜設定して、充分に均一に混合する方法が挙げられ
る。この後、粉砕装置等を用いて、均一な微細粉末状態
の粉体塗料を得ることができる。ただし、本発明はこれ
らに限定されるものではない。
【0103】さらに、本発明の粉体塗料組成物に添加剤
等を加える配合混練工程の一態様として、アクリル系共
重合体(A’)、α,ω−ジカルボン酸に、必要に応
じ、ブロッキング防止剤、表面調整剤、可塑剤、帯電調
整剤、顔料、充填剤、増量剤等の添加剤を加え、好まし
くは40〜130℃、より好ましくは60〜130℃の
範囲で、溶融混練装置により充分に溶融混練し、冷却す
れば、その添加剤が配合された粉体塗料組成物が得られ
る。この後、適当な粒度(通常、150メッシュ以下)
に均一に粉砕すれば、微細粉末状態の粉体塗料が得られ
る。この溶融混練装置としては、通常、加熱ロール機、
加熱ニーダー機、押出機(エクストルーダー)等を使用
できる。
【0104】[熱硬化性粉体塗料の塗装方法]熱硬化性
粉体塗料を塗装する方法の具体例としては、例えば、静
電塗装法、流動浸漬法等の塗装方法によって、その熱硬
化性粉体塗料を対象物に付着せしめ、加熱して熱硬化さ
せ塗膜を形成させる方法が挙げられる。この熱硬化の為
の焼付けは、通常約130℃〜約200℃、好ましくは
約140℃〜約180℃の温度において、通常約10〜
約60分間行なわれる。この焼付けにより、アクリル系
共重合体(A’)、及び、α,ω−ジカルボン酸硬化剤
(B)との架橋反応が進行する。この加熱硬化後、室温
まで冷却すれば、優れた特性を有する硬化塗膜が得られ
る。
【0105】[熱硬化性粉体塗料の用途]本発明の熱硬
化性粉体塗料組成物は、先に述べたような優れた特性を
有するので、自動車の車体又は自動車部品等のトップ
(クリア)コート用途に非常に有用である。とりわけ、
自動車の車体又は自動車部品を本発明の組成物からなる
熱硬化性粉体塗料を用いて上塗り塗装する方法、顔料入
り又はメタリックの水性塗料の下塗り塗料の上に本発明
の組成物からなる熱硬化性粉体塗料を上塗り塗料として
静電塗装し、該下塗り塗料と該上塗り塗料を同時に焼き
付ける塗膜形成方法などにおいて非常に有用である。
【0106】ただし、本発明のα,ω−ジカルボン酸の
用途は、塗料組成物の架橋剤成分としての用途に限定さ
れるものではなく、その他、加熱される場合のある各種
用途においても利用可能である。
【0107】
【実施例】以下、本発明をさらに具体的に説明するため
に、実施例及び比較例を挙げて説明するが、これらは、
本発明の内容の理解を助けるためのものであって、その
記載によって本発明が何ら限定されるものではない。ま
た、以下の記述の中で使用する「部」及び「%」は、特
に説明の無い限り、それぞれ「重量部」及び「重量%」
を意味する。
【0108】また、三菱化成工業製TN−10型微量窒
素分析装置(検出限界5ppm)を用いた化学発光法に
よる窒素分析は、具体的には以下の操作で行った。
【0109】(微量窒素分析)まず、乾燥試料を石英ポ
ートに入れ、高純度酸素及び高純度アルゴンキャリアガ
ス中、所定の熱分解温度条件下(燃焼部:800℃、触
媒部:900℃)で酸化分解させ、反応部で生成、除湿
されたNOガスを発光セルへ導入し、オゾンにより気相
酸化させ、この酸化反応の過程で発した光(化学発光、
波長590〜250nm)を光電子増倍管により受光す
ることにより測定した。
【0110】[製造例1;発酵法によって得られた長鎖
α,ω−ジカルボン酸の追加精製;ブラシル酸の追加精
製による窒素分低減ブラシル酸の製造]撹拌機、温度
計、環流コンデンサー及び窒素導入管を備えた4つ口フ
ラスコに、酢酸イソブチル2100mlと発酵法によって
得られた市販の精製ブラシル酸(販売元;川口薬品株式
会社)300gを仕込んだ。内容物を114℃に加熱し
て、30分間同温度で保持した。この際、不純物と見ら
れる薄褐色状の不溶解分が確認された。次いで、活性炭
6gを添加し10分間撹拌した後、熱時濾過を行い、不
溶解分及び活性炭を除去した。続いて、濾過液を5℃に
冷却してブラシル酸を晶析させた。ブラシル酸を濾過に
より取り出し、50℃で12時間減圧乾燥させて、窒素
分低減ブラシル酸286.6g(収率94.58%)を
得た。同様の操作を行ったところ、多くの場合、収率は
90〜96%の範囲であった。
【0111】得られた、窒素分低減ブラシル酸を、三菱
化成工業製TN−10型微量窒素分析装置により微量窒
素分析を行うと、窒素分は20ppmであることが確認
された。同様の操作を行ったところ、多くの場合、窒素
分は10〜40ppmの範囲であった。追加精製前の上
記市販のブラシル酸も同様にして微量窒素分析を行う
と、1300ppmであることが確認された。
【0112】[製造例2、3:アクリル系共重合体
(A’)の製造]まず、攪拌機、温度計、還流コンデン
サー及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、有機溶
媒としてキシレンを装入し、攪拌しながら還流温度まで
昇温した。キシレンの装入量は、後ほど仕込む単量体の
合計重量の66.7部に相当する量とした。次いで、系
を環流温度に保持、攪拌しながら、表1に示す単量体に
ラジカル重合開始剤としてt−ブチル−パーオキシ−2
−エチルヘキサノエート(商標名パーブチルO、日本油
脂株式会社製)を表1に示す量だけ溶解し、その混合溶
液を5時間に渡り滴下して、さらに、その後パーブチル
Oを0.5重量部滴下し、100℃で5時間保持した。
得られた重合溶液の溶剤を加熱減圧下で除去する事によ
り固体のアクリル系共重合体(A’)(製造例2、3)
を得た。得られたアクリル系共重合体(A’)(製造例
2、3)の物性を次の方法により分析し、その結果を表
1に記載した。
【0113】 ガラス転移温度(Tg)の測定:セイ
コー電子工業株式会社製「SSC/5200H」を用
い、ASTM(D3418−2)法に準拠して測定を行
った。
【0114】 数平均分子量(Mn): 測定装置:昭和電工製「System 21」 カラム :KF807L 3本 測定温度:40℃ 試料溶液:0.25重量%のTHF溶液 試料溶液注入量:200μl 検出器:屈折率検出器 ポリスチレンを標準として数平均分子量を算出した。
【0115】[実施例1〜6]製造例2、3において製
造したアクリル系共重合体(A’)、及び、追加精製
(窒素分低減)長鎖α,ω−ジカルボン酸を、表2に示
す重量比で配合し、アクリル系共重合体(A’)、及
び、架橋成分(B)である長鎖α,ω−ジカルボン酸の
合計100部に対し、TINUVIN144(チバスペ
シャリティケミカルズ社製、商標名、光安定剤)、ベン
ゾイン(ワキ防止剤)を各1重量部、TINUVIN
CGL1545(チバスペシャリティケミカルズ社製、
商標名、紫外線吸収剤)を2.0重量部、Resimi
x RL−4(三井化学株式会社製、商標名、流動調整
剤)を1.0重量部、ベンゾイン(ワキ防止剤)を0.
5重量部、添加し、上記混合物を、ヘンシェルミキサー
を使用して、均一にドライブレンドした後、二軸エクス
トルーダーPCM−30(池貝機販株式会社製)を用
い、シリンダー温度を110℃、スクリューの回転数を
200rpmに設定し、2回混練(2パス)を行った。
この溶融混練物を冷却後、ハンマーミル(ホソカワミク
ロン株式会社製)にて微粉砕し、150メッシュの篩を
通過した区分を回収して、熱硬化性粉体塗料(実施例1
〜6)を得た。
【0116】[比較例1]本発明に係る窒素分低減ブラ
シル酸(長鎖α,ω−ジカルボン酸)の代わりに、市販
の工業用精製ブラシル酸(販売元、川口薬品株式会社)
を使用して、表2に示す実施例1と全く同様な方法で、
熱硬化性粉体塗料(比較例1)を得た。
【0117】[比較例2]本発明に係る窒素分低減ブラ
シル酸(長鎖α,ω−ジカルボン酸)の代わりに、市販
の工業用精製ブラシル酸(販売元、川口薬品株式会社)
を使用して、表2に示す実施例2と全く同様な方法で、
熱硬化性粉体塗料(比較例2)を得た。
【0118】[比較例3]本発明に係る窒素分低減ブラ
シル酸(長鎖α,ω−ジカルボン酸)の代わりに、ドデ
カン2酸を使用して、実施例1と全く同様な方法で熱硬
化性粉体塗料(比較例3)を得た。
【0119】[比較例4]本発明に係る窒素分低減ブラ
シル酸(長鎖α,ω−ジカルボン酸)の代わりに、セバ
シン酸を使用して、実施例1と全く同様な方法で熱硬化
性粉体塗料(比較例4)を得た。
【0120】[比較例5]本発明に係る窒素分低減ブラ
シル酸(長鎖α,ω−ジカルボン酸)の代わりに、Co
rfree M1(デュポン社製、商標名、ドデカン2
酸、ウンデカン2酸、セバシン酸等の混合物)を使用し
て、実施例1と全く同様な方法で熱硬化性粉体塗料(比
較例5)を得た。
【0121】比較例1〜5に係る塗料組成を表2に示
す。
【0122】〔実施例及び比較例の評価〕ポリエステル
−メラミン架橋の溶剤系黒色塗料を、りん酸亜鉛処理を
施した0.8mm厚の梨地鋼板に20μm厚で塗装し、
その後170℃で30分間焼付けをして下地処理鋼板を
調製した。この下地処理鋼板に、各実施例及び比較例で
調製した熱硬化性粉体塗料を、膜厚が60〜70μmに
なるように静電塗装し、160℃で30分間焼付けをし
て、塗装板を得た。これら各粉体塗料及び塗装板につい
て、以下の性能評価を行なった。
【0123】(1) 塗膜の平滑性 平滑性について、目視で塗膜の外観を評価し、優れてい
るものを○、僅かに凸凹があるものを△、劣るものを×
とした。
【0124】(2) 塗膜の光沢 JIS K5400 7.6に準拠して、光沢計測定値
で(60゜グロス)評価した。
【0125】(3) 耐溶剤性試験 キシレンを含浸させたガーゼで、塗膜表面を50回往復
摩擦した後、摩擦箇所の目視観察を行った。痕跡が、全
くないものを◎、僅かにあるものを○、顕著にあるもの
を×と判定した。
【0126】(4) 耐衝撃性 JIS K5400 8.3.2(デュポン式)に準拠
して評価した。ここで採用したおもりの重さは500g
である。評価結果の数値は、塗膜に割れや剥がれが生じ
た最高の落下高さ(cm)で示した。
【0127】(5) 耐擦り傷性 塗膜表面を3%のクレンザー懸濁液を用いてブラシで摩
擦する擦傷試験を行ない、摩擦の前後で光沢性の(20
°グロス)評価を行ない、光沢保持率を算出した。光沢
保持率が60%以上のものを耐擦り傷性が非常に優れて
いるものとして◎、50%以上60%未満のものを優れ
ているものとして○、50%未満のものを耐擦り傷性が
不十分なものとして×とした。
【0128】(6) 耐チッピング性 米国の自動車塗膜の試験法SAE−J400及びAST
M D−370に従ったグラベロメーター(スガ試験機
株式会社製)を使用した。ここでは、塗装した鋼板を−
30℃の冷凍庫中4時間放置し、さらに、その後直ちに
−30℃のドライアイス・メタノール浴中で5分間冷却
し、塗装鋼板をドライアイスメタノール浴から引き上
げ、グラベロメーターにセット、直ちに砕石を吹き付け
て試験した。ドライアイスメタノール浴からの引き上げ
から、砕石を吹き付けるまでの所用時間は5秒以内とし
た。砕石はJIS A5001に規定された道路用砕石
7号を使用した。塗装鋼板毎に50gの砕石を使用し、
一気に衝突させた。吹き付けのために使用した圧縮空気
の圧力は、390kPa(ゲージ)とした。砕石の衝突
により傷を受けた鋼板は、10分間室温で放置した後、
剥離しかけた塗膜をマスキングテープを用いて完全には
がした。耐チッピング性の良否は、傷の平均により判定
した。この傷の平均直径が3.0mm未満であれば耐チ
ッピング性が優れているものとして○、3.0mm以上
のものを耐チッピング性が劣るものとして×と判定し
た。
【0129】(7) 耐湿性 JIS K5400 9.2.2に準拠して評価を行っ
た。試験片を湿潤箱内に72時間放置した後の試験片
に、膨れ、しわ、白化など塗膜に異常が見られないとき
は、耐湿性に異常がないとして○、塗膜に膨れ、しわ、
白化など塗膜に異常が見られるときは、耐湿性に異常が
あるとして×と判定した。
【0130】(8) 耐候性 QUVテスターで2,000時間照射し、この照射の前
後で20°の光沢度を評価し、20°光沢保持率を算出
した。光沢保持率は次式により計算した。光沢保持率
[%]=(照射後の20°光沢度)÷(照射前の20°光沢
度)×100この光沢保持率が、80%以上を◎、70
〜80%を○、70%以下を×とした。
【0131】(9) 粉体塗料の耐ブロッキング性 粉体塗料6.0gを内径20mmの円筒形容器に入れ、
30℃で7日間貯蔵後、粉体塗料を取り出しブロッキン
グ状態を目視及び指触で判定した。塗料のブロッキング
に異常がないものを○、ブロッキング状態が劣るものを
×と判定した。
【0132】(10) 粉体塗料の耐加熱黄変性 粉体塗料をサンプル管に6g入れ、150℃、30分間
空気中で加熱処理を行い、加熱後の塗料の黄変度合いを
目視で判定した。塗料の黄変が全くないものを○、塗料
の黄変(着色)が著しいものを×とした。
【0133】これらの塗膜及び塗料の評価結果を、表3
に示す。実施例1〜6は、本発明の範囲内で構成要素の
種類及び組合せを変えた組成物に関する。比較例1〜5
は、本発明の組成物と比較する為のものであり、本発明
の範囲から外れる構成要素の種類及び組合せの組成物に
関する。
【0134】実施例1〜6の評価結果から明らかなよう
に、本発明の組成物は、評価項目(1) 〜(10)の全てにつ
いて優れた性能を同時に発現している。
【0135】[実施例7]表4に示すように、追加精製
を施さなかったブラシル酸と、追加精製により窒素分を
低減したブラシル酸を、適宜ブレンドすることにより、
ブラシル酸中に不純物として含まれる窒素分のみを変化
させて、実施例1と全く同様に熱硬化性粉体塗料組成物
を調製、塗膜性能を評価した。
【0136】この表4の評価結果からも明らかなよう
に、窒素分を、100ppm以下に低減することによ
り、臨界的に優れた塗膜性能を発現できる。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
【表4】
【0141】
【発明の効果】本発明により、発酵法で得られかつ従来
技術により精製されたα,ω−ジカルボン酸を、硬化性
塗料組成物の架橋剤成分(硬化剤成分)に応用した場
合、加熱(150℃、30分)硬化時に、硬化塗膜が激
しく着色し、得られた硬化塗膜の耐候性、耐湿性も、極
めて劣るという問題点を解消することができる。
【0142】例えば、α,ω−ジカルボン酸中の極微量
不純物の除去を施した追加精製(窒素分低減)長鎖α,
ω−ジカルボン酸を、硬化性塗料組成物の架橋剤成分
(硬化剤成分)に応用することにより初めて、加熱(1
50℃、30分)硬化時に、硬化塗膜が全く着色せず、
しかも、得られた硬化塗膜の耐候性、耐湿性、耐衝撃
性、耐チッピング性の何れもが、極めて優れるという効
果が得られる。
【0143】すなわち、本発明によれば、従来の技術に
よったのでは実現が困難であった、発酵法によって製造
された長鎖α,ω−ジカルボン酸を、硬化性塗料組成物
の架橋剤成分(硬化剤成分)へ応用することを可能と
し、ひいては、硬化塗膜に優れた塗膜特性(外観特性、
耐黄変性、耐候性、物理的特性(耐衝撃性、耐チッピン
グ性等))を付与することができる。
【0144】特に、長鎖α,ω−ジカルボン酸を架橋剤
として採用したにもかかわらず、優れた塗膜外観特性を
発現することができる。また同時に、長鎖α,ω−ジカ
ルボン酸を架橋剤として採用することにより、架橋距離
を長くし、優れた耐チッピング性と、優れた耐衝撃性を
同時付与することができる。
フロントページの続き (72)発明者 宮脇 孝久 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三井 化学株式会社内 (72)発明者 菊田 佳男 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三井 化学株式会社内 Fターム(参考) 4H006 AA01 AA03 AB99 BS10 4J038 CG141 CH171 DB221 JA33 JA39 JA55 KA03 KA06 MA02 PA19

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ノルマルパラフィンを原料に発酵法によ
    り製造されたα,ω−ジカルボン酸であって、窒素含有
    量が0〜100ppmになるまで精製されたことを特徴
    とするα,ω−ジカルボン酸。
  2. 【請求項2】 塗料組成物中で架橋剤として機能する請
    求項1記載の塗料組成物用α,ω−ジカルボン酸。
  3. 【請求項3】 炭素原子数13〜18のα,ω−ジカル
    ボン酸を含んでなる請求項2記載の塗料組成物用α,ω
    −ジカルボン酸。
  4. 【請求項4】 ブラシル酸、テトラデカン2酸、ペンタ
    デカン2酸、ヘキサデカン2酸、及び、オクタデカン2
    酸から成る群より選択された1種以上のα,ω−ジカル
    ボン酸を含んでなる請求項2記載の塗料組成物用α,ω
    −ジカルボン酸。
  5. 【請求項5】 ブラシル酸を含んでなる請求項2記載の
    塗料組成物用α,ω−ジカルボン酸。
  6. 【請求項6】 80〜130℃の融点を有するα,ω−
    ジカルボン酸を含んでなる請求項2〜5の何れか一項記
    載の塗料組成物用α,ω−ジカルボン酸。
  7. 【請求項7】 請求項2〜6の何れか一項記載の熱硬化
    性粉体塗料組成物用α,ω−ジカルボン酸。
  8. 【請求項8】 樹脂成分(A)と架橋剤成分(B)とを
    含んでなる熱硬化性粉体塗料組成物であって、架橋剤成
    分(B)が、請求項7記載のα,ω−ジカルボン酸を含
    んでなることを特徴とする熱硬化性粉体塗料組成物。
  9. 【請求項9】 樹脂成分(A)が、1分子中に少なくと
    も1個のラジカル重合性不飽和結合と、少なくとも1個
    のエポキシ基とを有する単量体(a1)、及び、1分子
    中に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和結合を有
    し、かつ、エポキシ基を有さない単量体(a2)を含む
    反応系でラジカル重合して得られるアクリル系共重合体
    (A’)を含んでなる樹脂成分である請求項8記載の熱
    硬化性粉体塗料組成物。
  10. 【請求項10】 アクリル系共重合体(A’)が、単量
    体(a1)と単量体(a2)の合計100重量部に対し
    て、単量体(a1)15〜60重量部、及び、単量体
    (a2)40〜85重量部を含む反応系でラジカル重合
    して得られるアクリル系共重合体であり、さらに単量体
    (a2)40〜85重量部の内訳が、スチレン1〜30
    重量部、及び、炭素原子数1〜12のアルキル基及び/
    又はシクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸エス
    テル39〜55重量部である請求項9記載の熱硬化性粉
    体塗料組成物。
  11. 【請求項11】 単量体(a1)が、グリシジル(メ
    タ)アクリレート及びβ−メチルグリシジル(メタ)ア
    クリレートからなる群より選択された少なくとも1種の
    単量体を含んでなる請求項9又は10記載の熱硬化性粉
    体塗料組成物。
  12. 【請求項12】 ノルマルパラフィンを原料に発酵法に
    より製造され、その窒素含有量が500ppm以上の
    α,ω−ジカルボン酸を精製する為の方法であって、 α,ω−ジカルボン酸の少なくとも一部を溶解する機能
    を有する溶媒とα,ω−ジカルボン酸を混合して、該溶
    媒に不溶性の不純物を析出除去し、かつ該溶媒に可溶性
    の不純物を活性炭に吸着除去した後、該溶媒に溶解して
    いるα,ω−ジカルボン酸を回収することにより、窒素
    含有量が0〜100ppmになるまで精製されたα,ω
    −ジカルボン酸を得ることを特徴とするα,ω−ジカル
    ボン酸の精製方法。
  13. 【請求項13】 塗料組成物中で架橋剤として機能する
    塗料組成物用α,ω−ジカルボン酸を得る為の請求項1
    2記載の塗料組成物用α,ω−ジカルボン酸の精製方
    法。
  14. 【請求項14】 炭素原子数13〜18のα,ω−ジカ
    ルボン酸を含んでなる塗料組成物用α,ω−ジカルボン
    酸を得る為の請求項13記載の塗料組成物用α,ω−ジ
    カルボン酸の精製方法。
  15. 【請求項15】 ブラシル酸、テトラデカン2酸、ペン
    タデカン2酸、ヘキサデカン2酸、及び、オクタデカン
    2酸から成る群より選択された1種以上のα,ω−ジカ
    ルボン酸を含んでなる塗料組成物用α,ω−ジカルボン
    酸を得る為の請求項13記載の塗料組成物用α,ω−ジ
    カルボン酸の精製方法。
  16. 【請求項16】 ブラシル酸を含んでなる塗料組成物用
    α,ω−ジカルボン酸を得る為の請求項13記載の塗料
    組成物用α,ω−ジカルボン酸の精製方法。
  17. 【請求項17】 80〜130℃の融点を有するα,ω
    −ジカルボン酸を含んでなる塗料組成物用α,ω−ジカ
    ルボン酸を得る為の請求項13〜16の何れか一項記載
    の塗料組成物用α,ω−ジカルボン酸の精製方法。
  18. 【請求項18】 α,ω−ジカルボン酸の少なくとも一
    部を溶解する機能を有する溶媒が、非プロトン性極性溶
    媒である請求項13〜17の何れか一項記載の塗料組成
    物用α,ω−ジカルボン酸の精製方法。
  19. 【請求項19】 非プロトン性極性溶媒が、エステル系
    溶媒及びケトン系溶媒からなる群より選択された少なく
    とも1種の溶媒である請求項18記載の塗料組成物用
    α,ω−ジカルボン酸の精製方法。
  20. 【請求項20】 請求項13〜19の何れか一項記載の
    精製方法により得られた塗料組成物用α,ω−ジカルボ
    ン酸。
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