JP2000301731A5 - - Google Patents
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Description
【発明の名称】インクバック、インクタンク及びインクジェット記録装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】インク滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録装置の記録ヘッドへインクを供給するインクバックであって、
インクバック内部からインクを取り出す口部と、
口部を封止する封止部材と、
封止部材に形成された連結孔と、
一方が連結孔に連通して他方がインクバック内部と連通する供給通路と、
内部にインク供給用の流路が形成されており、先端部が開口されておらず、側面に前記流路を外部に連通させる孔部が形成されているインク供給針と、
封止部材に差し込まれたインク供給針の先端部を止め、前記孔部を連結孔に位置させる止め壁と、
を有することを特徴とするインクバック。
【請求項2】前記供給通路は、前記口部の壁面に形成され前記連結孔に連通する供給溝と、前記止め壁に形成され前記供給溝と前記インクバック内部とを連通させる供給孔と、からなることを特徴とする請求項1記載のインクバック。
【請求項3】前記供給通路は、前記封止部材内部に形成されたことを特徴とする請求項1記載のインクバック。
【請求項4】前記止め壁には、前記インク供給針の先端部が案内される前記インク供給針の断面積よりも大きい断面積を有する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のインクバック。
【請求項5】前記連結孔の断面積は、前記孔部の断面積よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のインクバック。
【請求項6】インクバックは、2枚の可撓性を有するシート体の周囲を接合することによって形成されており、2枚のシート体に挟まれて接合される前記口部の断面形状は舟形形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のインクバック。
【請求項7】前記シート体と前記口部が同一の熱可塑性樹脂材料から形成されたことを特徴とする請求項6記載のインクバック。
【請求項8】インク滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録装置の記録ヘッドへインクを供給するインクタンクであって、
インクタンク内からインクを取り出す口部と、
口部を封止する封止部材と、
封止部材に形成された連結孔と、
一方が連結孔に連通して他方がインクタンク内部と連通する供給通路と、
内部にインク供給用の流路が形成されており、先端部が開口されておらず、側面に前記流路を外部に連通させる孔部が形成されているインク供給針と、
封止部材に差し込まれたインク供給針の先端部を止め、前記孔部を連結孔に位置させる止め壁と、
を有することを特徴とするインクタンク。
【請求項9】前記供給通路は、前記口部の壁面に形成され前記連結孔に連通する供給溝と、前記止め壁に形成され前記供給溝と前記インクタンク内部とを連通させる供給孔と、からなることを特徴とする請求項8記載のインクタンク。
【請求項10】前記供給通路は、前記封止部材内部に形成されたことを特徴とする請求項8記載のインクタンク。
【請求項11】前記止め壁には、前記インク供給針の先端部が案内される前記インク供給針の断面積よりも大きい断面積を有する凹部が形成されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項記載のインクタンク。
【請求項12】前記連結孔の断面積は、前記孔部の断面積よりも大きいことを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項記載のインクタンク。
【請求項13】請求項1〜請求項7の何れかに記載のインクバック又は請求項8〜請求項12の何れかに記載のインクタンクを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録装置に関し、一層詳細には、インクバックまたはインクタンクの口部を封止する封止部材にインク供給針を挿入することにより記録ヘッドにインクを供給するインクバック、インクタンク及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録装置は、インクタンクを記録ヘッドから離間させて構成したものが使用されている。これは、インクジェット記録装置のインク容量を増大させることによって、インク交換の頻度を低減させるためである。このように、インクタンクを記録ヘッドから離間させて構成するインクジェット記録装置には、インクタンク内に可撓性フィルムを二枚張り合わせたインクバックを用いるものがある。インクバックを用いることによって、インクを効率良く最後まで使用することができる。
【0003】
例えば、特開昭63−35346号公報に開示されたインクバックは、可撓性フィルムを二枚張り合わせ、四辺を熱溶着によって接合することによって形成されている。インクバックの一辺にはインクバック内部からインクを導出するインク口部が熱溶着によって接合されている。インク口部には外部に連通する連通孔が形成されており、この連通孔にゴム栓が圧入され、インク口部を封止する構成である。したがって、ゴム栓をインク供給針で貫通することによって、インクバック内から外部にインク供給針を介してインクが外部に導出される。
【0004】
また、特開平4−347653号公報に開示されたインクバックは、同様に可撓性フィルムで構成されたインクバックの一辺にインク口部が熱溶着で接合され、口部の連通孔にゴム栓を圧入、カシメ、接着等によって封止状態で嵌合する構成である。なお、インク口部においてゴム栓に接触する部分には薄膜部が形成されている。したがって、ゴム栓とインク口部の薄膜部をインク供給針で貫通し、インクバック内部を開放することでインク供給路を形成し、インクバック内部のインクを記録ヘッドへ導出する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記2例のインクジェット記録装置は、インク供給針がゴム栓を貫通してインク供給路を形成し、インクを導出する構成であるため、使用済みのインクバックに対してインク供給針を挿入してインクバックにインクを充填し、再使用を図る可能性がある。再充填するインクが不適切な場合、吐出不良等による印字障害を引き起こすおそれがあった。
【0006】
また、特開平4−347653号公報に開示されたインクジェット記録装置では、インク口部の薄膜部をインク供給針で貫通するため、破られた薄膜部の破片等がインクに混ざってしまうおそれもあった。
【0007】
本発明は、上記不都合を解決すべく成されたもので、インクバック等に不適切なインクを充填することによって惹起される印字障害を回避すると共に、安定的にインクを記録ヘッドに供給できるインクバック又はインクタンク、及びジェット記録装置の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1または8記載の本発明は、インクバックまたはインクタンク(以下、インクバック等という場合がある)から記録ヘッドにインクを供給し、記録ヘッドから記録用紙にインク滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録装置であって、インクバック等の内部からインクを取り出す口部と、口部を封止する封止部材と、封止部材に形成された連結孔と、一方が連結孔に連通して他方がインクバック等の内部と連通する供給通路と、内部にインク供給用の流路が形成されており、先端部が開口されておらず、側面に前記流路を外部に連通させる孔部が形成されているインク供給針と、封止部材に差し込まれたインク供給針の先端部を止め、前記孔部を連結孔に位置させる止め壁と、を有することを特徴とする。
【0009】
このように構成することにより、インクバック等の口部を封止する封止部材にインク供給針を差し込み、止め壁に当接するまで挿入する。この結果、インク供給針が所定位置まで挿入され、インク供給針の連結孔が封止部材の内部に形成された連通孔に連通する。連通孔は、インクバック等の内部に連通する供給通路に連通している。この結果、インクバック等、供給通路、封止部材の連結孔、インク供給針の孔部を介して記録ヘッドにインクを供給する。
【0010】
インクバック等が使用済みとなった後、ユーザー等が先端に孔部が設けられたインク供給針を封止部材に挿入してインクを再充填しようとしても、インク供給針の先端は止め壁に突き当たるだけであり、インクバック等の内部まで挿入されることはない。また、先端に形成される孔部から封止部材の連結孔に連通しないため、インクバック等の内部にインクが供給されることはない。したがって、不適切なインクがインクバックまたはインクタンクに再充填して使用され、インクジェット記録装置が印字不良を引き起こすことを防止できる。
【0011】
なお、供給通路は、口部側に形成しても、封止部材側に形成しても良い。
【0012】
請求項4または11記載の本発明は、前記止め壁には、前記インク供給針の先端部が案内される前記インク供給針の断面積よりも大きい断面積を有する凹部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
このように構成することにより、インク供給針の先端部が封止部材を貫通して凹部によって形成された空間に進入することによってインク供給針が貫通したことを作業者が容易に感得することができる。
【0014】
しかも、凹部に案内されることによって所定位置までインク供給針が封止部材に挿入され、インク供給針の連結孔が封止部材の連通孔と確実に連通する。
【0015】
請求項5または12記載の本発明は、前記連結孔の断面積は、前記孔部の断面積よりも大きいことを特徴とする。
【0016】
このように構成することにより、封止部材に対するインク供給針の挿入方向や挿入停止位置が多少ずれてもインク供給針の孔部と封止部材の連通孔を確実に連通させることができる。
【0017】
請求項6記載の本発明は、インクバックは、2枚の可撓性を有するシート体の周囲を接合することによって形成されており、2枚のシート体に挟まれて接合される前記口部の断面形状は舟形形状であることを特徴とする。
【0018】
このように構成することにより、シート体が口部に滑らかに当接されるため、確実に接合することができる。
【0019】
請求項7記載の本発明は、前記シート体と前記口部が同一の熱可塑性樹脂材料から形成されたことを特徴とする。
【0020】
このように構成することにより、シート体と口部が同一の熱可塑性樹脂材料から形成されているため、シート体と口部の接合が一層容易となる。
【0021】
請求項13に記載のインクジェット記録装置は、上記のインクバック又はインクタンクを備えているので、不適切なインクを充填することによって惹起される印字障害を回避することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置について詳細に説明する。
【0023】
図2に示すように、インクジェット記録装置10には、搬送ローラ12によって搬送される用紙14の上部に、用紙14の搬送方向(副走査方向、矢印A方向)と交差する主走査方向(矢印B方向)に駆動機構16およびガイドバー18によって移動可能とされたキャリッジ20が配置されている。キャリッジ20は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各インクを用紙14に向かって吐出する記録ヘッドが備えられている。
【0024】
記録ヘッドにインクを供給するためのインクタンク22は、キャリッジ20の下方に配置されており、可撓性のチューブ24によって連結されている。
【0025】
インクタンク22は、図3に示すように、各インクに対応したインクバック26が立設されており、各インクバック26からチューブ24を介して各記録ヘッドにインクが供給される構成になっている。
【0026】
インクバック26は、可撓性を有するアルミラミネートフィルム28(図4参照)を二枚重ね合わせ、四辺を熱溶着することによって接合して形成したものである。アルミラミネートフィルム28は、気体透過性向上のためにアルミ箔を2枚のフィルム、例えば外側をナイロンフィルム、内側をポリエチレンフィルムにより挟みこんだものである。
【0027】
接合される四辺のうちの一辺には、熱可塑性樹脂成形品であるインク口部30の接合部32が熱溶着によってインクバック26(アルミラミネートフィルム28)に接合されている(図4参照)。接合部32の接合面に垂直な断面形状は、アルミラミネートフィルム28との溶着性を向上させるために、中央が幅広で両端に向かって幅が漸減していく、いわゆる船形形状とされている。
【0028】
図1に示すように、インク口部30は、インクバック26に接合される接合部32と、後述される封止部材44が圧入される嵌合部34とが止め壁36によって隔てられる構成である。
【0029】
嵌合部34には、封止部材圧入用の挿入孔38が形成されている。挿入孔38の重力方向下端の壁面には、所定位置から軸方向に延在する連通溝40が形成されており、連通溝40の一端は止め壁36の重力方向下端に形成された連通孔42に連通している。連通孔42は、止め壁36の重力方向下端に形成することによって、最後まで使用できるインク量を増大させることができる。
【0030】
挿入孔38には弾性部材からなる封止部材44が圧入・接着等される。この結果、封止部材44の外周に形成されたシール部48によって挿入孔38が封止される。すなわち、インクバック26の内部から連通孔42、連通溝40を介して挿入孔38に到達するインクを外部から遮断する。封止部材44は、ゴム等の材料で願わくば気体透過性に優れたブチルゴムを使用することが望ましい。なお、封止部材44には、挿入方向と垂直な方向に一側面から他側面に貫通する貫通孔46が形成されており、封止部材44が挿入孔38の奥(止め壁36に当接する)まで圧入されることによって、貫通孔46が連通溝40と連通する。
【0031】
封止部材44に挿入されるインク供給針50は、内部にインク導出用の流路52が形成されているが、先端の尖った部分までは形成されておらず、流路52の端部(インク供給針先端から2〜6mm離間した位置)には側面から外部に連通する連結孔(横孔)54が形成されている。
【0032】
なお、止め壁36(凹部56)は十分な肉厚を有しており、インク供給針50が止め壁36を貫通することを阻止する。
【0033】
また、封止部材44の貫通孔46の径(断面積)は、インク供給針50の連結孔54の径(断面積)に比して大きく形成されており、連結孔54の位置が多少ずれても連結孔54と貫通孔46が確実に連通するように形成されている。
【0034】
このように構成されるインクジェット記録装置10の作用について説明する。
【0035】
先ず、インク供給路を構成する場合には以下のように行う。すなわち、インクが充填されたインクバック26のインク口部30に圧入された封止部材44にインク供給針50を差し込む。インク供給針50の先端が封止部材44を貫通して止め壁36(凹部56)に突き当たる。この結果、インク供給針50の連結孔54が封止部材44の貫通孔46と連通する。したがって、インクバック26の内部からインク口部30の連通孔42、連通溝40、封止部材44の貫通孔46、インク供給針50の連結孔54、流路52を介して記録ヘッドにインクが供給される。これにより、記録ヘッドから所定の画像信号に基づいて用紙14にインク滴が吐出されて画像が形成される。
【0036】
インクバック26内のインクを使用後に、使用者等がインクバック26にインクの充填を試みる場合、封止部材44からインク供給針50を抜き出し、インク充填用の針を封止部材44に突き刺す。しかしながら、針は止め壁36を貫通することはできず、直接インクバック内部にインクを充填することはできない。また、一般的な針は先端部分に孔部が設けられており、そこから液体を注入するように構成されているため、止め壁36に当接した針の孔部が封止部材44の貫通孔46に連通せず、インクバック26内部にインクを充填することはできない。したがって、インクバック26に不適切なインクを充填して再利用することによって、インクジェット記録装置10の吐出不良等を引き起こすことを確実に阻止できる。
【0037】
しかも、インク供給針50が止め壁36を貫通してインクバック26内部に挿入される方法でないため、破損した止め壁36の一部がインクバック内部に入りこみインクに混入することもない。
【0038】
なお、挿入孔38の重力方向下端の壁面に連通溝40、止め壁36に連通孔42が形成されているため、封止部材44の軸方向に差し込まれる針の先端が連通孔42に到達することはなく、不適切なインクが供給されることを阻止している。
【0039】
また、インク供給針50の挿入で破損するのは封止部材44のみなので、封止部材44のみを交換することによってインクバック26などを再利用することができる。しかも、封止部材44も弾性部材なので実質的に再利用可能である。
【0040】
さらに、インク供給針50の連結孔54の径よりも封止部材44の貫通孔46の径が大きいため、インク供給針50が高精度に位置決めされなくとも、止め壁36(凹部56)に当接させるだけで、インク供給針50の連結孔54と封止部材44の貫通孔46が連通させることができる。
【0041】
ところで、本実施形態の止め壁36と、連通孔42、連通溝40に替えて、封止部材44の挿入方向先端部に止め部を設け、内部に貫通孔46に連続し、止め部を貫通してインクバック内部と連通する連通孔を設ける構成としても良い。すなわち、インク供給針50を封止部材44に挿入して止め部に当接させることにより、連結孔54、貫通孔46、連通孔(封止部材44内部)を介してインクバック内部と連通させる構成とすることもできる。
【0042】
次に、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置を図5を参照して説明する。なお、要部であるインクタンクについてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0043】
インクタンク60は、インクを含有している毛細管部材62と、毛細管部材62からインクを吸い出す中間液室64とから構成されている。中間液室64の端部には、止め壁36を介して連通孔42、連通溝40が形成されており、挿入孔38に封止部材44を挿入し、インク供給針50を挿入することによって、第1実施形態と同様の構成とすることができる。
【0044】
このように構成することにより、インクバックを用いないインクタンク60に対してもインク供給針50を直接内部に差し込まず、連結孔54からインクを供給可能に構成することで、ユーザーなどが不適切なインクを再充填してインクジェット記録装置の印字不良等を引き起こすことを防止できる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のインクジェット記録装置では、インク供給針をインクバックあるいはインクタンク内部に直接差し込む構成とせず、インク供給針の連結孔からインクを供給する構成としているため、インクバックあるいはインクタンクの使用後に、ユーザー等が先端に孔部がある針を使用して不適切なインクを再充填することを阻止できる。したがって、不適切なインクの使用によるインクジェット記録装置の印字不良等を阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクバックのインク口部構造を示す斜視断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るインクタンクの一部切欠斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るインクバックの取付部材とフィルムの接合状態説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るインクタンクの断面図である。
【符号の説明】
10 インクジェット記録装置
26 インクバック
36 止め壁
40 連通溝(供給通路)
42 連通孔(供給通路)
44 封止部材
46 貫通孔(連結孔)
50 インク供給針
54 連結孔(孔部)
60 インクタンク
【特許請求の範囲】
【請求項1】インク滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録装置の記録ヘッドへインクを供給するインクバックであって、
インクバック内部からインクを取り出す口部と、
口部を封止する封止部材と、
封止部材に形成された連結孔と、
一方が連結孔に連通して他方がインクバック内部と連通する供給通路と、
内部にインク供給用の流路が形成されており、先端部が開口されておらず、側面に前記流路を外部に連通させる孔部が形成されているインク供給針と、
封止部材に差し込まれたインク供給針の先端部を止め、前記孔部を連結孔に位置させる止め壁と、
を有することを特徴とするインクバック。
【請求項2】前記供給通路は、前記口部の壁面に形成され前記連結孔に連通する供給溝と、前記止め壁に形成され前記供給溝と前記インクバック内部とを連通させる供給孔と、からなることを特徴とする請求項1記載のインクバック。
【請求項3】前記供給通路は、前記封止部材内部に形成されたことを特徴とする請求項1記載のインクバック。
【請求項4】前記止め壁には、前記インク供給針の先端部が案内される前記インク供給針の断面積よりも大きい断面積を有する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のインクバック。
【請求項5】前記連結孔の断面積は、前記孔部の断面積よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のインクバック。
【請求項6】インクバックは、2枚の可撓性を有するシート体の周囲を接合することによって形成されており、2枚のシート体に挟まれて接合される前記口部の断面形状は舟形形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のインクバック。
【請求項7】前記シート体と前記口部が同一の熱可塑性樹脂材料から形成されたことを特徴とする請求項6記載のインクバック。
【請求項8】インク滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録装置の記録ヘッドへインクを供給するインクタンクであって、
インクタンク内からインクを取り出す口部と、
口部を封止する封止部材と、
封止部材に形成された連結孔と、
一方が連結孔に連通して他方がインクタンク内部と連通する供給通路と、
内部にインク供給用の流路が形成されており、先端部が開口されておらず、側面に前記流路を外部に連通させる孔部が形成されているインク供給針と、
封止部材に差し込まれたインク供給針の先端部を止め、前記孔部を連結孔に位置させる止め壁と、
を有することを特徴とするインクタンク。
【請求項9】前記供給通路は、前記口部の壁面に形成され前記連結孔に連通する供給溝と、前記止め壁に形成され前記供給溝と前記インクタンク内部とを連通させる供給孔と、からなることを特徴とする請求項8記載のインクタンク。
【請求項10】前記供給通路は、前記封止部材内部に形成されたことを特徴とする請求項8記載のインクタンク。
【請求項11】前記止め壁には、前記インク供給針の先端部が案内される前記インク供給針の断面積よりも大きい断面積を有する凹部が形成されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項記載のインクタンク。
【請求項12】前記連結孔の断面積は、前記孔部の断面積よりも大きいことを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項記載のインクタンク。
【請求項13】請求項1〜請求項7の何れかに記載のインクバック又は請求項8〜請求項12の何れかに記載のインクタンクを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録装置に関し、一層詳細には、インクバックまたはインクタンクの口部を封止する封止部材にインク供給針を挿入することにより記録ヘッドにインクを供給するインクバック、インクタンク及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録装置は、インクタンクを記録ヘッドから離間させて構成したものが使用されている。これは、インクジェット記録装置のインク容量を増大させることによって、インク交換の頻度を低減させるためである。このように、インクタンクを記録ヘッドから離間させて構成するインクジェット記録装置には、インクタンク内に可撓性フィルムを二枚張り合わせたインクバックを用いるものがある。インクバックを用いることによって、インクを効率良く最後まで使用することができる。
【0003】
例えば、特開昭63−35346号公報に開示されたインクバックは、可撓性フィルムを二枚張り合わせ、四辺を熱溶着によって接合することによって形成されている。インクバックの一辺にはインクバック内部からインクを導出するインク口部が熱溶着によって接合されている。インク口部には外部に連通する連通孔が形成されており、この連通孔にゴム栓が圧入され、インク口部を封止する構成である。したがって、ゴム栓をインク供給針で貫通することによって、インクバック内から外部にインク供給針を介してインクが外部に導出される。
【0004】
また、特開平4−347653号公報に開示されたインクバックは、同様に可撓性フィルムで構成されたインクバックの一辺にインク口部が熱溶着で接合され、口部の連通孔にゴム栓を圧入、カシメ、接着等によって封止状態で嵌合する構成である。なお、インク口部においてゴム栓に接触する部分には薄膜部が形成されている。したがって、ゴム栓とインク口部の薄膜部をインク供給針で貫通し、インクバック内部を開放することでインク供給路を形成し、インクバック内部のインクを記録ヘッドへ導出する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記2例のインクジェット記録装置は、インク供給針がゴム栓を貫通してインク供給路を形成し、インクを導出する構成であるため、使用済みのインクバックに対してインク供給針を挿入してインクバックにインクを充填し、再使用を図る可能性がある。再充填するインクが不適切な場合、吐出不良等による印字障害を引き起こすおそれがあった。
【0006】
また、特開平4−347653号公報に開示されたインクジェット記録装置では、インク口部の薄膜部をインク供給針で貫通するため、破られた薄膜部の破片等がインクに混ざってしまうおそれもあった。
【0007】
本発明は、上記不都合を解決すべく成されたもので、インクバック等に不適切なインクを充填することによって惹起される印字障害を回避すると共に、安定的にインクを記録ヘッドに供給できるインクバック又はインクタンク、及びジェット記録装置の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1または8記載の本発明は、インクバックまたはインクタンク(以下、インクバック等という場合がある)から記録ヘッドにインクを供給し、記録ヘッドから記録用紙にインク滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録装置であって、インクバック等の内部からインクを取り出す口部と、口部を封止する封止部材と、封止部材に形成された連結孔と、一方が連結孔に連通して他方がインクバック等の内部と連通する供給通路と、内部にインク供給用の流路が形成されており、先端部が開口されておらず、側面に前記流路を外部に連通させる孔部が形成されているインク供給針と、封止部材に差し込まれたインク供給針の先端部を止め、前記孔部を連結孔に位置させる止め壁と、を有することを特徴とする。
【0009】
このように構成することにより、インクバック等の口部を封止する封止部材にインク供給針を差し込み、止め壁に当接するまで挿入する。この結果、インク供給針が所定位置まで挿入され、インク供給針の連結孔が封止部材の内部に形成された連通孔に連通する。連通孔は、インクバック等の内部に連通する供給通路に連通している。この結果、インクバック等、供給通路、封止部材の連結孔、インク供給針の孔部を介して記録ヘッドにインクを供給する。
【0010】
インクバック等が使用済みとなった後、ユーザー等が先端に孔部が設けられたインク供給針を封止部材に挿入してインクを再充填しようとしても、インク供給針の先端は止め壁に突き当たるだけであり、インクバック等の内部まで挿入されることはない。また、先端に形成される孔部から封止部材の連結孔に連通しないため、インクバック等の内部にインクが供給されることはない。したがって、不適切なインクがインクバックまたはインクタンクに再充填して使用され、インクジェット記録装置が印字不良を引き起こすことを防止できる。
【0011】
なお、供給通路は、口部側に形成しても、封止部材側に形成しても良い。
【0012】
請求項4または11記載の本発明は、前記止め壁には、前記インク供給針の先端部が案内される前記インク供給針の断面積よりも大きい断面積を有する凹部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
このように構成することにより、インク供給針の先端部が封止部材を貫通して凹部によって形成された空間に進入することによってインク供給針が貫通したことを作業者が容易に感得することができる。
【0014】
しかも、凹部に案内されることによって所定位置までインク供給針が封止部材に挿入され、インク供給針の連結孔が封止部材の連通孔と確実に連通する。
【0015】
請求項5または12記載の本発明は、前記連結孔の断面積は、前記孔部の断面積よりも大きいことを特徴とする。
【0016】
このように構成することにより、封止部材に対するインク供給針の挿入方向や挿入停止位置が多少ずれてもインク供給針の孔部と封止部材の連通孔を確実に連通させることができる。
【0017】
請求項6記載の本発明は、インクバックは、2枚の可撓性を有するシート体の周囲を接合することによって形成されており、2枚のシート体に挟まれて接合される前記口部の断面形状は舟形形状であることを特徴とする。
【0018】
このように構成することにより、シート体が口部に滑らかに当接されるため、確実に接合することができる。
【0019】
請求項7記載の本発明は、前記シート体と前記口部が同一の熱可塑性樹脂材料から形成されたことを特徴とする。
【0020】
このように構成することにより、シート体と口部が同一の熱可塑性樹脂材料から形成されているため、シート体と口部の接合が一層容易となる。
【0021】
請求項13に記載のインクジェット記録装置は、上記のインクバック又はインクタンクを備えているので、不適切なインクを充填することによって惹起される印字障害を回避することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置について詳細に説明する。
【0023】
図2に示すように、インクジェット記録装置10には、搬送ローラ12によって搬送される用紙14の上部に、用紙14の搬送方向(副走査方向、矢印A方向)と交差する主走査方向(矢印B方向)に駆動機構16およびガイドバー18によって移動可能とされたキャリッジ20が配置されている。キャリッジ20は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各インクを用紙14に向かって吐出する記録ヘッドが備えられている。
【0024】
記録ヘッドにインクを供給するためのインクタンク22は、キャリッジ20の下方に配置されており、可撓性のチューブ24によって連結されている。
【0025】
インクタンク22は、図3に示すように、各インクに対応したインクバック26が立設されており、各インクバック26からチューブ24を介して各記録ヘッドにインクが供給される構成になっている。
【0026】
インクバック26は、可撓性を有するアルミラミネートフィルム28(図4参照)を二枚重ね合わせ、四辺を熱溶着することによって接合して形成したものである。アルミラミネートフィルム28は、気体透過性向上のためにアルミ箔を2枚のフィルム、例えば外側をナイロンフィルム、内側をポリエチレンフィルムにより挟みこんだものである。
【0027】
接合される四辺のうちの一辺には、熱可塑性樹脂成形品であるインク口部30の接合部32が熱溶着によってインクバック26(アルミラミネートフィルム28)に接合されている(図4参照)。接合部32の接合面に垂直な断面形状は、アルミラミネートフィルム28との溶着性を向上させるために、中央が幅広で両端に向かって幅が漸減していく、いわゆる船形形状とされている。
【0028】
図1に示すように、インク口部30は、インクバック26に接合される接合部32と、後述される封止部材44が圧入される嵌合部34とが止め壁36によって隔てられる構成である。
【0029】
嵌合部34には、封止部材圧入用の挿入孔38が形成されている。挿入孔38の重力方向下端の壁面には、所定位置から軸方向に延在する連通溝40が形成されており、連通溝40の一端は止め壁36の重力方向下端に形成された連通孔42に連通している。連通孔42は、止め壁36の重力方向下端に形成することによって、最後まで使用できるインク量を増大させることができる。
【0030】
挿入孔38には弾性部材からなる封止部材44が圧入・接着等される。この結果、封止部材44の外周に形成されたシール部48によって挿入孔38が封止される。すなわち、インクバック26の内部から連通孔42、連通溝40を介して挿入孔38に到達するインクを外部から遮断する。封止部材44は、ゴム等の材料で願わくば気体透過性に優れたブチルゴムを使用することが望ましい。なお、封止部材44には、挿入方向と垂直な方向に一側面から他側面に貫通する貫通孔46が形成されており、封止部材44が挿入孔38の奥(止め壁36に当接する)まで圧入されることによって、貫通孔46が連通溝40と連通する。
【0031】
封止部材44に挿入されるインク供給針50は、内部にインク導出用の流路52が形成されているが、先端の尖った部分までは形成されておらず、流路52の端部(インク供給針先端から2〜6mm離間した位置)には側面から外部に連通する連結孔(横孔)54が形成されている。
【0032】
なお、止め壁36(凹部56)は十分な肉厚を有しており、インク供給針50が止め壁36を貫通することを阻止する。
【0033】
また、封止部材44の貫通孔46の径(断面積)は、インク供給針50の連結孔54の径(断面積)に比して大きく形成されており、連結孔54の位置が多少ずれても連結孔54と貫通孔46が確実に連通するように形成されている。
【0034】
このように構成されるインクジェット記録装置10の作用について説明する。
【0035】
先ず、インク供給路を構成する場合には以下のように行う。すなわち、インクが充填されたインクバック26のインク口部30に圧入された封止部材44にインク供給針50を差し込む。インク供給針50の先端が封止部材44を貫通して止め壁36(凹部56)に突き当たる。この結果、インク供給針50の連結孔54が封止部材44の貫通孔46と連通する。したがって、インクバック26の内部からインク口部30の連通孔42、連通溝40、封止部材44の貫通孔46、インク供給針50の連結孔54、流路52を介して記録ヘッドにインクが供給される。これにより、記録ヘッドから所定の画像信号に基づいて用紙14にインク滴が吐出されて画像が形成される。
【0036】
インクバック26内のインクを使用後に、使用者等がインクバック26にインクの充填を試みる場合、封止部材44からインク供給針50を抜き出し、インク充填用の針を封止部材44に突き刺す。しかしながら、針は止め壁36を貫通することはできず、直接インクバック内部にインクを充填することはできない。また、一般的な針は先端部分に孔部が設けられており、そこから液体を注入するように構成されているため、止め壁36に当接した針の孔部が封止部材44の貫通孔46に連通せず、インクバック26内部にインクを充填することはできない。したがって、インクバック26に不適切なインクを充填して再利用することによって、インクジェット記録装置10の吐出不良等を引き起こすことを確実に阻止できる。
【0037】
しかも、インク供給針50が止め壁36を貫通してインクバック26内部に挿入される方法でないため、破損した止め壁36の一部がインクバック内部に入りこみインクに混入することもない。
【0038】
なお、挿入孔38の重力方向下端の壁面に連通溝40、止め壁36に連通孔42が形成されているため、封止部材44の軸方向に差し込まれる針の先端が連通孔42に到達することはなく、不適切なインクが供給されることを阻止している。
【0039】
また、インク供給針50の挿入で破損するのは封止部材44のみなので、封止部材44のみを交換することによってインクバック26などを再利用することができる。しかも、封止部材44も弾性部材なので実質的に再利用可能である。
【0040】
さらに、インク供給針50の連結孔54の径よりも封止部材44の貫通孔46の径が大きいため、インク供給針50が高精度に位置決めされなくとも、止め壁36(凹部56)に当接させるだけで、インク供給針50の連結孔54と封止部材44の貫通孔46が連通させることができる。
【0041】
ところで、本実施形態の止め壁36と、連通孔42、連通溝40に替えて、封止部材44の挿入方向先端部に止め部を設け、内部に貫通孔46に連続し、止め部を貫通してインクバック内部と連通する連通孔を設ける構成としても良い。すなわち、インク供給針50を封止部材44に挿入して止め部に当接させることにより、連結孔54、貫通孔46、連通孔(封止部材44内部)を介してインクバック内部と連通させる構成とすることもできる。
【0042】
次に、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置を図5を参照して説明する。なお、要部であるインクタンクについてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0043】
インクタンク60は、インクを含有している毛細管部材62と、毛細管部材62からインクを吸い出す中間液室64とから構成されている。中間液室64の端部には、止め壁36を介して連通孔42、連通溝40が形成されており、挿入孔38に封止部材44を挿入し、インク供給針50を挿入することによって、第1実施形態と同様の構成とすることができる。
【0044】
このように構成することにより、インクバックを用いないインクタンク60に対してもインク供給針50を直接内部に差し込まず、連結孔54からインクを供給可能に構成することで、ユーザーなどが不適切なインクを再充填してインクジェット記録装置の印字不良等を引き起こすことを防止できる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のインクジェット記録装置では、インク供給針をインクバックあるいはインクタンク内部に直接差し込む構成とせず、インク供給針の連結孔からインクを供給する構成としているため、インクバックあるいはインクタンクの使用後に、ユーザー等が先端に孔部がある針を使用して不適切なインクを再充填することを阻止できる。したがって、不適切なインクの使用によるインクジェット記録装置の印字不良等を阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクバックのインク口部構造を示す斜視断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るインクタンクの一部切欠斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るインクバックの取付部材とフィルムの接合状態説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るインクタンクの断面図である。
【符号の説明】
10 インクジェット記録装置
26 インクバック
36 止め壁
40 連通溝(供給通路)
42 連通孔(供給通路)
44 封止部材
46 貫通孔(連結孔)
50 インク供給針
54 連結孔(孔部)
60 インクタンク
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