JP2000297827A - 回転クラッチのバランス装置 - Google Patents

回転クラッチのバランス装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 回転するクラッチのドリフトオンを防止する
簡素な機構のバランス装置を提供する。 【解決手段】 流体作働型のクラッチは作働チャンバー
と、遠心バランスチャンバーと、を有する。バランスチ
ャンバーは、作働チャンバーの径方向外側に配置され
る。チャンバーの面積は、バランスチャンバーが作働チ
ャンバーより小さい面積を持つように有効半径とは逆の
増減方向に変化される。クラッチが係合されるとき、バ
ランスチャンバーは、クラッチの早過ぎる「ドリフトオ
ン」を防止するため作働チャンバーより先に流体で満た
される。バランスチャンバーは、クラッチの通常の作働
を実行しないが、クラッチの作働範囲に亘って遠心力の
バランスを提供し続ける。

Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は、回転する流体作働
型の選択的に係合可能な摩擦クラッチにおいて遠心力を
バランスさせるための装置に関する。
【０００２】
【従来技術】流体作働型のクラッチは、クラッチが係合
されるべきとき、圧縮された流体で満たされる実質的に
円筒形の作働チャンバーを有する。クラッチが解放され
るとき、流体の圧力は減少される。しかし、流体の全て
が排出されず、このためクラッチハウジングの連続回転
は、クラッチの作働チャンバー内で遠心圧力を生成する
結果となり得る。これによって、遠心圧力が作働ピスト
ン戻りスプリングの力に打ち勝つとき、クラッチの「ド
リフトオン（drift on）」を引き起こす。
【０００３】この問題を解決するため多数のアプローチ
が提案されてきた。これらの解決のうち最も一般的なも
のは、回転速度が設計速度を超え、クラッチが解放状態
にあるとき、流体のクラッチ作働チャンバーから流体を
排出するボールダンプバルブ（ball dump valve）の使
用を含んでいる。これは、クラッチの作働通路が完全に
空にされる場合、作働チャンバーに空気が吸い込まれる
結果となる。
【０００４】別の解決法は、予想される最大の遠心圧力
を超えるレベルにまで戻りスプリングの解放力を増加さ
せることである。これは、クラッチと係合するのに必要
とされる作働圧力を増加させ、これによって油圧制御シ
ステムのエネルギー需要を増加させ、伝達の全効率を減
少させる。
【０００５】第３の解決法は、クラッチの作働チャンバ
ーに対向してバランスチャンバーを形成することであ
る。この設計オプションは、２又はそれ以上のクラッチ
が半径方向に整合して揃うとき、役立つようになる。し
かし、このオプションは、油圧流体を連続的に供給する
ため、バランスチャンバーを、その作働を確実にするよ
うにクラッチの作働流体から分離しておくことが要求さ
れる。この要求を満足させるため、追加の流体通路を、
シャフト及び／又はクラッチ用の支持スリーブに組み込
まなければならない。上記解決法の各々がクラッチの
「ドリフトオン」を防止する一方で、いくつかの欠点及
び設計上の複雑さが存在する。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、回転
するバランス装置を形成するため改善されたクラッチ構
造を提供することである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】本発明の一態様では、バ
ランスチャンバーは、クラッチ作働ピストンの径方向外
側に形成される。本発明の別の態様では、クラッチピス
トンの作働チャンバーをバランスチャンバーに接続する
ため流体通路が形成される。本発明の更に別の態様で
は、バランスチャンバーが作働ピストン内に部分的に形
成される。本発明の更に別の態様では、バランスチャン
バーは、作働ピストン、クラッチハウジング、及び、該
クラッチリングに固定された閉止リングによって画定さ
れる。
【０００８】本発明の更なる態様では、バランスチャン
バー及びクラッチ作働チャンバーは、一緒に回転する。
本発明の更に別の態様では、単一の流体源が、クラッチ
作働チャンバー及びバランスチャンバーの両方に流体を
供給する。本発明の更に別の態様では、バランスチャン
バーは、作働チャンバーの有効面積より小さい有効面積
を有する。本発明の更に別の態様では、バランスチャン
バーは、作働チャンバーの径方向のより外側に配置され
る。
【０００９】
【発明の実施の形態】入れ子式クラッチアセンブリ１０
は、流体作働型の選択的に係合可能なより内側の摩擦ク
ラッチアセンブリ１２と、流体作働型の選択的に係合可
能なより外側の摩擦クラッチアセンブリ１４と、を有す
る。入力シャフト１６が、クラッチアセンブリ１０に回
転入力を提供するためステーター支持体１８に回転可能
に取り付けられている。内側クラッチアセンブリ１２
は、複数のクラッチプレート２０と、入力シャフトと共
に一緒に回転するため入力シャフト１６に連結された補
強プレート２２と、を有する。クラッチピストン２４も
入力シャフト１６に連結され、ハウジング２６内にしゅ
う動可能に配置されている。ピストン２４及びハウジン
グ２６は、通路３０と流体を介して連通するクラッチ作
働チャンバーを形成する。クラッチが係合されるべきと
き、圧縮された流体は、周知の態様で通路３０及びチャ
ンバー２８に送られる。
【００１０】内側クラッチアセンブリは、複数の摩擦プ
レート３２も有しており、これらのプレートは、交互に
クラッチプレート２０から隔てられ、出力ハブ３４に連
結される。出力ハブ３４は、クラッチがチャンバー２８
内の圧縮流体によって係合されるとき、図示しない従来
の遊星ギヤセットにクラッチ出力を伝達するクラッチ出
力シャフト３６と接続される。ピストン２４は、１又は
それ以上の従来のボールダンプバルブアセンブリ３８を
内部に設置している。周知のように、バルブアセンブリ
３８は、その内部の圧力が減少されるとき作働チャンバ
ーから流体を排出する。クラッチハウジングの速度が増
加するとき、バルブアセンブリ３８は、バルブアセンブ
リの遠心性の広がる力に起因してより高いチャンバー圧
力で排出する。クラッチ作働チャンバーが空にされたと
き、戻りスプリングアセンブリ４０は、クラッチアセン
ブリ１２のトルク能力を解放するようにクラッチピスト
ン２４を解放位置にまで押しやる。
【００１１】ステーターシャフト１８は、クラッチアセ
ンブリ１４の構成要素である入力ハウジング４２を回転
可能に支持する。ハウジング４２は入力シャフト１６と
一緒に回転するため、該入力シャフトに連結されてい
る。ハウジング４２は、クラッチアセンブリ１２のハウ
ジング１６に固定され、これらの部材が一斉に回転する
ようにしている。クラッチアセンブリ１４は、ハウジン
グ４２内でしゅう動可能に配置された作働ピストン４４
と、ハウジング４２に連結された複数のクラッチプレー
ト４６と、出力ハブ４９に連結された複数の摩擦プレー
ト４８と、複数の戻りスプリング５０と、も備える。ハ
ウジング４２とピストン４４とは、クラッチ作働チャン
バー５２を共同して形成し、該チャンバー５２は、該チ
ャンバーから流体を受け取って排出するための通路５４
と連通する。クラッチアセンブリ１４が係合されるべき
とき、通路５４は、図示しない従来の制御手段及び圧力
源と周知の態様で接続される。通路５４は、クラッチア
センブリ１４が解放されるべきときの制御によって、図
示しない伝達リザーバーと接続される。しかし、チャン
バー５２内の流体のすべては、特にクラッチが解放中に
回転している場合では取り除かれない。
【００１２】ピストン４４は、チャンバー５２から径方
向のより外側に延びる環状のスカート部５６を有する。
環状シール部５８は、チャンバー５２から、スカート部
５６及びハウジング４２の間に形成された空間６０への
流体の連通を防止する。スカート部５６はその外周辺部
に形成された環状凹部６２を有する。環状凹部は、環状
シール部６４によって空間６０との流体連通を密閉され
る。空間６０は、不注意な漏洩が空間６０内で蓄積する
ことを防止するため、通路６６を通して伝達経路の内部
に流体を排出する。
【００１３】環状凹部６２は、バランスチャンバー７０
が、スカート部５６、ハウジング４２及びバランスリン
グ６８によって形成され境界を定められるように、閉止
リング６８によって閉じられている。このバランスリン
グは、ハウジング４２に対するバランスリング６８の左
方への運動を制限するためハウジング４２内に形成され
たノッチ７４と共同する環状保持リップ７２を有する。
従来型の保持リング７６が、ハウジング４２に対するバ
ランスリング６８の右方への運動を制限するためハウジ
ング４２に形成されたノッチ７８に固定されている。か
くして、バランスリング６８は、バランスチャンバー７
０がハウジング４２のピストン４４が軸運動する時に膨
張及び収縮するようにハウジングに対して本質的に静止
している。バランスチャンバーは、バランスリング６８
に設置された環状シール部８０及びピストン４４に設置
された環状シール部８２によってハウジングの内部で大
気から密閉されている。バランスチャンバー７０及び作
働チャンバー５２は、流体が供給されるとき、バランス
チャンバー７０は、チャンバー５２が満たされる前に、
遠心力のため流体で満たされる。このことは、クラッチ
アセンブリ１４が不注意に応用されないことを確実にす
る。
【００１４】ハウジング２６は、チャンバー７０の外側
境界を画成するためピストン４４の外側表面８８と共同
する外側円柱壁８６を有し、バランスリング６８はチャ
ンバー７０の内側境界を形成するため凹部６２の円柱表
面９２と共同する内側円柱表面９０を有する。ハウジン
グ２６は、中間表面９８及び内側表面１００と各々共同
する中間円柱壁９４及び内側円柱壁９６も有する。チャ
ンバー５２は、チャンバー７０の有効表面面積と比較し
てより大きい有効表面面積を有する。しかし、チャンバ
ー７０は、チャンバー５２と比較してより大きい有効半
径を有する。遠心圧力のヘッドがチャンバー５２及び７
０の有効半径に比例するので、チャンバー７０の面積
は、クラッチ１４を係合状態に押しやるピストン４４の
遠心圧力ヘッドを相殺するために必要とされる圧力バラ
ンスを達成するため、より小さい。
【００１５】入力シャフト１６は、一般に内燃機関とト
ルクコンバーターとを備える、図示しないパワー源に接
続される。これらの装置のいずれも当業者に周知されて
いる。パワー源は、入れ子式クラッチアセンブリ１０が
設置されたときはいつでも、又は、車両のパワートレイ
ンがニュートラルでエンジンが作動するときはいつで
も、クラッチハウジングを回転させる。
【００１６】クラッチ１４を係合させるため、通路５４
は、図示しない従来の制御システムから圧縮された流体
が供給される。これが発生したとき、ハウジング４２
は、作働チャンバー５２に流入する流体に作用する遠心
力が、通路８４を介してバランスチャンバー７０に流体
を連通させるように回転する。作働チャンバー５２及び
バランスチャンバー７０の両方が同じ速度で回転するの
で、遠心圧力のヘッドはチャンバー５２及び７０の両方
で増加する。
【００１７】作働チャンバー５２は、バランスチャンバ
ー７０の有効面積より大きい有効面積を持っているが、
バランスチャンバー７０は作働チャンバー５２より大き
い有効半径を持ち、これによってハウジング４２の与え
られた回転速度に対してバランスチャンバー７０は、よ
り高い遠心圧力ヘッドを生じる結果となる。チャンバー
５２及び７０に対して適切な面積及び半径を選択するこ
とによって、遠心圧力ヘッドからピストン４４に作用す
る力は相殺される。しかし、チャンバー４２で作用する
静止作働圧力は、チャンバー７０で作用する静止作働圧
力よりピストン４４上に遥かに大きな軸方向力を及ぼ
す。制御手段は、必要な静止作働圧力を提供するため両
チャンバー間の面積差を考慮するようにプログラムされ
ている。しかし、遠心圧力ヘッドは、バランスチャンバ
ー７０のバランス効果に起因してピストン４４にかかる
作働圧力を増加させる効果を及ぼさない。
【００１８】上述されたバランス装置は、ボールダンプ
バルブを超える顕著な利点を有する。作働チャンバー及
びバランスチャンバーは、同じ流体源を有する。両方の
空洞部は、作働中に満たされた状態を維持するので、ク
ラッチが係合されようとも或いは解放されようとも、作
働圧力の遠心効果による変動は存在しない。全ての作働
条件に亘るクラッチバランスの一致は、戻りスプリング
が、与えられたピストンサイズに対するクラッチ能力の
増大及び／又はバランスチャンバーで作用する静止作働
圧力の効果に打ち勝つことを可能とする最小のサイズを
持つことを可能にする。遠心力のバランスは、全てのク
ラッチ速度で得られる。単一の流体源を使用すること
は、現在利用可能な他のバランスチャンバー装置を超え
る利点であり、これによって、別々の流体源を提供する
上で必要とされる設計上の複雑さを減少させることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施例に係る、入れ子式クラッチア
センブリの断面状立面図である。
【符号の説明】
１０ 入れ子式クラッチアセンブリ １２ 流体作働型の選択的に係合可能な内側の摩擦ク
ラッチアセンブリ １４ 流体作働型の選択的に係合可能な外側の摩擦ク
ラッチアセンブリ １６ 入力シャフト ２６ ハウジング ４０ 戻りスプリングアセンブリ ４４ 作働ピストン ５０ 戻りスプリング ５２ クラッチ作働チャンバー ６２ 環状凹部 ６８ バランスリング ７０ バランスチャンバー ８６ 外側円柱壁 ８８ 外側表面 ９０ 内側円柱表面 ９２ 円柱表面 ９４ 中間円柱壁 ９６ 内側円柱壁 ９８ 中間表面 １００ 内側表面

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 選択的に係合可能な流体作働型の摩擦ク
    ラッチアセンブリであって、 ハウジングと、 前記ハウジング内にしゅう動可能に配置されたピストン
    と、 前記クラッチを係合させるように前記ピストンの軸運動
    を選択的に強化するため前記ハウジングと前記ピストン
    との間に形成された第１のチャンバーと、 前記ハウジングと前記ピストンとの間に形成された第２
    のチャンバーであって、該第２のチャンバー内の遠心圧
    力に応答して前記クラッチを解放するように前記ピスト
    ンの軸運動を選択的に強化し、且つ、前記第１のチャン
    バーより径方向外側に配置されている、前記第２のチャ
    ンバーと、 前記第１のチャンバーと前記第２のチャンバーとの間で
    流体を連通させるための通路手段と、 を含むクラッチアセンブリ。
  2. 【請求項２】 前記ハウジングは、バランスリングを備
    え、該バランスリングは、前記ピストンとしゅう動可能
    に係合する内側円柱表面を有し、前記第２のチャンバー
    は、前記ピストン、前記バランスリング及び前記ハウジ
    ングの壁によって画定される、請求項１に記載のクラッ
    チアセンブリ。
  3. 【請求項３】 流体作働型の選択的に係合可能なクラッ
    チであって、 外側円柱壁、中間円柱壁、内側円柱壁及び環状バランス
    壁を有する回転可能なハウジングと、 前記内側円柱壁としゅう動可能に係合する内側表面、前
    記中間円柱壁としゅう動可能に係合する中間表面、前記
    外側円柱壁としゅう動可能に係合する外側表面、及び、
    外側環状凹部を有するピストンと、 前記内側円柱壁及び前記中間円柱壁の間に、前記ピスト
    ン及び前記ハウジングによって形成された回転可能な作
    働チャンバーと、 前記外側円柱壁、及び、前記バランス壁の内側表面とし
    ゅう動可能に係合する前記ピストンの表面によって形成
    された回転可能なバランスチャンバーと、 を含むクラッチ。
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