JP2000251640A - 電子放出素子および電子源および画像形成装置および電子放出素子の製造方法 - Google Patents

電子放出素子および電子源および画像形成装置および電子放出素子の製造方法

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JP2000251640A
JP2000251640A JP5056199A JP5056199A JP2000251640A JP 2000251640 A JP2000251640 A JP 2000251640A JP 5056199 A JP5056199 A JP 5056199A JP 5056199 A JP5056199 A JP 5056199A JP 2000251640 A JP2000251640 A JP 2000251640A
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JP
Japan
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electron
film
emitting device
resistance
emitting
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JP5056199A
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English (en)
Inventor
Tamaki Kobayashi
玉樹 小林
Satoshi Mogi
聡史 茂木
Keisuke Yamamoto
敬介 山本
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Original Assignee
Canon Inc
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電子放出特性の安定化を図りつつ、帯電によ
る不具合の防止を図った品質性に優れた電子放出素子お
よび電子源および画像形成装置および電子放出素子の製
造方法を提供する。 【解決手段】 素子の駆動電圧においては抵抗が高く、
かつ帯電により電位が上昇した場合に抵抗値が小さくな
る、非線型のI−V特性をもつ抵抗膜6を設ける。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子を放出させる
ための電子放出素子、および電子放出素子を具備する電
子源、および電子源を用いて応用した画像形成装置、お
よび電子放出素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、電子放出素子としては、大別して
熱電子放出素子と冷陰極電子放出素子を用いた2種類の
ものが知られている。
【0003】冷陰極電子放出素子には電界放出型(以
下、「FE型」という。)、金属/絶縁層/金属型(以
下、「MIM型」という。)や表面伝導型電子放出素子
等がある。
【0004】FE型の例としてはW.P.Dyke&
W.W.Dolan、”Fieldemissio
n”、Advance in Electron Ph
ysics、8、89(1956)、あるいは、C.
A.Spindt,”PHYSICAL Proper
ties of thin−film field e
mission cathodes with mol
ybdenum cones”,J.Appl.Phy
s.,47,5248(1976)等に開示されたもの
が知られている。
【0005】MIM型の例としてはC.A.Mea
d、”Operation of Tunnel−Em
ission Devices”、J. Apply.
Phys. 、32、646(1961)等に開示さ
れたものが知られている。
【0006】表面伝導型電子放出素子型の例としては、
M.I.Elinson、Radio Eng.Ele
ctron Pys.、10、1290,(1965)
等に開示されたものがある。
【0007】表面伝導型電子放出素子は、基板上に形成
された小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流すことに
より、電子放出が生ずる現象を利用するものである。
【0008】この表面伝導型電子放出素子としては、前
記エリンソン等によるSnO2薄膜を用いたもの、Au
薄膜によるもの[G.Dittmer:”Thin S
olid Films”、9、317(1972)]、
In2O3/SnO2薄膜によるもの[M.Hartw
ell and C.G.Fonstad:”IEEE
Trans. ED Conf.”、519(197
5)]、カーボン薄膜によるもの[荒木久他:真空、第
26巻、第1号、22頁(1983)]等が報告されて
いる。
【0009】これらの表面伝導型電子放出素子の典型的
な例として前述のM.ハートウェルの素子構成を図15
に模式的に示す。
【0010】同図において1は基板であり、また、3は
導電性薄膜で、H型形状のパターンに、スパッタで形成
された金属酸化物薄膜等からなり、後述の通電フォーミ
ングと呼ばれる通電処理により電子放出部2が形成され
る。
【0011】尚、図中の素子電極間隔Lは0.5〜1m
m、W’は0.1mmで設定されている。
【0012】従来、これらの表面伝導型電子放出素子に
おいては、電子放出を行う前に導電性薄膜3を予め通電
フォーミングと呼ばれる通電処理によって電子放出部2
を形成するのが一般的であった。
【0013】即ち、通電フォーミングとは、導電性薄膜
3の両端に直流電圧あるいは非常にゆっくりとした昇電
圧、例えば1V/分程度を印加通電し、導電性薄膜を局
所的に破壊、変形もしくは変質せしめ、電気的に高抵抗
な状態にした電子放出部5を形成することである。
【0014】尚、電子放出部2は導電性薄膜3の一部に
亀裂が発生し、その亀裂付近から電子放出が行われる。
【0015】このように通電フォーミング処理をした表
面伝導型電子放出素子は、導電性薄膜3に電圧を印加
し、素子に電流を流すことにより、電子放出部2より電
子を放出せしめるものである。
【0016】上述の表面伝導型放出素子は、構造が単純
で製造も容易であることから、大面積にわたり多数素子
を配列形成できる利点がある。
【0017】そこで、この特徴を生かせるようないろい
ろな応用が研究されており、例えば、荷電ビーム源、表
示装置等への応用があげられる。
【0018】多数の表面伝導型放出素子を配列形成した
例としては、後述する様に、並列に表面伝導型電子放出
素子を配列し、個々の素子の両端を配線(共通配線とも
呼ぶ)で、それぞれ結線した行を多数行配列した電子源
があげられる(例えば、特開昭64−031332号、
特開平1−283749号、特開平2−257552号
公報等に開示されている)。
【0019】また,特に表示装置等の画像形成装置にお
いては、近年、液晶を用いた平板型表示装置が、CRT
に替わって普及してきたが、自発光型でないためバック
ライトを持たなければならない等の問題点があり、自発
光型の表示装置の開発が、望まれてきた。
【0020】自発光型表示装置としては、表面伝導型放
出素子を多数配置した電子源と電子源より放出された電
子によって、可視光を発光せしめる蛍光体とを組み合わ
せた表示装置である画像形成装置があげられる(例え
ば、USP5066883)。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような従来技術の場合には、下記のような問題が生じて
いた。
【0022】薄型画像形成装置においては、上述した電
子放出素子は、蛍光体に加速された電子線を入射させて
輝度を得る。
【0023】これらの電子放出素子は真空中で取り扱わ
れるが、真空中における電子放出特性の不安定性の一要
因として、電子放出部近傍に絶縁性基板表面が露出して
いると、その表面の電位が不安定となり、電子放出が不
安定となることを、本出願人は確認している(特開平2
−072534号公報参照)。
【0024】すなわち、入力信号に応じて応答する画像
形成装置においては、各電子放出素子を電気的に分離す
る必要があるので、絶縁性の基板が通常もちいられる。
【0025】しかし、画像表示部における蛍光体に高圧
をかけると、対向する電子放出素子の周りの絶縁面は真
空と絶縁体の誘電率できまる容量分割による電位が発生
する。
【0026】この電位は、絶縁性が良好であればあるほ
ど時定数が長く、帯電したままである。
【0027】更に、この状態で電子放出素子から電子を
放出すると、電子は帯電した絶縁面にも衝突する。
【0028】この場合に、電子が加速されることより、
絶縁性基板表面に電子、イオン等の荷電粒子が注入され
ると2次電子が発生する。
【0029】特に高電界下では、異常放電に至るため、
素子の電子放出特性が著しく低下し、最悪の場合、素子
が破壊することが実験的に確かめられている。
【0030】この異常放電現象については未だ不明な点
があるが、素子から放出された電子、イオン等の注入に
より表面の帯電、あるいは帯電した絶縁性面で2次電子
放出より雪崩的に電子増倍され、放電することが考えら
れる。
【0031】又、電子放出素子から放出された電子が蛍
光体の形成されたアノードに衝突する際に、X線や紫外
線を放射する場合があるが、このようなX線や紫外線が
関与して、絶縁性基板表面を帯電させる事も考えられ
る。
【0032】例えば、X線が絶縁性基板表面に照射され
る事により、光電効果の結果、光電子が放出され、該光
電子がアノードに引き寄せられる事により、絶縁性基板
表面が正の電位に帯電する事が考えられる。
【0033】これら、真空中での電子放出特性の不安定
性、素子の放電劣化を防止するためには、絶縁性の表面
が露出しないように適当な導電体の被膜(帯電防止膜)
で被覆することが効果的であるが、この被膜によって素
子電極間にリーク電流が流れるので、素子の見かけの効
率が低下する。
【0034】ここで効率とは、表面伝導型電子放出素子
の一対の対向する素子電極に電圧を印加したとき、流れ
る電流(以降素子電流Ifと呼ぶ)に対する真空中に放
出される電流(以降電子放出電流Ieと呼ぶ)との電流
比をさす。
【0035】つまり、素子電流はできるだけ小さく、放
出電流はできるだけ大きいことが望ましいが、上記のよ
うに帯電防止膜を被覆した場合には、帯電防止膜による
リーク電流が素子電流に加算されるため、効率が低下す
る。
【0036】これらの問題点を解決するには、帯電を防
止でき、かつリーク電流が実質上問題にならないほど小
さい被膜を形成するのが好ましいことになる。
【0037】以上のように電子放出特性の安定性と寿命
の向上がなされば、例えば蛍光体を画像形成部材とする
画像形成装置においては、高品位な画像形成装置、例え
ば、フラットテレビが、実現される。
【0038】本発明は上記の従来技術の課題を解決する
ためになされたもので、その目的とするところは、電子
放出特性の安定化を図りつつ、帯電による不具合の防止
を図った品質性に優れた電子放出素子および電子源およ
び画像形成装置および電子放出素子の製造方法を提供す
ることにある。
【0039】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明にあっては、アノードに対向する位置に配置さ
れる絶縁性の基体と、該基体上に設けられる、対向する
一対の素子電極と、該素子電極間に位置する電子放出部
を含む導電性薄膜と、を有する電子放出素子おいて、電
界強度が増加するにつれて抵抗値が減少する、非線形型
のI−V特性を有する抵抗膜を、前記基体上に設けるこ
とを特徴とする。
【0040】したがって、抵抗膜を設けたことによっ
て、帯電量が増加して電界強度が高くなると、抵抗膜の
抵抗値が低くなって、電気を逃がすことで帯電量を減少
させつつ、電界強度が低い際には、抵抗値が高く素子電
極間のリーク電流を抑制することができる。
【0041】電子放出素子は、表面伝導型電子放出素子
であるとよい。
【0042】前記抵抗膜内には、分散された導電性粒子
を有するとよい。
【0043】幅w,長さlの薄膜の抵抗をRとした場合
に、 R=RS(l/w) を満たすシート抵抗値RSについて、5×106V/mの
電界強度における前記抵抗膜のシート抵抗値RSが、1
×108Ω/□以上であるとよい。
【0044】また、本発明の電子源にあっては、上記の
電子放出素子を複数備えると共に、これら電子放出素子
に設けられた電極同士を電気的に接続する、行及び列方
向にマトリックス状に形成された配線と、各配線同士を
電気的に隔てる層間絶縁層と、を備える電子源におい
て、前記層間絶縁層の表面に、前記非線形型のI−V特
性を有する抵抗膜を設けることを特徴とする。
【0045】したがって、層間絶縁層の表面付近におい
ても、帯電防止を図ることができる。
【0046】また、本発明の画像形成装置にあっては、
上記の電子源と、該電子源から放出された電子が衝突さ
れて発光する蛍光体を有するアノードと、を備えること
を特徴とする。
【0047】また、本発明にあっては、絶縁性の基体上
に、対向する一対の素子電極を形成する工程と、前記一
対の素子電極にそれぞれ接続する導電性薄膜を形成する
工程と、前記導電性薄膜の一部の構造を変化させて電子
放出部を形成する工程と、を有する電子放出素子の製造
方法において、電界強度が増加するにつれて抵抗値が減
少する、非線形型のI−V特性を有する抵抗膜を形成す
る工程を、含ませることを特徴とする。
【0048】
【発明の実施の形態】以下に図面を参照して、この発明
の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただ
し、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、
材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載が
ない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣
旨のものではない。
【0049】図1〜図14を参照して、本発明の実施の
形態に係る電子放出素子および電子源および画像形成装
置および電子放出素子の製造方法について説明する。
【0050】まず、図1を参照して、本発明の実施の形
態に係る電子放出素子の基本的な構成について説明す
る。
【0051】図1は本発明の実施の形態に係る電子放出
素子の概略構成図であり、(a),(b)は、それぞれ
平面図および断面図である。
【0052】図1において1は基板、4と5は素子電
極、3は電子放出部を含む薄膜、2は電子放出部、6は
非線型なI−V特性を有する抵抗膜である。
【0053】ここで電子放出部2を含む薄膜3は、10
7Ω/□以下のシート抵抗値を示すのが好ましい。
【0054】この電子放出部を含む薄膜3のシート抵抗
値は、後述する電子放出部2の形成工程、すなわちフォ
ーミング工程において、良好な電子放出部の形成できる
抵抗値として制限される。
【0055】なお、シート抵抗値とは、幅w,長さlの
薄膜の抵抗をRとした場合に、 R=RS(l/w) を満たすRSをいう。
【0056】良好な電子放出部を形成するには、103
Ω/□以上107Ω/□以下の抵抗値であることが好ま
しい。
【0057】しかしながら、電子放出部2を形成した後
は、素子電極を通じて印加される電圧が十分に電子放出
部2に印加されるのが好ましく、電子放出部2を含む薄
膜3の抵抗値はより低いほうが好ましい。
【0058】このため、詳しくは後述するが、電子放出
部を含む薄膜3は103Ω/□以上107Ω/□以下の抵
抗値を持つ金属酸化膜半導体薄膜として形成し、フォー
ミング後に還元して、より低抵抗な金属薄膜として用い
ることができる。
【0059】したがって、最終的な状態での電子放出部
を含む薄膜3の抵抗値の下限は特に限定されない。
【0060】なお、ここで言う電子放出部を含む薄膜3
の抵抗値とは、電子放出部2を含まない領域で測定され
る抵抗値を意味している。
【0061】一方、非線型のI−V特性をもつ抵抗膜6
は、後述するように、素子の電子放出特性において、素
子電流はできるかぎり小さいほうが好ましく、そのため
非線型のI−V特性をもつ抵抗膜6の抵抗値は素子の駆
動電圧においては抵抗が高く、かつ帯電により電位が上
昇した場合に抵抗値が小さくなるのが好ましい。
【0062】実際においては、5×106V/mの電界
強度において、シート抵抗値が1×108Ω/□以上の
シート抵抗値を有するのが、特性上好ましい。
【0063】以上が、電子放出素子の基本的な構成であ
るが、図1に示した構成に限るものではなく、例えば、
図8に示すように構成しても良い。
【0064】図8では、垂直型の表面伝導型電子放出素
子を示す図であり、電子放出部2が基板1に垂直に形成
されている点を除いて、図1の電子放出素子と同様であ
る。
【0065】なお、図8において、31は素子電極4,
5の電気的な絶縁性を確保するための層間絶縁層であ
る。
【0066】次に、図1および図2を参照して、順をお
って製造方法について説明する。
【0067】なお、図2においても、図1に示した部位
と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号を付して
いる。 1)基板1を洗剤,純水および有機溶剤等を用いて十分
に洗浄し、真空蒸着法,スパッタ法等により素子電極材
料を堆積後,例えばフォトリソグラフィー技術を用いて
素子電極4,5を形成する(図2(a))。 2)素子電極4,5を設けた基板1上に、有機金属溶液
を塗布して、有機金属薄膜を形成する。なお、有機金属
溶液には、導電性膜3の材料の金属を主元素とする有機
金属化合物の溶液を用いることができる。
【0068】そして、有機金属薄膜を加熱焼成処理し、
リフトオフ、エッチング等によりパターニングし、導電
性薄膜3を形成する(図2(b))。なお、ここでは、
有機金属溶液の塗布法を挙げて説明したが、導電性薄膜
3の形成法はこれに限られるものでなく、真空蒸着法,
スパッタ法,化学的気相堆積法,分散塗布法,ディッピ
ング法,スピンナー法等を用いることもできる。 3)次に非線型のI−V特性をもつ抵抗膜6を形成する
(図2(c))。ここで、非線型のI−V特性をもつ抵
抗膜6の材料としては、容易にかつ大面積に均一な膜が
得られるものが好ましく、例えば、炭素材料や酸化ス
ズ、酸化クロム等の金属酸化物や、或いは導電性材料が
酸化シリコンなどに分散されたものなどを好適に用いる
ことができる。なお、この工程は、2)の電子放出部形
成用薄膜2の形成の前に行なっても同様の効果が得られ
る。
【0069】非線型のI−V特性をもつ抵抗膜6の形成
方法としては、スパッタ法、真空蒸着法、塗布法、炭素
系ガスによる電子ビームによる重合法、あるいはプラズ
マ法、CVD法等があげられる。
【0070】これらのどの方法によっても、安定した非
線型のI−V特性をもつ抵抗膜が容易に得られる。な
お、詳細な成膜については、下記の実施例で述べる。 4)つづいて、フォーミング工程を施す。このフォーミ
ング工程の方法の一例として通電処理による方法を説明
する。
【0071】素子電極4,5間に、不図示の電源を用い
て通電を行うと、導電性薄膜3の部位に、構造の変化し
た電子放出部2が形成される(図3(d))。
【0072】すなわち、通電フォーミングによれば導電
性薄膜3に局所的に破壊,変形もしくは変質等の構造の
変化した部位が形成されて、この部位が電子放出部2を
構成する。
【0073】通電フォーミングの電圧波形の例を図5に
示す。
【0074】電圧波形は、パルス波形が好ましく、これ
にはパルス波高値を定電圧としたパルスを連続的に印加
する図5(a)に示した手法と、パルス波高値を増加さ
せながら、電圧パルスを印加する図5(b)に示した手
法がある。
【0075】図5(a)におけるT1及びT2は、それ
ぞれ電圧波形のパルス幅とパルス間隔である。
【0076】通常T1は1μsec.〜10msec.
の範囲で、また、T2は10μsec.〜10mse
c.の範囲で設定される。
【0077】三角波の波高値(通電フォーミング時のピ
ーク電圧)は、電子放出素子の形態に応じて適宜選択さ
れ、このような条件のもと、例えば、数秒から数十分間
電圧を印加する。
【0078】なお、パルス波形は三角波に限定されるも
のではなく、矩形波など所望の波形を採用することがで
きる。
【0079】図5(b)におけるT1及びT2の値につ
いては、図5(a)に示したのと同様とすることができ
る。
【0080】三角波の波高値(通電フォーミング時のピ
ーク電圧)は、例えば0.1Vステップ程度づつ、増加
させることができる。
【0081】そして、通電フォーミング処理の終了時に
ついては、パルス間隔T2中に、導電性薄膜2を局所的
に破壊、変形しない程度の電圧を印加し、電流を測定し
て検知することができる。
【0082】例えば、0.1V程度の電圧印加により流
れる素子電流を測定し、抵抗値を求めて、1MΩ以上の
抵抗を示した時、通電フォーミングを終了させる。 5)フォーミングを終えた素子に活性化工程と呼ばれる
処理を施すのが好ましい。
【0083】活性化工程とは、素子電流Ifおよび放出
電流Ieを、著しく変化させる工程であり、活性化工程
は、例えば、有機物質のガスを含有する雰囲気下で、通
電フォーミングと同様に、パルスの印加を繰り返すこと
で行うことができる。
【0084】この雰囲気は、例えば油拡散ポンプやロー
タリーポンプなどを用いて真空容器内を排気した場合に
雰囲気内に残留する有機ガスを利用して形成することが
できる他、イオンポンプなどにより一旦十分に排気した
真空中に適当な有機物質のガスを導入することによって
も得られる。
【0085】このときの好ましい有機物質のガス圧は、
前述の応用の形態、真空容器の形状や、有機物質の種類
などにより異なるため、場合に応じて適宜設定される。
【0086】適当な有機物質としては、アルカン、アル
ケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素
類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン
類、フェノール、カルボン、スルホン酸等の有機酸類等
を挙げることが出来、具体的には、メタン、エタン、プ
ロパンなどCn2n+2で表される飽和炭化水素、エチレ
ン、プロピレンなどCn2n等の組成式で表される不飽
和炭化水素、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノ
ール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセト
ン、メチルエチルケトン、メチルアミン、エチルアミ
ン、フェノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等あるいは
これらの混合物を使用できる。
【0087】この処理により、雰囲気中に存在する有機
物質から、炭素あるいは炭素化合物が素子上に堆積し、
素子電流If,放出電流Ieが、著しく変化するように
なる。
【0088】活性化工程の終了判定は、素子電流Ifと
放出電流Ieを測定しながら、適宜行う。
【0089】尚パルス幅、パルス間隔、パルス波高値な
どは、適宜設定される。
【0090】炭素及び炭素化合物とは、例えばグラファ
イト(いわゆるHOPG,PG,GCを包含するもので
あり、HOPGはほぼ完全なグラファイトの結晶構造、
PGは結晶粒が20nm程度で結晶構造がやや乱れたも
の、GCは結晶粒が2nm程度になり結晶構造の乱れが
さらに大きくなったものを指す。)、および非晶質カー
ボン(アモルファスカーボン及び、アモルファスカーボ
ンと前記グラファイトの微結晶の混合物を指す)であ
り、その膜厚は、50nm以下の範囲とするのが好まし
く、30nm以下の範囲とすることがより好ましい。
6)このような工程を経て得られた電子放出素子は、さ
らに安定化工程を行うことが好ましい。
【0091】この工程は、真空容器内の有機物質を排気
する工程である。
【0092】ここで、真空容器を排気する真空排気装置
については、装置から発生するオイルが素子の特性に影
響を与えないように、オイルを使用しないものを用いる
のが好ましい。
【0093】具体的には、ソープションポンプ、イオン
ポンプ等の真空排気装置を挙げることが出来る。
【0094】また、上記活性化の工程で、排気装置とし
て油拡散ポンプやロータリーポンプを用いて、これから
発生するオイル成分に由来する有機ガスを用いた場合
は、この成分の分圧を極力低く抑える必要がある。
【0095】真空容器内の有機成分の分圧は、上記の炭
素及び炭素化合物がほぼ新たに堆積しない分圧で1.3
×10-6Pa以下が好ましく、さらには1.3×10-8
Pa以下が特に好ましい。
【0096】さらに、真空容器内を排気するときには、
真空容器全体を加熱して、真空容器内壁や、電子放出素
子に吸着した有機物質分子を排気しやすくするのが好ま
しい。
【0097】このときの加熱条件は、80〜250℃好
ましくは150℃以上で、できるだけ長時間処理するの
が望ましいが、特にこの条件に限るものではなく、真空
容器の大きさや形状、電子放出素子の構成などの諸条件
により適宜選ばれる条件により行う。
【0098】真空容器内の圧力は極力低くすることが必
要で、1×10-5Pa以下が好ましく、さらに1.3×
10-6Pa以下が特に好ましい。
【0099】安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気
は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ま
しいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去
されていれば、真空度自体は多少低下しても十分安定な
特性を維持することが出来る。
【0100】このような真空雰囲気を採用することによ
り、新たな炭素あるいは炭素化合物の堆積を抑制でき、
また真空容器や基板などに吸着したH2O,O2なども除
去でき、結果として素子電流Ifおよび放出電流Ieが
安定する。
【0101】上述の工程を経て得られた電子放出素子の
基本特性について、図6及び図14を参照しながら説明
する。
【0102】図6は、真空処理装置の一例を示す模式図
であり、この真空処理装置は測定評価装置としての機能
をも兼ね備えている。なお、図6においても、図1に示
した部位と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号
を付している。
【0103】図6において、65は真空容器であり、6
6は排気ポンプである。
【0104】真空容器65内には電子放出素子が配され
ている。
【0105】また、61は電子放出素子に素子電圧Vf
を印加するための電源、60は素子電極4,5間の導電
性薄膜3を流れる素子電流Ifを測定するための電流
計、64は素子の電子放出部より放出される放出電流I
eを捕捉するためのアノード電極である。
【0106】また、63はアノード電極64に電圧を印
加するための高圧電源、62は素子の電子放出部2より
放出される放出電流Ieを測定するための電流計であ
る。
【0107】ここで、一例として、アノード電極の電圧
を1kV〜10kVの範囲とし、アノード電極と電子放
出素子との距離Hを2mm〜8mmの範囲として測定を
行うことができる。
【0108】真空容器65内には、不図示の真空計等の
真空雰囲気下での測定に必要な機器が設けられていて、
所望の真空雰囲気下での測定評価を行えるようになって
いる。
【0109】排気ポンプ66は、ターボポンプ、ロータ
リーポンプからなる通常の高真空装置系と、更に、イオ
ンポンプ等からなる超高真空装置系とにより構成されて
いる。
【0110】ここに示した電子源基板を配した真空処理
装置の全体は、不図示のヒーターにより加熱できる。
【0111】従って、この真空処理装置を用いると、前
述の通電フォーミング以降の工程も行うことができる。
【0112】図14は、図6に示した真空処理装置を用
いて測定された放出電流Ie、素子電流Ifと素子電圧
Vfの関係を模式的に示した図である。
【0113】図14においては、放出電流Ieが素子電
流Ifに比べて著しく小さいので、任意単位で示してい
る。なお、縦・横軸ともリニアスケールである。
【0114】図14からも明らかなように、上述のよう
に構成された電子放出素子は、放出電流Ieに関して三
つの特徴的性質を有する。
【0115】即ち、 (i)本素子は、ある電圧(しきい値電圧と呼ぶ、図1
4中のVth)以上の素子電圧を印加すると急激に放出
電流Ieが増加し、一方しきい値電圧Vth以下では放
出電流Ieがほとんど検出されない。つまり、放出電流
Ieに対する明確なしきい値電圧Vthを持った非線形
素子である。 ()放出電流Ieが素子電圧Vfに単調増加依存するた
め、放出電流Ieは素子電圧Vfで制御できる。 ()アノード電極64に捕捉される放出電荷は、素子電
圧Vfを印加する時間に依存する。つまり、アノード電
極64に捕捉される電荷量は、素子電圧Vfを印加する
時間により制御できる。
【0116】以上の説明より理解されるように、上述の
ように構成される電子放出素子は、入力信号に応じて、
電子放出特性を容易に制御できることになる。
【0117】この性質を利用すると複数の電子放出素子
を配して構成した電子源、画像形成装置等、多方面への
応用が可能となる。
【0118】次に、本発明の実施の形態の特徴とする非
線型のI−V特性をもつ抵抗膜6について説明をする。
【0119】本発明の実施の形態における非線型のI−
V特性をもつ抵抗膜6の形成によっては、電子放出素子
の基本的な特性は左右されない。
【0120】これは、非線型のI−V特性をもつ抵抗膜
6の抵抗値が十分に高いため(電子放出時における印加
電圧では1×106V/m程度であり、その時のシート
抵抗値が1×108Ω/□以上である。)、この特性に
よって非線型のI−V特性をもつ抵抗膜6を通って流れ
るリーク電流が、電子放出を行なっているときに観測さ
れる素子電流に比べて、十分小さいためである。
【0121】一方、本実施形態に拠れば、抵抗膜6を設
けることによって、絶縁性基板表面の帯電を防止(抑
制)することができる。
【0122】帯電による放電現象は、絶縁性基板上の帯
電により100V程度上昇することが、実験的に発明者
らは、観測している。
【0123】この電圧まで帯電すると、5×106V/
m程度になるが、その場合は非線型のI−V特性をもつ
抵抗膜6が低抵抗になり、その結果、電荷をにがすこと
となり、帯電量を抑えることができる。
【0124】このため、絶縁性表面の電位不安定性に起
因した電子放出特性の不安定性や、素子近傍とアノード
間での放電が抑制されるために、長時間の安定な電子放
出特性が得られる。
【0125】以上のように本発明の実施の形態に係る電
子放出素子は、長時間にわたって安定な電子放出特性、
即ち、素子電流If,放出電流Ieの素子印加電圧に対
する単調増加特性を有するため、電子源、画像形成装置
等、多方面への応用が可能となる。
【0126】上述した電子放出素子の応用例について以
下に述べる。
【0127】すなわち、上述のように構成される表面伝
導型電子放出素子の複数個を基板上に配列し、例えば電
子源あるいは、画像形成装置を構成できる。
【0128】電子放出素子の配列については、種々のも
のを採用できるが、その一例として、並列に配置した多
数の電子放出素子の個々を両端で接続し、電子放出素子
の行を多数個配し(行方向と呼ぶ)、この配線と直交す
る方向(列方向と呼ぶ)で、該電子放出素子の上方に配
した制御電極(グリッドとも呼ぶ)により、電子放出素
子からの電子を制御駆動するはしご状配置のものがあ
る。
【0129】また、これとは別に、電子放出素子をX方
向及びY方向に行列状に複数個配し、同じ行に配された
複数の電子放出素子の電極の一方を、X方向の配線に共
通に接続し、同じ列に配された複数の電子放出素子の電
極の他方を、Y方向の配線に共通に接続するものが挙げ
られる。
【0130】このようなものは所謂単純マトリクス配置
である。
【0131】この単純マトリクス配置について以下に詳
述する。
【0132】上述した表面伝導型電子放出素子について
は、前述したとおり(i)ないし()の特性がある。
【0133】即ち、表面伝導型電子放出素子からの放出
電子は、しきい値電圧以上では、対向する素子電極間に
印加するパルス状電圧の波高値と幅で制御できる。
【0134】一方、しきい値電圧以下では、殆ど放出さ
れない。
【0135】この特性によれば、多数の電子放出素子を
配置した場合においても、個々の素子に、パルス状電圧
を適宜印加すれば、入力信号に応じて、表面伝導型電子
放出素子を選択して電子放出量を制御できる。
【0136】以下、この原理に基づき、上記のように構
成された電子放出素子を複数配して得られる本発明の実
施の形態に係る電子源基板について、図9を用いて説明
する。
【0137】図9において、1は基板であり、82はX
方向配線、83はY方向配線であり、84は電子放出素
子、85は結線である。
【0138】m本のX方向配線82は,Dx1,Dx
2,・・,Dxmからなり,真空蒸着法,印刷法,スパ
ッタ法等を用いて形成された導電性金属等で構成するこ
とができる。
【0139】なお、配線の材料、膜厚、巾は、適宜設計
される。
【0140】Y方向配線83は,Dy1,Dy2,・
・,Dynのn本の配線よりなり,X方向配線82と同
様に形成される。
【0141】これらm本のX方向配線82とn本のY方
向配線83との間には、不図示の層間絶縁層が設けられ
ており、両者を電気的に分離している(m,nは、共に
正の整数)。
【0142】不図示の層間絶縁層は,真空蒸着法,印刷
法,スパッタ法等を用いて形成されたSiO2等で構成
される。
【0143】例えば、X方向配線82を形成した電子源
基板81の全面、或は一部に所望の形状で形成され、特
に、X方向配線82とY方向配線83の交差部の電位差
に耐え得るように、膜厚,材料,製法が適宜設定され
る。
【0144】X方向配線82とY方向配線83は、それ
ぞれ外部端子として引き出されている。
【0145】電子放出素子84を構成する一対の電極
(不図示)は、m本のX方向配線82とn本のY方向配
線83と導電性金属等からなる結線85によって電気的
に接続されている。
【0146】配線82と配線83を構成する材料,結線
85を構成する材料及び一対の素子電極を構成する材料
は、その構成元素の一部あるいは全部が同一であって
も、またそれぞれ異なってもよい。
【0147】これら材料は、例えば前述の素子電極の材
料より適宜選択される。
【0148】なお、素子電極を構成する材料と配線材料
が同一である場合には、素子電極に接続した配線は素子
電極ということもできる。
【0149】x方向配線82には、X方向に配列した表
面伝導型放出素子84の行を、選択するための走査信号
を印加する不図示の走査信号印加手段が接続される。
【0150】一方、Y方向配線83には、Y方向に配列
した表面伝導型放出素子84の各列を入力信号に応じ
て、変調するための不図示の変調信号発生手段が接続さ
れる。
【0151】各電子放出素子に印加される駆動電圧は、
当該素子に印加される走査信号と変調信号の差電圧とし
て供給される。
【0152】上記構成においては、単純なマトリクス配
線を用いて、個別の素子を選択し、独立に駆動可能とす
ることができる。
【0153】このような単純マトリクス配置の電子源を
用いて構成した画像形成装置について、図10および図
11を用いて説明する。
【0154】図10は画像形成装置の表示パネルの一例
を示す模式図であり、図11は図10の画像形成装置に
使用される蛍光膜の模式図である。
【0155】図10において、1は電子放出素子を複数
配した電子源基板、91は電子源基板1を固定したリア
プレート、96はガラス基板93の内面に蛍光膜94と
メタルバック95等が形成されたフェースプレートであ
る。
【0156】92は支持枠であり、この支持枠92に
は、リアプレート91、フェースプレート96が低融点
のフリットガラスなどを用いて、接合される。
【0157】82,83は、電子放出素子の一対の素子
電極と接続されたX方向配線及びY方向配線である。
【0158】外囲器98は、上述の如く、フェースープ
レート96,支持枠92,リアプレート91で構成され
る。
【0159】リアプレート91は、主に基板1の強度を
補強する目的で設けられるため、基板1自体で十分な強
度を持つ場合は、別体のリアプレート91は不要とする
ことができる。
【0160】即ち、基板1に直接支持枠92を封着し、
フェースプレート96,支持枠92及び基板1で外囲器
98を構成しても良い。
【0161】一方、フェースープレート96とリアプレ
ート91との間に、スペーサーとよばれる不図示の支持
体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度を
もつ外囲器98を構成することもできる。
【0162】図11は、蛍光膜を示す模式図である。
【0163】蛍光膜94は、モノクロームの場合は蛍光
体のみから構成することができる。
【0164】カラーの蛍光膜の場合は、蛍光体の配列に
よりブラックストライプあるいはブラックマトリクスな
どと呼ばれる黒色導電材101と蛍光体102とから構
成することができる。
【0165】ブラックストライプやブラックマトリクス
を設ける目的は、カラー表示の場合に、必要となる三原
色蛍光体の各蛍光体92間の塗り分け部を黒くすること
で混色等を目立たなくすることと、蛍光膜94における
外光反射によるコントラストの低下を抑制することにあ
る。
【0166】ブラックストライプの材料としては、通常
用いられている黒鉛を主成分とする材料の他、導電性が
あり、光の透過及び反射が少ない材料を用いることがで
きる。
【0167】ガラス基板93に蛍光体を塗布する方法
は、モノクローム、カラーによらず、沈澱法、印刷法等
が採用できる。
【0168】また、蛍光膜94の内面側には、通常メタ
ルバック95が設けられる。
【0169】メタルバックを設ける目的は、蛍光体の発
光のうち内面側への光をフェースプレート96側へ鏡面
反射させることにより輝度を向上させること、電子ビー
ム加速電圧を印加するための電極として作用させるこ
と、外囲器98内で発生した負イオンの衝突によるダメ
ージから蛍光体を保護すること等である。
【0170】メタルバックは、蛍光膜作製後に、蛍光膜
の内面側表面の平滑化処理(通常、「フィルミング」と
呼ばれる。)を行い、その後Alを、真空蒸着等を用い
て堆積させることで作製できる。
【0171】フェースプレート96には、更に蛍光膜9
4の導電性を高めるため、蛍光膜94の外面側に透明電
極(不図示)を設けてもよい。
【0172】前述の封着を行う際には、カラーの場合は
各色蛍光体と電子放出素子とを対応させる必要があり、
十分な位置合わせが不可欠となる。
【0173】ここで、上述の本発明の実施の形態に係る
表面伝導型電子放出素子を複数配置させて構成される電
子源においては、特に、素子近傍に限らず、その外の絶
縁性部位についても帯電を防止するように配慮する事が
効果的である。
【0174】即ち、複数の電子放出素子の対向する素子
電極に各々接続された、行及び列方向配線がマトリクス
状に形成され、この行及び列方向配線が層間絶縁層によ
り電気的に隔てられた構造においては、層間絶縁層の表
面にも、非線型のI−V特性を有する抵抗膜が形成され
ていれば良い事になる。
【0175】この層間絶縁層の表面に形成される抵抗膜
は、上述の素子に関わり形成される抵抗膜と同じである
必要は、特に無い。
【0176】先述の説明からわかるように、本発明の特
徴である非線型のI−V特性を有する抵抗膜であれば、
帯電或いは、容量分割により生ずる表面電位の上昇を効
果的に抑制、あるいは緩和させる事が可能となり、同時
に駆動に関わるリーク電流を抑制する事も可能となる。
【0177】
【実施例】以下、より具体的な例を基に説明する。 (実施例1)本実施例に係る基本的な表面伝導型電子放
出素子の構成は、上述した図1に示した構成と同様であ
り、その製造法についても、基本的には上述の図2を参
照して説明したものと同様である。
【0178】上述のように、図1中、1は基板、4と5
は素子電極、3は電子放出部を含む薄膜、2は電子放出
部、6は非線型のI−V特性をもつ抵抗膜である。
【0179】以下、順をおって製造方法について説明す
る。
【0180】工程(a) 清浄化した青板ガラス上に厚さ0.5ミクロンのシリコ
ン酸化膜をCVD法で形成した基板1上に、素子電極
4,5と素子電極間ギャップGとなるべきパターンをホ
トレジスト(RD−2000N−41 日立化成社製)
形成し、真空蒸着法により、厚さ50ÅのTi、厚さ1
000ÅのPtを順次堆積した。
【0181】そして、ホトレジストパターンを有機溶剤
で溶解し、Pt/Ti堆積膜をリフトオフし、素子電極
間隔L1を10ミクロン、素子電極の幅W1を300ミ
クロン、となるような素子電極4,5を形成した。
【0182】工程(b) 本工程に関わる電子放出素子の電子放出部形成用薄膜3
のマスクは、素子間電極ギャップL1およびこの近傍に
開口を有するマスクであり、このマスクにより膜厚10
nmのCr膜を真空蒸着により堆積・パターニングし、
そのうえに有機Pd(ccp4230奥野製薬(株)社
製)をスピンナーにより回転塗布して、300℃で12
分間の加熱焼成処理をした。
【0183】また、こうして形成された主元素としてP
dよりなる微粒子からなる電子放出部形成用薄膜4の膜
厚は100Åで、シート抵抗値は2×104Ω/□であ
った。
【0184】なお、ここで述べる微粒子膜とは、上述し
たように、複数の微粒子が集合した膜であり、その微細
構造として、微粒子が個々に分散配置した状態のみなら
ず、微粒子が互いに隣接、あるいは、重なり合った状態
(島状も含む)の膜をさし、その粒径とは、前記状態で
粒子形状が認識可能な微粒子ついての径をいう。
【0185】工程(C) Cr膜および焼成後の電子放出部形成用薄膜3を酸エッ
チャントによりエッチングして所望のパターンを形成し
た。
【0186】以上の工程により基板1上に、素子電極
4,5,電子放出部形成用薄膜3等を形成した。
【0187】工程(d) 素子電極4,5及び電子放出部形成用薄膜3を形成した
基板1を再度洗浄し、乾燥させた後に、以下に述べる方
法により、基板1の表面全体を非線型のI−V特性をも
つ抵抗膜6で被覆した。
【0188】非線型のI−V特性をもつ抵抗膜は、RF
マグネトロンスパッタによって形成した。
【0189】使用したターゲットは炭素、酸化クロム、
酸化スズである。なお、膜厚はスパッタ時間でコントロ
ールする。 (抵抗測定)工程(d)と同様の工程で、非線型のI−
V特性をもつ抵抗膜をガラス基板上に、それぞれ形成し
た。
【0190】以下に非線型のI−V特性をもつ抵抗膜と
して炭素を使用した場合の一例を示す。
【0191】膜厚1nm,2nm,3nm,5nm,1
0nm,20nmにおいて、シート抵抗を4探針法によ
り測定した結果、以下の結果を得た。
【0192】(1nmの場合)1×107V/mの電界
強度においては、上限がおよそ1×108Ω/□であ
り、また、5×106V/mの電界強度においては、上
限がおよそ5×1014Ω/□であった。
【0193】(2nmの場合)1×107V/mの電界
強度においては、上限がおよそ5×108Ω/□であ
り、また、5×106V/mの電界強度においては、上
限がおよそ8×1014Ω/□であった。
【0194】(3nmの場合)1×107V/mの電界
強度においては、上限が1×107Ω/□であり、ま
た、5×106V/mの電界強度においては、上限がお
よそ8×1012Ω/□であった。
【0195】(5nmの場合)1×107V/mの電界
強度においては、上限が2×107Ω/□であり、ま
た、5×106V/mの電界強度においては、上限がお
よそ5×1011Ω/□であった。
【0196】(10nmの場合)1×107V/mの電
界強度においては、上限が4×107Ω/□であり、ま
た、5×106V/mの電界強度においては、上限がお
よそ4×1010Ω/□であった。
【0197】(20nmの場合)1×107V/mの電
界強度においては、上限が8×107Ω/□であり、ま
た、5×106V/mの電界強度においては、上限がお
よそ8×109Ω/□であった。
【0198】なお、これらの膜厚値と抵抗値の関係は、
スパッタ条件を変えたり、熱処理、雰囲気処理等で変え
ることもでき、上記関係は普遍的なものではない。
【0199】また、酸化クロム、酸化スズを非線型のI
−V特性をもつ抵抗膜として使用した場合には、以下の
結果が得られた。 (酸化クロムの場合(ただし膜厚は10nm))1×1
7V/mの電界強度においては、上限がおよそ5×1
8Ω/□であり、また、5×106V/mの電界強度に
おいては、上限がおよそ2×1010Ω/□であった。 (酸化スズの場合(ただし膜厚は200nm))1×1
7V/mの電界強度においては、上限がおよそ3×1
8Ω/□であり、また、5×106V/mの電界強度に
おいては、上限がおよそ5×109Ω/□であった。
【0200】これらの結果から、それぞれ非線型のI−
V特性を有している事がわかる。 (電位測定)非線型のI−V特性をもつ抵抗膜の帯電の
様子を評価するために、図3に示した構成で、評価を行
った。
【0201】図中、1は絶縁体の基板で、20は絶縁体
基板の裏面からグランドをとるための電極、30は電極
でグランドに接地してある。
【0202】また、6は非線型のI−V特性をもつ抵抗
膜であり、80は帯電の様子を見るためのプローブ電極
で、この電位は、表面電位計90に接続してあり、50
はアノード電極で高圧電源70と接続してある。
【0203】このような測定系においては、基板および
アノード電極は真空容器内にあり、真空中で測定され
る。
【0204】この結果を、図4を用いて説明する。
【0205】ある時刻に高圧電源70からアノード電圧
Vaを印加すると、非線型のI−V特性をもつ抵抗膜6
がない場合、つまり絶縁性基板のみの場合、プローブ電
極の電位は、真空と絶縁基板の誘電率と空間の距離でき
まる容量で分割され正の電位に帯電する。
【0206】絶縁性が高ければ高いほどこの正の電位は
長く保存される。
【0207】また、アノード電圧Vaをオフにすると負
の電位に帯電する。
【0208】たとえば、Vaを5KV程度印加するとプ
ローブ電位は2KV以上増加することがあり、この場
合、接地してある電極30とプローブ電極間80に高い
電圧がかかり、その結果絶縁破壊し放電することがあ
る。
【0209】一方、絶縁性基板上に非線型のI−V特性
をもつ抵抗膜6を形成すると、図に示すように、電位が
ある時定数で減衰する。
【0210】この時定数は、同じ構成、つまり容量が同
じだとすると、非線型のI−V特性をもつ抵抗膜6の抵
抗できまる時定数で減衰し、電位が0Vになる。
【0211】電位が0Vであれば、各電極とに電位差を
生じないので絶縁破壊することがない。
【0212】この測定をもとに非線型のI−V特性をも
つ抵抗膜6として、上述の炭素、酸化クロム、酸化スズ
を用いたときの帯電の様子を計測した。
【0213】この結果、どの膜厚においても帯電は、す
ぐに減衰することが分かった。ちなみに抵抗膜が炭素で
あり、1nmのときの減衰時間は10ms程度であっ
た。
【0214】実験的に非線型のI−V特性をもつ抵抗膜
6のシート抵抗値が、5×106V/mの電界強度にお
いて1×108Ω/□以上であれば、減衰時間は1s以
下であり、高圧を20KV程度あげても絶縁破壊するこ
とがないことが判明した。
【0215】工程(e) 次に、測定評価装置に設置し、真空ポンプにて排気し、
2×10-3Paの圧力に達した後、素子に素子電圧Vf
を印加するための電源31より、素子の素子電極4,5
間に電圧を印加し、通電処理(フォーミング処理)し
た。
【0216】フォーミング処理の電圧波形(フォーミン
グ電圧波形)を図5(b)に示す。
【0217】図中、T1及びT2は、それぞれ電圧波形
のパルス幅とパルス間隔であり、本実施例ではT1を1
ミリ秒、T2を10ミリ秒とし、矩形波の波高値(フォ
ーミング時のピーク電圧)は0.1Vステップで昇圧
し、フォーミング処理を行なった。
【0218】また、フォーミング処理中は、同時に、
0.1Vの電圧で、T2間に抵抗測定パルスを挿入し、
抵抗を測定した。
【0219】尚、フォーミング処理の終了は、抵抗測定
パルスでの測定値が、約1Mオーム以上になった時と
し、同時に、素子への電圧の印加を終了した。
【0220】このときのフォーミング電圧VFは、5.
0Vであった。
【0221】この後、素子を真空中に保持したまま、1
50℃でアニーリングし、電子放出部を含む薄膜3を還
元した。
【0222】工程(f) 続いて、アセトンをアンプルに封じたものを、スローリ
ークバルブを通して真空内に導入し、0.1Paを維持
した。
【0223】次に、フォーミング処理した素子に、フォ
ーミング波形図5(a)の波形で矩形波の波高値を14
Vで、活性化処理をした。
【0224】活性化処理とは、前述した様に、図3に示
した測定評価装置内で、素子電流If及び放出電流Ie
を測定しながら、素子電極間にパルス電圧を印加した。
【0225】効率η((Ie/If)×100%)が、
約30分で最大になったため、通電を停止し、スローリ
ークバルブを閉め、活性化処理を終了した。
【0226】工程(g) こうして、電子放出部3を形成して電子放出素子2を作
製し、電子放出特性を評価した。
【0227】アノード電極と電子放出素子間の距離を4
mm、アノード電極の電位を5kV、電子放出特性測定
時の真空装置内の圧力を1×10-6Paとした。
【0228】素子の電極4,5の間に素子電圧を14V
印加したが、電子放出特性は極めて安定で、放電等によ
る素子の破壊は生じなかった。
【0229】次に、比較のため非線型のI−V特性をも
つ抵抗膜6のないサンプルを評価したところ、電子放出
量の時間的変化が大きく、また5時間以内に放電が生じ
素子が破壊した。
【0230】以上より本実施例による非線型のI−V特
性を有する抵抗膜により、安定で放電の生じない電子放
出特性が得られた。
【0231】尚、工程(f)の活性化処理を実施するこ
とにより、少なくとも抵抗膜6の部分的な領域に炭素化
合物が新たに形成されうるが、上述の非線型のI−V特
性をもつ抵抗膜の特性、具体的にはリーク電流に大きな
影響を与えるものではなかった。
【0232】これは炭素化合物が導電体であっても、部
分的にしか形成されないために、リーク電流として寄与
しにくいためであると思われる。 (実施例2)本実施例では、非線型のI−V特性をもつ
抵抗膜6を、基板に最初に形成した構成(サンプル)に
ついて説明する。
【0233】まず、図7を参照して、その製造工程につ
いて説明する。
【0234】工程(a) 清浄化した青板ガラス1上に市販の炭素分散材料(粒径
0.1μm)の水溶液をスピンコートした。
【0235】炭素分散材料は黒鉛を主成分として、導電
率をさげるためにTiO2を添加されているものを用い
た。
【0236】スピンコート条件および水溶液濃度によ
り、種々の膜厚の非線型のI−V特性をもつ抵抗膜6を
形成することができる。
【0237】この炭素分散材料を安定化するために20
0℃で熱処理をおこなった。
【0238】ここで、炭素分散材料と称しているのは、
膜厚と抵抗値の関係を制御するために、炭素に不純物を
混合させて抵抗率を可変させるので、炭素分散材料と呼
んでいる。
【0239】このようにして作製した炭素分散材料で被
覆された青板ガラス基板1上に、素子電極4,5と素子
電極間ギャップGとなるべきパターンをホトレジスト
(RD−2000N−41 日立化成社製)形成し、真
空蒸着法により、厚さ50ÅのTi、厚さ1000Åの
Ptを順次堆積した。
【0240】ホトレジストパターンを有機溶剤で溶解
し、Pt/Ti堆積膜をリフトオフし、素子電極間隔L
1は10ミクロンとし、素子電極の幅W1を300ミク
ロン、を有する素子電極4,5を形成した。 (抵抗測定)種々の膜厚に対する基板のシート抵抗を4
探針法により測定したところ、1×107V/mの電界
強度のもとで以下のシート抵抗値を得た。
【0241】尚、5×106V/mの電界強度のもとで
は、いずれも1×108Ω/□以上のシート抵抗値であ
った。
【0242】0.1μmの場合に、3×108Ω/□ 0.2μmの場合に、8×108Ω/□ 0.4μmの場合に、1×107Ω/□ 0.6μmの場合に、2×107Ω/□ 1.0μmの場合に、5×107Ω/□ であった。
【0243】なお、これらの膜厚と抵抗値の関係は、黒
鉛中の不純物材料および混合比率を変えたり、スピンコ
ート条件,水溶液濃度,熱処理条件等で変えることもで
き、上記関係は普遍的なものではない。 (電位測定)上記実施例1と同様に種々の膜厚に対する
電位測定を行った。
【0244】この場合も、どの膜厚においても時定数1
0ms以下で電位は減衰し、0Vであることがわかっ
た。
【0245】次に、実施例1に記載の工程(e),工程
(f),工程(g)と同様の工程で、電子放出素子を作
製した。
【0246】この電子放出素子において、アノード電極
と電子放出素子間の距離を2.8mm、アノード電極の
電位を6kV、電子放出特性測定時の真空装置内の真空
度を1×10-6Paとし、素子の電極4,5の間に素子
電圧を14V印加したが、電子放出特性は極めて安定
で、放電等による素子の破壊は生じなかった。
【0247】以上より、本実施例による帯電防止膜によ
り、実施例1と同様に、安定で放電の生じない電子放出
特性が得られた。 (実施例3)図1(a)及び(b)に示すのと同様の構
成の電子放出素子を、図12に模式的に示すように基体
上に複数配置し、さらにマトリクス状配線を配置した電
子源を、以下に示す手順により作成した。
【0248】図中、3は導電性薄膜を、171は素子電
極を、172は下配線を、173は層間絶縁層を、17
4は上配線を示している。
【0249】尚、図では、構造をわかりやすくするため
に部材の一部を消去してある。
【0250】次に、図13を参照しながら、製造方法に
ついて説明する。
【0251】[工程1]青板ガラスを洗剤と純水により
洗浄した後、スクリーン印刷法により、素子電極171
の形状のMODペースト(DU−2110;ノリタケ
(株)製)のパターンを形成した。
【0252】このMODペーストは金属成分として、金
を含むものである。
【0253】印刷後、110℃で20分乾燥し、次いで
熱処理装置によりピーク温度580℃ピーク保持時間8
分間の条件で上記MODペーストを焼成し、厚さ0.3
μmの素子電極171を形成した。
【0254】なお、素子電極間隔は70μmとした(図
13(A))。
【0255】[工程2]次いで、金属成分として銀を含
むペースト材料(NP−4028A;ノリタケ(株)
製)を用い、スクリーン印刷法によりx方向配線172
のパターンを形成、工程1と同様の条件で焼成してx方
向配線を形成した(図13(B))。
【0256】[工程3]次に、PbOを主成分とするペ
ーストを用い、層間絶縁層173のパターンを印刷して
工程1、2と同様の条件で焼成し、層間絶縁層173を
形成した(図13(C))。
【0257】この層間絶縁層は素子電極171の一方
と、後の工程で形成するy方向配線とが接続されるよ
う、切り欠き部分を有している。
【0258】[工程4]工程2と同様の方法で、y方向
配線174を形成し(図13(D))、配線を形成し
た。
【0259】[工程5]次いで、導電性薄膜3を形成し
た。
【0260】具体的には、有機パラジウム含有溶液を、
バブルジェット方式のインクジェット噴射装置を用い
て、幅が200マイクロメートルとなるように付与して
行って、その後350℃で10分間の加熱処理を行っ
て、酸化パラジウム微粒子から成る微粒子膜を得た(図
13(E))。
【0261】[工程6]次に、RFマグネトロンスパッ
タによって非線型のV−I特性を有する抵抗膜6を形成
した。
【0262】ここで、使用したターゲットは炭素であ
り、膜厚は約2nmである。
【0263】このときのシート抵抗値は、1×107
/mの電界強度においては、概ね5×108Ω/□であ
り、5×106V/mの電界強度において、概ね8×1
14Ω/□程度であった(図12)。
【0264】つぎに,以上のようにして作成した電子源
を用いて表示装置を構成した例を、図9および図10を
用いて説明する。
【0265】上記のようにして、多数の平面型表面伝導
電子放出素子を作製した基板1をリアプレート91上に
固定した後、基板1の5mm上方に、フェースプレート
96(ガラス基板93の内面に蛍光膜94とメタルバッ
ク95が形成されて構成される)を、支持枠92を介し
て配置し、フェースプレート96、支持枠92、リアプ
レート91の接合部にフリットガラスを塗布し、大気中
あるいは窒素雰囲気中で400℃ないし500℃で10
分以上焼成することで封着した(図10)。
【0266】また、リアプレート91への基板1の固定
もフリットガラスで行った。
【0267】図9および図10において、84は電子放
出素子、82,83はそれぞれX方向及びY方向の素子
配線である。
【0268】蛍光膜94は、モノクロームの場合は蛍光
体のみからなるが、本実施例では、蛍光体はストライプ
形状を採用し、先にブラックストライプを形成し、その
間隙部に各色蛍光体を塗布し、蛍光膜94を作製した。
【0269】ブラックストライプの材料としては、通常
良く用いられている黒鉛を主成分とする材料を用いた。
【0270】ガラス基板93に蛍光体を塗布する方法は
スラリー法を用いた。
【0271】また、蛍光膜94の内面側には、通常メタ
ルバック95が設けられる。
【0272】メタルバックは、蛍光膜作製後、蛍光膜の
内面側表面の平滑化処理(通常フィルミングと呼ばれ
る)を行い、その後、Alを真空蒸着することで作製し
た。
【0273】フェースプレート96には、更に蛍光膜9
4の導伝性を高めるため、蛍光膜94の外面側に透明電
極(不図示)が設けられる場合もあるが、本実施例で
は、メタルバックのみで十分な導伝性が得られたので省
略した。
【0274】前述の封着を行う際、カラーの場合は各色
蛍光体と電子放出素子とを対応させなくてはいけないた
め、十分な位置合わせを行った。
【0275】以上のようにして完成したガラス容器内の
雰囲気を、排気管(図示せず)を通じ真空ポンプにて排
気し、十分な真空度に達した後、容器外端子Dxo1な
いしDoxmとDoy1ないしDoynを通じて、電子
放出素子84の電極4,5間に電圧を印加し、電子放出
部形成用薄膜3をフォーミング処理することにより、電
子放出部2を作成した。
【0276】フォーミング処理の電圧波形は、図5
(b)と同様である。
【0277】本実施例ではT1を1ミリ秒、T2を10
ミリ秒とし、約2×10-3Paの圧力下で行った。
【0278】このように作成された電子放出部2は、パ
ラジウム元素を主成分とする微粒子が分散配置された状
態となり、その微粒子の平均粒径は30オングストロー
ムであった。
【0279】次に、パネルの排気管より、アセトンを、
スローリークバルブを通してパネル内に導入し、0.1
Paを維持した。
【0280】次いで、上記フォーミング処理で使用した
三角波を矩形波に変えて、波高14Vで、素子電流I
f,放出電流Ieを測定しながら、活性化処理をおこな
った。
【0281】以上のようにフォーミング、活性化処理を
行い、電子放出部2を形成し、電子放出素子84を作製
した。
【0282】次に、10-6Pa程度の圧力まで排気し、
不図示の排気管をガスバーナーで熱することで溶着して
外囲器の封止を行った。
【0283】最後に封止後の真空度を維持するために、
高周波加熱法でゲッター処理を行った。
【0284】以上のように完成した本実施例の画像表示
装置において、各電子放出素子には、容器外端子Dx1
ないしDxm,Dy1ないしDynを通じ、走査信号及
び変調信号を不図示の信号発生手段より、それぞれ印加
することにより、電子放出させて、高圧端子Hvを通じ
て、メタルバック95、あるいは透明電極(不図示)に
数kV以上の高圧を印加して電子ビームを加速し、蛍光
膜94に衝突させて励起・発光させることで画像を表示
した。
【0285】ここで、本実施例においては、層間絶縁層
173上の絶縁性表面にも非線型なI−V特性を有する
抵抗膜6が形成してあり、この部分の帯電も効果的に防
止されている。
【0286】その結果、安定した画像を表示し、電子ビ
ームの偏向等もおきず、放電による破壊等も見られなか
った。
【0287】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、電界強
度が増加するにつれて抵抗値が減少する、非線形型のI
−V特性を有する抵抗膜を設けたことによって、リーク
電流を抑制しつつ帯電による不具合の防止を図ることが
でき、電子放出特性を安定化させて、品質性を向上させ
ることができる。
【0288】非線形型のI−V特性を有する抵抗膜は、
絶縁性の基体上や電子源を構成した際の層間絶縁層の表
面に設けることによって、効果的に機能させることがで
きる。
【0289】また、本発明を画像形成装置に適用するこ
とで、画像品質の向上にもつながる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る平面型表面伝導電子
放出素子の基本構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る表面伝導電子放出素
子の製造工程図である。
【図3】帯電評価装置の概略図である。
【図4】プローブ電位を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る表面伝導電子放出素
子のフォーミング電圧波形図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る表面伝導電子放出素
子の基本瀧な測定評価装置図である。
【図7】本発明の実施例2に係る表面伝導電子放出素子
の基本構成図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る垂直型表面伝導電子
放出素子の基本構成図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る電子源の概略構成図
である。
【図10】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の概
略構成斜視図である。
【図11】蛍光膜の説明図である。
【図12】単純マトリクス型電子源の平面図である。
【図13】単純マトリクス型電子源の製造工程図であ
る。
【図14】本発明の実施の形態に係る電子放出素子の、
放出電流Ieおよび素子電流Ifと素子電圧Vfの関係
を示す模式図である。
【図15】従来技術に係る電子放出素子の平面図であ
る。
【符号の説明】
1 絶縁性基板 2 電子放出部 3 導電性薄膜 4 素子電極 5 素子電極 6 非線型のI−V特性を有する抵抗膜 20 絶縁体基板の裏面からグランドをとるための電極 30 電極 31 層間絶縁層 50 アノード電極 60 電流計 61 電源 62 電流計 63 高圧電源 64 アノード電極 65 真空容器 66 排気ポンプ 70 高圧電源 80 プローブ電極 82 X方向配線 83 Y方向配線 84 電子放出素子 85 結線 90 表面電位計 91 リアプレート 92 支持枠 93 ガラス基板 94 蛍光膜 95 メタルバック 96 フェースプレート 98 外囲器 101 黒色導電材 102 蛍光体 171 素子電極 172 X方向配線 173 層間絶縁層 174 Y方向配
フロントページの続き (72)発明者 山本 敬介 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 5C036 EE09 EE14 EF01 EF06 EF09 EG12 EH08

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アノードに対向する位置に配置される絶縁
    性の基体と、 該基体上に設けられる、対向する一対の素子電極と、 該素子電極間に位置する電子放出部を含む導電性薄膜
    と、を有する電子放出素子おいて、 電界強度が増加するにつれて抵抗値が減少する、非線形
    型のI−V特性を有する抵抗膜を、前記基体上に設ける
    ことを特徴とする電子放出素子。
  2. 【請求項2】表面伝導型電子放出素子であることを特徴
    とする請求項1に記載の電子放出素子。
  3. 【請求項3】前記抵抗膜内には、分散された導電性粒子
    を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電
    子放出素子。
  4. 【請求項4】幅w,長さlの薄膜の抵抗をRとした場合
    に、 R=RS(l/w) を満たすシート抵抗値RSについて、 5×106V/mの電界強度における前記抵抗膜のシー
    ト抵抗値RSが、1×108Ω/□以上であることを特徴
    とする請求項1,2または3に記載の電子放出素子。
  5. 【請求項5】請求項1〜4のいずれか一つに記載の電子
    放出素子を複数備えると共に、 これら電子放出素子に設けられた電極同士を電気的に接
    続する、行及び列方向にマトリックス状に形成された配
    線と、 各配線同士を電気的に隔てる層間絶縁層と、を備える電
    子源において、 前記層間絶縁層の表面に、前記非線形型のI−V特性を
    有する抵抗膜を設けることを特徴とする電子源。
  6. 【請求項6】請求項5に記載の電子源と、 該電子源から放出された電子が衝突されて発光する蛍光
    体を有するアノードと、を備えることを特徴とする画像
    形成装置。
  7. 【請求項7】絶縁性の基体上に、対向する一対の素子電
    極を形成する工程と、 前記一対の素子電極にそれぞれ接続する導電性薄膜を形
    成する工程と、 前記導電性薄膜の一部の構造を変化させて電子放出部を
    形成する工程と、を有する電子放出素子の製造方法にお
    いて、 電界強度が増加するにつれて抵抗値が減少する、非線形
    型のI−V特性を有する抵抗膜を形成する工程を、含ま
    せることを特徴とする電子放出素子の製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6583477B1 (en) * 2001-12-28 2003-06-24 Electronics And Telecommunications Research Institute Field emission device

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