JP2000288097A - イオントフォレーゼ装置 - Google Patents

イオントフォレーゼ装置

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JP2000288097A
JP2000288097A JP11099009A JP9900999A JP2000288097A JP 2000288097 A JP2000288097 A JP 2000288097A JP 11099009 A JP11099009 A JP 11099009A JP 9900999 A JP9900999 A JP 9900999A JP 2000288097 A JP2000288097 A JP 2000288097A
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iontophoresis
exchange membrane
electrode
ion
ion exchange
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JP11099009A
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Kiyoshi Kanemura
聖志 金村
Yoshihiro Ito
義博 伊藤
Akihiko Matsumura
昭彦 松村
Takehiko Matsumura
健彦 松村
Yoriko Kobayashi
頼子 小林
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R & R Ventures Kk
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 イオン性薬剤を長期間安定して投与すること
ができイオントフォレーゼ装置を提供する。 【解決手段】 イオントフォレーゼ電極部1とグランド
電極部2を有するイオントフォレーゼ装置Xにおいて、
イオントフォレーゼ電極部が、イオン性薬剤14の帯電
イオンと同種の極性の電源に接続された電極材11、導
電性媒体12、イオン性薬剤の帯電イオンと反対のイオ
ンを選択するイオン交換膜13、イオン性薬剤14、及
び、イオン性薬剤の帯電イオンと同種のイオンを選択す
るイオン交換膜15、とから構成され、グランド電極部
が、イオントフォレーゼ電極部の電極材と反対の極性の
電極材、導電性媒体、及び、イオン性薬剤の帯電イオン
と反対のイオンを選択するイオン交換膜、とから構成さ
れ、イオントフォレーゼ電極部及び/又はグランド電極
部が、その最前部に配置されたイオン変換膜を他の部位
と面一または他の部位より突出させるように構成されて
いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イオントフォレー
ゼ(iontophoresis)により各種のイオン性薬剤を経皮
的に投与(経皮ドラッグデリバリー)するときに使用す
る装置(以下、イオントフォレーゼ装置という。)に関
するものである。
【0002】詳しくは、本発明は、イオントフォレーゼ
電極部(作用側電極部)及びグランド電極部(非作用側
電極部)において長期に安定した通電状態(定電流及び
/又は定電圧)が確保されるため、イオントフォレーゼ
電極部においてイオン性薬剤の正(+)もしくは負
(−)に帯電した薬剤成分を効率よく皮膚(もしくは粘
膜)側へ輸送(駆動)させることができ、かつ、イオン
トフォレーゼ電極部(作用側電極部)及びグランド電極
部(非作用側電極部)が前記した安定した通電状態の維
持に貢献するとともに電極反応による皮膚への悪影響を
排除することができる、という優れた特性を有するイオ
ントフォレーゼ装置に関するものである。
【0003】更にまた、本発明は、イオントフォレーゼ
電極部及びグランド電極部にイオン選択性の異なる複数
のイオン交換膜を配設して構成されるものであるが、皮
膚面に直接的または間接的に当接する前記イオン交換膜
の密着性を改善することによりイオン性薬剤の投与効率
を改善したイオントフォレーゼ装置に関するものであ
る。
【0004】
【従来の技術】所望部位の皮膚または粘膜(以下、単に
皮膚という。)の上に配置されたイオン性薬剤(イオン
性化学物質)に対し、前記イオン性薬剤を駆動させる起
電力を皮膚に与え、これらイオン性薬剤を皮膚を介して
体内に導入(浸透)させる方法は、イオントフォレーゼ
(iontophoresis、イオントフォレーシス、イオン導入
法、イオン浸透療法)と呼ばれている(前記イオントフ
ォレーゼの定義に関しては、例えば特開昭63−352
66号公報が参考になる)。
【0005】前記したように、イオントフォレーゼ(io
ntophoresis) は、皮膚上に配置されたイオン化性のイ
オン性薬剤を所定の起電力のもとで駆動(輸送)させて
皮膚中に浸透させるものである。例えば、正電荷をもつ
イオンは、イオントフォレーゼ装置の電気系統のアノー
ド(陽極)側において皮膚内に駆動(輸送)される。一
方、負電荷をもつイオンは、イオントフォレーゼ装置の
電気系統のカソード(陰極)側において皮膚内に駆動
(輸送)される。
【0006】前記したイオントフォレーゼに適用される
イオン性薬剤としては、例えば、次のようなものがあ
る。 (1).正に帯電するイオン性薬剤:麻酔剤(塩酸プロカイ
ン、塩酸リドカインなど)、胃腸疾患治療剤(塩化カル
ニチンなど)、骨格筋弛緩剤(臭化バンクロニウムな
ど)、抗生物質(テトラサイクリン系製剤、カナマイシ
ン系製剤、ゲンタマイシン系製剤)。 (2).負に帯電するイオン性薬剤:ビタミン(以下、Vと
略記する)剤(VB2 ,VB12,VC,VE,葉酸な
ど)、副腎皮質ホルモン(ヒドロコルチゾン系水溶性製
剤、デキサメサゾン系水溶性製剤、プレドニソロン系水
溶性製剤など)、抗生物質(ペニシリン系水溶性製剤、
クロウムフェニコール系水溶性製剤)。
【0007】イオン性薬剤をイオントフォレーゼにより
投与する方法及びそれに適用する装置は、古くから研究
開発されており、各種各様のものが提案されている。こ
の種のイオントフォレーゼに関する従来技術として、イ
オン交換膜を利用するものがある。なお、詳しくは後述
するが、本発明もイオン交換膜を利用するカテゴリーに
属するものである。このため、イオン交換膜を利用して
いる本発明と従来技術の相違点の理解に資するために、
以下、イオン交換膜を利用した従来技術について詳しく
説明する。
【0008】1.特許出願公表平3−504343号公
報(以下、従来技術1という。) (1).この従来技術1は、イオントフォレーゼ電極とし
て、(i)電極板、(ii)浸透させようとするイオン性(ま
たはイオン化可能な)薬剤を収容する貯留器、(iii)前
記貯留器の外側(皮膚に接する側)に配設され、かつ前
記イオン性薬剤と同じ極性の電荷をもつイオンを選択す
るイオン交換膜、とから成るものを開示している。 (2).この従来技術1は、イオン交換膜の機能を、前記イ
オン性薬剤を皮膚側へ輸送(駆動)させる際に、イオン
交換膜により電極と皮膚の間の界面を超えて電極側へ移
行しようとする反対帯電イオンの移動を制約すること、
例えば、ナトリウムや塩素、その他の皮膚に存在してい
てイオン性薬剤とは異なるイオン電流通路を作る恐れの
あるイオン種の動きを押さえること、と説明している。 (3).また、この従来技術1は、前記イオン交換膜により
イオン性薬剤を収容する貯留器の中に他の移動性の帯電
担体を少なくすることができるため、イオン性薬剤の投
与効率を増大させることができる、と説明している。
【0009】2.米国特許第4,722,726号明細
書(以下、従来技術2という。) (1).この従来技術2は、前記従来技術1の公報におい
て、関連技術として説明されているものであるが、イオ
ントフォレーゼ電極として(i).バッファ液(緩衝液)を
満たした上室とイオン性薬剤を満たした下室とに区分
し、かつ、(ii).前記上室をイオン交換膜により下室と
隔離した構造の電極を開示している。 (2).この従来技術2は、バッファ液(緩衝液)を満たし
た上室は水の加水分解の悪影響を和らげ、また、イオン
交換膜はイオン性薬剤を上室の内容物から隔離すると説
明している。しかしながら、この従来技術2に開示され
るバッファ液を利用する技術は、系内に付加的イオン種
の濃度を高めるため、明らかにイオン性薬剤の有効薬剤
成分の帯電イオンの輸送効率を低下させるという好まし
くない側面を併せもっているものである。従って、単純
にバッファ液を利用するという技術には留意すべきであ
る。
【0010】3.特開平3−94771号公報(以下、
従来技術3という。) (1).この従来技術3は、(i)柔軟性支持部材で囲繞さ
れ、かつ内部に電極板を有する水分保持部、(ii)前記水
分保持部の前面(皮膚側)に配設されたイオン交換膜、
及び(iii)前記イオン交換膜の前面(皮膚側)に配設さ
れた薬物層(イオン性薬物層)とからなるイオントフォ
レーゼ用電極を開示している。 (2).この従来技術3は、イオン性薬剤の投与時に、水分
によるイオン性薬剤の希釈化を防止しつつ、薬剤を高濃
度で投与しようとするものである。 (3).このため、この従来技術3は、実質的に薬物を透過
せず、かつ水透過性のイオン交換膜を使用するととも
に、その生体(皮膚)当接面上に薬物をスプレードラ
イ、散布などにより貼着または付着せしめたものを使用
してイオントフォレーゼ用電極を構成するものである。
【0011】4.特開平4−297277号公報(以
下、従来技術4という。) (1).この従来技術4は、本願出願人に係る先の出願に関
するものであり、例えば、その図2においてイオントフ
ォレーゼ電極部(作用側電極部)(図2の場合、使用す
るイオン性薬剤のイオンの極性との関連において陰極が
作用側電極部となっている。)を、陰極板/イオン性薬
剤を含むガーゼ/カチオン交換膜/イオン性薬剤を含む
ガーゼ/アニオン交換膜、からなる多層構造により構成
したものを開示している。 (2).この従来技術4に開示のイオントフォレーゼ技術
は、本発明の改良の対象になるものであり、この従来技
術4の限界については、後述する本発明の説明のときに
詳しく説明する。
【0012】前記した従来技術において、従来技術4
は、イオン交換膜の使用(配設)枚数に注目すると、前
記従来技術1〜3がイオン交換膜を1枚使用する単層構
造のものであるのに対して、イオン交換膜を2枚使用す
る複層構造のものを開示している点で、他のものとは相
違している。本発明は、イオン交換膜の使用枚数に注目
すると、前記従来技術4と同様に複層構造に属するもの
である。しかしながら、本発明は、詳しくは後述するが
従来技術4とは全く異なる技術思想に立脚しており、作
用側電極部はもとよりグランド側電極部(接地側電極
部、中性電極部)にもイオン交換膜を配設した3枚もし
くは4枚の複層構造を採用する点に大きな特徴点があ
る。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】前記したように、イオ
ン性薬剤をイオントフォレーゼにより経皮的に投与する
方法において、イオン交換膜を利用する技術は存在して
いる。しかしながら、前記した従来のイオン交換膜を利
用したイオントフォレーゼ技術は、イオントフォレーゼ
電極部(作用側電極部)及び/又はグランド電極部(非
作用側電極部)における電極板表面での電気化学反応に
基づく種々の欠点を防止、排除するための発意や創意を
欠如しているものである。別言すれば、従来のイオン交
換膜を利用したイオントフォレーゼ技術は、イオントフ
ォレーゼ電極部(作用電極部)とグランド電極部(非作
用側電極部)でのトータルの全体的な電気化学反応に注
目し、そこから誘発される欠点を解消し、高付加価値の
イオントフォレーゼ技術を確立しようとする態度に欠け
ている。
【0014】このため、従来のイオン交換膜を利用する
イオントフォレーゼ技術、より具体的には、前記した従
来技術にみられるようにイオン交換膜を作用側電極部に
おいては利用するが、グランド電極部においては利用し
ないタイプの従来のイオントフォレーゼ技術には、次の
ような欠点がある。
【0015】(i).長期間安定した通電状態のもとでイオ
ン性薬剤を投与(ドラッグデリバリー)することが困難
である(長期間安定した定電圧、もしくは定電流の条件
のもとでオペレーションすることが困難である)。例え
ば、イオン性薬剤の有効成分の帯電イオンの極性により
作用側電極部の極性は異なるが、正(+)極の作用側電
極部において、導電性媒体である生理食塩水が電極板界
面で電気分解して気泡(酸素ガス、塩素ガスなど)を発
生するため、これにより通電抵抗が大きくなり、イオン
トフォレーゼ効果(イオンの輸送効率)が経時的に急速
にダウンする。前記したことは、負(−)極のグランド
電極部で発生する気泡(水素ガスなど)によっても生じ
る。
【0016】(ii). 作用側電極部及び/又はグランド電
極部と皮膚との当接面において、熱傷、炎症(電流自体
に誘発される電流性熱傷、電気分解により生成するH+
またはOH-の急激なpH変化によるpH誘発性熱傷な
どを含む。)などが生じる。
【0017】(iii).グランド電極部の電極板(例えば+
極)と皮膚との当接面において、皮膚表面の汗や導電性
媒体である生理食塩水の電気分解により生成する有害物
質、例えばCl-(塩素イオン)に基づく次亜塩素酸
(これは強力な酸化剤として知られている)による皮膚
のダメージなどが生じる。
【0018】(iv).グランド電極部の電極板(例えば一
極)と皮膚との当接面において、皮膚表面の汗や導電性
媒体である生理食塩水の電気分解により生成する有害物
質、例えば高アルカリ性物質(NaOH)による皮膚の
ダメージなどが生じる。
【0019】本発明は、前記したイオン交換膜を利用し
た従来のイオントフォレーゼ技術の欠点、限界に鑑みて
創案されたものである。本発明者は、イオン交換膜を利
用した従来のイオントフォレーゼ技術について、高付加
価値化を図るべく鋭意検討した。
【0020】その結果、本発明者は、イオントフォレー
ゼ装置のイオントフォレーゼ電極部(作用側電極部)の
構成を、例えば特許出願公表平3−504343号など
に開示されるイオン性薬剤の有効薬剤成分の帯電イオン
と同種の電源に接続されたイオントフォレーゼ電極材
(作用側電極材)、前記イオントフォレーゼ電極材の前
面部に配置されたイオン性薬剤、及び、前記イオン性薬
剤の前面部の皮膚に当接する側に配置された前記イオン
性薬剤の有効薬剤成分の帯電イオンと同種のイオンを選
択するイオン交換膜、とからなるイオントフォレーゼ電
極部(作用側電極部)において、前記イオントフォレー
ゼ電極材とイオン性薬剤の間の構成を、前記イオントフ
ォレーゼ電極材の側からみて、(i).前記イオントフォレ
ーゼ電極材の少なくとも前面部に生理食塩水などの導電
性媒体を配置するとともに、(ii).前記導電性媒体の前
面部にイオン性薬剤の有効薬剤成分の帯電イオンと反対
のイオンを選択するイオン交換膜を配置して構成したと
き、前記したイオントフォレーゼ電極部における欠点が
解消されることを見い出した。
【0021】更に、本発明者は、従来のイオン交換膜を
利用するイオントフォレーゼ装置においてグランド電極
部(非作用側電極部)の側にイオン交換膜を配設するこ
とは全く知られていないが、グランド電極部(非作用側
電極部)の構成を、グランド電極部の電極材の側からみ
て、(iii).グランド電極材の少なくとも前面部に生理食
塩水などの導電性媒体を配置するとともに、(iv). 前記
導電性媒体の前面部にイオン性薬剤の有効薬剤成分の帯
電イオンと反対のイオンを選択するイオン交換膜を配置
して構成したとき、前記したグランド電極部における欠
点が解消されることを見い出した。
【0022】更にまた、本発明者は、グランド電極部の
構成を、(v).前記(iv)のイオン交換膜に加えて、更にイ
オン選択透過性の異なるイオン交換膜を配置して構成し
たとき、グランド電極部における生体安全性を高度に維
持することができることを見い出した。
【0023】また、本発明者は、イオントフォレーゼ電
極部及びグランド電極部において、それぞれの導電体媒
体を、(vi).水の電気分解電位よりも低い酸化還元電位
をもつ物質(水よりも酸化還元しやすい物質)を含有し
た生理食塩水などの導電性媒体で構成したとき、特に両
電極部での通電特性を大幅に改善することができること
を見い出した。
【0024】更にまた、本発明者は、イオントフォレー
ゼ電極部(作用側電極部)のイオン交換膜を介してイオ
ン性薬剤を経皮投与する場合、(vii).イオントフォレー
ゼ電極部が、前記イオン交換膜を皮膚面に直接的もしく
は間接的に密着させるように構成されることが薬剤の経
皮輸送効率を向上させる上で極めて重要であること、を
見い出した。
【0025】本発明は、前記した知見をベースにするも
のであり、前記知見に基づく構成を一体化した(組込ん
だ)イオントフォレーゼ電極部(作用側電極部)とグラ
ンド電極部(非作用側電極部)を有するイオントフォレ
ーゼ装置を提供するものである。本発明により、長期間
安定した通電状態(定電流及び/又は定電圧の状態)の
もとでイオン性薬剤の投与効率が高く、かつ、皮膚面の
熱傷や炎症などを防止した生体安全性が高いイオントフ
ォレーゼによるイオン性薬剤の投与(ドラッグデリバリ
ー)を実現することができる新規なイオントフォレーゼ
装置が提供される。
【0026】
【課題を解決するための手段】本発明を概説すれば、本
発明は、イオントフォレーゼによりイオン性薬剤を投与
するために使用される電源に接続するイオントフォレー
ゼ電極部(作用側電極部)とグランド電極部(非作用側
電極部)を有するイオントフォレーゼ装置において、
(1).前記イオントフォレーゼ電極部が、(1)-1.イオン性
薬剤の帯電イオンと同種の極性の電源に接続された電極
材、(1)-2.前記電極材の少なくとも前面に配置された導
電性媒体、(1)-3.前記導電性媒体の前面に配置されたイ
オン性薬剤の帯電イオンと反対のイオンを選択するイオ
ン交換膜、(1)-4.前記イオン性薬剤の帯電イオンと反対
のイオンを選択するイオン交換膜の前面に配置されたイ
オン性薬剤、及び、(1)-5.前記イオン性薬剤の前面に配
置されたイオン性薬剤の帯電イオンと同種のイオンを選
択するイオン交換膜、とから構成されること、かつ、
(2).前記グランド電極部が、(2)-1.前記イオントフォレ
ーゼ電極部の電極材と反対の極性の電極材、(2)-2.前記
電極材の少なくとも前面に配置された導電性媒体、及
び、(2)-3.前記導電性媒体の前面に配置されたイオン性
薬剤の帯電イオンと反対のイオンを選択するイオン交換
膜、とから構成されること、更に、(3).前記イオントフ
ォレーゼ電極部及び/又はグランド電極部が、その最前
部に配置されたイオン変換膜を他の部位と面一または他
の部位より突出させるように構成されたこと、を特徴と
するイオントフォレーゼ装置。
【0027】また、本発明は、前記イオントフォレーゼ
電極部(作用側電極部)とグランド側電極部(非作用側
電極部)を有するイオントフォレーゼ装置の性能を向上
させるために、(i).イオントフォレーゼ電極部及びグラ
ンド電極部の導電性媒体が、酸化または還元されやすい
物質を含有するもので構成されることを特徴とするもの
であり、より具体的には、(ii).イオントフォレーゼ電
極部及びグランド電極部の導電性媒体が、酸化または還
元されやすい物質として硫酸第一鉄と硫酸第二鉄、ある
いは有機酸及び/又はその塩などを含有するもので構成
されることを特徴とするものである。
【0028】更にまた、本発明は、前記イオントフォレ
ーゼ装置の性能を向上させるために、グランド電極部
(非作用側電極部)がカオチン交換膜とアニオン交換膜
を併用したもので構成されることを特徴とするものであ
る。なお、前記したグランド電極部に1枚のイオン交換
膜(イオン性薬剤の帯電極性によりイオン変換膜のイオ
ン選択性が異なる。)を使用する点、更には、グランド
電極部にイオン選択性の異なる2種のイオン交換膜を使
用する点は、従来技術には全くみられないものである。
【0029】また、本発明のイオントフォレーゼ装置の
他の特徴点をあげると、前記イオントフォレーゼ電極部
とグランド電極部は別体として構成されていたり、ある
いは一体的に構成されてもよいものである。更にまた、
本発明は、前記したように本発明のイオントフォレーゼ
装置は、イオントフォレーゼ電極部及びグランド電極部
にイオン選択性の異なる複数のイオン交換膜を配設し、
かつイオン性薬剤の帯電イオンとの関連において当該イ
オン交換膜の配設態様を変更して使用されるものである
が、電極材要素に対して他の構成要素、特にイオン交換
膜を着脱自在に装着できるように構成し、イオン交換膜
の配設作業や交換作業を省力化した操作性、利便性に優
れたイオントフォレーゼ装置を提供することを特徴とす
るものである。
【0030】以下、本発明の技術的構成をより詳しく説
明する。まず、本発明の理解を得るために、本発明のイ
オントフォレーゼ装置の基本構成図を利用して従来のイ
オントフォレーゼによるイオン性薬剤の投与法とその問
題点、更に本発明のイオン性薬剤の投与法の特徴点につ
いて説明する。次いで、本発明のイオントフォレーゼ装
置の具体的構成について説明する。なお、本発明の技術
的構成を説明するために図面を参照するが、図面表示の
ものは単なる一実施態様と解釈されるべきであり、本発
明はこれら図面のものに限定されないことはいうまでも
ないことである。
【0031】図1〜図2は、本発明のイオントフォレー
ゼ電極部(1)とグランド電極部(2)が非一体的に形
成されたイオントフォレーゼ装置(X)の基本構成図を
示すものである。図1は斜視図、図2は要部断面図を示
す。なお、図1〜図2は、本発明のイオントフォレーゼ
装置(X)により実現される新しいイオントフォレーゼ
によるイオン性薬剤の投与法(ドラッグデリバリー)を
同時に示しているということができる。
【0032】図3は、前記図2に示される本発明のイオ
ントフォレーゼ装置(X)において、イオン性薬剤の投
与を下記の条件で実施したときのイオントフォレーゼ装
置(X)の基本構成図(要部断面図)を示すものであ
る。 (i).イオン性薬剤として、アスコルビン酸(ビタミン
C)のナトリウム(Na)塩(以下、As-Na+と略記
する場合がある。)を使用する。 (ii). 導電性媒体として、生理食塩水(Na+Cl-水溶
液)を使用する。なお、本発明において、前記生理食塩
水として、電極反応に由来する欠点を除去するために、
水の電解電位より低い酸化還元電位を有する硫酸第1鉄
及び硫酸第2鉄、または有機酸などの酸化還元されやす
い物質を添加したものを使用する場合がある。 (iii).イオントフォレーゼ電極部(作用側電極部)を陰
極(−極)とする。 (iv). グランド電極部(非作用側電極部)を陽極(+
極)とする。 (v).使用するイオン交換膜の種類(イオンの選択透過
性)と配置部位は図示の通りとする。
【0033】図4は、前記図3に示されるイオントフォ
レーゼ装置(X)の性能を更に向上させた本発明の他の
イオントフォレーゼ装置(X)の基本構成図(要部断面
図)を示す。図示されるように、図4のものは、前記図
3のものと比較して、グランド電極部(2)のイオン交
換膜が、カチオン交換膜(23)とアニオン交換膜(2
5)を併用して構成される点で相違する。
【0034】前記図1〜図4において、図中の参照符号
は、前記「課題を解決するための手段」の項で説明した
イオントフォレーゼ装置の各構成要素の符号に対応する
ものである。例えば、前記イオントフォレーゼ装置
(X)の構成要素の「(1)-1」 は、図中では「11」と
して表示されている。
【0035】図5〜図6は、本発明のイオントフォレー
ゼ電極部(1)とグランド電極部(2)が一体的に形成
されたイオントフォレーゼ装置(X)の基本構成図を示
すものであり、前記図1〜図2に対応する図である。
【0036】本発明のイオントフォレーゼ装置(X)の
最大の特徴点は、この種のイオントフォレーゼの目的が
所定の起電力のもとでイオン性薬剤を皮膚(または粘
膜)を介して体内へ駆動(輸送)させることから、従来
技術においては一定の起電力によって移動するイオンの
量(これは、イオンの濃度、イオンの移動度、イオンの
原子価に依存することはよく知られいる。)の点に大き
な関心を払っているのに対し、本発明は、各電極部分の
電気化学反応に注目し、特に電気化学反応に基づく欠点
要因(ネガティブファクタ)に注目し、そこからイオン
トフォレーゼ技術の再構築を行なっている点にある。
【0037】イオントフォレーゼにおいては、電極部分
は必然的に電気化学反応、即ち、何らかの酸化反応(陽
極)と還元反応(陰極)が生起するものである。そし
て、前記電気化学反応により、例えば、導電性媒体であ
る生理食塩水の電気分解による有害な物質の生成(例え
ば、陽極での強力な酸化剤として知られているCl-
起因した次亜塩素酸の生成)、急激なpH変化(陽極で
の急速な酸性化、陰極での急速なアルカリ性化)、ある
いは気泡の発生(例えば、陰極でのH2 ガス、陽極での
2 ガスやCl2 ガスの発生)などが起こり、このため
に人体皮膚への悪影響、皮膚刺激、通電不能(ガス発生
に伴う抵抗値の増大)など、イオントフォレーゼの実施
において致命的な欠点が招来される。
【0038】本発明は、イオントフォレーゼにおける前
記電極部分において生起する電気化学反応に基づく欠点
を解消することをベースにして、イオントフォレーゼ技
術の高度化、高付加価値化を図るものである。
【0039】本発明のイオントフォレーゼ装置(X)
は、従来のイオン性薬剤の投与法にみられる前記した欠
点を解消するために、従来技術のものと比較して、図2
〜図3に示されるように、(i).イオントフォレーゼ電極
部(作用側電極部)(1)の構成として、前記した本発明
の技術的構成要素(1)-2〜(1)〜3(図2〜図3におい
て、参照符号12〜13で示されている。)を付加する
こと、また、(ii). グランド電極部(非作用側電極部)
(2)の構成として、前記した本発明の技術的構成要素(2)
-2〜(2)〜3(図2〜図3において、参照符号22〜23
で示されている。)を付加すること、に大きな特徴点が
ある。
【0040】更に、本発明のイオントフォレーゼ装置
(X)は、従来のものと比較して図4に示されるよう
に、(iii).グランド電極部(非作用側電極部)(2)の
構成として、イオン交換膜としてカチオン交換膜(2
3)とアニオン交換膜(25)を併用すること、に大き
な特徴点がある。
【0041】要するに、本発明のイオントフォレーゼ装
置(X)は、従来のイオン性薬剤の投与法にみられる前
記した電極反応に起因した欠点を解消するために、イオ
ン交換膜の利用という観点に注目すれば、イオンの選択
透過性に留意してイオントフォレーゼ電極部に2枚のイ
オン交換膜、及びグランド電極部側に少なくとも1枚の
イオン交換膜を利用すること、に大きな特徴点がある。
【0042】また、本発明のイオントフォレーゼ装置
(X)は、前記(i) と(ii)または前記(i)と(iii)に加え
て、(iv).前記した技術的構成(3)を有すること、に
大きな特徴点がある。
【0043】更にまた、本発明のイオントフォレーゼ装
置(X)は、従来のイオン性薬剤の投与法にみられる前
記した電極反応に起因した欠点を解消するために、前記
した特定のイオン交換膜の配設態様に加えて、(v). 両
電極部(イオントフォレーゼ電極部及びグランド電極
部)の導電性媒体として、水の電気分解と比較して酸化
または還元しやすい物質を含有したものを採用するこ
と、に大きな特徴点がある。
【0044】以下、本発明のイオントフォレーゼ装置
(X)がもつ前記した特徴点を、イオン性薬剤としてア
スコルビン酸ナトリウム(As-Na+)を使用したケー
スで説明する。この場合、イオン性薬剤の有効薬剤成分
の帯電イオンは陰イオン(As - )となることはいうま
でもないことである。このため、図3〜図4に示される
ように、イオントフォレーゼ電極部(1)は陰極(−
極)になり、グランド電極部(2)は陽極(+極)にな
る。なお、いうまでもないことであるが、イオン性薬剤
が正の帯電イオンに解離するものである場合、前記した
電極部の極性及びイオン交換膜の種類(イオンの選択特
性)は、それぞれ反対のものになることはいうまでもな
いことである。
【0045】本発明のイオントフォレーゼ装置(X)の
基本構成を示す図1〜図6において、1はイオントフォ
レーゼ電極部(作用側電極部)、2はグランド電極部
(非作用側電極部)、3は電源装置、4は皮膚(または
粘膜)を示す。
【0046】前記イオントフォレーゼ電極部(作用側電
極部)(1)は、図3〜図4に示されるように、(i).
負(−)極(11)、(ii). 導電性媒体(12)、具体
的には1MAs-Na+を含有した0.9%NaCl水溶
液 (iii).カチオン交換膜(13)、(iv). イオン性薬剤
(14)、具体的には1MAs-Na+水溶液、(v). ア
ニオン交換膜(15)、により構成される。
【0047】前記グランド電極部(2)は、図3の場合
は、(i). 正(+)極(21)、(ii). 導電性媒体(2
2)、具体的には0.9%NaCl水溶液、(iii).カチ
オン交換膜(23)、により構成される。
【0048】また、本発明において、前記グランド電極
部(2)は、図4に示されるように、正(+)極(2
1)から皮膚(4)の方向にみて、(i). 正(+)極
(21)、(ii). 導電性媒体(22)、具体的には1M
As-Na+を含有した0.9%NaCl水溶液、(iii).
アニオン交換膜(25)、(iv). 導電性媒体(24)、
具体的には1MAs-Na+を含有した0.9%NaCl
水溶液、(v). カチオン交換膜(23)、により構成さ
れてもよいものである。
【0049】本発明において、前記両電極部(1、2)
の導電性媒体(12、22)は、水の電気分解反応(水
の酸化及び還元反応)と比較して酸化及び還元しやすい
化合物を含有したもので構成されてもよいものである。
また、本発明において、前記両電極部(1、2)の導電
性媒体(12、22)は、イオン性薬剤(例えば前記し
たAs-Na+)が一般に水よりも酸化還元電位が低いた
め、これらイオン性薬剤を酸化還元しやすい化合物とし
て含有してもよいものである。この点は、図4に示され
るグランド電極部(2)の導電性媒体(24)において
も同じことがいえる。
【0050】以下、本発明のイオントフォレーゼ装置
(X)の基本構成図(図1〜図6)を参照して、イオン
性薬剤の新しい投与法を実施するためのより具体的なイ
オントフォレーゼ装置(X)の構成、即ち、イオントフ
ォレーゼ電極部(作用側電極部)(1)の具体的構成、
次いで、グランド電極部(非作用側電極部、アース電極
部)(2)の具体的構成、という順で説明する。
【0051】本発明のイオントフォレーゼ装置(X)に
おいて、イオントフォレーゼ電極部(作用側電極部)
(1)の電極板(11)は、所望のもので構成すればよ
い。また、グランド電極部(非作用側電極部)(2)の
電極材(12)についても、所望のもので構成すればよ
い。例えば、炭素、白金などの導電性材料からなる不活
性電極で構成すればよい。
【0052】本発明のイオントフォレーゼ装置(X)に
おいて、前記電極材(11,12)としては、前記した
不活性電極に代えてイオントフォレーゼ分野で知られて
いる活性電極を採用してもよいものである。前記した活
性電極の一例を挙げれば、イオン性薬剤の薬剤成分が正
(+)イオンとなる場合、具体的にはイオン性薬剤とし
て塩酸モルフィンや塩化リチウム(この場合、薬剤成分
であるモルフィンイオンやリチウムイオンは正イオンと
なり、対イオンの塩素は負イオンとなる。)を用いる場
合、陽極(+)材としてこれら対イオンと反応する銀電
極などがある。前記した活性電極の場合、銀電極と塩素
イオン(Cl-)は容易に反応し、Ag+Cl-→AgC
l+e-により不溶性のAgClが生成する。前記活性
電極を用いることの利点は、前記反応の標準電位が陽極
(+)における水の電気分解反応の標準電位よりも低い
ため、水の電気分解反応を防止することができることに
ある。従って、アノード(正極)でのH+イオンに基づ
く急激な酸性化、及びカソード(負極)でのOH-イオ
ンに基づく急激なアルカリ性化が防止される。
【0053】しかしながら、本発明のイオントフォレー
ゼ装置(X)においては、前記したようにイオントフォ
レーゼ系にイオン選択性の異なるイオン交換膜を複数
枚、少なくとも3枚以上を使用するため、活性電極で生
成する塩化銀(AgCl)などの不溶性物質(不溶性微
粒子)がイオン交換膜の特性を阻害する場合があるので
その使用には十分に留意すべきである。前記したことか
ら、本発明のイオントフォレーゼ装置(X)は、イオン
選択性の異なる複数枚のイオン交換膜を使用するため、
活性電極という特殊な電極材を使用せず、より経済的な
不活性電極を用いることが好ましい。また、イオントフ
ォレーゼ系においては、電極材から必然的に生成する金
属イオンなども輸送され、この分だけイオントフォレー
ゼ効果が低下するため、本発明のイオントフォレーゼ装
置(X)の電極材としては、炭素電極が好ましいもので
ある。
【0054】図3に示される本発明のイオントフォレー
ゼ装置(X)において、イオントフォレーゼ電極部
(1)の負(−)極の電極材(11)の周囲に接するよ
うに配設される導電性媒体(12)は、還元されやすい
化合物を含むもので構成されている。また、図3に示さ
れる本発明のイオントフォレーゼ装置(X)において、
グランド電極部(2)の正(+)極の電極材(21)の
周囲に接するように配設される導電性媒体(22)は、
酸化されやすい化合物を含むもので構成されている。前
記した酸化または還元されやすい化合物の配設部位は、
各電極板における電気化学反応、即ち、負(−)極での
還元反応、正(+)極での酸化反応に対応したものであ
ることはいうまでもないことである。
【0055】図3に示される本発明のイオントフォレー
ゼ装置(X)のイオントフォレーゼ電極部(1)は、図
示されるように還元されやすい化合物を含む導電性媒体
(12)とイオン性薬剤(As-Na+)(14)の中間
にカチオン交換膜(13)が配設されて構成される。そ
して、本発明は、前記した構成との関係において、前記
還元されやすい化合物を含む導電性媒体(12)を負
(−)極の電極材(11)に接するように配設するが、
前記導電性媒体(12)中の還元されやすい化合物は、
後述するように、重要な役割を果たすものである。この
点は、グランド電極部(2)側の導電性媒体(22)中
の酸化されやすい化合物についても同様である。
【0056】本発明において、前記導電性媒体(12)
に添加される酸化または還元されやすい化合物として
は、生体安全性、経済性(安価かつ入手の容易性)など
に優れたものが好ましく、例えば、硫酸第一鉄、硫酸第
二鉄などの無機化合物、アスコルビン酸(ビタミンC)
やアスコルビン酸ナトリウムなどの医薬剤、乳酸などの
皮膚面に存在する酸性化合物、あるいはシュウ酸、リン
ゴ酸、コハク酸、フマル酸などの有機酸及び/又はその
塩などを例示することができる。
【0057】前記した水の電解反応(正極での酸化及び
負極での還元)よりも酸化または還元しやすい化合物に
おいて、例えば、硫酸第二鉄は、負極において容易に第
二鉄イオンが第一鉄イオンに還元する。また、硫酸第一
鉄は、正極において容易に第一鉄イオンが第二鉄イオン
に酸化する。これにより、詳しくは後述するが、水の電
解反応に由来する欠点を除去することができ、本発明の
特定のイオン交換膜の配設態様と関連して優れた性能の
イオントフォレーゼ装置(X)が提供される。
【0058】本発明において、前記導電性媒体(12)
は、通電性を確保するためのものであり、食塩水、生理
食塩水などが典型例である。本発明のイオントフォレー
ゼ装置(X)において、前記導電性媒体(12)を収容
または保持する構成は、所望に構成すればよい。また、
前記導電性媒体(12)は、例えば、溶液タイプのも
の、あるいは所望の媒体(ガーゼ、吸水性高分子材料な
ど)に含浸させたタイプのものであってもよい。
【0059】ここで、前記導電性媒体(12)として、
前記酸化または還元しやすい化合物を含有するものを使
用する利点について、詳しく説明する。イオントフォレ
ーゼ電極部(1)およびグランド電極部(2)において
は、電気化学的な反応が生じ、電解質溶液の分解やイオ
ン性薬剤の分解が生じる。この結果として、電極室内に
気泡が発生し電極部と電解室溶液との接触が妨げられ
る。 例えば、負極にH2 ガス、正極にCl2 及びO2
ガスが発生する。このような状況が発生すると、気泡に
より抵抗が大きくなり、いくら電圧を加えても電流が流
れなくなる。前記したAs-Na+デリバリーの場合、長
時間(30分以上)安定した通電が不可能になる。これ
は、イオントフォレーゼ装置の実用性という観点からみ
ると、極めて大きな問題である。
【0060】前記した不安定性要因を取り除き、安定し
てイオントフォレーゼを行なうためには、気泡の発生を
抑制することが極めて重要である。前記した目的を達成
するために、気泡を発生させずに酸化あるいは還元反応
を受けやすい物質を各電極室に入れる方法は有用であ
る。即ち、水が酸化あるいは還元されると酸素あるいは
水素が発生するが、これらの反応を抑制するために、例
えば、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、アスコルビン酸あるい
はそのナトリウム塩などを電極室溶液(電極液)に添加
する。例えば、アスコルビン酸ナトリウムを用いる場
合、酸化反応が生じる電極では、酸素の発生が生じる代
わりにアスコルビン酸ナトリウムが酸化分解し、還元反
応が生じる電極では水素の発生が生じる代わりにアルコ
ルビン酸ナトリウムが還元分解し、これにより通電特性
の安定性を損ねる酸素あるいは水素の気泡の発生を抑制
することができる。
【0061】前記したようにアスコルビン酸ナトリウム
などの電気化学反応において水よりも容易に酸化あるい
は還元される物質(水の酸化還元電位よりも低い酸化還
元電位を有する物質)を犠牲的に使用することにより、
電極室内でのガス(気体)の発生を抑制することがで
き、より安定したオペレーションを可能とするイオント
フォレーゼ装置(X)が得られる。本発明において、前
記犠牲的物質としては、前記した硫酸第一鉄、硫酸第二
鉄、アスコルビン酸のほかに、酸化還元を受けて水の分
解を抑制するものであれば、いずれも使用することがで
きることはいうまでもないことである。なお、前記犠牲
的物質としてのアスコルビン酸ナトリウムの場合、アス
コルビン酸ナトリウムは、(i).還元反応が生じる電極
(−極)では、CO2やH2CO3などに、(ii).酸化反応
が生じる電極(+極)では、デヒドロアスコルビン酸や
2,3ジケト6−グロン酸などに、変化することにな
る。
【0062】本発明のイオントフォレーゼ装置(X)に
おいて、前記カチオン交換膜(13)は、所望のものを
使用することができる。本発明のイオントフォレーゼ装
置(X)は、前記したように、カチオン交換膜(13)
のほかにアニオン交換膜(15)をも使用する。ここ
で、本発明で使用する前記カチオン交換膜(13)及び
アニオン交換膜(15)の両者の具体例について、説明
する。
【0063】本発明において、前記カチオン交換膜(1
3)としては、(株)トクヤマ社製のネオセプタ(CM
−1,CM−2,CMX,CMS,CMBなど)を使用
することができる。
【0064】本発明において、前記アニオン交換膜(1
5)としては、(株)トクヤマ社製のネオセプタ(AM
−1,AM−3,AMX,AHA,ACH,ACS,A
CS−3など)を使用することができる。
【0065】本発明のイオントフォレーゼ装置(X)に
おいて、イオン性薬剤(As-Na+)(14)を収容ま
たは保持する構成は、所望に構成すればよい。また、前
記イオン性薬剤(14)は、例えば、溶液のタイプのも
の、あるいは所望の媒体(ガーゼ、吸水性高分子材料な
ど)に含浸させたタイプのものであってもよい。
【0066】本発明のイオントフォレーゼ装置(X)に
おいて、前記イオン性薬剤(As-Na+)(14)の前
面、即ち、皮膚側に配設されるイオン交換膜は、イオン
性薬剤の薬剤成分の帯電イオン(As-)と同種のイオ
ン選択性を有するアニオン交換膜(15)が使用され
る。
【0067】前記した本発明のイオントフォレーゼ装置
(X)のイオントフォレーゼ電極部(1)の技術的構成
により、従来の方式よりも長期かつ安定したイオントフ
ォレーゼ効果と生体安全性を得ることができる。即ち、
前記したイオントフォレーゼ電極部(1)の技術的構成
により、長期にかつ安定した通電特性を得ることがで
き、別言すれば、イオン性薬剤を皮膚(4)を介して長
期にかつ安定して体内に効率よく浸透(ドラッグデリバ
リー)させることができ、また電極部での電気分解反応
による有害物質の生成を防止することができる。
【0068】次に、本発明のイオントフォレーゼ装置
(X)のグランド電極部(+電極)(2)の構成につい
て、基本構成図(図1〜図6)を参照して説明する。
【0069】イオントフォレーゼに関する従来技術は、
グランド電極部(アース電極部)の構成について、単に
接地(アース)をとるという単純な考え方が強く働いて
いるためか、安定した通電特性の確保や生体安全性の確
保等を考慮したものが提案されていないのが現状であ
る。このことは、前記「従来の技術」の項で説明した特
許出願公表 平3−504343号公報、特開平3−9
4771号公報、及び本願出願人に関係する特開平4−
297277号公報をみても首肯されるところである。
【0070】本発明は、イオントフォレーゼ装置(X)
の前記イオントフォレーゼ電極部(1)の構成に加え
て、装置の全体的構成との関連において、長期かつ安定
してイオントフォレーゼによるイオン性薬剤の投与がで
きること、及び高度な生体安全性が得られること、とい
う観点からグランド電極部(2)についても従来とは異
なった技術的構成を採用するものである。
【0071】図3に示されるように、本発明のイオント
フォレーゼ装置(X)のグランド電極部(2)は、前記
イオントフォレーゼ電極部(1)の電極材(11)と反
対の極性の電極材(21)、前記電極材(21)の少な
くとも前面に配設された導電性媒体(22)、及び前記
導電性媒体(22)の前面部、即ち、皮膚(4)の側に
配設され、かつイオン性薬剤の帯電イオンと反対のイオ
ンを選択するイオン交換膜(23)により構成されるも
のである。
【0072】本発明のイオントフォレーゼ装置(X)に
おいて、グランド電極部(2)は、図5〜図6に示され
るように、操作性、利便性などを向上させるためにイオ
ントフォレーゼ電極部(1)に一体化されて構成されて
もよいものである。
【0073】そして、本発明は、イオントフォレーゼ装
置(X)の操作性、利便性を更に向上させるために、グ
ランド電極部(2)がイオントフォレーゼ電極部(1)
に一体化または非一体化されたイオントフォレーゼ装置
(X)において、少なくともイオントフォレーゼ電極部
(1)が、電極材(11)に対して他の構成要素が着脱
自在(detachable)に装着できるように構成されてもよ
いものである。なお、本発明において、前記イオントフ
ォレーゼ電極部(1)に加えて、グランド電極部(2)
においても、電極材(21)に対して他の構成要素が着
脱自在に装着できるように構成されてもよいことはいう
までもないことである。
【0074】本発明のイオントフォレーゼ装置(X)に
おいて、生体安全性を高めるためにグランド電極部
(2)にイオン交換膜(23)を配設する点は、従来技
術にはみられない大きな特徴点である。また、本発明の
イオントフォレーゼ装置(X)において、生体安全性と
ともに長期の安定的操作を図るために、イオントフォレ
ーゼ電極部(1)の導電性媒体(12)と同様にグラン
ド電極部(2)の導電性媒体(22)は、水の酸化還元
電位よりも低い酸化還元電位を有する物質を含有したも
ので構成されてよいものである。そして、前記グランド
電極部(2)にイオン交換膜(23)を配設する点と、
前記酸化還元されやすい物質を利用する点を組合わせて
高付加価値のイオントフォレーゼ装置(X)とすること
も、従来技術にはみられない大きな特徴点である。
【0075】本発明のイオントフォレーゼ装置(X)に
おいて、グランド電極部(2)は、図2に示されるよう
に所定のイオン選択性を有する1枚のイオン交換膜(2
3)を配設したもので構成されてもよいものである。前
記したグランド電極部(2)にイオン交換膜(23)を
配設することの利点は、実証データをもって後述され
る。また、グランド電極部(2)の導電性媒体(22)
に酸化還元されやすい物質を添加することの利点は、既
にイオントフォレーゼ電極部(1)の導電性媒体(1
2)のところで説明した通りである。
【0076】図3に示されるように、イオン性薬剤がア
スコルビン酸ナトリウム(As-Na+)などの負(−)
に帯電する場合、本発明のイオントフォレーゼ装置
(X)のグランド電極部(2)において、電極材(2
1)は陽極(+)、導電性媒体(22)は例えば生理食
塩水、及びイオン交換膜(23)はカチオン交換膜、に
より構成される。
【0077】本発明において、前記グランド電極部
(2)の導電性媒体(22)は、酸化還元されやすい物
質、例えば硫酸第二鉄、硫酸第一鉄を含有した硫酸第二
鉄(両者の等モル溶液)、アスコルビン酸、アスコルビ
ン酸ナトリウムなどを含有した生理食塩水などで構成さ
れてもよいものである。更にまた、本発明のグランド電
極部(2)は、図4に示されるように、イオン交換膜と
してイオン選択性の異なる2種のイオン交換膜を利用し
てもよいものである。
【0078】図3に示されるイオントフォレーゼ装置
(X)を参照して説明したイオントフォレーゼによるイ
オン性薬剤の投与法は、前記したようにイオン性薬剤の
有効薬剤成分が負(−)に帯電するアスコルビン酸Na
(As-Na+)のケースのものであった。本発明におい
て、イオン性薬剤の有効薬剤成分が正(+)に帯電する
ものであっても、同様に投与することができるものであ
る。
【0079】イオン性薬剤の有効薬剤成分が正(+)に
帯電するものとしては、例えば、麻酔剤としての塩酸プ
ロカイン、塩酸リドカインなどがある。この場合、各電
極材(11,12)の極性及びイオン交換膜(13、1
5、23、25)のイオン交換特性を、前記アスコルビ
ン酸Na(As-Na+)の投与ケースとは全く逆にしな
ければならないことはいうまでもないことである。前記
正(+)に帯電するイオン性薬剤を使用する場合、前記
負(−)に帯電するアスコルビン酸Naの投与ケースを
類推することにより、本発明の特徴点を容易に理解する
ことができる。
【0080】前記図1〜図6に示される電源装置(3)
としては、所望のものを使用することができる。本発明
において、前記電源装置(3)として、電池、定電圧装
置、定電流装置、定電圧・定電流装置(ガルバノ装置)
などを使用することができる。
【0081】次に、前記図3〜図4に示されるイオント
フォレーゼ装置(X)の基本構成図と等価の実験装置、
及び比較データを採取するための前記実験装置を変更し
て製作した実験装置を用い、イオン性薬剤としてアスコ
ルビン酸ナトリウム(As-Na+)を投与実験したとき
の実験例/比較実験例を説明する。以下に説明する実験
例/比較実験例により、本発明のイオントフォレーゼ装
置(X)において、特に、グランド電極部(2)にイオ
ン交換膜を配設することの重要性を理解することができ
る。
【0082】図7〜図10は、使用した実験装置の概略
図である。図7〜図8は比較実験用の装置である。図9
〜図10は本発明のイオントフォレーゼ装置(X)と等
価の実験装置である。実験装置の参照符号の意味は、次
の通りである。 (1).参照符号11、21、12、13、14、15、2
2、23、24、25は、図3〜図4と同じである。な
お、カチオン交換膜(13、23)及びアニオン交換膜
(15、25)として、それぞれトクヤマ社製ネオセプ
タCMX(カチオン)及びAMX(アニオン)を使用し
た。 (2).参照符号4は、皮膚を仮想した仮想皮膚槽(室)を
示す。 (3).参照符号PPは、ポリプロピレン製多孔質の隔膜
(日本ミリポア・リミテッド社製ANフィルター、AN
06)を示す。 (注)PPは、イオンの選択透過性はない。 (4).参照符号A〜Eは、イオン交換膜あるいはPPによ
り仕切られた各槽(室)を示す。
【0083】1.図7に示される実験装置でのイオント
フォレーゼ実験 (a).実験条件 (1).A室(イオントフォレーゼ電極室、負極室)の電極
液は、導電性媒体(12)とイオン性薬剤(14)を含
むものであり、1MのAs-Na+を溶解した0.9%N
aCl水溶液を使用した。 (2).B室(皮膚を模擬した仮想皮膚室)の媒体として、
0.9%NaCl水溶液を使用した。 (3).C室(グランド電極室)の導電性媒体(22)とし
て、0.9%NaCl水溶液を使用した。 (4).通電条件 電圧30V(初期設定値)、電流10mA(定電流)、
通電時間30分。 (b).実験結果:実験結果として、各室(A〜C)のpH
変化を下記表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】(c).考察: (1).A室では還元反応、C室では酸化反応が生じ、A室
のAs- (アスコルビン酸イオン)がB室に輸送され
る。明らかにA室ではpHは中性からアルカリ性側にシ
フトし、またC室では中性から強い酸性に変化してい
る。従って、C室のグランド電極(21)とB室、即ち
皮膚(4)が直接接触している本実験のケースは非常に
危険な状態にある。このことは、B室が酸性にシフトし
ていること、そして前記酸性側へのシフトの原因がC室
で生成した酸(HClO3) によるものであることから
判る。なお、前記次亜塩素酸は強力な酸化剤として知ら
れているものである。 (2).イオントフォレーゼ電極室であるA室と皮膚(B
室)の間にアニオン交換膜(15)が存在するため、多
少、A室がアルカリになっていくことが阻止されている
が、A室のOH- イオンは前記アニオン交換膜(15)
を介してB室側へ電気泳動により通過するため、皮膚表
面が局所的にアルカリになっていると考えられる。即
ち、B室においてはもっと酸性側に傾くと考えられるも
ののpH=4.20で止まっており、OH-イオンが皮
膚面に到達しpHは局所的にアルカリ側にシフトしてい
るものと考えられる。 (3).前記したことから、イオントフォレーゼを行なうに
あたり、本実験のようにイオン交換膜を1枚のみ使用す
る態様は生体安全性の観点から避けるべきである。 (4).本実験において投与されたAs- (アスコルビン酸
イオン)の量は約300μmol(理論値560μmo
l)であり、A室の減少量とB室の増加量にほぼ対応し
ている。しかしながら、前記投与量は理論値の約1/2
であり、A室において多量のOH-イオンが生成し、こ
れがAs-とともに輸送されるためAs-の輸送を50%
妨害している。この点からも、本実験装置はイオントフ
ォレーゼ装置としては不適当なものである。
【0086】2.図8に示される実験装置でのイオント
フォレーゼ実験 (a).実験条件:前記図7に示される実験装置のA室とB
室(皮膚)の構成を図示の態様でカチオン交換膜(1
3)とアニオン交換膜(15)を配設して再構成した実
験装置を用い、かつA室の電極液及びB室のイオン性薬
剤溶液として、それぞれ導電性媒体(12)とイオン性
薬剤(14)を含む1MのAs-Na+を溶解した0.9
%NaCl水溶液を用いた以外は、前記「1」と同様に
実験した。 (b).実験結果:実験結果として、各室(A〜D)のpH
変化を下記表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】(c).考察 (1).イオントフォレーゼ電極室(A室)と投与試薬であ
るイオン性薬剤としてのAs-Na+を含む溶液室(B
室)の間をカチオン交換膜(13)で仕切ることによ
り、B室のpHを一定に保つことができる。このこと
は、皮膚表面(C室)がアルカリ性になることを防止す
るものである。また、イオン透過量は、前記「1」の実
験と比較して改善され、ほぼ理論値に近い値が得られ
る。 (2).しかしながら、C室(仮想皮膚槽)(4)のpHの
低下がみられる。このことは、C室とD室の間、即ちグ
ランド電極室(D)と仮想皮膚槽(4)の間を単なる隔
膜(pp)でなくイオン交換膜で仕切ることの有効性を
示唆している。更にまた、グランド電極室(D)におい
て、導電性媒体である生理食塩水の酸化分解により次亜
塩素酸イオンが生成し、これが皮膚に拡散する危険性が
ある。
【0089】3.図9に示される実験装置でのイオント
フォレーゼ実験 (a).実験条件:前記図8に示される実験装置のC室とD
室の間のPP製隔膜をカチオン交換膜(23)に変更し
た以外は、前記「2」と同様に実験した。 (b).実験結果:実験結果として各室(A〜D)のpH変
化を下記表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】(c).考察:本実験は、本発明のイオントフ
ォレーゼ装置(X)による実験に対応するものである。
本実験装置は、グランド電極部(2)に1枚のカチオン
交換膜(23)を配設したもので構成される点に特徴が
ある。 (1).各電極室、即ち、A室及びD室でのpH変化が見ら
れるものの、As-Na+溶液室(B室)及び皮膚(C
室)でのpH変化は抑制されており、効果的である。更
に、グランド電極室(D室)にカチオン交換膜(23)
を配置することにより、次亜塩素酸イオンなどの有害ア
ニオンを皮膚に接触させずにD室内にとどめおくことが
できる。 (2).アスコルビン酸イオンの透過量は、ほぼ理論値の値
を示すため、本実験装置はイオントフォレーゼ装置とし
て有用なものである。 (3).ただし、本実験装置の改良点としては、仮想皮膚槽
(C室)に接するグランド電極室(D室)において、グ
ランド電極(21)上で水の電気分解により生成したH
+イオンがカチオン交換膜(23)を通して泳動し、C
室の酸性化をもたらしており、この点は改良すべきであ
る。このため、グランド電極部側にもイントフォーゼ電
極部側と同じようにカチオン交換膜とアニオン交換膜の
二種のイオン交換膜を採用することが好ましい。
【0092】4.図10に示される実験装置でのイオン
トフォレーゼ実験 (a).実験条件:前記図9に示される実験装置において、
グランド電極室(D室)にカチオン交換膜(23)に加
えてアニオン交換膜(25)を図示の態様で配設し、か
つ新たに区画されたグランド電極室(E室)の電極液と
して1MのAs-Na+を溶解した0.9%NaCl水溶
液を用いた以外は、前記「3」と同様に実験した。 (b).実験結果 実験結果として、各室(A〜E)のpH変化を下記表4
に示す。
【0093】
【表4】
【0094】(c).考察: (1).図10に示されるイオントフォレーゼ電極部側に2
枚のイオン交換膜(13、15)、及びグランド電極部
側に2枚のイオン交換膜(23、25)を配設したイオ
ントフォレーゼ装置において、イオントフォレーゼ電極
部側(A〜B室)から人間の体内(C室)にAs- のみ
が供給され、かつグランド電極部側(E〜D室)から人
間の体内(C室)にNa+ のみが供給され、結果として
アスコルビン酸ナトリウム(As-Na+) が体内に注
入されることになる。前記した以外の物質が体内に注入
されることがないため、本実験装置は、極めて安全かつ
効果的なイオン性薬剤の投与(ドラッグデリバリー)手
段となる。 (2).pH変化は、B室、C室、D室においてほとんどみ
られない。このことは、(i).イオントフォレーゼ電極部
において、B室のアスコルビン酸イオン(As-) が仮
想皮膚槽(C室)へ移動、及びナトウムイオン(N
+)がイオントフォレーゼ電極室(A室)へ移動した
ことを示し、かつ、(ii).グランド電極部において、D
室のナトリウムイオン(Na+)が仮想皮膚槽(C室)
へ移動、及びアスコルビン酸イオン(As-)がグラン
ド電極室(E室)へ移動したことを示しており、これに
より各室においてpH変化が生じなかったものである。
【0095】5.図10に示される実験装置での他のイ
オントフォレーゼ実験 (1).前記図9に示されるイオントフォレーゼ実験におい
て、D室(正極のグランド電極室)の電極液は、前記し
たように0.9%NaCl水溶液で構成されるものであ
る。この場合、30分間の通電により正極のグランド電
極室(D室)は大幅なpH低下を示し、かつ塩素ガス及
び水素ガスの発生があり、それ以後の通電条件が悪化し
はじめる。なお、前記図9に示されるイオントフォレー
ゼ実験において、A室(負極のイオントフォレーゼ電極
室)の電極液として、1MAs-Na+(これは水の酸化
還元電位よりも低い酸化還元電位を有する酸化還元され
やすい物質である)を添加しないで0.9%NaCl水
溶液のみで構成したときも、30分間の通電により負極
には水素ガスの発生があり、それ以後の通電条件が悪化
しはじめる。
【0096】(2).前記欠点を改善するために、図10に
示されるイオントフォレーゼ実験は、E室(正極のグラ
ンド電極室)にアニオン交換膜(25)を配設すること
に加えて、A室(負極のイオントフォレーゼ電極室)及
びE室の電極液として、1MのAs-Na+を溶解した
0.9%NaCl水溶液を用いている。
【0097】(3).ここでの実験は、酸化還元しやすい物
質(水の酸化還元電位よりも低い酸化還元電位をもつ物
質)として硫酸第一鉄と硫酸第二鉄を用い、電極液とし
てこれらの等モル溶液を用いた場合の効果について調べ
る。
【0098】(a).実験条件: (1).A室及びE室の電極液として、200mMの第一及
び第二硫酸鉄を含む0.9%NaCl水溶液を用いた。 (2).B室のイオン性薬剤溶液として、100mMAs-
Na+水溶液を用いた。 (3).C室(仮想皮膚層)及びD室の溶液として、0.9
%NaCl水溶液を用いた。 (4).通電条件 電圧30V(初期設定値)、電流10mA(定電流)。
【0099】(b).実験結果 (1).30分の通電により、B室のAs-はC室に120
μmol流れた。また、B室のAs-Na+の初期量と3
0分通電後の残存量は、それぞれ890μmol、65
0μmolであり、その差は140μmolであった。
前記140μmolという値は、実際にC室に移行した
量120μmolとほぼ見合うものである。なお、B室
からC室へのAs- の移行量の理論値は186μmol
であり、前記した実際の移行量120μmolは理論値
の約65%あり、高い値を示している。これは、本発明
のイオントフォレーゼ方式が優れていることを示すもの
である。 (2).C室(仮想皮膚室)のpH変化は、初期値5.8
2、30分通電後は7.06であり、ほぼ中性に保つこ
とに成功した。 (3).通電90分後において、両電極室(A室、E室)か
らの気体の発生は全く認められなかった。なお、通電条
件は、電極液として第一及び第二硫酸鉄水溶液の代りに
NaCl水溶液を使用した場合、通電約35分後に悪化
しはじめるのが観察された。これは、本発明の方式が従
来のイオントフォレーゼ方式より格段に優れていること
を示すものであり、本発明のイオントフォレーゼ方式に
より長時間、安定かつ安全にイオン性薬剤を投与するこ
とができることを示している。
【0100】
【実施例】次に、本発明のイオントフォレーゼによるイ
オン性薬剤を投与するために使用されるイオントフォレ
ーゼ装置(X)の実施態様について、図面を参照して詳
しく説明する。以下の実施例の説明において、本発明の
イオントフォレーゼ装置の前記した構成要件(1)、
(2)、(3)のうち構成要件(1)〜(2)の重要性
は前記実験例及び比較実験例により実証されているた
め、特に構成要件(3)の構成に留意すべきである。ま
た、グランド電極部の構成は、イオントフォレーゼ電極
部の構成から容易に類推することができるため、詳しい
説明を省略する。
【0101】なお、参照図面において、図示明確化のた
め、イオン交換膜(13,15,23、25)を波線で
表示し、また、一部の構成要素(部材)、構成要素(部
材)同志の結合様式、あるいはハッチングを省略する。
しかしながら、図面において省略されている構成は、各
実施態様の説明や他の添付図面などから容易に理解され
得るものである。
【0102】図11〜図12は、本発明のイオントフォ
レーゼ装置(X)の第一実施態様を説明する図である。
図11は、第一実施態様のイオントフォレーゼ装置
(X)の縦断面図である。また、図12は、前記図11
の要部を示すとともに、イオン(アニオン)交換膜(1
5)が外筒体(a)の皮膚押圧部(a4)により皮膚
(4)面に密着された状態を示すものである。なお、図
12において、図11に示される固定ピン(a32)は
省略されている。
【0103】本発明の第一実施態様のイオントフォレー
ゼ装置(X)は、図11に示されるように、大きく区分
して、(i).円筒状のイオントフォレーゼ電極部(1)、
(ii).前記円筒状のイオントフォレーゼ電極部(1)に
対して別体として構成されたグランド電極部(2)、及
び、(iii).定電圧・定電流用電源(3)、の三つの要素
から構成される。
【0104】本発明の図11に示されるイオントフォレ
ーゼ装置(X)において、グランド電極部(2)は、イ
オントフォレーゼ電極部(1)に対して別体として構成
されるものである。前記「別体として構成される」とい
う意味は、図示のようにイオントフォレーゼ電極部(1
1)とグランド電極部(2)が非一体型のものであり、
例えばグランド電極部(2)をイオントフォレーゼ治療
者が把持して接地(アース)をとるという構造のもので
ある。なお、本発明のイオントフォレーゼ装置(X)
は、イオントフォレーゼ電極部(1)とグランド電極部
(2)が一体型のもので構成されてもよいものである
が、この場合の一体型とは、前記図5〜図6に示される
態様のものである。
【0105】また、図11に示される本発明の第一実施
態様のイオントフォレーゼ装置(X)は、イオン性薬剤
(14)としてアスコルビン酸Na(As-Na+)をイ
オントフォレーゼにより投与することを前提にして構成
されている。このため、図11に示されるイオントフォ
レーゼ装置(X)において、イオントフォレーゼ電極部
(1)の各構成要素の参照符号は、次のことを意味す
る。 (i).(11)で示されるイオントフォレーゼ電極部
(1)の電極板は、(−)極、(ii).(12)で示され
るイオントフォレーゼ電極部(1)の導電性媒体は、生
理食塩水、(iii).(13)で示されるイオントフォレー
ゼ電極部(1)のイオン交換膜は、カチオン交換膜、(i
v).(14)で示されるイオントフォレーゼ電極部
(1)のイオン性薬剤は、アルコルビン酸Na(As-
Na+)、(v).(15)で示されるイオントフォレーゼ
電極部(1)のイオン交換膜は、アニオン交換膜、をそ
れぞれ示す。なお、グランド電極部(2)の具体的な構
成は図11には省略されているが、前記図2〜図3との
関連において、グランド電極部(2)の構成要素の参照
符号は、(vi).(21)で示されるグランド電極部
(2)の電極板は、(+)極、(vii).(22)で示され
るグランド電極部(2)の導電性媒体は、生理食塩水、
及び、(viii).(23)で示されるグランド電極部
(2)のイオン交換膜は、カチオン交換膜、をそれぞれ
示す。
【0106】図11に示されるように、本発明の第一実
施態様のイオントフォレーゼ装置(X)において、イオ
ントフォレーゼ電極部(1)は、大きく区分して、(i).
非導電性で円筒状の外筒体(a)、及び、(ii).非導電
性で円筒状の内筒体(b)、の二つの要素から構成さ
れ、これら要素(a、b)のもとで前記した参照符号
(11〜15)で示される要素が保持または収容され
る。前記要素(a,b)は、例えば非導電性のプラスチ
ックで構成すればよい。
【0107】前記した構成のイオントフォレーゼ電極部
(1)は、図1に示されるように、その平面図は円形の
ものである。そして、前記イオントフォレーゼ電極部
(1)は、例えば、手によって把持されて所望患部に当
接されるため、所望の大きさ(外径、高さ)のものに構
成される。また、図11に示されるように、前記外筒体
(a)と内筒体(b)は、両者の当接面に形成されたネ
ジ部を介して螺合により一体化される螺合タイプのもの
である。図中、前記した螺合部は、記号abで示されて
いる。しかしながら、本発明において、前記外筒体
(a)と内筒体(b)は、その他の方式により一体化さ
れるものであってもよく、例えば係合タイプ、係止タイ
プ、挿嵌タイプのものなどであってもよいものである。
【0108】前記円筒状の外筒体(a)は、図示される
ように、(i).前記内筒体(b)と共働してカチオン交換
膜(13)を固定するためのカチオン交換膜(13)用
支持部(a1)、(ii).イオン性薬剤(14)を収容す
るためのイオン性薬剤(14)用収容部(a2)、(ii
i).アニオン交換膜(15)を固定するためのアニオン
交換膜(15)用支持部(a3)、(iv).アニオン交換
膜(15)を固定するためのアニオン交換膜(15)用
押圧リング(a31)、(v).アニオン交換膜(15)を
固定するための固定ピン(a32)、(iv). 外筒体
(a)の皮膚(4)に当接する部位に配設されてアニオ
ン交換膜(15)を皮膚(9)に密着させる皮膚押圧部
(a4)、を有するもので構成される。
【0109】一方、前記円筒状の内筒体(b)は、図示
されるように、(i).前記外筒体(a)のカチオン交換膜
(13)用支持部(a1)と共働してカチオン交換膜
(13)の固定を支援するカチオン交換膜(13)用押
圧部(b1)、(ii).導電性媒体(12)を収容するた
めの導電性媒体(12)用収容部(b2)、(iii).電極
板(11)を支持する電極板(11)用支持部(b
3)、(iv). 電源部(3)からのリード線(31)を案
内するリード線(31)用案内孔(b4)、(v).リード
線(31)を支持するリード線(31)用支持具(b
5)、(vi). 頂部円板部(b6)、を有するもので構成
される。
【0110】本発明において、イオン交換膜(13、1
5)の配設態様は、種々の変形例が可能である。例え
ば、アニオン交換膜(15)は、前記押圧リング(a3
1)及び固定ピン(a32)により支持部(a3)に固
定される方式にかえて、直接、支持部(a3)及び/又
は皮膚押圧部(a4)に粘着または融着されて固定され
てもよいことはいうまでもないことである。あるいは、
アニオン交換膜(15)を保持したカートリッジを皮膚
押圧部(a4)に着脱自在に固定するようにしてもよ
い。また、カチオン交換膜(13)は、前記支持部(a
1)と押圧部(b1)で挟持する方式にかえて、前記支
持部(a1)と押圧部(b1)のいずれか一方に粘着ま
たは融着して固定してもよいものである。
【0111】また、本発明のイオントフォレーゼ装置
(X)において、その操作性、利便性を高めるために、
前記した構成要素(13、14、15)の少なくとも一
つの構成要素を予め外筒体(a)に配設もしくは収容し
た外筒体(a)を用いて構成されてもよいものである。
なお、本発明において、イオン性薬剤としてイオン性薬
剤の有効成分が負(−)に帯電する前記アスコルビン酸
ナトリウムに代えて正(+)に帯電する塩酸モルフィン
などを使用する場合、前記イオン交換膜の配列順序、及
び電極板の極性を逆のものに変更しなければならないこ
とはいうまでもないことである。
【0112】本発明のイオントフォレーゼ装置(X)に
おいて、図示しないが、導電性媒体(12、22)及び
/又はイオン性薬剤(14)は、ガーゼあるいは吸水性
高分子材料などに含浸された形態のものであってもよい
ものである。また、皮膚側に配設されるイオン交換膜
(15、23)は、直接的または間接的に皮膚(4)に
接するように配設してもよいものである。特に皮膚が弱
い患者など高度な生態安全性が要求される場合、前記イ
オン交換膜の前面にガーゼあるいは吸水性高分子材料な
どに導電性媒体を含浸したものを適用し、イオン交換膜
(15、23)が間接的に皮膚(4)に当接するように
してもよいものである。
【0113】本発明のイオントフォレーゼ装置(X)に
おいて、図示明確化のために図示していないが、イオン
トフォレーゼ電極部(1)及び/又はグランド電極部
(2)に対し、導電性媒体(12、22、24)やイオ
ン性薬剤(14)のための供給路あるいは排出路、各電
極板(11、12)から発生するガスのガス抜き孔、あ
るいは前記ガスを吸着するための吸着体の収容部、など
を配設してもよいことはいうまでもないことである。
【0114】本発明の第一実施態様のイオントフォレー
ゼ装置(X)の特徴点の1つが図12に示されている。
図示されるように、外筒体(a)の皮膚押圧部(a4)
により、アニオン交換膜(15)は皮膚(4)面に密接
もしくは深く食い込むことになる。これにより、イオン
性薬剤(14)の経皮効率(イオントフォレーゼ効率)
が向上することになる。なお、前記したイオン性薬剤
(14)の向上した経皮効率を得るためには、前記皮膚
押圧剤(a4)は、少なくとも他の部材と面一になるか
もしくは他の部材よりも突設するように構成されなけれ
ばならないことはいうまでもないことである。
【0115】図13は、本発明のイオントフォレーゼ装
置(X)の第二実施態様を説明する図であり、前記図1
2に対応する図である。
【0116】図13に示される第二実施態様のイオント
フォレーゼ装置(X)が前記図11〜図12に示される
第一実施態様のものと異なる点は、次の点にある。即
ち、第二実施態様のイオントフォレーゼ装置(X)にお
いては、外筒体(a)の皮膚押圧部(a4)は、他の部
材であるアニオン交換膜(15)用押圧リング(a3
1)がセットされたときに、その表面よりも突出する高
さ(Δh)を有するように構成される。これにより、ア
ニオン交換膜(15)は皮膚押圧部(a4)により皮膚
(4)面に深く食い込むことになり、イオン性薬剤(1
4)の経皮効率が向上する。
【0117】
【発明の効果】本発明により、以下の優れた特性を有す
るイオントフォレーゼ装置が提供される。 (i).イオントフォレーゼ電極部(作用側電極部)及びグ
ランド電極部(非作用例電極部)が長期安定した通電状
態(定電流及び/又は定電圧)を維持することができる
ため、イオントフォレーゼ電極部においてイオン性薬剤
の正(+)もしくは負(−)に帯電した薬剤成分を効率
よく皮膚(もしくは粘膜)へ輸送(ドラッグデリバリ
ー)することができる。 (ii).イオントフォレーゼ電極部(作用側電極部)及び
グランド電極部(非作用例電極部)が前記した安定した
通電状態の維持に貢献するとともに特定のイオン交換膜
の使用態様(配設態様)により電極反応による皮膚への
悪影響(皮膚刺激、熱症、炎症など)をも排除すること
ができる。 (iii).更にまた、本発明のイオントフォレーゼ装置にお
いて、特にイオントフォレーゼ電極部(作用側電極部)
側の皮膚面に直接的または間接的に当接するイオン交換
膜が、皮膚面側に密着するように変位させることができ
るため、イオントフォレーゼによりイオン性薬剤を効率
的に経皮デリバリーすることができる。 (iv).また、本発明のイオントフォレーゼ装置は、イオ
ントフォレーゼ電極部(作用側電極部)及びグランド電
極部(非作用側電極部)に対してイオン選択性が異なる
複数枚のイオン交換膜を適用し、かつ、イオン性薬剤の
帯電特性(正イオンまたは負イオン)によりこれらイオ
ン交換膜の配設態様を変更して使用されるものである
が、各電極部に予め製作したイオン性薬剤の帯電特性に
応じたイオン交換膜の配設体を着脱自在に配設するよう
に構成するとき、取扱い性(利便性)が向上し、効率的
にイオン性薬剤を投与することができる。また、各電極
部を構成するときのイオン交換膜の配設態様を誤ること
がなく誤作動を回避することができ、安全、効率的にイ
オン性薬剤を投与することができる。 (v).更に、イオントフォレーゼ電極部(作用側電極部)
とグランド電極部(非作用側電極部)が一体化される場
合には、従来のように治療者においてグランド(アー
ス)をとる作業から解放され、利便性が向上する。ま
た、前記一体化構造において、複数組のイオントフォレ
ーゼ電極部とグランド電極部を一体化した場合、イオン
性薬剤の皮膚内への浸透度(皮膚表面からの浸透深さ)
を所望に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一のイオントフォレーゼ装置
(X)の基本構成図(概略斜視図)である。
【図2】 図1に対応するのイオントフォレーゼ装置
(X)の基本構成図(概略断面図)である。
【図3】 イオン性薬剤としてアスコルビン酸ナトリウ
ム(As-Na+)を投与するときに使用される図2に対
応するイオントフォレーゼ装置(X)の基本構成図であ
る。
【図4】 イオン性薬剤としてアスコルビン酸ナトリウ
ム(As-Na+)を投与するときに使用される図2に対
応する他のイオントフォレーゼ装置(X)の基本構成図
である。
【図5】 本発明の第二のイオントフォレーゼ装置
(X)の基本構成図(概略斜視図)である。
【図6】 図5に対応するイオントフォレーゼ装置
(X)の基本構成図(概略断面図である。
【図7】 イオントフォレーゼ効果を試験するための第
一実験装置(本発明に対して比較対象となる装置)の概
略図である。
【図8】 イオントフォレーゼ効果を試験するための第
二実験装置(本発明に対して比較対象となる装置)の概
略図である。
【図9】 イオントフォレーゼ効果を試験するための第
三実験装置(本発明に係る装置)の概略図である。
【図10】 イオントフォレーゼ効果を試験するための
第四実験装置(本発明に係る装置)の概略図である。
【図11】 本発明の第一実施態様のイオントフォレー
ゼ装置(X)を説明する図である。
【図12】 図11の要部拡大図である。
【図13】 本発明の第二実施態様のイオントフォレー
ゼ装置(X)を説明する図である。
【符号の説明】
X …………… イオントフォレーゼ装置 1 …………… イオントフォレーゼ電極部 11 ………… 電極材 12 ………… 導電性媒体 13 ………… イオン(カチオン)交換膜 14 ………… イオン性薬剤 15 ………… イオン(アニオン)交換膜 2 …………… グランド電極部 21 ………… 電極材 22 ………… 導電性媒体 23 ………… イオン(カチオン)交換膜 24 ………… 導電性媒体 25 ………… イオン(アニオン)交換膜 3 …………… 電源部 31,32…… リード線 4 …………… 皮膚 a …………… 外筒体 a1 ………… イオン交換膜(13)用支持部 a2 ………… イオン性薬剤(14)用収容部 a3 ………… イオン交換膜(15)用支持部 a31………… イオン交換膜(15)用押圧リング a32………… 固定ピン a4 …………… 皮膚押圧部 b ……………… 内筒体 b1 …………… イオン交換膜(13)用押圧部 b2 …………… 導電性媒体(12)用収容部 b3 …………… 電極板(11)用支持部 b4 …………… リード線(31)用案内孔 b5 …………… リード線(31)用支持具 b6 …………… 頂部円板部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松村 健彦 東京都大田区北嶺町22−2 (72)発明者 小林 頼子 滋賀県大津市本宮2−38−7 Fターム(参考) 4C053 HH02 HH04

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イオントフォレーゼによりイオン性薬剤
    を投与するために使用される電源に接続するイオントフ
    ォレーゼ電極部(作用側電極部)とグランド電極部(非
    作用側電極部)を有するイオントフォレーゼ装置におい
    て、 (1).前記イオントフォレーゼ電極部が、 (1)-1.イオン性薬剤の帯電イオンと同種の極性の電源に
    接続された電極材、 (1)-2.前記電極材の少なくとも前面に配置された導電性
    媒体、 (1)-3.前記導電性媒体の前面に配置されたイオン性薬剤
    の帯電イオンと反対のイオンを選択するイオン交換膜、 (1)-4.前記イオン性薬剤の帯電イオンと反対のイオンを
    選択するイオン交換膜の前面に配置されたイオン性薬
    剤、及び、 (1)-5.前記イオン性薬剤の前面に配置されたイオン性薬
    剤の帯電イオンと同種のイオンを選択するイオン交換
    膜、とから構成されること、かつ、 (2).前記グランド電極部が、 (2)-1.前記イオントフォレーゼ電極部の電極材と反対の
    極性の電極材、 (2)-2.前記電極材の少なくとも前面に配置された導電性
    媒体、及び、 (2)-3.前記導電性媒体の前面に配置されたイオン性薬剤
    の帯電イオンと反対のイオンを選択するイオン交換膜、
    とから構成されること、更に、 (3).前記イオントフォレーゼ電極部及び/又はグランド
    電極部が、その最前部に配置されたイオン変換膜を他の
    部位と面一または他の部位より突出させるように構成さ
    れたこと、を特徴とするイオントフォレーゼ装置。
  2. 【請求項2】 イオントフォレーゼ電極部が、その最前
    部に配置された「イオン交換膜(1)-5」 を他の部位と面
    一になるように構成されたものである請求項1に記載の
    イオントフォレーゼ装置。
  3. 【請求項3】 イオントフォレーゼ電極部が、その最前
    部に配置された「イオン交換膜(1)-5」 を他の部位より
    突出させて構成されたものである請求項1に記載のイオ
    ントフォレーゼ装置。
  4. 【請求項4】 イオントフォレーゼ電極部が、外筒体
    (a)と内筒体(b)で構成されるものであって、前記
    外筒体(a)がその最前部に他の部位より突出する所望
    幅の段差部からなる皮膚押圧部を有するもので構成さ
    れ、前記外筒体(a)の他の部位より突出する皮膚押圧
    部により「イオン交換膜(1)-5」 を他の部位より突出さ
    せるものである請求項3に記載のイオントフォレーゼ装
    置。
  5. 【請求項5】 グランド電極部が、前記「(2)-2.前記電
    極材の前面に配置された導電性媒体」と「(2)-3.前記導
    電性媒体の前面に配置されたイオン性薬剤の帯電イオン
    と反対のイオンを選択するイオン交換膜」との間に、前
    記イオン交換膜と反対のイオンを選択するイオン交換膜
    を有するものである請求項1に記載のイオントフォレー
    ゼ装置。
  6. 【請求項6】 グランド電極部が、イオントフォレーゼ
    電極部に対して非一体的に構成されたものである請求項
    1に記載のイオントフォレーゼ装置。
  7. 【請求項7】 グランド電極部が、イオントフォレーゼ
    電極部に隣接され、かつ、一体的に構成されたものであ
    る請求項1に記載のイオントフォレーゼ装置。
  8. 【請求項8】 イオントフォレーゼ電極部及びグランド
    電極部の導電性媒体が、酸化または還元されやすい物質
    を含むもので構成されたものである請求項1に記載のイ
    オントフォレーゼ装置。
  9. 【請求項9】 導電性媒体が、酸化または還元されやす
    い物質として硫酸第一鉄と硫酸第二鉄を含む溶液で構成
    されたものである請求項8に記載のイオントフォレーゼ
    装置。
  10. 【請求項10】 導電性媒体が、酸化または還元されや
    すい物質として有機酸及び/又はその塩を含む溶液で構
    成されたものである請求項8に記載のイオントフォレー
    ゼ装置。
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